(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】免疫調節マクロライドのための安定な配合物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/58 20060101AFI20231031BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20231031BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231031BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G01N33/58 Z
A61K47/46
A61K47/18
A61K31/436
(21)【出願番号】P 2019548641
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2018055465
(87)【国際公開番号】W WO2018162475
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゲル,エベリナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼル,ハンス-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-カレ,エロイザ
(72)【発明者】
【氏名】レードル,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス,ノア
(72)【発明者】
【氏名】ティーマン,ベンヤミン
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529439(JP,A)
【文献】特表2009-540274(JP,A)
【文献】特開2013-257337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
G01N 33/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの免疫調節マクロライド化合物および実質的無細胞の溶血血液を含む液体組成物であって、前記免疫調節マクロライド
化合物が、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスおよびテムシロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライド
化合物であり、実質的無細胞が、10個の生細胞/ml未満の数である、液体組成物。
【請求項2】
実質的無細胞が、1個の生細胞/ml未満の数である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
水性溶液である、請求項1または2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記免疫調節マクロライド
化合物が、エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライド
化合物である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
保存剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
ビス-ビグアナイドをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記ビス-ビグアナイドが、アレキシジン(1,1’-(1,6-ヘキサンジイル)ビス{2-[N’-(2-エチルヘキシル)カルバムイミドイル]グアニジン、CAS-番号22573-93-9)またはクロルヘキシジン(N,N’’-ビス(4-クロロフェニル)-3,12-ジイミノ-2,4,11,13-テトラアザテトラデカンジイミドアミド、CAS番号55-56-1)である、請求項6に記載の液体組成物。
【請求項8】
7.5~4のpHを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項9】
安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するための方法であって、
a)実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製するステップ、
b)予め決定された量の少なくとも1つの免疫調節マクロライドを、実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液に混合するステップ、および、それによって
c)安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するステップ
を含み、
前記免疫調節マクロライドが、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスおよびテムシロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライドであり、実質的無細胞が、10個の生細胞/ml未満の数である、方法。
【請求項10】
実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、
全血を凍結および解凍し、それによって溶血血液を供給するステップを含み、および、実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、少なくとも5分間、前記溶血血液を撹拌するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、
溶血血液を供給するステップ、および、前記溶血血液を遠心分離するステップを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記安定化した免疫調節マクロライド検量溶液が7.5~4のpHを有する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか1項に記載の液体組成物および免疫調節剤検出剤を含むキット。
【請求項14】
そこに含まれる少なくとも1つの免疫調節マクロライドを安定化させるための、実質的無細胞の溶血血液および任意選択で保存剤を含む溶液を使用する方法であって、
実質的無細胞の溶血血液および任意選択で保存剤を前記免疫調節マクロライドに添加するステップを含み、
前記免疫調節マクロライドが、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスおよびテムシロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライドであり、実質的無細胞が、10個の生細胞/ml未満の数である、方法。
【請求項15】
前記溶液が7.5~4のpHを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
デバイスであって、請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物および/または請求項13に記載のキットを含む、前記デバイス。
【請求項17】
対象のサンプル中の免疫調節マクロライド化合物を決定する方法であって、検量サンプルとして、および/または参照サンプルとして請求項1から8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組成物を使用するステップを含む方法。
【請求項18】
請求項1から8のいずれか1項の液体組成物を含む、免疫調節マクロライド化合物検量のための溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの免疫調節マクロライド化合物および実質的無細胞の溶血血液を含む液体組成物に関する。本発明は、安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造する方法であって、a)実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製するステップ、b)予め決定された量の少なくとも1つの免疫調節マクロライドを、実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液に混合するステップ、およびそれによってc)安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するステップを含む方法にもさらに関する。さらに、本発明は、キット、使用、デバイス、方法に、およびそれに関連した免疫調節マクロライド化合物検量溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
