(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/32 20060101AFI20231031BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20231031BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B65D51/32
B65D83/00 J
A45D34/04 515Z
(21)【出願番号】P 2020077079
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020034152
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088516(JP,A)
【文献】特開2001-247141(JP,A)
【文献】特開平11-349015(JP,A)
【文献】特開2011-020730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/32
B65D 83/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方を開放した口部の内側に内容液を収容する容器と、軸部の先端に塗布具を有し前記口部に装着される塗布具付きキャップとを備える塗布容器であって、
前記塗布具付きキャップは、
前記軸部と、該軸部に連結するとともに装着時において前記口部を取り囲む環状壁と、該環状壁の内周面に設けられ前記口部の外周面に設けた第一ねじ部に螺合する第二ねじ部と、該環状壁の外周面に設けられる突起部と、を有する軸部材と、
前記環状壁を取り囲む外周壁と、前記外周壁の内周面に設けられ前記突起部に係合する溝部と、を有する蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記口部に装着された前記軸部材と前記容器に対して、前記突起部が前記溝部の上部に位置して該蓋部材が該容器の底部に近づく格納位置と、該突起部が該溝部の下部に位置して該蓋部材が該底部から離れる伸張位置との間で移動可能であって、
前記溝部は、水平方向に延在
する終端部分を有し、
前記伸張位置で前記第一ねじ部と前記第二ねじ部との螺合が解除される向きに前記蓋部材を前記容器に対して相対的に回転させると、
前記終端部分の周方向端部が前記突起部
に当接して該蓋部材
の回転が前記軸部材
に伝達され、前記第一ねじ部と前記第二ねじ部との螺合が緩む塗布容器。
【請求項2】
前記溝部は、前記格納位置と前記伸張位置との間で、前記蓋部材を上下方向に直線状に移動させる直線状部分を有する請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記環状壁の外周面は多角形であって、前記外周壁の内周面は、該環状壁の外周面に対して相似であり且つ該環状壁の外周面との間に隙間を有する形状である、請求項2に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記終端部分に移動した前記突起部が前記直線状部分に戻るのを規制する第1規制部を有する請求項2又は3に記載の塗布容器。
【請求項5】
前記溝部は、水平方向に延在し、前記格納位置で前記第一ねじ部と前記第二ねじ部との螺合が解除される向きに前記蓋部材を前記容器に対して相対的に回転させると前記突起部が入り込み、該蓋部材の前記伸張位置への移動を阻止する始端部分を有する請求項2~4の何れか一項に記載の塗布容器。
【請求項6】
前記始端部分に移動した前記突起部が前記直線状部分に戻るのを規制する第2規制部を有する請求項5に記載の塗布容器。
【請求項7】
前記溝部は、前記格納位置と前記伸張位置との間で、前記蓋部材を回転させながら上下方向に移動させる螺旋状部分を有する請求項1に記載の塗布容器。
【請求項8】
前記容器は、前記格納位置において前記外周壁に取り囲まれる上部周壁と、該上部周壁よりも大径であって該格納位置で該外周壁に連なる下部周壁と、を備える請求項1~7の何れか一項に記載の塗布容器。
【請求項9】
前記溝部は、前記外周壁の内周面から外周面まで該外周壁を貫通するものであり、
前記塗布具付きキャップは、前記外周壁を取り囲むカバー部材を備える、請求項1~8の何れか一項に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を塗布するための塗布具を備える塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
