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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/306 U
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019197336
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021072340
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】日野出 大輝
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
(72)【発明者】
【氏名】板原 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】中西 恭平
(72)【発明者】
【氏名】島野 達矢
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188549(JP,A)
【文献】特開2015-153989(JP,A)
【文献】特開2012-004294(JP,A)
【文献】特開2003-203897(JP,A)
【文献】特開2016-016457(JP,A)
【文献】特開2003-207315(JP,A)
【文献】特開2017-204609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0227047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向を有し、パワーデバイスとなる構造が設けられた複数のチップ領域を有し、被処理膜が設けられた少なくとも1つの基板を処理する基板処理方法であって、
(a) 前記基板を回転させながら、前記径方向においてセンサをスキャンさせることによって、前記径方向における前記被処理膜の厚みプロファイルを測定する工程と、
(b) 前記厚みプロファイルの平均厚みを算出する工程と、
(c) 前記厚みプロファイルが前記平均厚みを有する少なくとも1つの径方向位置を、少なくとも1つの候補位置として抽出する工程と、
(d) 前記少なくとも1つの候補位置の少なくともいずれかを、少なくとも1つの測定位置に決定する工程と、
(e) 前記基板を回転させながら、前記基板の前記被処理膜上へノズルから処理液を供給する工程と、
(f) 前記基板を回転させながら、前記センサによって前記少なくとも1つの測定位置で前記被処理膜の厚みの時間的変化をモニタする工程と、
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
(g) 前記少なくとも1つの測定位置での前記被処理膜の厚みに基づいて、前記基板の表面上への処理液の供給を停止する工程
をさらに備える、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記工程(g)は、前記少なくとも1つの測定位置で前記被処理膜の厚みが20μm以上に保たれるように行われる、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(e)において、前記ノズルに前記径方向における周期的変位が与えられ、
前記工程(f)において、前記センサに前記径方向における周期的変位が与えられ、前記センサが前記基板の中心に最も近づくタイミングは、前記ノズルが前記基板の中心に最も近づくタイミングと異なっている、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記少なくとも1つの基板は第1基板および第2基板を含み、前記基板処理方法は、前記工程(a)から前記工程(f)を行うことによって前記第1基板を処理した後に、前記工程(a)から前記工程(f)を再度行うことによって前記第2基板を処理する基板処理方法であり、
前記第1基板のための前記工程(e)における前記処理液の少なくとも一部が、前記第2基板のための前記工程(e)における前記処理液として再利用される、基板処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理方法であって、
前記第2基板は前記第1基板の直後に処理される基板であり、
前記第1基板の前記工程(f)の結果に基づいて、前記第2基板の前記工程(f)における前記時間的変化の予測範囲を算出する工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記基板は半径Rを有しており、
前記工程(d)において、0<r<r<Rを満たす正の値rおよびrが予め定められており、前記測定位置はr以上r以下に制限される、
基板処理方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(d)は、
(d1) 前記少なくとも1つの候補位置を表示する工程と、
(d2) 前記少なくとも1つの候補位置のうちいずれを前記少なくとも1つの測定位置に決定するかの指示を受け付ける工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(a)は、
(a1) 前記被処理膜の推定厚みの情報を受け付ける工程
を含み、
前記工程(a)において、前記推定厚みを基準として、予め定められた許容範囲内にある厚みのみが、前記厚みプロファイルに用いられる、基板処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理方法であって、
前記パワーデバイスはトレンチゲート構造を有している、基板処理方法。
【請求項11】
径方向を有し、非パワーデバイスである半導体デバイスとなる構造が設けられた複数のチップ領域を有し、被処理膜が設けられた少なくとも1つの基板を処理する基板処理方法であって、
(a) 前記基板を回転させながら、前記径方向においてセンサをスキャンさせることによって、前記径方向における前記被処理膜の厚みプロファイルを測定する工程と、
(b) 前記厚みプロファイルの最小厚みを算出する工程と、
(c) 前記厚みプロファイルが前記最小厚みを有する少なくとも1つの径方向位置を、少なくとも1つの候補位置として抽出する工程と、
(d) 前記少なくとも1つの候補位置の少なくともいずれかを、少なくとも1つの測定位置に決定する工程と、
(e) 前記基板を回転させながら、前記基板の前記被処理膜上へノズルから処理液を供給する工程と、
(f) 前記基板を回転させながら、前記センサによって前記少なくとも1つの測定位置で前記被処理膜の厚みの時間的変化をモニタする工程と、
を備える、基板処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理方法であって、
(g) 前記少なくとも1つの測定位置での前記被処理膜の厚みに基づいて、前記基板の表面上への処理液の供給を停止する工程
をさらに備える、基板処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の基板処理方法であって、
