(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】熱処理装置、熱処理システムおよび熱処理方法
(51)【国際特許分類】
F27D 19/00 20060101AFI20231031BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20231031BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F27D19/00 A
F27B17/00 B
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2019172443
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】林 恵
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-033178(JP,A)
【文献】特開2002-334844(JP,A)
【文献】特開2006-093572(JP,A)
【文献】特開2008-198699(JP,A)
【文献】特開2020-181948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00 -99/00
F27B 17/00 -19/04
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板に
順次熱処理を行う熱処理装置であって、
前記複数の基板が
順次載置されるプレート部材と、
前記プレート部材上に載置された基板に前記プレート部材を通して熱処理を行う熱処理部と、
前記プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間における前記プレート部材の仮想的な温度変化を示す複数の候補波形を記憶するとともに、前記複数の候補波形にそれぞれ対応する前記熱処理部の複数の動作条件を記憶する第1の記憶部と、
前記プレート部材の温度を検出する温度検出器と、
前記第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形を基準波形として決定する決定部と、
前記第1の記憶部に記憶された複数の動作条件のうち前記基準波形として決定された前記一の候補波形に対応する動作条件に従って前記熱処理部を動作させる動作制御部と、
基板が前記プレート部材上に載置されるごとに、前記一の候補波形に対応する動作条件に従って前記熱処理部が動作する際に前記温度検出器により検出された温度の変化が前記基準波形に近づくように、前記第1の記憶部に記憶された前記一の候補波形に対応する動作条件を変更する条件変更部とを備える、熱処理装置。
【請求項2】
前記第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形を選択するために使用者により操作される操作部をさらに備え、
前記決定部は、使用者による前記操作部の操作に応答して前記第1の記憶部に記憶された前記複数の候補波形から前記操作部により選択された一の候補波形を前記基準波形として決定する、請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記複数の候補波形のうち少なくとも一部を選択可能に表示部に表示させる表示制御部をさらに備える、請求項2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記第1の記憶部に記憶される複数の候補波形は、複数の温度領域にそれぞれ対応する複数の候補波形群を含み、
前記決定部は、基板に熱処理を行うための温度を設定温度として決定可能に構成され、
前記表示制御部は、前記決定部により前記設定温度が決定された場合に、決定された処理温度が属する温度領域に対応する候補波形群の複数の候補波形を選択可能に前記表示部に表示させる、請求項3記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記第1の記憶部に記憶された複数の動作条件の各々は、一または複数の制御パラメータの値を含み、
前記条件変更部は、前記検出された温度の変化が前記基準波形に近づくように、前記第1の記憶部に記憶された前記一の候補波形に対応する動作条件の一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の熱処理装置と、
前記熱処理装置により熱処理が行われた基板に関する処理情報を取得する情報取得部と、
前記処理情報と前記複数の候補波形との間の予め定められた対応関係を記憶する第2の記憶部と、
前記情報取得部により取得された処理情報と前記第2の記憶部に記憶された前記対応関係とに基づいて、前記情報取得部により取得された処理情報に対応する候補波形が基準波形となるように基準波形を更新する波形更新部とを備える、熱処理システム。
【請求項7】
複数の基板に
順次熱処理を行う熱処理方法であって、
プレート部材上に
前記複数の基板を
順次載置するステップと、
前記載置された基板に前記プレート部材を通して熱処理部による熱処理を行うステップと、
前記プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間における前記プレート部材の仮想的な温度変化を示す複数の候補波形を記憶するとともに、前記複数の候補波形にそれぞれ対応する前記熱処理部の複数の動作条件を第1の記憶部に記憶するステップと、
前記プレート部材の温度を温度検出器により検出するステップと、
前記第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形を基準波形として決定するステップと、
前記第1の記憶部に記憶された複数の動作条件のうち前記基準波形として決定された前記一の候補波形に対応する動作条件に従って前記熱処理部を動作させるステップと、
基板が前記プレート部材上に載置されるごとに、前記一の候補波形に対応する動作条件に従って前記熱処理部が動作する際に前記温度検出器により検出された温度の変化が前記基準波形に近づくように、前記第1の記憶部に記憶された前記一の候補波形に対応する動作条件を変更するステップとを含む、熱処理方法。
【請求項8】
前記一の候補波形を基準波形として決定するステップは、使用者による操作部の操作に応答して前記第1の記憶部に記憶された前記複数の候補波形から前記操作部により選択された一の候補波形を前記基準波形として決定することを含む、請求項7記載の熱処理方法。
【請求項9】
前記複数の候補波形のうち少なくとも一部を選択可能に表示部に表示させるステップをさらに含む、請求項8記載の熱処理方法。
【請求項10】
前記第1の記憶部に記憶される複数の候補波形は、複数の温度領域にそれぞれ対応する複数の候補波形群を含み、
前記熱処理方法は、
基板に熱処理を行うための温度を設定温度として決定するステップをさらに含み、
前記複数の候補波形のうち少なくとも一部を選択可能に表示部に表示させるステップは、前記設定温度が決定された場合に、決定された処理温度が属する温度領域に対応する候補波形群の複数の候補波形を選択可能に前記表示部に表示させることを含む、請求項9記載の熱処理方法。
【請求項11】
前記第1の記憶部に記憶された複数の動作条件の各々は、一または複数の制御パラメータの値を含み、
前記一の候補波形に対応する動作条件を変更するステップは、前記検出された温度の変化が前記基準波形に近づくように、前記第1の記憶部に記憶された前記一の候補波形に対応する動作条件の一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更することを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の熱処理方法。
【請求項12】
前記熱処理が行われた基板に関する処理情報を取得するステップと、
処理情報と前記複数の候補波形との間の予め定められた対応関係を第2の記憶部に記憶するステップと、
前記取得するステップにより取得された処理情報と前記第2の記憶部に記憶された前記対応関係とに基づいて、前記取得された処理情報に対応する候補波形が基準波形となるように基準波形を更新するステップとをさらに含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に熱処理を行う熱処理装置、熱処理システムおよび熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板に熱処理を行うために、熱処理装置が用いられている。
【0003】
熱処理装置においては、例えば予め設定された温度(以下、設定温度と呼ぶ。)に保持されたプレート部材上で基板が支持されることにより、その基板に熱処理が行われる。設定温度は、基板に対する処理の内容に応じて変更される。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された温度変更システムにおいては、ベークプレート部(プレート部材)に含まれるヒータ層の駆動状態が調整されることにより、当該ベークプレート部の温度を上昇または下降させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、設定温度に保持されたプレート部材に未処理の基板が載置されると、プレート部材の温度は基板の温度の影響を受けて変化する。そのため、プレート部材上に基板が載置される際には、プレート部材の温度を適切に設定温度へ戻すことが望ましい。
【0007】