リップグロスやマニキュア、マスカラ、アイライナー等の内容液を収容する容器として、例えば特許文献1に示されている如きブラシ状や筆状になる塗布具を備えた塗布容器が既知である。このような塗布容器は、軸部の先端に塗布具を有し、内容液を収容する容器に装着される塗布具付キャップを備えているため、内容液を塗布するにあたって塗布具を別異に用意する必要がなく、利便性に優れている。また塗布具付キャップを口部に装着することによって塗布具に内容液を付着させることができるため、塗布具付キャップを取り外して内容液をすぐに塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の塗布容器は比較的長さが長いものが多く、持ち運んで使用しようとしてもポーチに収容できなかったり、収容できた場合でも取り出す際にポーチに引っ掛かったりすることがあった。なお一部の塗布容器は、ポーチ等に収容できるように長さが比較的短くなっているものもある。しかしこの場合は、塗布具を取り付けている軸部の長さも短くなって、塗布具付キャップを持つ手と塗布具との距離が近づくため、例えばマスカラやアイライナーを塗布する際には、塗布具付キャップを持つ手が顔に当たることになり、使い勝手の点で難があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、容器全体の長さを短くすることができるため、特に持ち運んで使用する際に好適であって、また持ち手から塗布具までの距離がある程度離れていた方が塗布しやすい場合に使い勝手がよい塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上方を開放した口部の内側に内容液を収容する容器と、軸部の先端に塗布具を有し前記口部に装着される塗布具付きキャップとを備える塗布容器であって、前記塗布具付きキャップは、前記軸部と、該軸部に連結するとともに装着時において前記口部を取り囲む環状壁と、該環状壁の内周面に設けられ前記口部の外周面に設けた第一ねじ部に螺合する第二ねじ部と、該環状壁の外周面に設けられる突起部と、を有する軸部材と、前記環状壁を取り囲む外周壁と、前記外周壁の内周面に設けられ前記突起部に係合する溝部と、を有する蓋部材と、を備え、前記蓋部材は、前記口部に装着された前記軸部材と前記容器に対して、前記突起部が前記溝部の上部に位置して該蓋部材が該容器の底部に近づく格納位置と、該突起部が該溝部の下部に位置して該蓋部材が該底部から離れる伸張位置との間で移動可能であって、前記溝部は、水平方向に延在する終端部分を有し、前記伸張位置で前記第一ねじ部と前記第二ねじ部との螺合が解除される向きに前記蓋部材を前記容器に対して相対的に回転させると、前記終端部分の周方向端部が前記突起部に当接して該蓋部材の回転が前記軸部材に伝達され、前記第一ねじ部と前記第二ねじ部との螺合が緩む塗布容器である。
【0007】
前記溝部は、前記格納位置と前記伸張位置との間で、前記蓋部材を上下方向に直線状に移動させる直線状部分を有することが好ましい。
【0008】
前記環状壁の外周面は多角形であって、前記外周壁の内周面は、該環状壁の外周面に対して相似であり且つ該環状壁の外周面との間に隙間を有する形状であることが好ましい。
【0009】
前記終端部分に移動した前記突起部が前記直線状部分に戻るのを規制する第1規制部を有することが好ましい。
【0010】
前記溝部は、水平方向に延在し、前記格納位置で前記第一ねじ部と前記第二ねじ部との螺合が解除される向きに前記蓋部材を前記容器に対して相対的に回転させると前記突起部が入り込み、該蓋部材の前記伸張位置への移動を阻止する始端部分を有することが好ましい。
【0011】
前記始端部分に移動した前記突起部が前記直線状部分に戻るのを規制する第2規制部を有することが好ましい。
【0012】
前記溝部は、前記格納位置と前記伸張位置との間で、前記蓋部材を回転させながら上下方向に移動させる螺旋状部分を有することが好ましい。
【0013】
前記容器は、前記格納位置において前記外周壁に取り囲まれる上部周壁と、該上部周壁よりも大径であって該格納位置で該外周壁に連なる下部周壁と、を備えることが好ましい。
【0014】
前記溝部は、前記外周壁の内周面から外周面まで該外周壁を貫通するものであり、
