(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着剤層付き光学部材
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20231031BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231031BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231031BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/06
C09J7/38
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020048452
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198745(JP,A)
【文献】特開平08-259922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体
(但し、イソシアネート基と反応する官能基を有さない含窒素単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を除く。)と、
ポリイソシアネート化合物と、
炭素数が5~18である1価のアルコール化合物と、を含み、
前記ポリイソシアネート化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部~30質量部であり、
前記アルコール化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~3質量部である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して1質量%~5質量%である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.1質量%~3質量%である請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物の含有質量に対する前記アルコール化合物の含有質量の比が、0.04~0.15である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
光学部材と、
前記光学部材上に設けられ、かつ、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着剤層付き光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着剤層付き光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯端末等の携帯電子機器は、液晶表示装置が組み込まれているものが多い。一般に、液晶表示装置は、2枚のガラス基板に液晶層が挟まれた液晶セルと、液晶セルの両面に配置される偏光板とを備えている。液晶セルと偏光板とは、液晶表示装置の視認性を確保する観点から、一般には、アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層を介して貼合される。
例えば、特許文献1には、アクリル系ポリマー100重量部と、イソシアネート系硬化剤5重量部~50重量部とを含有する光学用粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤層を備える偏光板(所謂、粘着剤層付き偏光板)は、長期(例えば、6ヶ月間;以下、同じ。)保管した後に、液晶セルに貼り合わせることがある。このため、粘着剤層付き偏光板における粘着剤層には、長期保管後でも貼り合わせ適性に優れることが求められる。しかし、架橋剤としてポリイソシアネート化合物を多量に用いる、所謂、ハードタイプの粘着剤組成物により形成された粘着剤層では、例えば、粘着剤層中又は大気中の少量の水分の作用により、経時で水とポリイソシアネート化合物との縮合体が形成される場合がある。この縮合体が形成されると、粘着剤層が硬くなるため、粘着剤層付き偏光板をガラス基板等に貼り合わせる際の泡抜け性が低下する等の問題が生じ得る。
また、一般に、偏光板では、温度が変化すると、収縮又は膨張しようとして応力が発生する場合がある。この発生した応力が緩和されない場合には、粘着剤層に応力が残留する。そして、粘着剤層に残留した応力が不均一になると、例えば、液晶表示装置において光漏れが生じて白くなる現象、所謂、白抜けが発生することがある。
【0005】
長期保管後でも貼り合わせ適性に優れる粘着剤層を実現するためには、例えば、粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)が経時で過度に上昇しないようにすることが考えられる。一方、上述のように、粘着剤層付き偏光板における粘着剤層には、高温(例えば、105℃;以下、同じ。)の環境下に曝された場合でも白抜けを生じさせ難い性質が求められるところ、白抜けの発生を抑制する観点からは、粘着剤層が発生した応力に対して縮まない程度の高い貯蔵弾性率(G’)を有することが望ましい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有し、かつ、養生直後及び長期保管後に適度な粘弾性を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、並びに、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有し、かつ、養生直後及び長期保管後に適度な粘弾性を有する粘着剤層を備える粘着剤層付き光学部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、
ポリイソシアネート化合物と、
炭素数が5~18である1価のアルコール化合物と、を含み、
上記ポリイソシアネート化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部~30質量部であり、
上記アルコール化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~3質量部である粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して1質量%~5質量%である<1>に記載の粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.1質量%~3質量%である<3>に記載の粘着剤組成物。
<5> 上記ポリイソシアネート化合物の含有質量に対する上記アルコール化合物の含有質量の比(上記アルコール化合物の含有質量/上記ポリイソシアネート化合物の含有質量)が、0.04~0.15である<1>~<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<6> 光学部材と、
上記光学部材上に設けられ、かつ、<1>~<5>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着剤層付き光学部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有し、かつ、養生直後及び長期保管後に適度な粘弾性を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、並びに、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有し、かつ、養生直後及び長期保管後に適度な粘弾性を有する粘着剤層を備える粘着剤層付き光学部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0013】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0014】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。〕と、ポリイソシアネート化合物と、炭素数が5~18である1価のアルコール化合物〔以下、「特定アルコール化合物」ともいう。〕と、を含み、ポリイソシアネート化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部~30質量部であり、特定アルコール化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~3質量部である。
