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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】軌道走行式ジブクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20231031BHJP
   B66C 23/78 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B66C23/88 C
B66C23/78 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019168279
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021046270
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 宏明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 宗典
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-114291(JP,U)
【文献】特開昭59-172391(JP,A)
【文献】実開平01-106492(JP,U)
【文献】特開2017-095237(JP,A)
【文献】特開2011-152994(JP,A)
【文献】実開昭63-126391(JP,U)
【文献】米国特許第04200162(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B66C 23/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行敷設されたレールに沿って走行自在な走行体と、
該走行体から立設された柱状構造体と、
該柱状構造体の上端に旋回自在に配設された旋回体と、
該旋回体に起伏自在に設けられたジブと、
前記レールと交差する面内における転倒モーメントを支持する支持機構と
を備えた軌道走行式ジブクレーンであって、
前記支持機構は、前記走行体のレールスパン方向一方の側に配設される圧縮支持具と、前記走行体のレールスパン方向他方の側に配設される引張支持具とを備えており、
前記圧縮支持具は、地上に設置されるジャッキと、該ジャッキに係合するよう前記走行体のレールスパン方向一方の側から張り出す圧縮支持ブラケットとを備え、
前記引張支持具は、一端が地上に連結される引張支持部材と、該引張支持部材の他端が連結されるよう前記走行体のレールスパン方向他方の側から張り出す引張支持ブラケットとを備えた軌道走行式ジブクレーン
【請求項2】
前記圧縮支持ブラケットは、前記ジャッキに係合する展開位置と、前記走行体側に折り畳まれる格納位置との間で回動自在に配設され、
前記引張支持ブラケットは、前記引張支持部材の他端が連結される展開位置と、前記走行体側に折り畳まれる格納位置との間で回動自在に配設される請求項記載の軌道走行式ジブクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道走行式ジブクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶を建造するドックには、軌道走行式ジブクレーンが配備されている。
【0003】
前記軌道走行式ジブクレーンは、岸壁に平行敷設されたレールに沿って走行体を走行自在に配設し、該走行体からポスト又はマスト等の柱状構造体を立設し、該柱状構造体の上端に旋回体を旋回自在に配設し、該旋回体にジブを起伏自在に設けてなる構成を有している。
【0004】
尚、前記軌道走行式ジブクレーンと関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-95237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記軌道走行式ジブクレーンの最大車輪圧は、ジブを倒伏させた際の旋回中心を基準とする距離(アウトリーチ)と、軌道走行式ジブクレーンの自重及び吊荷の重量を含む最大荷重とで決まる。
【0007】
従来、作業上、吊荷をより遠くへ運びたいといった要求から前記アウトリーチを長くする必要が生じた場合、前記最大車輪圧に耐えるために、軌道走行式ジブクレーンが設置されているレールの全長に亘り、基礎を増強することが行われていた。
【0008】
