(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20231031BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20231031BHJP
B65H 11/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H3/52 330B
B65H11/00 J
(21)【出願番号】P 2020169405
(22)【出願日】2020-10-06
(62)【分割の表示】P 2019229556の分割
【原出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】海 貴之
(72)【発明者】
【氏名】安川 亮一
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/06
B65H 3/52
B65H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラに対向して配置されるブレーキローラと、
トルクのリミット値が第1リミット値である第1トルクリミッタと、
トルクのリミット値が前記第1リミット値より大きい第2リミット値である第2トルクリミッタと、
前記ブレーキローラを媒体給送方向の逆方向に回転させるための駆動力を発生するモータと、
前記給送ローラによる前記ブレーキローラを媒体給送方向に回転させる力の前記第1トルクリミッタへの伝達を規制可能な規制部と、
前記規制部を用いて、前記給送ローラによる前記ブレーキローラを媒体給送方向に回転させる力を前記第1トルクリミッタに伝達させるか否かを変更することにより、前記ブレーキローラにかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを前記第1トルクリミッタ及び前記第2トルクリミッタの何れかに設定する設定部と、
を有し、
前記設定部は、前記給送ローラによる前記ブレーキローラを媒体給送方向に回転させる力を前記第1トルクリミッタに伝達させるか否かに関わらず、前記駆動力を前記第1トルクリミッタを介して前記ブレーキローラに伝達させる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記第2トルクリミッタは、前記第1トルクリミッタから前記ブレーキローラへの前記駆動力の伝達経路上に配置される、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記第1トルクリミッタ及び前記第2トルクリミッタは、前記ブレーキローラの回転軸上に設けられる、請求項
1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記ブレーキローラは、複数設けられ、
前記第2トルクリミッタは、前記複数のブレーキローラのそれぞれに対応して複数設けられ、
前記複数の第2トルクリミッタのそれぞれのリミット値は前記第1リミット値より小さく、且つ、前記複数の第2トルクリミッタのリミット値の合計が前記第2リミット値に等しい、請求項1~
3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関し、特に、給送ローラ及びブレーキローラを用いて媒体を給送する媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
給送ローラ及びブレーキローラを用いて媒体を給送する媒体搬送装置では、載置台に載置された媒体の数が多い場合、媒体間の摩擦力が大きくなり、媒体の重送が発生する可能性がある。例えばブレーキローラにかかる最大トルクを大きくすることにより重送の発生は抑制されるが、ブレーキローラにかかる最大トルクを大きくすると、媒体として薄紙等が搬送されたときに媒体のジャムが発生しやすくなる。
【0003】
ブレーキローラに搬送方向とは反対方向の回転負荷を発生させ、電磁クラッチの切り替えによって、ブレーキローラの回転負荷を変更可能である分離力発生装置を備える媒体供給装置が開示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
分離ローラに対して第1回転方向に掛かる回転トルクが所定のトルク上限値であるリミットトルクを越えた場合に分離ローラを第1回転方向に空転させるトルクリミッタを備え、分離設定を変更可能な媒体給送装置が開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-193837号公報
【文献】特開2019-116383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体搬送装置では、媒体をより適切に給送することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、媒体をより適切に給送することが可能な媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、載置台と、載置台に載置された媒体を下側から順に給送する給送ローラと、給送ローラに対向して配置されるブレーキローラと、ブレーキローラにかかる負荷を制御するためのトルクリミッタと、載置台に載置された媒体の高さに応じて、トルクリミッタのトルクのリミット値を変更する変更部と、を有する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御方法は、載置台と、載置台に載置された媒体を下側から順に給送する給送ローラと、給送ローラに対向して配置されるブレーキローラと、ブレーキローラにかかる負荷を制御するためのトルクリミッタと、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、載置台に載置された媒体の高さに応じて、トルクリミッタのトルクのリミット値を変更する。
【0010】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、載置台と、載置台に載置された媒体を下側から順に給送する給送ローラと、給送ローラに対向して配置されるブレーキローラと、ブレーキローラにかかる負荷を制御するためのトルクリミッタと、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、載置台に載置された媒体の高さに応じて、トルクリミッタのトルクのリミット値を変更することを媒体搬送装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、媒体をより適切に給送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】各ローラの駆動機構について説明するための模式図である。
【
図4】各ローラの駆動機構について説明するための模式図である。
【
図5】ピックアーム112等について説明するための模式図である。
【
図6】各トルクリミッタについて説明するための模式図である。
【
図7】ピックアーム112等の動作について説明するための模式図である。
【
図8】ピックアーム112等の動作について説明するための模式図である。
【
図9】ブレーキローラ115等の動作について説明するための模式図である。
【
図10】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図11】記憶装置160及びCPU170の概略構成を示す図である。
【
図12】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図13】設定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図14】他のストッパ232について説明するための模式図である。
【
図15】ストッパ232等の動作について説明するための模式図である。
【
図16】ストッパ232等の動作について説明するための模式図である。
【
