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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6569 20140101AFI20231031BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231031BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20231031BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231031BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20231031BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20231031BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231031BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/652
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/249
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020070622
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021168245
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
(72)【発明者】
【氏名】東福寺 智子
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝佳
(72)【発明者】
【氏名】清水 肇
(72)【発明者】
【氏名】刑部 友敬
(72)【発明者】
【氏名】江川 太一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史哉
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070115(WO,A1)
【文献】特開2012-28228(JP,A)
【文献】国際公開第2019/197759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを配列させて構成した組電池と作動流体との熱交換により前記作動流体を蒸発させることによって、前記組電池を冷却する冷却器であって、
前記作動流体の流れ方向にて上流端と下流端とを有し、互いに並列に延びる複数の蒸発流路と、
前記複数の蒸発流路の前記上流端が連通され、電池セル配列方向の一方側に設けられた流入口から流入した液相の前記作動流体を、前記複数の蒸発流路へ供給する供給流路と、
前記複数の蒸発流路の前記下流端が連通され、前記複数の蒸発流路から流入した前記作動流体を、前記電池セル配列方向の他方側に設けられた流出口から流出させる流出流路と、
が形成されており、
前記電池セル配列方向に沿って前記蒸発流路に設けられ、各々が前記蒸発流路を仕切る複数の仕切り壁部を備え、
前記流出流路は、前記供給流路よりも上方に配置されており、
前記仕切り壁部の少なくとも一部分は、前記流出流路側が前記供給流路側よりも前記電池セル配列方向の一方側に位置するように、前記電池セル配列方向に対して傾斜した向きに延在していることを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記冷却器は、互いの対向する面に前記複数の仕切り壁部がそれぞれ設けられ、複数箇所にて接合された一対の金属板を有しており、
前記複数箇所には、前記一対の金属板の互いの前記仕切り壁部を接合した接合部が含まれることを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記接合部の長手方向の端部は中央部よりも太く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作動流体の沸騰及び凝縮作用によって、複数の電池セルが配列されて構成された組電池を冷却する冷却装置としての機器温調装置が開示されている。この機器温調装置は、凝縮器と蒸発器とを備えている。凝縮器は、蒸発器よりも高い位置に配置されており、蒸発器の下部に液相の作動流体が滞留される。そして、凝縮器と蒸発器とが配管部材からなる液相通路部である液通路部と気相通路部であるガス通路部とによって環状に接続されており、機器温調装置は、凝縮器と蒸発器との間で作動流体が循環するように構成されている。また、蒸発器は、複数の電池セルを配列して構成された組電池の側面に接するように配置されており、作動流体の蒸発によって組電池を冷却する。また、蒸発器は、複数の電池セルの配列方向に延びるように形成されている。凝縮器からの液相の作動流体は、液通路部を通って蒸発器のうち電池セル配列方向の一端に設けられた流入口から蒸発器内へ流入する。そして、蒸発器内の液相の作動流体は、電池セル配列方向の一端から他端へ流れる間に蒸発し、その他端に設けられた流出口から気相の作動流体がガス通路部に流出し、ガス通路部を通って凝縮器へと移動する。
