(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20231031BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20231031BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20231031BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20231031BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20231031BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20231031BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20231031BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20231031BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231031BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231031BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20231031BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20231031BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/26 900
B60W20/12
B60W20/13
B60L7/14
B60L15/20 J
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/15
F01N3/025 101
(21)【出願番号】P 2020115560
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】北風 博久
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-333305(JP,A)
【文献】特開2020-69950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/26
B60W 20/12
B60W 20/13
B60L 7/14
B60L 15/20
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/13
B60L 58/15
F01N 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と内燃機関とを動力源として走行するハイブリッド車両の車両制御装置であって、
前記内燃機関から排出される排気ガスの中の粒子状物質を捕捉するフィルタの再生を行うフィルタ再生部と、
前記ハイブリッド車両の位置を測位する測位部と、
前記ハイブリッド車両が走行する道路に関する地図情報が記録された地図データベースと、
前記測位部により測位された前記ハイブリッド車両の位置と、前記地図データベースに記録された前記地図情報とに基づいて、前記フィルタ再生部が前記フィルタの再生を行うときに前記ハイブリッド車両が走行する道路上の位置を予測するフィルタ再生予測部と、
前記測位部により測位された前記ハイブリッド車両の位置と、前記地図データベースに記録された前記地図情報とに基づいて、前記ハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量を予測する充電量予測部と、
前記フィルタ再生予測部による予測と、前記充電量予測部による予測とに基づいて、前記電動機によって回生ブレーキによる制動力を前記ハイブリッド車両に付与しつつ行われる前記バッテリへの充電と、前記バッテリに充電された電力によって前記電動機による推進力を前記ハイブリッド車両に付与しつつ行われる前記バッテリからの放電とを制御する充放電制御部と、を備え、
前記フィルタ再生予測部により前記ハイブリッド車両が下り勾配を走行する前に前記フィルタ再生部が前記フィルタの再生を行うことが予測され、且つ前記充電量予測部により前記ハイブリッド車両が前記下り勾配を走行しているときに前記回生ブレーキによる制動力を前記ハイブリッド車両に付与しつつ行われる前記バッテリへの充電により前記バッテリの前記充電量が満充電となることが予測されるときは、
前記充放電制御部は、前記ハイブリッド車両が前記下り勾配を走行しているときに前記バッテリの前記充電量が満充電とならないように、前記フィルタ再生部が前記フィルタの再生を行う前に、前記バッテリに充電された電力によって前記電動機による推進力を前記ハイブリッド車両に付与しつつ行われる前記バッテリからの放電を制御する、ハイブリッド車両の車両制御装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド車両の車速を制御する車速制御部をさらに備え、
前記車速制御部は、前記フィルタ再生部が前記フィルタの再生を行うとき、前記充放電制御部が前記電動機によって回生ブレーキによる制動力を前記ハイブリッド車両に付与しつつ行われる前記バッテリへの充電を制御するとき及び前記充放電制御部が前記バッテリに充電された電力によって前記電動機による推進力を前記ハイブリッド車両に付与しつつ行われる前記バッテリからの放電を制御するときに亘って、前記ハイブリッド車両の車速が一定になるように制御する、請求項1に記載のハイブリット車両の車両制御装置。
【請求項3】
前記ハイブリッド車両の重量を検出する重量検出部をさらに備え、