図17】さらに他の処理回路270の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、薄紙、厚紙、カード、冊子又はパスポート等である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0015】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0016】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0017】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0018】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0019】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1センサ111、ピックアーム112、第2センサ113、複数の給送ローラ114a、114b、複数のブレーキローラ115a、115b、複数の第1搬送ローラ116a、116b、複数の第2搬送ローラ117a、117b、第1撮像装置118a、第2撮像装置118b、複数の第3搬送ローラ119a、119b及び複数の第4搬送ローラ120a、120b等を有している。
【0020】
以下では、給送ローラ114a及び114bを総じて給送ローラ114と称する場合がある。また、ブレーキローラ115a及び115bを総じてブレーキローラ115と称する場合がある。また、第1搬送ローラ116a及び116bを総じて第1搬送ローラ116と称する場合がある。また、第2搬送ローラ117a及び117bを総じて第2搬送ローラ117と称する場合がある。また、第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bを総じて撮像装置118と称する場合がある。また、第3搬送ローラ119a及び119bを総じて第3搬送ローラ119と称する場合がある。また、第4搬送ローラ120a及び120bを総じて第4搬送ローラ120と称する場合がある。
【0021】
下側筐体101の上面は、媒体の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は、媒体の搬送路の上側ガイド107bを形成する。
図2において矢印A1は媒体搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A1の下流のことをいう。
【0022】
第1センサ111は、上側筐体102に、即ち媒体の搬送路に対して上側に設けられ、ピックアーム112より上流側に配置される。第1センサ111は、載置台103に載置された媒体の高さを検出するためのセンサである。第1センサ111は、赤外線近接距離センサであり、赤外線の照射から反射までの時間差から、対向する位置に存在する物体までの距離を測定する。第1センサ111は、発光器及び受光器を含む。発光器は、載置台103又は下側筐体101に向けて光(赤外光)を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、載置台103、下側筐体101又は載置台103に載置された媒体により反射された光を受光し、受光した光に応じた電気信号である光信号を生成して出力する。光信号は、発光器が光を照射してから受光器が光を受光するまでの時間を示す。発光器が光を照射してから受光器が光を受光するまでの時間は、載置台103に載置された媒体の高さに応じて変化するため、光信号は載置台103に載置された媒体の高さに応じて変化する。したがって、媒体搬送装置100は、光信号に基づいて載置台103に載置された媒体の高さを検出することができる。第1センサ111の数は一つに限定されず、複数の第1センサ111が、媒体搬送方向A1と直交する幅方向に間隔をあけて並べて設けられてもよい。また、第1センサ111は、省略されてもよい。
【0023】
ピックアーム112は、上側筐体102に設けられ、第1センサ111より下流側且つ給送ローラ114及びブレーキローラ115のニップ位置より上流側、特に媒体搬送路を挟んで給送ローラ114と対向する位置に配置される。ピックアーム112は、後述する処理回路からの制御に応じて、下側ガイド107aと直交する高さ方向A8に移動し、載置台103に載置された媒体を上方から付勢(押圧)する。ピックアーム112は、媒体が給送されないときは給送ローラ114から離間し、媒体が給送されるときは載置台103に載置された媒体に当接して媒体を上方から付勢する。これにより、給送ローラ114と媒体の間に適度な摩擦力が発生し、給送ローラ114は媒体を良好に給送できる。
【0024】
第2センサ113は、給送ローラ114及びブレーキローラ115の上流側に配置される。第2センサ113は、接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第2センサ113は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する媒体信号を生成して出力する。
【0025】
給送ローラ114は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。ブレーキローラ115は、上側筐体102に設けられ、給送ローラ114に対向して配置される。
【0026】
第1撮像装置118aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置118aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置118aは、後述する処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の表面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0027】
同様に、第2撮像装置118bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置118bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置118bは、後述する処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の裏面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0028】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。以下では、第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bを総じて撮像装置118と称する場合がある。
【0029】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ114が
図2の矢印A2の方向、即ち媒体給送方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体搬送方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ115は、媒体搬送時、矢印A3の方向、即ち媒体給送方向の逆方向に回転する。給送ローラ114及びブレーキローラ115の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ114と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。
【0030】
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ116と第2搬送ローラ117の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117がそれぞれ矢印A4及び矢印A5の方向に回転することによって、第1撮像装置118aと第2撮像装置118bの間に送り込まれる。撮像装置118により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ119及び第4搬送ローラ120がそれぞれ矢印A6及び矢印A7の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0031】
