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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ねじり試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/34 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
G01N3/34 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020047591
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148547
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】劉 勇
(72)【発明者】
【氏名】柏村 祐太朗
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-267939(JP,A)
【文献】特開2016-170051(JP,A)
【文献】特開2019-184266(JP,A)
【文献】特開2013-181925(JP,A)
【文献】特公昭44-019634(JP,B1)
【文献】特開昭47-045989(JP,A)
【文献】特開2007-107955(JP,A)
【文献】特開2006-064668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/34
G01N 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体にねじりトルクを負荷するねじり試験機であって、
モータと、
前記モータからのトルクが入力され、前記試験体の一方端部を保持するように構成される入力側保持部と、
前記試験体の他方端部を保持するように構成され、前記入力側保持部と相対回転可能に配置される出力側保持部と、
を備え、
前記入力側保持部及び前記出力側保持部の少なくとも一方は、ダンパ機構を有し、
前記ダンパ機構は、前記モータからのトルクが入力される入力部材と、前記入力部材と相対回転可能に配置される出力部材と、前記入力部材と前記出力部材とを弾性的に連結する弾性部材と、を有する、
ねじり試験機。
【請求項2】
前記入力側保持部及び前記出力側保持部の少なくとも一方は、トルクの伝達及び遮断を行うクラッチ装置を有する、
請求項1に記載のねじり試験機。
【請求項3】
前記クラッチ装置を制御する制御部、をさらに備え、
前記モータは、正回転方向のトルクと、逆回転方向のトルクとを交互に繰り返し出力し、
前記制御部は、前記モータの繰り返し数に基づき前記クラッチ装置を制御する、
請求項2に記載のねじり試験機。
【請求項4】
前記モータのねじり角度を検出する角度センサをさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載のねじり試験機。
【請求項5】
前記出力側保持部は、回転不能な部材に取り付けられる、
請求項1から4のいずれかに記載のねじり試験機。
【請求項6】
前記入力側保持部は、質量体を有する、
請求項1から5のいずれかに記載のねじり試験機。
【請求項7】
前記モータは、サーボモータである、
請求項1から6のいずれかに記載のねじり試験機
【請求項8】
前記入力側保持部は、トルクセンサを有する、
請求項1から7のいずれかに記載のねじり試験機。
【請求項9】
前記試験体に負荷されるねじりトルクを検出するトルクセンサと、
前記トルクセンサによって検出されたねじりトルクに基づくフィードバック制御を実行する制御部と、
をさらに備える、
請求項1に記載のねじり試験機。
【請求項10】
制御部と、
前記試験体に負荷されるねじりトルクを検出するトルクセンサと、
前記モータのねじり角度を検出する角度センサと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記トルクセンサによって検出されたねじりトルクに基づく第1のフィードバック制御と、前記角度センサによって検出されたねじり角度に基づく第2のフィードバック制御とを実行する、