未処理の基板が載置される際のプレート部材の温度変化はある程度の予測が可能である。そのため、通常、熱処理装置においては、基板がプレート部材上に載置された後、プレート部材の温度を設定温度へ戻すための動作条件が予め定められている。しかしながら、熱処理装置が設けられる空間の温度または熱処理装置の個体差等によっては、予め定められた動作条件に従って熱処理装置を動作させても、プレート部材の温度を設定温度へ適切に戻すことが困難な場合がある。この場合、高い精度で基板の熱処理を行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、基板の熱処理を適切かつ高い精度で行うことを可能にする熱処理装置、熱処理システムおよび熱処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る熱処理装置は、複数の基板に順次熱処理を行う熱処理装置であって、複数の基板が順次載置されるプレート部材と、プレート部材上に載置された基板にプレート部材を通して熱処理を行う熱処理部と、プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間におけるプレート部材の仮想的な温度変化を示す複数の候補波形を記憶するとともに、複数の候補波形にそれぞれ対応する熱処理部の複数の動作条件を記憶する第1の記憶部と、プレート部材の温度を検出する温度検出器と、第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形を基準波形として決定する決定部と、第1の記憶部に記憶された複数の動作条件のうち基準波形として決定された一の候補波形に対応する動作条件に従って熱処理部を動作させる動作制御部と、基板がプレート部材上に載置されるごとに、一の候補波形に対応する動作条件に従って熱処理部が動作する際に温度検出器により検出された温度の変化が基準波形に近づくように、第1の記憶部に記憶された一の候補波形に対応する動作条件を変更する条件変更部とを備える。
【0010】
その熱処理装置においては、プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間におけるプレート部材の仮想的な温度変化を示す複数の候補波形が第1の記憶部に記憶される。また、複数の候補波形にそれぞれ対応する熱処理部の複数の動作条件が第1の記憶部に記憶される。第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形が基準波形として決定される。
【0011】
その後、プレート部材上に基板が載置され、載置された基板に熱処理が行われる。この熱処理の初期には、プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間、基準波形として決定された一の候補波形に対応する動作条件に従って熱処理部が動作する。また、プレート部材の温度の変化が検出される。検出された温度の変化が基準波形に近づくように第1の記憶部に記憶された一の候補波形に対応する動作条件が変更される。
【0012】
これにより、複数の基板が順次熱処理される場合、各熱処理の初期には前回の熱処理時に変更された動作条件に従って熱処理部が動作する。それにより、プレート部材上に基板が載置された直後のプレート部材の温度変化が前回の熱処理時に比べて基準波形に近づく。
【0013】
このように、プレート部材上に基板が載置された直後のプレート部材の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板が載置された直後のプレート部材の温度が、その基板の熱処理を行うための適切な温度に迅速に調整される。
【0014】
また、上記の構成によれば、熱処理装置の周辺の温度が変化する場合でも、その温度変化に応じて動作条件が変更されることになる。したがって、熱処理装置の周囲の温度変化の影響を受けることなく、基板の熱処理が適切に行われる。
【0015】
さらに、上記の構成によれば、複数の候補波形のうち一の候補波形が、プレート部材上に基板が載置された直後のプレート部材の適切な温度変化を示す基準波形として決定される。これらの結果、基板の熱処理を適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【0016】
(2)熱処理装置は、第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形を選択するために使用者により操作される操作部をさらに備え、決定部は、使用者による操作部の操作に応答して第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から操作部により選択された一の候補波形を基準波形として決定してもよい。
【0017】
この場合、使用者は、操作部を用いて複数の候補波形から一の候補波形を基準波形として容易に決定することができる。
【0018】
(3)熱処理装置は、複数の候補波形のうち少なくとも一部を選択可能に表示部に表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、使用者は、表示部に表示される少なくとも一部の候補波形を確認しつつ、一の候補波形を基準波形として容易に決定することができる。
【0020】
(4)第1の記憶部に記憶される複数の候補波形は、複数の温度領域にそれぞれ対応する複数の候補波形群を含み、決定部は、基板に熱処理を行うための温度を設定温度として決定可能に構成され、表示制御部は、決定部により設定温度が決定された場合に、決定された処理温度が属する温度領域に対応する候補波形群の複数の候補波形を選択可能に表示部に表示させてもよい。
【0021】
この場合、使用者は、設定温度に応じて選択可能な候補波形を容易に把握することができる。したがって、適切でない候補波形が基準波形として決定されることが防止される。
【0022】
(5)第1の記憶部に記憶された複数の動作条件の各々は、一または複数の制御パラメータの値を含み、条件変更部は、検出された温度の変化が基準波形に近づくように、第1の記憶部に記憶された一の候補波形に対応する動作条件の一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更してもよい。
【0023】
この場合、一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する簡単な処理で、基板が載置された直後のプレート部材の温度を適切に調整することができる。
【0024】
(6)第2の発明に係る熱処理システムは、第1の発明に係る熱処理装置と、熱処理装置により熱処理が行われた基板に関する処理情報を取得する情報取得部と、処理情報と複数の候補波形との間の予め定められた対応関係を記憶する第2の記憶部と、情報取得部により取得された処理情報と第2の記憶部に記憶された対応関係とに基づいて、情報取得部により取得された処理情報に対応する候補波形が基準波形となるように基準波形を更新する波形更新部とを備える。
【0025】
その熱処理システムによれば、取得された処理情報に応じて基準波形が更新される。それにより、熱処理装置による基板の熱処理をより適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【0026】
(7)第3の発明に係る熱処理方法は、複数の基板に順次熱処理を行う熱処理方法であって、プレート部材上に複数の基板を順次載置するステップと、載置された基板にプレート部材を通して熱処理部による熱処理を行うステップと、プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間におけるプレート部材の仮想的な温度変化を示す複数の候補波形を記憶するとともに、複数の候補波形にそれぞれ対応する熱処理部の複数の動作条件を第1の記憶部に記憶するステップと、プレート部材の温度を温度検出器により検出するステップと、第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形を基準波形として決定するステップと、第1の記憶部に記憶された複数の動作条件のうち基準波形として決定された一の候補波形に対応する動作条件に従って熱処理部を動作させるステップと、基板がプレート部材上に載置されるごとに、一の候補波形に対応する動作条件に従って熱処理部が動作する際に温度検出器により検出された温度の変化が基準波形に近づくように、第1の記憶部に記憶された一の候補波形に対応する動作条件を変更するステップとを含む。
【0027】
その熱処理方法においては、プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間におけるプレート部材の仮想的な温度変化を示す複数の候補波形が第1の記憶部に記憶される。また、複数の候補波形にそれぞれ対応する熱処理部の複数の動作条件が第1の記憶部に記憶される。第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から一の候補波形が基準波形として決定される。
【0028】
その後、プレート部材上に基板が載置され、載置された基板に熱処理が行われる。この熱処理の初期には、プレート部材上に基板が載置された時点から一定期間、基準波形として決定された一の候補波形に対応する動作条件に従って熱処理部が動作する。また、プレート部材の温度の変化が検出される。検出された温度の変化が基準波形に近づくように第1の記憶部に記憶された一の候補波形に対応する動作条件が変更される。
【0029】
これにより、複数の基板が順次熱処理される場合、各熱処理の初期には前回の熱処理時に変更された動作条件に従って熱処理部が動作する。それにより、プレート部材上に基板が載置された直後のプレート部材の温度変化が前回の熱処理時に比べて基準波形に近づく。