【0003】
また、特許文献1に開示された機器温調装置では、蒸発器内に電池セル配列方向にて流入口側よりも流出口側のほうが高くなるように傾斜した複数のリブを設けて、流入口側から流出口側に向かって流れる作動流体の流路を区切っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/070115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された機器温調装置では、蒸発器内において、蒸発した気相の作動流体が複数のリブに沿って流出口側に向かって流れる際に、気相の作動流体の流れによって液相の作動流体から液滴が飛び出し、気相の作動流体とともに液滴が蒸発器の流出口から流出するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、気相の作動流体とともに、液相の作動流体が流出口から流出することを抑制できる冷却器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る冷却器は、複数の電池セルを配列させて構成した組電池と作動流体との熱交換により前記作動流体を蒸発させることによって、前記組電池を冷却する冷却器であって、前記作動流体の流れ方向にて上流端と下流端とを有し、互いに並列に延びる複数の蒸発流路と、前記複数の蒸発流路の前記上流端が連通され、電池セル配列方向の一方側に設けられた流入口から流入した液相の前記作動流体を、前記複数の蒸発流路へ供給する供給流路と、記複数の蒸発流路の前記下流端が連通され、前記複数の蒸発流路から流入した前記作動流体を、前記電池セル配列方向の他方側に設けられた流出口から流出させる流出流路と、が形成されており、前記電池セル配列方向に沿って前記蒸発流路に設けられ、各々が前記蒸発流路を仕切る複数の仕切り壁部を備え、前記流出流路は、前記供給流路よりも上方に配置されており、前記仕切り壁部の少なくとも一部分は、前記流出流路側が前記供給流路側よりも前記電池セル配列方向の一方側に位置するように、前記電池セル配列方向に対して傾斜した向きに延在していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る冷却器においては、蒸発流路内にて蒸発した気相の作動流体が、蒸発流路内を仕切り壁部の少なくとも一部分に沿って、一旦、電池セル配列方向にて流出口が設けられた他方側とは反対側の一方側に向けて流れる。その後、前記仕切り壁部の少なくとも一部分を抜けた気相の作動流体は、流出流路の流出口に向かって電池セル配列方向の他方側に流れる。この際、気相の作動流体の流れに乗って運ばれている液相の作動流体は、慣性を有しているため、気相の作動流体の流れの急な向きの変化に追従できず、仕切り壁部に慣性衝突する。これにより、気相の作動流体から液相の作動流体が分離される。よって、本発明に係る冷却器は、気相の作動流体とともに、液相の作動流体が流出口から流出することを抑制できる。
【0009】
また、上記において、前記冷却器は、互いの対向する面に前記複数の仕切り壁部がそれぞれ設けられ、複数箇所にて接合された一対の金属板を有しており、前記複数箇所には、前記一対の金属板の互いの前記仕切り壁部を接合した接合部が含まれてもよい。
【0010】
これにより、冷却器の強度を高めることができる。
【0011】
また、上記において、前記接合部の長手方向の端部は中央部よりも太く形成されていてもよい。
【0012】
これにより、応力が集中する接合部の長手方向の端部の接合強度を高めることができる。また、接合部の長手方向の中央部が端部よりも細いため、接合部の長手方向の中央部と端部とが同じ太さの場合よりも、冷却器内の容積を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る冷却器においては、蒸発流路内にて蒸発した気相の作動流体が、蒸発流路内を仕切り壁部の少なくとも一部分に沿って、一旦、電池セル配列方向にて流出口が設けられた他方側とは反対側の一方側に向けて流れる。その後、前記仕切り壁部の少なくとも一部分を抜けた気相の作動流体は、流出流路の流出口に向かって電池セル配列方向の他方側に流れる。この際、気相の作動流体の流れに乗って運ばれている液相の作動流体は、慣性を有しているため、気相の作動流体の流れの急な向きの変化に追従できず、仕切り壁部に慣性衝突する。これにより、気相の作動流体から液相の作動流体が分離される。よって、本発明に係る冷却器は、気相の作動流体とともに、液相の作動流体が流出口から流出することを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る冷却装置の概略構成を示した模式図である。
図2図2は、実施形態1に係る蒸発器の断面図である。
図3図3は、一対の金属板にプレス加工を施し、接合して一体に構成した蒸発器の斜視図である。
図4図4は、気相の作動流体の流れによって、液面から液滴が飛び出る際に、液滴に作用する力についての説明図である。