請求項1に記載のねじり試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじり試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャフト、及びダンパなどの試験体に対して、ねじり試験機を用いて疲労試験などを実施している。このねじり試験機では、例えばモータを用いて、正回転方向のトルクと逆回転方向のトルクとを試験体に対して交互に繰り返し負荷する。特許文献1に記載のねじり試験機は、第1の減速機及び第2の減速機によってサーボモータからのトルクを増大させて試験片に負荷させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5750351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のねじり試験機は、十分な大きさのトルクを試験体に負荷するために、減速機によってモータからのトルクを増大させている。しかしながら、減速機を用いることによって、減速機内の歯車が正方向の回転と逆方向の回転とを繰り返すことによる冷却オイルの撹拌や発熱、トルク伝達効率の低下、ねじり周波数の低下、バックラッシュによるトルク制御精度の低下、装置の大型化、又は装置の大騒音化などの問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、減速機を用いずに十分な大きさのトルクを試験体に負荷することのできるねじり試験を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係るねじり試験は、試験体にねじりトルクを負荷する。このねじり試験機は、モータと、入力側保持部と、出力側保持部とを備える。入力側保持部は、モータからのトルクが入力される。入力側保持部は、試験体の一方端部を保持するように構成される。出力側保持部は、試験体の他方端部を保持するように構成される。出力側保持部は、入力側保持部と相対回転可能に配置される。入力側保持部及び出力側保持部の少なくとも一方は、ダンパ機構を有する。ダンパ機構は、入力部材と、出力部材と、弾性部材とを有する。入力部材は、モータからのトルクが入力される。出力部材は、入力部材と相対回転可能に配置される。弾性部材は、入力部材と出力部材とを弾性的に連結する。
【0007】
この構成によれば、モータからのトルクは、試験体に負荷される一方で、ダンパ機構の弾性部材を圧縮させる。すなわち、モータからのトルクは、ダンパ機構の弾性部材に弾性エネルギとして蓄積される。そして、次に逆回転方向のトルクを試験体に負荷したとき、このモータからのトルクだけでなく、ダンパ機構に蓄積された弾性エネルギに基づくトルクを試験体に負荷することができる。そして、これを繰り返すことにより、より大きな弾性エネルギをダンパ機構に蓄積することができる。以上より、減速機を用いなくても、十分な大きさのトルクを試験体に負荷することができる。
【0008】
好ましくは、入力側保持部及び出力側保持部の少なくとも一方は、トルクの伝達及び遮断を行うクラッチ装置を有する。
【0009】
好ましくは、ねじり試験機は、クラッチ装置を制御する制御部をさらに備えている。モータは、正回転方向のトルクと、逆回転方向のトルクとを交互に繰り返し出力する。そして、制御部は、モータの繰り返し数に基づきクラッチ装置を制御する。
【0010】
好ましくは、ねじり試験機は、モータねじり角度を検出する角度センサをさらに備えている。
【0011】
好ましくは、出力側保持部は、回転不能な部材に取り付けられている。
【0012】
好ましくは、入力側保持部は、質量体を有する。この質量体の質量を調整することによって、ねじり試験機のねじり能力を向上させることができる。
【0013】
好ましくは、モータは、サーボモータである。
【0014】
好ましくは、入力側保持部は、トルクセンサを有する。
【0015】
好ましくは、ねじり試験機は、トルクセンサと、制御部とをさらに備える。トルクセンサは、試験体に負荷されるねじりトルクを検出する。制御部は、トルクセンサによって検出されたねじりトルクに基づくフィードバック制御を実行する。
【0016】
好ましくは、ねじり試験機は、制御部と、トルクセンサと、角度センサとをさらに備える。トルクセンサは、試験体に負荷されるねじりトルクを検出する。角度センサは、モータのねじり角度を検出する。制御部は、トルクセンサによって検出されたねじりトルクに基づく第1のフィードバック制御と、角度センサによって検出されたねじり角度に基づく第2のフィードバック制御とを実行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、減速機を用いずに十分な大きさのトルクを試験体に負荷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ねじり試験機の概略図。
図2】ダンパ機構及びクラッチ装置の断面図。
図3】制御部の制御方法を示すフローチャート。
図4】制御部のブロック図。
図5】トルク演算部のブロック図。
図6】ダンパ機構のねじり特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るねじり試験機の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
[全体構成]
