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特許7376353遊星歯車とキャリアとの組立体、遊星歯車装置、アクチュエータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】遊星歯車とキャリアとの組立体、遊星歯車装置、アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20231031BHJP
   F16H 1/46 20060101ALI20231031BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H1/46
H02K7/116
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019239231
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021025648
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019143338
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】河田 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓也
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-167225(JP,A)
【文献】特開2011-094714(JP,A)
【文献】特開平02-212645(JP,A)
【文献】実開昭63-139339(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
F16H 1/46
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向における両端部のうち少なくとも一方の端部から回転軸が突出した遊星歯車と、
前記回転軸が挿入される挿入部を有し、前記挿入部に前記回転軸が挿入された前記遊星歯車を回転可能に保持するキャリアと、を備え、
前記キャリアは、前記挿入部が形成された第1フランジ部と、前記第1フランジ部と間隔をあけて設けられた第2フランジ部と、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを接続するとともに周方向に間隔をあけて配置された複数の接続部とを有しており、
前記キャリアには、前記接続部に対応する位置に、前記第1フランジ部から前記接続部にわたって軸線方向に深さを有する肉抜き穴が形成されている、
遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項2】
前記回転軸は前記遊星歯車に一体成形されている、
請求項1に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項3】
前記挿入部が、軸線方向に直交する方向に開放された部位を有する、
請求項1または2に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項4】
前記挿入部は、中心角が180°よりも大きい円弧で切欠かれた円弧部を有し、前記円弧部で前記回転軸を回転可能に支持する、
請求項3に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項5】
前記第1フランジ部において、前記挿入部に隣接する位置に前記挿入部の剛性を低下させるための開口が形成されている、
請求項3または4に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項6】
前記遊星歯車の他方の端部から第2の回転軸が突出しており、
前記第2フランジ部には、前記第2の回転軸を回転可能に支持する第2の挿入部が形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項7】
前記遊星歯車の他方の端部には、前記第2フランジ部を貫通し前記遊星歯車を回転可能に支持するピンが挿通される挿通孔が形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体。
【請求項8】
請求項17のいずれか1項に記載の遊星歯車とキャリアとの組立体と、
前記組立体の中央に位置し、前記遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、
前記遊星歯車と噛み合う内歯車と、を備える、
遊星歯車装置。
【請求項9】
前記内歯車には、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第1凸部が外周面に形成されており、
軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第2凸部が内周面に形成されており、前記内周面との間で隙間を設けた状態で前記内歯車を収容するハウジングを備え、
前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限される、
請求項8に記載の遊星歯車装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の遊星歯車装置と、
前記遊星歯車装置に接続され該遊星歯車装置を駆動するモータと、を備える、
アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車とキャリアとの組立体、当該組立体を備えた遊星歯車装置、当該遊星歯車装置を備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置は、自動車、ロボットなどの様々な技術に用いられている。遊星歯車装置は複数の歯車が組み合わされて構成されており、入力された回転を複数の歯車を介して伝達し出力軸から出力する。
【0003】
例えば特許文献1は、モータからの駆動力を受けて回転する太陽歯車と、太陽歯車とかみ合った複数の遊星歯車と、複数の遊星歯車とかみ合った内歯車とを有する遊星歯車装置を開示している。この遊星歯車にはキャリアに保持された支持軸が挿入されており、遊星歯車は太陽歯車の回転により支持軸を中心に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-3857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の遊星歯車装置において、遊星歯車と遊星歯車を回転可能に支持する支持軸とはそれぞれが独立した部品である。そのため、キャリアに遊星歯車を保持させる前に遊星歯車と支持軸とを組み合わせる必要があり、遊星歯車装置の組み立て工程が多くなりやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、組み立て工程を簡略化することができる遊星歯車とキャリアとの組立体、当該組立体を備えた遊星歯車装置、当該遊星歯車装置を備えたアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る遊星歯車とキャリアとの組立体は、軸線方向における両端部のうち少なくとも一方の端部から回転軸が突出した遊星歯車と、前記回転軸が挿入される挿入部を有し、前記挿入部に前記回転軸が挿入された前記遊星歯車を回転可能に保持するキャリアと、を備え、前記キャリアは、前記挿入部が形成された第1フランジ部と、前記第1フランジ部と間隔をあけて設けられた第2フランジ部と、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを接続するとともに周方向に間隔をあけて配置された複数の接続部とを有しており、前記キャリアには、前記接続部に対応する位置に、前記第1フランジ部から前記接続部にわたって軸線方向に深さを有する肉抜き穴が形成されている
【0008】
前記回転軸は前記遊星歯車に一体成形されていてもよい。
【0009】
前記挿入部が、軸線方向に直交する方向に開放された部位を有していてもよい。
【0010】
前記挿入部は、中心角が180°よりも大きい円弧で切欠かれた円弧部を有し、前記円弧部で前記回転軸を回転可能に支持してもよい。
【0011】
前記第1フランジ部において、前記挿入部に隣接する位置に前記挿入部の剛性を低下させるための開口が形成されていてもよい。
【0012】
前記遊星歯車の他方の端部から第2の回転軸が突出しており、前記第2フランジ部には、前記第2の回転軸を回転可能に支持する第2の挿入部が形成されていてもよい。
【0013】
前記遊星歯車の他方の端部には、前記第2フランジ部を貫通し前記遊星歯車を回転可能に支持するピンが挿通される挿通孔が形成されていてもよい。
【0014】
本発明に係る遊星歯車装置は、上記した遊星歯車とキャリアとの組立体と、前記組立体の中央に位置し、前記遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、前記遊星歯車と噛み合う内歯車と、を備える。