エベロリムス(Everolimus)(Eve)、シロリムス(Sirolimus)(Sir)およびタクロリムス(Tacrolimus)(Tac)は、臓器移植後の免疫抑制剤(ISD)として薬で使用されるマクロライド化合物である。これらの薬物は狭い治療範囲を有し、低いレベルは、不十分な治療に結びつけられ、最終的に臓器の拒絶に至り、他方では、高いレベルは、肝臓および腎臓のような特定の臓器に対する毒性に結びつけられる。さらに、薬物動態および薬力学パラメーターでの患者内および患者間変動は、ISDの均衡のとれた投与量を複雑にする。従って、これらの薬物の治療薬物モニタリング(TDM)は、用量単独によるよりむしろ体内での濃度に基づいて治療を制御することにより移植患者の有効な治療のために不可欠なものとなった。エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスは、血流中の赤血球に高度に結合しているので、推奨される計量のためのマトリックスは、全血である。
【0003】
全血中のEve、SirおよびTacの決定のために、広範な範囲のTDM試験が、典型的に自動化分析装置のための免疫アッセイとして、LC-MS/MS試験としても市販で利用可能である。自動化された体外診断薬(IVD)プラットフォームで稼働する試験についての1つの重要な態様は、LC-MS/MSの場合に、免疫試薬、対照、検量用試料および内部標準のような必要とされる試薬全てが、安定で直ぐに使用できる溶液として理想的に提供されることである。これらの溶液は、長期間、器具に備え付けておくことができ、これにより、使用者相互作用を必要としないワークフローが提供される。しかし、化学的に不安定な試薬が含まれる場合には凍結乾燥物としての試薬の使用が必要であるが、このことは、再構築のための手作業ステップを要求することにより、ワークフローを妨げる。手作業ステップは、追加の費用を発生し、さらに誤差の源も生じる。さらに、再構築された試薬は、典型的には、短い保存寿命を示し、新たに調製された溶液に交換されなければならない。
【0004】
免疫化学に基づくIVDプラットフォームのために使用されるアッセイ試薬のための典型的な溶媒は、水である。水性ベースの溶媒、すなわち緩衝剤に溶解される試薬は、抗体または他のタンパク質のような、アッセイに含まれる生体分子との十分な適合性を確実にし、それらの無傷の3次元構造を保証する。他方で、有機溶媒は、それらの量によっては、生体分子の部分的または全体的なアンフォールディングおよび失活を引き起こす可能性があり、従って、免疫アッセイを妨害する。IVDについてのLC-MS/MS法のいくつかも、予備分析のための水性ベースの溶液およびその試薬(例えば、欧州特許2003455A1号で教示される通り濃縮ワークフローを用いたMS法のための内部標準)を必要とする。LC-MS/MS予備分析では、検体の遊離および/またはマトリックス構成要素の除去が、必要である場合には、サンプル(血清、血漿または全血)が、遊離試薬で処理される。
【0005】
しかし、有機溶媒(例えば、メタノール、アセトニトリル)中の溶液と対照的に、Eve、SirおよびTacの水性配合物は、典型的には、実験室冷蔵庫(2~8℃)で使用される保存温度で、および分析装置に備え付けた場合(4~12℃)、より長い期間安定でない。マクロライドEve、SirおよびTacが、僅かな水性溶解性を有し、それらのエステル結合の加溶媒分解の結果として溶液中で不安定であり、生物学的活性の喪失を導くことが、文献(例えば、欧州特許2402350A1号)から知られている。従って、血液ベースのサンプルを含むが、有機溶媒を含まないEve、SirおよびTacの水性配合物は、より長い期間、それらをIVDで安定に、利用可能に保つために、典型的には、-20~-80℃の範囲にある非常に低い温度で保存される。そうでなければ、溶液は、短期間の間のみ安定である(1~6週、2~8℃で)。保存のための先行技術の推奨は、表1で概説される。
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、免疫調節マクロライドを決定するための改善された手段および方法についての、特に、信頼でき、保存可能な検量溶液を提供するための改善された手段および方法についての当業界での必要がある。この問題は、本明細書に開示される手段および方法により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、少なくとも1つの免疫調節マクロライドおよび実質的無細胞の溶血血液を含む液体組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で使用される場合、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」もしくは「含む(include)」またはその任意の自由裁量の文法上の変動は、非排他的な方法で使用される。従って、これらの用語は、この用語に導入される特徴のほかに、別の特徴が、この文脈で記載される実体で存在しない状況に、および1つまたは複数の別の特徴が存在する状況の両方に言及する可能性がある。ある例として、表現「AはBを有する」、「Aは、Bを含む(comprise)」および「Aは、Bを含む(include)」は、Bのほかに、他の要素が、A中に存在しない状況(すなわち、Aが、唯一、排他的に、Bからなる状況)およびBのほかに、1つまたは複数の別の要素が、要素C、要素CおよびDまたは同等の別の要素のように、実体Aに存在する、状況の両方を指しうる。
【0010】
さらに、以下で使用される場合、用語「好ましくは」、「さらに好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「さらに特に」、「特別に」、「さらに特別に」または類似の用語は、別の可能性を制限することなく、任意選択の特徴と連動して使用される。従って、これらの用語により導入される特徴は、任意選択の特徴であり、いずれの方法で請求項の範囲を限定することは意図されない。本発明は、当業者が、認識するであろう通り、代替的特徴を使用することによって行われうる。同様に、「ある本発明の実施形態で」または類似の表現により導入される特徴は、本発明の別の実施形態に関するなんらの制限もなく、本発明の範囲に関するなんらの制限もなく、およびこのような方法で導入される特徴を、本発明の他の任意選択の、または非任意選択の特徴と合わせる可能性に関してなんらの制限もなく、任意選択の特徴であることが意図される。さらに、特に指示されない限り、用語「約」は、関連分野での一般に許容される技術的精度を有する表示値に関し、好ましくは、表示値±20%、さらに好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。
【0011】
用語「液体組成物」は、固体またはペースト様組成物に対するものであると当業者に理解される。ある実施形態では、液体組成物は、ニュートン流体である。別の実施形態では、液体組成物は低い粘度を有し、ある実施形態では、粘度は水に類似する。従って、ある実施形態では、液体組成物の粘度は、100mPasであり、ある実施形態では、50mPas未満であり、別の実施形態では、15mPas未満である。ある実施形態では、粘度は、ビスコメーター-レオメーター-オン-ア-チップ(Viscometer-Rheometer-on-a-Chip)(VROC(登録商標))法(Sharmaら、(2011)、Soft Matters 7:5150)によって、20℃で決定される。別の実施形態では、粘度決定は、レオセンス(RheoSense)m-VROC(商標)(Collotec)デバイスで、20℃で行われ、ある実施形態では、製造業者により提供される指示により行われる。ある実施形態では、液体組成物は、水性組成物であり、ある実施形態では、少なくとも50%(w/w)の、ある実施形態では、少なくとも70%(w/w)の、別の実施形態では、少なくとも80%(w/w)の、別の実施形態では、少なくとも90%(w/w)の比率で水を含む。ある実施形態では、液体組成物は、例えば、免疫調節マクロライドの保存溶液の添加に由来する微量の有機溶媒を含んでいてもよい。しかし、ある実施形態では、液体組成物は、10%未満の有機溶媒を、ある実施形態では、5%未満の有機溶媒を、別の実施形態では、2%未満の有機溶媒を、別の実施形態では、1%未満の有機溶媒を含む。ある実施形態では、液体組成物は、実質的に、検出可能な有機溶媒を含まず、ここで、用語「実質的に含まず」は、0.1%未満の比率に関し、別の実施形態では、検出不能な量に関する。ある実施形態では、このような場合に使用される検出法は、ガスクロマトグラフィーである。ある実施形態では、液体組成物は、エベロリムス、シロリムスまたはタクロリムスを含み、ある実施形態では、エベロリムスおよびシロリムスを含み、ある実施形態では、シロリムスおよびタクロリムスを含み、ある実施形態では、エベロリムスおよびタクロリムスを含み、別の実施形態では、エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスを含む。ある実施形態では、液体組成物は、実質的無細胞である。従って、ある実施形態では、液体組成物は、10個の生細胞/ml未満を含み、ある実施形態では、1個の生細胞/ml未満を含む。別の実施形態では、液体組成物は、10細胞/ml未満、ある実施形態では、1個の細胞/ml未満を含む。無細胞である配合物の文脈では、用語「細胞」は、ある実施形態では、真核細胞、すなわち、特に、溶血のために使用される配合物中に含まれる細胞を指す。ある実施形態では、液体組成物は、7.5~4の、別の実施形態では、7~5のpHを有する。ある実施形態では、液体組成物で、免疫調節マクロライドは、少なくとも12カ月間、6℃の温度で安定であり、用語「安定である」は、高くても10%の、ある実施形態では、高くても5%の、別の実施形態では、決定法における標準偏差内で濃度を減少させることに関する。