図1に示すように、ねじり試験機100は、試験体Tにねじりトルクを負荷するように構成されている。詳細には、ねじり試験機100は、正回転方向のねじりトルクと逆回転方向のねじりトルクとを、試験体Tに対して繰り返し負荷するように構成されている。これによって、試験体Tの疲労特性を評価することができる。ねじり試験機100は、モータ2、入力側保持部3、及び出力側保持部4を備えている。また、ねじり試験機100は、角度センサ5及び制御部6をさらに備えている。
【0021】
[モータ]
モータ2は、試験体Tに負荷するためのトルクを出力するように構成されている。詳細には、モータ2は、正回転方向のトルクと逆回転方向のトルクとを交互に繰り返し出力するように構成されている。また、モータ2は、正回転方向のトルクのみ、又は逆回転方向のトルクのみを繰り返し出力することも可能である。
【0022】
正回転方向のトルクのモータ2が出力した回数と、逆回転方向のトルクをモータ2が出力した回数との合計値を、モータ2の繰り返し数とする。モータ2は、サーボモータである。試験体Tに負荷されるトルクのねじり角度は、例えば、±50°である。
【0023】
角度センサ5は、モータ2のねじり角度(回転角度)を検出するように構成されている。角度センサ5は、検出したモータ2のねじり角度に関するデータを制御部6に出力する。
【0024】
[入力側保持部]
入力側保持部3は、モータ2からのトルクが入力される。入力側保持部3は、試験体Tの一方端部(図1の左側端部)を保持するように構成されている。すなわち、入力側保持部3は、モータ2からのトルクを試験体Tに伝達するように構成されている。入力側保持部3は、第1回転体31と、質量体32と、トルクセンサ33と、第1チャック34と、を有している。
【0025】
第1回転体31は、モータ2のトルクによって回転するように配置されている。第1回転体31は、例えばシャフトなどである。第1回転体31は、モータ2からのトルクを試験体Tへと伝達する。
【0026】
質量体32は、第1回転体31に取り付けられている。質量体32は、例えば、円環状の部材である。この質量体32が取り付けられることによって、試験体Tに負荷されるトルクをより大きくすることができる。この質量体32は、トルク調整のため、取り換えることができる。例えば、より大きいトルクが必要な場合は、より質量の大きい質量体32に取り換えたり、より小さなトルクが必要な場合は、より質量の小さい質量体32に取り換えることができる。なお、この質量体32のイナーシャを調整用イナーシャと称する。
【0027】
トルクセンサ33は、第1回転体31に作用するトルクを検出する。トルクセンサ33は、検出したトルクに関するデータを制御部6に出力する。
【0028】
第1チャック34は、第1回転体31に取り付けられている。第1チャック34は、第1回転体31と一体的に回転する。第1チャック34は、試験体Tの一方端部を保持するように構成されている。
【0029】
[出力側保持部]
出力側保持部4は、試験体Tの他方端部(図1の右側端部)を保持するように構成されている。出力側保持部4は、入力側保持部3と相対回転可能に配置されている。このため、入力側保持部3と出力側保持部4とによって保持された試験体Tにトルクが負荷される。
【0030】
出力側保持部4は、回転不能な固定部材101に取り付けられている。詳細には、出力側保持部4は、軸方向の一方の端部において試験体Tに取り付けられ、他方の端部において回転不能な固定部材101に取り付けられている。すなわち、出力側保持部4は、自由回転しないように構成されている。
【0031】
出力側保持部4は、第2回転体41と、第2チャック42と、ダンパ機構43と、クラッチ装置44とを有している。
【0032】
第2回転体41は、回転可能に配置されている。第2回転体41は、軸受部材102を介して固定部材101に回転可能に支持されている。第2回転体41は、例えばシャフトなどである。第2回転体41は、試験体Tを介してモータ2からのトルクが伝達される。
【0033】
第2チャック42は、第2回転体41に取り付けられている。第2チャック42は、第2回転体41と一体的に回転する。第2チャック42は、試験体Tの他方端部を保持するように構成されている。
【0034】
ダンパ機構43は、復元力によって試験体Tにトルクを負荷するように構成されている。図2に示すように、ダンパ機構43は、入力部材431、出力部材432、及び複数の弾性部材433を有している。ダンパ機構43は、クラッチディスクまたはフライホイールなどに用いられる公知のダンパ機構を採用することができる。
【0035】
入力部材431は、モータ2からのトルクが入力される。入力部材431は、第2回転体41に取り付けられている。入力部材431は、第2回転体41に固定されており、第2回転体41と一体的に回転する。例えば、第2回転体41が入力部材431に嵌合している。なお、入力部材431は、第2回転体41と一つの部材によって構成されていてもよい。すなわち、入力部材431は、第2回転体41の一部であってもよい。
【0036】