【0015】
前記内歯車には、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第1凸部が外周面に形成されており、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第2凸部が内周面に形成されており、前記内周面との間で隙間を設けた状態で前記内歯車を収容するハウジングを備え、前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限されてもよい。
【0016】
本発明に係るアクチュエータは、上記の遊星歯車装置と、前記遊星歯車装置に接続され該遊星歯車装置を駆動するモータと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遊星歯車から突出した回転軸をキャリアに形成された挿入部に挿入することで、遊星歯車をキャリアに組み付けることができる。これにより、組み立て工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係るアクチュエータの斜視図
図2図1中の矢印AIIからみたアクチュエータの正面図
図3図2中の切断線III-IIIで切断したアクチュエータの断面図
図4】本発明の実施の形態1に係るアクチュエータの分解斜視図
図5】本発明の実施の形態1に係る第2ハウジングの断面図
図6】本発明の実施の形態1に係る第2ハウジングの斜視図
図7】本発明の実施の形態1に係る第1遊星歯車機構の斜視図
図8図7に示す第1遊星歯車機構の遊星歯車をキャリアに組み付ける様子を示した斜視図
図9図8に示すキャリアを示した図であり、(a)は矢印IXA(+X方向側)から見た図、(b)は矢印IXB(-X方向側)から見た図
図10】本発明の実施の形態1に係る第2遊星歯車機構の斜視図
図11図10に示す第2遊星歯車機構の遊星歯車をキャリアに組み付ける様子を示した斜視図
図12図11に示すキャリアを示した図であり、(a)は矢印XIIA(+X方向側)から見た図、(b)は矢印XIIB(-X方向側)から見た図
図13】本発明の実施の形態1に係る第2ハウジングと内歯車との関係を説明するための図
図14図13に示す第2ハウジングに形成されたストッパに着目した説明図
図15図13に示す内歯車に形成された移動制限凸部に着目した説明図
図16図13に示す内歯車が中心軸周りに回転して第2ハウジングに接触した状態を説明するための図
図17図13に示す内歯車が軸線に直交する方向へ移動して第2ハウジングに接触した状態を説明するための図
図18図16中の矢印XVIIIからみた第2ハウジングと内歯車との接触態様を説明するための説明図
図19図15に示す移動制限凸部と移動制限凸部の他の例とを比較した概略図
図20】本発明の実施の形態2に係る第2遊星歯車機構のキャリアを示す図であり、(a)は+X方向側から見た図、(b)は-X方向側から見た図
図21】本発明の実施の形態3に係る第2遊星歯車機構のキャリアを示す図であり、(a)は+X方向側から見た図、(b)は-X方向側から見た図
図22】本発明の実施の形態4に係る第2遊星歯車機構を組み立てる様子を示した斜視図
図23図22に示す遊星歯車の断面図
図24図22に示すキャリアを示す図であり、(a)は矢印XXIVA(+X方向側)から見た図、(b)は矢印XXIVB(-X方向側)から見た図
図25】本発明の他の実施例に係る内歯車と第2ハウジングとの接触箇所に着目した説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態に係る遊星歯車とキャリアとの組立体、遊星歯車装置、アクチュエータについて、図面を参照しながら説明する。なお、図面の理解を容易にするため、各図において、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ1の軸線2の方向(以下、軸線方向と記載する)に平行なX軸と、X軸に直交するY軸及びZ軸とを有する直交座標系を図示している。
【0020】
(実施の形態1)
(アクチュエータ1の構成)
図1及び図2に示すように、アクチュエータ1は、例えば、モータ10と、モータ10に接続された遊星歯車装置20とを備えている。
【0021】
モータ10は、例えば、図3及び図4に示すように、モータ本体11と、回転軸12とを有している。モータ10は、図示しない制御部の制御下で、回転軸12を回転させて遊星歯車装置20を駆動する。
【0022】
遊星歯車装置20は、図1に示すモータ10によって入力された回転を、所定の減速比で減速して出力歯車86aから出力する。遊星歯車装置20は、例えば、図3及び図4に示すように、第1ハウジング30及び第2ハウジング40を有するハウジング50と、ハウジング50の内部に収容された遊星歯車機構60とを備えている。
【0023】
第1ハウジング30は、例えば、モータ10を遊星歯車装置20に取り付けるための部材である。また、第1ハウジング30は、第2ハウジング40と組み合わされて内部に遊星歯車機構60を収容するための図5に示す収容空間S1を形成する。第1ハウジング30の中央には、図4に示すように、モータ10の回転軸12を通すための開口30aが形成されている。開口30aに通された回転軸12は、遊星歯車機構60の後述する太陽歯車71に固定される(接続される)。第1ハウジング30は、例えば合成樹脂製で射出成形により成形される。
【0024】
第2ハウジング40は、例えば、図5及び図6に示すように、第1ハウジング30が取り付けられる側(一方側)が開放されており、この開放された部分から図4に示す遊星歯車機構60を収容することができる。遊星歯車機構60は、例えば、図4に示すように、軸線方向に沿って配置された第1遊星歯車機構70と、第2遊星歯車機構80と、出力歯車86aとを有している。遊星歯車機構60は、モータ10によってもたらされた(入力された)回転を2段階で減速して出力歯車86aから出力する。第2ハウジング40は、例えば、図5に示すように、第1遊星歯車機構70が収容される第1部位41と、第2遊星歯車機構80が収容される第2部位42と、第2遊星歯車機構80の出力歯車86aを外部へ突出させるための第3部位43とを有している。
【0025】
第2ハウジング40の第1部位41は、例えば、図5及び図6に示すように、円筒体44と、軸線方向に沿って(軸線方向の一方側から他方側に向かって)延在するストッパ(第2凸部)45とを有している。ストッパ45は軸線方向に直交する断面で切断すると山形状の断面を有し、その形状及び大きさは軸線方向に一定である。ストッパ45は、第1部位41の軸線方向における一部の範囲に形成されているが、全範囲にわたって形成されていてもよい。ストッパ45は、例えば、図13に示すように、円筒体44の内壁44aに周方向に対をなして配置されている。対のストッパ45は、例えば、円筒体44の内壁44aに等間隔に6箇所設けられている。各ストッパ45の断面形状は、例えば、図14に示すように、円筒体44の内壁44aから弧をなして徐々に立ち上がる立ち上がり部45aと、丸みを帯びた頂部45cと、立ち上がり部45aと頂部45cとを膨らみながら接続する接続部45bとを有している。なお、ストッパ45の断面の形状及び大きさは軸線方向に一定である。そのため、例えば図6から理解できるように、立ち上がり部45a、接続部45b、及び頂部45cは、軸線に平行な方向には曲りを有しない曲面である。対のストッパ45間には、後述する図13に示す内歯車74の移動制限凸部75が差し込まれることで、第2ハウジング40内における内歯車74の移動が制限される。
【0026】
第2ハウジング40の第2部位42は、例えば、図5及び図6に示すように、円筒体46と、円筒体46の内壁に形成された内歯部47とを有している。内歯部47は、例えば、軸線方向に対して角度をもって斜めに刻まれている。すなわち、内歯部47を有する第2部位42は、例えば、はすば歯車を構成している。
【0027】
第2ハウジング40の第3部位43は、例えば、円筒状をなし、図4に示す遊星歯車機構60の出力歯車86aを通すための開口43aを有している。これにより、出力歯車86aから出力するトルクを外部の機構に伝達することができる。第2ハウジング40は、例えば合成樹脂製で、射出成形により成形される。
【0028】
また、本明細書では、便宜上、図4~6における、第2ハウジング40の第1ハウジング30が取り付けられるように開放されている側を一方側(-X方向側)と呼び、その反対側である、第2ハウジング40の第3部位43の開口43aを有する側を他方側(+X方向側)と呼ぶ。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第2ハウジング40の第3部位43の開口43aを有する側を一方側とし、第2ハウジング40の第1ハウジング30が取り付けられるように開放されている側を他方側とするように読み直して解釈してもよい。
【0029】
