(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】リールシート
(51)【国際特許分類】
A01K 87/06 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
A01K87/06 B
(21)【出願番号】P 2020144053
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】金子 京市
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好尚
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 勝
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-110575(JP,U)
【文献】登録実用新案第3167060(JP,U)
【文献】特開2008-187916(JP,A)
【文献】米国特許第4334378(US,A)
【文献】登録実用新案第3102305(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部と、リール脚載置部の軸方向後方側に設けられた固定フードとを備え、前記リール脚載置部の軸方向前方側に移動フードが配設されたシート本体を有し、前記シート本体を竿杆に固定した際、前記リール脚載置部の位置が、竿杆の軸心位置に対して落ち込む方向にオフセットしているリールシートにおいて、
前記リール脚載置部に装着、固定される魚釣用リールの後方側に、固定フードの開口部を規定するフード部の上端位置から魚釣用リールの後方側で握持されるグリップ上面までを連結する傾斜面を備えており、
前記傾斜面は、側面視した際、前記フード部の上端位置からグリップ上面に向けて立ち上がる傾斜角度が45°を超えないように形成され、かつ、グリップ上面から下降する傾斜角度が35°を超えないように形成されて
おり、軸方向に直交する方向における表面の断面形状が、中央領域が窪んだ凹状部を有している、ことを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記傾斜面は、側面視した際、前記フード部の上端位置から立ち上がって上昇し、グリップ上面側に移行するに連れて傾斜が緩くなる湾曲面で形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部と、リール脚載置部の軸方向後方側に設けられた固定フードとを備え、前記リール脚載置部の軸方向前方側に移動フードが配設されたシート本体を有し、前記シート本体を竿杆に固定した際、前記リール脚載置部の位置が、竿杆の軸心位置に対して落ち込む方向にオフセットしているリールシートにおいて、
前記リール脚載置部に装着、固定される魚釣用リールの後方側に、固定フードの開口部を規定するフード部の上端位置から魚釣用リールの後方側で握持されるグリップ上面までを連結する傾斜面を備えており、
前記傾斜面は、軸方向に直交する方向における表面の断面形状が、中央領域が窪んだ凹状部を有している、
ことを特徴とするリールシート。
【請求項4】
前記シート本体の前記グリップ上面と反対側に、前記フード部の上端位置に対応する位置から湾曲しながらトリガーが突出形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項5】
前記シート本体には、前記グリップ上面と反対側に、軸方向に沿って径方向に膨出し、内部が空洞状の膨出部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項6】
前記シート本体は、硬質樹脂材又は繊維強化樹脂材によって一体形成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項7】
上記した請求項1から6のいずれか1項に記載のリールシートを固着したことを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーロッドや船竿等、各種の釣竿に取り付けられ、リールを装着、固定するのに用いられるリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リールを使用する釣竿には、リールを装着するためのリールシートが元竿杆に固定されており、このようなリールシートとして、元竿杆の外周面に固定される筒状のリールシートが知られている。一般的に筒状のリールシートは、その内部に元竿杆を貫通させることから、元竿杆によって強度を確保することができ、軽量の材料を用いたり、薄肉厚化する等、軽量化を図ることが可能となる。
