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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B29D30/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019229991
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098279
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 邦弘
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119102(JP,A)
【文献】特開2002-120301(JP,A)
【文献】特開2017-030172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台に帯状タイヤ構成部材を載置し、
ボビンを、軸心廻りに回転させながら前記帯状タイヤ構成部材に対して長手方向に移動させて、前記ボビンの外周部に前記帯状タイヤ構成部材を巻き取り、
前記帯状タイヤ構成部材を巻き取るときの最終段階において、前記ボビンの前記軸心の高さを低下させることによって前記帯状タイヤ構成部材に対する前記ボビンの巻き取り点における接地荷重を増大させ
前記最終段階において、前記ボビンの前記軸心の前記載置台からの高さ寸法であるボビン高さが、当該最終段階の開始時における前記ボビンに巻き取られた帯状タイヤ構成部材の半径の95%以上98%以下である、帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法。
【請求項2】
載置台に帯状タイヤ構成部材を載置し、
ボビンを、軸心廻りに回転させながら前記帯状タイヤ構成部材に対して長手方向に移動させて、前記ボビンの外周部に前記帯状タイヤ構成部材を巻き取り、
前記帯状タイヤ構成部材を巻き取るときの最終段階において、前記ボビンの前記軸心の高さを低下させることによって前記帯状タイヤ構成部材に対する前記ボビンの巻き取り点における接地荷重を増大させ
前記最終段階は、前記帯状タイヤ構成部材のうち未だボビンに巻き取られておらず前記載置台に載置されている未巻き取られ部に生じる摩擦力が、ボビンによる巻き取り力を下回る前に、開始される、帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法。
【請求項3】
前記ボビンは、前記帯状タイヤ構成部材の巻き取り初期段階において、前記載置台に載置された前記帯状タイヤ構成部材に対して、間隔を空けて上方に位置している、
請求項1又は2に記載の帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法。
【請求項4】
前記帯状タイヤ構成部材は、成型ドラムに巻回された状態で、タイヤ周方向に沿って延びる一対の周方向辺と、タイヤ周方向に対して傾斜した方向に延びる一対の傾斜辺とを有するように、平行四辺形状に形成されており、前記周方向辺に沿った方向に前記ボビンに巻き取られ、
前記傾斜辺のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、3度以上9度以下である、
請求項1~3のいずれか1つに記載の帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長尺の帯状タイヤ形成部材として補強ベルトの形成方法が開示されている。図5に示されるように、この補強ベルト100は、長手方向に略平行に配列した複数のベルトコード110をゴム被覆してなる原反105を、カッター120により長手方向に対して低角度(例えば6度以上9度以下)で裁断して形成される。