遊星歯車機構60は、例えば、図4に示すように、ハウジング50内に収容され、モータ10から伝達された回転を減速して出力歯車86aから出力する。遊星歯車機構60は、例えば、軸線方向に沿って配置された第1遊星歯車機構70と第2遊星歯車機構80とを有している。
【0030】
第1遊星歯車機構70は、例えば、図7に示すように、太陽歯車71と、太陽歯車71を中央にしてその周囲に配された3つ(複数)の遊星歯車72と、3つ(複数)の遊星歯車72を回転可能に保持するキャリア73と、内歯車74とを備えている。なお、図7において、斜視図の都合上2つの遊星歯車72しか図示していないが、キャリア73に隠れた奥側の位置にもう1つの遊星歯車72が設けられている。また、キャリア73には、外周面に太陽歯部81aが形成された太陽歯車81が互いの軸線を一致させた状態で一体成型されている。このように、太陽歯車81は、キャリア73に一体成型されていることから、便宜上、第1遊星歯車機構70を示す図7に図示されているが、機能上は図10に示す第2遊星歯車機構80の太陽歯車として機能する。
【0031】
太陽歯車71は、外周面に太陽歯部71aが形成された外歯車であって、図4に示すモータ10の回転軸12が固定される(接続される)。これにより、モータ10が作動することにより、太陽歯車71は回転する。太陽歯部71aは、例えば、太陽歯車71の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、太陽歯車71は、例えば、はすば歯車である。
【0032】
遊星歯車72は、例えば、外周面に遊星歯部72aが形成された外歯車である。遊星歯部72aは、例えば、遊星歯車72の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、遊星歯車72は、例えば、はすば歯車である。遊星歯車72の軸線方向における+X側の端部には軸線方向に沿って突出した回転軸72bが形成されているとともに、-X側の端部には軸線方向に沿って突出した回転軸72cが形成されている。3つ遊星歯車72は、第1遊星歯車機構70の軸を中心とした同一の円上に等間隔で配置されている。3つの遊星歯車72の間に太陽歯車71が位置しており、太陽歯部71aは、3つの遊星歯車72の遊星歯部72aのそれぞれと噛み合わされる。
【0033】
キャリア73は、図7,8に示すように、第1フランジ部73aと、第1フランジ部73aと間隔をあけて設けられた第2フランジ部73bと、第1フランジ部73aと第2フランジ部73bとを接続する周方向に等間隔で配置された3つの接続部73cとを有している。図9(b)に示すように、第2フランジ部73bには中央に円形状の開口73dが形成されている。この開口73dによって、キャリア73に形成された収容空間S2の-X方向側が開放されている。なお、収容空間S2は、太陽歯車71(図7)を収容するための空間である。また、第1フランジ部73aの中央には、図7,8に示すように、+X軸方向側に向けて突出した太陽歯車81が設けられている。
【0034】
キャリア73には、図7,8に示すように、軸線方向に沿って第1フランジ部73aから接続部73cにわたって形成された3つの肉抜き穴73eが形成されている。3つの肉抜き穴73eは、接続部73cに対応する位置に形成されている。これにより、キャリア73の軽量化が図られている。
【0035】
第1フランジ部73aは、図9(a)に示すように、略円形状をなし、外縁から中央に向けて切り欠かれた3つの切欠き部78が、第1フランジ部73aの中心を基準に等角度の間隔で配置されている。切欠き部78は、外側に向けて徐々に切り欠きの幅が広がった開放部78aと、第1フランジ部73aの内側で開放部78aと接続した円弧部78bとを有している。円弧部78bは、その中心角が180°よりも大きいことから、入口78cの幅は円弧部78bの半径よりも狭い。このような切欠き部78によって、第1フランジ部73aには軸線方向に直交する方向が開放された部分が形成されており、この部分に図8に示す遊星歯車72の回転軸72bが挿入される。すなわち、切欠き部78は、回転軸72bが挿入される挿入部として機能する。
【0036】
第2フランジ部73bは、図9(b)に示すように、中央に開口73dが形成されたリング状をなし、外縁から中央に向けて切り欠かれた3つの切欠き部79が、第2フランジ部73bの中心を基準に等角度の間隔で配置されている。切欠き部79は、外側に向けて徐々に切り欠きの幅が広がった開放部79aと、第2フランジ部73bの内側で開放部79aと接続した円弧部79bとを有している。円弧部79bは、その中心角が180°よりも大きいことから、入口79cは狭まった位置に設けられている。このような切欠き部79によって、第2フランジ部73bには軸線方向に直交する方向が開放された部分が形成されており、この部分に遊星歯車72の回転軸72cが挿入される。すなわち、切欠き部79は、回転軸72cが挿入される挿入部として機能する。
【0037】
またキャリア73には、図8に示すように、第1フランジ部73aと第2フランジ部73bと隣接する接続部73cとによって区画された、遊星歯車72を収容するための3つの収容空間77が形成されている。
【0038】
遊星歯車72は、図8の矢印で示すように、キャリア73の外側から収容空間77に収容することで、キャリア73に組み付けられる。このとき、遊星歯車72の回転軸72bを、切欠き部78に挿入していき、図9(a)に示す入口78cを越えさせて円弧部78bに収容する。同様に、遊星歯車72の回転軸72cを、切欠き部79に挿入していき、図9(b)に示す入口79cを越えさせて円弧部79bに収容する。これにより、遊星歯車72は、回転軸72b,72cを収容するキャリア73の円弧部78b,79bにより回転可能に保持される。なお、図9(a),(b)に示すように、入口78c,79cを幅が狭くなった位置に設けていることから、遊星歯車72がキャリア73から抜け出るのを防止することができる。このようにして回転可能に保持された遊星歯車72は、遊星歯部72aの一部がキャリア73の外周面から突出した状態にある。これにより、遊星歯部72aを、後述する内歯車74の内歯部74aと噛み合わせることができる。
【0039】
内歯車74には、例えば、図3及び図7に示すように、内周面に内歯部74aが形成されている。内歯部74aは、例えば、内歯車74の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有するはすば歯車である。内歯車74の歯先円の直径は、キャリア73の直径よりも大きい。そのため、内歯車74の内部に、遊星歯車72を保持したキャリア73が収容される。キャリア73の外周面から突出した遊星歯部72aは、内歯車74の内歯部74aと噛み合わせられる。
【0040】
また、内歯車74の外周面には、例えば、図13に示すように、第2ハウジング40の内壁44aに形成された対のストッパ45の間に入り込む移動制限凸部(第1凸部)75が形成されている。移動制限凸部75は、例えば、対のストッパ45に対応して設けられており、対のストッパ45と同様に6箇所形成されている。移動制限凸部75は、軸線方向に直交する平面で切断すると概ね三角形状の断面を有している。また移動制限凸部75は、図15に示すように、例えば、内歯車74の外周面74bから立ち上がった直線状の斜辺部75aと、両サイドから立ちあがった斜辺部75aが交差する箇所に位置する丸みを帯びた頂部75bとを有している。なお、移動制限凸部75の断面の形状及び大きさは、図7に示すように、軸線方向に一定である(軸線方向の一方側から他方側に向かって一定に延びている)ことから、移動制限凸部75の斜辺部75aは平面領域を構成している。なお、移動制限凸部75は、内歯車74の全幅にわたって形成されているが、一部の範囲のみに形成されていてもよい。また、内歯車74の+X方向側の端面には、図7に示すように、半球状の突起74cが形成されている。半球状の突起74cは、隣り合う移動制限凸部75の間にそれぞれ形成されており、合計6箇所に形成されている。内歯車74が図5に示す第2ハウジング40の第1部位41に収容されると、6つの突起74cの頂部は第2ハウジング40の第1部位41と第2部位42との境である段差面46a(図5、6)と接触する。この突起74cと段差面46aとの接触態様は、球面と平面との接触であることから点接触となる。内歯車74は、例えば合成樹脂製である。なお、後述するように、内歯車74は、図13に示す第2ハウジング40を形成する合成樹脂よりも低い硬度の合成樹脂から形成されている。
【0041】
図13に示すように、第2ハウジング40と、内歯車74とは物理的に分離しており、アクチュエータ1が作動していない場合、両者の間には隙間が形成されている。そのため、内歯車74は、第2ハウジング40内でフローティング状態にあり、内歯車74と第2ハウジング40との間に設けられた隙間の分だけ第2ハウジング40内における軸線方向回りの回転や、軸線方向に直交する方向への移動が許容される。そして、内歯車74に形成された移動制限凸部75が対のストッパ45に当接することで、内歯車74のそれ以上の移動が制限される。