前記工程(g)は、前記少なくとも1つの測定位置で前記被処理膜の厚みが10μm以下に低減されるように行われる、基板処理方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(e)において、前記ノズルに前記径方向における周期的変位が与えられ、
前記工程(f)において、前記センサに前記径方向における周期的変位が与えられ、前記センサが前記基板の中心に最も近づくタイミングは、前記ノズルが前記基板の中心に最も近づくタイミングと異なっている、基板処理方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記少なくとも1つの基板は第1基板および第2基板を含み、前記基板処理方法は、前記工程(a)から前記工程(f)を行うことによって前記第1基板を処理した後に、前記工程(a)から前記工程(f)を再度行うことによって前記第2基板を処理する基板処理方法であり、
前記第1基板のための前記工程(e)における前記処理液の少なくとも一部が、前記第2基板のための前記工程(e)における前記処理液として再利用される、基板処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の基板処理方法であって、
前記第2基板は前記第1基板の直後に処理される基板であり、
前記第1基板の前記工程(f)の結果に基づいて、前記第2基板の前記工程(f)における前記時間的変化の予測範囲を算出する工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項17】
請求項11から16のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記基板は半径Rを有しており、
前記工程(d)において、0<r<r<Rを満たす正の値rおよびrが予め定められており、前記測定位置はr以上r以下に制限される、
基板処理方法。
【請求項18】
請求項11から17のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(d)は、
(d1) 前記少なくとも1つの候補位置を表示する工程と、
(d2) 前記少なくとも1つの候補位置のうちいずれを前記少なくとも1つの測定位置に決定するかの指示を受け付ける工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項19】
請求項11から18のいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記半導体デバイスは、イメージセンサデバイス、メモリデバイス、およびロジックデバイスのいずれかである、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法に関し、特に、処理液を用いた基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」と称する)の製造工程では、基板処理装置を用いて基板に対して様々な処理が行わる。例えば、基板の上面に形成された膜を処理液を用いて除去するエッチング処理が行われる。特開2003-97919号公報(特許文献1)によれば、エッチング液をウエハの表面に供給してその表面の薄膜を膜厚途中までエッチングする過程で、当該薄膜の膜厚がリアルタイムで検出される。そして、当該膜厚検出値が目標膜厚に達した時点で、エッチングが停止される。これによって、目標膜厚に高精度に制御された薄膜をウエハ表面に残すことが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-97919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロセスばらつき等に起因して、基板処理における被処理膜の厚みは、基板上のどの位置においても同じというわけではない。上記公報に記載の基板処理はこの点を考慮していないので、当該基板処理を含む製造方法によって製造されたデバイスの性能が不十分となることがある。別な観点で言えば、十分な性能を有する半導体デバイスの製造歩留まりが低くなることがある。
【0005】
本発明は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、十分な性能を有する半導体デバイスの製造に適した基板処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に従う基板処理方法は、径方向を有し、パワーデバイスとなる構造が設けられた複数のチップ領域を有し、被処理膜が設けられた少なくとも1つの基板を処理する基板処理方法であって、
(a) 前記基板を回転させながら、前記径方向においてセンサをスキャンさせることによって、前記径方向における前記被処理膜の厚みプロファイルを測定する工程と、
(b) 前記厚みプロファイルの平均厚みを算出する工程と、
(c) 前記厚みプロファイルが前記平均厚みを有する少なくとも1つの径方向位置を、少なくとも1つの候補位置として抽出する工程と、
(d) 前記少なくとも1つの候補位置の少なくともいずれかを、少なくとも1つの測定位置に決定する工程と、
(e) 前記基板を回転させながら、前記基板の前記被処理膜上へノズルから処理液を供給する工程と、
(f) 前記基板を回転させながら、前記センサによって前記少なくとも1つの測定位置で前記被処理膜の厚みの時間的変化をモニタする工程と、
を備える。
【0007】
本発明の他の態様に従う基板処理方法は、径方向を有し、非パワーデバイスである半導体デバイスとなる構造が設けられた複数のチップ領域を有し、被処理膜が設けられた少なくとも1つの基板を処理する基板処理方法であって、
(a) 前記基板を回転させながら、前記径方向においてセンサをスキャンさせることによって、前記径方向における前記被処理膜の厚みプロファイルを測定する工程と、
(b) 前記厚みプロファイルの最小厚みを算出する工程と、
(c) 前記厚みプロファイルが前記最小厚みを有する少なくとも1つの径方向位置を、少なくとも1つの候補位置として抽出する工程と、
(d) 前記少なくとも1つの候補位置の少なくともいずれかを、少なくとも1つの測定位置に決定する工程と、
(e) 前記基板を回転させながら、前記基板の前記被処理膜上へノズルから処理液を供給する工程と、
(f) 前記基板を回転させながら、前記センサによって前記少なくとも1つの測定位置で前記被処理膜の厚みの時間的変化をモニタする工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
一の態様の基板処理方法によれば、被処理膜の平均厚みを精度よく制御することができる。これにより被処理膜の厚みを過不足のないものとすることができる。よって、被処理膜の厚み方向に沿った電流経路を有するパワーデバイスにおいて、過大な厚みに起因して電気抵抗が過大となることを避け、かつ、過小な厚みに起因して耐電圧が不足することが避けることができる。
【0009】
他の態様の基板処理方法によれば、被処理膜の最小厚みを精度よく制御することができる。これにより基板処理が過度に進行することが防止される。よって、被処理膜に覆われていた箇所が意図せず侵食されてしまうことに起因しての、半導体デバイスの特性への悪影響を避けることができる。
【0010】
本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1における基板処理装置の構成の例を概略的に示す図である。