【0003】
上記したようなリールシートに、側板が円形状に形成された丸形の両軸受けリールを装着すると、実釣時において、スプールに巻回された釣糸をサミングする位置が上方にシフトしてしまい、キャスティング時において掌が開きやすくなって操作性が低下してしまう。また、スプールをフリー回転状態に切り換えるクラッチレバーが側板の上面から突出するように配設されていると、クラッチ操作時に掌がより開き易くなってしまう。
特に、最近の元竿杆は、径が太く長くなる傾向にあるため、そのような大径の元竿杆に筒状のリールシートを固定すると、実釣時の操作時に掌が開き易い傾向となり、操作性が低下してしまう。また、グリップに対して重心が上方になり、リールに左右の力が加わると、グリップに対して強い回転力(トルク)が加わり、グリップを強い力で握る必要がある(リールの重心が低くなるとトルクが弱くなる)。
【0004】
そこで、特許文献1から3に開示されているように、リールシートのリール脚載置部の位置が、元竿杆の軸心に対して落ち込む方向にオフセットしたリールシート(オフセットリールシートとも称される)が知られている。このようなオフセットリールシートによれば、リール脚載置部が下方側にシフトした状態にあるため、丸形の両軸受けリールを装着した際、その後方側のグリップ部分を握持しても親指の操作位置が高くなることはなく、掌が開いて操作性が低下することが抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭49-122082号
【文献】実公昭49-46557号
【文献】実公昭50-24539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなオフセットリールシートによれば、キャスティング操作時にスプールをフリー回転状態にするクラッチレバーが側板の表面から突出するように配設された両軸受けリールであっても、クラッチ操作を容易に行なうことが可能である。しかしながら、最近の両軸受けリールは、クラッチレバーが、スプールの後方側で左右側板間に配設されて上下方向に押し下げ/押し上げ操作するものが多い。従来のオフセットリールシートは、装着されたリールの後方側(後壁部分)について十分な配慮がされておらず、上記のような左右側板間に配設されたクラッチレバーを有する両軸受けリールでは、実釣時のクラッチ切り換え操作性が悪く、一連の動作がスムーズに行なえないという問題がある。
【0007】
すなわち、リール脚を挿入するフード部(固定フード)から立ち上がる後壁部分について、傾斜角度が急であったり、リール本体との間の隙間が狭いと、クラッチレバーをスムーズに押し下げ操作することができず、更には、クラッチONするためにクラッチレバーを押し上げ操作する際、親指がクラッチ操作レバーの下面側に差し込み難い等の問題が生じる。特に、キャスティング用の両軸受けリールとして、小型ベイトリール等、ロープロファイル化したものを装着すると、クラッチ操作レバーの位置も下方側となり、より隙間が狭くなって、クラッチが切れない、或いは、クラッチレバーの押し上げ操作ができない等の問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、魚釣用リールと共に釣竿を握持、保持した際、一連の操作をスムーズに行なえるリールシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係るリールシートは、魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部と、リール脚載置部の軸方向後方側に設けられた固定フードとを備え、前記リール脚載置部の軸方向前方側に移動フードが配設されたシート本体を有し、前記シート本体を竿杆に固定した際、前記リール脚載置部の位置が、竿杆の軸心位置に対して落ち込む方向にオフセットしている構成において、前記リール脚載置部に装着、固定される魚釣用リールの後方側に、固定フードの開口部を規定するフード部の上端位置から魚釣用リールの後方側で握持されるグリップ上面までを連結する傾斜面を備えており、前記傾斜面は、側面視した際、前記フード部の上端位置からグリップ上面に向けて立ち上がる傾斜角度が45°を超えないように形成され、かつ、グリップ上面から下降する傾斜角度が35°を超えないように形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