【0042】
もう1つの遊星歯車機構である第2遊星歯車機構80は、例えば、図10に示すように、太陽歯車81と、3つの遊星歯車82と、3つの遊星歯車82を回転可能に保持するキャリア83と、出力軸86とを備えている。なお、図10においては、斜視図の都合上2つの遊星歯車82しか図示していないが、キャリア83に隠れた奥側の位置にもう1つの遊星歯車82が設けられている。
【0043】
太陽歯車81は、例えば、外周面に太陽歯部81aが形成された外歯車であって、図7に示す第1遊星歯車機構70のキャリア73に互いの軸線を一致させた状態で一体成形されている(接続されている)。これにより、第1遊星歯車機構70のキャリア73の回転に伴い、太陽歯車81は第1遊星歯車機構70のキャリア73の回転と同じように(同期するように、連動するように)回転する。すなわち、太陽歯車81は、第1遊星歯車機構70のキャリア73の回転に伴い、第1遊星歯車機構70のキャリア73と同じ回転方向に、第1遊星歯車機構70のキャリア73と同じ回転速度で回転する。太陽歯部81aは、例えば、太陽歯車81の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、太陽歯車81は、例えば、はすば歯車である。
【0044】
遊星歯車82は、図10,11に示すように、例えば、外周面に遊星歯部82aが形成された外歯車である。遊星歯部82aは、例えば、遊星歯車82の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、遊星歯車82は、例えば、はすば歯車である。遊星歯車82の軸線方向における+X側の端部には軸線方向に沿って突出した回転軸82bが形成されているとともに、-X側の端部には軸線方向に沿って突出した回転軸82cが形成されている。3つ遊星歯車82は、例えば、第2遊星歯車機構80の軸を中心とした同一の円上に等間隔で配置されている。3つの遊星歯車82の間に太陽歯車81が位置しており、太陽歯部81aは、3つの遊星歯車82の遊星歯部82aのそれぞれと噛み合わされる。また、遊星歯車82は、図5及び図6に示す第2ハウジング40に形成された内歯部47と噛み合わされる。
【0045】
キャリア83は、遊星歯車82を保持する歯車保持部84と、出力軸86を保持する出力軸保持部85とを有している。歯車保持部84は、図10,11に示すように、第1フランジ部83aと、第1フランジ部83aと間隔をあけて設けられた第2フランジ部83bと、第1フランジ部83aと第2フランジ部83bとを接続する周方向に等間隔で配置された3つの接続部83cとを有している。図12(b)に示すように、第2フランジ部83bには中央に円形状の開口83dが形成されている。この開口83dによって、キャリア83内に形成された収容空間S3の-X方向側が開放されている。なお、収容空間S3は、太陽歯車81(図10)を収容するための空間である。また、第1フランジ部83aの中央には、図10,11に示すように、+X軸方向側に向けて突出した出力軸保持部85が設けられている。
【0046】
キャリア83には、図10,11に示すように、軸線方向に沿って第1フランジ部83aから接続部83cにわたって形成された3つの肉抜き穴83eが形成されている。3つの肉抜き穴83eは、接続部83cに対応する位置に形成されている。これにより、キャリア83の軽量化が図られている。
【0047】
第1フランジ部83aは、図12(a)に示すように、略円形状をなし、外縁から中央に向けて切り欠かれた3つの切欠き部88が、第1フランジ部83aの中心を基準に等角度の間隔で配置されている。切欠き部88は、外側に向けて徐々に切り欠きの幅が広がった開放部88aと、第1フランジ部83aの内側で開放部88aと接続した円弧部88bとを有している。円弧部88bは、その中心角が180°よりも大きいことから、入口88cの幅は円弧部88bの半径よりも狭い。このような切欠き部88によって、第1フランジ部83aには軸線方向に直交する方向が開放された部分が形成されており、この部分に図11に示す遊星歯車82の回転軸82bが挿入される。
【0048】
第2フランジ部83bは、図12(b)に示すように、中央に開口83dが形成されたリング状をなしており、外縁から中央に向けて切り欠かれた3つの切欠き部89が、第2フランジ部83bの中心を基準に等角度の間隔で配置されている。切欠き部89は、外側に向けて徐々に切り欠きの幅が広がった開放部89aと、第2フランジ部83bの内側で開放部89aと接続した円弧部89bとを有している。円弧部89bは、その中心角が180°よりも大きいことから、入口89cの幅は円弧部89bの半径よりも狭い。このような切欠き部89によって、第2フランジ部83bには軸線方向に直交する方向が開放された部分が形成されており、この部分に遊星歯車82の回転軸82cが挿入される。
【0049】
またキャリア83には、図11に示すように、第1フランジ部83aと第2フランジ部83bと隣接する接続部83cとによって区画された、遊星歯車82を収容するための3つの収容空間87が形成されている。
【0050】
遊星歯車82は、図11の矢印で示すように、キャリア83の外側から収容空間87に収容することで、キャリア83に組み付けられる。このとき、遊星歯車82の回転軸82bを、切欠き部88に挿入していき、図12(a)に示す入口88cを越えさせて円弧部88bに収容する。同様に、遊星歯車82の回転軸82cを、切欠き部89に挿入していき、図12(b)に示す入口89cを越えさせて円弧部89bに収容する。これにより、遊星歯車82は、回転軸82b,82cを収容するキャリア83の円弧部88b,89bにより回転可能に保持される。なお、図12(a),(b)に示すように、入口88c,89cを幅が狭くなった位置に設けていることから、遊星歯車82がキャリア83から抜け出るのを防止することができる。このようにして回転可能に保持された遊星歯車82は、遊星歯部82aの一部がキャリア83の外周面から突出した状態にある。これにより、遊星歯部82aを、第2ハウジング40に形成された内歯部47と噛み合わせることができる。また、出力軸保持部85は、図10に示すように、歯車保持部84よりも小径の円筒状に形成されており、出力軸保持部85の中央部には、出力軸86を保持するための嵌合孔85aが形成されている。
【0051】
出力軸86は、例えば、キャリア83に保持され、キャリア83とともに回転する。出力軸86は、軸にローレット形状の歯を有した出力歯車86aを有している。すなわち、出力軸86は、例えば、ローレット形状の歯を有した歯車を構成する。
【0052】
(アクチュエータ1の動作)
次に、アクチュエータ1の動作の一例について説明する。まず、図4に示すモータ10が作動すると、回転軸12が、第1方向又は第2方向に回転する。以下、回転軸12が第1方向に回転した場合について説明する。
【0053】
なお、各部材の回転方向に関する第1方向とは、各部材を図1に示す矢印AIIが示す方向からみた場合に時計回りの方向である。一方、各部材の回転方向に関する第2方向とは、各部材を図1に示す矢印AIIが示す方向からみた場合に反時計回りの方向である。
【0054】
回転軸12が第1方向に回転すると、回転軸12の回転に伴い、図3及び図7に示す太陽歯車71が第1方向に回転する。太陽歯車71が第1方向に回転するのに伴い、太陽歯車71と噛み合った3つの遊星歯車72がそれぞれ第2方向に回転(自転)する。この時、図8に示す遊星歯車72の両端から突出した回転軸72b,72cは、図9(a),(b)に示す円弧部78b,79b内に収容された状態で回転する。また、遊星歯車72は、内歯車74と噛み合っていることから、第2方向に回転(自転)することによって、第1遊星歯車機構70の軸の周りを第1方向に回転(公転)する。遊星歯車72の回転(公転)に伴い、キャリア73は、自身の中心軸を中心に第1方向に回転(自転)する。
【0055】
このように、キャリア73が第1方向に回転すると、キャリア73に固定された図3図7及び図10に示す太陽歯車81が第1方向に回転する。太陽歯車81が第1方向に回転するのに伴い、太陽歯車81と噛み合った3つの遊星歯車82がそれぞれ第2方向に回転(自転)する。この時、図10に示す遊星歯車82の両端から突出した回転軸82b,82cは、図12(a),(b)に示す円弧部88b,89b内に収容された状態で回転する。また、遊星歯車82は、図5及び図6に示す内歯部47と噛み合っていることから、第2方向に回転(自転)することにより、第2遊星歯車機構80の中心軸の周りを第1方向に回転(公転)する。遊星歯車82の第1方向への回転(公転)に伴い、キャリア83は、自身の中心軸を中心に第1方向に回転(自転)する。そして、キャリア83の回転は、キャリア83に保持された出力軸86に伝達される。
【0056】
上記では、回転軸12が第1方向に回転した場合について説明したが、回転軸12を第2方向に回転させた場合には、各歯車の回転方向が反対になるだけで同様にアクチュエータ1の動作を説明することができる。
【0057】