前記フィルタ再生予測部は、前記測位部により測位された前記ハイブリッド車両の位置と、前記地図データベースに記録された前記地図情報と、前記重量検出部により検出された前記ハイブリッド車両の重量とに基づいて、前記フィルタ再生部が前記フィルタの再生を行うときに前記ハイブリッド車両が走行する道路上の位置を予測し、
充電量予測部は、前記測位部により測位された前記ハイブリッド車両の位置と、前記地図データベースに記録された前記地図情報と、前記重量検出部により検出された前記ハイブリッド車両の重量とに基づいて、前記ハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量を予測する、請求項1又は2に記載のハイブリット車両の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機と内燃機関とを動力源として走行するハイブリッド車両に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、内燃機関から排出される排気ガスの中の粒子状物質を捕捉するフィルタの再生を行うときに、バッテリの過充電を防ぐために、フィルタの再生の前にバッテリの充電量を所定値以下に低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような排気ガスのフィルタの再生が行われるハイブリッド車両に関する技術では、ハイブリッド車両が下り勾配を走行しているときに、電動機によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつバッテリへの充電が行われると、下り勾配の途中でバッテリの充電量が満充電となり、本体は回収可能であった回生エネルギーを回収できないことがある。
そこで本発明は、排気ガスのフィルタの再生が行われるハイブリッド車両において回収できない回生エネルギーを低減できるハイブリッド車両の車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電動機と内燃機関とを動力源として走行するハイブリッド車両の車両制御装置であって、内燃機関から排出される排気ガスの中の粒子状物質を捕捉するフィルタの再生を行うフィルタ再生部と、ハイブリッド車両の位置を測位する測位部と、ハイブリッド車両が走行する道路に関する地図情報が記録された地図データベースと、測位部により測位されたハイブリッド車両の位置と、地図データベースに記録された地図情報とに基づいて、フィルタ再生部がフィルタの再生を行うときにハイブリッド車両が走行する道路上の位置を予測するフィルタ再生予測部と、測位部により測位されたハイブリッド車両の位置と、地図データベースに記録された地図情報とに基づいて、ハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量を予測する充電量予測部と、フィルタ再生予測部による予測と、充電量予測部による予測とに基づいて、電動機によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリへの充電と、バッテリに充電された電力によって電動機による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリからの放電とを制御する充放電制御部とを備え、フィルタ再生予測部によりハイブリッド車両が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部がフィルタの再生を行うことが予測され、且つ充電量予測部によりハイブリッド車両が下り勾配を走行しているときに回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリへの充電によりバッテリの充電量が満充電となることが予測されるときは、充放電制御部は、ハイブリッド車両が下り勾配を走行しているときにバッテリの充電量が満充電とならないように、フィルタ再生部がフィルタの再生を行う前に、バッテリに充電された電力によって電動機による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリからの放電を制御するハイブリッド車両の車両制御装置である。
【0006】
この構成によれば、電動機と内燃機関とを動力源として走行するハイブリッド車両の車両制御装置において、内燃機関から排出される排気ガスの中の粒子状物質を捕捉するフィルタの再生を行うフィルタ再生部を備える。測位部により測位されたハイブリッド車両の位置と、地図データベースに記録された地図情報とに基づいて、フィルタ再生予測部により、フィルタ再生部がフィルタの再生を行うときにハイブリッド車両が走行する道路上の位置が予測され、充電量予測部により、ハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量が予測される。
【0007】
フィルタ再生予測部による予測と、充電量予測部による予測とに基づいて、充放電制御部により、電動機によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリへの充電と、バッテリに充電された電力によって電動機による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリからの放電とが制御される。
【0008】
フィルタ再生予測部によりハイブリッド車両が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部がフィルタの再生を行うことが予測され、且つ充電量予測部によりハイブリッド車両が下り勾配を走行しているときに回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリへの充電によりバッテリの充電量が満充電となることが予測されるときは、充放電制御部により、ハイブリッド車両が下り勾配を走行しているときにバッテリの充電量が満充電とならないように、フィルタ再生部がフィルタの再生を行う前に、バッテリに充電された電力によって電動機による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリからの放電が制御されるため、排気ガスのフィルタの再生が行われるハイブリッド車両において回収できない回生エネルギーを低減できる。