【0030】
このように、プレート部材上に基板が載置された直後のプレート部材の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板が載置された直後のプレート部材の温度が、その基板の熱処理を行うための適切な温度に迅速に調整される。
【0031】
また、上記の構成によれば、熱処理装置の周辺の温度が変化する場合でも、その温度変化に応じて動作条件が変更されることになる。したがって、熱処理装置の周囲の温度変化の影響を受けることなく、基板の熱処理が適切に行われる。
【0032】
さらに、上記の構成によれば、複数の候補波形のうち一の候補波形が、プレート部材上に基板が載置された直後のプレート部材の適切な温度変化を示す基準波形として決定される。これらの結果、基板の熱処理を適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【0033】
(8)一の候補波形を基準波形として決定するステップは、使用者による操作部の操作に応答して第1の記憶部に記憶された複数の候補波形から操作部により選択された一の候補波形を基準波形として決定することを含んでもよい。
【0034】
この場合、操作部を用いて複数の候補波形から一の候補波形を基準波形として容易に決定することができる。
【0035】
(9)熱処理方法は、複数の候補波形のうち少なくとも一部を選択可能に表示部に表示させるステップをさらに含んでもよい。
【0036】
この場合、表示部に表示される少なくとも一部の候補波形を確認しつつ、一の候補波形を基準波形として容易に決定することができる。
【0037】
(10)第1の記憶部に記憶される複数の候補波形は、複数の温度領域にそれぞれ対応する複数の候補波形群を含み、熱処理方法は、基板に熱処理を行うための温度を設定温度として決定するステップをさらに含み、複数の候補波形のうち少なくとも一部を選択可能に表示部に表示させるステップは、設定温度が決定された場合に、決定された処理温度が属する温度領域に対応する候補波形群の複数の候補波形を選択可能に表示部に表示させることを含んでもよい。
【0038】
この場合、設定温度に応じて選択可能な候補波形を容易に把握することができる。したがって、適切でない候補波形が基準波形として決定されることが防止される。
【0039】
(11)第1の記憶部に記憶された複数の動作条件の各々は、一または複数の制御パラメータの値を含み、一の候補波形に対応する動作条件を変更するステップは、検出された温度の変化が基準波形に近づくように、第1の記憶部に記憶された一の候補波形に対応する動作条件の一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更することを含んでもよい。
【0040】
この場合、一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する簡単な処理で、基板が載置された直後のプレート部材の温度を適切に調整することができる。
【0041】
(12)熱処理方法は、熱処理が行われた基板に関する処理情報を取得するステップと、処理情報と複数の候補波形との間の予め定められた対応関係を第2の記憶部に記憶するステップと、取得するステップにより取得された処理情報と第2の記憶部に記憶された対応関係とに基づいて、取得された処理情報に対応する候補波形が基準波形となるように基準波形を更新するステップとをさらに含んでもよい。
【0042】
この場合、取得された処理情報に応じて基準波形が更新される。それにより、熱処理装置による基板の熱処理をより適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、基板の熱処理を適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】第1の実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。
【
図2】複数の基板について順次加熱処理が行われる場合の熱処理プレートの温度変化の一例を示す図である。
【
図3】
図1の記憶部に記憶される複数の候補波形の一例を示す図である。
【
図4】
図3の複数の候補波形にそれぞれ対応する複数の初期動作条件の一例を示す図である。
【
図5】
図1の表示部に表示される処理レシピの設定画面の一例を示す図である。
【
図6】
図1の表示部に表示される処理レシピの設定画面の一例を示す図である。
【
図7】初期動作条件の具体的な変更例を説明するための図である。
【
図8】温度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】温度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図1の熱処理装置を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る熱処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】
図11の記憶部に記憶される線幅波形テーブルの一例を示す図である。
【
図13】
図11の波形更新部により行われる一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[1]第1の実施の形態
以下、第1の実施の形態に係る熱処理装置および熱処理方法について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。以下の説明においては、熱処理装置の一例として基板に加熱処理を行う熱処理装置を説明する。
【0046】
(1)熱処理装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。
図1に示すように、熱処理装置100は、熱処理プレート10、能動冷却プレート20、受動冷却プレート30、昇降装置40、制御装置50、操作部61および表示部62を含む。
【0047】
熱処理プレート10は、扁平な円柱形状を有する金属製の伝熱プレートであり、平坦な上面および下面を有する。熱処理プレート10の上面は、加熱処理の対象となる基板Wを載置可能に構成され、その基板Wの外径よりも大きい外径を有する。熱処理プレート10の上面には、基板Wの下面を支持する複数のプロキシミティボール等が設けられている。
図1では、熱処理プレート10上に載置される基板Wが一点鎖線で示される。
【0048】
熱処理プレート10には、ヒータ11および温度センサ19が設けられている。温度センサ19は、熱処理プレート10の上面の温度を検出し、検出した温度に対応する検出信号を後述する温度取得部55へ出力する。
【0049】
ヒータ11は、例えばマイカヒータまたはペルチェ素子等で構成される。ヒータ11には、発熱駆動部13が接続されている。発熱駆動部13は、例えば熱処理プレート10の温度が基板Wの加熱処理を行うための予め設定された温度(設定温度)で保持されるようにヒータ11を駆動する。また、発熱駆動部13は、例えば熱処理プレート10の温度が上昇または下降するようにヒータ11を駆動する。
【0050】
能動冷却プレート20は、熱処理プレート10よりも下方の位置で、熱処理プレート10の下面から所定距離、離れるように配置されている。能動冷却プレート20は、熱処理プレート10に向く上面を有する。能動冷却プレート20の上面には、高い熱伝導率を有する熱伝導シート(図示せず)が設けられている。
【0051】
能動冷却プレート20には、冷却機構21が設けられている。冷却機構21は、例えば能動冷却プレート20内に形成される冷却水通路またはペルチェ素子等で構成される。冷却機構21には、冷却駆動部22が接続されている。冷却駆動部22は、能動冷却プレート20の上面の温度が熱処理プレート10の温度よりも低くなるように冷却機構21を駆動する。
【0052】
受動冷却プレート30は、熱処理プレート10と能動冷却プレート20との間の空間で、昇降装置40により昇降可能に支持されている(
図1の白抜きの矢印参照)。受動冷却プレート30は、金属製の円板状部材であり、上面および下面を有する。受動冷却プレート30の上面は熱処理プレート10の下面に対向し、受動冷却プレート30の下面は能動冷却プレート20の上面に対向する。受動冷却プレート30の上面には、高い熱伝導率を有する熱伝導シート(図示せず)が設けられている。
【0053】
昇降装置40は、例えばエアシリンダで構成される。昇降装置40には、昇降駆動部41が接続されている。昇降駆動部41は、例えば受動冷却プレート30が能動冷却プレート20に接するように昇降装置40を駆動する。この場合、受動冷却プレート30が能動冷却プレート20により冷却される。また、昇降駆動部41は、例えば受動冷却プレート30が熱処理プレート10に接するように昇降装置40を駆動する。この場合、熱処理プレート10が受動冷却プレート30により冷却される。
【0054】
制御装置50は、熱処理装置100の各構成要素の動作を制御する。制御装置50の詳細は後述する。なお、上記の熱処理装置100には、熱処理プレート10と熱処理装置100の外部装置(例えば後述する
図10の基板搬送装置450)との間で基板Wの受渡を行うための受け渡し機構(図示せず)がさらに設けられている。
【0055】
表示部62は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。表示部62は、使用者が基板Wの加熱処理の処理条件を処理レシピとして設定するための設定画面を表示する。設定画面の詳細は後述する。
【0056】