図2図1の液処理ユニットの構成の例を概略的に示す図である。
図3図2の液処理ユニットの主要部の平面図である。
図4図1の基板処理装置の各要素と制御部との接続関係の例を示す機能ブロック図である。
図5】基板処理方法によって処理されることになる基板の構成の例を概略的に示す平面図である。
図6図5の線VI-VIに沿う概略的な部分断面図である。
図7】実施の形態1における基板処理方法の例を示すシーケンス図である。
図8図7に対応するフローチャートである。
図9】実施の形態1における厚みプロファイルの測定の例を説明する模式図である。
図10】実施の形態1における測定位置の決定条件を設定するための設定画面の例を示す図である。
図11】実施の形態1における処理液の供給の停止のタイミングを決定する方法の例について説明するグラフ図である。
図12】実施の形態1における厚みプロファイルの測定の変形例を説明するグラフ図である。
図13】実施の形態2における基板処理方法の例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態2における厚みプロファイルの測定の例を説明する模式図である。
図15図7の変形例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、シーケンス図における時間幅は、実際の時間幅を厳密に示すものではない。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。また、以下に記載される説明における、相対的または絶対的な位置関係を示す表現、例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」または「同軸」などは、特に断らない限りは、その位置関係を厳密に示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において角度または距離が変位している場合を含むものとする。また、以下に記載される説明において、等しい状態であることを示す表現、例えば、「同一」、「等しい」、「均一」または「均質」などは、特に断らない限りは、厳密に等しい状態であることを示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において差が生じている場合を含むものとする。また、以下に記載される説明における、「対象物を特定の方向に移動させる」などの表現は、特に断らない限りは、対象物を当該特定の方向と平行に移動させる場合、および、対象物を当該特定の方向の成分を有する方向に移動させる場合を含むものとする。また、以下に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体に加えて、対象となる構成要素の上面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、例えば、「甲の上面に設けられる乙」と記載される場合、甲と乙との間に別の構成要素「丙」が介在することを妨げるものではない。また、以下に記載される説明において、形状を示す表現、例えば、「円形形状」などは、特に断らない限りは、厳密にその形状であることを示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において凹凸または面取りなどが形成されている場合を含むものとする。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に関する基板処理装置の構成の例を概略的に示す図である。なお、構成を理解しやすくする観点から、当該図面においては、一部の構成要素が省略、または、簡略化されて示される場合がある。
【0014】
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板WFを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。基板処理装置1は、基板WFに対してエッチング処理などの各種処理を行う。基板処理装置1は、X軸正方向に向かって順に、インデクサセクション2と、処理セクション3とを備える。また、処理セクション3は、X軸正方向に向かって順に、搬送モジュール3Aと、処理モジュール3Bとを備える。
【0015】
インデクサセクション2は、複数枚の基板WFを積層状態で収容可能な基板収容器21と、基板収容器21を支持するステージ22と、基板収容器21から未処理の基板WFを受け取り、また、処理セクション3において処理が完了した基板WFを基板収容器21へ渡すインデクサロボット23とを備える。なお、ステージ22の数は、図1の例では簡単のため1つとされたが、それ以上の数がY軸方向に並べられていてもよい。基板収容器21は、基板WFを密閉状態で収納するfront opening unified pod(FOUP)であってもよいし、standard mechanical inter face(SMIF)ポッド、または、open cassette(OC)などであってもよい。インデクサロボット23は、例えば、基台部23Aと、多関節アーム23Bと、互いに鉛直方向に間隔をあけて設けられる2つのハンド23Cおよびハンド23Dとを備える。基台部23Aは、例えば、基板処理装置1のインデクサセクション2の外形を規定するフレームに固定されている。多関節アーム23Bは、水平面に沿って回動可能な複数本のアーム部が互いに回動可能に結合されて構成されており、当該アーム部の結合箇所である関節部でアーム部間の角度を変更することによって、当該アーム部が屈伸可能に構成されている。また、多関節アーム23Bの基端部は、基台部23Aに対して、鉛直軸回りに回動可能に結合されている。さらに、多関節アーム23Bは、基台部23Aに対して昇降可能に結合されている。ハンド23Cおよびハンド23Dは、1枚の基板WFをそれぞれ保持可能に構成されている。インデクサロボット23は、ステージ22に保持された基板収容器21から1枚の未処理の基板WFを、例えばハンド23Cを用いて搬出する。そして、インデクサロボット23は、X軸負方向から搬送モジュール3Aにおける搬送機構31(後述)に当該基板WFを渡す。さらに、インデクサロボット23は、搬送機構31から1枚の処理済みの基板WFを、例えばハンド23Dを用いて受け取る。そして、インデクサロボット23は、ステージ22に保持された基板収容器21に当該基板WFを収容する。
【0016】
処理セクション3における搬送モジュール3Aは、1または複数枚の基板WFを水平姿勢に保持しつつ搬送可能な搬送機構31を備える。搬送機構31は、例えば、XZ平面およびXY平面に沿って形成される隔壁(ここでは、図示しない)によって囲まれた筒状の搬送路を移動するものであってもよい。また、搬送機構31は、X軸方向に延びるレールに案内されて往復移動するものであってもよい。搬送機構31によって、基板WFは、インデクサセクション2に近いX軸負方向の位置と、搬送ロボット33(後述)に近いX軸正方向の位置との間で搬送される。
【0017】
処理セクション3における処理モジュール3Bは、基板WFを搬送する搬送ロボット33と、搬送機構31から供給される未処理の基板WFに基板処理を行う複数の液処理ユニット34A、液処理ユニット34Bおよび液処理ユニット34Cとを備える。搬送ロボット33は、水平駆動部33Aと、鉛直駆動部33Bと、ハンド33Cと、ハンド33Dと、これらの構成が連結具33Fを介して取り付けられ、かつ、鉛直方向に延びる支柱33Eとを備える。