図6を合わせて参照して、補強ベルト100は、成型ドラム200に巻回された状態で、タイヤ周方向に延びており裁断された部分として形成される周方向辺111,112と、ベルトコード110に平行に延びる傾斜辺113,114とを有する平行四辺形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-30172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低角度で裁断された補強ベルト100は、長大化しやすく、帯状形態で成型工程に搬送するのは容易ではない。このため、補強ベルト100を、いったんボビンに巻き取ることによって、コンパクト化して扱いやすくすることが考えられる。載置台上の補強ベルト100(長尺の帯状タイヤ構成部材)をボビンに巻き取る場合、ボビンを軸心廻りに回転させながら補強ベルト100に対して長手方向に移動させて、外周部に補強ベルト100を巻き取る方法が考えられる。
【0005】
この方法では補強ベルト100は、ボビンに巻き取られるにつれて、載置台上の未巻き取られ部が減少するので、未巻き取られ部の減少に起因して載置台との間で生じる最大静止摩擦力が低下する。このため、ボビンの回転による巻き取り力が、前記最大静止摩擦力を上回ると、未巻き取られ部が載置台上をボビン側に不所望に引き寄せられて、皺等が生じやすく、ボビンへの巻き取りに不具合が生じやすい。
【0006】
本発明は、帯状タイヤ構成部材を安定してボビンに巻き取ることによって、ボビンへの巻き取り品質を向上させることができる、帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
載置台に帯状タイヤ構成部材を載置し、
ボビンを、軸心廻りに回転させながら前記帯状タイヤ構成部材に対して長手方向に移動させて、前記ボビンの外周部に前記帯状タイヤ構成部材を巻き取り、
前記帯状タイヤ構成部材を巻き取るときの最終段階において、前記ボビンの前記軸心の高さを低下させることによって前記帯状タイヤ構成部材に対する前記ボビンの巻き取り点における接地荷重を増大させ
前記最終段階において、前記ボビンの前記軸心の前記載置台からの高さ寸法であるボビン高さが、当該最終段階の開始時における前記ボビンに巻き取られた帯状タイヤ構成部材の半径の95%以上98%以下である、帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、帯状タイヤ構成部材を巻き取るときの最終段階において、帯状タイヤ構成部材に対するボビンの巻き取り点における接地荷重が増大するので、ボビンの巻き取り点における帯状タイヤ構成部材の載置台に対する摩擦力を増大させやすい。
【0009】
したがって、巻き取り最終段階において、ボビンの巻き取り点で生じる摩擦力と未巻き取られ部で生じる摩擦力とを合計した合計摩擦力が、ボビンによる巻き取り力を下回ることを抑制しやすい。この結果、未巻き取られ部のボビン側への引き寄せが抑制されるので、帯状タイヤ構成部材を安定してボビンに巻き取ることができる。よって、帯状タイヤ構成部材のボビンへの巻き取り品質を向上させることができる。
しかも、最終段階において、ボビンの軸心の載置台からの高さ寸法であるボビン高さが、当該最終段階の開始時におけるボビンに巻き取られた帯状タイヤ構成部材の半径の95%以上98%以下であるので、ボビンの巻き取り点における摩擦力を効果的に増大させやすく、未巻き取られ部のボビン側への引き寄せが抑制される。ボビン高さがボビンに巻き取られた帯状タイヤ構成部材の半径の95%より低いと、接地部において未巻き取られ部が載置台に過度に押し付けられて過密着が生じやすく、ボビンへの巻き取りに不具合が生じやすい。一方、ボビン高さがボビンに巻き取られた帯状タイヤ構成部材の半径の98%より高いと、巻き取り点における摩擦力の増大が不足しやすく、未巻き取られ部のボビン側への引き寄せの抑制効果が不足しやすい。
【0012】
前記ボビンは、前記帯状タイヤ構成部材の巻き取り初期段階において、前記載置台に載置された前記帯状タイヤ構成部材に対して、間隔を空けて上方に位置していてもよい。
【0013】