前記塗布具付きキャップは、前記外周壁を取り囲むカバー部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗布容器によれば、蓋部材を格納位置へ移動させることによって蓋部材が容器の底部に近づくため、塗布容器の全長が短くなって持ち運びしやすくなる。また使用時においては、格納位置から伸張位置へ移動させた蓋部材を、更に第一ねじ部と第二ねじ部との螺合が解除される向きに回転させることによって、蓋部材とともに軸部材を容器から取り外すことができる。そしてこの状態おいては、突起部が溝部に対して上方から下方に移動している。換言すると、突起部及び軸部を備える軸部材が溝部を備える蓋部材に対して上方から下方に移動する結果、蓋部材から突出する軸部の長さが長くなる。従って、蓋部材から塗布具まで比較的離れていた方が内容液を塗布しやすい場合でも、良好に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る塗布容器の第一実施形態につき、蓋部材が格納位置に変位した状態での半断面図である。
【
図2】(a)は
図1に示した蓋部材の断面図であり、(b)は
図1に示した軸部材の側面図である。
【
図3】
図1に示す塗布容器につき、蓋部材が伸張位置に変位した状態での半断面図である。
【
図4】
図3に示した状態の後、蓋部材を回転させて塗布具付きキャップを容器から取り外した状態での半断面図である。
【
図5】本発明に係る塗布容器の第二実施形態につき、蓋部材が格納位置に変位した状態での半断面図である。
【
図6】(a)は
図5に示した蓋部材の側面図であり、(b)は
図5に示した軸部材の側面図である。
【
図7】
図5に示す塗布容器につき、蓋部材が伸張位置に変位した状態での半断面図である。
【
図8】
図7に示した状態の後、蓋部材を回転させて塗布具付きキャップを容器から取り外した状態での半断面図である。
【
図9】第一実施形態の塗布容器の変形例を示した図であって、(a)は蓋部材の断面図であり、(b)は(a)に示すA-Aに沿う断面図であり、(c)は(b)に示す状態から蓋部材を回転させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る塗布容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等において「上」方向、「下」方向とは、塗布容器を正立姿勢にした状態(
図1において、容器本体(符号1)が下方に位置し、蓋部材(符号5)が上方に位置する状態)での向きをいう。
【0018】
まず、
図1~
図4を参照しながら本発明に係る塗布容器の第一実施形態(塗布容器100)について説明する。本実施形態の塗布容器100は、本明細書等における「容器」を構成するものとして、容器本体1としごき部材2を備えている。また塗布容器100は、本明細書等における「塗布具付キャップ」を構成するものとして、軸部材3、塗布具4、及び蓋部材5を備えている。これらの部材は、何れも
図1に示すように軸線Oを中心とする形状で形作られている。また容器本体1、軸部材3、及び蓋部材5は比較的硬質の合成樹脂で形成されている。
【0019】
容器本体1は、有底筒状をなすように形作られている。具体的には、円板状をなす底部1aと、底部1aの縁部から上方に向けて立ち上がる円筒状の周壁を備えている。周壁は上下方向において全て同径になるものでもよく、また
図1に示すように途中で外径が変わるものでもよい。本実施形態の周壁は、底部1aと同径になる下部周壁1bと、下部周壁1bよりも小径であって下部周壁1bの上端部に連結する上部周壁1cとで構成されている。また容器本体1は、上部周壁1cの上端部に連結し、上部周壁1cよりも小径になる口部1dと、口部1dの外周面に設けられた雄ねじ状の第一ねじ部1eを備えている。容器本体1の内側には、空間(収容空間S)が区画されていて、この収容空間Sには、例えばマスカラ、アイライナー等の内容液が収容される。
【0020】
しごき部材2は、例えばゴムやエラストマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の比較的軟質の部材によって形成されていて、弾性変形させることが可能である。本実施形態のしごき部材2は、水平方向に延在するフランジ部2aと、フランジ部2aの内縁部から下方に向けて延在するとともに下端部を縮径させた筒状部2bを備えている。しごき部材2は、口部1dの内側に挿入されて、フランジ部2aが口部1dの上端部に引っ掛かるようにして口部1dに嵌合保持される。
【0021】
