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特許7376461画像プロジェクタ用の高コントラスト個別入力プリズム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】画像プロジェクタ用の高コントラスト個別入力プリズム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/04 20060101AFI20231031BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20231031BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20231031BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G02B5/04 B
G03B21/00 F
G03B21/14 Z
H04N9/31 500
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020201202
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2017534685の分割
【原出願日】2015-12-21
(65)【公開番号】P2021056520
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/099,054
(32)【優先日】2014-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/200,417
(32)【優先日】2015-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/240,287
(32)【優先日】2015-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507236292
【氏名又は名称】ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デワルト、デュアン スコット
(72)【発明者】
【氏名】ウェインライト、ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーニー、ダグラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ、マーティン ジェイ.
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0168708(US,A1)
【文献】特開2005-148208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0147158(US,A1)
【文献】特開2014-048392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0024945(US,A1)
【文献】国際公開第2014/132675(WO,A1)
【文献】特表2007-534004(JP,A)
【文献】特開2004-287441(JP,A)
【文献】特表2006-509243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0252957(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347634(US,A1)
【文献】特開2001-174909(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0043767(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/32
G03B 21/00
G03B 21/14
H04N 9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリズムアセンブリであって、
複数の個別プリズム光路を形成するように構成された複数のプリズムであって、前記複数の個別プリズム光路の各々は、複数の個別色光入力からの対応する個別色光入力を受け取る、前記複数のプリズムを備え、
前記複数の個別プリズム光路の各々は、
各個別色光入力ごとの反射防止コーティングが施された入力楔素子と、
第2の楔素子と、
ダンプ楔素子と、により形成されており、
前記ダンプ楔素子は、各個別色光入力用の個別光ダンプである、プリズムアセンブリ。
【請求項2】
前記複数の個別プリズム光路のそれぞれ1つに対応する複数のカラーチャネル変調器をさらに備え、
前記複数のカラーチャネル変調器の各々は、前記複数の個別色光入力のうちの1つを受け取り、1つ以上の動作モードで作用するように構成される、請求項1に記載のプリズムアセンブリ。
【請求項3】
前記複数のカラーチャネル変調器の各々は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)反射器を含む、請求項2に記載のプリズムアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のカラーチャネル変調器の各々は、少なくともオン状態およびオフ状態で作用する、請求項2に記載のプリズムアセンブリ。
【請求項5】