本発明の粘着剤組成物によれば、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有し、かつ、養生直後及び長期保管後に適度な粘弾性を有する粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物を比較的多量に含む。ポリイソシアネート化合物を多量に含む粘着剤組成物により粘着剤層を形成すると、形成された粘着剤層において、長期保管の間に、粘着剤層中又は大気中の少量の水分とポリイソシアネート化合物とが経時で反応し、硬い縮合体が形成される場合がある。この縮合体の形成により粘着剤層が硬くなると粘着力が低下し、例えば、粘着剤層付き偏光板をガラス基板等に貼り合わせる際の泡抜け性が低下するという問題が生じ得る。これに対し、本発明の粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物に加えて、炭素数が5~18である1価のアルコール化合物(即ち、特定アルコール化合物)を特定の割合で含むため、特定アルコール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応することにより、粘着剤層を形成する際における特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との架橋反応が損なわれることなく、粘着剤層の形成後、長期保管の間に進行する上記縮合体の形成が適度に抑制されると考えられる。このため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有し、かつ、養生直後及び長期保管後に適度な粘弾性を有すると推測される。
【0016】
本発明の粘着剤組成物に対し、特許文献1(特開2011-37927号公報)に記載の光学用粘着剤は、炭素数が5~18である1価のアルコール化合物(即ち、特定アルコール化合物)を含まないため、形成される粘着剤層は、長期保管すると、粘着力が低下する、泡抜け性が低下する等、貼り合わせ適性が悪化すると考えられる。
【0017】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕を含む。
本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0019】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は含まれない。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、n-ブチルアクリレート及びメチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、n-ブチルアクリレートがより好ましい。
【0022】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0023】
特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%以上99質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上99質量%以下の範囲であることが更に好ましく、70質量%以上99質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0024】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
特定(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、養生直後には架橋が十分に進行し、粘着剤層が適度な弾性率を有する傾向がある。このため、養生直後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けが生じ難い傾向がある。
【0025】
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0026】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、及びコハク酸エステル〔例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸〕が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレートから選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0028】
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.5質量%~7質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましく、2質量%~4質量%であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.5質量%以上であると、養生直後には架橋が十分に進行し、粘着剤層がより適度な弾性率を有する傾向がある。このため、養生直後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けがより生じ難い傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して7質量%以下であると、長期保管後の粘着剤層が、より優れた貼り合わせ適性を有する傾向がある。例えば、長期保管後の粘着剤層が、より高い粘着力を示し、かつ、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性により優れる傾向がある。
【0029】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、養生直後及び長期保管後の粘着剤層が、より適度な粘弾性を有する傾向がある。このため、養生直後及び長期保管後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けがより生じ難い傾向がある。
【0030】
本明細書において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0031】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0032】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましく、0.3質量%~2質量%であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.05質量%以上であると、養生直後及び長期保管後の粘着剤層が、より適度な粘弾性を有する傾向がある。このため、養生直後及び長期保管後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けがより生じ難い傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して5質量%以下であると、長期保管後の粘着剤層が、より優れた貼り合わせ適性を有する傾向がある。例えば、長期保管後の粘着剤層が、より高い粘着力を示し、かつ、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性により優れる傾向がある。