【0018】
水平駆動部33Aは、ハンド33Cおよびハンド33Dを水平方向に移動させる。水平駆動部33Aは、ステージ133Aと、ステージ133Aの上面を水平方向に往復移動する水平スライダ133Bと、水平スライダ133Bを移動させる水平モータ133Cとを備える。ステージ133Aの上面には直線状に延びるレール(ここでは、図示せず)が設けられており、水平スライダ133Bの移動方向が当該レールによって規制される。水平スライダ133Bの移動は、例えば、リニアモータ機構またはボールネジ機構などの周知の機構によって実現される。水平スライダ133Bの先端には、ハンド33Cおよびハンド33Dが設けられている。水平モータ133Cによって水平スライダ133Bがレールに沿って移動すると、ハンド33Cおよびハンド33Dは水平方向に進退移動可能となる。換言すると、水平駆動部33Aは、ハンド33Cおよびハンド33Dを支柱33Eから水平方向に離間および接近する方向に移動させる。水平駆動部33Aは、ステージ133Aを鉛直方向に沿う回動軸線Z1まわりに回動させる回動モータ133Dを備える。回動モータ133Dによって、ハンド33Cおよびハンド33Dは、回動軸線Z1まわりに、支柱33Eに干渉しない範囲で回動することができる。
【0019】
鉛直駆動部33Bは、鉛直スライダ133Gと、鉛直モータ133Hとを備える。鉛直スライダ133Gは、支柱33Eに設けられた鉛直方向に延びるレール(ここでは、図示せず)に係合している。鉛直モータ133Hは、鉛直スライダ133Gを当該レールに沿って鉛直方向に往復移動させる。鉛直スライダ133Gの移動は、例えば、リニアモータ機構またはボールネジ機構などの周知の機構で実現される。
【0020】
連結具33Fは、鉛直スライダ133Gおよびステージ133Aを連結し、かつ、ステージ133Aを下方から支持している。鉛直モータ133Hが鉛直スライダ133Gを移動させることによって、ステージ133Aが鉛直方向に移動する。これによって、ハンド33Cおよびハンド33Dが鉛直方向に昇降移動することができる。
【0021】
なお、水平駆動部33Aがハンド33Cおよびハンド33Dを水平方向と平行に移動させることは必須ではなく、ハンド33Cおよびハンド33Dを、水平方向および鉛直方向の合成方向に移動させてもよい。すなわち、「水平方向に移動させる」とは、水平方向の成分を持つ方向に移動させることをいう。同様に、鉛直駆動部33Bがハンド33Cおよびハンド33Dを鉛直方向と平行に移動させることは必須ではなく、ハンド33Cおよびハンド33Dを、鉛直方向および水平方向の合成方向に移動させてもよい。すなわち、「鉛直方向に移動させる」とは、鉛直方向の成分を持つ方向に移動させることをいう。
【0022】
搬送ロボット33は、搬送機構31に保持された1枚の未処理の基板WFを、例えばハンド33Cを用いて搬出する。そして、搬送ロボット33は、例えば、X軸負方向から液処理ユニット34Aにおけるスピンベース51A(後述)の上面に当該基板WFを配置する。
【0023】
また、搬送ロボット33は、液処理ユニット34A内、液処理ユニット34B内または液処理ユニット34C内から1枚の処理済みの基板WFを、例えばハンド33Dを用いて受け取る。そして、搬送ロボット33は、搬送機構31に当該基板WFを渡す。
【0024】
液処理ユニット34A、液処理ユニット34Bおよび液処理ユニット34Cは、Z軸正方向に順に重ねられており、処理タワーTWを構成する。なお、液処理ユニットの数は、図1の例では簡単のため3つとされたが、それ以上の数であってもよい。また、図1においては、液処理ユニット34A、液処理ユニット34Bおよび液処理ユニット34Cは搬送ロボット33のX軸正方向に位置するように示されているが、液処理ユニット34A、液処理ユニット34Bおよび液処理ユニット34Cが配置される位置はこの場合に限られるものではなく、例えば、搬送ロボット33のX軸正方向、Y軸正方向またはY軸負方向のいずれかに配置されていてもよい。
【0025】
図2は、本実施の形態に関する基板処理装置における、液処理ユニット34Aの構成の例を概略的に示す図である。なお、液処理ユニット34Bおよび液処理ユニット34Cの構成も、図2に例が示される場合と同様である。液処理ユニット34Aは、内部空間を有する箱形の処理室50と、処理室50内で1枚の基板WFを水平姿勢で保持しつつ基板WFの中央部を通る鉛直な回転軸線Z2まわりに基板WFを回転させるスピンチャック51と、基板WFの回転軸線Z2まわりにスピンチャック51を取り囲む筒状の処理液回収ガード511とを備える。
【0026】
処理室50は、箱状の隔壁50Aによって囲まれている。隔壁50Aには、処理室50内に基板WFを搬出入するための開口部50Bが形成されている。開口部50Bは、シャッタ50Cによって開閉される。シャッタ50Cは、シャッタ昇降機構(ここでは、図示せず)によって、開口部50Bを覆う閉位置(図2において二点鎖線で示される)と、開口部50Bを開放する開位置(図2において実線で示される)との間で昇降させられる。基板WFの搬出入の際には、搬送ロボット33が、開口部50Bを通して処理室50内にハンド33Cおよび33Dをアクセスさせる。これによって、スピンチャック51の上面に未処理の基板WFを配置させたり、または、スピンチャック51から処理済の基板WFを取り除いたりすることができる。
【0027】
スピンチャック51は、水平姿勢の基板WFの下面を真空吸着する円板状のスピンベース51Aと、スピンベース51Aの中央部から下方に延びる回転軸51Cと、回転軸51Cを回転させることにより、スピンベース51Aに吸着されている基板WFを回転させるスピンモータ51Dとを備える。なお、スピンチャック51は、図2に例が示された真空吸着式のチャックである場合に限られず、例えば、スピンベースの上面外周部から上方に突出する複数のチャックピンを備え、当該チャックピンによって基板WFの周縁部を挟持する挟持式のチャックであってもよい。
【0028】
液処理ユニット34Aは、スピンチャック51に保持されている基板WFの上面に向けて処理液を吐出する処理液ノズル52と、処理液ノズル52が先端に取り付けられている処理液アーム152と、処理液ノズル52に供給される処理液を貯留する処理液タンク53と、処理液タンク53内の処理液を処理液ノズル52に導く処理液配管54と、処理液タンク53内の処理液を処理液配管54に送る送液装置55(例えば、ポンプ)と、処理液配管54の内部を開閉する処理液バルブ56とを備える。
【0029】
処理液アーム152は、回転駆動源152Aと、軸体152Bと、一端が軸体152Bの上端に固定され、かつ、他端に処理液ノズル52が取り付けられたアーム部152Cとを備える。処理液アーム152は、回転駆動源152Aによって軸体152Bが回転することで、アーム部152Cの先端に取り付けられた処理液ノズル52が、スピンチャック51に保持されている基板WFの上面に沿って移動可能となる。すなわち、アーム部152Cの先端に取り付けられた処理液ノズル52が、水平方向に移動可能となる。ここで、回転駆動源152Aの駆動は、後述の制御部によって制御される。
【0030】