軸部材3は、軸線Oに沿って延在する円柱状の軸部3aを備えている。軸部3aの下端部には、塗布具4を保持するための嵌合穴3bが設けられている。また軸部材3は、円板状をなす天壁3cと、口部1dを取り囲む環状壁3dを備えている。天壁3cは、軸部3aの上端部と環状壁3dの上端部につながるものであって、環状壁3dは、天壁3cを介して軸部3aと連結している。環状壁3dの内周面には、第一ねじ部1eに螺合する雌ねじ状の第二ねじ部3eが設けられていて、環状壁3dの外周面には、
図1の部分拡大図、及び
図2(b)に示すように、縦リブ状の突起部3fが設けられている。突起部3fは、軸線Oを挟んで対向する位置に一対設けられている。
【0022】
塗布具4は、内容液を塗布するための塗布部4aと、円柱状をなし、嵌合穴3bに挿入されて塗布具4を軸部材3に保持させる塗布具保持部4bを備えている。塗布部4aは、例えばブラシ状、スポンジ状、筆状に設けられるものであって、内容液の種類や内容液を塗布する部位に応じて最適なものが適宜選択される。
【0023】
蓋部材5は、有蓋筒状をなすように形作られている。具体的には、円板状をなす頂壁5aと、頂壁5aの外縁部から下方に向けて延在する円筒状の外周壁5bとを備えている。外周壁5bは、
図1に示すように、塗布容器100として組み立てて蓋部材5を格納位置に変位させた状態において、軸部材3の環状壁3dと容器本体1の上部周壁1cとを取り囲むものである。また外周壁5bは、下部周壁1bと外径が略同一になるものであって、蓋部材5を格納位置に変位させると下部周壁1bに連なる状態となる。なお、格納位置についての詳細な説明は後述する。
【0024】
外周壁5bの内周面には、溝部5cが設けられている。本実施形態の溝部5cは、
図2(a)に示すように、頂壁5aの直下から下方に向けて直線状に延在する直線状部分5dと、直線状部分5dの下端部と連結して水平方向に延在する終端部分5eと、直線状部分5dの上端部と連結して水平方向に延在する始端部分5gで構成されている。なお終端部分5eと始端部分5gの高さ(上下方向長さ)は、
図2(b)に示した突起部3fの高さ(上下方向長さ)と略同一(又は終端部分5e、始端部分5gの方が若干長い)である。また、終端部分5eが水平方向に延在する向きは、第一ねじ部1eに対して螺合していた第二ねじ部3eが緩む向きであり、始端部分5gも同方向に延在する。そして蓋部材5の内周面における溝部5cの直下には、後述するように、軸部材3を蓋部材5に取り付ける際に利用される凹部5fが設けられている。溝部5cと凹部5fは、軸線Oを挟んで対向する位置に一対設けられている。
【0025】
以上の部材で構成される塗布容器100において、容器本体1としごき部材2は、
図1に示すようにフランジ部2aが口部1dの上端部に当接するまで筒状部2bを口部1dに挿入して、本明細書等における「容器」として組み立てられる。また軸部材3、塗布具4、及び蓋部材5は、軸部材3に塗布具4を取り付けるとともに、軸部材3を蓋部材5に取り付けることによって、本明細書等における「塗布具付キャップ」として組み立てられる。ここで、軸部材3を蓋部材5に取り付けるにあたっては、突起部3fが凹部5fに入り込むようにして軸部材3を蓋部材5に挿入し、更に、突起部3fが溝部5cに入り込むまで軸部材3を真っ直ぐに押圧する。溝部5cは、凹部5fの直上に位置しているため、このような手順で取り付けることによって、取り付け時における突起部3fと溝部5cとの位置ずれを防止することができる。
【0026】
このようにして組み立てられた塗布容器100は、
図1に示すように第一ねじ部1eと第二ねじ部3eを螺合させることによって収容空間Sが閉鎖される。この状態においては、容器本体1における口部1dの上端部と天壁3cとによってしごき部材2のフランジ部2aが挟持されているため、収容空間Sに収容した内容液の外部への漏れ出しや揮発を抑制することができる。またこの状態では、筒状部2bの下端部が軸部3aの外周面に弾性的に押し当たっているため、内容液の外部への漏れ出しや揮発を更に抑制することができる。
【0027】
またこの状態において軸部材3は、容器本体1の底部1aに蓋部材5が近づく格納位置に変位していて、塗布容器100の全長は短くなっている。このため、塗布容器100を持ち運ぶ際に嵩張ることがなく、好適に使用することができる。なお、
図1に示すように格納位置において、突起部3fは、溝部5cにおける直線状部分5dの上方に位置している。
【0028】
内容液を塗布するにあたっては、