【0034】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲において、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0035】
その他の構成単位を構成する単量体(以下、「その他の単量体」ともいう。)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0036】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0037】
特定(メタ)アクリル系共重合体がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0038】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw;以下、同じ。)は、特に限定されないが、例えば、40万~250万であることが好ましく、40万~230万であることがより好ましく、40万~200万であることが更に好ましく、40万~180万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が40万以上であると、高温環境下に曝された場合に発泡がより生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が250万以下であると、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎず、粘着剤組成物をより良好に塗工できる傾向がある。
【0039】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を測定する。
【0040】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0042】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、75.0質量%~94.3質量%であることが好ましく、80.0質量%~94.3質量%であることがより好ましく、80.0質量%~90.0質量%であることが特に好ましい。
【0043】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0044】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0045】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、並びに、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物が挙げられる。
【0046】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0047】
重合反応時には、有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0048】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0049】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0050】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0051】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0052】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0053】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0054】
〔ポリイソシアネート化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物を含む。また、本発明の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート化合物の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部~30質量部である。
ポリイソシアネート化合物は、分子内に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、本発明の粘着剤組成物において、架橋剤として機能する。
【0055】
ポリイソシアネート化合物は、特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、塗工性の観点から、トリレンジイソシアネート化合物が好ましい。
本明細書において、「トリレンジイソシアネート化合物」は、トリレンジイソシアネート(TDI)のみならず、トリレンジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体、又は5量体)、トリレンジイソシアネートとポリオール化合物とのアダクト体、トリレンジイソシアネートのビウレット体等を包含する。
【0056】
ポリイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ポリイソシアネート化合物の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2030」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)〕が挙げられる。
【0057】
本発明の粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0058】
本発明の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部~30質量部であり、7質量部~28質量部であることが好ましく、8質量部~25質量部であることがより好ましく、10質量部~20質量部であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部以上であると、養生直後及び長期保管後の粘着剤層が、適度な粘弾性を有する傾向がある。このため、養生直後及び長期保管後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けが生じ難い傾向がある。
本発明の粘着剤組成物におけるポリイソシアネート化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して30質量部以下であると、長期保管後の粘着剤層が、優れた貼り合わせ適性を有する傾向がある。例えば、長期保管後の粘着剤層は、高い粘着力を示し、かつ、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性に優れる傾向がある。
【0059】
〔特定アルコール化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、炭素数が5~18である1価のアルコール化合物(即ち、特定アルコール化合物)を含む。また、本発明の粘着剤組成物における特定アルコール化合物の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~3質量部である。
【0060】
特定アルコール化合物は、直鎖のアルコール化合物(所謂、直鎖アルコール)であってもよく、分岐構造を有するアルコール化合物(所謂、分岐アルコール)であってもよく、環状構造を有するアルコール化合物(所謂、環状アルコール)であってもよい。
特定アルコール化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物に対する反応性の観点から、直鎖アルコールが好ましい。
【0061】
特定アルコール化合物の炭素数は、5~18であり、6~16であることが好ましく、7~14であることがより好ましく、8~12であることが更に好ましい。