さらに、液処理ユニット34Aは、処理液バルブ56よりも上流側(すなわち、処理液タンク53側)で処理液配管54と処理液タンク53とを接続する循環配管57と、循環配管57の内部を開閉する循環バルブ58と、循環配管57を流れる処理液の温度を調節する温度調節装置59とを備える。処理液バルブ56および循環バルブ58の開閉は、後述の制御部によって制御される。処理液タンク53内の処理液が処理液ノズル52に供給される場合には、処理液バルブ56が開かれ、循環バルブ58が閉じられる。この状態では、送液装置55によって処理液タンク53から処理液配管54に送られた処理液が、処理液ノズル52に供給される。一方、処理液ノズル52への処理液の供給が停止される場合には、処理液バルブ56が閉じられ、循環バルブ58が開かれる。この状態では、送液装置55によって処理液タンク53から処理液配管54に送られた処理液が、循環配管57を通じて処理液タンク53内に戻る。そのため、処理液ノズル52への処理液の供給が停止されている供給停止中は、処理液が、処理液タンク53、処理液配管54および循環配管57によって構成された循環経路を循環し続ける。温度調節装置59は、循環配管57内を流れる処理液の温度を調節する。したがって、処理液タンク53内の処理液は、供給停止中に循環経路で加熱され、室温よりも高い温度に維持される。
【0031】
また、液処理ユニット34Aは、スピンチャック51に保持されている基板WFの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル60と、リンス液ノズル60が先端に取り付けられているリンス液アーム160と、リンス液供給源(ここでは、図示せず)からのリンス液をリンス液ノズル60に供給するリンス液配管61と、リンス液配管61からリンス液ノズル60へのリンス液の供給および供給停止を切り換えるリンス液バルブ62とを備える。リンス液としては、DIW(脱イオン水)などが用いられる。リンス液アーム160は、回転駆動源160Aと、軸体160Bと、一端が軸体160Bの上端に固定され、かつ、他端にリンス液ノズル60が取り付けられたアーム部160Cとを備える。リンス液アーム160は、回転駆動源160Aによって軸体160Bが回転することで、アーム部160Cの先端に取り付けられたリンス液ノズル60が、スピンチャック51に保持されている基板WFの上面に沿って移動可能となる。すなわち、アーム部160Cの先端に取り付けられたリンス液ノズル60が、水平方向に移動可能となる。ここで、回転駆動源160Aの駆動は、後述の制御部によって制御される。処理液ノズル52によって基板WFに処理液が供給された後に、リンス液ノズル60からリンス液が基板WFに供給されることによって、基板WFに付着している処理液を洗い流すことができる。
【0032】
処理液回収ガード511は、スピンチャック51の周囲を取り囲むように設けられている。処理液回収ガード511は、図示しないモータによって、鉛直方向に昇降するように構成されていることが好ましい。その場合、処理液回収ガード511の上部は、その上端がスピンベース51Aに保持された基板WFよりも上側となる上位置と、当該基板WFよりも下側になる下位置との間で昇降する。基板WFの上面から外側に飛散した処理液は、処理液回収ガード511の内側面に受け止められる。そして、処理液回収ガード511に受け止められた処理液は、処理室50の底部に設けられた排液口513を通じて、処理室50の外部に適宜排出される。排液口513から排出された処理液の少なくとも一部は再利用されることが好ましい。言い換えれば、排出された処理液の少なくとも一部は、処理液タンク53へ戻されることによって再利用されることが好ましい。
【0033】
また、液処理ユニット34Aは、基板WF上に設けられた膜の膜厚を測定するためのセンサ81と、センサ81が先端に取り付けられている測定アーム181とを備える。
【0034】
センサ81としては、例えば、光学式の変位センサなどが用いられる。測定の際にセンサ81から対向する基板WFなどに照射される光の測定照射波長を、測定対象となる膜(具体的には、図6を参照して後述する被処理膜501)に合わせて調整することによって、様々な膜(例えば、シリコン膜)の膜厚を測定することができる。
【0035】
測定アーム181は、回転駆動源181Aと、軸体181Bと、一端が軸体181Bの上端に固定され、かつ、他端にセンサ81が取り付けられたアーム部181Cと、を備える。回転駆動源181Aによって軸体181Bが回転することで、アーム部181Cの先端に取り付けられたセンサ81が、スピンチャック51に保持されている基板WFの上面に沿って移動可能となる。すなわち、アーム部181Cの先端に取り付けられたセンサ81が、水平方向に移動可能となる。ここで、回転駆動源181Aの駆動は、後述の制御部によって制御される。
【0036】
測定アーム181は、少なくとも処理液アーム152またはリンス液アーム160よりも基板WFの上面から離間して位置している。すなわち、測定アーム181の鉛直方向の高さH1(スピンベース51Aの上面からアーム部181Cまたはセンサ81までの長さ)は、処理液アーム152の鉛直方向の高さH2(スピンベース51Aの上面からアーム部152Cまたは処理液ノズル52までの長さ)またはリンス液アーム160の鉛直方向の高さH3(スピンベース51Aの上面からアーム部160Cまたはリンス液ノズル60までの長さ)よりも高い。このように、測定アーム181が基板WFの上面から離間して位置していることによって、基板WFの上面に処理液などが吐出された際に、跳ね返った液などがセンサ81に付着することを抑制することができる。なお、図2の例に示されるように、測定アーム181は、処理液アーム152およびリンス液アーム160の双方よりも、スピンベース51Aの上面から離間して位置していてもよい。
【0037】
図3は、液処理ユニット34Aにおけるそれぞれのアームの位置の例を示す平面図である。処理液アーム152、リンス液アーム160および測定アーム181は、それぞれがスピンベース51Aの径方向(少なくとも、径方向の成分を有する方向)に移動可能であり、スピンチャック51において回転する基板WFの上面をスキャン可能である。
【0038】
図4は、基板処理装置1(図1)における、制御部7と他の各要素との接続関係の例を示す機能ブロック図である。制御部7は、それぞれの液処理ユニットの作動部(例えば、処理液バルブ56、循環バルブ58、リンス液バルブ62、シャッタ50Cまたはスピンモータ51Dなど)、搬送機構31を駆動させる駆動部(例えば、搬送機構31の往復移動のためのモータなど)、インデクサロボット23の作動部(例えば、多関節アーム23Bを駆動させるためのモータなど)、搬送ロボット33の作動部(例えば、水平モータ133C、回動モータ133Dまたは鉛直モータ133Hなど)に接続されており、それらの動作を制御する。
【0039】
