(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
B60K 37/04 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B60K37/04
(21)【出願番号】P 2020156274
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒田 まりえ
(72)【発明者】
【氏名】田門 昌之
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128180(JP,A)
【文献】特開2014-046804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスと、
前記フロントガラスの下方に配置されているインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの上面から上方に向けて突出するように設けられており、前記インストルメントパネルに固定されている車載機器と、
前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器を車両後下方に退避させて前記衝突荷重を緩和するように構成されている緩衝機構と、
前記インストルメントパネルの上面に設けられており、前記車載機器の前面が車室内に露出するように前記車載機器をカバーするカバーパネルと、を備えており、
前記車載機器は、背面から車両前方に向けて突出する第1クリップを有しており、
前記カバーパネルは、前記第1クリップが嵌合する第1嵌合孔を有している、車両構造。
【請求項2】
前記緩衝機構は、前記第1嵌合孔の上壁を画定する部分の前記カバーパネルに前記第1嵌合孔から上方に向けて延びているスリットを有している、請求項
1に記載の車両構造。
【請求項3】
前記緩衝機構は、前記第1クリップの下方において前記第1クリップに対向するように配置されているブラケットを有している、請求項
1又は
2に記載の車両構造。
【請求項4】
前記緩衝機構は、前記車載機器の下方に配置されているガイド部材を有しており、
前記ガイド部材は、車両後下方に傾斜するとともに前記車載機器の底面に対向する傾斜面を有している、請求項
1~3のいずれか一項に記載の車両構造。
【請求項5】
前記カバーパネルは、前記車載機器よりも車両後方に向けて延びる側部パネル部分を有しており、
前記側部パネル部分は、車両前方側の一部で前記車載機器に固定されており、車両後方側の一部で前記インストルメントパネルに固定されており、
前記側部パネル部分は、車両後方側の底面から下方に向けて突出する第2クリップを有しており、
前記インストルメントパネルは、前記第2クリップが嵌合する第2嵌合孔を有しており、
前記第2嵌合孔は、前記第2クリップが嵌合された位置よりも車両後方に伸びている、請求項
1~4のいずれか一項に記載の車両構造。
【請求項6】
フロントガラスと、
前記フロントガラスの下方に配置されているインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルの上面から上方に向けて突出するように設けられており、前記インストルメントパネルに固定されている車載機器と、
前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器を車両後下方に退避させて前記衝突荷重を緩和するように構成されている緩衝機構と、
前記インストルメントパネルの上面に設けられており、前記車載機器の前面が車室内に露出するように前記車載機器をカバーするカバーパネルと、を備えており、
前記カバーパネルは、前記車載機器よりも車両後方に向けて延びる側部パネル部分を有しており、
前記側部パネル部分は、車両前方側の一部で前記車載機器に固定されており、車両後方側の一部で前記インストルメントパネルに固定されており、
前記側部パネル部分は、車両後方側の底面から下方に向けて突出するクリップを有しており、
前記インストルメントパネルは、前記クリップが嵌合する嵌合孔を有しており、
前記嵌合孔は、前記クリップが嵌合された位置よりも車両後方に伸びている、車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネルの上面から上方に向けて突出するように車載機器が設けられた車両構造が知られており、そのような車両構造の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が歩行者と接触する事故が発生すると、歩行者の頭部が車両のフロントガラスに衝突することがある。このとき、上記したような車両構造では、フロントガラスと車載機器が近接していることから、破損したフロントガラスを超えて頭部が車載機器に衝突することがある。頭部が車載機器に衝突すると、車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わる。歩行者の頭部を保護するためには、このような衝突荷重を緩和する技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両構造は、フロントガラスと、前記フロントガラスの下方に配置されているインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルの上面から上方に向けて突出するように設けられている車載機器と、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器を車両後下方に退避させて前記衝突荷重を緩和するように構成されている緩衝機構と、を備えることができる。
【0006】