図3及び
図4は、給送ローラ114、ブレーキローラ115、第1搬送ローラ116及び第3搬送ローラ119の駆動機構について説明するための模式図である。
図3は、上流側から各ローラの駆動機構を見た斜視図であり、
図4は、上方且つ下流側から各ローラの駆動機構を見た斜視図である。
【0032】
図3及び
図4に示すように、ブレーキローラ115、第1搬送ローラ116及び第3搬送ローラ119の駆動機構は、第1モータ151、第1~第4プーリ141a~d、第1~第2ベルト142a~b、第1~第9ギア143a~i、電磁クラッチ144、第1~第5シャフト145a~e、第1トルクリミッタ146、ラチェットギア147及び第2トルクリミッタ148a~b等を有する。一方、給送ローラ114の駆動機構は、第2モータ152、第5~第6プーリ141e~f、第3ベルト142c、第10~第16ギア143j~p及び第6シャフト145f等を有する。
【0033】
第1モータ151は、後述する処理回路からの制御信号によって、ブレーキローラ115、第1搬送ローラ116及び第3搬送ローラ119を回転させるための駆動力を発生する。第1モータ151は、ブレーキローラ115を媒体給送方向の逆方向A3に回転させ、且つ、第1搬送ローラ116及び第3搬送ローラ119を媒体搬送方向A4及びA6に回転させるための第1駆動力を発生する。なお、第1モータ151は、第1駆動力により、さらに第2搬送ローラ117及び第4搬送ローラ120を媒体搬送方向A5及びA7に回転させてもよい。また、第1~第4搬送ローラ116、117、119及び120の内の一部又は全部は、第2モータ152又は他のモータが発生する駆動力により回転してもよい。
【0034】
第1モータ151の回転軸には第1プーリ141aが取り付けられ、第1プーリ141aと第2プーリ141bの外径の大きい方のプーリ部分との間には第1ベルト142aが張架されている。第2プーリ141bの外径の小さい方のプーリ部分と、第3プーリ141cのプーリ部分と、第4プーリ141dのプーリ部分との間には第2ベルト142bが張架されている。
【0035】
第3プーリ141cのギア部分は第1ギア143aと係合される。第1ギア143aは第2ギア143bと係合され、第2ギア143bは第3ギア143cと係合され、第3ギア143cは電磁クラッチ144と係合される。電磁クラッチ144は第1シャフト145aに取り付けられ、第1シャフト145aにはさらに第4ギア143dが取り付けられている。第4ギア143dは第5ギア143eと係合され、第5ギア143eは第6ギア143fと係合される。第6ギア143fは第2シャフト145bに取り付けられ、第2シャフト145bにはさらに第7ギア143gが取り付けられている。第7ギア143gは第8ギア143hと係合され、第8ギア143hは第9ギア143iと係合される。第9ギア143iは第3シャフト145cに取り付けられ、第3シャフト145cにはさらに第1トルクリミッタ146、ラチェットギア147及び第2トルクリミッタ148a、148bを介してブレーキローラ115a、115bが取り付けられている。
【0036】
電磁クラッチ144は、後述する処理回路からの制御信号に従ってトルクのリミット値を電磁的に変更可能なクラッチであり、第1モータ151からブレーキローラ115へ駆動力を伝達する。電磁クラッチ144は、例えばマイクロパウダクラッチである。電磁クラッチ144は、ヒステリシスクラッチ等の他の種類のクラッチでもよい。本実施形態では、電磁クラッチ144のトルクのリミット値は、常時、処理回路からの制御信号によって十分に高い値(少なくとも第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bのリミット値より高い値)に設定される。
【0037】
第7~第9ギア143g~iは、第1モータ151が発生した駆動力を第1トルクリミッタ146に伝達するための伝達部材の一例である。なお、伝達部材には、第1~第4プーリ141a~d、第1~第2ベルト142a~b、第1~第6ギア143a~f及び第1~第5シャフト145a~eが含まれてもよい。なお、伝達部材は、ギアのみ又はプーリ及びベルトのみで構成されてもよい。
【0038】
第3プーリ141cは第4シャフト145dに取り付けられ、第4シャフト145dにはさらに第1搬送ローラ116が取り付けられている。また、第4プーリ141dは第5シャフト145eに取り付けられ、第5シャフト145eにはさらに第3搬送ローラ119が取り付けられている。
【0039】
第2モータ152は、後述する処理回路からの制御信号によって、給送ローラ114を回転させる駆動力を発生する。第2モータ152は、給送ローラ114を媒体給送方向A2に回転させるための第2駆動力を発生する。
【0040】
第2モータ152の回転軸には第5プーリ141eが取り付けられ、第5プーリ141eと第6プーリ141fのプーリ部分との間には第3ベルト142cが張架されている。第6プーリ141fのギア部分は第10ギア143jと係合され、第10ギア143jは第11ギア143kと係合され、第11ギア143kは第12ギア143lと係合され、第12ギア143lは第13ギア143mと係合される。第13ギア143mは第14ギア143nと係合され、第14ギア143nは第15ギア143oと係合され、第15ギア143oは第16ギア143pと係合される。第16ギア143pは第6シャフト145fに取り付けられ、第6シャフト145fにはさらに給送ローラ114が取り付けられている。
【0041】
また、媒体搬送装置100は、支持部材131をさらに有する。支持部材131の上面には、一端が上側筐体102に支持されたばね131aの他端が取り付けられている。支持部材131及びブレーキローラ115は、ばね131aにより高さ方向A8の下方に、即ち給送ローラ114側に向けて付勢されている。ばね131aは、ブレーキローラ115を給送ローラ114側に押圧する押圧部材の一例である。押圧部材として、ばね131aの代わりにゴム等が用いられてもよい。
【0042】
以下、各ローラ及び各ローラの駆動機構の動作について説明する。
【0043】
第1モータ151が第1駆動力を発生させた場合、第1プーリ141aが矢印B1の方向に回転し、それに伴い第2~第4プーリ141b~dがそれぞれ矢印B1の方向に回転する。また、第1~第3ギア143a~c及び電磁クラッチ144がそれぞれ矢印B2~B5の方向に回転し、第4~第6ギア143d~fがそれぞれ矢印B5~B7の方向に回転し、第7~第9ギア143g~iがそれぞれ矢印B7~B9の方向に回転する。これにより、ブレーキローラ115は、第1モータ151からの第1駆動力によって、媒体給送方向の逆方向A3に回転する。
【0044】
また、第3プーリ141cが矢印B1の方向に回転することにより、第1搬送ローラ116は、媒体搬送方向A4に回転する。第4プーリ141dが矢印B1の方向に回転することにより、第3搬送ローラ119は、媒体搬送方向A6に回転する。
【0045】
一方、第2モータ152が第2駆動力を発生させた場合、第5プーリ141eが矢印B11の方向に回転し、それに伴い第6プーリ141f、第10ギア143jがそれぞれ矢印B11、B12の方向に回転する。また、第11~第16ギア143k~pがそれぞれ矢印B13~B18の方向に回転することにより、給送ローラ114は媒体給送方向A2に回転する。
【0046】
図5は、ピックアーム112及び支持部材131について説明するための模式図である。
図5は、上流側からピックアーム112、支持部材131及びブレーキローラ115の駆動機構を見た斜視図である。
図5において、ピックアーム112及び支持部材131は点線で示されている。
【0047】
図5に示すように、媒体搬送装置100は、ストッパ132をさらに有する。
