(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】防護構造及び人型ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B25J19/00 H
(21)【出願番号】P 2019159763
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掃部 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】柚木崎 創
(72)【発明者】
【氏名】烏山 純一
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-266340(JP,A)
【文献】特開2007-175831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人型ロボットの防護構造であって、
前記人型ロボットの頭部と胴体とを連結する首部の後方に配置される防護部材と、
前記防護部材に配置され且つ無線通信するためのアンテナとを備え、
前記防護部材は、前記首部及び前記アンテナを防護するように、前記胴体の上部から上方に向かって延
び、
前記アンテナは、前記防護部材に対して前記頭部と反対側に配置される
防護構造。
【請求項2】
前記防護部材は、前記首部及び前記アンテナを防護するように、前記胴体の上部から上方に且つ後方に向かって延びる
請求項1に記載の防護構造。
【請求項3】
前記防護部材は、前記胴体の左右方向に延び且つ後方に向かって斜め上方に延びる板状の外形を有する
請求項1または2に記載の防護構造。
【請求項4】
前記防護部材の板状の外形は、前記左右方向での前記防護部材の両端の間の部分が前方に向かって窪むように曲がった形状を有し、
前記アンテナは、前記防護部材の窪み部分に配置される
請求項3に記載の防護構造。
【請求項5】
前記アンテナは、前記防護部材に沿って延びる
請求項1~
4のいずれか一項に記載の防護構造。
【請求項6】
前記アンテナは、前記防護部材よりも後方へ突出しないように配置される
請求項1~
5のいずれか一項に記載の防護構造。
【請求項7】
前記防護部材は、前記胴体に移動不可能に固定される
請求項1~
6のいずれか一項に記載の防護構造。
【請求項8】
前記防護部材は、前記首部の回動と共に移動可能に前記胴体に固定される
請求項1~
6のいずれか一項に記載の防護構造。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の防護構造と
前記頭部と、
前記胴体と、
前記頭部と前記胴体とを連結する前記首部とを備える
人型ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護構造及び人型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二足歩行する人型ロボットが知られている。例えば、特許文献1は、胴部が主胴部と副胴部とで構成される二足歩行ロボットを開示している。主胴部は、脚機構部及び腕機構部と接続され、頭部を支持する。副胴部は、主胴部の背面部に設けられ、ロボットの動作制御を担うコントロールユニット及び回路ユニット等を収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、副胴部が後方に突出し、二足歩行ロボットの重心が後方に偏った位置に存在し得る。このため、二足歩行ロボットが後方に転倒して頭部を地面等に打ち付け、頭部に搭載される機器が破損するおそれがある。また、二足歩行ロボットが遠隔からの指令等に従って動作する場合、送受信のためのアンテナを搭載する必要がある。このようなアンテナも、二足歩行ロボットの転倒時に破損するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、二足歩行ロボット等の人型ロボットの頭部及びアンテナを防護する防護構造及び人型ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る防護構造は、人型ロボットの防護構造であって、前記人型ロボットの頭部と胴体とを連結する首部の後方に配置される防護部材と、前記防護部材に配置され且つ無線通信するためのアンテナとを備え、前記防護部材は、前記首部及び前記アンテナを防護するように、前記胴体の上部から上方に向かって延びる。
【0007】
本発明の一態様に係る人型ロボットは、本発明の一態様に係る防護構造と、前記頭部と、前記胴体と、前記頭部と前記胴体とを連結する前記首部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二足歩行ロボットの頭部及びアンテナを防護にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る人型ロボットの一例を前部から見た斜視図
【
図2】実施の形態に係る人型ロボットの頭部から下胴体部までの構成の一例を背部から見た斜視図