前記複数の個別色光入力は、レーザー、発光ダイオード(LED)、または部分的にコヒーレントな光源によって供給される、請求項1に記載のプリズムアセンブリ。
【請求項6】
白色光入力を受け取り、該白色光入力を前記複数の個別色光入力に変換するように構成された初段プリズムアセンブリをさらに備える請求項1に記載のプリズムアセンブリ。
【請求項7】
前記複数の個別プリズム光路の各々は、予め設定された角度で個別色光入力を受け取る、請求項1に記載のプリズムアセンブリ。
【請求項8】
各個別プリズム光路は、少なくとも実質的にf/4.5であるf/#を有する、請求項1に記載のプリズムアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ・システムに関し、特に、レーザ式画像投影システム用の改良されたプリズム・システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ・システムは、現在、ダイナミックレンジの向上を伴って構成されつつある。この種の改善の多くは、レーザ投影システムの分野におけるものである。そのようなレーザ投影システムの中には、デュアル/マルチ変調器プロジェクタ・ディスプレイ・システムが含まれることもある。このように改善される画像投影システムは、その性能を向上させることが望ましい場合がある。
【0003】
従来の高性能デジタルライトプロセッシング(DLP:Digital Light Processing)プロジェクタでは、3チャネルプリズムアセンブリを用いており、これは、カラープリズムを双方向に通過する共通光路を有して、そこでは、白色光を赤色、緑色、青色に分離するとともに、後にフルカラー(白色光)画像に再合成する。入力白色光を3色に分離した後に、それらの色を専用のDLPチップで個別に変調して、同じカラープリズムを通して送り返すことで、変調後の光をフルカラー画像に再合成する。
【0004】
そのような従来のプリズムの例は、(1)Tanよる「COLOR SEPARATING PRISM SYSTEM(色分離プリズム・システム)」と題する、1972年5月2日に発行された特許文献1、(2)Pennによる「PRISM FOR HIGH CONTRAST PROJECTION(高コントラスト投影のためのプリズム)」と題する、2010年2月23日に発行された特許文献2、(3)Pennによる「PRISM FOR HIGH CONTRAST PROJECTION(高コントラスト投影のためのプリズム)」と題する、2011年8月9日に発行された特許文献3、に記載されており、これらの文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3659918号明細書
【文献】米国特許第7665850号明細書
【文献】米国特許第7993014号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書におけるプロジェクタ・ディスプレイ・システム用のプリズムアセンブリの多くの実施形態では、上述のような従来のプリズムアセンブリの白色光入力とは異なり、プリズム入力は、個別のカラーチャネル、(例えば、赤チャネル、緑チャネル、青チャネル)であるが、変調後の光は、同様にしてやはり合成され得る。これは、いくつかの理由で、望ましい場合がある。第1に、赤色、緑色、青色のDLP変調からの「オフ状態(off state)」の光が、プリズム内でオン状態(on-state)の光路から外れるように反射して、制御されない散乱が回避される傾向がある。第2に、光の再合成は、(以下の関連特許にあるような)フィリップスタイプのプリズムで具体化することができるが、このプリズムと共に使用される狭帯域かつ一方向の個別の赤色/緑色/青色照射源によって、顕著に簡素化されたコーティングを用いることが許容される。第3に、プリズム光路長の大部分で色分離を維持することによって、典型的な故障点(failure point)でのパワーレベル(power level)を大幅に低減することができる。これにより、プリズムにおける光パワー処理能力を高めることが可能となる。そして最終的に、典型的な3チャネルプリズム構成で通常見られる赤色、緑色、青色の分離および再合成による追加的な損失が排除されることで、LEDおよびレーザのような個別光源を用いるときの光効率を大幅に向上させることができる。概して、本明細書における多くの実施形態では、3チップDLPプロジェクタにおける効率、コントラスト、およびパワー処理の向上を得るために、散乱、損失、および熱負荷を最小限に抑えるように個々の光路を最適化している。
【0007】
ARコーティング、および光を合成するダイクロイックコーティングに対して、コーティング最適化を実施することができる。入力枝におけるARコーティングは、(例えば、各枝は1色を認識し得るので)色ごと、および(より高いf/#のPSFリレーを使用すると仮定して)角度ごとに、最適化することができる。この最適化の結果として、より良好な透過率(個別の各光路に7面を有して、1面あたり~0.2%)が得られる可能性がある。ダイクロイックコーティングは、(ランプ以外の光源を想定して)狭帯域光について最適化することができ、これにより、より広帯域のコーティングと比較して改善された反射率および透過率を有することができ、さらに、(狭帯域波長の選択に応じて異なる)より狭角について最適化することもできる。また、ダイクロイックコーティングにおける光制御は重要であり、意図しない反射はコントラストを低下させる可能性があるので、ダイクロイックコーティングの改善は、コントラスト比にとっても不可欠であり得る。他の実施形態では、この構成を、単色またはカラーシーケンシャル方式のシングルチップDLPプロジェクタに適用することもできる。