【0012】
ある実施形態では、液体組成物は、少なくとも1つの免疫調節マクロライドおよび実質的無細胞の溶血血液からなる。別の実施形態では、液体組成物は、少なくとも1つの免疫調節マクロライド、実質的無細胞の溶血血液、および1つまたは複数の別の免疫調節化合物からなる。別の実施形態では、液体組成物は、少なくとも1つの免疫調節マクロライド、実質的無細胞の溶血血液、少なくとも1つの保存剤および、任意選択で、1つまたは複数の別の免疫調節化合物からなる。
【0013】
別の実施形態では、液体組成物は、予め決定された量の1種類の免疫調節マクロライドまたは複数の免疫調節マクロライド、および任意選択で少なくとも1つの非マクロライド免疫調節化合物を含む検量溶液である。ある実施形態では、液体組成物は、免疫調節マクロライドを、このような場合について本明細書の他の所で特定される濃度で、含み、示される濃度範囲は、ある実施形態では、1つの特定の免疫調節マクロライドの濃度を指す。従って、理解されるであろう通り、配合物中の免疫調節マクロライドの総計は、関係づけられた濃度範囲を超過する可能性がある。ある実施形態では、液体組成物は、予め決定された量の免疫調節マクロライド、ある実施形態では、予め決定された量のエベロリムス、シロリムスおよび/またはタクロリムスを含む免疫調節検量溶液である。液体組成物は、本明細書中のいずれかで特定される通りの参照溶液であってもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「マクロライド」は、ある実施形態では、ポリケチドクラスの化合物の構成員である大環状ラクトン構造を含むクラスの化合物に関する。ある実施形態では、大環状ラクトン環は、8~50個の環原子から、ある実施形態では、12個~40個の環原子から、別の実施形態では、15~35個の環原子を含む。ある実施形態では、マクロライドは、タクロリムスで、およびピメクロリムスでのように、23個の環原子を含み、または、マクロライドは、シロリムス、エベロリムスおよびテムシロリムスでのように、31個の環原子を含む。当業者に理解される通り、マクロライドは、大環状ラクトン環に直接または間接的に付いた別の環構造を含む可能性があり、および/またはそのラクトン環および可能性のある別の環が、少なくとも1つの酸素異種原子に加えて、別の異種原子、特に窒素を含む可能性がある。さらに、マクロライドは、特に、メチル基、エチル基、エチレン基、ケト基、水酸基、環状アルキル基、糖残基などを含めた有機および/または無機側鎖をさらに含む可能性がある。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「免疫調節マクロライド」は、対象、ある実施形態では、哺乳類、特にヒトの免疫反応を調節する特性を有する上記本明細書で特定される通りのマクロライドに関する。ある実施形態では、前記調節は、抑制である;従って、ある実施形態では、免疫調節マクロライドは、マクロライドクラスの化合物の免疫抑制化合物である、すなわち、マクロライド免疫抑制剤である。ある実施形態では、免疫調節マクロライドは、Tリンパ球活性化を阻害する化合物である;このような活性を決定する手段および方法は、当業者に知られている。当業者に理解されるであろう通り、免疫調節マクロライドの免疫調節効果は、直接的である、すなわち、免疫システムの構成要素の活性をそれ自体調節する化合物により、直接的である可能性があるか、または例えば、免疫システムの構成要素の活性を調節する免疫調節マクロライドの代謝産物により、間接的である可能性がある。ある実施形態では、免疫調節マクロライドは、1ng/ml~15μg/mlの、ある実施形態では、5ng/ml~1μg/mlの、別の実施形態では、7.5ng/ml~500ng/mlの、別の実施形態では、10ng/ml~250ng/mlの濃度で液体組成物中に含まれる。
【0016】
ある実施形態では、免疫調節マクロライドは、エベロリムス((1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペンタオン、CAS番号159351-69-6)、シロリムス((1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-12-{(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル]-2-プロパニル}-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペンタオン、CAS番号、タクロリムス((1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R)-1,14-ジヒドロキシ-12-[(1E)-1-[(1R,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル]プロパ-1-エン-2-イル]-23,25-ジメトキシ-13,19,21,27-テトラメチル-17-(プロパ-2-エン-1-イル)-11,28-ジオキサ-4-アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコサ-18-エン-2,3,10,16-テトロン、CAS番号104987-11-3)、ピメクロリムス((1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R)-12-[(1E)-1-[(1R,3R,4S)-4-クロロ-3-メトキシシクロヘキシル]プロパ-1-エン-2-イル]-17-エチル-1,14-ジヒドロキシ-23,25-ジメトキシ-13,19,21,27-テトラメチル-11,28-ジオキサ-4-アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコサ-18-エン-2,3,10,16-テトロン、CAS番号137071-32-0)またはテムシロリムス((1R,2R,4S)-4-[(2R)-2-[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシル3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパノエート、CAS番号162635-04-3)である。ある実施形態では、免疫調節マクロライドは、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスおよびテムシロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライドであり、ある実施形態では、エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライドであり、別の実施形態では、エベロリムスを含み、ある実施形態では、シロリムスを含み、ある実施形態では、タクロリムスを含む。
【0017】
当業者の理解に従い、用語「溶血血液」は、溶解した赤血球を含む配合物に関連して本明細書で使用される。赤血球を溶血する手段および方法は、当業界で知られており、特に、赤血球を含む配合物の凍結および解凍を含み、赤血球を含む配合物への塩化アンモニウムの添加または塩化アンモニウムおよびカリウムの混合物の添加、または赤血球を含む配合物を、低浸透圧希釈剤、例えば、脱イオン水または蒸留水で希釈するステップを含む。ある実施形態では、溶血血液は、赤血球溶解処理を血液に、すなわち、ある実施形態では、全血に赤血球溶解処理を施すことにより得られる。ある実施形態では、その溶血血液は、全血の配合物を凍結および解凍することによって得られ、その手順は、ある実施形態では、繰返されうる。別の実施形態では、その溶血血液は、全血、ある実施形態では、少なくとも2つの対象から得られる全血のプール、ある実施形態では、少なくとも5つの対象から得られる全血のプールを凍結および解凍することによって得られる。ある実施形態では、その溶血血液は、下記本明細書で特定される通りの本発明の方法により得られる。
【0018】