【
図3】実施の形態に係る人型ロボットにおける外装体が取り外された状態の上胴体部の一例を背部から見た斜視図
【
図4】
図3において蓄電池ユニットが取り外された状態の上胴体部の一例を示す斜視図
【
図6】
図3の防護構造を別方向の背部から見た斜視図
【
図8】実施の形態に係る電装ユニットの構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、添付の図面における各図は、模式的な図であり、必ずしも厳密に図示されたものでない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。また、本明細書及び特許請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【0011】
<人型ロボットの構成>
図1は、実施の形態に係る人型ロボット1の一例を前部から見た斜視図である。
図2は、実施の形態に係る人型ロボット1の頭部10から下胴体部40までの構成の一例を背部から見た斜視図である。
図1及び
図2に示すように、実施の形態に係る人型ロボット1は、頭部10、首部20、上胴体部30、下胴体部40、腕部50及び脚部60を有する。さらに、人型ロボット1は、首部20の周りに、頭部10の防護構造100を備える。人型ロボット1は、ヒューマノイド又は二足歩行ロボット等とも呼ばれ、脚部60の駆動を制御することで二足歩行を行うことができるように構成されている。さらに、人型ロボット1は、腕部50及び脚部60を駆動させ、腕部50の先端の手部及び脚部60の先端の足部を移動させることで、人間と同様に作業等の動作を行うことができる。
【0012】
腕部50及び脚部60は、複数のリンクと、複数のリンクを屈曲可能に接続する関節とを有する。隣り合うリンクが関節を介して互いに対して屈曲することで、腕部50及び脚部60が屈曲動作する。上胴体部30と下胴体部40とは、関節70を介して屈曲可能に接続されている。上胴体部30は、下胴体部40に対して前屈動作、後屈動作及び左右の旋回動作をすることができる。下胴体部40は人間の骨盤に対応し、関節70は人間の腰に対応し得る。頭部10は、首部20を介して上胴体部30の上部と接続されている。首部20は、関節を構成し、上胴体部30に対して頭部10を前傾、後傾及び左右の旋回をさせられるように構成されている。駆動装置が各関節に設けられ、当該関節の屈曲動作、旋回動作及び傾斜動作を駆動する。駆動装置は、サーボモータなどの電気モータ及びアクチュエータ等の駆動源を有する。駆動装置は、その動作の制御を受けることで、リンクを所望の屈曲方向及び屈曲角度で屈曲させる、上胴体部30を所望の屈曲方向、屈曲角度、旋回方向及び旋回角度で屈曲及び旋回させる、又は、頭部10を所望の傾斜方向、傾斜角度、旋回方向及び旋回角度で傾斜及び旋回させる。
【0013】
上胴体部30及び下胴体部40はそれぞれ、外装体31及び41で覆われている。例えば、外装体31及び41は板状のカバーである。なお、
図2では、外装体31は、その一部が切り欠かれた状態で描かれている。
【0014】
ここで、上胴体部30及び下胴体部40の背部はそれぞれ、人型ロボット1の背中及び臀部に対応し、直立状態の人型ロボット1における上胴体部30の後屈方向の部分である。上胴体部30及び下胴体部40の前部は、人型ロボット1の胸部及び腹部に対応する。さらに、直立状態の人型ロボット1を基準として、後屈方向を後方向BDとし、前屈方向を前方向FDとし、前方向FDに対する右側方を右方向RDとし、前方向FDに対する左側方を左方向LDとする。
【0015】
図3は、実施の形態に係る人型ロボット1における外装体31が取り外された状態の上胴体部30の一例を背部から見た斜視図である。
図4は、
図3において蓄電池ユニット81が取り外された状態の上胴体部30の一例を示す斜視図である。
【0016】
図3に示すように、人型ロボット1は、上胴体部30の外装体31の内側に、蓄電池ユニット81を備えている。さらに、人型ロボット1は、蓄電池ユニット81の内側に、電装ユニット90を備えている。電装ユニット90は、人型ロボット1の各駆動装置等の動作を制御する回路基板等を含む。
【0017】
蓄電池ユニット81は、電力を蓄積し、人型ロボット1の駆動装置等の電力を動力源とする装置に電力を供給する。蓄電池ユニット81は、人型ロボット1の外部の電源と接続されることで電力の供給を受け、当該電力を蓄積する。蓄電池ユニット81は1つ以上の蓄電池を含む。蓄電池は、二次電池とも呼ばれ、電力の充放電が可能である電池である。蓄電池は、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池、又はニッケル・カドミウム蓄電池等で構成されてもよい。
【0018】
また、
図4に示すように、上胴体部30は、上胴体部30の骨格を構成する骨格フレーム32の内側に電装ユニットボックス33を含む。電装ユニットボックス33は、その内部に電装ユニット90を含む。蓄電池ユニット81は、電装ユニットボックス33の周囲に配置される。