上記した車両構造では、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記緩和機構が前記車載機器を車両後下方に退避させることができる。これにより、上記した車両構造では、前記車載機器に加わる前記衝突荷重が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】車両構造10の分解斜視図を模式的に示す図である。
【
図2】車幅方向に垂直な断面であり、インストルメントパネル30のクリップ36及び車載機器50のクリップ56を含む要部断面図を模式的に示す図である。さらに、図中A-A線に対応した要部断面図も合わせて示す。
【
図3】車幅方向に垂直な断面であり、車載機器50の底面固定プレート52に形成されている挿入孔53を含む要部断面図を模式的に示す図である。
【
図4】車幅方向に垂直な断面であり、側部パネル部分340の前側クリップ342及び後側クリップ344を含む要部断面図を模式的に示す図である。さらに、図中B-B線に対応した要部断面図も合わせて示す。
【
図5】車両構造10の変形例の一例であり、
図2に対応する要部断面図を模式的に示す図である。
【
図6】車両構造10の変形例の他の一例であり、
図2に対応する要部断面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する車両構造の一実施形態は、フロントガラスと、前記フロントガラスの下方に配置されているインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルの上面から上方に向けて突出するように設けられており、前記インストルメントパネルに固定されている車載機器と、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器を車両後下方に退避させて前記衝突荷重を緩和するように構成されている緩衝機構と、を備えることができる。前記車載機器は、前記インストルメントパネルに直接的に固定されていてもよく、他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。前記車載機器の種類は、特に限定されるものではないが、例えば各種の計測値(例えば、スピード、エンジン又はモータの回転数)をデジタル表示するディスプレイ、車室外又は車室内を撮影するカメラモジュールであってもよい。
【0009】
上記実施形態の車両構造は、カバーパネルをさらに備えていてもよい。前記カバーパネルは、前記インストルメントパネルの上面に設けられており、前記車載機器の前面が車室内に露出するように前記車載機器をカバーしていてもよい。前記カバーパネルは、前記インストルメントパネルと別体で構成されていてもよく、一体で構成されていてもよい。
【0010】
上記実施形態の車両構造では、前記車載機器は、背面から車両前方に向けて突出する第1クリップを有していてもよい。さらに、前記カバーパネルは、前記第1クリップが嵌合する第1嵌合孔を有していてもよい。この実施形態では、前記車載機器の第1クリップが前記カバーパネルの前記第1嵌合孔に挿入されることにより、前記車載機器が前記カバーパネルを介して前記インストルメントパネルに間接的に固定されている。
【0011】
上記実施形態の車両構造では、前記緩衝機構が、前記第1嵌合孔の上壁を画定する部分の前記カバーパネルに前記第1嵌合孔から上方に向けて延びているスリットを有していてもよい。この実施形態では、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記第1クリップが前記スリットを介して前記第1嵌合孔から外れることができる。これにより、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器が車両後下方に退避することができるので、前記車載機器に加わる前記衝突荷重が緩和される。
【0012】
上記実施形態の車両構造では、前記緩衝機構が、前記第1クリップの下方において前記第1クリップに対向するように配置されているブラケットを有していてもよい。この実施形態では、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記ブラケットが前記第1クリップに接触して前記第1クリップに対して上向きに荷重を加えることができる。このため、前記ブラケットは、前記第1クリップの破壊又は前記第1クリップが前記第1嵌合孔から外れることを促すことができる。これにより、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器は車両後下方に退避することができるので、前記車載機器に加わる前記衝突荷重が緩和される。特に、前記第1嵌合孔から上方に向けて延びる前記スリットが設けられている実施形態では、このようなブラケットが設けられていることにより、前記第1クリップが前記第1嵌合孔から外れることを効果的に促すことができる。
【0013】
上記実施形態の車両構造では、前記緩衝機構が、前記ディスプレイの下方に配置されているガイド部材を有していてもよい。前記ガイド部材は、車両後下方に傾斜するとともに前記車載機器の底面に対向する傾斜面を有していてもよい。この実施形態では、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器の底面が前記ガイド部材の前記傾斜面に接触することにより、前記車載機器が車幅方向を軸として回転することができる。これにより、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器が車両後方へ倒れるように退避することができるので、前記車載機器に加わる前記衝突荷重が緩和される。また、前記ガイド部材は、前記車載機器が車幅方向を軸として回転するように誘導し、前記第1クリップが前記第1嵌合孔から外れることを促すことができる。特に、前記第1嵌合孔から上方に向けて延びる前記スリットが設けられている実施形態では、このようなガイド部材が設けられていることにより、前記第1クリップが前記第1嵌合孔から外れることを効果的に促すことができる。