本発明による溶血血液は、実質的無細胞である。当業者に理解される通り、溶血血液、特に全血から得られる場合、顕著な数の非溶解赤血球をさらに含む可能性があるが、非溶解細胞、特にリンパ球もさらに含む可能性がある。本発明によって、実質的無細胞の溶血血液を生成するために、非溶解細胞が、例えば、遠心分離、ろ過、デカンテーションなどを含めた適切な手段により溶血血液から有効に除去される。しかし、非溶解細胞を除去するこのような有効なステップは、いつも十分に有効であるわけではないかもしれない。従って、ある実施形態では、実質的無細胞の溶血血液は、10個の生細胞/ml未満の数、ある実施形態では、1個の生細胞/ml未満の数を含む溶血血液である。別の実施態様では、実質的無細胞の溶血血液は、10個の細胞/ml未満、ある実施形態では、1個の細胞/ml未満の数を含む溶血血液である。
【0019】
ある実施形態では、液体組成物は、少なくとも1つの非マクロライド免疫調節化合物をさらに含み、ある実施形態では、シクロスポリン(Ciclosporin)(シクロ-(L-アラニル-D-アラニル-N-メチル-L-ロイシル-N-メチル-L-ロイシル-N-メチル-L-バリル-3-ヒドロキシ-N,4-ジメチル-L-2-アミノ-6-オクテノイル-L-a-アミノ-ブチリル-N-メチルグリシル-N-メチル-L-ロイシル-L-バリル-N-メチル-L-ロイシル);CAS番号59865-13-3)をさらに含む。
【0020】
組成物を保存する場合に、特に非凍結状態での長期保存が予想される場合、微生物増殖を防止する保存剤(保存剤(preservative agent))を含むことが有益でありうる。従って、本発明の態様は、有効な保存のため必要性、例えば、組成物の長期保存のための必要性を包含する。細菌および真菌増殖を制御するのに適し、組成物の長期保存および使用を可能にする保存剤は、原則的に、例えば、McDonnellおよびRussell(1999)、Clin Microbiol Rev 12(1):147および欧州特許0878714A1号から当業者に知られている。さらに、多数の保存剤およびその混合物が、多様な取引名の下に販売される。従って、ある実施形態では、液体組成物は、少なくとも1つの保存剤、すなわち、1つまたは複数の保存剤をさらに含む。適切な保存剤は、液体組成物に対して、特にそれに含まれる免疫調節マクロライドに対して、およびそれらの安定化に対して影響を示さないか、または負の影響を示さない。従って、ある実施形態では、反応性基を有するまたは遊離する保存剤(例えば、アルデヒド、ハロゲン遊離剤、重金属、過酸素およびエチレンオキシドのような)、免疫調節マクロライドと同じまたは類似のクラスの化学的化合物に属する保存剤、例えば、エリスロマイシンのようなマクロライド抗生物質、およびテトラサイクリンのようなポリケチド抗生物質が、避けられる。ある実施形態では、保存剤は、免疫調節マクロライド決定を妨げない保存剤である。従って、例えば、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび/または2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、o-フェニルフェノール(アルカリ性またはアルコール性、ある実施形態ではアルコール性)、メチルイソチアゾロン、アジドおよびビス-ビグアナイドを含むか、またはそれからなる保存剤が使用されうる。ある実施形態では、保存剤は、アジドであり、別の実施形態では、アジ化ナトリウムである。別の実施形態では、保存剤は、ビス-ビグアナイドであり、ある実施形態では、抗細菌性ビス-ビグアナイドであり、別の実施形態では、アレキシジン(1,1’-(1,6-ヘキサンジイル)ビス{2-[N’-(2-エチルヘキシル)カルバムイミドイル]グアニジン、CAS-番号22573-93-9)またはクロルヘキシジン(N,N’’-ビス(4-クロロフェニル)-3,12-ジイミノ-2,4,11,13-テトラアザテトラデカンジイミドアミド、CAS番号55-56-1)であり、ある実施形態では、クロルヘキシジンである。
【0021】
ある実施形態では、保存剤は、0.005%(w/v)~0.5%(w/v)の、ある実施形態では、0.0075%(w/v)~0.25%(w/v)の濃度で液体組成物中に存在する。ある実施形態では、保存剤は、アジ化ナトリウムであり、0.005%(w/v)~0.25%(w/v)の、ある実施形態では、0.0075%(w/v)~0.05%(w/v)の、別の実施形態では、約0.009%の濃度で存在する。別の実施形態では、保存剤は、ビス-ビグアナイドであり、ある実施形態では、アレキシジンおよび/またはクロルヘキシジンであり、0.005%(w/v)~0.5%(w/v)の、ある実施形態では、0.01%(w/v)~0.25%(w/v)の、別の実施形態では、約0.25%の濃度で存在する。
【0022】
ある実施形態では、液体組成物は、抗凝血剤をさらに含む。用語「抗凝血剤」は、原則的には、当業者に知られている。ある実施形態では、抗凝血剤は、少なくとも1つの凝固経路を阻害する、ある実施形態では、両方の凝固経路(内因性および外因性)を阻害する化合物である。ある実施形態では、抗凝血剤は、ある実施形態では、1000Da未満の分子量、ある実施形態では、500Da未満の分子量を有する低分子量化合物である。ある実施形態では、抗凝血剤は、二価の陽イオンのキレート剤であり、ある実施形態では、カルシウムイオン・キレート剤である。ある実施形態では、抗凝血剤は、クエン酸および/またはエチレンジアミン四酢酸(2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルジニトリロ)四酢酸、EDTA)である。ある実施形態では、抗凝血剤は、微生物によって分解可能でない抗凝血剤であり;ある実施形態では、抗凝血剤は、EDTAである。従って、ある実施形態では、溶血血液は、EDTA血液から生成される。適切な濃度の抗凝血剤が、当業界で知られており;例えば、抗凝血剤が、EDTAである場合には、液体組成物中の最終濃度は、ある実施形態では、0.01%(w/v)~5%(w/v)のもの、別の実施形態では0.02%(w/v)~1%(w/v)のもの、別の実施形態では、0 025%(w/v)~0.5%(w/v)のもの、別の実施形態では、約0.1%(w/v)のものである。
【0023】
有利には、免疫調節マクロライドの溶液が、溶血血液の添加により安定化されうることは、本発明の下にある研究で見出された。このように、通常にはむしろ不安定である溶液は、延長された期間凍結することなく保存されうる。
【0024】
上でなされた定義は、以下のものに変更すべきところは変更して使用する。さらに下でなされた追加の定義および説明は、変更すべきところは変更して本明細書に記載される全ての実施形態にも使用する。本発明はさらに関する
本発明は、安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するための方法であって、
a)実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製するステップ、
b)予め決定された量の少なくとも1つの免疫調節マクロライドを、実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液に混合するステップ、および、それによって、
c)安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するステップ
を含む方法にも関する。
【0025】
疑いの回避のために、本発明の方法はインビトロ法である。さらに、それは、上に明確に言及されるものに加えて、ステップを含みうる。例えば、別のステップは、例えば、ステップa)についての溶血のために1つまたは複数の血液サンプルを供給するステップ、または別の化合物の添加、特にステップb)の前後に、1つまたは複数の保存剤の添加に関しうる。さらに、1つまたは複数の前記ステップは、自動化装置により行うことができる。当業者が理解するであろう通り、本明細書に記載される方法は、安定化した免疫調節マクロライド基準溶液を製造するためにも使用されうる。
【0026】
ある実施形態では、ステップa)の実質的無細胞の溶血血液を含む溶液が、前記実質的無細胞の溶血血液からなる。別の実施形態では、実質的無細胞の溶血血液を含む溶液は、EDTA全血から、例えば、1つまたは複数の、ある実施形態では、明らかに健康な対象から得られる全血サンプルのプールから調製される。従って、ある実施形態では、方法は、少なくとも2つの、ある実施形態では、少なくとも5つの非同一の対象、ある実施形態では、ヒトから得られる全血サンプルのプールから得るステップを含む。
【0027】