操作部61は、例えば表示部62に一体的に設けられるタッチパネルであり、表示部62に表示される設定画面において処理レシピの内容を入力することが可能に構成される。また、操作部61は、設定画面に表示される複数の項目(後述する複数の候補波形)のうちいずれかを選択することが可能に構成される。なお、操作部61は、タッチパネルに代えて、またはタッチパネルに加えて、キーボードおよびマウス等を含んでもよい。
【0057】
(2)熱処理装置100における複数の基板Wの加熱処理
図1の熱処理装置100においては、複数の基板Wがそれぞれの加熱処理の内容に応じた設定温度で順次加熱処理される。
図2は、複数の基板Wについて順次加熱処理が行われる場合の熱処理プレート10の温度変化の一例を示す図である。
【0058】
図2に示すグラフにおいては、縦軸が熱処理プレート10の温度を表し、横軸が時間を表す。また、熱処理プレート10の温度変化が太い実線で示される。本例では、9枚の基板Wについて、3枚の基板Wごとに加熱処理の内容が変更される。そのため、熱処理プレート10の設定温度は3枚の基板Wごとに変更されている。
【0059】
具体的には、時点t1~t2の期間において、熱処理プレート10の温度が設定温度90℃に保持された状態で3枚の基板Wに順次加熱処理が行われる。また、時点t3~t4の期間において、熱処理プレート10の温度が設定温度115℃に保持された状態で3枚の基板Wに順次加熱処理が行われる。さらに、時点t5~t6の期間において、熱処理プレート10の温度が設定温度140℃に保持された状態で3枚の基板Wに順次加熱処理が行われる。
【0060】
設定温度に保持された熱処理プレート10上に未処理の基板Wが載置されると、
図2に白抜きの矢印で示すように、熱処理プレート10の温度は設定温度から低下する。この場合の熱処理プレート10の温度低下量は、設定温度に応じて異なる。設定温度が高いほど温度低下量は大きく、設定温度が低いほど温度低下量は小さい。
【0061】
熱処理プレート10上に基板Wが載置された後、熱処理プレート10の温度が設定温度からずれた状態が継続されると、その基板Wに対して予め定められた加熱処理を正確に行うことができない。そのため、本実施の形態では、熱処理プレート10上に未処理の基板Wが載置された後、熱処理プレート10の温度を設定温度まで適切に戻すとともに設定温度で安定化させるための制御が行われる。
【0062】
この制御では、熱処理プレート10上に未処理の基板Wが載置された時点から一定期間における熱処理プレート10の温度変化が予め定められた適切な波形を示すように、熱処理装置100の動作が調整される。以下、熱処理プレート10上に未処理の基板Wが載置された時点から一定期間における熱処理プレート10の適切な温度変化を示す波形を基準波形と呼ぶ。
【0063】
基準波形は、加熱処理の対象となる基板Wの種類、加熱処理の目的および設定温度等に応じて定められる。したがって、複数の基板Wについて共通する設定温度で加熱処理が行われる場合でも、それらの複数の基板Wにそれぞれ対応する複数の基準波形は互いに一致するとは限らない。
【0064】
そこで、本実施の形態に係る熱処理装置100においては、基準波形となり得る複数の波形が複数の候補波形として
図1の記憶部51に記憶される。複数の候補波形から使用者により選択される一の候補波形が基準波形として決定される。
【0065】
図3は、
図1の記憶部51に記憶される複数の候補波形の一例を示す図である。
図3の例では、互いに異なる複数の候補波形A~Hが
図1の記憶部51に記憶されている。また、
図3の例では、設定温度について予め定められた複数の温度領域の各々に複数の候補波形が対応付けられている。
【0066】
具体的には、80℃以上110℃未満の温度領域に2つの候補波形A,Bが対応付けられている。候補波形A,Bは、熱処理プレート10の温度が設定温度ptから下降して設定温度ptに戻るまでの時間が互いに異なる。また、候補波形A,Bは、設定温度ptに対するオーバーシュート量が互いに異なる。
【0067】
110℃以上130℃未満の温度領域に3つの候補波形C,D,Eが対応付けられている。候補波形C,D,Eは、熱処理プレート10の温度が設定温度ptから下降して設定温度ptに戻るまでの時間が互いに異なる。また、候補波形C,D,Eは、設定温度ptに対するオーバーシュート量が互いに異なる。
【0068】
130℃以上150℃未満の温度領域に3つの候補波形F,G,Hが対応付けられている。候補波形F,G,Hは、熱処理プレート10の温度が設定温度ptから下降して設定温度ptに戻るまでの時間が互いに異なる。また、候補波形F,G,Hは、設定温度ptに対するオーバーシュート量が互いに異なる。
【0069】
各候補波形A~Hにおいて、熱処理プレート10上に基板Wが載置された直後に設定温度ptから下降する温度の変化量(低下量)は、対応する温度領域が低いほど小さく、対応する温度領域が高いほど大きい。
【0070】
また、本実施の形態においては、候補波形ごとに、熱処理プレート10の温度をその候補波形に従って設定温度に適切に戻すためのヒータ11の動作条件が、初期動作条件として
図1の記憶部51に記憶される。すなわち、記憶部51には、複数の候補波形にそれぞれ対応する複数の初期動作条件が記憶される。これにより、基板Wの加熱処理の初期には、基準波形として選択された候補波形に対応する初期動作条件でヒータ11が駆動される。各初期動作条件は、シミュレーションまたは実験等により求めることが出来る。
【0071】
図4は、
図3の複数の候補波形A~Hにそれぞれ対応する複数の初期動作条件の一例を示す図である。本実施の形態においては、各初期動作条件には、
図1の温度センサ19の検出信号に基づいてヒータ11をPID(比例積分微分)制御するためのPID制御パラメータが含まれる。また、各初期動作条件には、ヒータ11の出力の上限を示す上限パラメータが含まれる。
図4では、PID制御パラメータが「PID」と表記され、上限パラメータが「ヒータ上限」と表記されている。上限パラメータの値は、例えばヒータ11の定格出力に対して許容される出力の上限の比率(%)で表される。
【0072】
図4に示すように、
図3の候補波形Aに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.4」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「80(%)」を含む。
図3の候補波形Bに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.5」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「80(%)」を含む。
【0073】
また、
図3の候補波形Cに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.3」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「90(%)」を含む。
図3の候補波形Dに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.5」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「90(%)」を含む。
図3の候補波形Eに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.2」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「90(%)」を含む。
【0074】
さらに、
図3の候補波形Fに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.2」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「100(%)」を含む。
図3の候補波形Gに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.5」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「100(%)」を含む。
図3の候補波形Hに対応する初期動作条件は、比例パラメータ「0.1」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「100(%)」を含む。
【0075】
ここで、熱処理装置100において設定されるべき処理レシピには、設定温度および熱処理時間が含まれる。処理レシピの設定時に、
図1の表示部62に表示される設定画面について説明する。
【0076】
図5および
図6は、
図1の表示部62に表示される処理レシピの設定画面の一例を示す図である。処理レシピの設定画面には、温度入力欄62a、時間入力欄62bおよび波形選択欄62cが表示される。
【0077】
図5に示すように、温度入力欄62a、時間入力欄62bおよび波形選択欄62cがブランクの状態で、使用者は、
図1の操作部61を用いて温度入力欄62aに所望の設定温度を入力することができる。また、使用者は、
図1の操作部61を用いて時間入力欄62bに所望の処理時間を入力することができる。これにより、基板Wの加熱処理において用いられるべき処理レシピが設定される。
【0078】
処理レシピが設定されると、
図6に示すように、使用者により入力された設定温度が属する温度領域に対応する複数の候補波形(本例では、候補波形A,B)が波形選択欄62cに表示される。そこで、使用者は、
図1の操作部61を用いて複数の候補波形のうち一つを基準波形として選択することができる。このとき、選択された候補波形(基準波形)に対応する初期動作条件が記憶部51から読み込まれる。それにより、基板Wの加熱処理において用いられるべき基準波形および初期動作条件が設定される。