本構成によれば、巻き取り初期段階において、帯状タイヤ構成部材がボビンにより載置台に押し付けられることがないので、帯状タイヤ構成部材の載置台への過密着を抑制して安定して巻き取りやすい。
【0014】
前記帯状タイヤ構成部材は、成型ドラムに巻回された状態で、タイヤ周方向に沿って延びる一対の周方向辺と、タイヤ周方向に対して傾斜した方向に延びる一対の傾斜辺とを有するように、平行四辺形状に形成されており、前記周方向辺に沿った方向に前記ボビンに巻き取られ、
前記傾斜辺のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、3度以上9度以下であってもよい。
【0015】
本構成によれば、帯状タイヤ構成部材は、周方向辺の傾斜辺に対する傾斜角度が小さいため、長手方向(周方向辺の延在方向)に細長く構成されやすく、特に巻き取りの最終段階において、未巻き取られ部が細長い三角形状となるため巻き取りの進行に伴って接地面積が減少しやすく、このため未巻き取られ部の摩擦力が減少しやすい場合において、本発明の効果が好適に発揮される。
【0016】
本発明の他の態様は、
載置台に帯状タイヤ構成部材を載置し、
ボビンを、軸心廻りに回転させながら前記帯状タイヤ構成部材に対して長手方向に移動させて、前記ボビンの外周部に前記帯状タイヤ構成部材を巻き取り、
前記帯状タイヤ構成部材を巻き取るときの最終段階において、前記ボビンの前記軸心の高さを低下させることによって前記帯状タイヤ構成部材に対する前記ボビンの巻き取り点における接地荷重を増大させ、
前記最終段階は、前記帯状タイヤ構成部材のうち未だボビンに巻き取られておらず前記載置台に載置されている未巻き取られ部に生じる摩擦力が、ボビンによる巻き取り力を下回る前に、開始される、帯状タイヤ構成部材の巻き取り方法を提供する
【0017】
本構成によれば、未巻き取られ部に生じる摩擦力がボビンによる巻き取り力を下回る前に、ボビンの接地荷重を増大させるので、未巻き取られ部のボビン側への引き寄せを確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、帯状タイヤ構成部材を安定してボビンに巻き取ることによって、ボビンへの巻き取り品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る、帯状タイヤ構成部材の巻き取り装置の側面図。
図2図1のII-II線に沿った断面図。
図3】帯状タイヤ構成部材をボビンへの巻き取りを説明する図。
図4】帯状タイヤ構成部材をボビンに巻き取るときに、帯状タイヤ構成部材に作用する力を示すグラフ。
図5】帯状タイヤ構成部材の形成方法を示す図。
図6】帯状タイヤ構成部材の成型ドラムへの巻回を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る、帯状タイヤ構成部材の巻き取り装置1(以下、巻き取り装置と称する)の側面図である。図1に示されるように、巻き取り装置1は、装置の骨格を構成するフレーム部材11と、フレーム部材11に固定された載置台12とを備えている。載置台12には、裁断された帯状タイヤ構成部材60が載置される。図1において、帯状タイヤ構成部材60は長手方向を載置台12の長手方向に一致させて載置台12に載置されている。
【0022】
以下の説明では、帯状タイヤ構成部材60の長手方向を、巻き取り装置1の前後方向と称し、巻き取り方向の上流側を後側、下流側を前側とそれぞれ称する。さらに、図1の上下方向を、巻き取り装置1の上下方向と称する。また、巻き取り装置1の前後方向及び上下方向それぞれに直交する方向を、巻き取り装置1の左右方向と称する。
【0023】
巻き取り装置1は、帯状タイヤ構成部材60を巻き取る巻き取り部20と、巻き取り部20を上下方向に移動させる上下移動部30と、巻き取り部20及び上下移動部30を前後方向に移動させる前後移動部40と、巻き取り制御部50とをさらに備えている。
【0024】
巻き取り部20は、左右方向に延びる軸心21aを有するボビン21と、ボビン21を軸心21aの廻りに回転駆動する駆動モータ22と、ボビン21を回転自在に支持するとともに駆動モータ22を支持する支持部23とを有している。