【0048】
ピックアーム112は、コロ112a及び当接部112bを有する。
【0049】
各コロ112aは、媒体搬送路を挟んで各給送ローラ114と対向する位置に設けられる。各コロ112aは、媒体が給送されないときは給送ローラ114から離間し、媒体が給送されるときは載置台103に載置された媒体に当接する。
【0050】
当接部112bは、ストッパ132と対向する位置に設けられる。当接部112bは、高さ方向A8においてピックアーム112(コロ112a)の移動と連動して移動する。当接部112bは、コロ112aが高さ方向A8において所定高さ(例えば載置台103の載置面から4mm)を超える位置に配置された場合、ストッパ132から離間する。当接部112bは、コロ112aが高さ方向A8において所定高さ以下の位置に配置された場合、ストッパ132に当接してストッパ132を回転(揺動)させる。
【0051】
ストッパ132は、支持部材131に、回転(揺動)可能に支持されている。ストッパ132は、被当接部132a及び係止部132bを有する。
【0052】
被当接部132aは、ピックアーム112の当接部112bと対向する位置に設けられる。ストッパ132には、不図示のねじりコイルばねにより、高さ方向A8において被当接部132aが上方に向かう力が加えられる。被当接部132aは、コロ112aが高さ方向A8において所定高さを超える位置に配置された場合、当接部112bから離間し、ねじりコイルばねの力により上方に配置される。一方、被当接部132aは、コロ112aが高さ方向A8において所定高さ未満の位置に配置された場合、当接部112bによりねじりコイルばねの力より大きい力で下方に押圧され、下方に配置される。
【0053】
係止部132bは、ラチェットギア147と対向する位置に設けられる。係止部132bは、被当接部132aが当接部112bから離間しているときはラチェットギア147と当接してラチェットギア147を係止させる。一方、係止部132bは、被当接部132aが当接部112bに当接して当接部112bにより下方に配置されているときはラチェットギア147から離間する。
【0054】
ラチェットギア147は、係止部132bにより係止されている場合、媒体給送方向の逆方向A3にのみ回転可能であり、媒体給送方向(矢印A3の逆方向)には回転しないように設けられる。
【0055】
支持部材131は、樹脂又は金属等による部材であり、第1~第3側面131b~dを有する。支持部材131は、第1~第3側面131b~dにより、ブレーキローラ115、第7~第9ギア143g~i、第1トルクリミッタ146、ラチェットギア147及び第2トルクリミッタ148a~bを支持する。第2側面131c及び第3側面131dは、それぞれ第2シャフト145bを回転(揺動)軸として回転(揺動)可能に第2シャフト145bに取り付けられている。第1側面131bは、第2側面131c及び第3側面131dの回転(揺動)と連動して回転(揺動)する。第1側面131b及び第3側面131dには、第3シャフト145cの両端が取り付けられる。このように、支持部材131は、第2シャフト145bを中心として回転(揺動)可能に設けられ、ブレーキローラ115を揺動可能に支持する。
【0056】
図6は、第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bについて説明するための模式図である。
図6は、ブレーキローラ115、第9ギア143i、第1トルクリミッタ146、ラチェットギア147及び第2トルクリミッタ148a~bが設けられた第3シャフト145cの断面図である。
【0057】
第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bは、トルクリミッタの一例であり、ブレーキローラ115にかかる負荷を制御する。
図6に示すように、第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bは、第1モータ151からブレーキローラ115への駆動力伝達経路上に配置される。特に、第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bは、ブレーキローラ115の回転軸である第3シャフト145c上に設けられる。各トルクリミッタとブレーキローラ115の間にはギア列が存在しないため、部品毎の製造誤差等によりブレーキローラ115に付与される分離力が変動することが抑制される。そのため、媒体搬送装置100は、媒体を、部品毎の製造誤差によらず高精度に分離できる。なお、第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bは、必ずしも同軸上に設けられなくてもよく、例えば第1トルクリミッタ146は、第2シャフト145b上に設けられてもよい。
【0058】
以下では、第1トルクリミッタ146、ラチェットギア147、第2トルクリミッタ148a~b、ブレーキローラ115及び第3シャフト145cをまとめてブレーキローラユニットと称する場合がある。
【0059】
第1トルクリミッタ146は、第7~第9ギア143g~iから第2トルクリミッタ148a~bへの駆動力伝達経路上に配置される。第1トルクリミッタ146のトルクのリミット値は第1リミット値である。第1トルクリミッタ146から第2トルクリミッタ148a~bへの駆動力伝達経路上には、ラチェットギア147が配置される。
【0060】
第2トルクリミッタ148a~bは、第1トルクリミッタ146aからブレーキローラ115への駆動力伝達経路中に配置される。第2トルクリミッタ148a、148bは、第3シャフト145cと、各ブレーキローラ115a、115bとの間に別個に設けられている。即ち、各第2トルクリミッタ148a、148bは、各ブレーキローラ115a、115bに対応して設けられている。各第2トルクリミッタ148a、148bのトルクのリミット値は、第1リミット値より小さく、第2トルクリミッタ148a、148bのトルクのリミット値の合計は、第1リミット値より大きい第2リミット値に等しい。例えば、第1リミット値は500gf.cmに設定され、第2リミット値は700gf.cmに設定され、各第2トルクリミッタ148a、148bのトルクのリミット値はそれぞれ350gf.cmに設定される。なお、各ブレーキローラ115a、115bに対して別個の第2トルクリミッタ148a、148bが設けられるのではなく、各ブレーキローラ115a、115bに対して共通の第2トルクリミッタが設けられてもよい。
【0061】
第1リミット値は、媒体が一つの場合は第1トルクリミッタ146を介した回転力が絶たれ、媒体が複数の場合は第1トルクリミッタ146を介した回転力が伝達されるような値に設定される。同様に、第2リミット値は、媒体が一つの場合は第2トルクリミッタ148a、148bを介した回転力が絶たれ、媒体が複数の場合は第2トルクリミッタ148a、148bを介した回転力が伝達されるような値に設定される。これにより、媒体が一つだけ搬送される場合、ブレーキローラ115は、第1駆動力に従って回転することなく、給送ローラ114に従って従動する。一方、媒体が複数搬送される場合、ブレーキローラ115は、媒体給送方向の逆方向A3に回転し、給送ローラ114と接触している媒体とそれ以外の媒体とを分離して、重送の発生を防止する。このとき、ブレーキローラ115の外周面は、媒体給送方向の逆方向A3に回転せずに停止した状態で、媒体給送方向の逆方向A3の力を媒体に印加してもよい。
【0062】
図7及び
図8は、ピックアーム112、ストッパ132及びブレーキローラ115の動作について説明するための模式図である。
図7及び
図8は、処理回路からの制御に従ってピックアーム112が高さ方向A8の下方に移動し、載置台103に載置された媒体を上方から押圧している状態を示す。
図7は、載置台103に載置された媒体M1の高さが所定高さ以下である状態を示し、
図8は、載置台103に載置された媒体M2の高さが所定高さを超える状態を示す。
【0063】