上述したように、第2ハウジング40と、内歯車74とは物理的に分離されている。そして、アクチュエータ1が作動していない場合、第2ハウジング40と内歯車74との間には隙間が形成されている。そして、アクチュエータ1が作動すると、内歯車74は、設けられた隙間の分だけ第2ハウジング40内で軸線回りの回転や軸線に直交する方向への移動が許容される。例えば、内歯車74が図13に示す状態から第1方向(時計回り)に回転したとすると、やがて図16に示すように、内歯車74に形成された複数の移動制限凸部75のそれぞれが、第2ハウジング40に形成された対応するストッパ45に線接触する。これにより、内歯車74はこれ以上時計回りに回転することができなくなる。ストッパ45は対で形成されていることから、内歯車74が第2方向(反時計回り)に回転した場合であっても同様に線接触し、内歯車74の軸線回りの回転が制限される。
【0058】
また、内歯車74が、図13に示す状態から軸線に直交する方向、例えば図中上方に移動したとする。すると、図17に示すように、内歯車74に形成された図中上部の移動制限凸部75は、第2ハウジング40に形成された対のストッパ45に線接触する。これにより、内歯車74は、これ以上上方に移動することができずに、軸線に直交する方向への移動が制限される。また、このとき内歯車74の頂部75b(より具体的には、移動制限凸部75の頂部75b)は、第2ハウジング40(より具体的には、円筒体44の内壁44a)に当接(接触)していない。なお、内歯車74の軸線に直交する方向への移動の制限は、内歯車74が上方へ移動する場合に限定されるものではない。周方向に6つの移動制限凸部75と対のストッパ45とを等間隔で配置していることから、内歯車74の上下方向、左右方向、及び斜め方向といった様々な方向への移動を制限することができる。
【0059】
(効果)
上記の実施の形態によれば、図7に示す第1遊星歯車機構70の遊星歯車72において、両端から突出した回転軸72b及び回転軸72cと遊星歯部72aとを一体成形させた構成としている。そのため、回転軸を独立した別部品とした構成と比較して、部品点数を削減することができる。また、キャリア73に遊星歯車72を組み付ける際に、予め回転軸と遊星歯車とを組み合わせるといった工程が必要ないため、遊星歯車装置の組み立て工程を簡略化させることができる。また、図10に示す第2遊星歯車機構80の遊星歯車82においても、同様に、両端から突出した回転軸82b及び回転軸82cと遊星歯部82aとを一体成形させた構成としている。これにより、遊星歯車装置の部品点数を削減することができるとともに、組み立て工程を簡略化することができる。
【0060】
また、図8に示すように、キャリア73に軸線方向に直交する方向が開放された切欠き部78及び切欠き部79を形成し、切欠き部78で遊星歯車72の回転軸72bを回転可能に支持し、切欠き部79で遊星歯車72の回転軸72cを回転可能に支持している。このような構成により、回転軸72bを軸線方向に直交する方向から切欠き部78に挿入するとともに、回転軸72cを軸線方向に直交する方向から切欠き部79に挿入することで、遊星歯車72をキャリア73に容易に組み付けることができる。また、図11に示す第2遊星歯車機構80のキャリア83においても、同様に、軸線方向に直交する方向が開放された切欠き部88及び切欠き部89が形成されている。これにより、遊星歯車82をキャリア83に容易に組み付けることができる。
【0061】
また、第1遊星歯車機構70において、遊星歯車72の回転軸72b及び回転軸72cを、中心角が180°よりも大きい円弧部78b及び円弧部79bで回転可能に支持している。このように円弧部78b及び円弧部79bを中心角180°よりも大きくすることで、入口78c及び入口79cを幅が狭い位置に設けることができる。これにより、遊星歯車72の動作中に、回転軸72b及び回転軸72cが円弧部78b及び円弧部79bから抜け出るのを防止することができる。また、第2遊星歯車機構80のキャリア83においても、図12(a),(b)に示すように、中心角が180°よりも大きい円弧部88b及び円弧部89bが形成されている。これにより、遊星歯車82の動作中に、回転軸82b及び回転軸82cが円弧部88b及び円弧部89bから抜け出るのを防止することができる。
【0062】
また、分離した内歯車74と第2ハウジング40との構造体において、アクチュエータ1の作動中に内歯車74が移動したとしても、ストッパ45と移動制限凸部75とが線接触することで内歯車74の移動を制限することができる。図16は、内歯車74が軸回りに回転したことによって、内歯車74と第2ハウジング40とが線接触した状態を示している。このとき、対のストッパ45と移動制限凸部75とは6箇所全てで接触するが、その接触態様は同様である。そのため、図中上部で接触した1つの接触箇所について、図16の拡大図を参照しながら説明する。図に示すように、膨らんだ凸状の曲線によって図示されるストッパ45の接続部45bと、直線によって図示される移動制限凸部75の斜辺部75aとの接触箇所は、接触点P1で示すことができる。すなわち、極めて限られた範囲での接触となる。なお、第2ハウジング40の断面と内歯車74の断面とは、軸線方向に形状と大きさとが一定である。そのため、接続部45bと斜辺部75aとの接触は、軸線に平行な方向に曲りを有しない凸状の曲面と軸線に平行な平面との接触となる。これにより、図18に示す接触領域90のように、内歯車74と第2ハウジング40との接触は、X軸に平行な軸線方向に沿った線接触になる。
【0063】
また、図17は、内歯車74が軸線に直交する方向、例えば図中上方向に移動したことによって、第2ハウジング40と内歯車74とが接触した状態を示している。図17に示すように、第2ハウジング40と内歯車74との接触箇所は、接触点P2からP5で示す4箇所である。図17の拡大図に示すように、接触点P2及びP3は、膨らんだ凸状の曲線によって図示されるストッパ45の接続部45bと、直線によって図示される移動制限凸部75の斜辺部75aとの接触箇所である。上記と同様に、このような接触箇所は、軸線に平行な方向に曲りを有しない凸状の曲面と軸線に平行な平面との接触となるため、両者は線接触する。また、接触点P4及びP5におけるストッパ45と移動制限凸部75との接触も、凸状の曲面と平面との接触となることから、線接触になる。
【0064】
このように、表面に凸状の曲面を有する山形状のストッパ45を対で配置し、その間に平面状の斜面を有する三角形状の移動制限凸部75を差し込む構成とすることで、内歯車74が軸線回りに回転した場合であっても、軸線に直交する方向に移動した場合であっても、内歯車74の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触を線接触にとどめることができる。このように線接触で接触した内歯車74の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触面積は小さいため、動作する内歯車74からの振動は第2ハウジング40へ伝達しにくくなる。これにより、第1遊星歯車機構70から伝達されて発生する第2ハウジング40の振動が抑制されるため、第1遊星歯車機構70に起因する振動に伴う遊星歯車装置20から発生する騒音を抑制することができる。
【0065】
なお、本明細書中で記載した「線接触」とは、接触部分が線形状をなしている接触状態のことであり、単に、各々の断面において接触点となる一点のみで示されてしまうような接触状態だけを表すのではなく、図18に示すような、接触領域90における幅Wが長さLに対して十分に小さいと認められる態様の接触状態も含まれるものとする。また、本明細書中で記載した「線接触」とは、さらに、接触領域90における幅Wが軸線方向に沿って仮想線を引いたときに線形状をなすように散在して接触する(まばらに接触する)接触状態も含むものとする。また、本明細書中で記載した「線接触」とは、さらに、接触領域90における幅Wが、軸線方向ではなく、斜線を描くように線形状をなしている接触状態も含むものとする。また、本明細書中で記載した「線接触」とは、さらに、接触領域90における幅Wが、軸線方向ではなく、斜線を描く方向に沿って仮想線を引いたときに線形状をなすように散在して接触する(まばらに接触する)接触状態も含むものとする。
【0066】
また、内歯車74の+X方向側の端面に半球状の突起74cを形成し、突起74cを第2ハウジング40の段差面46a(図5、6)に接触させている。この突起74cと段差面46aとの接触態様を、点接触という限られた範囲の接触とすることができる。これにより動作する内歯車74からの振動を第2ハウジング40へ伝達しにくくすることができる。
【0067】
また、図15に示すように、軸線に直交する平面で切断した移動制限凸部75の断面を三角形状とし、先細となった頂部75bを外側に向ける構成とすることにより、射出成形時の内歯車74の型抜けを良好なものとすることができる。これにより、歩留りを向上させることができる。
【0068】