【0008】
多くの実施形態では、プリズムは、個別のカラーレーザ光源からの(例えば、効率を助長する傾向があり得る)個別の照射入力を受けることが可能である。さらに、多くの実施形態は、高パワーで良好に機能する傾向があり得るとともに、熱負荷および熱応力を軽減する傾向があり得ることで、パワー処理および信頼性を向上させる。
【0009】
一実施形態では、画像プロジェクタ・ディスプレイ・システム用のプリズムアセンブリについて開示し、これは、複数の個別色光入力(discrete color light input)と、個別色光入力のそれぞれについて、その個別色光入力を受けるプリズム要素と、を備え、さらに、各プリズム要素に対する熱負荷は、そのプリズム要素がフルスペクトル照射を受けた場合よりも小さい。
【0010】
本システムの他の特徴ならびに効果は、本出願で提示する図面と関連させて読まれる以下の詳細な説明において提示している。
例示的な実施形態を図面の参照図に示している。本明細書で開示する実施形態および図面は、限定するものではなく、例示とみなされるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本出願の改良されたプリズム入力の実施形態の使用に適し得る画像プロジェクタ・ディスプレイ・システムの概略的な一実施形態を示している。
図2】本出願の目的を満たすプロジェクタ・システムの一実施形態を示している。
図3】本出願の目的を満たし得るプロジェクタ・システムの他の実施形態を示している。
図4A-4B】当該技術分野で知られている従来のプリズム入力システムを示している。
図4C】当該技術分野で知られている従来のプリズム入力システムを示している。
図5A-5B】図4A~4Cの従来のプリズム入力システムが作用するときの様々な光路を示している。
図5C-5D】図4A~4Cの従来のプリズム入力システムが作用するときの様々な光路を示している。
図6A】本出願の原理に従って構成された高コントラスト個別入力プリズムの一実施形態を示している。
図6B】本出願の原理に従って構成された高コントラスト個別入力プリズムの一実施形態を示している。
図6C】本出願の原理に従って構成された高コントラスト個別入力プリズムの一実施形態を示している。
図6D】本出願の原理に従って構成された高コントラスト個別入力プリズムの一実施形態を示している。
図7A図6A~6Dのプリズム入力システムが作用するときの様々な光路を示している。
図7B図6A~6Dのプリズム入力システムが作用するときの様々な光路を示している。
図7C図6A~6Dのプリズム入力システムが作用するときの様々な光路を示している。
図7D図6A~6Dのプリズム入力システムが作用するときの様々な光路を示している。
図8】プロジェクタ・システムの全光パワー処理時の、図4A~4Cに示すような従来のプリズムの熱負荷のプロットの一例を示している。
図9】プロジェクタ・システムの全光パワー処理時の、図6A~6Dに示すような高コントラスト個別入力プリズムの熱負荷のプロットの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される場合の、「コンポーネント」、「システム」、「インタフェース」というような用語は、ハードウェア、(例えば、実行中の)ソフトウェア、および/またはファームウェアのいずれかであるコンピュータ関連エンティティを指すものである。例えば、あるコンポーネントは、プロセッサ上で実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、プログラム、および/またはコンピュータであり得る。例として、サーバ上で実行中のアプリケーションと、サーバは、どちらもコンポーネントであり得る。1つ以上のコンポーネントを、1つのプロセスに含むことが可能であり、1つのコンポーネントを、1つのコンピュータ上に局在化させること、および/または2つ以上のコンピュータに分散させることが可能である。また、コンポーネントは、ハードウェア、(例えば、実行中の)ソフトウェア、および/またはファームウェアのいずれかである通信関連エンティティを指すものでもあり得るとともに、さらに、通信を実現するに足る有線または無線ハードウェアを含み得る。
【0013】
以下の説明を通して、より完全な理解を当業者に与えるため、具体的詳細について記載する。ただし、開示を不必要に不明瞭にすることがないよう、周知の要素については、詳細に提示または記載していない場合がある。よって、説明および図面は、限定的意味ではなく例示的意味のものとみなされるべきである。
【0014】
[序論]
プロジェクタおよびその他のディスプレイ・システムの分野では、画像レンダリング性能およびシステム効率をともに向上することが望まれている。本出願のいくつかの実施形態では、デュアル変調またはマルチ変調ディスプレイ・システムのためにライトフィールドモデリング(light field modeling)を採用することにより、これらの改良を実施するためのシステム、方法、および技術について記載する。一実施形態では、効果的実施のために、光源モデルを構築して使用する。光源モデルを改良するために、既知の入力画像の表示画像のカメラ画像を評価することができる。一部の実施形態では、反復プロセスにより、改良を積み重ねることができる。一部の実施形態では、これらの技術を動画に用いて、画像レンダリング性能を向上させるためにリアルタイム補正を実施してよい。