図7に示すように、載置台103に載置された媒体M1の高さが所定高さ以下である場合、媒体M1の最上面と当接するピックアーム112のコロ112aは高さ方向A8において下方に配置される。これにより、当接部112bはストッパ132の被当接部132aに当接して被当接部132aを下方に押し下げる。その結果、係止部132bはラチェットギア147から離間し、ラチェットギア147の回転は制限されない。この状態で、第1モータ151及び第2モータ152が第1駆動力及び第2駆動力を発生した場合、第1駆動力は、第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a、148bを介してブレーキローラ115に伝達される。但し、第1トルクリミッタ146のトルクのリミット値(第1リミット値)は、各第2トルクリミッタ148a、148bのトルクのリミット値の合計(第2リミット値)より小さい。そのため、トルクリミッタの全体のトルクのリミット値は、第1トルクリミッタ146のトルクのリミット値である第1リミット値となる。
【0064】
一方、
図8に示すように、載置台103に載置された媒体M2の高さが所定高さを超える場合、媒体M2の最上面と当接するピックアーム112のコロ112aは高さ方向A8において上方に配置される。これにより、当接部112bはストッパ132の被当接部132aから離間し、被当接部132aはねじりコイルばねによって加えられる力により上方に配置される。その結果、係止部132bはラチェットギア147と当接してラチェットギア147を係止させる。係止部132bにより係止されたラチェットギア147は、媒体給送方向の逆方向A3にのみ回転可能であり、媒体給送方向(矢印A3の逆方向)には回転不可になる。この状態で、第1モータ151及び第2モータ152が第1駆動力及び第2駆動力を発生した場合、第1駆動力は、第2トルクリミッタ148a、148bを介してブレーキローラ115に伝達される。但し、第2駆動力により媒体給送方向A2に回転する給送ローラ114によってブレーキローラ115を媒体給送方向(矢印A3の逆方向)に従動回転させる力は、ラチェットギア147によって遮断され、第1トルクリミッタ146に伝達されない。そのため、トルクリミッタの全体のトルクのリミット値は、第2トルクリミッタ148a、148bのトルクのリミット値である第2リミット値となる。
【0065】
このように、ストッパ132は、給送ローラ114によるブレーキローラ115を媒体給送方向に回転させる力が第1トルクリミッタ146に伝達しないようにするための規制部として機能する。
【0066】
また、ピックアーム112は、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a、148bの何れかに設定する設定部として機能する。特に、ピックアーム112は、ストッパ132を用いて、給送ローラ114によるブレーキローラ115を媒体給送方向に回転させる力が第1トルクリミッタ146に伝達するか否かを設定する。ピックアーム112は、その力が第1トルクリミッタ146に伝達するように設定することにより、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを第1トルクリミッタ146に設定する。一方、ピックアーム112は、その力が第1トルクリミッタ146に伝達しないように設定することにより、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを第2トルクリミッタ148a、148bに設定する。
【0067】
換言すると、ピックアーム112は、トルクリミッタのトルクのリミット値を第1リミット値又は第2リミット値の何れかに変更する変更部として機能する。特に、ピックアーム112は、ストッパ132を用いて、給送ローラ114によるブレーキローラ115を媒体給送方向に回転させる力が第1トルクリミッタ146に伝達するか否かを変更する。
【0068】
媒体搬送装置100は、ピックアーム112及びストッパ132を用いることにより、シンプルな構造で、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを変更することができ、装置サイズ及び装置コストを低減させることが可能となる。
【0069】
また、ピックアーム112は、載置台103に載置された媒体の高さに応じて、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a、148bの何れかに設定する。換言すると、ピックアーム112は、載置台103に載置された媒体の高さに応じて、トルクリミッタのトルクのリミット値を変更する。載置台103に載置された媒体の高さが高いほど、給送される媒体の上に載置された媒体の重量が大きくなり、給送される媒体とその上に載置された媒体との間の摩擦力が大きくなる。載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する、いわゆる下取り方式の媒体搬送装置100では、給送される媒体とその上に載置された媒体との間の摩擦力が大きくなるほど、媒体の重送が発生しやすくなる。媒体搬送装置100は、載置台103に載置された媒体の高さが所定高さを超える場合に、載置台103に載置された媒体の高さが所定高さ以下である場合より、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを大きくする。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の重送の発生を抑制することが可能となる。
【0070】
逆に、媒体搬送装置100は、載置台103に載置された媒体の高さが所定高さ以下である場合に、載置台103に載置された媒体の高さが所定高さを超える場合より、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを小さくする。これにより、媒体搬送装置100は、媒体として薄紙等が搬送されたときに媒体のジャムが発生することを抑制できる。また、これにより、ブレーキローラ115と給送ローラ114の間に媒体が一枚だけ存在する場合に、ブレーキローラ115が給送ローラ114に従動しやすくなり、ブレーキローラ115と媒体の間でスリップが発生することが抑制される。したがって、媒体搬送装置100は、ブレーキローラ115の部品寿命が短くなることを抑制できる。
【0071】
また、ピックアーム112は、載置台103に載置された媒体を上方から付勢し、ピックアーム112が配置された高さに応じて、トルクリミッタのトルクのリミット値を変更する。したがって、媒体搬送装置100は、載置台103に載置された媒体の高さと連動して、自動的にトルクリミッタのトルクのリミット値を変更することが可能となる。媒体搬送装置100は、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを利用者に変更させることなく適切に変更することが可能となり、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0072】
図9は、第7~第9ギア143g~i、支持部材131及びブレーキローラ115の動作について説明するための模式図である。
【0073】
上記したように、第1モータ151が第1駆動力を発生させた場合、第7~第9ギア143g~iがそれぞれ矢印B7~B9の方向に回転し、ブレーキローラ115は媒体給送方向の逆方向A3に回転する。また、第7~第9ギア143g~i及びブレーキローラ115を含むギア群は、第7ギア143gが取り付けられた第2シャフト145bを中心として回転(揺動)可能に設けられた支持部材131により支持される。そのため、第7ギア143gが矢印B7の方向に回転することにより、第8ギア143hには矢印C1の方向に向かう力が加えられる。これにより、第8ギア143hが取り付けられた第1側面131bには、第2シャフト145bを中心として矢印C1の方向に回転する力が加えられる。その結果、支持部材131には、第2シャフト145bを中心として矢印C1の方向に回転する力が加えられ、ブレーキローラ115には給送ローラ114から離間する方向(矢印C1の方向)に力が加えられる。