出力部材432は、入力部材431と相対回転可能に配置されている。なお、本実施形態において、基本的には、出力部材432は回転不能となっており、入力部材431が回転する。
【0037】
弾性部材433は、入力部材431と出力部材432とを弾性的に連結している。例えば、弾性部材433はコイルスプリングである。入力部材431及び出力部材432はそれぞれ、周方向に延びる複数の窓部を有している。入力部材431の窓部と、出力部材432の窓部とは、軸方向において連通している。各窓部は、周方向において互いに間隔をあけて配置される。そして、弾性部材433は、その各窓部内に配置されている。このため、入力部材431に入力されたトルクが弾性部材433を介して出力部材432に伝達される。弾性部材433は、入力部材431と出力部材432との相対回転によって圧縮される。
【0038】
クラッチ装置44は、モータ2からのトルクの伝達及び遮断を行う。クラッチ装置44は、クラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り替わる。クラッチ装置44がクラッチオン状態のとき、モータ2からのトルクを伝達する。一方、クラッチ装置44がクラッチオフ状態のとき、モータ2からのトルクの伝達を遮断する。
【0039】
クラッチ装置44は、ダンパ機構43と固定部材101とを連結している。このため、クラッチ装置44は、クラッチオン状態のとき、ダンパ機構43と固定部材101とを連結する。この結果、ダンパ機構43は回転不能となる。詳細には、ダンパ機構43の出力部材432が回転不能となる。なお、ねじり試験を実施しているときは、基本的にクラッチ装置44はクラッチオン状態である。
【0040】
一方、クラッチ装置44は、クラッチオフ状態のとき、ダンパ機構43と固定部材101との連結を解除する。この結果、ダンパ機構43は回転可能となる。詳細には、ダンパ機構43の出力部材432が回転可能となる。このようにクラッチオフ状態とすることで、モータ2のロータ、入力側保持部3、試験体T、及び出力側保持部4を360度以上回転させることが可能となる。
【0041】
このため、ねじり試験機100に用いられているベアリングの油膜切れを防止することができる。すなわち、ねじり試験中は、ベアリングは所定の捩じり角度の範囲で揺動しているため、接触部分に振動荷重が加わって油膜切れが発生し、フレッチングが生じる恐れがある。これに対して、所定の繰り返し数毎にクラッチオフ状態としてベアリングを360度以上回転させることによって、上述したフレッチングを防止することができる。
【0042】
クラッチ装置44は、回転部材441、及びクラッチ部442を有する。回転部材441は、回転可能に配置されている。詳細には、回転部材441は、軸受部材103を介して固定部材101に回転可能に支持されている。ダンパ機構43の出力部材432は、回転部材441に固定されている。すなわち、クラッチ装置44の回転部材441と、ダンパ機構43の出力部材432とは一体的に回転する。
【0043】
クラッチ部442は、固定部材101に固定されている。すなわち、クラッチ部442は回転不能である。このクラッチ部442が操作されることによって、回転部材441を回転不能にしたり、回転可能にしたりする。すなわち、クラッチ部442がクラッチオン状態になると、回転部材441が回転不能になる。一方、クラッチ部442がクラッチオフ状態になると、回転部材441が回転可能となる。
【0044】
[制御部]
図1に示すように、制御部6は、モータ2の繰り返し数に基づき、クラッチ装置44を制御するように構成されている。制御部6は、角度センサ5からのデータに基づき、モータ2の繰り返し数をカウントする。そして、制御部6は、所定の繰り返し数毎に、クラッチ装置44をクラッチオフ状態とする。
【0045】
また、制御部6は、モータ2のねじり角度及び出力トルクなども制御するように構成されている。制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、インバータ回路、及びコンバータ回路などを含んでいる。制御部6は、電流を制御することによって、モータ2の出力トルク及びねじり角度を制御することができる。また、制御部6は、角度センサ5からのデータに基づき、モータ2のねじり角度及び回転速度を制御することができる。
【0046】
また、制御部6は、トルクセンサ33からトルクに関するデータを受け取る。そして、制御部6は、トルクセンサ33によって検出されたトルクに基づき、モータ2のねじり角度を制御することができる。
【0047】
制御部6は、トルクセンサ33によって検出されたねじりトルクに基づいて、第1のフィードバック制御を実行する。また、制御部6は、角度センサ5によって検出されたねじり角度に基づいて、第2のフィードバック制御を実行する。
【0048】
[制御方法]
次に、制御部6によるねじり試験機100の制御方法を説明する。図3は、制御部6による制御方法を示すフローチャートである。
【0049】