【0009】
この場合、ハイブリッド車両の車速を制御する車速制御部をさらに備え、車速制御部は、フィルタ再生部がフィルタの再生を行うとき、充放電制御部が電動機によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリへの充電を制御するとき及び充放電制御部がバッテリに充電された電力によって電動機による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリからの放電を制御するときに亘って、ハイブリッド車両の車速が一定になるように制御することが好適である。
【0010】
この構成によれば、ハイブリッド車両の車速を制御する車速制御部により、フィルタ再生部がフィルタの再生を行うとき、充放電制御部が電動機によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリへの充電を制御するとき及び充放電制御部がバッテリに充電された電力によって電動機による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ行われるバッテリからの放電を制御するときに亘って、ハイブリッド車両の車速が一定になるように制御される。このため、一定の車速で走行することが要求される貨物自動車等への適用に適したものとなる。
【0011】
また、ハイブリッド車両の重量を検出する重量検出部をさらに備え、フィルタ再生予測部は、測位部により測位されたハイブリッド車両の位置と、地図データベースに記録された地図情報と、重量検出部により検出されたハイブリッド車両の重量とに基づいて、フィルタ再生部がフィルタの再生を行うときにハイブリッド車両が走行する道路上の位置を予測し、充電量予測部は、測位部により測位されたハイブリッド車両の位置と、地図データベースに記録された地図情報と、重量検出部により検出されたハイブリッド車両の重量とに基づいて、ハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量を予測することが好適である。
【0012】
この構成によれば、フィルタ再生予測部及び充電量予測部は、測位部により測位されたハイブリッド車両の位置及び地図データベースに記録された地図情報に加えて、重量検出部により検出されたハイブリッド車両の重量に基づいて、フィルタ再生部がフィルタの再生を行うときにハイブリッド車両が走行する道路上の位置及びハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量をそれぞれ予測するため、積載状態によって重量が変動し易い貨物自動車等の制御を精度良く行うことができ、一定の車速で走行することが要求される貨物自動車等への適用に適したものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハイブリッド車両の車両制御装置によれば、排気ガスのフィルタの再生が行われるハイブリッド車両において回収できない回生エネルギーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】(A)は標高の変化の例を示すグラフであり、(B)は(A)の状況における従来の狙いの充電量及び実際の充電量の変化を示すグラフであり、(C)は(A)の状況におけるフィルタ再生が作動している時間を示すグラフである。
【
図4】(A)は標高の変化の例を示すグラフであり、(B)は(A)の状況における実施形態の充電量及び従来の狙いの充電量の変化を示すグラフであり、(C)は(A)の状況におけるフィルタ再生が作動している時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る車両制御装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態の車両制御装置1は、電動機2と内燃機関3とを動力源として走行するハイブリッド車両100を制御する。ハイブリッド車両100は、電動機2と、内燃機関3と、内燃機関3とハイブリッド車両100の駆動輪5とを断接自在に接続可能なクラッチ4とを備える。ハイブリッド車両100は、駆動輪5を回転させる動力として電動機2と内燃機関3とを併用するパラレル式ハイブリッド型電気自動車であり、バス、トラック等の大型車両である。
【0016】
内燃機関3の出力軸にはクラッチ4の入力軸が連結されており、クラッチ4の出力軸には例えば永久磁石式同期電動機のように発電も可能な電動機2の出力軸を介して変速機6の入力軸が連結されている。また、変速機6の出力軸はプロペラシャフト7、差動装置8及び駆動軸9を介して左右の駆動輪5に接続されている。内燃機関3は、例えば、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等である。
【0017】
クラッチ4が接続されていないときには、電動機2の出力軸のみが変速機6を介して駆動輪5と機械的に接続される。ハイブリッド車両100が電動機2の動力により走行するときは、バッテリ10に充電された電力によって電動機2は駆動輪5を回転させて電動機2による推進力をハイブリッド車両に付与しつつ、ハイブリッド車両100のバッテリ10からの放電が行われる。ハイブリッド車両100に回生ブレーキによる制動力が付与されるときは、駆動輪5に接続された電動機2によって回生ブレーキによる制動力がハイブリッド車両100に付与されつつハイブリッド車両100のバッテリ10が充電される。
【0018】