また、図19に示すように、移動制限凸部75を軸線方向に直交する平面で切断した断面の両サイドには直線状の斜辺部75aが形成されている。また図19には、移動制限凸部75の比較例として、両サイドが膨らんだ形状の移動制限凸部100を二点鎖線で図示している。両者を比較すると、移動制限凸部75の断面積は、ハッチングが施された領域の面積分だけ移動制限凸部100の断面積よりも小さい。これにより、本実施の形態では内歯車74を軽量化することができるため、モータ10にかかる負荷を軽減することができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。また、動作する内歯車74を軽量化できるため、本実施の形態では内歯車74が第2ハウジング40に接触した際の衝撃を小さくする(抑制する)ことができ、そのため第2ハウジングの振動も小さくする(抑制する)ことができる。
【0069】
また、内歯車74は、第2ハウジング40を形成する合成樹脂よりも低硬度の合成樹脂から形成されている。内歯車74及び第2ハウジング40を形成する合成樹脂としては、機械的強度、耐摩耗性、耐熱性等の観点から、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックを使用すること好ましい。これらの合成樹脂としては、例えば、超高分子ポリエチレン(UHPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0070】
内歯車74及び第2ハウジング40を形成する合成樹脂は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。本発明の効果を奏する範囲において適宜選択することができる。
【0071】
上記合成樹脂のなかで、内歯車74を形成するのに適した比較的柔らかい合成樹脂としては、例えば、超高分子ポリエチレン(UHPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)を使用することが望ましい。また、第2ハウジング40を形成するのに適した比較的硬い合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)を使用することが望ましい。また、内歯車74及び第2ハウジング40を形成する合成樹脂材料(材料)に関して主成分が同じ合成樹脂材料を用いる場合には、合成樹脂の密度等を変えて、第2ハウジング40を形成する合成樹脂の方が硬くなるようにすることが望ましい。
【0072】
このように、内歯車74を第2ハウジング40よりも低硬度の合成樹脂から形成することで、本実施の形態では、内歯車74が第2ハウジング40に接触した際の衝撃を和らげることができ、第2ハウジング40に生じる振動をより小さくする(抑制する)ことができる。それにより本実施の形態では、第2ハウジング40の振動に起因する騒音をより小さくする(抑制する)ことができ、さらに内歯車74と第2ハウジング40とが衝突した際の音も小さくする(抑制する)ことができる。ひいては、第1遊星歯車機構70に起因する振動に伴う遊星歯車装置20から発生する騒音を抑制することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、ハウジングと内歯車とを分離させた構成を、低速で回転する2段目の遊星歯車機構には適用せずに、高速で回転する1段目の遊星歯車機構のみに適用している。つまり、本実施の形態では、振動や騒音が大きくなりやすい高速で回転する機構には、内歯車をフローティングさせた構成を採用し、比較的振動や騒音が大きくなりにくい低速で回転する機構には、内歯が形成されたハウジング構造を採用している。これにより、本実施の形態では、遊星歯車機構に起因する遊星歯車装置の振動及び騒音を抑制するとともに、遊星歯車装置の必要以上の部品点数の増大や、組み立て作業や組み立てコストの増大を防ぐことができる。ひいては、遊星歯車装置の製造コストの低減を図ることができる。このように、遊星歯車機構の回転態様に応じて、適宜、構成の異なる2つの機構を採用でき、両機構を併存させることができる。
【0074】
次に、本発明の他の実施の形態について説明するが、実施の形態1と共通する構成も多い。そこで、以下では異なる構成を中心に説明するものとし、共通する構成については同じ符号を付すとともに詳細な説明は省略する。なお、以下の実施の形態では、第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構とに同様の構成を適用したものであることから、重複する説明を避けるために第2遊星歯車機構の構成を例に挙げて説明する。
【0075】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、キャリアに形成された切欠き部は、各フランジ部の外縁から中央に向けて形成されていた。一方、本実施の形態2におけるキャリアに形成された切欠き部は、図20(a)、(b)に示すように、軸線周りの成分を有するように、フランジ部183a,183bの外縁から径方向に対して傾きをもって形成されている。
【0076】
図20(a)に示すように、キャリア183の第1フランジ部183aは、略円形状をなしている。第1フランジ部183aには、外縁から軸線周りの成分を有するように、径方向に対して傾斜した3つの切欠き部188が形成されている。3つの切欠き部188は、第1フランジ部183aの中心を基準に等角度の間隔で配置されている。切欠き部188は、第1フランジ部183aの外縁から+X軸方向側からみて反時計回りの方向に延びた第1曲線部188aと、第1フランジ部183aの内側で第1曲線部188aと接続した円弧部188bと、第1フランジ部183aの外側で円弧部188bと接続した、第1曲線部188aと平行な第2曲線部188cとを有している。円弧部188bは、その中心角が180°よりも大きいことから、第1曲線部188aとの接続箇所に角部188dが形成されている。このように構成された切欠き部188によって、第1フランジ部183aには、軸線方向に直交する方向が開放された部分が形成されている。
【0077】
第2フランジ部183bにも、図20(b)に示すように、第1フランジ部183aと同様の切欠き部が形成されている。すなわち、第2フランジ部183bには、外縁から軸線周りの成分を有するように、径方向に対して傾斜した3つの切欠き部189が形成されている。なお、+X軸方向側からみた図20(a)と、-X軸方向側からみた図20(b)とでは、みる方向が異なることから、切欠き部の軸線周りの向きが反対となっている。すなわち、切欠き部189は、第2フランジ部183bの外縁から時計回りの方向に延びた第1曲線部189aと、第2フランジ部183bの内側で第1曲線部189aと接続した円弧部189bと、第2フランジ部183bの外側で円弧部189bと接続した、第1曲線部189aと平行な第2曲線部189cとを有している。円弧部189bは、その中心角が180°よりも大きいことから、第1曲線部189aとの接続箇所に角部189dが形成されている。このように構成された切欠き部189によって、第2フランジ部183bには、軸線方向に直交する方向が開放された部分が形成されている。
【0078】
キャリア183に遊星歯車82を組み付ける場合、まず、遊星歯車82の回転軸82b,82cを矢印101で示すように、キャリア183の切欠き部188,189に挿入していく。そして、さらに回転軸82b,82cを挿入して角部188d,189dを越えさせて、回転軸82b,82cを円弧部188b,189bに収容する。これにより、遊星歯車82を、キャリア183に回転可能に保持させることができる。
【0079】
ここで、図10に示す太陽歯車81が回転すると、太陽歯車81と噛み合った3つの遊星歯車82がそれぞれ回転する。そして、図20(a)に示す遊星歯車82が、反時計回り(この時、図20(b)に示す遊星歯車82は逆方向の時計回り)の方向に回転(公転)したとする。このとき遊星歯車の回転軸82bは、回転(公転)する方向、すなわち、矢印F1の方向に切欠き部188を押圧し、キャリア183を回転させる。同様に、遊星歯車82の回転軸82cは、図20(b)に示すように、矢印F4の方向に切欠き部189を押圧し、キャリア183を回転させる。このような矢印F1の方向及び矢印F4の方向には、第1フランジ部183a及び第2フランジ部183bの開放された部分が形成されていない。そのため、遊星歯車82の動作中に、回転軸82b,82cがキャリア183から抜け出すことがない。
【0080】
一方、図20(a)に示す遊星歯車82が、時計回り(このとき、図20(b)に示す遊星歯車82は逆方向の反時計回り)の方向に回転(公転)したとする。このとき遊星歯車82の回転軸82bは、回転(公転)する方向、すなわち、矢印F2の方向に切欠き部188を押圧し、キャリア183を回転させる。同様に、遊星歯車82の回転軸82cは、図20(b)に示すように、矢印F3の方向に切欠き部189を押圧し、キャリア183を回転させる。このように遊星歯車82が回転(公転)すると、図20(a)に示す回転軸82bは、角部188dに当接するようになる。これにより、遊星歯車82の動作中に、回転軸82bが切欠き部188から抜け出るのを防止することができる。同様に、遊星歯車82がF3の方向に回転すると、図20(b)に示す回転軸82cは、角部189dに当接するようになる。これにより、遊星歯車82の動作中に、回転軸82cが切欠き部189から抜け出るのを防止することができる。