【0015】
デュアル変調プロジェクタおよびディスプレイ・システムは、(1)Wardらによる「SERIAL MODULATION DISPLAY HAVING BINARY LIGHT MODULATION STAGE(2値光変調ステージを有するシリアル変調ディスプレイ)」と題する、2012年2月28日に発行された米国特許第8125702号、(2)Whiteheadらによる「PROJECTION DISPLAYS(プロジェクションディスプレイ)」と題する、2013年6月13日に公開された米国特許出願公開第2013/0148037号、(3)Wallenerによる「CUSTOM PSFs USING CLUSTERED LIGHT SOURCES(クラスタ光源を用いたカスタムPSF)」と題する、2011年9月22日に公開された米国特許出願公開第2011/0227900号、(4)Shieldsらによる「SYSTEMS AND METHODS FOR ACCURATELY REPRESENTING HIGH CONTRAST IMAGERY ON HIGH DYNAMIC RANGE DISPLAY SYSTEMS(高ダイナミックレンジ・ディスプレイ・システムにおいて高コントラスト画像を正確に表現するためのシステムおよび方法)」と題する、2013年5月2日に公開された米国特許出願公開第2013/0106923号、(5)Erinjippurathらによる「HIGH DYNAMIC RANGE DISPLAYS USING FILTERLESS LCD(S) FOR INCREASING CONTRAST AND RESOLUTION(フィルタレスLCD(群)を用いてコントラストおよび解像度を向上させた高ダイナミックレンジディスプレイ)」と題する、2011年11月17日に公開された米国特許出願公開第2011/0279749号、(6)Kwongによる「REFLECTORS WITH SPATIALLY VARYING REFLECTANCE/ABSORPTION GRADIENTS FOR COLOR AND LUMINANCE COMPENSATION(色および輝度の補正用の空間的に変化する反射/吸収勾配を有する反射器)」と題する、2012年5月31日に公開された米国特許出願公開第2012/0133689号、を含む、本出願と同一の所有者による特許および特許出願に記載されており、これらの文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
[物理アーキテクチャの一例]
図1は、適切な画像プロジェクタ・ディスプレイ・システムの1つの可能な実施形態を示している。本実施形態では、プロジェクタ・ディスプレイ・システムは、本出願の目的を満たし得るデュアル/マルチ変調器プロジェクタ・ディスプレイ・システム100として構成されている。プロジェクタ・システム100では、最終的に投影された画像が、その投影画像の想定される鑑賞者にとって十分な輝度となるように、プロジェクタ・システムに所望の照射を与える光源102を採用している。光源102として、任意の適切な光源を含むことができ、可能性として、キセノンランプ、レーザ(群)、コヒーレント光源、部分的コヒーレント光源が含まれるが、ただしこれらに限定されない。光源は、プロジェクタ・システム全体の電力および/またはエネルギーの主要なドロー(major draw)であるため、その作用の過程で電力および/またはエネルギーを節約するように、光の効果的利用および/または再利用が望ましい場合がある。
【0017】
光104は、第1の変調器106を照射することができ、そして次に、オプションの一組の光学部品108を通して第2の変調器110を照射することができる。第2の変調器110からの光は、投影レンズ112(または他の適切な光学部品)で投影されることで、スクリーン114上に最終的な投影画像を形成することができる。入力画像および/またはビデオデータを受け取ることができるコントローラ116によって、第1と第2の変調器を制御することができる。コントローラ116は、その入力画像/ビデオデータに対して、いくつかの画像処理アルゴリズム、色域マッピングアルゴリズム、または他のそのような適切な処理を実行し、そして所望の最終投影画像114を得るために、第1と第2の変調器に制御/データ信号を出力することができる。さらに、一部のプロジェクタ・システムでは、その光源によっては、最終投影画像の画質のさらなる制御を実現するために、光源102(図示していない制御線)を変調することが可能な場合がある。
【0018】
後述するように、光源102から第1の変調器106への光路に導入され得る光リサイクルモジュール103を、図1に点線ボックスとして示している。本説明は、この位置付けの説明で提示するが、プロジェクタ・システム内の様々な点で、光リサイクリングをプロジェクタ・システムに導入してもよいことは理解されるであろう。例えば、第1と第2の変調器の間に光リサイクリングを導入することができる。さらに、ディスプレイ・システムの光路における複数の点に、光リサイクリングを導入してもよい。そのような実施形態は、部品数の増加によって、より高コストとなり得るが、その増加は、複数の点の光リサイクリングの結果としてのエネルギーコスト削減とバランスさせることができる。
【0019】