クラッチ4が接続されているときには、内燃機関3の出力軸と電動機2の出力軸との両方が変速機6を介して駆動輪5と機械的に接続される。ハイブリッド車両100が内燃機関3の動力により走行するときは、内燃機関3は駆動輪5を回転させる。ハイブリッド車両100が内燃機関3の動力により走行するときには、電動機2が補助的な動力を付与できる。また、クラッチ4により内燃機関3と駆動輪5とが接続されたときに、内燃機関3への燃料供給を低下させることにより、ハイブリッド車両100にエンジンブレーキによる制動力が付与される。ハイブリッド車両100にエンジンブレーキによる制動力が付与されるときには、電動機2による回生ブレーキが補助的な制動力を付与できる。
【0019】
なお、クラッチ4に加えて、車両制御装置1は、電動機2とハイブリッド車両100の駆動輪5とを断接自在に接続可能なクラッチを別途備えていてもよい。また、回生ブレーキのときに電動機2が接続される駆動輪5と、エンジンブレーキのときに内燃機関3が接続される駆動輪5とは、同じ駆動輪でも互いに異なる駆動輪でもよい。
【0020】
車両制御装置1は、GNSS(GlobalNavigation Satellite System:全地球航法衛星システム)11、地図データベース12、車速センサ13、設定速度入力部14及びECU20を備える。GNSS11は、4個以上の測位衛星から信号を受信して、ハイブリッド車両100の位置を示す位置情報を取得する。位置情報には、例えば緯度及び経度が含まれる。GNSS11は、測定したハイブリッド車両100の位置情報をECU20へ出力する。なお、GNSS11に代えて、ハイブリッド車両100が存在する緯度及び経度が特定できる他の手段を用いてもよい。
【0021】
地図データベース12は、ハイブリッド車両100が走行する道路に関する情報を含む地図情報が記録されたデータベースである。地図データベース12は、例えば、ハイブリッド車両100に搭載されたHDD(Hard disk drive)内に形成されている。地図情報には、ハイブリッド車両100が到達する予定の到達予定地点及び到達予定地点にハイブリッド車両100が到達するまでにハイブリッド車両100が通過する通過地点の位置(緯度及び経度)、GNSS11により測位されたハイブリッド車両100の位置に対して到達予定地点及び通過地点に到達するまでにハイブリッド車両100が走行する距離、到達予定地点及び通過地点の標高、到達予定地点及び通過地点での道路の曲率、到達予定地点及び通過地点での道路の下り勾配及び上り勾配の大きさが記憶されている。曲率は、道路の曲率半径の逆数により示すことができる。下り勾配及び上り勾配の大きさは、道路の下り勾配及び上り勾配の角度又は道路の進行方向の距離に対して標高が下がる高さの割合により示すことができる。
【0022】
車速センサ13は、ハイブリッド車両100の車速を検出する。車速センサ13としては、例えば、ハイブリッド車両100の駆動輪5等の車輪又は駆動輪5と一体に回転する駆動軸9などに対して設けられ、車輪の回転速度を検出することによりハイブリッド車両100の車速を検出する車輪速センサが用いられる。
【0023】
設定速度入力部14は、ハイブリッド車両100の運転者による任意の設定速度を指定する入力を受け付けるスイッチである。設定速度入力部14は、具体的には、例えば、タッチパネル又はステアリングホイール等に設けられた物理スイッチである。なお、物理スイッチ及びタッチパネルは、入力が可能であれば、形状は限定しない。
【0024】
ECU20は、ハイブリッド車両100の動作を制御する。ECU20は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。ECU20は、フィルタ再生部21、測位部22、重量検出部23、フィルタ再生予測部24、充電量予測部25、充放電制御部26及び車速制御部27を有している。ECU20では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、上記のフィルタ再生部21等の各部の制御を実行する。ECU20は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0025】
フィルタ再生部21は、内燃機関3から排出される排気ガスの中の粒子状物質(PM:Particulatematter)を捕捉するフィルタ3fの再生を制御する。フィルタ3fでは、フィルタ3fの前段に酸化触媒を置くことで、排出ガス中の窒素酸化物(NOx)をより二酸化窒素(NO2)の多い状態にし、二酸化窒素の強力な酸化性能で粒子状物質を燃焼させる。フィルタ3fの再生を行う際には、フィルタ再生部21は、例えば、排気ガスに燃料を混ぜてフィルタ3fに送る。燃料がフィルタ3fの酸化触媒に反応して高温になることによって、フィルタ3fに補足された粒子状物質が燃焼させられ、フィルタ3fが再生される。
【0026】
測位部22は、ハイブリッド車両100の位置を測位する。測位部22は、GNSS11が取得した位置情報に基づいて、地図データベース12に記録された地図情報に係る地図でのハイブリッド車両100の位置を測位する。
【0027】
重量検出部23は、ハイブリッド車両100の重量を検出する。重量検出部23は、例えば、ハイブリッド車両100の車重を計測する不図示の重量検出センサに接続されている。重量検出部23は、当該重量検出センサにより、ハイブリッド車両100の重量を検出してもよい。また、重量検出部23は、ハイブリッド車両100の加速度を計測する不図示の加速度センサと、ハイブリッド車両100を走行させるための電動機2及び内燃機関3の出力を計測する不図示の出力センサとに接続されていてもよい。重量検出部23は、当該加速度センサにより計測されたハイブリッド車両100の加速度と、出力センサにより計測された電動機2及び内燃機関3の出力とに基づいてハイブリッド車両100の車重を推定してもよい。
【0028】