しかしながら、前記軌道走行式ジブクレーンの走行範囲全長に亘って長いアウトリーチが必要となることはごく稀であるため、レールの全長に亘って基礎を増強するのでは、無駄が多く、費用も膨大となり、好ましい対応であるとは言えなかった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、アウトリーチ延長要求に局部的な基礎増強で対応し得、費用の増大を最小限に抑え得る軌道走行式ジブクレーンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、平行敷設されたレールに沿って走行自在な走行体と、
該走行体から立設された柱状構造体と、
該柱状構造体の上端に旋回自在に配設された旋回体と、
該旋回体に起伏自在に設けられたジブと、
前記レールと交差する面内における転倒モーメントを支持する支持機構と
を備えた軌道走行式ジブクレーンであって、
前記支持機構は、前記走行体のレールスパン方向一方の側に配設される圧縮支持具と、前記走行体のレールスパン方向他方の側に配設される引張支持具とを備えており、
前記圧縮支持具は、地上に設置されるジャッキと、該ジャッキに係合するよう前記走行体のレールスパン方向一方の側から張り出す圧縮支持ブラケットとを備え、
前記引張支持具は、一端が地上に連結される引張支持部材と、該引張支持部材の他端が連結されるよう前記走行体のレールスパン方向他方の側から張り出す引張支持ブラケットとを備えたものである。
【0013】
前記圧縮支持ブラケットは、前記ジャッキに係合する展開位置と、前記走行体側に折り畳まれる格納位置との間で回動自在に配設され、
前記引張支持ブラケットは、前記引張支持部材の他端が連結される展開位置と、前記走行体側に折り畳まれる格納位置との間で回動自在に配設されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の軌道走行式ジブクレーンによれば、アウトリーチ延長要求に局部的な基礎増強で対応し得、費用の増大を最小限に抑え得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の軌道走行式ジブクレーンの実施例を示す要部拡大正面図である。
図2】本発明の軌道走行式ジブクレーンの実施例を示す平面図である。
図3図1のIII-III矢視図である。
図4図1のIV-IV矢視図である。
図5】軌道走行式ジブクレーンの一例を示す全体概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1図4は本発明の軌道走行式ジブクレーンの実施例である。
【0018】
先ず、本発明が適用される軌道走行式ジブクレーンについて説明すると、該軌道走行式ジブクレーンは、図5に示す如く、走行体10と、柱状構造体20と、旋回体30と、ジブ40とを備えている。
【0019】
前記走行体10は、門形架台11と、上部イコライザビーム12と、中間部イコライザビーム13と、下部イコライザビーム14と、走行車輪15とを備えている。
【0020】
前記門形架台11は、レールスパンSで平行敷設されるレール50の上方に、門形となるよう配設される構造体である。
【0021】
前記上部イコライザビーム12は、前記門形架台11の底面側に、走行方向と直角な水平方向へ延びるロッカーピン12aにより中間部が支持されて揺動自在に配設されている。前記中間部イコライザビーム13は、前記上部イコライザビーム12の走行方向一端部に走行方向と直角な水平方向へ延びるロッカーピン13aにより中間部が支持されて揺動自在に配設されている。前記下部イコライザビーム14は、前記中間部イコライザビーム13の走行方向両端部に走行方向と直角な水平方向へ延びるロッカーピン14aにより中間部が支持されて揺動自在に配設されている。尚、図5に示す例では、前記上部イコライザビーム12の走行方向他端部には、下部イコライザビーム14が中間部イコライザビーム13を介さずに直接、ロッカーピン14aにより揺動自在に配設されている。
【0022】
前記走行車輪15は、前記下部イコライザビーム14の走行方向両端部にレール50に沿って転動自在となるよう配設されている。
【0023】
前記柱状構造体20は、円形断面を有するポスト又は矩形断面を有するトラス構造のマストであって、前記走行体10の門形架台11から立設されている。
【0024】
前記旋回体30は、前記柱状構造体20の上端に旋回自在に配設されている。
【0025】
前記ジブ40は、前記旋回体30に起伏自在に設けられている。
【0026】