図3に示すように、容器本体1に対して蓋部材5を真っ直ぐに引き上げて、蓋部材5が底部1aから離れる伸張位置に変位させる。この状態においては、突起部3fが直線状部分5dの内側を上方から下方に向けて移動する。そして、容器本体1に対して蓋部材5を、第一ねじ部1eと第二ねじ部3eとの螺合が解除される向きに回転させると、突起部3fは終端部分5eへ移動して終端部分5eの周方向端部に当接する。すなわち、蓋部材5とともに軸部材3もこの向きに回転するため、螺合していた第一ねじ部1eと第二ねじ部3eが緩んで、
図4に示すように、容器本体1から蓋部材5等を取り外すことができる。
【0029】
なお、容器本体1に蓋部材5を装着した状態において、軸部3aの外周面には内容液が付着していることがあるが、軸部3aの外周面には筒状部2bの下端部が当接しているため、蓋部材5の取り外しに伴って軸部3aが引き上げられる際、軸部3aに付着していた内容液を掻き落とすことができる。また、塗布具4がしごき部材2から引き抜かれる際は、塗布部4aが筒状部2bの下端部を通り抜けるため、塗布部4aの外周面に付着した余分な内容液を掻き落とすことができる。なお、容器本体1から取り外した後、塗布部4aに付着した内容液を更に掻き落としたい場合には、塗布部4aを筒状部2bの内周面や下端部に擦りつければよい。
【0030】
取り外した蓋部材5等において、突起部3fは、上述したように終端部分5eへ移動している。すなわち軸部材3は、蓋部材5に対して軸線Oに沿う向きに不動であって、塗布具4で内容液を塗布する際に蓋部材5から突出する軸部3aの長さが変わることがないため、軸部の長さが変わらない従来のものと同様の感覚で使用することができる。またこの状態において、蓋部材5から突出する軸部3aの長さは長くなっていて、蓋部材5から塗布具4までの距離が離れるため、例えばマスカラやアイライナーを塗布する際でも蓋部材5を持つ指が顔に当たりにくく、内容液を良好に塗布することができる。
【0031】
なお本実施形態の塗布容器100は、蓋部材5から突出する軸部3aの長さを短くした状態で内容物を塗布することも可能である。この場合は、
図1に示す状態で、第一ねじ部1eと第二ねじ部3eとの螺合が解除される向きに蓋部材5を回転させる。これにより、
図1に示す状態で溝部5cにおける直線状部分5dの上方に位置していた突起部3fは、始端部分5gへ移動して始端部分5gの周方向端部に当接する。その後は、蓋部材5とともに軸部材3もこの向きに回転するため、螺合していた第一ねじ部1eと第二ねじ部3eが緩んで、容器本体1から蓋部材5等を取り外すことができる。この状態においては、蓋部材5から突出する軸部3aの長さが
図1に示す如き短くなっており、また軸部材3は、蓋部材5に対して軸線Oに沿う向きに不動であって、塗布中に軸部3aの長さが変わることがない。従って、軸部3aの長さを短くした状態で好適に塗布作業を行うことができる。
【0032】
内容液の塗布が終了した後は、塗布具4をしごき部材2に挿入して蓋部材5を押し下げ、更に、第一ねじ部1eと第二ねじ部3eが螺合する向きに蓋部材5を回転させる。ここで、軸部材3の突起部3fは蓋部材5の溝部5cに係合しているため、軸部材3は蓋部材5とともにこの向きに回転し、第一ねじ部1eと第二ねじ部3eとを螺合させて、容器本体1に蓋部材5等を装着することができる。
【0033】
上述した塗布容器100は、
図9に示すように構成してもよい。ここで
図9(a)、(b)は、蓋部材5が格納位置に変位した状態を示していて、突起部3fは、溝部5cにおける直線状部分5dの上方に位置している。
図9に示した塗布容器100は、環状壁3dの外周面が多角形になるように形成し、外周壁5bの内周面は、環状壁3dの外周面に対して相似であり且つ環状壁3dの外周面との間に隙間sを有する形状となるように形成したものである。なお、
図9に示した環状壁3dの外周面は、横断面形状が辺の長さが全て等しい正16角形であり、外周壁5bの内周面は、環状壁3dの外周面よりも一回り大きい正16角形になるように形成されているが、本発明は、辺の長さが全て等しいものに限られず、また辺の数も図示したものに限られない。
【0034】
図9に示す塗布容器100によれば、
図9(a)、(b)に示すように、突起部3fが溝部5cにおける直線状部分5dの上方に位置している状態においては、環状壁3dの外周面と外周壁5bの内周面との間には隙間sがあるため、蓋部材5を格納位置と伸張位置との間でスムーズに移動させることができる。また蓋部材5を、格納位置又は伸張位置で、第一ねじ部1eと第二ねじ部3eとの螺合が解除される向きに回転させると、突起部3fが始端部分5gや終端部分5eに入り込んで軸部材3を回転させるため、