上記したリールシートのシート本体は、リール脚載置部が、固定される竿杆の軸心に対して落ち込む方向にオフセットしているため、装着、固定された魚釣用リールの後方側のグリップ部分を握持した際、掌を大きく開くことなくクラッチレバーの操作等が行なえるようになる。この場合、リール脚載置部に装着、固定される魚釣用リールの後方側に設けられている前記傾斜面は、側面視した際、フード部の上端位置からグリップ上面に向けて立ち上がる傾斜角度が45°を超えていないため、傾斜角度が緩くなり、クラッチレバーの後方側の隙間を確保することができ、クラッチレバーの操作がし易くなる。特にグリップ上面から下降する傾斜角度が35°を超えないように形成されているので、上端側の傾斜が緩くなり、クラッチレバーの操作位置が低いロープロファイルの両軸受けリールを装着しても、クラッチレバーの操作を良好に行えるようになる。
【0011】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係るリールシートは、魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部と、リール脚載置部の軸方向後方側に設けられた固定フードとを備え、前記リール脚載置部の軸方向前方側に移動フードが配設されたシート本体を有し、前記シート本体を竿杆に固定した際、前記リール脚載置部の位置が、竿杆の軸心位置に対して落ち込む方向にオフセットしている構成において、前記リール脚載置部に装着、固定される魚釣用リールの後方側に、固定フードの開口部を規定するフード部の上端位置から魚釣用リールの後方側で握持されるグリップ上面までを連結する傾斜面を備えており、前記傾斜面は、軸方向に直交する方向における表面の断面形状が、中央領域が窪んだ凹状部を有している、ことを特徴とする。
【0012】
上記したリールシートのシート本体の傾斜面は、軸方向に直交する方向における表面の断面形状が、中央領域が窪んだ凹状部を有しているので、親指の腹部を安定して当接させることができ、そのまま前方に伸ばしてクラッチレバーの押し下げ操作、及び、押し上げ操作が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリールシートによれば、魚釣用リールと共に釣竿を握持、保持した際、一連の操作をスムーズに行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るリールシートにロープロファイル型の魚釣用リールを装着、固定した状態を示す図であり、リールシート部分の軸方向断面図。
【
図3】
図1に示すリールシートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は裏面図。
【
図4】(a)は
図1に示すリールシートのシート本体部分の軸方向断面図、(b)は傾斜面を軸方向と直交する方向から見た断面図。
【
図5】リールシートの使用状態を示す図であり、(a)は装着された魚釣用リールのクラッチON状態を示す図、(b)はクラッチOFFに切換操作する親指の状態を示す図、(c)はクラッチONに切換操作する親指の状態を示す図。
【
図6】リールシートの変形例を示す図であり、(a)はリールシートに丸形の魚釣用リールを装着、固定した状態を示す軸方向断面図、(b)は傾斜面を軸方向と直交する方向から見た断面図。
【
図7】リールシートの第2の変形例を示す図であり、(a)は軸方向断面図、(b)は平面図、(c)は図(a)のA方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るリールシートの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1から
図4は、本発明に係るリールシートの一実施形態を示す図であり、
図1はロープロファイル型の魚釣用リールを装着、固定した状態を示す図、
図2は
図1に示すリールシートの分解斜視図、
図3(a)は平面図、
図3(b)は側面図、
図3(c)は裏面図、
図4(a)はシート本体部分の軸方向断面図、(b)は傾斜面を軸方向と直交する方向から見た断面図である。
【0016】
以下の説明において、軸方向(前後方向)及び上下方向は、
図1で示した方向を意味し、左右方向(サイド方向)は、