赤血球を溶血する方法は、上記本明細書で特定される。ある実施形態では、実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製するステップは、赤血球、特に全血を含む液体を凍結および解凍し、それによって、溶血血液を供給するステップを含む。ある実施形態では、そのような凍結は、-1℃~-190℃の、ある実施形態では、-10℃~-100℃の、別の実施形態では、-50℃~-90℃の、別の実施形態では、約-80℃の、別の実施形態では、-80℃の温度で凍結するステップである。当業者に知られる通り、凍結するステップは、例えば、表示された温度においてサンプルを凍結装置に入れることにより、空気中で行われうる。しかし、凍結は、ドライアイス中で、またはドライアイス/アルコール浴中で、液体空気中での凍結、などを含めた既知方法により促進される可能性がある。別の実施形態では、解凍は、0℃~50℃の、ある実施形態では、4℃~45℃の、別の実施形態では、10℃~40℃の、別の実施形態では、20℃~30℃の、別の実施形態では、約25℃の、別の実施形態では、25℃の温度での解凍である。当業界で知られる通り、解凍するステップは、表示された温度で、空気中で行われうる。しかし、解凍は、水浴で、サーモブロックで、などの解凍を含めた既知方法により促進される可能性がある。ある実施形態では、解凍は、空気中での解凍である。
【0028】
ある実施形態では、実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製するステップは、少なくとも5分間、ある実施形態では、少なくとも10分間、別の実施形態では、少なくとも20分間、ある実施形態では、上で特定される通りに得られる溶血血液、特に、血液の溶血血液を撹拌するステップを含む。ある実施形態では、その方法は、5分~600分の間、ある実施形態では100分~300分の、ある実施形態では15分~180分の、別の実施形態では20分~120分の、別の実施形態では30分~90分の、別の実施形態では、約60分の、別の実施形態では、60分間の溶血血液を撹拌するステップを含む。
【0029】
上記本明細書で特定される通り、本発明の液体組成物は、実質的無細胞である溶血血液を含む。従って、本発明の方法で、ある実施形態では、細胞は、特に上記本明細書に記載される通り、既知方法によって粗溶血血液から除去される。ある実施形態では、細胞は、粗溶血血液を遠心分離することにより除去される。ある実施形態では、遠心分離は、粗溶血血液の他の望ましくない構成物質、例えば、沈殿したタンパク質を除去するためにさらに使用される。当業者は、それによって、遠心分離条件を調整する方法を知っている。従って、ある実施形態では、500g~25000gの、ある実施形態では、1000g~20000gの、別の実施形態では、5000g~15000gの、別の実施形態では、10000g~14000gの遠心分離が行われ;ある実施形態では、前述の遠心分離は、少なくとも2分間、ある実施形態では、少なくとも5分間、別の実施形態では、少なくとも15分間行われる。ある実施形態では、2分~60分の、ある実施形態では、5分~30分の、別の実施形態では、10分~20分の、別の実施形態では、約15分の間の前記遠心分離が行われる。ある実施形態では、方法は、遠心分離された溶血血液の上清に、予め決定された量の少なくとも1つの免疫調節マクロライドを混合するステップをさらに含む。
【0030】
上記本明細書で特定される通り、液体組成物は、保存剤をさらに含みうる。従って、ある実施形態では、その方法は、保存剤、ある実施形態では、上記本明細書で特定される通りの保存剤、別の実施形態では、ビス-ビグアナイド、別の実施形態では、抗細菌性ビス-ビグアナイドを、実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液に混合するステップをさらに含む。保存剤を混合するステップの前記ステップは、少なくとも1つの免疫調節マクロライドを混合するステップの前、同時または後に行われうる。ある実施形態では、保存剤を混合するステップは、溶血の前にさえ行われうる。
【0031】
本発明は、さらに、本発明による液体組成物および免疫調節剤検出剤を含むキットにも関する。
本明細書で使用される場合、用語「キット」は、一緒に包装されていても、いなくてもよい本発明の前述の化合物、手段または試薬を意味する。キットの構成要素は、別個のハウジング(すなわち、別個の部品のキットとして)により構成されうるか、または2つ以上の構成要素が、単独のハウジングに具備されうる。さらに、ある実施形態では、本発明のキットは、下記本明細書で言及される免疫調節マクロライド化合物を決定する方法を実施するために使用されるべきであることが理解される。ある実施形態では、構成要素が、本明細書に参照される方法を実施するための即時使用手段(ready-to-use)で提供されることが予想される。ある実施形態では、前記化合物の全てまたはいくつかは、濃縮された構成要素が、水性緩衝溶液または本明細書中のいずれかで特定される通りの溶血血液を含む溶液のような液体を使用して希釈される、濃縮された液体形態で提供される。さらに、ある実施形態でのキットは、前記方法を行うための指示を含む。指示は、紙または電子形態でユーザーマニュアルにより提供されうる。さらに、そのマニュアルは、本発明のキットを使用する前述の方法を行うときに得られる結果を解釈する指示を含んでいてもよい。ある実施形態では、キットは、水、緩衝剤および/または方法を行うために適切な容器をさらに含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「検出剤」は、免疫調節剤、ある実施形態では、免疫調節マクロライドの検出を補助する任意の剤に関する。従って、検出剤は、溶解緩衝剤、サンプルから少なくとも1つの免疫調節マクロライドを遊離する遊離剤、タンパク質沈殿剤(protein-precipitating-agent)(例えば、アセトニトリル、または任意の他の適切な有機溶媒のような)、1つまたは複数の液体クロマトグラフィー緩衝剤、質量分析法のためのイオン対発生剤などでありうる。ある実施形態では、検出剤は、上記本明細書で特定される通りの本発明の免疫調節マクロライドに、直接または間接的に結合する化合物分子である。当業者に理解されるであろう場合、検出剤は、間接的検出剤化合物、すなわち、免疫調節マクロライドに直接的に接触しないが、それ自体が免疫調節マクロライドに結合する別の化合物の手段による検出剤、であってもよい。ある実施形態では、検出剤は、直接的検出剤であり、すなわち、免疫調節マクロライドに直接結合する剤である。ある実施形態では、検出剤は、抗体であり、ある実施形態では、IgGである。ある実施形態では、検出剤が、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、検出剤は、指標化合物に、すなわちサンプル中のその存在が、当業者に知られている手段により検出可能である化合物に、結合した抗体である。既知指標化合物は、色素、電気化学的に活性な基、またはラテックスビーズのようなビーズを含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「サンプル」は、少なくとも1つの免疫調節マクロライドを含むことが疑われるまたは知られているもののいずれかの組成物を指す。ある実施形態では、サンプルは、対象のサンプル、ある実施形態では患者のサンプルである。ある実施形態では、サンプルは、対象からの単離サンプルである。従って、ある実施形態では、サンプルは、体液のサンプルであり、ある実施形態では、血液、血漿、血清、唾液または尿でのサンプルであるか、または組織または臓器からの例えば、呼吸器管からの洗浄に由来するサンプルである。別の実施形態では、サンプルは、血液、血漿、血清または尿サンプルである。別の実施形態では、サンプルは、血液または血漿サンプルであるか、または血清または血漿サンプルであるか、別の実施形態では、血液サンプルである。ある実施形態では、サンプルが、血液サンプルである場合には、本発明の方法は、前記血液サンプルから血清または血漿サンプルを得る別のステップを含み、前記サンプルを、遊離剤で処理するステップを含むか、または前記サンプルを溶血するステップを含む。ある実施形態では、サンプルは、クエン酸血液サンプル、ヘパリン血液サンプルまたはEDTA血液サンプルである。別の実施形態では、サンプルは、EDTA血液サンプルである。生物学的サンプルは、本明細書中のいずれかで特定される通りの対象に由来しうる。前述の様々な型の生物学的サンプルを得るための技術は、当業界でよく知られている。例えば、血液サンプルは、例えば、動脈および/または静脈血管を刺すことによる血液採取によって得られうる。ある実施形態では、サンプルは、対象から得られる細胞、組織または臓器のサンプルである。ある実施形態では、前記臓器が、生命に重大な影響を及ぼすものである場合、前記対象は、ヒトでない。そのようなサンプルは、ある実施形態では、体の適切な領域のスクレイプ、スワブまたは生検を含め、公知技術によって得ることができる。当業者に知られている通り、そのようなサンプルは、ブラシ、(綿花)綿棒、ヘラ、すすぎ/洗浄液、パンチ生検デバイス、針または外科装置を用いた空洞の穿刺の使用により得られうる。
【0034】