制御部7のハードウェア構成は、一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部7は、各種演算処理を行う中央演算処理装置(central processing unit、すなわち、CPU)71と、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるリードオンリーメモリー(read only memory、すなわち、ROM)72と、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるランダムアクセスメモリー(random access memory、すなわち、RAM)73と、制御用アプリケーション(プログラム)またはデータなどを記憶する非一過性の記憶部74とを備える。CPU71、ROM72、RAM73および記憶部74は、バス配線75などによって互いに接続されている。制御アプリケーションまたはデータは、非一過性の記録媒体(例えば、半導体メモリ、光学メディアまたは磁気メディアなど)に記録された状態で、制御部7に提供されてもよい。この場合、当該記録媒体から制御アプリケーションまたはデータを読み取る読み取り装置がバス配線75に接続されているとよい。また、制御アプリケーションまたはデータは、ネットワークを介してサーバーなどから制御部7に提供されてもよい。この場合、外部装置とネットワーク通信を行う通信部がバス配線75に接続されているとよい。
【0040】
バス配線75には、入力部76および表示部77が接続されている。入力部76はキーボードおよびマウスなどの各種入力デバイスを含む。作業者は、入力部76を介して制御部7に各種情報を入力する。表示部77は、液晶モニタなどの表示デバイスで構成されており、各種情報を表示する。
【0041】
図5は、基板処理方法によって処理されることになる基板WFの構成の例を概略的に示す平面図である。本実施の形態の基板処理方法は、少なくとも1つの基板WFを処理するものであり、好ましくは、前述した液処理ユニット34A等の各液処理ユニットによって複数の基板WFを順次処理するものである。基板WFの各々は、径方向において半径Rを有する円形形状を有している。また基板WFの各々は複数のチップ領域RSを有する。
【0042】
図6は、図5の線VI-VIに沿う概略的な部分断面図である。基板WFは、被処理膜501と、デバイス構造層502とを有する。被処理膜501は、面501aと、厚み方向(図中、縦方向)においてその反対の面501bとを有している。デバイス構造層502は、面501bに面する面502aと、その反対の面502bとを有している。デバイス構造層502は半導体層を含む。被処理膜501は、典型的には半導体基板であり、例えばシリコン基板である。チップ領域RSの各々には、半導体デバイスとなる構造が設けられている。なお半導体デバイスは、本実施の形態における基板処理方法の後、さらにいくつかの追加工程を経て、最終的な製品として得られる。これら追加工程は、基板WFをダイシングすることによって各チップ領域RSを切り出す工程を含む。
【0043】
被処理膜501は、厚みdwf(例えば1mm程度)を有する基板をグラインドすることによって、厚みdgr(例えば50μm程度)を有する膜とすることによって形成されてよい。グラインドは、典型的には基板の縁部には施されず、その場合、図6に示されているように、基板WFは、幅数mm程度の縁部において局所的に厚い部分を有する。以下、この厚い部分については無視して説明を行う。
【0044】
本実施の形態1においては、上記半導体デバイスは縦型パワーデバイスである。縦型パワーデバイスは、典型的には、1対の主電極(例えば、ソース電極/ドレイン電極の対、エミッタ電極/コレクタ電極の対、または、アノード電極/カソード電極の対)を有する。面502b上には1対の主電極の一方が既に設けられており、1対の主電極の他方は、本実施の形態における基板処理方法によって被処理膜501の厚みが厚みdgrから厚みdtgtへ低減された後、面501a上に形成されることになる。厚みdtgtが過大でないことによって、縦型パワーデバイスの電気抵抗が過大となることを避けることができる。また厚みdtgtが過小でないことによって、縦型パワーデバイスの耐電圧が不足することを避けることができる。デバイス構造層502が含む半導体層は、被処理膜501上に形成されたエピタキシャル層であってよい。この半導体層と、エピタキシャル層とは、屈折率の相違等に起因して光学的に区別可能である。
【0045】
次に、図7から図9を参照しつつ、本実施の形態における基板処理方法について、以下に説明する。なおこの基板処理方法は、基板処理装置1(図1)によって行われるものである。具体的にはこの基板処理方法は、基板収容器21(図1)に収容されている基板WFが、インデクサロボット23、搬送機構31および搬送ロボット33を介していずれかの液処理ユニットに搬入され、さらにスピンチャック51(図2)に保持された状態で行われるものである。
【0046】
図7および図8のそれぞれは、本実施の形態1における基板処理方法の例を示すシーケンス図およびフローチャートである。
【0047】
まず、リンス処理が行われる(図8:ステップST11)。リンス処理では、制御部7(図4)の制御でリンス液ノズル60(図3)からリンス液が吐出される。これにより、基板WFの面501a(図6)における付着物などが洗い流される。リンス液としては、例えば、DIW(脱イオン水)が用いられる。
【0048】
次に、乾燥処理が行われる(図8:ステップST12)。乾燥処理では、制御部7の制御で、基板WFに対してIPA(イソプロピルアルコール)などを供給した後、スピンベース51Aを回転させることによって基板WFが乾燥される。
【0049】
次に、径方向における被処理膜501の厚みプロファイルの測定が行われる(図8:ステップST21)。具体的には、基板WFを回転させながら、径方向においてセンサ81をスキャンさせることによって、厚みプロファイルが測定される。センサ81のスキャンは、制御部7の制御で測定アーム181のアーム部181Cを回動させることによって行われる。図9は、上記ステップST21の例を説明する模式図である。センサ81のスキャンSCによって、径方向の位置rについての厚みdのプロファイルが得られる。スキャンSCの速度が基板WFの回転速度に比して十分に遅ければ、径方向に依存しての厚みプロファイルが一義的に得られる。例えば、径方向におけるセンサ81の位置rがr、rおよびrのそれぞれのときに、円周C、CおよびCにおける被処理膜501の厚みの平均値が、厚みdとして検出される。
【0050】
次に制御部7による算術処理が行われる。まず、厚みプロファイル(図9)から平均厚みdavgが算出される(図8:ステップST22A)。次に、後述する厚み測定において特に着目されることになる少なくとも1つの候補位置が抽出される(図8:ステップST23A)。具体的には、厚みプロファイルが平均厚みdavgを有する少なくとも1つの径方向位置rが、少なくとも1つの候補位置として抽出される。図9に示された例においては、3つの位置ravg1、ravg2、ravg3が抽出される。
【0051】
次に、測定位置の決定(図8:ステップST24)が行われる。具体的には、少なくとも1つ(上記例においては3つ)の候補位置の少なくともいずれかが、少なくとも1つの測定位置に決定される。以下、その方法の例について詳述する。
【0052】