図1の紙面と直交する方向を意味する。すなわち、前方は釣竿の穂先側、後方は基端側を意味し、上方は、両軸受けリールを装着した際、元竿杆(竿杆)の軸心Xに対してリール側、下方は、その反対側を意味する。また、本発明は、上述したように、リール脚載置部の位置が、固定される元竿杆の軸心Xに対して落ち込む方向にオフセットしたリールシート(オフセットリールシート)を対象とするものである。落ち込む方向とは、
図1で示した下方向を意味しており、したがって、このようなリールシートのリール脚載置部に両軸受けリールを装着すると、リール脚の位置は、固定される元竿杆の軸心Xに対して下方側にシフトした状態となり、リール後方側のグリップ部を握持した際、掌を大きく開くことなく親指をリール本体に当接させることが可能となる。
【0017】
本発明に係るリールシート1のシート本体1Aは、前方に、略円筒形状の円筒部2が突出形成された前方筒部4Aを備えており、後方に、握持、保持されるグリップ部(後方グリップ)50が固定されるようになっている。円筒部2の内面には、釣竿を構成する竿杆(元竿杆)100の基端側外周面が接着等によって固定され、前記グリップ部50は、シート本体1Aの後方側(後述する傾斜面が形成された筒状の後方筒部4B)に軸心X方向に沿って突出形成された筒状突部4aの外周面に固定されており、後方筒部4Bの表面と面一状になるように構成されている。この場合、後方筒部4Bもグリップ部50と共に握持、保持される部分であり、グリップとなる。
なお、リールシート1が固定される釣竿については、振出式、継合式、1本竿等、その構成については限定されることはなく、
図1では、釣竿の一部(元竿杆の後端側)が示され、全体構成については省略されている。また、前記リールシート1は、魚釣用リール200として、ロープロファイル型の両軸受けリール(以下、リールとも称する)を装着、固定した例が示されている。
【0018】
前記シート本体1Aは、魚釣用リール200のリール脚201を載置するリール脚載置部3と、リール脚載置部3の軸方向後方側に配設された固定フード8とを備えており、シート本体1Aの前方側にリール脚載置部3の軸方向前方側に移動フード9が配設されるようになっている。すなわち、リール脚載置部3にリール脚201を載置して、その後端側を固定フード8に嵌入した状態で、前端側を軸方向に移動する移動フード9で締め付けることで魚釣用リール200はリールシート1に装着、固定されるようになっている。
【0019】
前記シート本体1Aは、前方筒部4Aと後方筒部4Bを軸方向に亘って連結する中間連結部(ブリッジ部とも称する)5を備えており、これらは一体形成されている。前記ブリッジ部5は、上方側が開口すると共に、両サイドに凹所5aが形成された略半円筒状に形成されており、両サイドの凹所5aの間にリール脚載置部3が一体形成されている。この場合、リール脚載置部3は、軸方向に亘って形成されていても良いが、軽量化を図るように、リール脚201の前端側の裏面を支持する載置面3aと後端側を支持する載置面3bとなるように前後で分割し、中間部分は分断された構成にしても良い。
【0020】
前記ブリッジ部5の下方(前記グリップ部50の表面と反対側)には、軸方向に沿って径方向に膨出する膨出部5bが形成されている。この膨出部5bは、前記グリップ部50を握持した際、人差し指や中指の腹部が当て付けられる(握り込まれる)部分であり、指当たりが良好となるように、その表面を、軸方向に沿って湾曲形状(例えば、
図3、
図4に示すように、中央領域が下方に膨出する湾曲形状)にすることが好ましい。また、このような膨出部5bを形成する場合、軽量化が図れるように、内部は空洞状に形成しておくことが好ましい。
【0021】
なお、膨出部5bの内部を空洞状に形成する場合、強度を維持しながら薄肉厚化が図れるように、膨出部5bの内面に補強リブ5cを形成しておくことが好ましい。このような補強リブ5cは、
図3(a)に示すように、膨出部5bの内面に軸方向に沿って形成したり、サイド方向に沿って形成したり、或いは、これらを組み合わせる等、適宜変形することが可能である。また、補強リブの一部は、前記載置面3a,3bと一致するような高さに形成して、リール脚載置部としての機能を備えていても良い。
【0022】
前記シート本体1Aのブリッジ部5の両サイドの凹所5aを規定する上縁部5a´は、