【0074】
なお、ブレーキローラ115の揺動軸である第2シャフト145bと回転軸である第3シャフト145cの間に配置されるギアの数は3に限定されず、3以上の任意の奇数であればよい。これにより、ブレーキローラ115は、第7ギア143gの回転方向B7と同じ方向A3に回転しつつ、ブレーキローラ115には、第7ギア143gの回転方向B7と同じ方向C1に向かう力が加えられる。このように、ブレーキローラユニットは、第7~第9ギア143g~iから第1駆動力が伝達された場合に、ブレーキローラ115に対して給送ローラ114から離間する方向に所定の力が作用するように、第2シャフト145bに対して揺動可能に支持される。
【0075】
また、支持部材131及びブレーキローラ115は、ばね131aにより給送ローラ114側に押圧されている。これにより、ブレーキローラ115は、給送ローラ114から離間することなく、媒体を給送させることができる。
【0076】
以下、ブレーキローラ115に作用する力について説明する。
【0077】
図9に示すように、ブレーキローラ115には、第1~第3の力F1~F3が作用する。第1の力F1は、ばね131aがブレーキローラ115を給送ローラ114側に向けて押圧する押圧力である。第1の力F1は、ばね131aのばね定数等に応じて定まる静的な力であり、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタが第1トルクリミッタ146であるか第2トルクリミッタ148a~bであるかに関わらず、変化しない。
【0078】
第2の力F2は、媒体給送方向の逆方向A3に回転しようとするブレーキローラ115に媒体搬送方向A1にかかる負荷(分離トルク)により発生する、ブレーキローラ115を給送ローラ114に食い込ませる力である。第2の力F2は、ブレーキローラ115が給送ローラ114を押圧する方向に加えられ、ブレーキローラ115にかかる最大トルクに応じて動的に変化する。即ち、第2トルクリミッタ148a~bがブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定する場合の第2の力F2は、第1トルクリミッタ146がブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定する場合の第2の力F2より大きい。
【0079】
第3の力F3は、第7~第9ギア143g~iを含むギア群のギア伝達トルクにより発生する、ブレーキローラ115を上方に浮かせようとする力である。第3の力F3は、ブレーキローラ115が給送ローラ114から離間する方向に加えられ、第7~第9ギア143g~iを含むギア群にかかるトルクに応じて動的に変化する。媒体搬送装置100は、第1トルクリミッタ146と第2トルクリミッタ148a~bの間に配置されたラチェットギア147を用いて、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを変更する。第1トルクリミッタ146の第1リミット値は、第2トルクリミッタ148a~bの第2リミット値より小さい。そのため、給送ローラ114によってブレーキローラ115を媒体給送方向に回転させる力がラチェットギア147によって遮断されるか否かに関わらず、第7~第9ギア143g~iを含むギア群にかかる最大トルクは第1リミット値である。したがって、第3の力F3は、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタが第1トルクリミッタ146であるか第2トルクリミッタ148a~bであるかに関わらず、変化しない。
【0080】
ブレーキローラ115には、第1の力F1の大きさと第2の力F2の大きさの合計から第3の力F3の大きさを減算した大きさの力が、ブレーキローラ115が給送ローラ114を押圧する方向に作用する。例えば、ギア群とブレーキローラの間に、トルクのリミット値が相互に異なるトルクリミッタがそれぞれ配置された二つの駆動力伝達経路を設けておき、その駆動力伝達経路を切り替えることにより、ブレーキローラにかかる最大トルクを変更することが可能である。しかしながら、その場合、ブレーキローラにかかる最大トルクが大きくなれば、ギア群にかかる最大トルクも大きくなり、ブレーキローラが給送ローラから離間する方向に発生する第3の力F3も大きくなる。即ち、この場合、第2の力F2とともに第3の力F3も大きくなり、ブレーキローラ115が給送ローラ114を押圧する方向に作用する力は全体として十分に大きくならない。そのため、ブレーキローラ115を給送ローラ114側に押圧する押圧力に対してブレーキローラ115にかかる最大トルクが大きくなりすぎる。これにより、ブレーキローラ115と給送ローラ114の間に媒体が一枚だけ存在する場合に、ブレーキローラ115が給送ローラ114に従動しにくくなり、媒体のスリップが発生しやすくなる。
【0081】
一方、媒体搬送装置100では、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを変更しても、第7~第9ギア143g~iを含むギア群にかかる最大トルクは変化しないため、第3の力F3は変化しない。そのため、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを大きくした場合、ブレーキローラ115を給送ローラ114側に押圧する押圧力も大きくなる。これにより、ブレーキローラ115と給送ローラ114は十分な力で媒体を挟み込むため、ブレーキローラ115と媒体の間でスリップが発生することが抑制される。したがって、媒体搬送装置100は、ブレーキローラ115を給送ローラ114側に押圧する押圧力に対して、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを適切な大きさに制限し、媒体のスリップが発生しやすくなることを抑制できる。
【0082】
図10は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0083】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、インタフェース装置153、記憶装置160及び処理回路170等をさらに有する。
【0084】
インタフェース装置153は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置153の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0085】
記憶装置160は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置160には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置160にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0086】
処理回路170は、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路170として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0087】
処理回路170は、操作装置105、表示装置106、第1センサ111、第2センサ113、撮像装置118、電磁クラッチ144、第1モータ151、第2モータ152、インタフェース装置153及び記憶装置160等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路170は、第1モータ151及び第2モータ152の駆動制御、撮像装置118の撮像制御等を行い、媒体の搬送を制御して、入力画像を生成し、インタフェース装置153を介して情報処理装置に送信する。
【0088】
図11は、記憶装置160及び処理回路170の概略構成を示す図である。
【0089】