図5図5は、液面から飛び出た液滴に作用する重力と浮力とを示した図である。
図6図6は、液面から飛び出た液滴を、気相の作動流体から分離する手法の一例を示した図である。
図7図7は、仕切り壁部としてリブを設けて、液面から飛び出た液滴を、気相の作動流体から分離する手法の一例を示した図である。
図8図8は、実施形態2に係る蒸発器の断面図である。
図9図9は、実施形態3に係る蒸発器の断面図である。
図10図10は、実施形態3に蒸発器の他例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下に、本発明に係る冷却器の実施形態1について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、実施形態1に係る冷却装置1の概略構成を示した模式図である。図1に示した実施形態1に係る冷却装置1は、車両に搭載された組電池5を冷却対象物として冷却することによって、組電池5の電池温度を調節する。冷却装置1を搭載する車両としては、組電池5を電源とする図示しない走行用電動モータによって走行可能な電気自動車、または、ハイブリッド自動車などが想定される。
【0017】
組電池5は、直方体形状の複数の電池セル51を有している。複数の電池セル51は、所定の配列方向である電池セル配列方向A1に配列されている。したがって、組電池5全体もほぼ直方体形状を成している。なお、本実施形態において、電池セル配列方向A1は、車両上下方向A2に交差する方向、厳密に言えば、車両上下方向A2に直交する方向になっている。
【0018】
冷却装置1は、作動流体が循環する作動流体回路10を備えている。作動流体回路10を循環する作動流体としては、蒸気圧縮式の冷凍サイクルで利用される冷媒(例えば、R134a、R1234yf)が採用される。図1に示すように、作動流体回路10は、蒸発器12と凝縮器14と第1ガス通路部16と第2ガス通路部17と液通路部18とを含んで構成されている。すなわち、作動流体回路10は、閉じられた環状の流体回路である。作動流体回路10の内部には、所定量の作動流体が封入され、その作動流体回路10の内部は、その作動流体で満たされている。
【0019】
蒸発器12は、蒸発器12内を流通する作動流体と組電池5とを熱交換させて組電池5を冷却する冷却器である。すなわち、蒸発器12は、作動流体回路10での作動流体の循環に伴い、組電池5から液相の作動流体へ吸熱させ、それによって液相の作動流体を蒸発させる(沸騰させ気化させる)。本実施形態の蒸発器12は、組電池5の側方に熱伝導可能に連通されている。また、蒸発器12は、凝縮器14よりも下方に配置されている。これにより、液相の作動流体が、重力によって、蒸発器12を含む作動流体回路10の下部に溜まるようになっている。
【0020】
凝縮器14は、蒸発器12にて蒸発した気相の作動流体を凝縮させる熱交換器である。凝縮器14は、車両に搭載された空調用の冷凍サイクル装置21の外部流体である冷媒との熱交換によって気相の作動流体から放熱させることにより、作動流体を凝縮させる。冷凍サイクル装置21は、車両用空調装置の一部を構成している。冷凍サイクル装置21は、冷媒が循環して流れる冷媒回路22を備えている。
【0021】
凝縮器14は、冷媒回路22の冷媒が流れる冷媒側熱交換器36と、凝縮器14を流れる作動流体との熱交換が可能なように、冷媒側熱交換器36と熱的に接続されている。
【0022】
冷媒回路22は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成している。具体的には、冷媒回路22は、圧縮機24、空調用凝縮器26、第1膨張弁28、及び、空調用蒸発器30などが、配管によって接続されることにより形成されている。冷凍サイクル装置21は、空調用凝縮器26に空気を送る送風機27と、車室内空間に向かう空気流れを形成する送風機31とを備えている。例えば、空調用凝縮器26及び送風機27は、車室外に設けられており、送風機27は空調用凝縮器26へ車室外の空気である外気を送る。
【0023】
圧縮機24は、冷媒を圧縮して吐出する。空調用凝縮器26は、空気との熱交換によって圧縮機24から流出の冷媒を放熱させて凝縮させる放熱器である。第1膨張弁28は、空調用凝縮器26から流出の冷媒を減圧させる。空調用蒸発器30は、車室内空間に向かう空気との熱交換によって、第1膨張弁28から流出の冷媒を蒸発させるとともに、車室内空間に向かう空気を冷却する。
【0024】
さらに、冷媒回路22は、第1膨張弁28及び空調用蒸発器30に対して、冷媒流れで並列に接続された第2膨張弁32及び冷媒側熱交換器36を有している。第2膨張弁32は、空調用凝縮器26から流出の冷媒を減圧させる。冷媒側熱交換器36は、凝縮器14を流れる作動流体との熱交換によって、冷媒を蒸発させる冷媒蒸発部である。
【0025】
また、冷媒回路22は、冷媒側熱交換器36に向かって冷媒が流れる冷媒流路を開閉する開閉弁34を有している。開閉弁34が閉じられることによって、圧縮機24、空調用凝縮器26、第1膨張弁28、空調用蒸発器30の順に冷媒が流れる第1冷媒回路が形成される。開閉弁34を開くことによって、第1冷媒回路に加えて、圧縮機24、空調用凝縮器26、第2膨張弁32、冷媒側熱交換器36の順に冷媒が流れる第2冷媒回路が形成される。