フィルタ再生予測部24は、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された地図情報と、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量とに基づいて、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うときにハイブリッド車両100が走行する道路上の位置を予測する。フィルタ再生予測部24は、ハイブリッド車両100の位置と地図情報に含まれた道路に関する情報とハイブリッド車両100の重量とに基づいて、ハイブリッド車両100の車速が設定速度で一定であると仮定した場合に、道路上の位置ごとに必要な内燃機関3のトルク及び回転数を予測する。フィルタ再生予測部24は、内燃機関3のトルク及び回転数に基づいて、道路上の位置ごとの内燃機関3の排気ガスに含まれる粒子状物質の量を予測する。フィルタ再生予測部24は、予測された道路上の位置ごとの粒子状物質の量に基づいて、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うときにハイブリッド車両100が走行する道路上の位置を予測できる。
【0029】
充電量予測部25は、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された地図情報と、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量とに基づいて、ハイブリッド車両100が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリ10の充電量を予測する。
【0030】
充放電制御部26は、フィルタ再生予測部24による予測と、充電量予測部25による予測とに基づいて、電動機2によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10への充電と、バッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電とを制御する。充放電制御部26は、インバータによる可変電圧可変周波数制御により、バッテリ10への充電とバッテリ10からの放電とを制御する。
【0031】
バッテリ10への充電が行われるときは、充放電制御部26は、インバータによる可変電圧可変周波数制御により各相にハイブリッド車両100が電動機2の動力により走行するときとは逆の電圧をかけるように制御する。バッテリ10への放電が行われるときは、充放電制御部26は、バッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電による電流値の任意の時間における分散値が閾値未満となるように制御する。
【0032】
後述するように、フィルタ再生予測部24によりハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うことが予測され、且つ充電量予測部25によりハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときに回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10への充電によりバッテリ10の充電量が満充電となることが予測されるときがある。
【0033】
この場合、充放電制御部26は、ハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときにバッテリ10の充電量が満充電とならないように、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行う前に、バッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電を制御する。
【0034】
車速制御部27は、ハイブリッド車両100の車速を制御する。車速制御部27は、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うとき、充放電制御部26が電動機2によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリへの充電を制御するとき及び充放電制御部26がバッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電を制御するときに亘って、ハイブリッド車両100の車速が設定速度入力部14に対して入力された設定速度で一定になるように制御する。
【0035】
車速制御部27は、車速センサ13により検出されたハイブリッド車両100の車速と、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された地図情報と、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量とに基づいて、充放電制御部26によるバッテリ10の充放電及びハイブリッド車両への制動力及び推進力の付与を制御することにより、ハイブリッド車両100の車速が設定速度入力部14に対して入力された設定速度で一定になるようにハイブリッド車両100の車速を制御する。
【0036】
車速制御部27は、内燃機関3の出力を制御することによっても、ハイブリッド車両100の車速が設定速度入力部14に対して入力された設定速度で一定になるようにハイブリッド車両100の車速を制御する。また、車速制御部27は、クラッチ4の動作を制御することにより内燃機関3のエンジンブレーキによる制動力を制御することによっても、ハイブリッド車両100の車速が設定速度入力部14に対して入力された設定速度で一定になるようにハイブリッド車両100の車速を制御する。また、車速制御部27は、不図示のブレーキアクチュエータを作動させることにより既存のハイブリッド車両100の機械的ブレーキによる制動力を制御することによっても、ハイブリッド車両100の車速が設定速度入力部14に対して入力された設定速度で一定になるようにハイブリッド車両100の車速を制御する。
【0037】
以下、本実施形態の車両制御装置1の動作について説明する。