特定アルコール化合物の炭素数が5以上であると、養生直後及び長期保管後の粘着剤層が、適度な粘弾性を有する傾向がある。このため、養生直後及び長期保管後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けが生じ難い傾向がある。
特定アルコール化合物の炭素数が18以下であると、長期保管後の粘着剤層が、優れた貼り合わせ適性を有する傾向がある。例えば、長期保管後の粘着剤層は、高い粘着力を示し、かつ、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性に優れる傾向がある。
【0062】
特定アルコール化合物の沸点は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物の塗工及び乾燥の際により揮発し難いという観点から、135℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。
特定アルコール化合物の沸点の上限は、特に限定されないが、例えば、250℃以下であることが好ましい。
【0063】
特定アルコール化合物の具体例としては、1-ペンタノール(炭素数:5、直鎖アルコール)、1-ヘキサノール(炭素数:6、直鎖アルコール)、1-ヘプタノール(炭素数:7、直鎖アルコール)、1-オクタノール(炭素数:8、直鎖アルコール)、1-ノナノール(炭素数:9、直鎖アルコール)、1-デカノール(炭素数:10、直鎖アルコール)、1-ウンデカノール(炭素数:11、直鎖アルコール)、1-ドデカノール(炭素数:12、直鎖アルコール)、1-テトラデカノール(炭素数:14、直鎖アルコール)、1-ヘキサデカノール(炭素数:16、直鎖アルコール)、1-オクタデカノール(炭素数:18、直鎖アルコール)、2-ヘキサノール(炭素数:6、分岐アルコール)、ベンジルアルコール(炭素数:7、環状アルコール)、及びテキサノール(炭素数:12、分岐アルコール)が挙げられる。
特定アルコール化合物としては、1-ペンタノール、1-デカノール、及び1-オクタデカノールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、1-デカノールがより好ましい。
【0064】
本発明の粘着剤組成物は、特定アルコール化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0065】
本発明の粘着剤組成物における特定アルコール化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~3質量部であり、0.05質量部~3質量部であることが好ましく、0.7質量部~1.5質量部であることがより好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定アルコール化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部以上であると、長期保管後の粘着剤層が、優れた貼り合わせ適性を有する傾向がある。例えば、長期保管後の粘着剤層は、高い粘着力を示し、かつ、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性に優れる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における特定アルコール化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して3質量部以下であると、養生直後及び長期保管後の粘着剤層が、適度な粘弾性を有する傾向がある。このため、養生直後及び長期保管後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けが生じ難い傾向がある。
【0066】
ポリイソシアネート化合物の含有質量に対する特定アルコール化合物の含有質量の比(特定アルコール化合物の含有質量/ポリイソシアネート化合物の含有質量)は、特に限定されないが、例えば、0.0007~0.21であることが好ましく、0.01~0.21であることがより好ましく、0.04~0.15であることが更に好ましく、0.05~0.12であることが特に好ましい。
ポリイソシアネート化合物の含有質量に対する特定アルコール化合物の含有質量の比(特定アルコール化合物の含有質量/ポリイソシアネート化合物の含有質量)が0.0007以上であると、長期保管後の粘着剤層が、より優れた貼り合わせ適性を有する傾向がある。例えば、長期保管後の粘着剤層は、より高い粘着力を示し、かつ、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性により優れる傾向がある。
ポリイソシアネート化合物の含有質量に対する特定アルコール化合物の含有質量の比(特定アルコール化合物の含有質量/ポリイソシアネート化合物の含有質量)が0.21以下であると、養生直後及び長期保管後の粘着剤層が、より適度な粘弾性を有する傾向がある。このため、養生直後及び長期保管後の粘着剤層を偏光板用途に用いても、高温環境下に曝された場合の白抜けがより生じ難い傾向がある。
【0067】
〔シランカップリング剤〕
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含むと、形成される粘着剤層のガラスに対する接着性が向上する。このため、被着体がガラスである場合には、長期保管後の粘着剤層が、より優れた貼り合わせ適性を示す傾向がある。
【0068】
シランカップリング剤は、特に限定されない。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0069】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、「KBM-403」、「X-41-1053」、及び「KBM-402」〔以上、信越化学工業(株)〕が挙げられる。
【0070】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0071】
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部~1質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.8質量部であることがより好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量が上記範囲内であると、被着体がガラスである場合に、長期保管後の粘着剤層が、より優れた貼り合わせ適性を示す傾向がある。
【0072】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶媒としては、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる、既述の有機溶媒と同様のものが挙げられる。
なお、本明細書における「有機溶媒」には、特定アルコール化合物は含まれない。
【0073】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0074】
本発明の粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0075】
〔その他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、架橋触媒、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)等が挙げられる。
【0076】
[用途]
本発明の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本発明の粘着剤組成物は、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有する粘着剤層を形成できる。すなわち、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、長期保管した場合でも、高い粘着力を示し、かつ、泡抜け性に優れる。