【0079】
上記の
図5および
図6の設定画面の例によれば、温度入力欄62aに設定温度が入力されることにより、波形選択欄62cにその設定温度に対応する複数の候補波形が表示される。それにより、使用者は、設定温度に応じた選択可能な複数の候補波形を容易に把握することができる。また、使用者は、選択可能な複数の候補波形から一の候補波形を容易に選択することができる。したがって、適切でない候補波形が基準波形として決定されることが防止される。
【0080】
ところで、熱処理装置100が設けられる空間の温度によっては、設定された初期動作条件が適切であるとは限らない。また、後述する基板処理装置400(
図10)のように複数の熱処理装置100を用いて複数の基板Wに共通の加熱処理を行う場合を想定する。この場合、複数の熱処理装置100の間には、通常個体差が存在する。そのため、複数の熱処理装置100に共通の初期動作条件が設定されると、各熱処理装置100で理想的な温度調整を行うことができない可能性がある。
【0081】
そこで、本実施の形態に係る熱処理装置100においては、基板Wの加熱処理が行われるごとに、基板Wが載置された時点から一定期間における熱処理プレート10の温度変化が設定された基準波形に近づくように初期動作条件が変更される。
【0082】
設定温度が90℃に設定されかつ
図4の候補波形Bが基準波形として設定されている場合を想定する。候補波形Bにおいて発生するオーバーシュート量は比較的小さい。例えば、
図2の1番目の基板Wが設定温度90℃で候補波形Bを基準波形として加熱処理される際には、候補波形Bに対応する
図4の初期動作条件に従って熱処理装置100が動作する。この場合、熱処理プレート10の温度変化に大きなオーバーシュートが生じると、そのオーバーシュート量が小さくなるように、候補波形Bに対応する初期動作条件が変更される。その後、2番目の基板Wが設定温度90℃で候補波形Bを基準波形として加熱処理される際には、変更後の初期動作条件に従って熱処理装置100が動作する。それにより、熱処理プレート10上に基板Wが載置された直後の熱処理プレート10の温度変化が、1番目の基板Wの熱処理時に比べて基準波形に近づく。したがって、2番目の基板Wの加熱処理時には、熱処理プレート10上に基板Wが載置された後、熱処理プレート10の温度が、1番目の基板Wの加熱処理時に比べて適切に設定温度に戻される。
【0083】
また、2番目の基板Wが設定温度90℃で候補波形Bを基準波形として加熱処理される際に熱処理プレート10の温度変化に中程度のオーバーシュートが生じると、そのオーバーシュート量がさらに小さくなるように、候補波形Bに対応する初期動作条件が再度変更される。その後、3番目の基板Wが設定温度90℃で候補波形Bを基準波形として加熱処理される際には、変更後の初期動作条件に従って熱処理装置100が動作する。それにより、熱処理プレート10上に基板Wが載置された直後の熱処理プレート10の温度変化が、2番目の基板Wの熱処理時に比べて基準波形に近づく。したがって、3番目の基板Wの加熱処理時には、熱処理プレート10上に基板Wが載置された後、熱処理プレート10の温度が、2番目の基板Wの加熱処理時に比べて適切に設定温度に戻される。
【0084】
図2の例では、設定温度115℃,140℃に対応する初期動作条件についても、設定温度90℃の場合の例と同様に、基板Wの加熱処理が行われるごとに熱処理プレート10の温度変化に応じた初期動作条件の変更が行われる。
【0085】
上記のように、基板Wが加熱処理されるごとに実際の熱処理プレート10の温度変化に応じて初期動作条件が変更される。この場合、基板Wの加熱処理が繰り返されるにつれて熱処理の精度が向上する。また、上記の制御によれば、複数の熱処理装置100を用いて複数の基板Wに共通の加熱処理を行う場合に、複数の熱処理装置100間で基板Wに対する加熱処理のばらつきが生じることが抑制される。
【0086】
(3)初期動作条件の具体的な変更例
図7は、初期動作条件の具体的な変更例を説明するための図である。
図7の上段に示されるグラフにおいては、縦軸が温度を表し、横軸が時間を表す。また、そのグラフにおいては、一の基板Wの加熱処理中に
図1の温度センサ19により検出される熱処理プレート10の温度変化の一例が太い実線で示される。この太い実線で示される波形を実波形と呼ぶ。さらに、
図7の上段に示されるグラフにおいては、本例の加熱処理について設定された基準波形が一点鎖線で示される。
【0087】
時点t0で熱処理プレート10が設定温度の値αに保持され、その後時点t10で基板Wが熱処理プレート10上に載置されて加熱処理が開始されるものとする。基準波形は、時点t10から時点t11にかけて設定温度の値αから値αよりも低い値βまで下降し、時点t11から時点t12にかけて値βから値αまで上昇している。さらに、時点t12以降、基準波形は微小時間の間わずかに値αを超えた後、値αで保持されている。値αに対する基準波形のオーバーシュート量は実質的に0であるものとする。以下の説明では、熱処理プレート10上に基板Wが載置された時点t10から基準波形が設定温度の値αに戻る時点t12までの時間を設定時間と呼ぶ。
【0088】
図7の上段の例において、実波形は基準波形から大きくずれている。具体的には、実波形は、時点t10から時点t11にかけて設定温度の値αから値βよりも低い値γまで下降し、時点t11から時点t12よりも前の時点t13にかけて値γから値αまで上昇している。また、時点t13直後の実波形には値αに対して大きなオーバーシュートが発生している。それにより、実波形は、時点t12の経過後、比較的長い時間が経過するまで安定していない。
【0089】
初期動作条件を変更するために、例えば時点t10から時点t12までの期間のうち予め定められた特定の時点(本例では、基準波形が極小値をとる時点)t11における実波形の値γが取得される。取得された値γが、時点t11における基準波形の値βと対比される。また、時点t10から実波形が値αに戻る時点t13までの時間prが取得される。以下の説明では、この実波形に対応する時間prを到達時間と呼ぶ。さらに、時点t13の直後に発生する、値αに対する実波形のオーバーシュート量OSが取得される。
【0090】
時点t11における実波形の値γが、その実波形の値について予め定められた許容範囲外にある場合には、実波形は基準波形から大きくずれている。したがって、初期動作条件を変更することが望ましい。そこで、時点t11における実波形の値γが許容範囲外にありかつ値γが値βよりも低い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が大きくなるように初期動作条件が変更される。それにより、実波形の値が基準波形の値に近づく。一方、時点t11における実波形の値γが許容範囲外にありかつ値γが値βよりも高い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が小さくなるように初期動作条件が変更される。それにより、実波形の値が基準波形の値に近づく。
【0091】
また、到達時間prが、その到達時間について予め定められた許容範囲外にある場合には、実波形は基準波形から大きくずれている。したがって、初期動作条件を変更することが望ましい。そこで、到達時間prが許容範囲外にありかつ到達時間prが設定時間よりも短い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が小さくなるように初期動作条件が変更される。それにより、到達時間prが設定時間に近づく。一方、到達時間prが許容範囲外にありかつ到達時間prが設定時間よりも長い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が大きくなるように初期動作条件が変更される。それにより、到達時間prが設定時間に近づく。
【0092】
さらに、取得されたオーバーシュート量OSが、オーバーシュート量OSについて予め定められた許容範囲を超える場合には、実波形は基準波形から大きくずれている。したがって、初期動作条件を変更することが望ましい。そこで、オーバーシュート量OSが許容範囲を超える場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が小さくなるように初期動作条件が変更される。それにより、オーバーシュート量OSが小さくなる。
【0093】
図7の下段に示されるグラフにおいては、縦軸がヒータ11の出力を表し、横軸が時間を表す。また、そのグラフにおいては、予め設定された初期動作条件に従って制御されるヒータ11の出力波形が太い実線で示される。この出力波形は、
図7の上段のグラフに示される実波形に対応する。本例では、時点t0から時点t10までの間、ヒータ11の出力は一定の値SPに保持される。その後、ヒータ11の出力は、時点t10で増大し、初期動作条件に基づくPID制御により調整される。
【0094】
ここで、熱処理プレート10に供給される熱量を小さくする場合には、例えばPID制御の比例パラメータの値を大きく変更することにより、
図7に白抜きの矢印a13で示すように、ヒータ11の出力波形を全体的に低くすればよい。あるいは、例えば上限パラメータを小さく変更することにより、
図7に白抜きの矢印a14で示すように、ヒータ11の出力の上限の値MPを低くすればよい。
【0095】
一方、熱処理プレート10に供給される熱量を大きくする場合には、例えばPID制御の比例パラメータの値を小さく変更することにより、
図7に白抜きの矢印a15で示すように、ヒータ11の出力波形を全体的に高くすればよい。あるいは、例えば上限パラメータを大きく変更することにより、