図11に示すように、記憶装置160には、制御プログラム161及び画像取得プログラム162等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路170は、記憶装置160に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路170は、制御部171及び画像取得部172として機能する。
【0090】
図12は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0091】
以下、
図12に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路170により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
図12に示す動作のフローは、定期的に実行される。
【0092】
最初に、制御部171は、利用者により操作装置105を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0093】
次に、制御部171は、第2センサ113から媒体信号を取得し、取得した媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。
【0094】
載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部171は、ステップS101へ処理を戻し、操作装置105から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0095】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部171は、第1モータ151及び第2モータ152を駆動する(ステップS103)。制御部171は、第1モータ151に第1駆動力を発生させて、ブレーキローラ115を媒体給送方向の逆方向A3に回転させ、第1~第4搬送ローラ116、117、119、120を媒体搬送方向A4~A7に回転させる。また、制御部171は、第2モータ152に第2駆動力を発生させて、給送ローラ114を媒体給送方向A2に回転させる。これにより、制御部171は、媒体の給送及び搬送を実行する。また、制御部171は、不図示のモータを駆動してピックアーム112を下方に移動し、載置台103に載置された媒体を上方から付勢させる。
【0096】
次に、画像取得部172は、撮像装置118に媒体の撮像を開始させ、撮像装置118から入力画像を取得する(ステップS104)。
【0097】
次に、画像取得部172は、入力画像を、インタフェース装置153を介して情報処理装置へ送信する(ステップS105)。なお、情報処理装置と接続されていない場合、画像取得部172は、入力画像を記憶装置160に記憶しておく。
【0098】
次に、制御部171は、第2センサ113から取得する媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS106)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部171は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S106の処理を繰り返す。
【0099】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部171は、第1モータ151及び第2モータ152を停止させて(ステップS107)、一連のステップを終了する。
【0100】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、載置台103に載置された媒体の高さに応じて、トルクリミッタのトルクのリミット値を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、給送される媒体の上に載置された媒体の重量が大きい場合に媒体の重送が発生することを抑制しつつ、媒体として薄紙等が搬送されたときに媒体のジャムが発生することを抑制することが可能となった。したがって、媒体搬送装置100は、媒体をより適切に給送することが可能となった。
【0101】
また、媒体搬送装置100では、トルクリミッタを変更した際に、ブレーキローラ115が給送ローラ114を押圧する方向の力は変化しつつ、ブレーキローラ115が給送ローラ114から離間する方向の力は変化しないようにトルクリミッタが設けられる。これにより、媒体搬送装置100は、ブレーキローラ115を給送ローラ114側に押圧する押圧力に対してブレーキローラ115にかかる最大トルクが大きくなりすぎて媒体のスリップが発生しやすくなることを抑制することが可能となった。したがって、媒体搬送装置100は、媒体をより適切に給送することが可能となった。
【0102】
また、媒体搬送装置100は、機械式の第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a~bを用いてブレーキローラ115にかかる最大トルクを変更する。これにより、媒体搬送装置100は、電磁クラッチ又は電磁ブレーキのような高価な部品を使用することなく、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを変更することが可能となり、装置コストを低減させることができる。
【0103】
図13は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の設定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0104】
以下、
図13に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置の設定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路170により媒体搬送装置の各要素と協働して実行される。
図13に示す動作のフローは、定期的に実行される。
【0105】
本実施形態では、媒体搬送装置において、ピックアーム112の当接部112b、ストッパ132、第1トルクリミッタ146、ラチェットギア147及び第2トルクリミッタ148a~bは省略される。本実施形態では、電磁クラッチ144が、ブレーキローラ115にかかるトルクのトルクリミッタとして機能し、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定する。
図13に示す動作のフローが実行される前に、電磁クラッチ144のトルクのリミット値は第1リミット値又は第2リミット値の内の初期値に設定される。
【0106】
最初に、制御部171は、第1センサ111から光信号を取得し、取得した光信号に基づいて、載置台103に載置された媒体の高さを検出する(ステップS201)。記憶装置160には、載置台103に載置される媒体の高さを変えながら光信号を取得する事前の実験に基づいて、光信号の信号値と、載置台103に載置された媒体の高さとの関係が示されたテーブルが事前に記憶される。制御部171は、記憶装置160に記憶されたテーブルに基づいて、載置台103に載置された媒体の高さを特定する。
【0107】
次に、制御部171は、媒体の高さが所定高さを超えるか否かを判定する(ステップS202)。所定高さは、例えば、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを第1リミット値に設定した状態で、載置台103に載置される媒体の高さを変えながら媒体を搬送させる事前の実験において、媒体の重送が発生した媒体の高さの最小値に設定される。
【0108】
媒体の高さが所定高さ以下である場合、制御部171は、電磁クラッチ144のトルクのリミット値が第1リミット値に設定されているか否かを判定する(ステップS203)。電磁クラッチ144のトルクのリミット値が第1リミット値に設定されている場合、制御部171は、特に処理を実行せずに一連のステップを終了する。一方、電磁クラッチ144のトルクのリミット値が第1リミット値に設定されていない場合、制御部171は、電磁クラッチ144のトルクのリミット値を第1リミット値に設定して変更し(ステップS204)、一連のステップを終了する。