前述のサンプルは、ある実施形態では、それらが、本発明の方法のために使用される前に、予備処理される。前記予備処理が、サンプル中に含まれる化合物を遊離または分離するために、または過剰な材料または廃棄物を除去するために要求される処理を含んでいてもよい。適切な技術は、遠心分離、抽出、分画、限外ろ過、タンパク質沈殿と、それに続く化合物のろ過および精製および/または濃縮を含む。上記本明細書に示される通り、予備処理は、例えば、遊離剤で血液サンプルを処理するステップでありうる。さらに、他の予備処理は、分析のために適した形態または濃度で化合物を提供するために行われうる。前に記載される通り予備処理されたサンプルも、本発明によって使用される通り用語「サンプル」に含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、動物、ある実施形態では、哺乳類、別の実施形態では、霊長類、別の実施形態では、ヒトに関する。ある実施形態では、対象は、実験動物、特にマウス、ラット、モルモット、ブタまたはイヌである。別の実施形態では、対象は、家畜またはコンパニオン動物、特に、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマまたはブタである。ある実施形態では、対象は、少なくとも1つの免疫調節化合物、特に少なくとも1つの免疫調節マクロライドで処置されることが知られている、または疑われる対象である。従って、ある実施形態では、対象は、移植受容者、特に免疫抑制処置下、特に免疫調節マクロライド処置下のヒト移植受容者である。
【0036】
本発明は、さらに、少なくとも1つの免疫調節マクロライドを安定化させるための、ある実施形態では、免疫調節剤検量溶液を安定化させるための、別の実施形態では、少なくとも1つの免疫調節マクロライドを含む免疫調節剤検量溶液を安定化させるための、実質的無細胞の溶血血液および任意選択で保存剤を含む溶液の使用に関する。ある実施形態では、実質的無細胞の溶血血液を含む溶液は、本明細書の他のどこかに記載される通りの実質的無細胞の溶血血液を含む溶液、および/または本発明による方法によって調製される実質的無細胞の溶血血液を含む溶液である。
【0037】
さらに、本発明は、本発明による組成物を含むデバイスおよび/または本発明によるキットに関する。
ある実施形態では、デバイスは、薬物モニタリングデバイスである。デバイスは、対象のサンプル中の少なくとも1つの免疫調節マクロライドの量を決定するように設計された分析ユニットをさらに含んでいてもよい。デバイスは、対象のサンプル中における少なくとも1つの免疫調節マクロライドの量を、ある実施形態では、分析ユニットにより得られるデータに基づいて計算するように設計された評価ユニットをさらに含んでいてもよい。別の実施形態では、デバイスは、冷蔵ユニットをさらに含む。別の実施形態では、デバイスは、少なくとも評価ユニットに動作可能なように連結されるアウトプットユニットであって、アウトプットユニットは、例えば、ディスプレイユニットおよび/またはプリンターであってもよい、アウトプットユニットをさらに含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「デバイス」は、決定を可能にするように操作可能なように互いに連結された少なくとも記載された手段を含む手段のシステムに関する。操作手段でのデバイスの手段を連結する方法は、デバイスに含まれる手段のタイプによるであろう。ある実施形態では、その手段は、単独のデバイスにより構成される。しかし、本発明の手段、例えば、分析ユニットおよび評価ユニットは、ある実施形態では、単独のデバイスとして現れてもよく、別の実施形態では、キットとして一緒にパッケージ化されることも意図される。当業者は、さらなる労力なしにそれら手段を連結する方法を理解するだろう。好ましいデバイスは、特化された技術者の特定の知識なしに利用できるものである。ある実施形態では、デバイスは、本明細書に記載の通り追加の特徴を含むように適応される。
【0039】
さらに、本発明は、対象のサンプル中の免疫調節マクロライド化合物を決定するための方法であって、検量サンプルとしておよび/または参照サンプルとして本発明による少なくとも1つの組成物を使用するステップを含む方法に関する。
【0040】
免疫調節マクロライド化合物を決定するための方法は、インビトロ法である。サンプル中の免疫調節マクロライド化合物を決定するための方法は、原則的には、当業者に知られている。本発明に従って、ある実施形態では、本発明による組成物は、検量サンプルとして使用され、すなわち、既知精度の検量水準のものと、試験下のデバイスにより誘導される測定値とを比較するために使用される。別の実施形態では、本発明による組成物は、参照サンプルとして、すなわち、実験室間の結果の比較のための既知濃度のサンプルとして使用される。
【0041】
さらに、本発明は、本発明の液体組成物を含み、ある実施形態では、本発明の液体組成物からなる免疫調節マクロライド検量溶液に関する。
上記を考慮して、以下の実施形態が、特に予想される:
1.少なくとも1つの免疫調節マクロライド化合物および実質的無細胞の溶血血液を含む液体組成物。
【0042】
2.実質的無細胞は、10個の生細胞/ml未満の数、ある実施形態では、1個の生細胞/ml未満の数である、実施形態1の液体組成物。
3.実質的無細胞は、10個の細胞/ml未満の数、ある実施形態では、1個の細胞/ml未満の数である、実施形態1または2の液体組成物。
【0043】
4.実質的無細胞である、実施形態1から3のいずれか1つの液体組成物。
5.水性溶液である、実施形態1から4のいずれか1つの液体組成物。
6.実施形態1から5のいずれか1つの液体組成物であって、前記免疫調節マクロライドが、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムスおよびテムシロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライドであり、ある実施形態では、エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスから選択される少なくとも1つの免疫調節マクロライドであり、別の実施形態では、エベロリムスを含み、ある実施形態では、シロリムスを含み、ある実施形態では、タクロリムスを含む、液体組成物。
【0044】
7.実施形態1から6のいずれか1つの液体組成物であって、エベロリムスおよびシロリムスを含み、ある実施形態では、シロリムスおよびタクロリムスを含み、ある実施形態では、エベロリムスおよびタクロリムスを含み、ある実施形態では、エベロリムス,シロリムスおよびタクロリムスを含む液体組成物。
【0045】
8.実施形態1から7のいずれか1つの液体組成物であって、少なくとも1つの非マクロライド免疫調節化合物をさらに含み、ある実施形態では、シクロスポリン(シクロ-(L-アラニル-D-アラニル-N-メチル-L-ロイシル-N-メチル-L-ロイシル-N-メチル-L-バリル-3-ヒドロキシ-N,4-ジメチル-L-2-アミノ-6-オクテノイル-L-a-アミノ-ブチリル-N-メチルグリシル-N-メチル-L-ロイシル-L-バリル-N-メチル-L-ロイシル);CAS番号59865-13-3)をさらに含む液体組成物。
【0046】
9.実施形態1から8のいずれか1つの液体組成物であって、保存剤をさらに含み、ある実施形態では、免疫調節マクロライド決定を妨げない保存剤をさらに含む液体組成物。
10.実施形態9の液体組成物であって、前記保存剤の濃度が、0.005%(w/v)~0.5%(w/v)、好ましくは0.0075%(w/v)~0.25%(w/v)のものである、液体組成物。
【0047】
11.実施形態9または10の液体組成物であって、前記保存剤が、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび/または2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、o-フェニルフェノール(アルカリ性またはアルコール性)、メチルイソチアゾロン、アジドおよびビス-ビグアナイドから選択される、少なくとも1つの保存剤であり、ある実施形態では、ビス-ビグアナイドである、液体組成物。
【0048】
12.実施形態1から11のいずれか1つの液体組成物であって、抗細菌性ビス-ビグアナイドをさらに含む液体組成物。
13.実施形態12の液体組成物であって、前記ビス-ビグアナイドが、アレキシジン(1,1’-(1,6-ヘキサンジイル)ビス{2-[N’-(2-エチルヘキシル)カルバムイミドイル]グアニジン、CAS番号22573-93-9)またはクロルヘキシジン(N,N’’-ビス(4-クロロフェニル)-3,12-ジイミノ-2,4,11,13-テトラアザテトラデカンジイミドアミド、CAS番号55-56-1)であり、ある実施形態では、クロルヘキシジンである、液体組成物。
【0049】
14.7.5~4の、ある実施形態では7~5のpHを有する、実施形態1から13のいずれか1つの液体組成物。