図4に示すように容器本体1から蓋部材5等を取り外することができる。ところで、環状壁3dの外周面と外周壁5bの内周面が円形である場合において、蓋部材5を格納位置と伸張位置の間でスムーズに移動させようとしてこれらの間に隙間sを設けると、蓋部材5に対して軸部材3がぐらついて使い勝手が損なわれるおそれがある。一方、
図9に示すように構成する場合において、
図9(c)に示すように、蓋部材5を矢印の向き(第一ねじ部1eと第二ねじ部3eとの螺合が解除される向き)に回転させると、図示したように環状壁3dの外周面における多角形の角部3gが、蓋部材5の内周面に当接する。従って、容器本体1から取り外した際、蓋部材5に対する軸部材3のぐらつきを防止することができる。
【0035】
また
図9に示すように、始端部分5gに移動した突起部3fが直線状部分5dに戻るのを規制する規制部(第2規制部5h)を設ける場合は、
図9(c)に示す状態を維持することができるため、軸部3aの長さを短くして内容液を塗布している最中に
図9(c)に示す状態から
図9(b)に示す状態に戻って軸部材3がぐらついてしまう不具合を防止することができる。なお本実施形態の第2規制部5hは、直線状部分5dと始端部分5gとの間において径方向内側に向けて突出するように設けられているが、突起部3fに径方向外側に向けて突出する凸部を設け、始端部分5gの内周面にこの凸部に係合する凹部を設ける等、種々の構成が適用可能である。
【0036】
図示は省略するが、第2規制部5hの如きものとして、終端部分5eに移動した突起部3fが直線状部分5dに戻るのを規制する規制部(第1規制部)を設けてもよい。このように第1規制部を設ける場合は、軸部3aの長さを長くして内容液を塗布している最中での蓋部材5に対する軸部材3のぐらつきを防止することができる。
【0037】
次に、
図5~
図8を参照しながら本発明に係る塗布容器の第二実施形態(塗布容器200)について説明する。なお、塗布容器200における「容器」の形状や機能は、基本的には上述した容器本体1としごき部材2と同一であるため、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
塗布容器200は、本明細書等における「塗布具付キャップ」と構成するものとして、先に説明した塗布具4の他、軸部材13、蓋部材15、カバー部材16を備えている。
【0039】
軸部材13は、先に説明した軸部3a、嵌合穴3b、天壁3c、環状壁3d、第二ねじ部3eと同様の構成になる軸部13a、嵌合穴13b、天壁13c、環状壁13d、第二ねじ部13eを備えている。そして環状壁13dの外周面には、
図5の部分拡大図、及び
図6(b)に示すように、円柱状の突起部13fが設けられている。突起部13fは、軸線Oを挟んで対向する位置に一対設けられている。
【0040】
蓋部材15は、先に説明した頂壁5a、外周壁5bと同様の構成になる頂壁15a、外周壁15bを備えている。頂壁15aの上面には、凸部15gが設けられている。
【0041】
外周壁15bの内周面には、溝部15cが設けられている。本実施形態の溝部15cは、外周壁15bの内周面から外周面まで外周壁15bを貫通するものである。また溝部15cは、
図6(a)に示すように、外周壁15bの上方に位置して水平方向に延在する始端部分15hと、始端部分15hに連結して螺旋状に延在する螺旋状部分15jと、外周壁15bの下方に位置して水平方向に延在し、螺旋状部分15jに連結する終端部分15kとで構成されている。なお、上方から下方に向かって螺旋状部分15jが捩れる向きは、第一ねじ部1eに対して螺合していた第二ねじ部13eが緩む向きである。溝部15cは、軸線Oを挟んで対向する位置に一対設けられている。
【0042】
カバー部材16は、有蓋筒状をなすように形作られている。具体的には、円板状をなすカバー頂壁16aと、カバー頂壁16aの外縁部から下方に向けて延在する円筒状のカバー外周壁16bとを備えている。カバー外周壁16bは、
図5に示すように容器本体1の下部周壁1bと外径が略同一になるものであって、蓋部材15を格納位置に変位させると下部周壁1bに連なる状態となる。本実施形態のカバー部材16は、装飾性等を考慮して金属で形成されている。なおカバー部材16は金属製のものに限られず、合成樹脂で形成してもよい。
【0043】