そして、本実施例の場合、図1図4に示す如く、前記レール50と交差する面内における転倒モーメントを支持する支持機構60を備えた点を特徴としている。
【0027】
前記支持機構60は、圧縮支持具70と、引張支持具80とを備えている。
【0028】
前記圧縮支持具70は、図1図2及び図3に示す如く、前記走行体10のレールスパンS方向一方の側に配設されている。因みに、前記走行体10のレールスパンS方向一方の側とは、アウトリーチを長くする側である。前記圧縮支持具70は、地上に設置されるジャッキ71と、該ジャッキ71に係合するよう前記走行体10のレールスパンS方向一方の側から張り出す圧縮支持ブラケット72とを備えている。尚、前記ジャッキ71は、地上から立設された支持架台71aの上に設置され、該支持架台71aが立設される部分の基礎は増強されている。前記圧縮支持ブラケット72は、図2に示す如く、前記ジャッキ71に係合する展開位置X1と、前記走行体10側に折り畳まれる格納位置Y1との間でヒンジ72aにより回動自在に配設されている。前記門形架台11の側面には、ロックブラケット72bが突設され、該ロックブラケット72bに係合する溝72cが前記圧縮支持ブラケット72に形成されている。前記圧縮支持ブラケット72は、展開位置X1において前記溝72cをロックブラケット72bに係合させた状態で、ロックピン72dを圧縮支持ブラケット72からロックブラケット72bに貫通させるように挿入することにより、固定されるようになっている。但し、前記圧縮支持ブラケット72は、通常運転時に邪魔にならなければ、回動自在とせず展開位置X1に常時固定とすることもできる。又、前記ジャッキ71は、地上側に設置する代わりに、走行体10側に設けることもできる。
【0029】
前記引張支持具80は、図1図2及び図4に示す如く、前記走行体10のレールスパンS方向他方の側に配設されている。前記引張支持具80は、一端が地上に連結される引張支持部材81と、該引張支持部材81の他端が連結されるよう前記走行体10のレールスパンS方向他方の側から張り出す引張支持ブラケット82とを備えている。尚、前記引張支持部材81が連結される部分の基礎は増強されている。前記引張支持ブラケット82は、図2に示す如く、前記引張支持部材81の他端が連結される展開位置X2と、前記走行体10側に折り畳まれる格納位置Y2との間でヒンジ82aにより回動自在に配設されている。前記門形架台11の側面には、ロックブラケット82bが突設され、該ロックブラケット82bに係合する溝82cが前記引張支持ブラケット82に形成されている。前記引張支持ブラケット82は、展開位置X2において前記溝82cをロックブラケット82bに係合させた状態で、ロックピン82dを引張支持ブラケット82からロックブラケット82bに貫通させるように挿入することにより、固定されるようになっている。但し、前記引張支持ブラケット82は、通常運転時に邪魔にならなければ、回動自在とせず展開位置X2に常時固定とすることもできる。
【0030】
尚、本実施例において、図示は省略しているが、走行体10の走行位置検出器、ジャッキ71の荷重検出器、引張支持部材81の荷重検出器、ジブ40の起伏角度検出器、転倒モーメント検出器、並びに各種リミットスイッチが装備され、各検出器における検出値が設定値を超えたり、或いはリミットスイッチが作動したりした際には、警報を鳴らしたり、運転を強制的に停止させたりすることが行われるようになっている。
【0031】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0032】
軌道走行式ジブクレーンの運転時、アウトリーチを長くする必要が生じた際には、支持機構60の圧縮支持具70及び引張支持具80が走行体10にセットされる。
【0033】
前記圧縮支持具70は、前記走行体10のレールスパンS方向一方の側(アウトリーチを長くする側)に配設される。より詳細には、前記圧縮支持具70のジャッキ71は、地上から立設された支持架台71aの上に設置される。前記圧縮支持具70の圧縮支持ブラケット72は、図2に示す如く、前記走行体10側に折り畳まれる格納位置Y1から前記ジャッキ71に係合する展開位置X1に張り出される。前記圧縮支持ブラケット72は、展開位置X1において溝72cがロックブラケット72bに係合した状態で、ロックピン72dが圧縮支持ブラケット72からロックブラケット72bに貫通するように挿入されることにより、固定される。
【0034】