【0081】
このように、切欠き部の形状を、遊星歯車装置としての機能を確保しながら、他の形状に変更することができる。本実施の形態が奏するその他の作用効果は、上記実施の形態1と同様である。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、図21に示すように、各切欠き部88,89の両側に貫通孔283c,283d,283e,283fが形成されている点が実施の形態1と異なっている。なお、その他の構成は、実施の形態1の構成と同様である。
【0083】
図21(a)に示す遊星歯車82が、図中反時計回りに回転(公転)する際に切欠き部88を押圧する矢印F5の方向には、切欠き部88に隣接する第1フランジ部283aの位置に貫通孔283cが形成されている。同様に、図21(b)に示す遊星歯車82が、図中時計回りに回転(公転)する際に切欠き部89を押圧するF8の方向には、切欠き部89に隣接する第2フランジ部283bの位置に貫通孔283fが形成されている。
【0084】
一方、図21(a)に示す遊星歯車82が、図中時計回りに回転(公転)する際に切欠き部88を押圧する矢印F6の方向には、切欠き部88に隣接する第1フランジ部283aの位置に貫通孔283dが形成されている。同様に、図21(b)に示す遊星歯車82が、図中反時計回りに回転(公転)する際に切欠き部89を押圧するF7の方向には、切欠き部89に隣接する第2フランジ部283bの位置に貫通孔283eが形成されている。
【0085】
貫通孔283fは、図21(b)に示すように、円弧251と、円弧251よりも大きな半径を有する円弧252と、円弧251と円弧252の端部を接続する線分253,254とによって区画された孔である。貫通孔283fは、より小さな半径を有する円弧251が、切欠き部89の円弧部89bに近接するように配置されている。その他の貫通孔283c,283d,283eも、同様の形状を有するとともに同様の配置態様で配置されている。
【0086】
このように、貫通孔283c,283d,283e,283fを、切欠き部88,89に隣接する位置であり、遊星歯車82の動作中に回転軸82b,82cが切欠き部88,89を押圧する方向に配置している。これにより、回転軸82b,82cが押圧する切欠き部88、89の箇所の剛性を低下させて弾力性を付加させることができる。そのため、遊星歯車82が動作する際の振動や音を吸収することができ、遊星歯車装置から発生する振動や騒音を抑制することができる。その他の作用及び効果は、上記実施の形態1と同様である。
【0087】
(実施の形態4)
上記実施の形態では、両方の端部から回転軸が突出した遊星歯車について説明した。しかしながら、実施の形態4に係る遊星歯車は、回転軸が形成されている箇所が遊星歯車の一方の端部のみである点が、上記の実施の形態の遊星歯車と異なっている。
【0088】
図22に示すように、第2遊星歯車機構380は、3つの遊星歯車382と、3つの遊星歯車382を回転可能に支持するキャリア383と、遊星歯車保持具350とを有している。なお、太陽歯車と出力軸とは、図10に図示したものと同様であるため、図22での図示は省略している。
【0089】
遊星歯車382は、例えば、外周面に遊星歯部82aが形成された外歯車である。図22,23に示すように、遊星歯車382の軸線方向における+X軸方向側の端部には軸線方向に沿って突出した回転軸82bが形成されている。一方、-X軸方向側の端部には、回転軸が設けられておらず、図23に示すように、図22に示す遊星歯車保持具350のピン352が挿入される凹部382cが形成されている。
【0090】
図24(a)に示すように、遊星歯車382の回転軸82bを保持するキャリア383の第1フランジ部83aの構成は、実施の形態1の第1フランジ部83aの構成と同様である。一方、遊星歯車382の回転軸が設けられていない-X軸方向側に設けられた第2フランジ部383bの構成は、実施の形態1の第2フランジ部の構成と異なっている。第2フランジ部383bには、遊星歯車の回転軸が挿入される切欠き部が形成されていない。また、第2フランジ383bには、遊星歯車保持具350のピン352が挿通される挿通孔383cが形成されている。また、第2フランジ部383bの-X軸方向側の面には、遊星歯車保持具350のリング部351を収容するための収容凹部383dが形成されている。
【0091】
遊星歯車保持具350は、図22に示すように、リング状に形成されたリング部351と、リング部351から突出した3本のピン352とを有している。3本のピン352のそれぞれは、第2フランジ部383bに形成された対応する挿通孔383cに通されて、図23に示す遊星歯車382の凹部382cに挿入される。
【0092】
キャリア383に遊星歯車382を組み付ける場合、まず、遊星歯車382の回転軸82bを切欠き部88に挿入していく。そして、さらに回転軸82bを挿入していき、図24(a)に示す入口88cを越えさせて円弧部88bに収容する。このように、遊星歯車382の一端を円弧部88bに収容することで、遊星歯車382の大まかな位置決めをすることができる。そして、3つ全ての遊星歯車382の一端を、円弧部88bに収容してキャリア383に保持させる。続いて、遊星歯車保持具350に形成された3つのピン352を、第2フランジ部383bに形成された対応する挿通孔383cに通し、図23に示す遊星歯車382の凹部382cに挿入する。なお、遊星歯車保持具350のリング部351は、第2フランジ部383bに形成された図24に示す収容凹部383dに収容する。以上により、遊星歯車382を、キャリア383に回転可能に保持することができる。
【0093】
このように、遊星歯車382には、一端から突出した回転軸82bが設けられている。そして、回転軸82bをキャリア383に形成された切欠き部88に挿入することで、遊星歯車382の大まか位置決めをすることができる。これにより、遊星歯車保持具350に形成されたピン352を、スムーズに遊星歯車382の凹部382cに挿入することができ、遊星歯車382のキャリア383への組み付けを容易に行うことができる。
【0094】
(変形例)
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。上記実施の形態では、第1遊星歯車機構70と第2遊星歯車機構80とで、キャリアに遊星歯車を取り付ける構成を同じにしていたが、それぞれの構成が異なってもよい。例えば、第1遊星歯車機構70に実施の形態1の構成を適用し、第2遊星歯車機構80に実施の形態2の構成を適用するなど、種々の実施の形態の構成を任意に適用することができる。
【0095】
また、キャリアに形成する切欠き部の形状も上記の実施の形態に限定されない。図20を参照しながら説明したように、遊星歯車の回転軸は、回転(公転)する方向に力を作用させる。そのために、動作する遊星歯車は、切欠き部から抜け出る方向(径方向)には移動しにくい。そのため、切欠き部を、中心に向けてU字状に切り欠いた簡単な形状の切欠きとしてもよいし、矩形状に切り欠いたものとしてもよい。
【0096】
また、切欠き部の両サイドに形成された貫通孔283c,283d,283e,283fの形状も、図21に図示した形状に限定されず任意の形状で形成することができる。例えば、円形の形状としてもよいし、矩形の形状としてもよいし、三角形の形状としてもよい。あるいは、複数の小さな貫通孔を切欠き部の周囲に形成することによって、切欠き部に弾力性を付加するようにしてもよい。
【0097】
さらには、キャリアが切欠き部を有さない形状であってもよい。すなわち、キャリアは遊星歯車の回転軸が挿入される貫通孔または凹部を有する形状であってもよい。この場合、遊星歯車がキャリアの収容部に配置された後、遊星歯車を軸線方向に移動させることで、回転軸を貫通孔または凹部に挿入する。その後、実施の形態4と同様に遊星歯車にピンを挿入することで組み立てられる。
【0098】
また、遊星歯車は回転軸が一体で成形されたものであると説明したが、遊星歯車の製造方法は任意である。例えば、回転軸を、別部材として製作して歯車部に固着させることで遊星歯車を製造してもよい。そのような構成としても、遊星歯車が組み付けやすくなり、遊星歯車装置を容易に組み立てることができる。
【0099】
また、上記の実施の形態では、第2ハウジング40に対のストッパ45を設け、内歯車74に対のストッパ45の間に差し込む移動制限凸部75を設けた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、対のストッパ45と移動制限凸部75との設置箇所を入れ替え、第2ハウジング40の内周面に移動制限凸部75を設け、内歯車74の外周面に対のストッパ45を設ける構成を採用してもよい。