15.10%未満の有機溶媒、ある実施形態では、5%未満の有機溶媒、別の実施形態では、2%未満の有機溶媒、別の実施形態では、1%未満の有機溶媒を含む、実施形態1から14のいずれか1つの液体組成物。
【0050】
16.検出可能な有機溶媒を実質的に含まない、実施形態1から15のいずれか1つの液体組成物。
17.前記免疫調節マクロライドが、1ng/ml~15μg/mlの、ある実施形態では、5ng/ml~1μg/mlの、別の実施形態では、7.5ng/ml~500ng/mlの、別の実施形態では、10ng/ml~250ng/mlの濃度で液体組成物中に含まれる、実施形態1から16のいずれか1つの液体組成物。
【0051】
18.前記ビス-ビグアナイド、ある実施形態では、前記抗細菌性ビス-ビグアナイドが、0.005%(w/v)~0.5%(w/v)の、ある実施形態では、0.01%(w/v)~0.25%(w/v)の、別の実施形態では、約0.25%の濃度で組成物中に存在する、実施形態10から17のいずれか1つの液体組成物。
【0052】
19.前記実質的無細胞の溶血血液が、全血、ある実施形態では、少なくとも2つの対象の、ある実施形態では、少なくとも5つの対象からの全血のプールを凍結および解凍するステップによって得られる、実施形態1から18のいずれか1つの液体組成物。
【0053】
20.前記実質的無細胞の溶血血液が、28から43の実施形態のいずれか1つに記載の方法によって得られる、実施形態1から19のいずれか1つの液体組成物。
21.前記免疫調節マクロライドおよび前記実質的無細胞の溶血血液からなる、実施形態1から20のいずれか1つの液体組成物。
【0054】
22.前記免疫調節マクロライド、前記実質的無細胞の溶血血液、および1つまたは複数の別の免疫調節化合物からなる、実施形態8から20のいずれか1つの液体組成物。
23.前記免疫調節マクロライド、前記実質的無細胞の溶血血液、前記保存剤および任意選択で1つまたは複数の別の免疫調節化合物からなる、実施形態9から20のいずれか1つの液体組成物。
【0055】
24.前記免疫調節マクロライドまたは複数の免疫調節マクロライドの、および任意選択で、前記少なくとも1つの非マクロライド免疫調節化合物の予め決定された量を含む検量溶液である、実施形態1から23のいずれか1つの液体組成物。
【0056】
25.予め決定された量の免疫調節マクロライドを含む免疫調節剤検量溶液であり、ある実施形態では、予め決定された量のエベロリムス、シロリムスおよび/またはタクロリムスを含む免疫調節剤検量溶液である、実施形態1から24のいずれか1つの液体組成物。
【0057】
26.前記免疫調節マクロライドが、少なくとも12カ月間、6℃の温度で安定である、実施形態1から25のいずれか1つの液体組成物。
27.安定であることは、高くても10%、ある実施形態では、高くても5%、別の実施形態では、決定法における標準偏差内で濃度を減少させることに関する、実施形態26の液体組成物。
【0058】
28.安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するための方法であって、
a)実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製するステップ;
b)予め決定された量の少なくとも1つの免疫調節マクロライドを、実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液と混合するステップ、および、それによって、
c)安定化した免疫調節マクロライド検量溶液を製造するステップ
を含む方法。
【0059】
29.実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液が、実質的無細胞の前記溶血血液からなる、実施形態28の方法。
30.実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液が、抗凝血剤を含み、ある実施形態では、EDTAを含み、別の実施形態では、EDTA全血から調製される、実施形態28または29の方法。
【0060】
31.実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、前記全血を凍結および解凍し、それによって溶血血液を供給するステップを含む、実施形態28から30のいずれか1つの方法。
【0061】
32.前記凍結するステップが、-1℃~-190℃の、ある実施形態では、-10℃~-100℃の、別の実施形態では、-50℃~-90℃の、別の実施形態では、約-80℃の、別の実施形態では、-80℃の温度で凍結するステップである、実施形態31の方法。
【0062】
33.前記解凍するステップが、0℃~50℃の、ある実施形態では、4℃~45℃の、別の実施形態では、10℃~40℃の、別の実施形態では、20℃~30℃の、別の実施形態では、約25℃の、別の実施形態では、25℃の温度で解凍するステップである、実施形態31または32の方法。
【0063】
34.実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、少なくとも5分間、ある実施形態では、少なくとも10分間、別の実施形態では、少なくとも20分間、溶血血液を撹拌するステップを含む、実施形態28から33のいずれか1つの方法。
【0064】
35.実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、5分~600分間、ある実施形態では、100分~300分間、ある実施形態では、15分~180分間、別の実施形態では、20分~120分間、別の実施形態では、30分~90分間、別の実施形態では、約60分間、別の実施形態では60分間、溶血血液を撹拌するステップを含む、実施形態28から34のいずれか1つの方法。
【0065】
36.実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、溶血血液を遠心分離するステップを含む、実施形態28から35のいずれか1つの方法。
37.前記遠心分離するステップが、500g~25000g、ある実施形態では、1000g~20000g、別の実施形態では、5000g~15000g、別の実施形態では、10000g~14000gで行われる、実施形態36の方法。
【0066】
38.遠心分離が、少なくとも2分間、ある実施形態では、少なくとも5分間、別の実施形態では、少なくとも15分の間行われる、実施形態36または37の方法。
39.前記遠心分離が、2分~60分の間、ある実施形態では、5分~30分の、別の実施形態では、10分~20分の、別の実施形態では、約15分の間行われる、実施形態36から38のいずれか1つの方法。
【0067】
40.ステップb)が、前記予め決定された量の少なくとも1つの免疫調節マクロライドを、遠心分離された溶血血液の上清に混合するステップを含む、実施形態28から39のいずれか1つの方法。
【0068】
41.実質的無細胞の溶血血液を含む溶液を調製する前記ステップが、少なくとも2つ、ある実施形態では、少なくとも5つの非同一の対象、ある実施形態では、ヒトから全血サンプルのプールを得るステップを含む、実施形態28から34のいずれか1つの方法。
【0069】
42.保存剤、ある実施形態では、ビス-ビグアナイド、別の実施形態では、抗細菌性ビス-ビグアナイドを、実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液に混合するステップをさらに含む、実施形態28から41のいずれか1つの方法。
【0070】
43.前記保存剤が、アレキシジン(1,1’-(1,6-ヘキサンジイル)ビス{2-[N’-(2-エチルヘキシル)カルバムイミドイル]グアニジン、CAS番号22573-93-9)またはクロルヘキシジン(N,N’’-ビス(4-クロロフェニル)-3,12-ジイミノ-2,4,11,13-テトラアザテトラデカンジイミドアミド、CAS番号55-56-1)であり、ある実施形態では、クロルヘキシジンである、実施形態42の方法。
【0071】
44.実施形態1から27のいずれか1つに記載の液体組成物および免疫調節剤検出剤を含むキット。
45.少なくとも1つの免疫調節マクロライドを安定化させるための、ある実施形態では、1つの免疫調節剤検量溶液を安定化させるための、別の実施形態では、少なくとも1つの免疫調節マクロライドを含む免疫調節剤検量溶液を安定化させるための、実質的無細胞の溶血血液および任意選択で保存剤を含む溶液の使用。
【0072】
46.実質的無細胞の溶血血液を含む前記溶液が、実施形態1から4のいずれか1つに記載される通りの実質的無細胞の溶血血液を含む溶液であり、および/または、実施形態28から42のいずれか1つに記載の方法によって調製される実質的無細胞の溶血血液を含む溶液である、実施形態45の使用。
【0073】
47.実施形態1から27のいずれか1つに記載の組成物および/または実施形態44に記載のキットを含むデバイス。
48.薬物モニタリングデバイスである、実施形態47のデバイス。
【0074】