【0026】
開閉弁34は、例えば、組電池5を冷却する必要性に応じて予め定められた条件にしたがって適宜開閉される。開閉弁34が開かれた場合には、少なくとも圧縮機24と送風機27とが作動する。これにより、凝縮器14で、冷媒側熱交換器36を流れる冷媒との熱交換によって、気相の作動流体が冷却されて凝縮する。
【0027】
続いて、図1を用いて、実施形態1に係る冷却装置1の基本作動について説明する。
【0028】
冷却装置1では、車両の走行時の自己発熱などによって組電池5の電池温度が上昇すると、組電池5の熱が蒸発器12に移動する。蒸発器12では、組電池5から吸熱することによって液相の作動流体の一部が蒸発する。組電池5は、蒸発器12の内部に存在する作動流体の蒸発潜熱によって冷却され、組電池5の温度が低下する。
【0029】
蒸発器12にて蒸発した作動流体は、蒸発器12から第1ガス通路部16へ流出し、図1の矢印FL1で示すように、第1ガス通路部16を介して凝縮器14へ移動する。
【0030】
凝縮器14では、気相の作動流体が放熱することによって凝縮した液相の作動流体は、重力によって下降する。これにより、凝縮器14で凝縮した液相の作動流体は、凝縮器14から液通路部18へ流出し、図1の矢印FL2で示すように、液通路部18を介して蒸発器12へ移動する。そして、蒸発器12では、流入した液相の作動流体の一部が、組電池5から吸熱することによって蒸発する。
【0031】
このように、冷却装置1では、作動流体がガス状態と液状態とに相変化しながら蒸発器12と凝縮器14との間を循環し、蒸発器12から凝縮器14へ熱が輸送される。これにより、冷却対象である組電池5は冷却される。冷却装置1は、圧縮機などによる作動流体の循環に要する駆動力が無くても、作動流体回路10の内部を作動流体が自然循環する構成となっている。このため、冷却装置1は、電力消費量及び騒音の双方を抑えた効率の良い組電池5の冷却を実現することができる。
【0032】
次に、蒸発器12の構造について説明する。図1に示すように、蒸発器12は、流体蒸発部40と、流体蒸発部40の下端に連通された液供給部42と、流体蒸発部40の上端に連通された流体流出部44とを備えている。流体流出部44は、液供給部42及び流体蒸発部40よりも上方に配置され、液供給部42は流体流出部44及び流体蒸発部40よりも下方に配置されている。
【0033】
流体蒸発部40は、流体蒸発部40と組電池5との間に介在する不図示の熱伝導材に接触することにより、組電池5に対し、熱伝導可能に連結されている。例えば、流体蒸発部40と組電池5との間の熱伝導性を高めるために、流体蒸発部40は、組電池5へ押し付けられた状態で保持されている。
【0034】
熱伝導材は、電気絶縁性と高い熱伝導性とを備えており、流体蒸発部40と組電池5との間の熱伝導性を高めるために、流体蒸発部40と組電池5とに挟まれている。熱伝導材としては、例えば、半固形のシート状物が採用される。なお、流体蒸発部40と組電池5との間の電気絶縁性と熱伝導性とが十分に確保されるのであれば、熱伝導材が設けられずに、流体蒸発部40は組電池5に直接接触していても差し支えない。
【0035】
図2は、実施形態1に係る蒸発器12の断面図である。図2に示すように、流体蒸発部40の内部には、車両上下方向A2に延びる複数の蒸発流路401が、電池セル配列方向A1に並列で形成されている。そして、流体蒸発部40は、複数の蒸発流路401内を流れる作動流体を組電池5の熱で蒸発させる。すなわち、各蒸発流路401内へ流入する液相の作動流体は、各蒸発流路401内を流れつつ、各蒸発流路401内で沸騰気化する。
【0036】
図3は、一対の金属板121A,121Bにプレス加工を施し、接合して一体に構成した蒸発器12の斜視図である。蒸発器12は、一対の金属板121A,121Bにプレス加工を施して、複数の蒸発流路401などの作動流体が流れる流路を形成し、接合して一体に構成したものである。すなわち、蒸発器12は、プレス加工が施された一対の金属板121A,121Bにおいて、それぞれの、周縁部分、及び、電池セル配列方向A1に沿って蒸発流路401に設けられ、各々が蒸発流路401を仕切る仕切り部材である複数の隔壁46の接合部46a(図2参照)が、互いに接合されることによって一体に構成されている。一対の金属板121A,121Bは、熱伝導性が高いアルミニウム合金などの金属製である。また、一対の金属板121A,121Bの接合は、例えば、ロウ付けなどによって実施される。なお、一対の金属板121A,121Bの接合方法としては、レーザー溶接などであってもよい。
【0037】
なお、蒸発器12の隔壁46は、一対の金属板121A,121Bのそれぞれにおいて、蒸発器12として構成した際に外側となる面から内側に向かって凸となるようにプレス加工を施して形成されている。金属板121Aに形成された隔壁46と、金属板121Bに形成された隔壁46とは、互いに対向しており、それぞれの頂部を接合部46aとして互いに接触または近接させた状態にて、互いの接合部46aが溶接などによって接合される。
【0038】