図2に示されるように、車速制御部27は、ハイブリッド車両100の車速が設定速度入力部14に対して入力された設定速度で一定になるようにハイブリッド車両100の車速を制御する(S1)。以下の説明では、
図3(A)及び
図4(A)に示されるように、ハイブリッド車両100が、上り勾配から下り勾配を走行する状況を例に挙げて説明する。
図2に示されるように、測位部22により、ハイブリッド車両100の位置が測位される(S2)。重量検出部23により、ハイブリッド車両100の重量が検出される(S3)。
【0038】
フィルタ再生予測部24により、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された地図情報と、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量とに基づいて、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うときにハイブリッド車両100が走行する道路上の位置が予測される(S4)。充電量予測部25により、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された地図情報と、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量とに基づいて、ハイブリッド車両100が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリ10の充電量が予測される(S5)。
【0039】
図3(C)及び
図4(C)に示されるように、ハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行う場合がある。従来のバス、トラック等の大型車両のハイブリッド車両では、測位されたハイブリッド車両の位置と、データベースに記録された地図情報とに基づいて、ハイブリッド車両が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリの充電量が予測される。高速道路上の標高情報から下り勾配で回生ブレーキによる回生で回収可能なエネルギーが予測され、回生ブレーキの前にバッテリの充電量を低下させておくことで、回生ブレーキの際にバッテリが満充電となり、回生で回収可能なエネルギーが回収できなくなることを低減している。さらにバッテリの放電時には、勾配による走行負荷に応じて最も内燃機関の燃費が良くなるように放電電力の配分が計画される。
【0040】
しかしながら、
図3(C)及び
図4(C)に示されるように、フィルタの再生中は昇温性の妨げになるため、電動機のみで走行すること及び内燃機関の負荷を低減するために電動機の動力を補助として走行すること等のバッテリからの放電が禁止される無放電区間となる。このため、従来は、
図3(B)に破線のグラフで示されるように狙いの充電量では回生で回収可能なエネルギーがある場合においても、実際には
図3(B)に実線のグラフで示されるように、フィルタの生成による無放電区間のために回生の前にバッテリの充電量を低下させておくことができず、回生の際にバッテリが満充電となり、回生で回収可能なエネルギーが回収できず、損失が生じることがある。
【0041】
そこで、本実施形態では、
図2に示されるように、フィルタ再生予測部24により、ハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うか否かが予測される(S6)。フィルタ再生予測部24は、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された走行経路上の標高に関する情報を含む地図情報と、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量とから、内燃機関3への走行負荷による粒子状物質の量を予測し、フィルタ3fの再生が行われるまでの距離を推定する。
【0042】
フィルタ再生予測部24によりハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うと予測された場合は(S6)、充電量予測部25によりハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときに回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10への充電によりバッテリ10の充電量が満充電となるか否かが予測される(S7)。充電量予測部25は、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うと予測される前に計画された放電電力の配分によりバッテリ10の充電量を下り勾配で満充電とならない値まで下げられるか否かの判定を行う。
【0043】
ハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ3fの再生が行われることが予測され(S5)、且つハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときにバッテリ10の充電量が満充電となることが予測されるときは(S6)、充放電制御部26により、ハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときにバッテリ10の充電量が満充電とならないように、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行う前に、バッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電が制御される(S8)。
【0044】
つまり、