【0014】
上記実施形態の車両構造では、前記カバーパネルが、前記車載機器よりも車両後方に向けて延びる側部パネル部分を有していてもよい。前記側部パネル部分は、車両前方側の一部で前記車載機器に固定されていてもよく、車両後方側の一部で前記インストルメントパネルに固定されていてもよい。前記側部パネル部分は、車両後方側の底面から下方に向けて突出する第2クリップを有していてもよい。前記インストルメントパネルは、前記第2クリップが嵌合する第2嵌合孔を有していてもよい。前記第2嵌合孔は、前記第2クリップが嵌合された位置よりも車両後方に伸びていてもよい。なお、この実施形態では、前記第2嵌合孔自体が前記緩衝機構の一態様ということもできる。この実施形態では、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記第2嵌合孔が車両後方に伸びていることから、前記第2嵌合孔に挿入されている前記第2クリップが車両後方に移動することができる。このため、前記側部パネル部分が車両後方に移動することができる。したがって、前記車載機器は、前記側部パネル部分によって移動が規制されない。これにより、前記車載機器に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、前記車載機器は車両後下方に退避することができるので、前記車載機器に加わる前記衝突荷重が緩和される。
【実施例】
【0015】
以下、各図を参照し、車両の前側に設けられている車両構造10について説明する。
図1に示されるように、車両構造10は、インパネリインフォース20と、フロントガラスWSと、インストルメントパネル30と、カバーパネル40と、車載機器50と、を備えている。なお、
図1では、図示明瞭化を目的として各構成要素が簡略化して図示されており、例えばインストルメントパネル30に形成されている空調用空気の吹出口やセンターコンソール用の開口等の各種機構等は省略して図示されている。また、この例では、カバーパネル40がインストルメントパネル30とは別体で構成されているが、カバーパネル40がインストルメントパネル30と一体で構成されていてもよい。
【0016】
(インパネリインフォースメントについて)
図1に示されるように、インパネリインフォース20は、インストルメントパネル30の背後(インストルメントパネル30よりも車両前方側)に設けられており、インストルメントパネル30を支持している。インパネリインフォース20は、車幅方向に沿って伸びており、右端部が右フロントピラー(図示省略)に固定されており、左端部が左フロントピラー(図示省略)に固定されている。インパネリインフォース20には、ステアリングコラム(図示省略)及びステアリングホイール(図示省略)を支持するためのステアリングサポート22が取り付けられている。ステアリングサポート22の左右両端部の各々にはブラケットが固定されており、それらブラケットの各々には車載機器50を固定するための締結具が挿入される挿入孔24が形成されている。
【0017】
(インストルメントパネルについて)
図1に示されるように、インストルメントパネル30は、車室内の車両前方に設けられており、車幅方向に沿って延びている。インストルメントパネル30は、特に限定されないが、車室内に露出する面が2段で構成されており、インストルメントパネル30の上段部分を構成するインストルメントアッパーパネル部32と、インストルメントパネル30の下段部分を構成するインストルメントロアーパネル部34と、を有している。インストルメントアッパーパネル部32は、車両前方から車両後下方に向けて僅かに傾斜する略平面で構成されている。インストルメントロアーパネル部34は、車両前方から車両後方に向けて湾曲する曲面で構成されており、車両後方に向けて凸状である。インストルメントロアーパネル部34に形成されている開口部39は、ステアリングコラム(図示省略)が配置される部分である。なお、インストルメントアッパーパネル部32とインストルメントロアーパネル部34は、別体で構成されていてもよく、一体で構成されていてもよい。
【0018】
インストルメントパネル30は、カバーパネル40を固定するための一対のクリップ36を有している。一対のクリップ36は、インストルメントアッパーパネル部32とインストルメントロアーパネル部34の間を延びる壁部分に設けられている。インストルメントパネル30にはさらに、車載機器50を固定するための締結具が挿入される一対の挿入孔37及びカバーパネル40を固定するためのクリップが嵌合する一対の嵌合孔38が形成されている。
【0019】
(カバーパネルについて)
図1に示されるように、カバーパネル40は、車載機器50の前面が車室内に露出するように車載機器50を取り囲むように設けられたカバー部材である。車載機器50は、例えば各種の計測値(例えば、スピード、エンジン又はモータの回転数)をデジタル表示するディスプレイであり、車室内に露出する前面は画面部である。カバーパネル40は、ステアリングホイール(図示省略)の前方であってインストルメントパネル30の上面に固定されており、上部パネル部分140と、下部パネル部分240と、一対の側部パネル部分340と、を有している。
【0020】