また、複数の蒸発流路401を電池セル配列方向A1にて仕切る仕切り壁部としては、プレス加工によって隔壁46を形成するものに限定されるものではない。例えば、一対の金属板121A,121Bの少なくとも一方において、蒸発器12として構成した際に内側となる面にて、電池セル配列方向A1に沿って蒸発流路401に設けられ、各々が蒸発流路401を仕切る複数のリブを前記仕切り壁部として備えてもよい。
【0039】
供給流路421には、複数の蒸発流路401の上流端がそれぞれ連通されている。したがって、液供給部42は、供給流路421内へ流入した液相の作動流体を複数の蒸発流路401の各々へ分配供給する。一方、流出流路441には、複数の蒸発流路401の下流端がそれぞれ連通されている。したがって、流出流路441には、複数の蒸発流路401の各々から作動流体が流入する。そして、流体流出口442は、流出流路441に流入した作動流体を第1ガス通路部16及び第2ガス通路部17へ流出させる。
【0040】
また、図1に示すように、液供給部42は電池セル配列方向A1に延びるように形成されているため、電池セル配列方向A1で一方側に一端部42aを有し、電池セル配列方向A1で他方側に他端部42bを有している。液供給部42の一端部42aには、液通路部18が連通された流体流入口422が設けられている。流体流入口422は、供給流路421と連通している。その一方で、液供給部42の他端部42bは、供給流路421のうち電池セル配列方向A1で他方側の端を形成し、その他方側の端を塞いでいる。
【0041】
流体流出部44は、電池セル配列方向A1に延びるように形成されているため、電池セル配列方向A1で一方側に一端部44aを有し、電池セル配列方向A1で他方側に他端部44bを有している。流体流出部44の他端部44bには、第1ガス通路部16及び第2ガス通路部17が連通された流体流出口442が設けられている。流体流出口442は、流出流路441と連通している。その一方で、流体流出部44の一端部44aは、流出流路441のうち電池セル配列方向A1で一方側の端を形成し、その一方側の端を塞いでいる。流体流出部44は、蒸発した気相の作動流体が液相の作動流体とともに吹き上げる気泡流の気液分離を行い、流出流路441は、分離された液相の作動流体を排出するための流路となっている。
【0042】
なお、流体蒸発部40は熱伝導材に接触しているが、液供給部42は、組電池5と熱伝導材とのいずれからも離れて配置されている。すなわち、液供給部42と、組電池5及び熱伝導材との間に介在する空気は、それらの間の伝熱を妨げる断熱部として機能する。そして、液供給部42は、液供給部42と組電池5及び熱伝導材との間に断熱部を介在させて配置されているため、組電池5に対し、熱的に接続していない。また、流体流出部44も組電池5と熱伝導材との両方から離れて配置されているため、組電池5に対し、熱的に接続していない。
【0043】
上述したように、蒸発器12の蒸発流路401と供給流路421と流出流路441とは相互に連通しているため、図2に示す一点鎖線矢印のように蒸発器12内を作動流体が流通する。
【0044】
具体的には、液通路部18からの液相の作動流体は、図2の矢印F1のように、液通路部18から流体流入口422を介して供給流路421へ流入する。その流入した液相の作動流体は、図2の矢印F2のように、供給流路421内では電池セル配列方向A1の一方側から他方側へ流れる。そして、液相の作動流体は、供給流路421から複数の蒸発流路401のそれぞれへ分配される。このとき、液供給部42は、組電池5の熱を受けにくいため、作動流体は液相のまま各蒸発流路401へ流入する。すなわち、凝縮器14から供給された液相の作動流体は、供給流路421を経由して、各電池セル51の下側近傍まで、沸騰せずに、且つ、気泡流になることなく、液相のまま供給される。
【0045】
図2に示すように、蒸発器12内にて流体蒸発部40に対応する領域には、電池セル配列方向A1に所定間隔をあけて複数の隔壁46が設けられている。複数の隔壁46は、それぞれ楕円形状を有しており、電池セル配列方向A1に対して傾斜した向きに延在している。具体的には、車両上下方向A2にて隔壁46の上側が下側よりも電池セル配列方向A1の一方側に位置するように、電池セル配列方向A1に対して隔壁46が傾斜している。すなわち、隔壁46は、流出流路441側が前記供給流路421側よりも電池セル配列方向A1の一方側に位置するように、電池セル配列方向A1に対して傾斜した向きに延在している。言い換えれば、車両上下方向A2の上から下に向かって、電池セル配列方向A1の一方側から他方側に延びるように、隔壁46が延在して設けられている。これにより、電池セル配列方向A1にて隣り合った隔壁46間に形成された蒸発流路401は、蒸発流路401の作動流体流れ方向の下流側ほど電池セル配列方向A1の一方側に位置するように、電池セル配列方向A1に対して傾斜している。
【0046】
なお、隔壁46は、電池セル配列方向A1に対して斜め方向に連続して延在しているが、途中に間隙が存在して断続的に延在していてもよい。また、隔壁46は、隣り合った蒸発流路401を隔てるだけではなく、蒸発流路401を流れる液相の作動流体の熱交換にも寄与している。
【0047】