【0025】
上下移動部30は、前後移動部40に固定された駆動モータ31と、駆動モータ31の出力軸に接続され上下方向に延びるボールネジ32と、ボールネジ32に螺合する昇降体33と、昇降体33に固定されたキャリッジ34と、前後移動部40に固定されており上下方向に延びるスライドレール35とを有している。昇降体33の下端部に、巻き取り部20が接続されている。キャリッジ34は、スライドレール35により上下方向に案内される。
【0026】
上下移動部30は、駆動モータ31を回転駆動させることによってボールネジ32を回転させ、その結果、ボールネジ32に螺合する昇降体33が、キャリッジ34およびスライドレール35により案内されて、前後移動部40に対して上下方向に昇降する。
【0027】
前後移動部40は、巻き取り装置1のフレーム部材11に固定された駆動モータ41と、駆動モータ41の出力軸に接続されて前後方向に延びるボールネジ42と、ボールネジ42に螺合する前後移動体43と、前後移動体43に固定されたキャリッジ44と、フレーム部材11に固定されており前後方向に延びるスライドレール45とを有している。キャリッジ44は、スライドレール45により前後方向に案内される。
【0028】
前後移動部40は、駆動モータ41を回転駆動させることによってボールネジ42を回転させ、その結果、ボールネジ42に螺合する前後移動体43が、キャリッジ44およびスライドレール45により案内されて、フレーム部材11に対して前後方向に移動する。
【0029】
各駆動モータ22,31,41は、回転角度位置を制御可能に構成されており、例えば、ステッピングモータが採用されている。
【0030】
巻き取り制御部50は、巻き取り部20の駆動モータ22の駆動を制御する回転制御部51と、上下移動部30の駆動モータ31の駆動を制御する上下制御部52と、前後移動部40の駆動モータ41の駆動を制御する前後制御部53とを有している。
【0031】
回転制御部51および前後制御部53はそれぞれ、ボビン21による巻き取り長さと、前後移動部40による前後方向への移動距離とが等しくなるように、各駆動モータ22,41それぞれの回転角度位置を同期させて制御する。上下制御部52は、巻き取り部20の前後方向位置に従って巻き取り部20の高さ位置を制御している。
【0032】
図2は、図1のII-II線における断面図である。図2に示されるように、帯状タイヤ構成部材60は平行四辺形状に形成されている。本実施形態にかかる帯状タイヤ構成部材60は、空気入りタイヤのトレッド部に組み込まれる補強ベルトである。帯状タイヤ構成部材60は、図5及び図6を参照して説明したように、成型ドラム200に巻回された状態で、タイヤ周方向に対して低角度で傾斜した方向に延びる複数のタイヤコード61がゴムで被覆された帯状部材である。本実施形態では、タイヤコード61はタイヤ周方向に対して6度で傾斜した方向に延びている。
【0033】
帯状タイヤ構成部材60は、成型ドラム200に巻回された状態で、タイヤ周方向に延びる一対の周方向辺62,63と、タイヤコード61に平行に延びる一対の傾斜辺64,65とを有している。帯状タイヤ構成部材60は、載置台12上で、一対の周方向辺62,63が前後方向に平行となるように載置されている。帯状タイヤ構成部材60は、前後方向における長さLが6mを超える長尺に形成されている。
【0034】
巻き取り装置1は、ボビン21の軸心21aを、帯状タイヤ構成部材60の巻き取りに伴って段階的に低下させながら、帯状タイヤ構成部材を巻き取るように構成されている。本実施形態では、巻き取り装置1は、巻き取り制御部50が回転制御部51、上下制御部52、および前後制御部53に各駆動モータ22,31,41を制御させることによって、ボビン21の軸心21aを、第1段階(初期段階)、次いで第2段階(中間段階)、次いで第3段階(最終段階)へと、3段階に順に高さを低下させながら、帯状タイヤ構成部材60を巻き取る。
【0035】