図10は、測定位置の決定条件を設定するために表示部77(図4)が作業者へ表示する画面SWの例を示す図である。画面SWは、厚みプロファイルウィンドウDA1と、選択ウィンドウDA2とを有している。厚みプロファイルウィンドウDA1は、厚みプロファイルに加えて、上述した候補位置を表示することが好ましい。図示された例においては、位置ravg1、ravg2およびravg3のそれぞれの座標16mm、55mmおよび125mmが表示されている。また厚みプロファイルウィンドウDA1は、推奨下限値rおよび推奨上限値rを表示することが好ましい。推奨下限値rおよび推奨上限値rは、予め定められた正の値であり、基板WFの半径Rに関して、0<r<r<Rを満たすものである。好ましくは、R/3≦r<2R/3かつR/3<r≦2R/3であり、図10においてはr=R/3かつr=2R/3である。なお図10の例は、R=150mm程度の場合に対応している。
【0053】
位置rに関して、0≦r<R/3の範囲は、処理液ノズル52が基板WFの中心近傍に位置するときに、処理液が厚くなり、かつその液面が不安定になりやすい範囲であり、高精度の厚み測定には適していない。一方、2R/3<rの範囲は、基板WFの回転の影響に起因して厚み測定が乱されやすく、回転の偏心が大きい場合には測定が特に乱される。また、測定される円周の長さが大きいので、測定値がばらつきやすい。
【0054】
入力部76(図4)は、少なくとも1つの候補位置(図10においては3つの候補位置ravg1、ravg2、ravg3)のうちいずれを少なくとも1つの測定位置に決定するかの指示を受け付けてよい。具体的には、選択ウィンドウDA2のボタンBT1~BT5のいずれが作業者によって選択されるかを受け付けてよい。作業者がボタンBT1を選択した場合は位置ravg1が測定位置に含まれ、ボタンBT2を選択した場合は位置ravg2が測定位置に含まれ、ボタンBT3を選択した場合は位置ravg3が測定位置に含まれる。作業者がボタンBT4を選択した場合は、測定位置として、複数の候補位置のうち、推奨位置rに最も近いものが、測定位置として選択される。推奨位置rは、好ましくは推奨下限値r以上推奨上限値r以下であり、例えば推奨下限値rおよび推奨上限値rの平均値である。図10の例においては、ボタンBT4が選択されると、結果的に、位置ravg2が測定位置に決定される。作業者がボタンBT5を選択した場合、測定位置はr以上r以下に制限される。図10の例においては、ボタンBT5が選択されると、結果的に、位置ravg2が測定位置に決定される。
【0055】
なお上記においては、測定位置の決定に際して作業者の指示が与えられる場合について説明したが、作業者の指示なしに制御部7による決定がなされてもよい。また測定位置の数は1つ以上の任意の数である。測定位置の数が複数の場合、後述する厚みの時間的変化のモニタにおいて、センサ81が適宜移動されることによって、各測定位置の厚みがモニタされる。これら複数の測定位置での厚みに基づいて算出された代表厚みが、測定位置での厚みとみなされてもよい。代表厚みは、例えば、複数の測定位置での厚みの平均である。測定位置の数が1つの場合、後述する、厚みの時間的変化のモニタにおいて、センサ81の位置は、測定位置で固定されていてよく、あるいは、測定位置での間欠的なモニタの合間に測定位置から外れてもよい。
【0056】
次に、処理液の供給が開始される(図8:ステップST25)。これにより、基板WFを回転させながら、基板WFの被処理膜501上へ処理液ノズル52から処理液が供給される。これにより、基板WFの被処理膜501へのエッチング処理などが行われる。例えば、フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO)との混合液であるフッ硝酸を用いて、被処理膜501としてのシリコン膜のエッチング処理が行われる。
【0057】
次に、上記のように処理液が供給されている際、厚みの時間的変化のモニタが行われる(図8:ステップST26)。具体的には、基板WFを回転させながら、センサ81によって、上述した少なくとも1つの測定位置(例えば、図9における位置ravg2)で、被処理膜501の厚みの時間的変化がモニタされる。
【0058】
処理液が供給されている際、処理液ノズル52には、径方向における周期的変位SC2(図3)が与えられることが好ましい。加えて、センサ81にも、径方向における周期的変位SC1(図3)が与えられることが好ましい。その場合、センサ81が基板WFの中心に最も近づくタイミングは、処理液ノズル52が基板WFの中心に最も近づくタイミングと異なっている。好ましくは、センサ81の変位SC1の周期と処理液ノズル52の変位SC2の周期とは同一周期であり、かつ、センサ81が基板WFの中心に最も近づくタイミングは、処理液ノズル52が基板WFの中心から最も遠ざかるタイミングである。これにより、処理液が基板WF上に衝突する位置と、センサ81の位置との間の距離が確保されやすい。よって、処理液の液面が不安定な位置と、センサ81の位置との間の距離が確保されやすい。その結果、センサ81による測定を安定的に行うことができる。
【0059】
次に、処理液の供給の停止が行われる(図8:ステップST27)。具体的には、少なくとも1つの測定位置(例えば、図9における位置ravg2)での被処理膜501の厚みに基づいて、基板WFの表面上への処理液の供給が停止される。この具体的な方法の例については後述する。ステップST27は、少なくとも1つの測定位置で被処理膜501の厚みが20μm以上に保たれるように行われることが好ましく、30μm以上に保たれるように行われることがより好ましい。
【0060】
次に、リンス処理が行われる(図8:ステップST31)。具体的には、制御部7の制御でリンス液ノズル60からリンス液が吐出される。これにより、基板WF上の処理液などが洗い流される。リンス液としては、例えば、DIW(脱イオン水)が用いられる。次に、乾燥処理(図8:ステップST32)が、前述したステップST12と同様に行われる。次に、基板処理の結果を確認する意図で、厚みプロファイルの測定が再度行われてよい(図8:ステップST41)。
【0061】
以上により、本実施の形態1の基板処理が行われる。
【0062】
図11は、処理液の供給の停止(ステップST27(図8))のタイミングを決定する方法の例について説明するグラフ図である。図中、線Gactは、測定位置での厚みdの検出値であり、d=dcorとなった時間t=tactにおいて、処理液の供給が停止される。ここで、dcor=dtgt MGが満たされ、厚みdtgtは目標値であり、補正値MGは、予め定められた補正厚みである。処理液の供給が停止されても、基板WF上から処理液が完全に除去されるまでには、ある程度の時間を要するので、基板処理の進行はすぐには停止しない。補正値MGは、これを考慮して定められ、例えば1~2μm程度である。

【0063】
前述したように、本実施の形態における基板処理方法は、複数の基板WFを順次処理するものであってよい。この場合、図8に示された方法によって第1基板WFが処理された後に、当該方法を再度行うことによって第2基板WFが処理される。ここで、第2基板WFは第1基板WFの直後に処理される基板のことである。この際、処理液ノズル52から第1基板WFの被処理膜501上へ供給された処理液の少なくとも一部が、処理液ノズル52から第2基板WFの被処理膜501上へ供給される処理液として再利用されてよい。これにより処理液の消費量を抑制することができるが、一方で、処理液の特性の経時的変化が無視できなくなる。そこで、本実施の形態のように、基板処理方法の進行をセンサ81によってモニタし、その結果に応じて処理時間等の処理条件を調整することが、より重要となる。
【0064】