図3(b)に示すように、中間部分が最も窪んで水平状に延出しており、前方及び後方に移行するに連れて上方に傾斜し、前方側はシート本体を構成する前方筒部4Aと連結し、後方側はシート本体を構成する後方筒部4Bと連結している。前方筒部4Aの前方側には、筒部4Aよりも小径の前記円筒部2が前方側に向けて突出形成されている。また、後方筒部4Bの内部には、前記載置面3bが形成されており、この載置面3bの後方側に、リール脚201が嵌入される開口部8aを規定する固定フード8が形成されている。
【0023】
また、前記シート本体1Aは、リール脚載置部3(載置面3b)に装着、固定される魚釣用リール200の後方側に、固定フード8の開口部8aを規定するフード部8Aの上端位置P1から魚釣用リール200の後方側で握持されるグリップ部50の表面までを連結する傾斜面10を備えている。この傾斜面10は、シート本体1Aのリール脚載置部3をオフセットさせることでシート本体1Aに必然的に形成されるものであり、上記したように、後方筒部4Bに形成されている(傾斜面10は、後述するように、魚釣用リール200のクラッチ部材205の操作がし易い構成となっている)。
【0024】
前記シート本体1Aの前方側の円筒部2には、軸方向に移動される移動フード9が配設されるようになっている。本実施形態の移動フード9は、円筒部2の表面の一部を切り欠いた位置に配設される移動部材9aによって構成されている。すなわち、円筒部2は、
図2に示すように、後方側の大径部2Aと前方側の小径部2Bとで構成されており、これらの大径部2Aと小径部2Bの下方領域には、軸方向に沿って所定の範囲、円弧状に切り欠かれた切欠部2cが形成されている。そして、この切欠部2cの大径部2A側に、軸方向に沿って円弧状に形成された移動部材9aが一体化するように配設されており、移動部材9aが切欠部2c内に位置することで、円筒形状の大径部2Aを構成している。
【0025】
移動部材9aの前方サイドの表面には、雄螺子部9bが形成されており、後方サイドには、リール脚201を受け入れるように、径方向内側に湾曲してリール脚を受ける開口部9cを規定したフード部9Aが形成されている。移動部材9aのフード部9Aは、前記ブリッジ部5の前方端面(前方筒部4Aの端面)の下方に形成された開口5A内に入り込むように配設されており、この開口5Aは、
図4(a)に示すように、前記リール脚載置部3(載置面3a)と繋がっている。すなわち、移動部材9aが後方側に移動すると、そのフード部9Aは、開口5A内において、載置面3aに載置されたリール脚201の前端部に嵌入するようになっている。
【0026】
前記移動部材9aの雄螺子部9bには、大径部2Aに外嵌されるナット部材12の内面に形成された雌螺子部12aが螺合している。すなわち、ナット部材12を一方向に回転操作することで、移動部材9aは軸方向後方側に移動してリール脚201の前端側を締め付け(リールの装着、固定状態)、ナット部材12を他方向に回転操作することで、移動部材9aは軸方向前方側に移動して、リール脚201の前端側を開放する(リールの取り外し状態)。なお、大径部2Aの前端側には、周方向に沿って円周溝2dが形成されており、この部分にリング状部材12bを装着することで、ナット部材12が前方側に抜けないように規制している。また、大径部2Aにナット部材12が外嵌されると、その表面は、
図1に示すように、前方筒部4Aの表面と面一状になり、段差を生じさせず握り易いように構成されている。
【0027】
前記小径部2Bには、円筒部材2eが接着され、円筒部材2e上にグリップ部(前方グリップ)51が固定されており、前記回転操作されるナット部材12の表面と面一状になるように配設されている。なお、円筒部材2eの内面側には、軸方向に沿って内側に突出し、前記小径部2Bの下方領域に形成された切欠部2cに嵌合する凸部2e´が形成されており、円筒部材2eは小径部2Bに対して回り止めされた状態で接着される。また、前記グリップ部51については設けない構成であっても良い。
【0028】
前記後方筒部4Bに形成される傾斜面10は、上記したように、固定フード8の開口部8aを規定するフード部8Aの上端位置P1から後方に向けて次第に上昇し、グリップ部50の表面までを連結している。本発明では、リール脚載置部3の軸心Xに対するオフセット量については限定されることはないが、オフセット量が多くなると、ロープロファイルの両軸受けリールを装着すると、側板間に配設されたクラッチレバーの位置も下がってしまい、傾斜面10との間で十分な隙間が確保されず、クラッチOFF/クラッチON操作がし難くなってしまう。
【0029】
このため、傾斜面10は、