また、本発明の粘着剤組成物は、養生直後及び長期保管後のいずれにおいても、適度な粘弾性を有する粘着剤層を形成できる。このため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、養生直後に高温環境下に曝された場合のみならず、長期保管後に高温環境下に曝された場合でも白抜けを生じさせ難い。
本発明の粘着剤組成物は、上記のような特性を有するため、例えば、光学部材を被着体に貼着させる用途(所謂、光学部材用)として好適である。具体的な用途としては、例えば、偏光板を液晶セル(具体的には、液晶セルのガラス基板)に貼着させる用途、偏光板を位相差フィルム等の光学フィルムに貼着させる用途などが挙げられる。
【0077】
[粘着剤層付き光学部材]
本発明の粘着剤層付き光学部材は、光学部材と、上記光学部材上に設けられ、かつ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。すなわち、本発明の粘着剤層付き光学部材では、光学部材と、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層とが、積層されている。
本発明の粘着剤層付き光学部材は、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、長期保管後に優れた貼り合わせ適性を有する。また、本発明の粘着剤層付き光学部材は、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、養生直後に高温環境下に曝された場合のみならず、長期保管後に高温環境下に曝された場合でも白抜けを生じさせ難い。
【0078】
本発明の粘着剤層付き光学部材における光学部材は、特に限定されない。
光学部材としては、例えば、画像表示装置、入力装置等の機器(所謂、光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。
光学部材の具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITO(Indium-Tin Oxide)フィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などが挙げられる。
光学部材の材質としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0079】
本発明の粘着剤層付き光学部材における光学部材としては、偏光板が好ましい。
偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されるものであり、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。すなわち、偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
本発明の粘着剤層付き光学部材における光学部材が偏光板である場合の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光子、粘着剤層/偏光子/保護フィルム、粘着剤層/保護フィルム/偏光子/保護フィルム、及び粘着剤層/保護フィルム/偏光子が挙げられる。また、偏光子と保護フィルムとの間、保護フィルムと粘着剤層との間、及び偏光子と粘着剤層との間には、位相差フィルム(例えば、EWV層に代表される光学機能性層、接着剤層、及び易接着層)等の層を有していてもよい。
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。
保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリシクロオレフィン(COP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及びアクリルフィルムが挙げられる。
【0080】
本発明の粘着剤層付き光学部材において露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着剤層付き光学部材を実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0081】
本発明の粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚さは、特に限定されず、被着体の材質、形状等に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、一般には、1μm~100μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~30μmであることがより好ましい。
【0082】
本発明の粘着剤層付き光学部材は、公知の方法により作製できる。
本発明の粘着剤層付き光学部材を作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。本発明の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を光学部材に接触させて加圧し、粘着膜を光学部材に転写することにより、光学部材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜を養生させて、粘着剤層とする。以上のようにして、本発明の粘着剤層付き光学部材を得る。
【0083】
本発明の粘着剤層付き光学部材を作製する別の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。本発明の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面に、別途、準備した剥離フィルムの易剥離処理面を重ねた後、圧着することにより、基材を有しない両面粘着シートを作製する。次いで、作製した両面粘着シートの粘着膜を養生させて、粘着剤層とする。次いで、一方の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を光学部材に接触させて加圧することにより、粘着剤層を光学部材に転写する。以上のようにして、本発明の粘着剤層付き光学部材を得る。
【0084】
また、本発明の粘着剤層付き光学部材を作製する別の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。本発明の粘着剤組成物を光学部材の一方の面に塗布することにより、光学部材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、光学部材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜を養生させて、粘着剤層とする。以上のようにして、本発明の粘着剤層付き光学部材を得る。
【0085】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の塗布方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0086】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0087】
養生は、例えば、雰囲気温度23℃~35℃、50%RHの環境下で、3日間~7日間行う。養生を行うことで、粘着剤組成物の架橋反応が終了し、粘着剤層が形成される。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
[(メタ)アクリル系共重合体の製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〕96.5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA;水酸基を有する単量体〕0.5質量部、アクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕3.0質量部、及び酢酸エチル〔有機溶媒〕70.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。