【0109】
一方、媒体の高さが所定高さを超える場合、制御部171は、電磁クラッチ144のトルクのリミット値が第2リミット値に設定されているか否かを判定する(ステップS205)。電磁クラッチ144のトルクのリミット値が第2リミット値に設定されている場合、制御部171は、特に処理を実行せずに一連のステップを終了する。一方、電磁クラッチ144のトルクのリミット値が第2リミット値に設定されていない場合、制御部171は、電磁クラッチ144のトルクのリミット値を第2リミット値に設定して変更し(ステップS206)、一連のステップを終了する。
【0110】
このように、本実施形態では、制御部171が、変更部として機能し、載置台103に載置された媒体の高さに応じて、トルクリミッタのリミット値を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、複数のトルクリミッタを用いることなく、ブレーキローラ115にかかるトルクのリミット値を変更することができ、装置の構造をシンプルにすることができ、装置サイズ及び装置重量を低減させることができる。
【0111】
なお、制御部171は、トルクのリミット値を第1リミット値と第2リミット値の二段階で変更するのでなく、三段階以上の任意の段階で変更してもよい。その場合、制御部171は、載置台103に載置された媒体の高さが高いほどリミット値が大きくなるようにリミット値を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、ブレーキローラ115にかかるトルクのリミット値をより柔軟に変更することができる。
【0112】
また、電磁クラッチ144の代わりに、電磁ブレーキが用いられてもよい。電磁ブレーキは、処理回路170からの制御信号に従ってトルクのリミット値を電磁的に変更可能なブレーキであり、第1モータ151からブレーキローラ115へ駆動力を伝達する。電磁ブレーキは、例えばマイクロパウダブレーキである。電磁ブレーキは、ヒステリシスブレーキ等の他の種類のブレーキでもよい。
【0113】
また、制御部171は、第1センサ111の代わりに、コロ112a(ピックアーム112)が配置された高さを検出するための第3センサを用いて、載置台103に載置された媒体の高さを検出してもよい。その場合、ピックアーム112には、コロ112aの移動と連動して移動する遮蔽部が設けられる。第3センサは、所定位置に配置された遮蔽部を挟んで対向するように設けられた発光器及び受光器を有する。発光器は、受光器に向けて光を照射する。受光器は、発光器により照射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2光信号を生成して出力する。発光器と受光器の間に遮蔽部が存在する場合、発光器により照射された光は遮蔽部により遮光される。そのため、第2光信号の信号値は、遮蔽部の位置に応じて、即ちピックアーム112のコロ112aが配置された高さ(媒体の高さ)に応じて変化する。制御部171は、第3センサから第2光信号を取得し、取得した第2光信号に基づいて、載置台103に載置された媒体の高さを検出する。
【0114】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、電磁クラッチ144又は電磁ブレーキを用いる場合も、媒体をより適切に給送することが可能となった。
【0115】
図14は、さらに他の実施形態に係る媒体搬送装置のストッパ232について説明するための模式図である。
図14は、上流側からストッパ232を見た斜視図である。ストッパ232は、媒体搬送装置100のストッパ132の代わりに用いられる。本実施形態では、媒体搬送装置において、ピックアーム112の当接部112bは省略される。
【0116】
ストッパ232は、支持部材131に、回転(揺動)可能に支持されている。ストッパ132は、把持部232a及び係止部232bを有する。
【0117】
把持部232aは、利用者による操作に応じて、ストッパ232の回転軸を中心として回転移動するように設けられている。
【0118】
係止部232bは、ラチェットギア147と対向する位置に設けられ、把持部232aの回転移動と連動して、回転移動するように設けられている。
【0119】
図15及び
図16は、ストッパ232及びブレーキローラ115の動作について説明するための模式図である。
【0120】
図15に示すように、把持部232aが利用者による操作に応じて第1の所定位置に配置された場合、係止部232bはラチェットギア147から離間し、ラチェットギア147の回転は制限されない。この場合、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタは第1トルクリミッタ146に設定される。一方、
図16に示すように、把持部232aが利用者による操作に応じて第1の所定位置と異なる第2の所定位置に配置された場合、係止部132bはラチェットギア147と当接してラチェットギア147を係止させる。係止部132bにより係止されたラチェットギア147は、媒体給送方向の逆方向A3にのみ回転可能であり、媒体給送方向(矢印A3の逆方向)には回転不可になる。この場合、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタは第2トルクリミッタ148a、148bに設定される。
【0121】
即ち、本実施形態では、把持部232aが、利用者による操作に応じて、ブレーキローラ115にかかる最大トルクを規定するトルクリミッタを第1トルクリミッタ146及び第2トルクリミッタ148a、148bの何れかに設定する設定部として機能する。媒体搬送装置は、利用者による操作に応じて、ブレーキローラ115にかかるトルクのリミット値をより柔軟に設定することができる。
【0122】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、利用者による操作に応じて、ブレーキローラ115にかかるトルクのリミット値を設定する場合も、媒体をより適切に給送することが可能となった。
【0123】
図17は、さらに他の実施形態に係る媒体搬送装置における処理回路270の概略構成を示す図である。処理回路270は、媒体搬送装置100の処理回路170の代わりに使用され、CPU170の代わりに、媒体読取処理及び設定処理を実行する。処理回路270は、制御回路271及び画像取得回路272等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0124】
制御回路271は、制御部の一例であり、制御部171と同様の機能を有する。制御回路271は、操作装置105から操作信号を、第1センサ111から光信号を、第2センサ113から媒体信号を受信する。制御回路271は、受信した各信号に応じて第1モータ151及び第2モータ152を駆動するとともに、電磁クラッチ144のトルクのリミット値を設定する。
【0125】
画像取得回路272は、画像取得部の一例であり、画像取得部172と同様の機能を有する。画像取得回路272は、撮像装置118から入力画像を受信し、記憶装置160に記憶するとともにインタフェース装置153を介して情報処理装置へ送信する。
【0126】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路270を用いる場合においても、媒体をより適切に給送することが可能となった。
【符号の説明】
【0127】
100 媒体搬送装置、103 載置台、111 第1センサ、112 ピックアーム、114 給送ローラ、115 ブレーキローラ、131a ばね、132、232 ストッパ、143g~i 第7~第9ギア、144 電磁クラッチ、145b、c 第2、第3シャフト、146 第1トルクリミッタ、148a、b 第2トルクリミッタ、151 第1モータ、171 制御部、232a 把持部