図4に示すように、側面視した際、フード部8の上端位置P1からグリップ上面に向けて立ち上がる傾斜角度(軸心Xに対して上方に傾斜する傾斜角度)αが45°を超えないように形成されており、小型のリール200を装着しても、側板間に配設されるクラッチレバー205の操作が支障なく行えるようになっている。すなわち、フード部8の上端位置P1から立ち上がる傾斜面の傾斜角度を45°以下にすることで、クラッチレバー205と傾斜面10との間で十分な隙間、特に、クラッチをOFFからONにする際に、指をクラッチレバーの下面に押し付け易くなる程度の隙間が確保されるようにしている。実際に、傾斜面10の傾斜角度αが45°を超えてしまうと、傾斜面が急角度になり、特にオフセット量を多くすると、クラッチ操作がし難くなってしまう。また、傾斜角度45°は、水平状態と垂直状態の中間の角度であり、握持した際の感覚が把握し易く、この角度以上に立ち上がってしまうと、急角度と感じ易くなって違和感が生じる傾向になるが、45°以下に設定することで、そのような違和感を軽減することが可能となる。
【0030】
さらに、傾斜面10は、グリップ部50の上面(表面)から下降する傾斜角度(軸心Xに対して下方に傾斜する傾斜角度)βが35°を超えないように形成されている。ここでの傾斜角度βは、グリップ部50の上面で前方に向けて下降をし始める位置P2における下降する角度で定義され、35°を超えて急に落ち込ませないように構成される。
【0031】
このように、シート本体の傾斜面10について、フード部8の上端位置P1からグリップ上面に向けて立ち上がる傾斜角度αを45°以下とし、かつ、グリップ部50の上面(下降し始める位置P2)から下降する傾斜角度βを35°以下にすることで、傾斜面の下端側での隙間が確保されると共に、上端側での傾斜が緩くなり、リール(クラッチレバー205)との間で指が入り込む隙間を十分に確保することができるようになる。すなわち、グリップ上面に向けて立ち上がる傾斜角度αが一定(45°以下の一定)となっていれば、グリップ部50の上面からクラッチレバー205の下面に親指を差し込む際、下降角度が大き過ぎて違和感を生じさせるが、上記したように下降する傾斜角度βを35°以下にすることで、グリップ部50の上面に位置する親指、或いは、傾斜面の上部に位置する親指を、そのまま傾斜面に沿って移動させてスムーズにクラッチレバー205の下面に差し込み易くなる。これにより、釣竿のリールシート1部分を握持しながらクラッチレバー205をOFF操作し、仕掛け着水後にクラッチレバー205を親指で押し上げてON操作して巻取り操作する、等の一連の動作をスムーズに繰り返すことができ、親指を痛くするようなこともない。
【0032】
上記した構成において、前記傾斜面10は、側面視した際、立ち上げ角度と下降角度が異なる直線状の複合面で構成しても良いが、
図1及び
図4に示すように、フード部の上端位置P1から立ち上がって上昇し、グリップ上面側に移行するに連れて傾斜が緩くなる湾曲面で形成することが好ましい。
このように、傾斜面10を湾曲面で構成することで、長時間使用しても親指が痛くならず、キャスティング操作から巻取り操作までの一連の動作をスムーズに行なうことが可能となる。なお、上記した立ち上がる傾斜角度αが45°以下で、下降する傾斜角度βが35°以下となっていれば、その中間部分を膨出させる等、適宜変形することが可能である。
【0033】
また、傾斜面10については、立ち上がる傾斜角度αと下降する傾斜角度βが上記した条件を満たしていれば、両角度は等しい構成であっても良いし、α<βの関係で形成されていても良い。傾斜角度αを35°以下に形成することで、リールと傾斜面との間の隙間がより広くなり、クラッチ操作がより行い易くなる。
【0034】
また、傾斜面10の軸方向に直交する方向における表面の断面形状については、平坦状であっても良いし、湾曲面で構成されていても良い。本実施形態の傾斜面10の表面の断面形状については、
図4(b)に示すように、中央領域が窪んだ凹状部10aを有するように構成している。凹状部10aについては、傾斜面10の表面全体が湾曲する面(断面視で略同一の曲率で湾曲する面)で構成されており、このような凹状部10aによれば、
図5(a)~(c)に示すように、親指の腹部が傾斜面(凹状部10aの表面)に馴染み易くなり、クラッチ操作を安定して容易に行えるようになる。特に、クラッチをONからOFFに切り換える際、クラッチレバーを押し下げてそのまま親指を後方にシフトさせ、その指をそのまま前方にシフトさせることでクラッチレバーの下面に親指をスムーズに案内することができ、OFF状態からON操作も容易に行えるようになる。
【0035】