次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.02質量部と、酢酸エチル120.0質量部と、を逐次添加し、6時間保持して重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度18.5質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得た。
【0090】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。以下に示す製造例A-2~A-13により製造した(メタ)アクリル系共重合体の各溶液についても同様である。
【0091】
〔製造例A-2~A-5及びA-8~A-13〕
製造例A-2~A-5及びA-8~A-13では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が18.5質量%である(メタ)アクリル系共重合体の各溶液を得た。
【0092】
〔製造例A-6〕
製造例A-6では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が18.5質量%である(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得た。
【0093】
〔製造例A-7〕
温度計、撹拌機、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〕97.0質量部、アクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕3.0質量部、及び酢酸エチル〔有機溶媒〕60.0質量部を入れて混合し、混合物を得た。
次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら95℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.1質量部と、酢酸エチル40.0質量部と、を逐次添加し、5時間保持して重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度38.0質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得た。
【0094】
製造例A-1~A-13により製造した(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成(単位:質量%)、及び重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×104と表記)〕を表1に示す。
製造例A-1~A-13により製造した(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0095】
製造例A-1~A-13により製造した(メタ)アクリル系共重合体のうち、製造例A-1~A-12により製造した(メタ)アクリル系共重合体は、本発明における特定(メタ)アクリル系共重合体に相当する。
【0096】
【0097】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
「M-5300」:ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート
<その他の単量体>
「PHEA」:フェノキシエチルアクリレート
【0098】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表1では、「重量平均分子量」を「Mw」と表記した。
【0099】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
製造例A-1により製造した(メタ)アクリル系共重合体の溶液540.5質量部(固形分として100質量部)と、ポリイソシアネート化合物としてコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)〕31.1質量部(固形分として14.0質量部)と、特定アルコール化合物として1-デカノール〔炭素数:10、直鎖アルコール、沸点:233℃、東京化成工業(株)〕1.0質量部と、シランカップリング剤としてKBM-403〔商品名、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)〕0.3質量部と、適量の酢酸エチルと、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0100】
〔実施例2~26〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~26の各粘着剤組成物を得た。
【0101】
〔比較例1~8〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~8の各粘着剤組成物を得た。
【0102】
【0103】
【0104】
表2及び表3中、組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
表2中、特定(メタ)アクリル系共重合体、ポリイソシアネート化合物(X)、及びシランカップリング剤の欄の「質量部」の列に記載の数値は、全て固形分換算値である。また、表3中、特定(メタ)アクリル系共重合体、比較重合体、ポリイソシアネート化合物(X)、及びシランカップリング剤の欄の「質量部」の列に記載の数値は、全て固形分換算値である。
表2及び表3では、「ポリイソシアネート化合物(X)の含有質量に対する特定アルコール化合物(Y)の含有質量の比〔特定アルコール化合物(Y)の含有質量/ポリイソシアネート化合物(X)の含有質量〕」を「含有質量比(Y)/(X)」と表記した。
表3中、「含有質量比(X)/(Y)」の欄に記載の「-」は、その欄に該当する値がないことを意味する。
【0105】
表2及び表3に記載の成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<ポリイソシアネート化合物>
「コロネート L-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)〕
「コロネート 2030」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアネートヌレート体、固形分濃度:50質量%、東ソー(株)〕
「タケネート D-110N」〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)〕
「スミジュール N-75」〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートHMDIのビュレット体、固形分濃度:75質量%、住化コベストロウレタン(株)〕
上記「コロネート」、「タケネート」、及び「スミジュール」は、いずれも登録商標である。
【0106】
<アルコール化合物>
-特定アルコール化合物-
「1-デカノール」〔炭素数:10、直鎖アルコール、沸点:233℃、東京化成工業(株)〕
「1-ペンタノール」〔炭素数:5、直鎖アルコール、沸点:138℃、富士フイルム和光純薬(株)〕
「1-オクタデカノール」〔炭素数:18、直鎖アルコール、沸点:210℃、東京化成工業(株)〕
-比較化合物-
「1-ブタノール」〔炭素数:4、直鎖アルコール、沸点:118℃、三菱ケミカル(株)〕
「1-ノナデシルアルコール」〔炭素数:19、直鎖アルコール、沸点:156℃、東京化成工業(株)〕
「1,6-ヘキサンジオール」〔炭素数:6、2価のアルコール化合物、沸点:223℃、東京化成工業(株)〕
【0107】
<シランカップリング剤>