上記のように第1基板WFおよび第2基板WFが処理される場合、第1基板WFの時間的変化のモニタ結果(図8:ステップST26)に基づいて、第2基板WFの時間的変化の予測範囲が、線Gminおよび線Gmax(図11)に示すように算出されてよい。例えば、第1基板WFの線Gactの傾きに対して、予め定められた0より大きく1より小さい係数、および、予め定められた1より大きい係数のそれぞれを乗じることによって、線Gmaxおよび線Gminの傾きが決定されてよい。その場合、もしも所定のタイミング(例えば、時間t=tact)において第2基板WFの線Gactが線Gmaxと線Gminとの間の範囲から逸脱したときは、制御部7は作業者に対して警告を発することが好ましい。これにより、基板処理の進行速度が直前の基板処理に比して顕著に変動していることを作業者に警告することができる。また制御部7は、警告を発するだけでなく、基板WFの連続的な処理を停止してもよい。
【0065】
図12は、実施の形態1における厚みプロファイルの測定の変形例を説明するグラフ図である。本変形例は、チップ領域RSに設けられた、縦型パワーデバイスとなる構造が、トレンチゲート構造を有している場合に、特に好ましい。トレンチに対応して、被処理膜501の厚みプロファイルは、図示されているように、局所的に小さな値を有する。このような値を、後の算術処理における考慮から除外するため、本変形例においては、推定厚み(図12の例においては100μm)を基準として、予め定められた許容範囲内にある厚みのみが、厚みプロファイルに用いられる。言い換えれば、厚みプロファイルのうち、予め定められた許容範囲内にある厚みのみが、その後の算術処理(本実施の形態においては、図13のステップST22A)に用いられる。推定厚みの情報は、入力部76から受け付けられてよい。許容範囲は、例えば、推定厚みを基準として±2%であり、図12の例においては98μm以上102μm以下である。
【0066】
<実施の形態2>
本実施の形態2においても、前述した実施の形態1と同様、チップ領域RS(図5および図6)の各々には、半導体デバイスとなる構造が設けられている。ただし本実施の形態2においては、実施の形態1と異なり、半導体デバイスは非パワーデバイス(例えば、イメージセンサデバイス、メモリデバイス、およびロジックデバイスのいずれか)である。被処理膜501(図6)は、これら非パワーデバイスの製造過程において必要であるものの、最終的な製品としては不要なもの(例えば、最終的に必要となるデバイス構造を一時的に支持するために用いられるベース基板)である。そこで、本実施の形態における基板処理方法によって、被処理膜501は、できる限り除去されることが好ましい。被処理膜501が除去されることによって、半導体デバイスを小型化することができる。特にイメージセンサデバイスの受光面が面502a(図6)である場合、被処理膜501は光路を遮るので、その除去は感度を確保する上で重要である。一方で、基板処理が過度に進行すると、被処理膜501に覆われていたデバイス構造層502(図6)が意図せず侵食されてしまうことに起因しての、半導体デバイスの特性への悪影響が懸念される。そこで、被処理膜501の最小厚みdminが管理されることによって、上述した侵食を抑制することができる。侵食を十分に防ぐには、通常、最小厚みdminをゼロにまでは低減しないことが好ましい。ただし、デバイス構造層502の面502aがエッチングストップ膜(例えば窒化シリコン膜)によって保護されている場合は、最小厚みdminをゼロにまで低減することが比較的容易に可能である。
【0067】
基板処理方法において、前述した実施の形態1においては平均厚みdavg図9)が管理されるのに対して、本実施の形態2においては、上記理由から被処理膜501の最小の厚みdminが管理される。以下、主に実施の形態1における基板処理方法との相違について説明する。
【0068】
図13は、本実施の形態2における基板処理方法の例を示すフローチャートである。ステップST21までは実施の形態1と同様である。
【0069】
次に制御部7による算術処理が行われる。具体的には、まず、厚みプロファイル(図14)から最小厚みdminが算出される(図13:ステップST22B)。次に、厚み測定において特に着目される少なくとも1つの候補位置が抽出される(図8:ステップST23B)。具体的には、厚みプロファイルが最小厚みdminを有する少なくとも1つの径方向位置rが、少なくとも1つの候補位置として抽出される。図14に示された例においては、1つの位置rminが抽出される。
【0070】
次に、測定位置の決定(図8:ステップST24)が行われる。具体的には、少なくとも1つの候補位置の少なくともいずれかが、少なくとも1つの測定位置に決定される。図14の例においては、1つの候補位置rminしか抽出されていないので、これがそのまま測定位置に決定される。なお、厚みdの有効数字等によっては、複数の候補位置が抽出される可能性があり、その場合、実施の形態1で説明した方法と同様の方法によって、それらの中から少なくとの1つの測定位置が適宜選択されてよい。次に、実施の形態1と同様に、処理液の供給の開始(図8:ステップST25)と、厚みの時間的変化のモニタ(図8:ステップST26)とが行われる。
【0071】
次に、処理液の供給の停止が行われる(図8:ステップST27)。具体的には、少なくとも1つの測定位置(図14の例においては位置rmin)での被処理膜501の厚みに基づいて、基板WFの表面上への処理液の供給が停止される。ステップST27は、少なくとも1つの測定位置で被処理膜501の厚みが10μm以下に低減されるように行われることが好ましく、例えば4μm程度に低減される。なお、処理液の供給の停止のタイミングは、図11を参照して実施の形態1において説明した方法と同様の方法によって決定されてよい。
【0072】
以降、実施の形態1と同様にステップST31、ステップ32およびステップS41が行われることによって、本実施の形態の基板処理が行われる。なお、上記において特に記載した特徴以外は、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0073】
なお、実施の形態1および2のいずれも、図7に示されたシーケンスに沿って実施可能であるが、本発明の基板処理方法はこのシーケンスに限定されるものではない。例えば、図15に示すように、厚みプロファイルの測定がリンス処理中に行われてもよく、それにより処理時間を短縮することができる。
【0074】
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【0075】
また、以上に記載された実施の形態で記載されたそれぞれの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、それぞれの構成要素は「部」または「処理回路」(circuitry)などと称される。
【符号の説明】
【0076】
1 :基板処理装置
7 :制御部
34A :液処理ユニット
52 :処理液ノズル
76 :入力部
77 :表示部
81 :センサ
501 :被処理膜
502 :デバイス構造層
511 :処理液回収ガード
513 :排液口
RS :チップ領域
WF :基板
図1
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