上部パネル部分140は、車載機器50の上部の背面、上面及び側面に対向するように設けられており、車載機器50の上部を被覆している。上部パネル部分140は、後壁の底面に設けられた一対のクリップを有しており、それら一対のクリップを介して下部パネル部分240に固定されている。なお、上部パネル部分140と下部パネル部分240は、一体で構成されていてもよい。
【0021】
下部パネル部分240は、車載機器50の下部の背面及び側面に対向するように設けられており、車載機器50の下部を被覆している。下部パネル部分240の後壁の一部に凹部が形成されており、その凹部に一対の嵌合孔244が形成されている。
図2に示されるように、一対の嵌合孔244の各々には、前記したインストルメントパネル30の一対のクリップ36が嵌合している。一対のクリップ36の各々は、その先端に設けられた弾性片36aを有しており、クリップ36が嵌合孔244に挿入されると、弾性片36aが嵌合孔244に圧入され、嵌合孔244を画定する周囲の壁に弾性片36aが係合する。このように、下部パネル部分240は、クリップ36と嵌合孔244で構成される嵌合機構を介してインストルメントパネル30に固定されている。なお、クリップ36の種類は特に限定されるものではなく、他の種類のクリップが採用されてもよい。また、後述する他のクリップ58,346についても、クリップ36と同一の種類のものが採用されているが、他の種類のクリップが採用されてもよい。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、下部パネル部分240は、後壁の内面に設けられた固定プレート242を有している。固定プレート242は、下部パネル部分240の後壁の内面から上方に向けて延びており、一対の嵌合孔246が形成されている。
図2に示されるように、一対の嵌合孔246の各々には、後述する車載機器50の一対のクリップ56が嵌合している。
【0023】
図1及び
図4に示されるように、一対の側部パネル部分340の各々は、車載機器50よりも車両後方に向けて延びており、特に限定されないが、インストルメントロアーパネル部34の形状に対応して湾曲した形態を有している。一対の側部パネル部分340の各々は、前側クリップ342と後側クリップ344を有している。前側クリップ342は、側部パネル部分340の車両前側に位置する前部340aの前面から車両前方に向けて突出するように設けられており、車載機器50に固定されている。後側クリップ344は、側部パネル部分340の車両後側に位置する後部340bの底面から車両前下方に向けて突出するように設けられており、インストルメントロアーパネル部34に形成されている嵌合孔38に嵌合している。このように、車載機器50は、一対の側部パネル部分340を介してインストルメントロアーパネル部34に間接的に固定されている。
【0024】
(車載機器について)
図1に示されるように、車載機器50は、前面(画面部)が車室内に露出するようにカバーパネル40によって被覆されている。車載機器50は、底面に設けられた一対の底面固定プレート52と、側面に設けられた一対の側面固定プレート54と、背面に設けられた一対のクリップ56と、を有している。一対の底面固定プレート52の各々には締結具が挿入される挿入孔53が形成されている。また、一対の側面固定プレート54の各々には、クリップが嵌合する嵌合孔55が形成されている。
【0025】
図3に示されるように、車載機器50の底面固定プレート52の挿入孔53とインストルメントロアーパネル部34の挿入孔37とインパネリインフォース20のステアリングサポート22の挿入孔24を貫通するボルト(締結具の一例)によって、これら車載機器50とインストルメントロアーパネル部34とインパネリインフォース20が固定されている。
図4に示されるように、車載機器50の側面固定プレート54の嵌合孔55には、対応する側部パネル部分340の前側クリップ342が嵌合している。
【0026】
(緩衝機構について)
上記したように、本実施例の車両構造10では、車載機器50がインストルメントパネル30の上面から上方に向けて突出するように設けられているので、フロントガラスWSと車載機器50が近接して配置されている。このため、車両が歩行者と接触する事故が発生すると、歩行者の頭部が車両のフロントガラスWSに衝突し、破損したフロントガラスWSを超えて頭部が車載機器50に衝突することがある。フロントガラスWSは車両後上方に向けて傾斜しているので、破損したフロントガラスWSを超えて頭部が車載機器50に衝突すると、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わる。本実施例の車両構造10では、歩行者の頭部を保護するために、車載機器50に対して車両後下方に向けて加わる衝突荷重を緩和する緩和機構が設けられている。以下、その緩和機構について説明する。
【0027】
(第1の緩和機構について)
図2に示されるように、カバーパネル40の下部パネル部分240から上方に延びる固定プレート242には嵌合孔246が形成されており、その嵌合孔246に車載機器50のクリップ56が嵌合している。これにより、車載機器50は、下部パネル部分240を介してインストルメントパネル30に固定されている。
図2のA-A断面に示されるように、嵌合孔246の上壁を画定する部分の固定プレート242には、嵌合孔246から上方に向けて延びているスリット248が形成されている。嵌合孔246の上壁を画定する部分の固定プレート242は、スリット248によって分断されている。
【0028】