図3に示すように、まず、制御部6は、モータ2を駆動する(ステップS1)。詳細には、正回転方向のトルクと逆回転方向のトルクとを交互に繰り返し出力するようにモータ2を駆動する。このとき、クラッチ装置44はクラッチオン状態である。
【0050】
そして、制御部6は、モータ2の繰り返し数をカウントする(ステップS2)。具体的には、制御部6は、角度センサ5からのデータに基づき、モータ2の繰り返し数をカウントする。
【0051】
次に、制御部6は、モータ2の繰り返し数が所定値に達したか否か判断する(ステップS3)。制御部6は、繰り返し数が所定値に達していないと判断すると(ステップS3のNo)、上述したステップS1の処理に戻る。
【0052】
一方、制御部6は、繰り返し数が所定値に達したと判断すると(ステップS3のYes)、クラッチ装置44を制御し、クラッチ装置44をクラッチオフ状態とする(ステップS4)。そして、制御部6は、モータ2を1回転以上回転させる(ステップS5)。すなわち、制御部6は、モータ2を360度以上回転させる。なお、モータ2を回転させる方向は、正回転方向であってもよいし、逆回転方向であってもよい。
【0053】
以上のように、モータ2を360度以上回転させることによって、入力側保持部3、試験体T、及び出力側保持部4を360度以上回転させることが可能となる。このため、ねじり試験機100に用いられているベアリングの油膜切れを防止することができる。
【0054】
次に、制御部6は、クラッチ装置44を制御して、クラッチ装置44をクラッチオン状態とする(ステップS6)。そして、制御部6は、カウント数をリセットし、ステップS1の処理に戻る。
【0055】
次に、モータ2を駆動する際の制御部6によるフィードバック制御について説明する。
【0056】
図4に示すように、制御部6には、正回転方向のねじりトルク指令値、逆回転方向のねじりトルク指令値、及びねじり周波数指令値ωが入力される。また、制御部6には、トルクセンサ33によって検出されたトルク現在値、及び角度センサ5によって検出されたねじり角度現在値が入力される。
【0057】
制御部6は、トルクセンサ33によって検出されたトルク現在値に基づき第1のフィードバック制御を実行し、ねじり角度指令値Aを生成する。例えば、ねじり角度指令値Aは、以下の式(1)によって表すことができる。
A=αsin(ωt)-β ・・・(1)
なお、αはねじり角度幅(振幅)、tは時間、βはオフセット値である。
【0058】
また、制御部6は、角度センサ5によって検出されたねじり角度現在値に基づき第2のフィードバック制御を実行し、トルク指令値を生成してモータ2に出力する。
【0059】
詳細には、制御部6は、最大ねじりトルク演算部61、第1ねじりトルク誤差演算部62、ねじり角度幅演算部63、最小ねじりトルク演算部64、第2トルク誤差演算部65、ねじり角度オフセット演算部66、ねじり角度指令値生成部67、ねじり角度誤差演算部68、ねじりトルク演算部69を有する。
【0060】
最大ねじりトルク演算部61は、トルクセンサ33からのデータに基づき、1周期中の最大ねじりトルクを算出する。第1ねじりトルク誤差演算部62は、入力された正回転方向のねじりトルク指令値と、最大ねじりトルク演算部61によって算出された最大ねじりトルクとの誤差を算出する。
【0061】
ねじり角度幅演算部63は、第1ねじりトルク誤差演算部62によって算出された誤差に基づき、ねじり角度幅αを算出する。例えば、最大ねじりトルクが指令値よりも小さい場合、ねじり角度幅演算部63は、より大きいねじり角度幅αを算出する。また、最大ねじりトルクが指令値よりも大きい場合、ねじり角度幅演算部63は、より小さいねじり角度幅αを算出する。
【0062】
最小ねじりトルク演算部64は、トルクセンサ33からのデータに基づき、1周期中の最小ねじりトルクを算出する。第2トルク誤差演算部65は、入力された逆回転方向のねじりトルク指令値と、最小ねじりトルク演算部64によって算出された最小ねじりトルクとの誤差を算出する。
【0063】
ねじり角度オフセット演算部66は、第2トルク誤差演算部65によって算出された誤差に基づき、オフセット値βを算出する。例えば、最小ねじりトルクが指令値よりも小さい場合、ねじり角度オフセット演算部66は、より大きいオフセット値βを算出する。また、最小ねじりトルクが指令値よりも大きい場合、ねじり角度オフセット演算部66は、より小さいオフセット値βを算出する。
【0064】
ねじり角度指令値生成部67は、ねじり角度幅演算部63によって算出されたねじり角度幅α、ねじり角度オフセット演算部66によって算出されたオフセット値β、及びねじり周波数指令値ωに基づき、ねじり角度指令値Aを生成する。例えば、上記式(1)に示すようなねじり角度指令値Aを生成する。なお、式(1)に示したねじり角度指令値Aは一例であり、正弦波に限定されるものではない。
【0065】