このような塗布具4、軸部材13、蓋部材15、カバー部材16は、塗布具4を軸部材13に取り付け、突起部13fを溝部15cに挿入するようにして軸部材13を蓋部材15に取り付け、カバー部材16を蓋部材15に被せることによって、本明細書等における「塗布具付キャップ」として組み立てられる。本実施形態におけるカバー部材16は、蓋部材15の頂壁5aとカバー頂壁16aとの間に塗布された接着剤によって固定されている。ここで頂壁5aには、凸部15gが設けられているため、頂壁5aとカバー頂壁16aとの間には隙間(空間)が設けられている。すなわち、カバー部材16を蓋部材15に被せた際、塗布された接着剤をこの空間に留めて、外周壁15bやカバー外周壁16bの間(延いては溝部15cの内側)に接着剤が入り込むのを防止することができる。なおカバー部材16は、蓋部材15に嵌合保持されるように構成してもよい。また溝部15cは、外周壁15bを貫通しているが、外周壁15bはカバー部材16のカバー外周壁16bで覆われて外側から視認されることがないため、見栄えが損なわれることはない。
【0044】
このようにして組み立てられた塗布容器200は、
図5に示すように第一ねじ部1eと第二ねじ部13eを螺合させることよって収容空間Sが閉鎖される。この状態において軸部材13は、容器本体1の底部1aに蓋部材15が近づく格納位置に変位していて、塗布容器200の全長は短くなっているため、塗布容器200を持ち運ぶ際に嵩張ることがない。なお、
図5に示すように格納位置において、突起部13fは、溝部15cにおける始端部分15hに位置しているため、蓋部材15が伸張位置へ不用意に移動してしまうことがない。
【0045】
内容液を塗布するにあたっては、
図7に示すように、容器本体1に対してカバー部材16を、第一ねじ部1eと第二ねじ部13eとの螺合が解除される向きに回転させて、蓋部材15が底部1aから離れる伸張位置に変位させる。この状態においては、突起部13fが始端部分15hから螺旋状部分15jへ移動し、螺旋状部分15jに沿って上方から下方に向けて回転しながら移動して、更に終端部分15kへ移動して、終端部分15kの周方向端部に当接する。この状態でカバー部材16の回転を継続すると、カバー部材16及び蓋部材15とともに軸部材13もこの向きに回転するため、螺合していた第一ねじ部1eと第二ねじ部13eが緩んで、
図8に示すように、容器本体1から蓋部材15等を取り外すことができる。
【0046】
取り外した蓋部材15等において、突起部13fは、上述したように終端部分15kへ移動している。すなわち軸部材13は、蓋部材15に対して軸線Oに沿う向きに不動であって、先に説明した実施形態と同様に、塗布具4で内容液を塗布する際に蓋部材15から突出する軸部13aの長さが変わることがない。また、蓋部材15から突出する軸部13aの長さは長くなっているため、マスカラやアイライナーを塗布する際でもカバー部材16を持つ指が顔に当たりにくく、内容液を良好に塗布することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0048】
例えば、
図4に示したカバー部材16を
図1に示した蓋部材5に取り付ける等、上述した塗布容器100と塗布容器200の構成を相互に入れ替えてもよい。また、各部材を適宜一体化して部材数を減らしてもよいし、1つの部材を複数の部材で構成するようにしてもよい。
【0049】
また、
図9に示した第2規制部5hや不図示の第1規制部を、
図1に示す実施形態や
図5に示す実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:容器本体
1a:底部
1b:下部周壁
1c:上部周壁
1d:口部
1e:第一ねじ部
2:しごき部材
2a:フランジ部
2b:筒状部
3:軸部材
3a:軸部
3b:嵌合穴
3c:天壁
3d:環状壁
3e:第二ねじ部
3f:突起部
3g:角部
4:塗布具
4a:塗布部
4b:塗布具保持部
5:蓋部材
5a:頂壁
5b:外周壁
5c:溝部
5d:直線状部分
5e:終端部分
5f:凹部
5g:始端部分
5h:第2規制部
13:軸部材
13a:軸部
13b:嵌合穴
13c:天壁
13d:環状壁
13e:第二ねじ部
13f:突起部
15:蓋部材
15a:頂壁
15b:外周壁
15c:溝部
15g:凸部
15h:始端部分
15j:螺旋状部分
15k:終端部分
16:カバー部材
16a:カバー頂壁
16b:カバー外周壁
100:塗布容器
200:塗布容器
O:軸線
S:収容空間