一方、前記引張支持具80は、前記走行体10のレールスパンS方向他方の側に配設される。より詳細には、前記引張支持具80の引張支持ブラケット82は、図2に示す如く、前記走行体10側に折り畳まれる格納位置Y2から展開位置X2に張り出される。前記引張支持ブラケット82は、展開位置X2において溝82cがロックブラケット82bに係合した状態で、ロックピン82dが引張支持ブラケット82からロックブラケット82bに貫通するように挿入されることにより、固定され、前記引張支持部材81の他端が連結される。
【0035】
これにより、アウトリーチを長くして作業を行う際、ジブ40の先端から吊り下げられる吊荷によって走行体10の門形架台11に作用する転倒モーメントは、前記圧縮支持具70の圧縮支持ブラケット72からジャッキ71へ伝達され圧縮荷重として支持されると共に、前記引張支持具80の引張支持ブラケット82から引張支持部材81へ伝達され引張荷重として支持される。
【0036】
ここで、前記ジャッキ71の支持架台71aが立設される部分の基礎は増強され、前記引張支持部材81が連結される部分の基礎は増強されているため、圧縮荷重と引張荷重の支持に関して支障を来たすことはない。
【0037】
この結果、作業上、吊荷をより遠くへ運びたいといった要求から前記アウトリーチを長くする必要が生じた場合でも、レール50の全長に亘って基礎を増強しなくて済み、無駄が少なく、費用も膨大とならず、好ましい対応となる。
【0038】
又、前記アウトリーチを長くする必要のない通常運転時、前記圧縮支持ブラケット72を、図2中、実線で示す展開位置X1から仮想線で示す格納位置Y1に折り畳むと共に、前記引張支持ブラケット82を、図2中、実線で示す展開位置X2から仮想線で示す格納位置Y2に折り畳んでおけば、レール50の周辺の他の機器等との干渉を避けることが可能となり、作業性が低下する心配もない。
【0039】
こうして、アウトリーチ延長要求に局部的な基礎増強で対応し得、費用の増大を最小限に抑え得る。
【0040】
そして、本実施例の場合、前記支持機構60は、前記走行体10のレールスパンS方向一方の側に配設される圧縮支持具70と、前記走行体10のレールスパンS方向他方の側に配設される引張支持具80とを備えている。このように構成すると、ジブ40の先端から吊り下げられる吊荷によって走行体10の門形架台11に作用する転倒モーメントを、前記圧縮支持具70により安定して支持することができると共に、前記引張支持具80により安定して支持することができる。
【0041】
又、前記圧縮支持具70は、地上に設置されるジャッキ71と、該ジャッキ71に係合するよう前記走行体10のレールスパンS方向一方の側から張り出す圧縮支持ブラケット72とを備え、前記引張支持具80は、一端が地上に連結される引張支持部材81と、該引張支持部材81の他端が連結されるよう前記走行体10のレールスパンS方向他方の側から張り出す引張支持ブラケット82とを備えている。このように構成すると、前記ジャッキ71が設置される部分の基礎と、前記引張支持部材81が連結される部分の基礎とを増強するだけで、圧縮荷重と引張荷重の支持に関して信頼性を高めることができる。
【0042】
更に又、前記圧縮支持ブラケット72は、前記ジャッキ71に係合する展開位置X1と、前記走行体10側に折り畳まれる格納位置Y1との間で回動自在に配設され、前記引張支持ブラケット82は、前記引張支持部材81の他端が連結される展開位置X2と、前記走行体10側に折り畳まれる格納位置Y2との間で回動自在に配設される。このように構成すると、アウトリーチを長くする必要のない通常運転時には、前記圧縮支持ブラケット72を展開位置X1から格納位置Y1に折り畳むことができると共に、前記引張支持ブラケット82を展開位置X2から格納位置Y2に折り畳むことができ、作業性を高める上で有効となる。
【0043】
尚、本発明の軌道走行式ジブクレーンは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
10 走行体
11 門形架台
12 上部イコライザビーム
12a ロッカーピン
13 中間部イコライザビーム
13a ロッカーピン
14 下部イコライザビーム
14a ロッカーピン
15 走行車輪
20 柱状構造体
30 旋回体
40 ジブ
50 レール
60 支持機構
70 圧縮支持具
71 ジャッキ
71a 支持架台
72 圧縮支持ブラケット
72a ヒンジ
72b ロックブラケット
72c 溝
72d ロックピン
80 引張支持具
81 引張支持部材
82 引張支持ブラケット
82a ヒンジ
82b ロックブラケット
82c 溝
82d ロックピン
S レールスパン
X1 展開位置
Y1 格納位置
X2 展開位置
Y2 格納位置
図1
図2
図3
図4
図5