図7に白抜きの矢印a16で示すように、ヒータ11の出力の上限の値MPを高くすればよい。
【0096】
(4)制御装置50
図1に示すように、制御装置50は、機能部として、記憶部51、発熱制御部52、冷却制御部53、昇降制御部54、温度取得部55、条件変更部56、決定部57および表示制御部58を有する。制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)およびROM(リードオンリメモリ)により構成される。CPUがROMまたは他の記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、上記の各機能部が実現される。なお、制御装置50の機能的な構成要素の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0097】
記憶部51は、複数の候補波形を記憶するとともに、複数の候補波形にそれぞれ対応する複数の初期動作条件を記憶する。また、記憶部51は、使用者により設定された処理レシピ、基準波形および初期動作条件を、例えば次回の加熱処理で用いられるべき情報として記憶する。発熱制御部52は、熱処理プレート10による基板Wの加熱処理の初期に、設定された基準波形に対応する初期動作条件に従って動作するように、温度センサ19から出力される検出信号に基づいて発熱駆動部13を制御する。冷却制御部53は、熱処理装置100の電源がオンされている間、能動冷却プレート20が冷却されるように冷却駆動部22を制御する。昇降制御部54は、熱処理プレート10の温度を下降させる際に、受動冷却プレート30が熱処理プレート10に接触するように昇降装置40を制御する。
【0098】
温度取得部55は、温度センサ19から出力される検出信号に基づいて熱処理プレート10の温度を取得する。より具体的には、温度取得部55は、温度センサ19から出力される検出信号を一定周期でサンプリングすることにより温度の変化を取得する。条件変更部56は、温度取得部55により取得された温度の変化が設定された基準波形に近づくように、基準波形として決定された一の候補波形に対応する初期動作条件を変更する。
【0099】
表示制御部58は、処理レシピおよび基準波形の設定画面を表示部62に表示させる。決定部57は、処理レシピの設定時に、使用者により設定画面上で入力された温度の値を設定温度として決定する。このとき、表示制御部58は、決定された設定温度が属する温度領域に対応する複数の候補波形を、設定画面上に選択可能に表示させる。また、決定部57は、使用者が操作部61を操作することにより設定画面上で選択した候補波形を基準波形として決定する。
【0100】
なお、熱処理装置100は、使用者による操作部61の操作に基づいて、新たな候補波形を記憶部51に記憶させることが可能に構成されてもよい。また、熱処理装置100は、使用者による操作部61の操作に基づいて、新たな初期動作条件を記憶部51に記憶させることが可能に構成されてもよい。
【0101】
(5)温度調整処理
記憶部51に記憶される初期動作条件の変更は、
図1の制御装置50が下記の温度調整処理を実行することにより行われる。
図8および
図9は、温度調整処理の一例を示すフローチャートである。温度調整処理は、熱処理装置100の電源がオンされることにより開始される。温度調整処理の開始時点で、処理レシピおよび基準波形は予め設定されているものとする。
【0102】
まず、
図1の発熱制御部52および昇降制御部54は、熱処理プレート10の温度が設定温度の値で保持されるように発熱駆動部13または昇降駆動部41を制御する(ステップS10)。
【0103】
次に、発熱制御部52は、熱処理プレート10上に基板Wが載置されたか否かを判定する(ステップS11)。この判定は、例えば、熱処理装置100の外部から基板Wが熱処理プレート10上に載置されたことを示す信号を受けたか否かに基づいて行われる。あるいは、熱処理装置100に熱処理プレート10上の基板Wの有無を検出するためのセンサが設けられる場合、発熱制御部52は、そのセンサの出力に基づいて上記の判定を行ってもよい。
【0104】
熱処理プレート10上に基板Wが載置されていない場合、発熱制御部52および昇降制御部54は、ステップS10の処理に戻る。一方、熱処理プレート10上に基板Wが載置された場合、発熱制御部52は、現在設定されている基準波形に対応する初期動作条件を
図1の記憶部51から読込む(ステップS12)。
【0105】
次に、発熱制御部52は、読み込んだ初期動作条件と温度センサ19の出力とに基づいて発熱駆動部13を制御することにより熱処理プレート10の温度を調整する(ステップS13)。このとき温度取得部55は、基板Wの加熱処理中の熱処理プレート10の温度の変化を取得する(ステップS14)。
【0106】
その後、基板Wの加熱処理が完了すると、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、当該加熱処理における到達時間pr(
図7)が到達時間prについて予め定められた許容範囲外であるか否かを判定する(ステップS15)。なお、ステップS15で用いられる許容範囲は設定時間であってもよい。すなわち、ステップS15で用いられる許容範囲は到達時間prが設定時間に一致することのみを許容するように定められてもよい。
【0107】
到達時間prが許容範囲から外れている場合、条件変更部56は、当該加熱処理における到達時間prと基準波形の設定時間との差分を算出する(ステップS16)。一方、到達時間prが許容範囲内にある場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、当該加熱処理中の特定時点における温度値がその温度値について予め定められた許容範囲外であるか否かを判定する(ステップS17)。なお、ステップS17で用いられる許容範囲は、特定時点における基準波形の温度値であってもよい。すなわち、ステップS17で用いられる許容範囲は特定時点における実際の温度値が基準波形の温度値に一致することのみを許容するように定められてもよい。
【0108】
温度値が許容範囲から外れている場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、特定時点における取得された温度値と基準波形の温度値との差分を算出する(ステップS18)。一方、温度値が許容範囲内にある場合、条件変更部56は、当該加熱処理中のオーバーシュート量OSがそのオーバーシュート量OSについて予め定められた許容範囲外であるか否かを判定する(ステップS19)。なお、ステップS19で用いられる許容範囲は0であってもよい。すなわち、ステップS19で用いられる許容範囲はオーバーシュートが発生していないことのみを許容するように定められてもよい。
【0109】
オーバーシュート量OSが許容範囲から外れている場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、取得されたオーバーシュート量OSと基準波形のオーバーシュート量との差分を算出する(ステップS20)。一方、オーバーシュート量OSが許容範囲内にある場合、発熱制御部52および昇降制御部54は、ステップS10の処理に戻る。
【0110】
上記のステップS16,S18,S20のいずれかの処理後、条件変更部56は、算出された時間、温度値またはオーバーシュート量の差分に基づいて、設定された初期動作条件のうち変更すべきパラメータを決定する(ステップS21)。例えば、条件変更部56は、算出された差分のレベルに応じて変更すべきパラメータを決定する。具体的には、条件変更部56は、差分のレベルが高い場合に、PID制御の比例パラメータを、変更すべきパラメータとして決定する。また、条件変更部56は、差分のレベルが低い場合に、上限パラメータを、変更すべきパラメータとして決定する。
【0111】
次に、条件変更部56は、変更すべきパラメータについて、予め定められた方法に従って当該パラメータを変更する(ステップS22)。例えば、条件変更部56は、変更対象として決定されたパラメータの値を、予め定められた値分変更する。これにより、記憶部51に記憶された初期動作条件が変更される。その後、発熱制御部52および昇降制御部54は、ステップS10の処理に戻る。
【0112】
上記の温度調整処理において、ステップS15,S17,S19のうち一部の処理は省略されてもよい。この場合、省略される処理に付随する差分の算出処理(ステップS16,S18,S20のうちのいずれかの処理)も省略される。
【0113】
(6)効果
上記の熱処理装置100においては、基準波形となり得る複数の候補波形が記憶部51に記憶される。また、複数の候補波形にそれぞれ対応する複数の初期動作条件が記憶部51に記憶される。記憶部51に記憶された複数の候補波形から一の候補波形が基準波形として決定される。
【0114】
その後、熱処理プレート10上に基板Wが載置され、載置された基板Wに加熱処理が行われる。この加熱処理の初期には、熱処理プレート10上に基板Wが載置された時点から一定期間、基準波形として決定された一の候補波形に対応する動作条件に従ってヒータ11が動作する。また、熱処理プレート10の温度の変化が検出される。検出された温度の変化が基準波形に近づくように記憶部51に記憶された一の候補波形に対応する初期動作条件が変更される。
【0115】
これにより、複数の基板Wが順次加熱処理される場合、各加熱処理の初期には前回の加熱処理時に変更された初期動作条件に従ってヒータ11が動作する。それにより、熱処理プレート10上に基板Wが載置された直後の熱処理プレート10の温度変化が前回の加熱処理時に比べて基準波形に近づく。