帯状タイヤ構成部材60の前後方向長さをLとしたとき、第1段階では後端部から1/3Lの長さの領域である後端部60aが巻き取られる。第2段階では、帯状タイヤ構成部材60のうち、後端部60aからさらに前側へ1/3L進んだ領域(後端部を基準として前方へ1/3Lから2/3L)である中央部60bが巻き取られる。第3段階では、帯状タイヤ構成部材60のうち、中央部60bから前端部までの領域(後端部を基準として前方へ2/3LからL)である前端部60cが巻き取られる。
【0036】
以下、図3および図4を参照しながら、巻き取り装置1による帯状タイヤ構成部材60の巻き取りについて説明する。図3は巻き取り装置1による帯状タイヤ構成部材60の巻き取りを模式的に示す図であり、図4はこのときの帯状タイヤ構成部材60に作用する力を模式的に示すグラフである。
【0037】
図3(a)に示されるように、第1段階では、上下制御部52が、駆動モータ22を制御して、ボビン21の軸心21aを載置台12から高さH1に位置させる。高さH1では、ボビンの21の外周部は、載置台12に対して間隔を空けて上方に位置している。次いで、ボビン21の軸心21aを高さH1に維持しつつ、回転制御部51および前後制御部53が、駆動モータ22,41を同期して制御して、帯状タイヤ構成部材60の後端部60aをボビン21に巻き取る。
【0038】
ここで、帯状タイヤ構成部材60のうち、ボビン21に既に巻き取られた部分を既巻き取られ部60X、未だ巻き取られておらず載置台12上に位置する未巻き取られ部を60Z、既巻き取られ部60Xと未巻き取られ部60Zとの境界に位置しており載置台12から離間してボビン21に巻き取られる部分を巻き取り点60Yとする。
【0039】
このとき、帯状タイヤ構成部材60には、巻き取り点60Yにおいて生じるボビン21による巻き取り力F1(図4中で太い破線により示されている)と、未巻き取られ部60Zに対して載置台12との間で生じる摩擦力F2とが作用する。
【0040】
巻き取り力F1は、ボビン21の軸心21aから巻き取り点60Yまでの距離によって変化し得る。しかしながら、ボビン21の外径(例えば240mm)に対して帯状タイヤ構成部材60の厚み(例えば1.7mm)が十分に小さいため、前記距離を略一定とみなすことができる。よって、図4(a)には巻き取り力F1が一定値として示されている。
【0041】
一方、摩擦力F2は、未巻き取られ部60Zの荷重に対する載置台12からの反力と最大静止摩擦係数とに基づいて算出される最大静止摩擦力F2max(図4中で太い実線により示されている)を上限値として、巻き取り力F1に釣り合う力として生じる。図4(a9に示されるように、最大静止摩擦力F2maxは、帯状タイヤ構成部材60の巻き取りの進行に伴って未巻き取られ部60Zが減少するにつれて、減少する。
【0042】
図4に示されるように、第1段階(後端部から1/3Lまで)においては、未巻き取られ部60Zに対して載置台12との間で生じる最大静止摩擦力F2maxは、ボビン21による巻き取り力F1より十分大きく、未巻き取られ部60Zがボビン21側に不所望に引き寄せられることがない。
【0043】
第1段階に続いて第2段階が実施される。図3(b)に示されるように、第2段階では、まず上下制御部52が、駆動モータ31を制御して、ボビン21の軸心21aを載置台12から高さH2に位置させる。高さH2は、高さH1より低く、既巻き取られ部60Xは、第2段階の開始時には載置台12に対して間隔を空けて上方に位置している。
【0044】
次いで、ボビン21の軸心21aを高さH2に維持しつつ、回転制御部51および前後制御部53が、駆動モータ22,41を同期して制御して、帯状タイヤ構成部材60の中央部60bをボビン21に巻き取る。
【0045】
このとき、ボビン21は、2/3Lまで巻き取る途中(図4における位置P1)で、巻き取りの進行に伴ってボビン21上の既巻き取られ部60Xの外径が増大する結果、既巻き取られ部60Xが載置台12に接触する。
【0046】