図1の実施形態は、デュアル/マルチ変調投影システムの説明で提示しているが、本出願の技術および方法は、シングル変調、または他のデュアル/マルチ変調ディスプレイ・システムでの応用を見出せるであろうことは理解されるべきである。例えば、バックライトと第1の変調器(例えば、LCDなど)と第2の変調器(例えば、LCDなど)とを備えるデュアル変調ディスプレイ・システムでは、本明細書において投影システムの説明で説明される性能および効率を実現するために、適切なぼかし光学部品ならびに画像処理方法および技術を採用することができる。
【0020】
また、図1では、2段またはデュアル変調器ディスプレイ・システムを示しているものの、本出願の方法および技術は、1つのみの変調器を備えるディスプレイ・システム、または3つ以上の変調器を備えるディスプレイ・システム(マルチ変調器ディスプレイ・システム)での応用も見出し得るということも理解されるべきである。本出願の範囲は、これらの様々な代替実施形態を包含する。
【0021】
[光リサイクリングの一実施形態]
図2は、本出願の目的に適し得るプロジェクタ・システムの一実施形態を示している。このプロジェクタ・システムにおいて、主に光源102と第1の変調器221との間に、(例えば、1つ以上の構成部品201~216を含む)導光管サブシステム/モジュールを導入することができる。光源102からの光は、インテグレータロッド/チューブ/ボックス(integrating rod/tube/box)202を介して光路に入力することができる。一実施形態では、インテグレータロッド/チューブ/ボックス202は、その内部に概ね反射面を有し得ることで、その面への入射光は、その右端203で光が抜け出るまで、(例えば、場合によっては複数回)反射されることがある。光がインテグレータロッド/チューブ/ボックスを抜け出ると、その光は、例えばレンズ204、214、216ならびにフィルタおよび/または偏光子206、208、210、212のセットからなる光学素子セットで規定される光路内に導入され得る。また、本実施形態は、このプロジェクタ・システムの構成で要求される場合に、光リサイクリングを実施するように構成することもできる。
【0022】
第1の変調器221は、いくつかのプリズム218a、218bと、反射器220とを有し得る。反射器220は、反射体のデジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device : DMD)アレイ、またはマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)アレイ、または少なくとも2つ以上の光路に光を反射し得る可能性のある他の任意の適切な反射体セット、を含み得る。そのような光路の1つを、図2に示している。図示のように、反射器220は、光をプリズム218aと218bの界面へと誘導し、これにより、光はレンズアセンブリ222へと反射された後に、(例えば、レンズアセンブリ224、プリズム226および230、反射器228を有する)第2の変調器229に達し得る。この光を用いて、観客によって鑑賞されるべき最終投影画像を形成することができる。
【0023】
しかしながら、最終投影画像のレンダリングの最中には、光源102の全パワー/全エネルギーは必要ではない可能性のある何らかの時期がある。光源102のパワーを変調することが不可能である場合には、光源102からの光をリサイクルすることが望まれる場合がある。さらに、画像における「ハイライト」の輝度を高めることが望まれる場合があり、プロジェクタ・システム内でリサイクルされる光によって、追加のパワーを得ることができる。このような場合には、図2で分かるように、反射器220を、図示のようなその現在の位置(すなわち、第2の変調器に至る光路を進むように光を誘導する位置)から、上述の光路と概ね同じ光路に沿って右から左方向に進んでインテグレータロッド/チューブ/ボックス202へと戻るように光を概ね反射させるような代わりの位置に、調整することが可能であり得る。
【0024】
他の実施形態では、オプションの第3の光路(図示せず)によって、反射器は、光源からの光を、光「ダンプ(dump)」に、すなわち光が吸収されるプロジェクタ・システムの部分に、誘導することが可能となる。この場合、その光は、プロジェクタ・システムから散逸される熱として浪費される。このように、プロジェクタ・システムは、要求に応じて光を誘導することに関して、多様な自由度を有し得る。
【0025】
図3は、少なくとも1つのレーザおよび/または部分的にコヒーレントな有色光源ならびにポートからの(例えば、ファイバランチ302、コリメータ304、拡散器306を介した)光を伝送するように機能し得るプロジェクタ・システム300の部分のさらに別の実施形態である。そのような光源からの光を、反射する近位端310(例えば、リサイクルミラー)を有し得るインテグレータロッド312への入力用に光を調整するための第1の光学サブシステム/拡散器リレー308を通して、伝送することができる。第2の光学サブシステム/リサイクルリレー314は、第1の変調器316への入力に先立って、光を要求通りにさらに調整することができる。上記の図2の場合と同様に、システム300のこの第1の工程(first leg)で、上述のような光リサイクルモードを実施することができる。
【0026】