図4(B)に太字の矢印で示されるように、充放電制御部26は、バッテリ10の放電電力を増加させ、フィルタ3fの再生の前にバッテリ10の充電量を狙いの値まで低下させる。このような制御により、本実施形態では、フィルタ3fの再生を阻害せずに回生のエネルギーの損失を低減できる。車速制御部27は、バッテリ10の放電電力の増加に伴う電動機2の出力の増加に伴い、内燃機関3の出力を低下させ、ハイブリッド車両100の車速を設定速度で一定に保つ。
【0045】
なお、
図2に示されるように、ハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ3fの再生が行われることが予測されないとき(S5)、又はハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときにバッテリ10の充電量が満充電となることが予測されないときは(S6)、充放電制御部26により、バッテリ10が満充電とならず、バッテリ10からの放電の電流値が一定となるように充放電制御が行われる(S9)。
【0046】
本実施形態では、電動機2と内燃機関3とを動力源として走行するハイブリッド車両100の車両制御装置1において、内燃機関3から排出される排気ガスの中の粒子状物質を捕捉するフィルタ3fの再生を行うフィルタ再生部21を備える。測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置と、地図データベース12に記録された地図情報とに基づいて、フィルタ再生予測部24により、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うときにハイブリッド車両100が走行する道路上の位置が予測され、充電量予測部25により、ハイブリッド車両100が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリ10の充電量が予測される。
【0047】
フィルタ再生予測部24による予測と、充電量予測部25による予測とに基づいて、充放電制御部26により、電動機2によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10への充電と、バッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電とが制御される。
【0048】
フィルタ再生予測部24によりハイブリッド車両100が下り勾配を走行する前にフィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うことが予測され、且つ充電量予測部25によりハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときに回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10への充電によりバッテリ10の充電量が満充電となることが予測されるときは、充放電制御部26により、ハイブリッド車両100が下り勾配を走行しているときにバッテリ10の充電量が満充電とならないように、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行う前に、バッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電が制御されるため、排気ガスのフィルタ3fの再生が行われるハイブリッド車両100において回収できない回生エネルギーを低減できる。
【0049】
また、本実施形態では、ハイブリッド車両100の車速を制御する車速制御部27により、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うとき、充放電制御部26が電動機2によって回生ブレーキによる制動力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10への充電を制御するとき及び充放電制御部26がバッテリ10に充電された電力によって電動機2による推進力をハイブリッド車両100に付与しつつ行われるバッテリ10からの放電を制御するときに亘って、ハイブリッド車両100の車速が一定になるように制御される。このため、一定の車速で走行することが要求される貨物自動車等への適用に適したものとなる。
【0050】
また、本実施形態では、フィルタ再生予測部24及び充電量予測部25は、測位部22により測位されたハイブリッド車両100の位置及び地図データベース12に記録された地図情報に加えて、重量検出部23により検出されたハイブリッド車両100の重量に基づいて、フィルタ再生部21がフィルタ3fの再生を行うときにハイブリッド車両100が走行する道路上の位置及びハイブリッド車両100が走行する道路上の位置ごとにおけるバッテリ10の充電量をそれぞれ予測するため、積載状態によって重量が変動し易い貨物自動車等の制御を精度良く行うことができ、一定の車速で走行することが要求される貨物自動車等への適用に適したものとなる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、本実施形態では、駆動輪5を回転させる動力として電動機2と内燃機関3とを併用するハイブリッド型電気自動車であるハイブリッド車両100に本発明が適用される例を中心として説明した。しかし、駆動輪5を回転させる動力として電動機2と内燃機関3とを併用し、電動機2を回転させる電力を供給するバッテリ10が外部電源から充電可能なプラグインハイブリッド型電気自動車であるハイブリッド車両100に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…車両制御装置、2…電動機、3…内燃機関、3f…フィルタ、4…クラッチ、5…駆動輪、6…変速機、7…プロペラシャフト、8…差動装置、9…駆動軸、10…バッテリ、11…GNSS、12…地図データベース、13…車速センサ、14…設定速度入力部、20…ECU、21…フィルタ再生部、22…測位部、23…重量検出部、24…フィルタ再生予測部、25…充電量予測部、26…充放電制御部、27…車速制御部、100…ハイブリッド車両。