図4に示されるように、第2段階(1/3Lから2/3L)において、未巻き取られ部60Zに対して載置台12との間で生じる最大静止摩擦力F2maxは、巻き取りの進行に伴って低下するものの、ボビン21による巻き取り力F1を下回ることはない。なお、1/3Lと3/2Lとの間の位置P1以降は、巻き取り点60Yが所定荷重で下方に押し付けられるため、巻き取り点60Yにも摩擦力F3が生じる。
【0047】
摩擦力F3は、巻き取り点60Yにおける下方への荷重に対する載置台12からの反力と最大静止摩擦係数とに基づいて算出される最大静止摩擦力F3max(図4中で一点鎖線により示されている))を上限値として、摩擦力F2との合力が、巻き取り力F1に釣り合う力として生じる。
【0048】
ここで、図4(a)に示されるように、未巻き取られ部60Zにおける最大静止摩擦力F2maxと、巻き取り点60Yにおける最大静止摩擦力F3maxとの合力を、合計最大静止摩擦力F0max(図4中で二点鎖線により示されている)とすると、合計最大静止摩擦力F0maxは、ボビン21による巻き取り力F1より大きい。よって、第2段階においても、未巻き取られ部60Zが、ボビン21側に不所望に引き寄せられることがない。
【0049】
第2段階に続いて第3段階が実施される。図3(c)に示されるように、第3段階では、まず上下制御部52が、駆動モータ31を制御して、ボビン21の軸心21aを載置台12から高さH3に位置させる。高さH3は、高さH2より低く、既巻き取られ部60Xは、第3段階の開始時に、第2段階の終了時に比して、載置台12に対してさらに下方に押し付けられる。
【0050】
次いで、ボビン21の軸心21aを高さH3に維持しつつ、回転制御部51および前後制御部53が、駆動モータ22,41を同期して制御して、帯状タイヤ構成部材60の前端部60cをボビン21に巻き取る。
【0051】
図4に示されるように、第3段階(2/3LからL)において、未巻き取られ部60Zに対して載置台12との間で生じる最大静止摩擦力F2maxは、巻き取りの進行に伴って載置台12との低下し巻き取り終了時にはゼロとなり、2/3LとLとの間の途中位置P2(図4参照)においてボビン21による巻き取り力F1を下回る。
【0052】
一方、第3段階におけるボビン21の軸心21aの高さ低下の結果、巻き取り点60Yにおける最大静止摩擦力F3maxは、ボビン21による巻き取り力F1より大きくなる。換言すれば、ボビン21の軸心21aの高さH3は、巻き取り点60Yにおいて生じる最大静止摩擦力F3maxが、ボビン21による巻き取り力F1より大きくなるように設定されている。また、第3段階は、未巻き取られ部60Zに生じる摩擦力F2が、ボビン21による巻き取り力F1を下回る前に開始される。
【0053】
したがって、第3段階においては、未巻き取られ部60Zに生じる摩擦力F2は僅少になるものの、合計最大静止摩擦力F0maxはボビン21による巻き取り力F1を下回ることはない。よって、巻き取りの最後まで、未巻き取られ部60Zが、ボビン21側に不所望に引き寄せられることがない。よって、長尺の帯状タイヤ構成部材60が、最初から最後までボビン21に安定して巻き取られる。
【0054】
なお、例えば、ボビン21の軸心21aの高さH3は、第3段階の開始時における既巻き取られ部60Xの半径R1に95%以上98%以下に設定されている。高さH3が半径R1の95%より小さいと、巻き取り点60Yが、載置台12に過度に押し付けられて巻き取り点60Yの載置台12への過密着が生じやすい。一方、高さH3が半径R1の98%より大きいと、巻き取り点60Yにおける摩擦力F3が不足しやすく、未巻き取られ部60Zのボビン21側への引き寄せの抑制効果が不足しやすい。
【0055】
上記実施形態にかかる巻き取り装置1によれば次の効果が得られる。
【0056】
(1)帯状タイヤ構成部材60を巻き取るときの最終段階である第3段階において、巻き取り点60Yにおける接地荷重が増大するので、帯状タイヤ構成部材60のうち巻き取り点60Yにおける載置台12に対する摩擦力を増大させやすい。
【0057】