「KBM-403」〔商品名、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)〕
「X-41-1053」〔商品名、エポキシ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕
「KBM-402」〔商品名、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、エポキシ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕
【0108】
<粘着剤層付き偏光板の作製>
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の表面処理面上に、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが20μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けて、剥離フィルム上に厚さ20μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、トリアセチルセルロース(TAC)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の構成を有する偏光板の一方のTAC層の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間放置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0109】
<粘着剤層付きフィルムの作製>
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)〕の表面処理面上に、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが20μmとなる量とした。
次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けて、厚さ20μmの粘着膜を形成した。
次いで、粘着膜の露出した面と、別途準備した剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)〕の表面処理面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間放置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの構成を有する粘着剤層付きフィルムを作製した。
【0110】
[評価]
1.貼り合わせ適性
(1)粘着力
貼り合わせ適性の指標の1つとして粘着力を測定した。
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に6ヶ月間放置した。次いで、放置後の粘着剤層付き偏光板を切断し、25mm×75mm(長辺)の大きさの試験片A-1を得た。次いで、得られた試験片A-1〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)〕の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、表4又は表5に記載の被着体の面と、を重ねた後、ラミネーターを用いて圧着することにより、被着体/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する積層体を得た。次いで、得られた積層体に対し、オートクレーブ処理(処理温度:50℃、処理圧力:5kg/cm2、処理時間:20分間)を施した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に0.5時間放置し、試験片A-2を得た。この試験片A-2について、被着体から、粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着剤層付き偏光板を長辺方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。
結果を表4及び表5に示す。
粘着力が0.7N/25mm以上であれば、長期保管した場合でも、被着体に対して高い粘着力を示す粘着剤層であり、貼り合わせ適性に優れる粘着剤層であると判断した。
粘着力は、0.7N/25mm以上であることが好ましく、1.0N/25mm以上であることがより好ましく、1.3N/25mm以上であることが更に好ましい。
【0111】
(2)オートクレーブ処理後の泡抜け
貼り合わせ適性の指標の1つとしてオートクレーブ処理後の泡抜けを評価した。
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に6ヶ月間放置した。次いで、放置後の粘着剤層付き偏光板を切断し、62mm×110mmの大きさの試験片B-1を得た。次いで、得られた試験片B-1〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)〕の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、表4又は表5に記載の被着体の面と、を重ねた後、ラミネーターを用いて圧着することにより、被着体/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する積層体を得た。次いで、得られた積層体に対し、オートクレーブ処理(処理温度:50℃、処理圧力:5kg/cm2、処理時間:20分間)を施した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に0.5時間放置し、試験片B-2を得た。この試験片B-2について、偏光板の端部を目視にて観察し、気泡が抜けているか否か、具体的には、気泡の有無及び程度を観察した。そして、観察結果に基づき、下記の評価基準に従って、オートクレーブ処理後(以下、「A/C後」ともいう。)の泡抜けを評価した。
結果を表4及び表5に示す。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、長期保管した場合でも、被着体に貼り合わせる際の泡抜け性に優れる粘着剤層であり、貼り合わせ適性に優れる粘着剤層であると判断した。
【0112】
-評価基準-
A:偏光板の端部に気泡が全く認められなかった。
B:偏光板の端部に気泡がほとんど認められなかった。
C:偏光板の端部に気泡が僅かに認められたが、許容範囲内であった。
D:偏光板の端部に気泡が顕著に認められ、許容範囲外であった。
【0113】
2.白抜け
養生直後の粘着剤層付き偏光板を切断し、62mm×110mm(長辺)の大きさの試験片C-1を得た。
また、上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に6ヶ月間放置した。次いで、放置後の粘着剤層付き偏光板を切断し、62mm×110mmの大きさの試験片D-1を得た。
試験片C-1及び試験片D-1について、試験片〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)〕の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれの試験片の吸収軸が直交するように、Twisted Nematic(TN)方式の液晶パネルの両面に重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、積層体C-1及び積層体D-1を得た。
次いで、得られた積層体C-1及び積層体D-1に対し、オートクレーブ処理(処理温度:50℃、処理圧力:5kg/cm2、処理時間:20分間)を施した。次いで、オートクレーブ処理後の積層体を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間放置し、積層体C-2及び積層体D-2を得た。