次に、ねじり角度誤差演算部68は、角度センサ5によって検出されたねじり角度現在値と、ねじり角度指令値生成部67によって生成されたねじり角度指令値Aとの差を角度誤差として算出する。
【0066】
ねじりトルク演算部69は、ねじり角度誤差演算部68によって算出された角度誤差と、角度センサ5によって検出されたねじり角度現在値と、ダンパ機構43のねじり特性補正トルクと、ねじり試験機100の固有イナーシャと、質量体32の調整用イナーシャとに基づき、トルク指令値を生成し、モータ2に出力する。
【0067】
図5に示すように、ねじりトルク演算部69は、角度制御部691と、角速度制御部692と、角加速度制御部693と、トルク指令値生成部694とを有している。
【0068】
角度制御部691は、ねじり角度誤差演算部68によって算出された角度誤差を取得する。角速度制御部692は、角度制御部691によって取得された角度誤差を微分して算出した角速度指令値と、角度センサ5によって検出されたねじり角度現在値を微分して算出した角速度現在値との差を、角速度差として算出する。
【0069】
角加速度制御部693は、角速度制御部692によって算出された角速度差を微分して算出した角加速度指令値と、角度センサ5によって検出されたねじり角度現在値を二回微分して算出した角加速度現在値と、の差を角加速度差として算出する。
【0070】
トルク指令値生成部694は、角加速度制御部693によって算出された角加速度差から算出された加速度定常偏差制御トルクに、ダンパ機構43のねじり特性補正トルクと、固有イナーシャ及び調整用イナーシャに基づき算出されるイナーシャ補正トルクと、を組み合わせてトルク指令値を生成する。
【0071】
詳細には、まず、トルク指令値生成部694は、角加速度制御部693によって算出された角加速度差に基づき、加速度定常偏差制御トルクを算出する。具体的には、トルク指令値生成部694は、角加速度差に基づき、PID制御することによって、加速度定常偏差制御トルクを算出する。
【0072】
また、トルク指令値生成部694は、ダンパ機構43のねじり特性補正トルクを算出する。詳細には、トルク指令値生成部694は、ねじり角度指令値に基づき、ダンパ機構43のねじり特性補正トルクを算出する。例えば、トルク指令値生成部694は、図6に示すようなねじり特性マップを有している。そして、トルク指令値生成部694は、このねじり特性マップに基づき、ねじり角度指令値に対応するねじり特性補正トルクを算出する。
【0073】
また、トルク指令値生成部694は、イナーシャ補正トルクを算出する。詳細には、トルク指令値生成部694は、ねじり試験機100の固有イナーシャ及び質量体32の調整用イナーシャに基づき、イナーシャ補正トルクを算出する。例えば、トルク指令値生成部694は、この固有イナーシャと調整用イナーシャとを合わせたイナーシャに、角加速度制御部693によって算出された角加速度指令値を乗算することによって、イナーシャ補正トルクを算出することができる。なお、固有イナーシャは、質量体32を除いたねじり試験機100のイナーシャである。
【0074】
[特徴]
以上のように構成されたねじり試験機100は、以下に説明するように、モータ2の出力トルク以上のねじりトルクを試験体Tに対して負荷させることができる。まず、モータ2は正回転方向のトルクを出力し、そのトルクは試験体Tに負荷される。このとき、モータ2の出力トルクによって、ダンパ機構43がねじり角度θ1だけねじれる。このため、ダンパ機構43の弾性部材433には弾性エネルギが保存される。次に、モータ2は逆回転方向のトルクを出力する。ここで、モータ2の出力エネルギ以外に、弾性部材433に蓄積された弾性エネルギがあるため、逆回転方向において試験体Tにモータ2の出力エネルギ及び弾性部材433の弾性エネルギに基づくトルクが負荷される。また、弾性部材433には、このモータ2の出力エネルギと弾性部材433の弾性エネルギとが、弾性エネルギとして蓄積される。この工程が繰り返され、ねじり角度は徐々に増加し、モータ2の出力トルク以上のねじりトルクが発生する。
【0075】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0076】
変形例1
上記実施形態では、出力側保持部4がダンパ機構43を有していたが、入力側保持部3がダンパ機構43を有していてもよい。
【0077】
変形例2
上記実施形態では、出力側保持部4がクラッチ装置44を有していたが、入力側保持部3がクラッチ装置44を有していてもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 ねじり試験機
2 モータ
3 入力側保持部
32 質量体
33 トルクセンサ
4 出力側保持部
43 ダンパ機構
431 入力部材
432 出力部材
433 弾性部材
44 クラッチ装置
5 角度センサ
6 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6