【0019】
<防護構造の構成>
防護構造100の構成を説明する。
図5は、
図4の防護構造100を拡大した斜視図である。
図6は、
図3の防護構造100を別方向の背部から見た斜視図である。
図7は、
図3の防護構造100を側方から見た側面図である。
【0020】
図5及び
図6に示すように、防護構造100は、人型ロボット1の頭部10を防護するための構造である。防護構造100は、防護部材200とアンテナ300とを含む。防護部材200は、人型ロボット1の首部20に対して後方向BDに配置される。アンテナ300は、人型ロボット1の操作装置等の外部装置と電装ユニット90とが無線通信するためのアンテナである。無線通信の形式は、いかなる形式であってもよい。例えば、外部装置と電装ユニット90とは、直接的に無線通信してもよく、イントラネット、無線LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、モバイル通信網及び電話回線通信網等の通信網を介して無線通信してもよい。
【0021】
防護部材200は、上胴体部30の骨格フレーム32の上部に配置され、骨格フレーム32に固定されている。防護部材200は、骨格フレーム32に移動不可能に固定されている。防護部材200は、首部20の周りを囲む形状を有する。具体的は、防護部材200は、後方向BD、左方向LD及び右方向RDから首部20を囲む。防護部材200は、首部20の後方向BDに位置する後防護部201と、首部20の左方向LDに位置する左防護部202と、首部20の右方向RDに位置する右防護部203とを含む。後防護部201は、左防護部202及び右防護部203と連結され、本実施の形態では、一体化されている。
【0022】
左防護部202及び右防護部203は、板状の外形を有し、具体的には、板状の外形を形成する骨組部材210で構成される。骨組部材210は、パイプ等の柱状部材で構成され、複数の骨組部材210は、枠状、X字状及びトラス状等の形状を形成するように接合されることで、上記板状の外形を形成する。本実施の形態では、骨組部材210の接合部は、溶接等で接合部が固定されている剛接合であるが、節点が回転可能であるピン接合であってもよい。例えば、左防護部202及び右防護部203の骨組部材210は、外縁枠を形成する外骨組部材211と、外縁枠の内側にトラス状に張りめぐらされた内骨組部材212とを含む。さらに、本実施の形態では、骨組部材210の接合部に、補強部材としての板状のウェブ(「スチフナウェブ」とも呼ぶ)220が設けられている。ウェブ220は、接合部の近傍で隣り合う骨組部材210間に掛け渡され、当該骨組部材210と接合されることで当該骨組部材210同士を連結する。トラス状の骨組部材210のウェブ220の内側に貫通開口230が形成される。本実施の形態では、左防護部202及び右防護部203は、鉄等の金属のような高い強度の材料で構成されるが、樹脂等の他の材料で構成されてもよい。例えば、樹脂で構成される左防護部202及び右防護部203は、可撓性及び/又は弾性を有してもよく、これにより、衝突時に衝撃を吸収し骨格フレーム32に加わる衝撃を緩衝することができる。左防護部202及び右防護部203は、骨格フレーム32から上方へ延び且つ前方向FDから後方向BDに向かう方向に延びる。
【0023】
後防護部201は、板状の外形を有し、具体的には、板状の外形を形成する骨組部材210で構成される。本実施の形態では、後防護部201の板状の外形は、湾曲等の曲がりを含む。具体的には、後防護部201の両端の左防護部202及び右防護部203との連結部分が、当該連結部分の間の後防護部201の中央部よりも後方向BDへ突出するように、後防護部201の外形は湾曲している。両端の連結部分は、左方向LD及び右方向RDの連結部分である。つまり、後防護部201は、その左右方向での両端の間の部分が前方向FDに向かって窪むように曲がった形状を有している。さらに、後防護部201は、頭部10と反対側に、前方向FDに向かって窪む凹部201cを含む。これらの凹部201cは、棒状のアンテナ300の外周面の周方向で当該外周面の少なくとも一部を囲むように、当該外周面に沿った形状を有する。
【0024】
また、後防護部201の骨組部材210の接合部は剛接合であるが、ピン接合であってもよい。例えば、後防護部201は、外縁枠を形成する外骨組部材211と、外縁枠の内側にトラス状に張りめぐらされた内骨組部材212とを含む。さらに、本実施の形態では、骨組部材210の接合部に板状のウェブ220が設けられている。トラス状の骨組部材210のウェブの内側に貫通開口230が形成される。後防護部201は、鉄等の金属のような高い強度の材料で構成されるが、樹脂等の他の材料で構成されてもよい。後防護部201は、可撓性及び/又は弾性を有してもよい。後防護部201は、骨格フレーム32から上方に向かって延びる。本実施の形態では、後防護部201は、骨格フレーム32から上方に且つ後方向BDに向かって、つまり斜め後方に向かって延びる。さらに、後防護部201は、左方向LDから右方向RDに向かう方向に延びる。このような後防護部201は、首部20及びアンテナ300を防護するように延びる