したがって、第3段階において、巻き取り点60Yで生じる最大静止摩擦力F3maxと未巻き取られ部60Zで生じる最大静止摩擦力F2maxとを合計した合計最大静止摩擦力F0maxを、ボビン21による巻き取り力F1よりも増大させやすい。この結果、未巻き取られ部60Zのボビン21側への引き寄せが抑制されるので、帯状タイヤ構成部材60を安定してボビン21に巻き取ることができる。よって、帯状タイヤ構成部材60のボビン21への巻き取り品質を向上させることができる。
【0058】
(2)第3段階において、ボビン21の軸心21aの高さH3は、第3段階の開始時における既巻き取られ部60Xの半径R1の95%以上98%以下に設定されている。その結果、巻き取り点60Yにおける摩擦力F3を効果的に増大させやすく、未巻き取られ部60Zのボビン21側への引き寄せが抑制される。
【0059】
(3)ボビン21は、帯状タイヤ構成部材60の巻き取り初期段階である第1段階において、載置台12に載置された帯状タイヤ構成部材60に対して、間隔を空けて上方に位置している。その結果、第1段階において、帯状タイヤ構成部材60がボビン21により載置台12に押し付けられることがないので、帯状タイヤ構成部材60の載置台12への過密着を抑制して安定して巻き取りやすい。
【0060】
(4)帯状タイヤ構成部材60は、周方向辺62,63の傾斜辺64,65に対する傾斜角度が小さいため前後方向に長尺に形成されている。このため、特に第3段階において、未巻き取られ部60Zが細長い三角形状となるため巻き取りの進行に伴って減少しやすく、このため未巻き取られ部60Zに生じる摩擦力F2が減少しやすい。しかしながら、巻き取り点60Yにおける摩擦力F3を増大させることによって、摩擦力F2の減少にかかわらず未巻き取られ部60Zのボビン21側への不所望な引き寄せが抑制される。
【0061】
(5)第3段階は、未巻き取られ部60Zに生じる摩擦力F2がボビン21による巻き取り力F1を下回る前に開始される。その結果、未巻き取られ部60Zにおいて生じる摩擦力F2がボビン21による巻き取り力F1を下回る前に、巻き取り点60Yにおける接地荷重を増大させて巻き取り点60Yにおける摩擦力F3を増大させることができるので、未巻き取られ部60Zのボビン21側への引き寄せを確実に抑制できる。
【0062】
上記実施形態では、ボビン21の軸心21aの高さを3段階に低下させながら、帯状タイヤ構成部材60を巻き取るように構成したが、これに限らない。すなわち、軸心21aの高さを、2段階に低下させ、又は4段階以上に順に低下させるようにしてもよい。また、図4のグラフ(b)において仮想線で示すように、ボビン21の軸心21aの高さを巻き取りの進行に伴って連続的に低下させてもよい。
【0063】
要するに、未巻き取られ部60Zに生じる最大静止摩擦力F2maxが、ボビン21による巻き取り力F1を下回る前に、ボビン21の軸心21aを低下させるとともに、その際に巻き取り点60Yに生じる最大静止摩擦力F3maxが巻き取り力F1より大きくなるように軸心21aの高さH3を決定すればよい。
【0064】
また、上記摩擦力に関して、帯状タイヤ構成部材60のゴム部材で生じるタックによる粘着力を考慮にいれてもよい。また、タイヤコードがタイヤ周方向に対して低角度(例えば3度以上9度以下)で延びており、帯状タイヤ構成部材が長大化しやすい場合に、本発明を特に好適に実施できる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 巻き取り装置
12 載置台
20 巻き取り部
21 ボビン
21a 軸心
22 駆動モータ
30 上下移動部
31 駆動モータ
40 前後移動部
41 駆動モータ
50 巻き取り制御部
51 回転制御部
52 上下制御部
53 前後制御部
60 帯状タイヤ構成部材
60a 後端部
60b 中央部
60c 前端部
60X 既巻き取られ部
60Y 巻き取り点
60Z 未巻き取られ部
F1 巻き取り力
F2,F3 摩擦力
F2max、F3max 最大静止摩擦力
F0max 合計最大静止摩擦力
図1
図2
図3
図4
図5
図6