【0100】
また、対のストッパ45の断面を山形の形状とし、移動制限凸部75の断面を三角形状としたが、対のストッパの断面を三角形状とし、対のストッパの間に差し込まれる移動制限凸部の断面を山形の形状として、断面形状を入れ替えてもよい。
【0101】
また、対のストッパ45及び対応する移動制限凸部75の設置箇所の数は特に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した6箇所よりも多い設置数としてもよいし、少ない設置数としてもよい。
【0102】
また、対のストッパ45の凸状の曲面と移動制限凸部75の平面とを接触させることで、両者を線接触させていたが、他の形状のものを接触させることにより線接触を実現することもできる。次に、線接触を実現する他の実施例を、図25を参照しながら説明する。図13の拡大図で示す構成と異なる点は、移動制限凸部(第1凸部)175の断面が三角形状ではなく丸みを帯びた山形状であることである。なお、第2ハウジング40の構成は、図13の拡大図で示す構成と同様である。図25において、アクチュエータが作動していない時の内歯車174を実線で図示している。また、二点鎖線で示した内歯車174は、アクチュエータが作動することにより上方へ移動し第2ハウジング40と接触した状態にある。図25に示すように、対のストッパ45と移動制限凸部175との接触は、互いに凸状の曲面同士の接触であり、対のストッパ45と移動制限凸部175との接触点P6,P7で線接触となる。このように、本実施例では、膨らみを有する凸状の曲面同士を接触させることで、線接触を実現している。
【0103】
また、これに限定されず、第2ハウジング40が局所的に曲率の大きな凹状部を有し、内歯車74がより小さな曲率の凸状の曲面を有し、曲率の大きな凹状の曲面と、膨らみを有する凸状の曲面とを接触させることで、線接触を実現することも可能である。その他、線接触を実現するための構成自体は任意である。
【0104】
なお、上記の線接触を実現する他の実施例において、線接触する箇所の内歯車の構成と第2ハウジングの構成とを入れ替えることもできる。
【0105】
また、アクチュエータ1は、モータ10の回転を減速する減速機として、第1遊星歯車機構70と第2遊星歯車機構80との2段の遊星歯車機構を設けたが、その段数は任意に設定することができる。例えば、遊星歯車機構を3段以上設けてより減速比を高めるようにしてもよいし、1段の遊星歯車機構のみの構成としてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、ハウジングと内歯車とを分離させた構成を、高速で回転する1段目の機構である第1遊星歯車機構70のみに適用し、低速で回転する2段目の機構である第2遊星歯車機構80には内周面に内歯が形成されたハウジングを備える構成を採用した。しかしながら、2段目の機構である第2遊星歯車機構80にも、ハウジングと内歯車とを分離する構成を採用して、振動及び騒音の低減を図ってもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、モータ10の回転を減速して出力歯車86aから出力する減速機として用いられる場合について説明したが、用途については限定されるものではない。例えば、図10に示す出力軸86が設けられている部分を入力側としてモータの回転軸を接続し、図7に示す太陽歯車71が設けられている部分を出力側として出力軸を接続してもよい。これにより、モータの回転を増速して出力する増速機として用いることができる。この場合も、図7に示す第1遊星歯車機構70がより高速で動作することから、内歯車とハウジングとを分離させた構造を採用するのが好ましい。また、図10に示す第2遊星歯車機構80にはモータの回転が直接伝達することから、内歯車とハウジングとを分離させた構造を必要に応じて採用するのが好ましい。また、ロボットや工作機械等の産業用機械、所謂コーヒーカップといった遊具に本発明を用いてもよい。
【0108】
また、種々の用途に本発明を用いるにあたり、3段以上の遊星歯車機構を設ける場合には、最も高速で動作する遊星歯車機構に内歯車とハウジングとの分離構造体を適用する。これにより、振動及び騒音の発生を効果的に低減することができる。また、最も低速で動作する遊星歯車機構は、発生させる振動及び騒音が小さいことから、内周面に内歯が形成されたハウジングを備える構成を適用する。これにより、内歯車とハウジングとを必要以上に分離構造にする必要がなくなるため、部品点数の増大や、組み立て作業や組み立てコストの増大を防ぐことができ、ひいては、生産コストを抑制することができる。
【0109】
また、上記実施の形態において、モータ10の動力を出力軸86まで伝達するために用いられる各歯車は、はすば歯車であると説明したが、他の歯車を用いてもよい。例えば平歯車を採用してもよい。これにより、はすば歯車を採用する場合と比べて、かみあわせ箇所でのがたつきが生じやすくなるが、そのような場合でも本発明の構成を採用することで遊星歯車装置の振動及び騒音を小さくする(抑制する)ことができる。
【0110】
また、内歯車とハウジングとの分離構造体は、遊星歯車装置の一部として用いられる場合について説明したが、その用途は限定されず他の歯車機構の一部として用いてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、3つの遊星歯車を用いて遊星歯車装置の遊星歯車機構を実現したが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、1つ、または、3つ以外の複数の遊星歯車を用いた遊星歯車機構を採用して遊星歯車装置を実現してもよい。
【0112】
また、本発明を適用した遊星歯車装置は、自動車、ロボット、産業用機械、遊具など、減速機や増速機を使用する様々な機械や装置等に適用することができる。
【0113】
また、上記実施の形態における移動規制凸部(第1凸部)と対のストッパ(第2凸部)とが軸線方向に沿って線接触することでハウジングの内部での移動が制限される構造に変えて、移動規制凸部(第1凸部)と対のストッパ(第2凸部)とが点接触することでハウジングの内部での移動が制限される構造としてもよい。より具体的には、図5における対のストッパ(第2凸部)45が、軸線方向において、間欠的に存在する形状であってもよく、図7における移動制限凸部(第1凸部)75が、軸線方向において、間欠的に存在する形状であってもよい。
【0114】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0115】
1 アクチュエータ
2 軸線
10 モータ
11 モータ本体
12 回転軸
20 遊星歯車装置
30 第1ハウジング
30a 開口
40 第2ハウジング
41 第1部位
42 第2部位
43 第3部位
43a 開口
44 円筒体
44a 内壁
45 ストッパ(第2凸部)
45a 立ち上がり部
45b 接続部
45c 頂部
46 円筒体
47 内歯部
50 ハウジング
60 遊星歯車機構
70 第1遊星歯車機構
71 太陽歯車
71a 太陽歯部
72 遊星歯車
72a 遊星歯部
72b 回転軸
72c 回転軸
73 キャリア
73a 第1フランジ部
73b 第2フランジ部
73c 接続部
73d 開口
73e 肉抜き穴
74 内歯車
74a 内歯部
74b 外周面
74c 突起
75 移動制限凸部(第1凸部)
75a 斜辺部
75b 頂部
75c 切欠き部
77 収容空間
78 切欠き部
78a 開放部
78b 円弧部
78c 入口
79 切欠き部
79a 開放部
79b 円弧部
79c 入口
80 第2遊星歯車機構
81 太陽歯車
81a 太陽歯部
82 遊星歯車
82a 遊星歯部
82b 回転軸
82c 回転軸
83 キャリア
83a 第1フランジ部
83b 第2フランジ部
83c 接続部
83d 開口
83e 肉抜き穴
84 歯車保持部
84a 収容開口
85 出力軸保持部
85a 嵌合孔
86 出力軸
86a 出力歯車
87 収容空間
88 切欠き部
88a 開放部
88b 円弧部
88c 入口
89 切欠き部
89a 開放部
89b 円弧部
89c 入口
90 接触領域
140 第2ハウジング
141 凹状部
174 内歯車
175 移動制限凸部(第1凸部)
183,283,383 キャリア
183a,283a 第1フランジ部
183b,283b,383b 第2フランジ部
188 切欠き部
188a 第1曲線部
188b 円弧部
188c 第2曲線部
188d 角部
189 切欠き部
189a 第1曲線部
189b 円弧部
189c 第2曲線部
189d 角部
283c,283d,283e,283f 貫通孔
350 遊星歯車保持具
351 リング部
352 ピン
380 第2遊星歯車機構
382 遊星歯車
382c 凹部
383 キャリア
383b 第2フランジ部
383c 挿通孔
383d 収容凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25