スリット248の車幅方向の幅248Wは、嵌合孔246の車幅方向の幅246Wよりも狭い。このため、スリット248が形成されていても、クリップ56は嵌合孔246に良好に係合される。一方、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときには、クリップ56がスリット248を介して嵌合孔246から容易に外れることができる。これにより、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、車載機器50は車両後下方に退避することができるので、車載機器50に加わる衝突荷重が緩和される。なお、クリップ56は第1クリップの一例であり、嵌合孔246は第1嵌合孔の一例である。
【0029】
スリット248に代えて、スリット248に対応する領域の強度が周囲の固定プレート242の強度よりも弱い脆弱部が形成されていてもよい。このような脆弱部としては、例えば固定プレート242よりも強度が弱い材料で構成されていてもよく、周囲の固定プレート242よりも厚みが薄く構成されていてもよく、複数の穴が形成されていてもよい。車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときには、このような脆弱部が破損し、クリップ56が嵌合孔246から容易に外れることができる。
【0030】
(第2の緩和機構について)
図4に示されるように、側部パネル部分340の前側クリップ342が車載機器50の側面固定プレートに形成されている嵌合孔55に嵌合し、側部パネル部分340の後側クリップ344がインストルメントロアーパネル部34に形成されている嵌合孔38に嵌合している。これにより、車載機器50は、一対の側部パネル部分340を介してインストルメントロアーパネル部34に間接的に固定されている。
図4のB-B断面に示されるように、インストルメントロアーパネル部34に形成されている嵌合孔38は、後側クリップ344が挿入されている位置よりも車両後方に伸びている。
【0031】
嵌合孔38が車両後方に伸びているので、後側クリップ344は嵌合孔38内において車両後方への移動が許容されている。これにより、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときには、側部パネル部分340が車両後方に移動することができるので、車載機器50が車両後下方に退避しようとしたときに側部パネル部分340から受ける反力が低減される。したがって、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、車載機器50は車両後下方に退避することができるので、車載機器50に加わる衝突荷重が緩和される。なお、後側クリップ344は第2クリップの一例であり、嵌合孔246は第2嵌合孔の一例である。
【0032】
(第3の緩和機構について)
図5に、車両構造10の変形例を示す。この例のインパネリインフォース20は、クリップ56の下方においてクリップ56に対向するように配置されているブラケット26を有している。ブラケット26は、基端がステアリングサポート22に固定されているとともに、先端がステアリングサポート22から上方に向けてクリップ56に近接した位置まで延びている。なお、ブラケット26の基端は、インストルメントパネル30に固定されていてもよい。
【0033】
車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わると、車載機器50が車両後下方に向けて移動する。このとき、ブラケット26がクリップ56に接触してクリップ56に対して上向きに荷重を加えることができる。これにより、ブラケット26は、クリップ56の破壊又はクリップ56が嵌合孔246から外れることを促すことができる。このように、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、車載機器50は車両後下方に退避することができるので、車載機器50に加わる衝突荷重が緩和される。特に、上記したように嵌合孔246から上方に向けて延びるスリット248が設けられている例では、このようなブラケット26が設けられていることにより、クリップ56が嵌合孔246から外れることを効果的に促すことができる。
【0034】
(第4の緩和機構について)
図6に、車両構造10の変形例を示す。この例のインパネリインフォース20は、車載機器50の下方に配置されているガイド部材28を有している。ガイド部材28は、車両後下方に傾斜するとともに車載機器50の底面に対向する傾斜面を有しており、その基端がステアリングサポート22に固定されている。なお、ガイド部材28の基端は、インストルメントパネル30に固定されていてもよい。
【0035】
車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わると、車載機器50が車両後下方に向けて移動する。このとき、車載機器50の底面の車両前方側の縁部がガイド部材28の傾斜面に接触する。車幅方向から見たときに、この接触点を回転軸として車載機器50が回転することができる(破線が回転後の車載機器50を示す)。このように、車載機器50に対して車両後下方に向けて衝突荷重が加わったときに、車載機器50が車両後方へ倒れるように退避することができるので、車載機器50に加わる衝突荷重が緩和される。また、ガイド部材28は、車載機器50が回転するように誘導し、クリップ56が嵌合孔246から外れることを促すことができる。特に、上記したように嵌合孔246から上方に向けて延びるスリット248が設けられている例では、このようなガイド部材28が設けられていることにより、クリップ56が嵌合孔246から外れることを効果的に促すことができる。
【0036】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
10 :車両構造
20 :インパネリインフォース
30 :インストルメントパネル
40 :カバーパネル
50 :車載機器
WS :フロントガラス