蒸発流路401内では、図2の矢印F3のように、液相の作動流体が下方から上方へ、電池セル配列方向A1の他方側から一方側に向かって流れつつ、組電池5の熱によって気化させられる。すなわち、液相の作動流体は、蒸発流路401内を流れつつ、各電池セル51から熱を奪い蒸発して気相の作動流体になって、流出流路441へ流入する。
【0048】
流出流路441へ流入した気相の作動流体は、図2の矢印F4のように、流出流路441内にて電池セル配列方向A1の一方側から他方側へ流れる。流出流路441内で電池セル配列方向A1の他方側の端まで流れた気相の作動流体は、図2の矢印F5のように、流体流出口442から蒸発器12外に流出し、第1ガス通路部16や第2ガス通路部17に流入する。
【0049】
図4は、気相の作動流体の流れによって、液面100aから液滴Drが飛び出る際に、液滴Drに作用する力についての説明図である。蒸発器12の蒸発流路401内にて蒸発した気相の作動流体は、図4の矢印F3のように、隔壁46の壁面46bに沿って斜め上方、すなわち、電池セル配列方向A1の他方側から一方側であって、車両上下方向A2の下方から上方に向かって、蒸発流路401内を流れる。そして、蒸発流路401を抜けた液相の作動流体は、図4の矢印F4のように、流出路411を電池セル配列方向A1の他方側に向かって流れる。
【0050】
ここで、蒸発した気相の作動流体が、図4の矢印F3のように、隔壁46の壁面46bに沿って斜め上方に向かって蒸発流路401内を流れると、その気相の作動流体の流れによって、蒸発流路401内の液相の作動流体100の一部が液面100aから液滴Drとして飛び出ることがある。この際、液滴Drには、気相の作動流体の流れに伴って、隔壁46の壁面46bに沿った斜め上方の力Fが作用する。この力Fは、電池セル配列方向A1の成分と車両上下方向A2の成分、すなわち、水平方向成分Fhと鉛直成分Fvに分けることができる。また、液滴Drには、表面張力(液体間の分子間力)Fsと重力Gとが、車両上下方向A2の下方、すなわち、鉛直方向の下方に向かって作用する。そのため、気相の作動流体の流れによって、液面100aから液滴Drが飛び出すかどうかは、液滴Drに作用する表面張力Fs及び重力Gに対する、液滴Drに作用する力Fの鉛直成分Fvの大きさに依存すると考えられる。
【0051】
そこで、実施形態1に係る蒸発器12では、隔壁46の上側が電池セル配列方向A1の一方側に位置し、隔壁46の下側が電池セル配列方向A1の他方側に位置するように、隔壁46を車両上下方向A2(鉛直方向)に対して傾けて設けている。これにより、隔壁46が車両上下方向A2(鉛直方向)に対して平行に延在して設けられている場合よりも、液滴Drに作用する力Fの鉛直成分Fvの大きさを小さくすることができる。よって、液相の作動流体が、液滴Drとして液面100aから飛び出し難くすることができる。よって、気相の作動流体とともに液滴Drが、蒸発器12の流体流出口442から第1ガス通路部16に運ばれてしまうことを抑制することができる。
【0052】
図5は、液面100aから飛び出た液滴に作用する重力Gと浮力Buとを示した図である。液相の作動流体100の液面100aから飛び出た液滴Drは、液滴Drに作用する重力Gに対して、気相の作動流体から受ける浮力Buのほうが大きいと、気相の作動流体の流れに乗って持ち去られてしまう。そのため、液面100aから飛び出た複数の液滴Drを集めて大きくすることにより、重力Gによって液相の作動流体100への液滴Drの落下を促進させることが好ましい。
【0053】
なお、液滴Drを大きくすることによって、液滴Drを持ち去る側の力である浮力Buは、液滴Drの下方向からの成分のみの増加に対して、液滴Drを自重で落下させる側の力である重量は、液滴Drの全体積分に対して作用するため、液滴Drの体積が大きくなるほど、液滴Drが重力によって、落下し易くなる。
【0054】
図6は、液面100aから飛び出た液滴Drを、気相の作動流体から分離する手法の一例を示した図である。図6に破線で示した、液相の作動流体100の液面100aから飛び出た液滴Drは、図6の矢印F3のように、隔壁46に沿って斜め上方に向かう気相の作動流体の流れに乗って運ばれる。この際、蒸発流路401内では、気相の作動流体が、電池セル配列方向A1の一方側に向かって斜め上方に流れる。そして、蒸発流路401を抜けた気相の作動流体は、流れの向きを、図6の矢印F4のように、電池セル配列方向A1の他方側に切り替えて流出流路441を流れる。この際、気相の作動流体に流れに乗って運ばれている液滴Drは、慣性を有しているため、気相の作動流体の流れの急な向きの変更に追従できず、図6に実線で示した液滴Drのように、隔壁46の壁面46bに慣性衝突する。これにより、気相の作動流体から液滴Drが分離される。よって、気相の作動流体とともに液滴Drが、蒸発器12の流体流出口442から流出することを抑制し、第1ガス通路部16や第2ガス通路部17に運ばれてしまうことを抑制することができる。
【0055】
また、隔壁46の壁面46bにて慣性衝突した複数の液滴Drが集まり大きくなることによって、その大きくなった液滴Drの自重により、隔壁46の壁面46bから落下して、蒸発流路401内における液相の作動流体に液滴Drが回収される。
【0056】