また、本実施形態のシート本体1Aには、前記グリップ上面と反対側に、前記フード部8Aの上端位置P1に対応する位置(P1の下方位置)から、次第に下方に湾曲しながらトリガー20が突出形成されている。このトリガー20の突出位置は、前記傾斜面10の軸方向の範囲内に形成されることから、トリガー20に指を掛けると、掌が開くことなく親指の動作を安定して行うことができ、上記したクラッチ操作を安定して行うことが可能となる。
【0036】
前記シート本体1A、及び、移動フード9やナット部材12は、軽量化が図れるように、硬質樹脂材又は繊維強化樹脂材によって一体形成することが好ましい。例えば、ナイロン、ABS等の硬質の合成樹脂材、或いは、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化繊維を混入したプラスチック複合材(FRP)によって一体形成することで、強度を維持しながら効果的に軽量化を図ることが可能となる。或いは、アルミ等の軽量な金属材によって形成しても良い。
【0037】
また、グリップ部50,51については、握持した際の感触、グリップ性や外観の向上、及び、軽量化が図れるような軟質材料、例えば、天然コルク、ウレタン、EVA、熱可塑性エラストマー、ゴム等で構成したり、これらの材料を被着することで形成することが可能である。
【0038】
図6は、リールシートの変形例を示す図であり、(a)はリールシートに丸形の魚釣用リールを装着、固定した状態を示す軸方向断面図、(b)は傾斜面を軸方向と直交する方向から見た断面図である。
この変形例では、リールシート1に側板の形状が丸型の魚釣用リール200Aを装着しており、傾斜面10Aについては、軸方向に直交する方向における表面の断面形状が
図6(b)に示すように、平坦状に形成されている。
【0039】
丸型の魚釣用リール200Aを装着した場合、そのクラッチレバー205の位置は、
図1で示したロープロファイルの魚釣用リールよりも上方側にシフトすることから、クラッチレバーの後方側の隙間がより広くなり、一連の操作がより容易に行えるようになる。また、傾斜面10Aの表面を平坦状にしても、親指が痛くなることはなく、一連の動作をスムーズに行うことが可能となる。
【0040】
図7は、リールシートの第2の変形例を示す図であり、(a)は軸方向断面図、(b)は平面図、(c)は図(a)のA方向断面図である。
この変形例の傾斜面10の凹状部10bは、傾斜面の中央領域を平面視で略楕円形状に窪ませており、中央領域が最も窪む湾曲面で構成されている。このように窪ませた凹状部10bによれば、リールのクラッチレバー205と傾斜面10との間で、指が入り込む隙間を更に大きくすることができるので、クラッチレバーの切換操作、特にOFFからONへの復帰操作をより容易に行なうことが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることは無く種々変形することが可能である。
【0042】
上記した構成において、シート本体1Aに形成される傾斜面10については、傾斜角度は任意であり、その表面形状については、湾曲したり、平坦面にしたり、これらの複合面にするなど、適宜変形することが可能である。また、傾斜面に形成される凹状部の表面形状についても、部分的に窪ませたり、平坦な窪みと湾曲した窪みを組み合わせた複合面で窪ませたり、部分的に膨出させる等、適宜変形することが可能である。また、移動フードの構成(軸方向への移動方法、位置止め構造など)については、種々変形することができ、移動フードを軸方向に移動させる手段は上記したナット部材12による方法に限定されることはない。
【0043】
また、シート本体1Aは、図に示した形状に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、指の腹部や掌と馴染みやすいように、部分的に湾曲面や傾斜面等によって膨出部や凹部(湾曲部)が形成されていたり、更には、肉抜き、切欠部、開口が形成される等、適宜変形することが可能である。このような肉抜き、切欠き、凹凸等については、グリップ性に影響を与えない部分に形成しておくことが好ましく、シート本体1Aの肉厚についても限定されることはない。
【符号の説明】
【0044】
1 リールシート
1A シート本体
3,3a、3b リール脚載置部
5 中間連結部(ブリッジ部)
8 固定フード
9 移動フード
10 傾斜面
10a,10b 凹状部
50,51 グリップ部
200,200A 魚釣用リール
205 クラッチレバー