【0116】
このように、熱処理プレート10上に基板Wが載置された直後の熱処理プレート10の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板Wが載置された直後の熱処理プレート10の温度が、その基板Wの加熱処理を行うための適切な温度に迅速に調整される。
【0117】
また、上記の構成によれば、熱処理装置100の周辺の温度が変化する場合でも、その温度変化に応じて初期動作条件が変更されることになる。したがって、熱処理装置100の周囲の温度変化の影響を受けることなく、基板Wの加熱処理が適切に行われる。
【0118】
さらに、上記の構成によれば、複数の候補波形のうち一の候補波形が、熱処理プレート10上に基板Wが載置された直後の熱処理プレート10の適切な温度変化を示す基準波形として決定される。これらの結果、基板Wの加熱処理を適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【0119】
(7)
図1の熱処理装置100を備える基板処理装置
図10は、
図1の熱処理装置100を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
図10に示すように、基板処理装置400は、露光装置500に隣接して設けられ、制御部410、塗布処理部420、現像処理部430、熱処理部440および基板搬送装置450を備える。熱処理部440は、基板Wに加熱処理を行う複数の
図1の熱処理装置100と、基板Wに冷却処理のみを行う複数のクーリングプレート(図示せず)とを含む。
【0120】
制御部410は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、塗布処理部420、現像処理部430、熱処理部440および基板搬送装置450の動作を制御する。
【0121】
基板搬送装置450は、基板処理装置400による基板Wの処理時に、基板Wを塗布処理部420、現像処理部430、熱処理部440および露光装置500の間で搬送する。
【0122】
塗布処理部420は、未処理の基板Wの一面上にレジスト膜を形成する(塗布処理)。レジスト膜が形成された塗布処理後の基板Wには、露光装置500において露光処理が行われる。現像処理部430は、露光装置500による露光処理後の基板Wに現像液を供給することにより、基板Wの現像処理を行う。熱処理部440は、塗布処理部420による塗布処理、現像処理部430による現像処理、および露光装置500による露光処理の前後に基板Wの熱処理を行う。それにより、基板処理装置400における各種処理後の基板Wには、微細なパターンを有するレジスト膜が形成される。
【0123】
なお、塗布処理部420は、基板Wに反射防止膜を形成してもよい。この場合、熱処理部440には、基板Wと反射防止膜との密着性を向上させるための密着強化処理を行うための処理ユニットが設けられてもよい。また、塗布処理部420は、基板W上に形成されたレジスト膜を保護するためのレジストカバー膜を基板Wに形成してもよい。
【0124】
上記のように、熱処理部440の複数の熱処理装置100においては、温度調整処理が行われる。それにより、複数の基板Wの各々に対して高い精度で適切な加熱処理を行うことが可能である。また、互いに個体差がある複数の熱処理装置100により複数の基板Wについてそれぞれ共通の加熱処理が行われる場合でも、複数の基板Wに対して高い精度で均一な加熱処理を行うことが可能である。
【0125】
[2]第2の実施の形態
以下、第2の実施の形態に係る熱処理システムおよび熱処理方法について図面を参照しつつ説明する。
【0126】
図11は、第2の実施の形態に係る熱処理システムの構成を示すブロック図である。
図11に示すように、熱処理システム900は、1または複数(本例では3つ)の基板処理装置400、線幅測定装置700および管理装置800を含む。3つの基板処理装置400、線幅測定装置700および管理装置800は、互いに通信可能にネットワーク990に接続されている。
【0127】
図11の各基板処理装置400は、基本的に
図10の基板処理装置400と同じ構成を有する。線幅測定装置700は、複数の基板処理装置400による処理後の複数の基板Wに形成されたレジスト膜の線幅をそれぞれ測定し、測定結果を管理装置800に出力する。
【0128】
管理装置800は、例えばパーソナルコンピュータであり、CPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含む。管理装置800は、機能部として、記憶部801および波形更新部802を含む。これらの機能部は、管理装置800のCPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、上記の構成の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0129】
記憶部801には、線幅測定装置700による線幅の測定結果と複数の候補波形との間の予め定められた対応関係を示すテーブル(以下、線幅波形テーブルと呼ぶ。)が記憶されている。
図12は、
図11の記憶部801に記憶される線幅波形テーブルの一例を示す図である。
【0130】
図12の線幅波形テーブルにおいては、設定温度について予め定められた
図3の温度領域ごとに、線幅の測定結果と候補波形との対応関係が規定されている。ここで、
図12の例において、線幅の差分とは、線幅の設計寸法に対する実寸法の差分を表す。また、第1のしきい値は、第2のしきい値に比べて小さい値であるものとする。
【0131】
図12の線幅波形テーブルによれば、80℃以上110℃未満の温度領域においては、線幅の差分が第1のしきい値よりも小さい測定結果に対して
図3の候補波形Bが対応付けられている。また、線幅の差分が第1のしきい値以上でかつ第2のしきい値よりも小さい測定結果に対して
図3の候補波形Bが対応付けられている。さらに、線幅の差分が第2のしきい値以上である測定結果に対して
図3の候補波形Aが対応付けられている。
【0132】
一方、110℃以上130℃未満の温度領域においては、線幅の差分が第1のしきい値よりも小さい測定結果に対して
図3の候補波形Eが対応付けられている。また、線幅の差分が第1のしきい値以上でかつ第2のしきい値よりも小さい測定結果に対して
図3の候補波形Dが対応付けられている。さらに、線幅の差分が第2のしきい値以上である測定結果に対して
図3の候補波形Cが対応付けられている。
【0133】
他方、130℃以上150℃未満の温度領域においては、線幅の差分が第1のしきい値よりも小さい測定結果に対して
図3の候補波形Hが対応付けられている。また、線幅の差分が第1のしきい値以上でかつ第2のしきい値よりも小さい測定結果に対して
図3の候補波形Gが対応付けられている。さらに、線幅の差分が第2のしきい値以上である測定結果に対して
図3の候補波形Fが対応付けられている。
【0134】
波形更新部802は、一の基板処理装置400による処理後の基板Wについて、線幅測定装置700から出力される測定結果を受け付ける。この場合、波形更新部802は、線幅波形テーブルに基づいて、受け付けた測定結果に対応する候補波形を複数の温度領域についてそれぞれ判定する。
【0135】
次に、波形更新部802は、一の基板処理装置400が備える複数の熱処理装置100に対して、設定温度について予め定められた温度領域ごとに、判定された候補波形を基準波形とすべき指令を送信する。それにより、一の基板処理装置400の複数の熱処理装置100において、設定済みの基準波形が指令された候補波形と異なる場合に、指令された候補波形が基準波形として再決定される。
【0136】
例えば、一の基板処理装置400の一の熱処理装置100において、設定温度80℃の加熱処理が
図3の候補波形Bを基準波形として行われる場合を想定する。ここで、一の基板処理装置400による処理後の基板Wについて、線幅測定装置700によりレジスト膜の線幅が測定された結果、線幅の差分が第2のしきい値以上であったとする。この場合、
図12の線幅波形テーブルによれば、設定温度80℃の加熱処理に対応する候補波形は候補波形Aとなる。候補波形Aは、設定済みの基準波形である候補波形Bとは異なる。それにより、一の熱処理装置100における基準波形が候補波形Bから候補波形Aに更新される。
【0137】
図13は、
図11の波形更新部802により行われる一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図13の一連の処理は、管理装置800の電源がオンされることにより開始される。
【0138】
図13に示すように、波形更新部802は、線幅測定装置700から与えられる信号に基づいて、一の基板処理装置400による処理後の基板Wについて線幅の測定があったか否かを判定する(ステップS31)。
【0139】
線幅の測定がない場合、波形更新部802は、ステップS31の処理を繰り返す。一方、線幅の測定があると、波形更新部802は、線幅測定装置700から与えられる測定結果に基づいて、線幅の差分を算出する(ステップS32)。
【0140】
次に、波形更新部802は、算出された線幅の差分と記憶部801に記憶された線幅波形テーブルとに基づいて、予め定められた温度領域ごとに適切な候補波形を判定する(ステップS33)。
【0141】
次に、波形更新部802は、判定結果を一の基板処理装置400に送信する(ステップS34)。また、波形更新部802は、判定結果に基づいて基準波形を更新すべき指令を一の基板処理装置400に与える(ステップS35)。
【0142】
その後、波形更新部802は、線幅測定装置700から与えられる信号に基づいて、他の基板処理装置400による処理後の基板Wについて線幅の測定があったか否かを判定する(ステップS36)。