なお、実施形態1に係る蒸発器12においては、複数の隔壁46の傾きがそれぞれ同じであるものに限らず、複数の隔壁46の傾きを異ならせても良い。例えば、電池セル配列方向A1の一方側(流体流入口422側)から電池セル配列方向A1の他方側(流体流出口442側)に向かうに連れて、電池セル配列方向A1に対して隔壁46が段々と起き上がるようにしてもよい。
【0057】
また、1つの隔壁46が電池セル配列方向A1にて占める範囲が、複数の電池セル51のうち、少なくとも1つの電池セル51の電池セル配列方向A1の幅以上となるように、電池セル配列方向A1に対して隔壁46を傾けるのが好ましい。
【0058】
また、実施形態1に係る蒸発器12では、図7に示すように、蒸発流路401を仕切る仕切り壁部として板状のリブ46Aを、上側が電池セル配列方向A1の一方側に位置し、下側が電池セル配列方向A1の他方側に位置するように、車両上下方向A2(鉛直方向)に対して傾けて設けてもよい。これにより、前記仕切り壁部が隔壁46である場合と同様に、気相の作動流体の流れによって、液相の作動流体100の液面100aから液滴Drを飛び出し難くすることができる。また、図7に破線で示すように、液相の作動流体100から液滴Drが飛び出したとしても、図7に実線で示すように、リブ46Aの車両上下方向A2の下側に面した壁面46Abに、気相の作動流体に流れに乗って運ばれている液滴Drを慣性衝突させて、気相の作動流体から液滴Drが分離させることができる。これにより、気相の作動流体とともに液滴Drが、蒸発器12の流体流出口442から流出することを抑制し、第1ガス通路部16や第2ガス通路部17に運ばれてしまうことを抑制することができる。
【0059】
(実施形態2)
以下に、本発明に係る冷却装置の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と共通する部分の説明は適宜省略する。
【0060】
図8は、実施形態2に係る蒸発器12の断面図である。実施形態2に係る蒸発器12では、実施形態1に係る蒸発器12内に設けられた楕円形状の隔壁46に対して、隔壁46の接合部46aの長手方向の端部461a,462aが中央部463aよりも太く形成されている。
【0061】
実施形態2に係る蒸発器12は、実施形態1に係る蒸発器12と同様に、車両上下方向A2にて隔壁46の上側が下側よりも電池セル配列方向A1の一方側に位置するように、電池セル配列方向A1に対して隔壁46が傾斜している。これにより、実施形態2に係る蒸発器12においても実施形態1に係る蒸発器12と同様に、気相の作動流体とともに液相の作動流体が液滴Drとして流体流出口442から蒸発器12外に流出し、第1ガス通路部16や第2ガス通路部17に運ばれてしまうことを抑制することができる。
【0062】
ここで、隔壁46の接合部46aには、内圧などによって応力が生じるが、その応力が集中するのは接合部46aの端部461a,462aのR部分であり、接合部46aの端部461a,462aにかかる応力が中央部463aにかかる応力よりも高い。そのため、実施形態2に係る蒸発器12では、接合部46aの端部461a,462aを中央部463aよりも太く形成することによって、接合部46aの端部461a,462aの接合強度を高めている。
【0063】
一方、接合部46aの中央部463aが端部461a,462aよりも細いため、接合部46aの中央部463aと端部461a,462aとが同じ太さの場合よりも、隣り合う隔壁46の間に形成された蒸発流路401の容積、ひいては、蒸発器12内の容積を大きくすることができ、より多くの作動流体を蒸発器12内に受け入れることが可能となる。さらには、接合部46aの中央部463aが端部461a,462aよりも細いことによって、蒸発流路401内における冷却面積を広げることが可能となる。よって、実施形態2に係る蒸発器12は、冷却性能を高めることが可能となる。
【0064】
(実施形態3)
以下に、本発明に係る冷却装置の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と共通する部分の説明は適宜省略する。
【0065】
図9は、実施形態3に係る蒸発器12の断面図である。実施形態3に係る冷却装置1では、蒸発器12内に設けた隔壁46の形状が、上下の端部461,462よりも中央部463が電池セル配列方向A1にて一方側に位置するように屈曲している。すなわち、隔壁46の下側の端部461から中央部463は、電池セル配列方向A1の一方側に向かって斜め上方に延在している。そして、隔壁46の中央部463から上側の端部462は、電池セル配列方向A1の他方側に向かって斜め上方に延在している。このように、実施形態3に係る蒸発器12では、隔壁46の少なくとも一部分である下半分(中央部463よりも車両上下方向A2にて下側の部分)が、流出流路441側が供給流路421側よりも電池セル配列方向A1の一方側に位置するように、電池セル配列方向A1に対して傾斜した向きに延在している。
【0066】
実施形態3に係る蒸発器12内では、図9の一点鎖線矢印及び破線矢印で示すように、電池セル配列方向A1の一方側であって車両上下方向A2の下方に位置する流体流入口422から、電池セル配列方向A1の他方側であって車両上下方向A2の上方に位置する流体流出口442に向かう、作動流体の大まかな流れが生じる。