次いで、得られた積層体C-2及び積層体D-2を、雰囲気温度105℃の環境下に500時間放置し、試験片C-2及び試験片D-2を得た。試験片C-2及び試験片D-2を、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下、液晶モニターのバックライト上に置き、白抜けの発生の有無及び程度を目視にて観察した。そして、観察結果に基づき、下記の評価基準に従って、白抜けを評価した。
結果を表4及び表5に示す。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、高温環境下に曝された場合でも白抜けを生じさせ難い粘着剤層であると判断した。
【0114】
-評価基準-
A:白抜けが全く認められなかった。
B:白抜けがほとんど認められなかった。
C:白抜けが僅かに認められたが、許容範囲内であった。
D:白抜けが顕著に認められ、許容範囲外であった。
【0115】
3.粘弾性
粘弾性の指標の1つとして貯蔵弾性率(G’)を測定した。
養生直後の粘着剤層付きフィルムの剥離フィルムを剥離し、粘着剤層を露出させた後、2つに折り畳むことにより、粘着剤層同士を貼り合わせ、剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:40μm)/剥離フィルムの積層構造を有する積層体を得た。次いで、得られた積層体の一方の剥離フィルムを剥離し、粘着剤層を露出させた後、2つに折り畳むことにより、粘着剤層同士を貼り合わせ、剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:80μm)/剥離フィルムの積層構造を有する積層体を得た。上記の操作(剥離フィルムを剥離すること、及び、粘着剤層同士を貼り合わせること)を、粘着剤層の厚さが500μmになるまで繰り返し、得られた積層体を貯蔵弾性率測定用サンプルE-1とした。
また、上記にて作製した粘着剤層付きフィルムを、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に6ヶ月間放置した。次いで、放置後の粘着剤層付きフィルムについて、上記と同様の操作を行い、得られた積層体を貯蔵弾性率測定用サンプルE-2とした。
測定装置として動的粘弾性測定装置(製品名:Physica MCR301、Anton Paar社)を用い、評価温度:25℃、使用コーン:8mmφ、及び測定ギャップ:0.6mmにて、貯蔵弾性率測定用サンプルE-1及びE-2に対して、周波数1Hzでせん断応力を与えながら、貯蔵弾性率(G’)(単位:Pa)を測定した。
結果を表4及び表5に示す。
貯蔵弾性率(G’)が1.1×105Pa~12.0×105Paであれば、適度な粘弾性を有する粘着剤層であると判断した。貯蔵弾性率(G’)は、1.1×105Pa~12.0×105Paであることが好ましく、4.0×105Pa~12.0×105Paであることがより好ましく、7.0×105Pa~12.0×105Paであることが更に好ましい。
【0116】
【0117】
【0118】
表4及び表5中、「-」は、その欄に該当する評価を行っていないことを意味する。
表4及び表5に記載の被着体の詳細は、以下の通りである。
「ガラス」〔ソーダガラス、松浪硝子工業(株)〕
「BASUS」〔ステンレス鋼板、商品名:SUS304、(株)パルテック〕
「PET」:ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム HPE、厚さ:50μm、帝人フィルムソリューション(株)
【0119】
表4に示すように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕と、ポリイソシアネート化合物と、炭素数が5~18である1価のアルコール化合物(即ち、特定アルコール化合物)と、を含み、ポリイソシアネート化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部~30質量部であり、特定アルコール化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~3質量部である実施例1~26の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、長期保管後の粘着力が高く、かつ、オートクレーブ処理後の泡抜けに優れており、長期保管した場合でも優れた貼り合わせ適性を有することが確認された。また、実施例1~26の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、養生直後及び長期保管後のいずれにおいても、適度な粘弾性を有しており、高温環境下に曝された場合でも白抜けを生じさせ難いことが明らかとなった。
【0120】
一方、表5に示すように、ポリイソシアネート化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して6質量部未満である比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、養生直後及び長期保管後のいずれにおいても、貯蔵弾性率(G’)が過度に低く、高温環境下に曝された場合には白抜けを生じさせやすいことが確認された。
ポリイソシアネート化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して30質量部を超える比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、長期保管後に使用すると、粘着力が過度に低く、かつ、オートクレーブ処理後の泡抜けが悪く、貼り合わせ適性に劣ることが確認された。
特定アルコール化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部未満である比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、長期保管後に使用すると、粘着力が過度に低く、かつ、オートクレーブ処理後の泡抜けが悪く、貼り合わせ適性に劣ることが確認された。
特定アルコール化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して3質量部を超える比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、養生直後及び長期保管後のいずれにおいても、貯蔵弾性率(G’)が過度に低く、高温環境下に曝された場合には白抜けを生じさせやすいことが確認された。
特定(メタ)アクリル系共重合体の代わりに、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない(メタ)アクリル系共重合体を含む比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、養生直後の貯蔵弾性率(G’)が過度に低く、高温環境下に曝された場合には白抜けを生じさせやすいことが確認された。理由としては、養生直後では、架橋が十分に進行していないためと考えられる。
特定アルコール化合物の代わりに、炭素数が5未満である1価のアルコール化合物を含む比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、養生直後及び長期保管後のいずれにおいても、貯蔵弾性率(G’)が過度に低く、高温環境下に曝された場合には白抜けを生じさせやすいことが確認された。
特定アルコール化合物の代わりに、炭素数が18を超える1価のアルコール化合物を含む比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、長期保管後に使用すると、粘着力が過度に低く、かつ、オートクレーブ処理後の泡抜けが悪く、貼り合わせ適性に劣ることが確認された。
特定アルコール化合物の代わりに、炭素数が5~18である2価のアルコール化合物を含む比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、長期保管後に使用すると、粘着力が過度に低く、かつ、オートクレーブ処理後の泡抜けが悪く、貼り合わせ適性に劣ることが確認された。