【0025】
図5及び
図7に示すように、後防護部201は、その外縁枠の上端201aが外縁枠の下端201bに対して後方向BDへシフトするように傾斜した板状の外形を有する。本実施の形態では、後防護部201の上端201aの上方への高さ位置は、後防護部201が後方から首部20を覆う程度の高さ位置である。上端201aは、後方向BDへ蓄電池ユニット81と同程度以上に突出する。なお、上端201aの位置は、上記に限定されず、人型ロボット1が後方向BDへ転倒したときに頭部10と地面との衝突を防ぐような位置であることが好ましい。本実施の形態では、転倒時に人型ロボット1の後転を防ぐように、上端201aの上方位置及び後方向BDの位置が上記のように設定されている。
【0026】
また、上端201aの上方位置が上記のような位置であることにより、後防護部201が、後傾する頭部10と干渉することが防がれる。さらに、頭部10の旋回時、頭部10に搭載されるカメラ82(
図1参照)の視界を後防護部201が遮ることが防がれる。
【0027】
また、これに限定されないが、本実施の形態では、左防護部202及び右防護部203それぞれの外縁枠の上端202a及び203aは、後防護部201の上端201aよりも上方に突出しない、つまり同等程度以下の高さとなるように構成されている。このため、左防護部202及び右防護部203が、旋回し且つ前傾又は後傾する頭部10と干渉することが防がれる。さらに、頭部10の旋回時、頭部10に搭載されるカメラ82の視界を左防護部202及び右防護部203が遮ることが防がれる。
【0028】
上端201a、202a及び203aの上方位置が上記のような位置であることにより、後防護部201、左防護部202及び右防護部203の高さが低く抑えられ、防護部材200の重量が小さく抑えられる。さらに、後防護部201、左防護部202及び右防護部203が骨組部材210で構成されることで、防護部材200の重量が小さく抑えられる。これにより、頭部10付近の重量が大きくなることで、人型ロボット1が不安定になることが抑制される。
【0029】
また、後防護部201は、左防護部202及び右防護部203と連結され、左防護部202及び右防護部203は、後防護部201が延びる方向と異なる方向、具体的には、後防護部201の傾斜方向である前後方向に延びる。よって、後防護部201は、その傾斜角度を変える方向への変形に対する高い強度と、左右方向への変形に対する高い強度とを有する。
【0030】
図5~
図7に示すように、アンテナ300は、防護部材200に配置され、防護部材200に対して頭部10と反対側に位置する。具体的には、アンテナ300は、後防護部201に対して頭部10と反対側に、つまり、後防護部201の下側に配置される。アンテナ300は、後防護部201から突出しないように後防護部201に沿って延び、これにより、人型ロボット1の転倒時に防護部材200よって防護され得る。
【0031】
本実施の形態では、アンテナ300は、窪むように曲がっている後防護部201の窪みの部分に配置されている。このため、アンテナ300は、窪みの部分の中に収められ、防護部材200に対して頭部10と反対方向において、後防護部201の左右方向の両端よりも突出しないように配置されている。これにより、人型ロボット1の転倒時に防護部材200が地面と衝突した場合でもアンテナ300と地面との衝突が抑えられる。さらに、アンテナ300は、その外周面の周方向での当該外周面の少なくとも一部が後防護部201の凹部201c内に収まるように配置される。これによっても、後防護部201に対するアンテナ300の突出が抑えられる。
【0032】
さらに、アンテナ300は、後方向BDへ後防護部201よりも突出しないように配置されている。これにより、人型ロボット1の転倒時にアンテナ300の先端が地面と衝突することが抑えられる。
【0033】
本実施の形態では、2つのアンテナ300が配置され、これにより、広い受信範囲を得ることができる。各アンテナ300の基部は後防護部201に固定されているが、上胴体部30の骨格フレーム32等に固定されてもよい。各アンテナ300は、後防護部201の上端201aに向かって斜め上方に延び、これにより、高い受信感度を得ることができる。なお、アンテナ300の数量及び延在方向は、上記に限定されず、状況に応じて任意に決定されてもよい。また、防護部材200が骨組部材210で構成され、複数の貫通開口230を有するため、各アンテナ300において上方への高い受信感度が確保される。このようなアンテナ300は、外部装置等から受信した信号を電装ユニット90に送り、電装ユニット90から出力された信号を外部装置等に送信する。
【0034】
<電装ユニットの構成>
図8は、実施の形態に係る電装ユニット90の構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、電装ユニット90は、制御器91、通信器92、撮像制御器93及び駆動制御器94を含む。
【0035】