【0067】
ここで、図9中の破線の位置に液相の作動流体の液面100aが位置する場合、蒸発器12の蒸発流路401内にて蒸発した気相の作動流体は、まず、図9の矢印F31のように、隔壁46の下半分の壁面に沿って斜め上方、すなわち、電池セル配列方向A1の一方側、且つ、車両上下方向A2の上方に向かって、蒸発流路401内を流れる。そして、気相の作動流体は、図9の矢印F32のように、隔壁46の上半分(中央部463よりも車両上下方向A2にて上側の部分)の壁面に沿って斜め上方、すなわち、電池セル配列方向A1の他方側、且つ、車両上下方向A2の上方に向かって、蒸発流路401内を流れる。このように、蒸発流路401内では、作動流体流れ方向の上流側から下流側へ、一旦、電池セル配列方向A1の他方側から一方側に向かって気相の作動流体が流れた後、その流れの向きを、電池セル配列方向A1の一方側から他方側に替えて気相の作動流体が流れる。
【0068】
実施形態3に係る蒸発器12では、蒸発した気相の作動流体が、蒸発流路401内において、図9の矢印F31のように、隔壁46の下半分に沿って斜め上方に流れることによって、液面100aから液滴Drを飛び出し難くすることができる。また、実施形態3に係る蒸発器12では、液面100aから液滴Drが飛び出したとしても、蒸発流路401内にて、図9の矢印F31から矢印F32のように、気相の作動流体の流れる向きが、電池セル配列方向A1にて一方側から他方側に変わることに伴って、隔壁46の下半分に液滴Drを慣性衝突させることができる。これにより、気相の作動流体から液滴Drを分離させることができる。よって、実施形態3に係る蒸発器12では、気相の作動流体とともに液滴Drが、蒸発器12の流体流出口442から流出することを抑制し、第1ガス通路部16や第2ガス通路部17に運ばれてしまうことを抑制することができる。
【0069】
図10は、実施形態3に係る蒸発器12の他例の断面図である。実施形態3に係る蒸発器12では、図10に示すように、隔壁46の上下の端部461,462よりも中央部463が電池セル配列方向A1にて他方側に位置するように、隔壁46を屈曲させて設けてもよい。すなわち、隔壁46の下側の端部461から中央部463は、電池セル配列方向A1の他方側に向かって斜め上方に延在させ、隔壁46の中央部463から上側の端部462は、電池セル配列方向A1の一方側に向かって斜め上方に延在させる。このように、図10に示した蒸発器12では、隔壁46の少なくとも一部分である上半分(中央部463よりも車両上下方向A2にて上側の部分)が、流出流路441側が供給流路421側よりも電池セル配列方向A1の一方側に位置するように、電池セル配列方向A1に対して傾斜した向きに延在している。
【0070】
ここで、図10中の破線の位置に液相の作動流体の液面100aが位置する場合、図10に示した蒸発器12の蒸発流路401内にて蒸発した気相の作動流体は、まず、図10の矢印F33のように、隔壁46の下半分(中央部463よりも車両上下方向A2にて下側の部分)に沿って斜め上方、すなわち、電池セル配列方向A1の他方側、且つ、車両上下方向A2の上方に向かって、蒸発流路401内を流れる。そして、気相の作動流体は、図10の矢印F34のように、隔壁46の上半分に沿って斜め上方、すなわち、電池セル配列方向A1の一方側、且つ、車両上下方向A2の上方に向かって、蒸発流路401内を流れる。
【0071】
図10に示した蒸発器12では、蒸発した気相の作動流体が、蒸発流路401内において、図10の矢印F34のように、隔壁46の上半分に沿って斜め上方に流れることにより、気相の作動流体の流れに乗って液滴Drを液面100aから飛び出し難くすることができる。また、実施形態3に係る蒸発器12では、液面100aから液滴Drが飛び出したとしても、図10の矢印F32から矢印F4のような、蒸発流路401から流出流路441に気相の作動流体が流入する際の流れの向きの電池セル配列方向A1にて一方側から他方側への変更に伴って、隔壁46の上半分に液滴Drを慣性衝突させることができる。これにより、気相の作動流体から液滴Drを分離させることができる。よって、図10に示した蒸発器12では、気相の作動流体とともに液滴Drが、蒸発器12の流体流出口442から流出することを抑制し、第1ガス通路部16や第2ガス通路部17に運ばれてしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 冷却装置
5 組電池
10 作動流体回路
12 蒸発器
14 凝縮器
16 第1ガス通路部
17 第2ガス通路部
18 液通路部
22 冷媒回路
24 圧縮機
26 空調用凝縮器
28 第1膨張弁
30 空調用蒸発器
32 第2膨張弁
34 開閉弁
36 冷媒側熱交換器
40 流体蒸発部
42 液供給部
42a 一端部
42b 他端部
44 流体流出部
44a 一端部
46 隔壁
46a 接合部
51 電池セル
100 液相の作動流体
100a 液面
121A,121B 金属板
401 蒸発流路
421 供給流路
422 流体流入口
441 流出流路
442 流体流出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10