49.対象のサンプル中における少なくとも1つの免疫調節マクロライドの量を決定するように構成された分析ユニットをさらに含む、実施形態47または48のデバイス。
50.実施形態47から49のいずれか1つのデバイスであって、冷蔵ユニットをさらに含むデバイス。
【0075】
51.対象のサンプル中の免疫調節マクロライド化合物を決定するための方法であって、検量サンプルとしておよび/または参照サンプルとして、実施形態1から27のいずれか1つに記載の少なくとも1つの組成物を使用するステップを含む方法。
【0076】
52.実施形態1から27のいずれか1つの液体組成物を含む、ある実施形態では、からなる免疫調節マクロライド化合物検量溶液。
この明細書に引用される全ての文献は、それらの全ての開示内容に関して参照によりここに組み込まれ、その開示内容は、本明細書に特に明記される。
【0077】
以下の実施例は、本発明を単に例示するものである。それらは、いずれにしても、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
実施例1
エベロリムス安定性-リアルタイム安定性(RTS)の評価:
ヒト全血を最初に溶血させることにより、配合物を調製した。5名の提供者のヒトEDTA全血を、凍結解凍サイクルにより溶血させた。-80℃で、別個に各提供者から得た全血サンプルを凍結し、室温で解凍した後、全てのサンプルを合わせて、少なくとも1時間、ローラー上で混合し、その後、潜在的に存在する溶血した血液細胞の断片を除去するために、15分間、22℃および12000gで遠心分離した。遠心分離後、溶血した血液の上部区分(全容積のおよそ4/5)を溶血血液として使用した。最後に、クロルヘキシジンを、0.024%の濃度まで溶血血液に添加した。
【0078】
RTSを調べるために、クロルヘキシジンを含有する溶血血液に、およそ100ng/mlまで高度に濃縮されたエベロリムスの保存溶液を添加し、そのアリコートに、茶色のLC-MSバイアル中でそれぞれ、3、6、9、12および15カ月の間、6℃でストレスをかけた。ストレスを受けたサンプルおよび対応の非ストレスのサンプル(T0サンプル)を、LC-MS/MS測定によって分析した。
【0079】
LC-MS/MS法:LC-MS/MS分析を行う前に、サンプルは、10μLのアイソトープ標識された内部標準(d4/2xC13-エベロリムス)の、100μLの分析されるサンプルへの添加、続いて150μLのアセトニトリルの添加によるタンパク質沈殿により処理された。その混合物が、4℃で、60分間インキュベートされ、その後遠心分離(18000g、4℃、30分)された。上清は、30%アセトニトリルおよび70%水の溶媒混合物で1:4に希釈され、その後LC-MS/MSに注入された。サンプルを、外部検量線によって定量した。検量用試料は、様々な濃度の検体を有する1組の溶液であり、それらは、サンプルと同じ内部標準で同じ配合物ワークフローに流された。サンプル中の濃度の計算のために、サンプルの反応因子(検体ピーク領域と内部標準ピーク領域の比)について、検量線(濃度による比)における線形関数を参照した。回収率(recovery value)は、参照として出発時点(T0)での非ストレス濃度と比較した時点(Ti)で測定された濃度である(表3を参照されたい)。回収>90%を示す配合物は、安定として分類された。
LC-MS/MS条件は、
・ 溶媒:A:H2O中の0.5mM酢酸NH4/B:メタノール
・ 勾配:表2による
・ AB Sciex6500 QTRAP/Agilent HPLC1290-Infinity
・ APCI源 ネガティブモード
・ カラム: Phenomenex-Kinetex F5、2.6μm粒子、150mm×2.1mm
・ 温度:50℃(カラム)および8℃(オートサンプラー)
・ 注入容積20μL
・ 検量:外部、0~500ng/mLを網羅する6つの濃度レベルで
・ MRM遷移 DP:-76V EP:-10V CE:-30V CXP:-24Vで
・ 検出:エベロリムス:Q1:956,6Da Q3:590,2Da;エベロリムスd4,2xC13:Q1:962,2Da Q3:590,2Da
であった。
【0080】
【0081】
アイソトープ標識されたエベロリムス(d4/2xC13)のアイソトープ安定性を調べるために、この化合物は、内部標準として当モル量の非アイソトープ標識されたエベロリムスと一緒にストレスを受けた。調製ワークフローおよびLC-MS/MSによる測定の後、結果として得られた比は、アイソトープ標識された化合物が安定である場合、およそ1であるはずであり、得られた値は、単位なしである。回収率は、参照としての出発時点(T0)における非ストレスの比と比べて、時点(Ti)で決定された比である(表3を参照されたい)。この実験は、アイソトープ標識の安定性のみを基準とするものであって、化合物の安定性を基準とするものでない。化合物安定性の記述のために、直前に記述した実験が適切である。
【0082】
結果:15カ月のリアルタイム安定性は、記載した配合物でEveについて首尾よく例示することができた。3、6、9、12および15カ月後の回収についてのデータは、下の表に示される。アイソトープ標識された化合物についてのデータ(12カ月)も、アイソトープ標識されたEveが安定であることを示す。
【0083】
【0084】
実施例2
シロリムスおよびタクロリムス安定性-リアルタイム安定性(RTS)の評価
ヒト全血を最初に溶血させることにより、配合物を調製した。5名の提供者のヒトEDTA全血を、凍結解凍サイクルにより溶血させた。-80℃で、別個に各提供者から得た全血サンプルを凍結し、室温で解凍した後、全てのサンプルを合わせて、少なくとも1時間、ローラー上で混合し、その後、潜在的に存在する溶血した血液細胞の断片を除去するために、15分間、22℃および12000gで遠心分離した。遠心分離後、溶血した血液の上部区分(全容積のおよそ4/5)を溶血血液として使用した。最後に、クロルヘキシジンを、0.024%の濃度まで溶血血液に添加した。
【0085】
RTSを調べるために、クロルヘキシジンを含有する溶血血液に、およそ100ng/mLまで高度に濃縮されたシロリムスの、またはおよそ135ng/mLまで濃縮されたタクロリムスの保存溶液を添加し、そのアリコートに、茶色のLC-MSバイアル中でそれぞれ6℃で3カ月間ストレスをかけた。ストレスを受けたサンプルおよび対応する非ストレスのサンプル(T0サンプル)を、それらのLC-MS/MS分析まで6℃で数日間保存した。
【0086】
LC-MS/MS法:LC-MS/MS分析を行う前に、100μLの分析されるサンプルへの10μLの構造的に類似な内部標準(シロリムスについてはエベロリムスD42xC13、およびタクロリムスについては非標識アスコマイシン)の添加、続いて150μLアセトニトリルの添加によるタンパク質沈殿により、サンプルを調製した。混合物を、4℃で、60分間インキュベートし、その後遠心分離(18000g、4℃、30分)した。上清は、30%アセトニトリルおよび70%脱イオン水の溶媒混合物で1:4に希釈され、その後LC-MS/MSに注入された。回収率は、参照として出発時点(T0)での非ストレス領域比と比較した時点(Ti)で見出された領域比である(表5を参照されたい)。回収≧90%を有する配合物は、安定として分類され、80~90%を有するものは、許容されるとして分類された。
【0087】
LC-MS/MS条件は、
・ 溶媒:A:H2O中の酢酸NH4 5mM+0.1%ギ酸/
B:メタノール+0.1%ギ酸
・ 勾配:表4による。
【0088】
・ AB Sciex Triple Quad 6500+/Agilent HPLC 1290-Infinity II
・ ESIソース
・ カラム:Phenomenex-Kinetex F5、2.6μm粒子、50mm×2.1mm
・ 温度:40℃(カラム)および8℃(オートサンプラー)
・ 注入容積20μL
・ MRM遷移 DP:70V EP:10V CXP:12Vで
・ 検出:エベロリムス:Q1:975.7Da Q3:908.7Da CE25V
エベロリムス d4,2xC13:Q1:981.7Da Q3:914.7Da CE25V
シロリムス:Q1:931.7Da Q3:864.6Da CE25V
タクロリムス:Q1:821.5Da Q3:576.4Da CE33V
アスコマイシン:Q1:809.5Da Q3:564.4Da CE33V
であった。
【0089】
【0090】
結果:3カ月のリアルタイム安定性は、記載された配合物中のシロリムスおよびタクロリムスについて首尾よく示すことができた。3カ月後の回収についてのデータは、下の表5に示される。
【0091】
【0092】
実施例3
リアルタイム安定性研究
3カ月の短期リアルタイム安定性研究では、NaN3が、添加剤として使用される可能性があるかどうかも調査された。その手段は、クロルヘキシジンの代わりに0.009%アジ化ナトリウムの添加を伴う以外は、実施例1で上に記載される通りであった。ここで表6で示される結果もまた、安定な配合物を示す。
【0093】