制御器91は、人型ロボット1の全体を制御する演算器である。例えば、制御器91は、アンテナ300を介して外部装置から受信される指令等及び制御プログラムに従って、人型ロボット1の各駆動装置83のサーボモータ83aの動作を駆動制御器94を介して制御し、それにより、人型ロボット1の各部に所望の動作をさせる。
【0036】
撮像制御器93は、制御器91の指令等に従って、人型ロボット1の頭部10に配置されたカメラ82の動作を制御し、さらに、カメラ82によって撮像された画像を処理する。撮像制御器93は、カメラ82の駆動を制御するための駆動回路を含んでもよい。例えば、撮像制御器93は、カメラ82によって撮像された画像を、人型ロボット1の外部装置に送信する。撮像制御器93は、上記画像を処理することで、当該画像に写し出される被写体の3次元空間内での位置、つまり3次元位置を検出し、制御器91に出力する。制御器91は、被写体の3次元位置に基づき当該被写体に対する処理作業を人型ロボット1に実行させる。
【0037】
制御器91、撮像制御器93及び駆動制御器94は、プロセッサ及びメモリ等で構成されてもよい。メモリは、制御器91、撮像制御器93及び駆動制御器94の制御プログラム及び各種データ等を記憶し、記憶している制御プログラム及びデータ等の読み出しを可能にする。メモリは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリなどの半導体メモリ、ハードディスク(HDD:Hard Disc Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置で構成される。
【0038】
例えば、制御器91、撮像制御器93及び駆動制御器94の各機能は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ及びROM(Read-Only Memory)などの不揮発性メモリ等からなるコンピュータシステム(図示せず)により実現されてもよい。制御器91、撮像制御器93及び駆動制御器94それぞれの機能の一部又は全部は、CPUがRAMをワークエリアとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって実現されてもよい。なお、制御器91、撮像制御器93及び駆動制御器94それぞれの機能の一部又は全部は、上記コンピュータシステムにより実現されてもよく、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路により実現されてもよく、上記コンピュータシステム及びハードウェア回路の組み合わせにより実現されてもよい。
【0039】
通信器92は、アンテナ300と制御器91とを接続し、これらの間で、指令及び情報等を含む信号の送受信を仲介する。通信器92は、アンテナ300を介して外部装置から受信される信号を変換し制御器91に出力し、制御器91から出力される信号を変換しアンテナ300を介して外部装置に送信する。通信器92は、通信回路及びアナログ-デジタル変換回路等を含んでもよい。
【0040】
駆動制御器94は、制御器91の指令に従って、各駆動装置83のサーボモータ83aに蓄電池ユニット81の電力を供給し、当該サーボモータ83aの駆動を制御する。駆動制御器94は、サーボモータ83aに供給する電力を制御するための駆動回路を含んでもよい。
【0041】
<効果等>
実施の形態に係る防護構造100は、人型ロボット1の頭部10と上胴体部30とを連結する首部20の後方に配置される防護部材200と、防護部材200に配置され且つ無線通信するためのアンテナ300とを備える。さらに、防護部材200は、首部20及びアンテナ300を防護するように、上胴体部30の上部から上方に向かって延びる。
【0042】
上記構成によると、防護部材200は、首部20の後方において、上胴体部30の上部から上方に向かって、首部20及びアンテナ300を防護するように延びる。例えば、人型ロボット1が後方に向かって転倒した場合、防護部材200は、上方へ延びていることで首部20と地面との間に介在し、首部20が地面と衝突することを防ぐ。さらに、防護部材200は、首部20及び頭部10を上記のように防護しつつアンテナ300を防護する。
【0043】
また、防護部材200は、首部20及びアンテナ300を防護するように、上胴体部30の上部から上方に且つ後方に向かって延びてもよい。上記構成によると、防護部材200は、首部20の後方において上胴体部30の上部から上方に且つ後方に向かう斜め上方に向かって、首部20及びアンテナ300を防護するように延びる。例えば、人型ロボット1が後方に向かって転倒した場合、防護部材200は、上方へ延びていることで首部20と地面との間に介在して首部20が地面と衝突することを防ぎ、且つ、後方へ突出していることで人型ロボット1が後転し頭部10が地面と衝突することを防ぐことができる。
【0044】
また、防護部材200は、上胴体部30の左右方向に延び且つ後方に向かって斜め上方に延びる板状の外形を有してもよい。上記構成によると、防護部材200は、首部20の全体を防護するように延びる構成を有することができる。よって、防護部材200は、首部20及び頭部10をより確実に防護することができる。