【0143】
線幅の測定がない場合、波形更新部802は、ステップS36の処理を繰り返す。一方、線幅の測定があると、波形更新部802は、他の基板処理装置400を一の基板処理装置400とし(ステップS37)、上記のステップS32の処理に進む。
【0144】
本実施の形態に係る熱処理システム900においては、各基板処理装置400の処理後の基板Wの線幅の測定結果に応じて、当該基板処理装置400の複数の熱処理装置100において設定された基準波形がより適切な波形に更新される。それにより、基板Wの熱処理をより適切かつ高い精度で行うことが可能になる。
【0145】
[3]他の実施の形態
(1)上記実施の形態においては、熱処理プレート10を加熱する構成および冷却する構成を有する熱処理装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない。熱処理装置100は、熱処理プレート10を冷却する構成(上記の例では、能動冷却プレート20、受動冷却プレート30および昇降装置40)を有さなくてもよい。
【0146】
(2)上記実施の形態においては、熱処理プレート10が金属製の伝熱プレートである例について説明したが、熱処理プレート10はセラミックス製の伝熱プレートであってもよい。この場合、伝熱プレートを形成するセラミックスとしては、窒化アルミニウム(AlN)またはアルミナ(Al2O3)等が挙げられる。
【0147】
(3)熱処理装置100においては、熱処理プレート10の上面が複数の領域にそれぞれ分割されるとともに、各領域に対応するように当該部分を加熱するための構成が設けられてもよい。すなわち、熱処理プレート10の複数の領域の各々についてヒータ11および発熱駆動部13が設けられてもよい。または、熱処理プレート10の複数の領域の各々についてヒータ11が設けられかつ発熱駆動部13が複数のヒータ11を独立して駆動可能に構成されてもよい。
【0148】
この場合、熱処理プレート10の複数の領域の各々について加熱処理に用いるべき基準波形が決定されてもよい。また、条件変更部56は、例えば加熱処理中の熱処理プレート10の複数の領域の温度変化が領域ごとに決定された基準波形に近づくように、少なくとも一部の領域にそれぞれ対応する初期動作条件の複数のパラメータを変更してもよい。このような構成によれば、熱処理プレート10の上面の複数の領域についてより詳細な温度調整を行うことが可能になる。
【0149】
(4)上記実施の形態においては、熱処理装置100は、基板Wに対して加熱処理を行うが、熱処理装置100は基板Wに対して冷却処理のみを行うように構成されてもよい。この場合、
図1の熱処理プレート10には、例えばヒータ11に代えて熱処理プレート10の上面の温度を低下させるための冷却機構21が設けられる。
【0150】
基板Wに冷却処理が行われる場合、熱処理プレート10は、初期状態で基板Wよりも低い設定温度で保持される。そのため、冷却処理の開始時に熱処理プレート10上に基板Wが載置されると、熱処理プレート10の温度は基板Wの熱を受けて設定温度から上昇する。
【0151】
冷却機構21がペルチェ素子で構成される場合、ペルチェ素子の駆動状態を上記実施の形態の例と同様に制御することにより熱処理プレート10上の温度を調整することができる。そこで、本例では、熱処理プレート10の温度が迅速に設定温度まで低下されるように初期動作条件が設定される。
【0152】
この場合、条件変更部56は、熱処理プレート10上に基板Wが載置された時点から熱処理プレート10の温度が設定温度に到達するまでの実波形の到達時間が、その到達時間に対応する基準波形の設定時間に近づくように初期動作条件を変更する。また、条件変更部56は、冷却処理中の特定時点における実波形の温度値が基準波形の温度値に近づくように初期動作条件を変更する。さらに、条件変更部56は、設定温度に対する熱処理プレート10の温度変化のアンダーシュート量が小さくなるように初期動作条件を変更する。
【0153】
(5)上記実施の形態においては、実波形を基準波形に近づけるためにヒータ11についてのPID制御のパラメータの値のうち、比例パラメータの値が変更されるが、本発明はこれに限定されない。実波形を基準波形に近づけるために、PID制御のパラメータの値のうち積分パラメータの値が変更されてもよいし、微分パラメータの値が変更されてもよい。
【0154】
(6)第1の実施の形態に係る
図10の基板処理装置400においては、制御部410は、機能部として
図1の条件変更部56および決定部57を有するとともに、
図3の複数の候補波形および
図4の複数の初期動作条件を記憶してもよい。
【0155】
この場合、制御部410の決定部57は、基板処理装置400に設けられる図示しない操作部の操作に基づいて、複数の熱処理装置100の各々についてそれぞれ設定されるべき基準波形を決定してもよい。さらに、制御部410の決定部57は、基準波形として選択された候補波形に対応する初期動作条件で動作すべき指令を各熱処理装置100に与えてもよい。
【0156】
また、制御部410の条件変更部56は、複数の熱処理装置100の温度取得部55により取得された温度の変化が設定された基準波形に近づくように、制御部410に記憶された基準波形に対応する初期動作条件を変更してもよい。
【0157】
(7)第1の実施の形態に係る
図10の基板処理装置400においては、複数の熱処理装置100の制御装置50または制御部410は、機能部として
図11の記憶部801および波形更新部802を有してもいい。この場合、例えば基板処理装置400の外部に設けられる線幅測定装置700の測定結果に基づいて、複数の熱処理装置100において加熱処理に用いる基準波形の更新を行うことが可能となる。
【0158】
(8)第2の実施の形態に係る熱処理システム900においては、管理装置800は、機能部として
図1の条件変更部56および決定部57をさらに有するとともに、記憶部801に
図3の複数の候補波形および
図4の複数の初期動作条件を記憶してもよい。
【0159】
この場合、管理装置800の決定部57は、管理装置800に設けられる図示しない操作部の操作に基づいて、複数の基板処理装置400の複数の熱処理装置100の各々についてそれぞれ設定されるべき基準波形を決定してもよい。さらに、管理装置800の決定部57は、基準波形として選択された候補波形に対応する初期動作条件で動作すべき指令を各熱処理装置100に与えてもよい。
【0160】
また、管理装置800の条件変更部56は、複数の熱処理装置100の温度取得部55により取得された温度の変化が設定された基準波形に近づくように、記憶部801に記憶された基準波形に対応する初期動作条件を変更してもよい。
【0161】
(9)
図4の例において、複数の候補波形にそれぞれ対応する複数の初期動作条件は互いに異なるが、複数の初期動作条件はその一部または全てが共通していてもよい。
【0162】
(10)第2の実施の形態に係る熱処理システム900においては、各熱処理装置100において加熱処理が行われた基板Wに関する処理情報を取得するための構成として、レジスト膜の線幅を測定する線幅測定装置700が用いられるが、本発明はこれに限定されない。
【0163】
加熱処理が行われた基板Wに関する処理情報を取得するための構成として、線幅測定装置700に代えて、基板W上に形成されたレジスト膜の厚みを測定する装置、または基板W上に形成された欠陥の数をカウントする装置が用いられてもよい。これらの場合、レジスト膜の厚みまたは欠陥の数と複数の候補波形との間の予め定められた関係を示すテーブルが記憶部801に記憶される。それにより、レジスト膜の厚みまたは欠陥の数と記憶部801に記憶されたテーブルとに基づいて、熱処理装置100において設定された基準波形をより適切な波形に更新することができる。
【0164】
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、熱処理装置100が熱処理装置の例であり、熱処理プレート10がプレート部材の例であり、ヒータ11および発熱駆動部13が熱処理部の例であり、初期動作条件が動作条件の例であり、記憶部51が第1の記憶部の例であり、温度センサ19が温度検出器の例であり、決定部57が決定部の例である。
【0165】
また、発熱制御部52が動作制御部の例であり、温度取得部55および条件変更部56が条件変更部の例であり、操作部61が操作部の例であり、表示部62が表示部の例であり、表示制御部58が表示制御部の例である。
【0166】
また、線幅測定装置700が情報取得部の例であり、記憶部801が第2の記憶部の例であり、波形更新部802が波形更新部の例であり、熱処理システム900が熱処理システムの例である。
【0167】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0168】
10…熱処理プレート,11…ヒータ,13…発熱駆動部,19…温度センサ,20…能動冷却プレート,21…冷却機構,22…冷却駆動部,30…受動冷却プレート,40…昇降装置,41…昇降駆動部,50…制御装置,51…記憶部,52…発熱制御部,53…冷却制御部,54…昇降制御部,55…温度取得部,56…条件変更部,57…決定部,58…表示制御部,61…操作部,62…表示部,62a…温度入力欄,62b…時間入力欄,62c…波形選択欄,100…熱処理装置,400…基板処理装置,410…制御部,420…塗布処理部,430…現像処理部,440…熱処理部,450…基板搬送装置,500…露光装置,700…線幅測定装置,800…管理装置,801…記憶部,802…波形更新部,990…ネットワーク,pt…設定温度,W…基板