【0045】
また、防護部材200の上記板状の外形は、上胴体部30の左右方向での防護部材200の両端の間の部分が前方に向かって窪むように曲がった形状を有し、アンテナ300は、防護部材200の窪み部分に配置されてもよい。上記構成によると、人型ロボット1が後方に向かって転倒し、防護部材200が地面と衝突した場合、防護部材200の左右方向の両端は地面と衝突するが、上記両端の間の部分及びアンテナ300が地面と接触又は衝突することが抑えられる。よって、アンテナ300が防護される。
【0046】
また、防護部材200は、板状の外形を形成する骨組部材210で構成されてもよい。上記構成によると、アンテナ300は、防護部材200を構成する骨組部材210の貫通開口230を通じて信号を受信することができる。よって、アンテナ300の受信感度の向上が可能になる。
【0047】
また、アンテナ300は、防護部材200に対して頭部10と反対側に配置されてもよい。上記構成によると、アンテナ300と頭部10との物理的な干渉が防がれる。さらに、頭部10が障害物となることによるアンテナ300の受信感度の低下も抑制される。
【0048】
また、アンテナ300は、防護部材200に沿って延びてもよい。上記構成によると、防護部材200からのアンテナ300の突出が抑制される。よって、アンテナ300の破損が低減される。
【0049】
また、アンテナ300は、防護部材200よりも後方へ突出しないように配置されてもよい。上記構成によると、人型ロボット1が後方に向かって転倒し、防護部材200が地面と衝突した場合、アンテナ300の先端が地面と接触又は衝突し破損することが抑えられる。よって、アンテナ300が防護される。
【0050】
また、防護部材200は、上胴体部30に移動不可能に固定されてもよい。上記構成によると、防護部材200は、上胴体部30によって強固に支持され得る。よって、防護部材200の強度が向上し、防護部材200の防護能力が向上する。
【0051】
また、実施の形態に係る人型ロボット1は、防護構造100と、頭部10と、上胴体部30と、頭部10と上胴体部30とを連結する首部20とを備える。上記構成によると、実施の形態に係る防護構造100と同様の効果が得られる。
【0052】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態の例について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば、各種変形を実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0053】
例えば、実施の形態に係る防護構造100において、防護部材200は、人型ロボット1の上胴体部30に移動しないように固定されていたが、これに限定されない。例えば、防護部材200は、上胴体部30に対して移動可能に固定されてもよい。例えば、防護部材200は、首部20による頭部10及び首部20の旋回と連動して首部20の周りを回動するように上胴体部30に固定されてもよい。
【0054】
この場合、例えば、防護部材200は、上胴体部30の上部において首部20の周りに形成された円弧状の溝に嵌め込まれることで、上胴体部30に固定されるように構成されてもよい。さらに、防護部材200は、首部20と共に上記溝に沿って回動するように、ギヤ伝達機構等の機械的接続手段を介して首部20又は頭部10と接続されてもよく、防護部材200を回動させる他の駆動装置と接続されてもよい。又は、防護構造は、防護部材200を回動可能に支持する支持部材を上胴体部30の上部に有してもよい。このような支持部材は、首部20の周囲を回動可能に防護部材200を支持する。例えば、支持部材は、上記の円弧状の溝と同様の円弧状の凹部を有し、当該凹部に嵌め込まれた防護部材200を支持してもよい。この場合も、防護部材200は、機械的接続手段を介して首部20又は頭部10と接続されてもよく、防護部材200を回動させる他の駆動装置と接続されてもよい。上記構成によると、防護部材200の後防護部201は、旋回する頭部10及び首部20に対して常にこれらの背部を防護することができる。
【0055】
また、実施の形態に係る防護構造100において、防護部材200の後防護部201は、その左右方向での両端の間の部分が前方向FDに向かって窪むように湾曲していたが、これに限定されない。例えば、後防護部201は、その左右方向での両端の間の部分が前方向FDに向かって窪むように曲がった形状を有していてもよい。例えば、後防護部201の形状は、屈曲を含む曲がった形状であってもよく、アンテナ300の少なくとも一部が収まる凹部を含む形状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 人型ロボット
10 頭部
20 首部
30 上胴体部
100 防護構造
200 防護部材
210 骨組部材
300 アンテナ