第1の変調の後に、鑑賞用の最終画像を投影するためのプロジェクタ光学サブシステム322を通した伝送用に光を変調する第2の変調器320への入力に先立って、第3の光学サブシステム/点広がり関数(PSF:Point Spread Function)リレー318を通して光を伝送することができる。引き続き図3を参照すると、リレー光学システム318は、第1の変調器316(例えば、予備変調器)と第2の変調器320(例えば、主変調器/9ピースプリズム)との間に導入されることを示している。このようなリレー光学システムは、画像処理におけるアーチファクト量を低減するためであるとともに、投影画像のコントラストを向上させるためにも、望ましい場合がある。
【0027】
本明細書で記載する一実施形態の説明では、第1の変調器/予備変調器は、画像データ値に基づいて、例えばハーフトーン画像のような、ぼかしを付与および/またはデフォーカスした画像を生成することが望ましい場合がある。多くの実施形態では、予備変調器から主変調器までの間に、均一にぼかしを付与/デフォーカスした画像を生成する傾向があるリレー光学システムを備えることが望ましい場合がある。さらに、本実施形態では、所望のデフォーカスされたスポット形状を有することが望ましい場合がある。
【0028】
多くの実施形態では、リレー光学システムは、焦点面を効果的に移動させ、コマ収差を補正し、(例えば、いくらかの望ましい量まで、デフォーカス/ぼかしを付与するとともに、球面収差を付与することによって)広がりを調整するような、レンズまたは他の光学素子を有し得る。
【0029】
[改良されたプリズムの実施形態]
上述のように、エネルギー効率および/またはコスト効率の両方の面で、これらのプロジェクタ・システムの効率を向上させることが望ましい場合がある。そのような改善を実施することができる領域の1つは、例えば、本明細書に記載のDMDおよび/またはMEMSアレイのような空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)と共に使用されるような入力プリズムアセンブリの領域である。
【0030】
図4A~4Cは、従来のプリズムアセンブリを、正面図、上面図、側面図でそれぞれ示している。図5A~5Dは、動作時に、プリズムアセンブリがいかにして入力光ビームと相互作用し得るのか、DMD反射器のオン状態、オフ状態、フラット状態の向きで光ビームがいかにしてDMDで反射され得るのかをそれぞれ示している。
【0031】
図4A~4Cおよび図5A~5Dに示すように、入力光ビーム502は、第1のプリズム408を透過して、第2のプリズム406との界面で内部全反射(TIR:Totally Internally Reflected)され、DMDアレイ500の近位に配置された光学ガラス404および400を(光ビーム504で示すように)透過し得る。
【0032】
図5Bに示すように、DMD反射器がオン状態に設定されているときには、反射光ビーム506は、戻るように光学素子400、404、408、406を透過し得ることで、さらなる変調および/または投影のために光が供給される。図5Cは、DMD反射器がオフ状態に設定されているときに反射され得る光ビーム508を示しており、これにより、例えば、光ビーム508は、ディスプレイのダイナミックレンジに影響を及ぼさないように、吸収および/または廃棄されるために、光ダンプ(図示せず)に誘導され得る。図5Dは、DMD反射器がフラット状態の向きにあるときの光ビーム510を示している。オフ状態のDMDで反射される光の場合と同様に、フラット状態のときに反射される光は、さらなる変調および/または投影を含み得る有効な下流光路から外れるようにして、同様に誘導されなければならない。
【0033】
高パワーの白色光(例えば、キセノンランプなど)または高パワーのカラーレーザ光のように、光源が高パワーであるときには、熱が望ましくない熱的作用を示すことがあり、これが、望ましくない結像作用および/または機械部品の劣化のいずれかで現れることがある。望ましくない作用として、時間の経過および熱サイクルの繰り返しによる、予備変調器から主変調器までの間でのPSF形状および/またはサイズの変化ならびに像位置のずれ、が挙げられる。
【0034】
図6A~6Dは、本発明の原理に従って構成されたプリズムアセンブリの一実施形態を、正面図、上面図、側面図、底面図でそれぞれ示している。図示のように、本発明のプリズムアセンブリは、光学素子600、602、604、606、608、610、612、614、616を有する。本実施形態では、光学素子を、プリズムアセンブリが受ける個別の色光のそれぞれのための個別のカラーチャネルプリズム光路を構成する1つ以上のカラーチャネルで作用するように用いることができる。
【0035】
例えば、個別のカラーチャネルプリズム光路の1つとしての緑チャネルでは、光学素子602は緑用ダンプ楔(green dump wedge)であり、光学素子612は緑用楔(green wedge)であり、光学素子600は緑入力楔(green input wedge)である。青チャネルでは、光学素子608は青入力楔であり、光学素子610は青用ダンプ楔であり、光学素子616は青用楔である。赤チャネルでは、光学素子606は赤用ダンプ楔であり、光学素子614は赤用楔であり、光学素子604は赤入力楔である。なお、各カラーチャネルは、その色光入力の処理のために配備された複数の光学素子を有するということに留意すべきである。
【0036】
一実施形態では、(例えば、レーザ、LED、部分的コヒーレント光源などからの)個別の色光入力を取り込み得るが、他の実施形態では、(例えば、キセノンランプなどからの)白色光入力を取り込み得るということは、理解されるべきである。そのような実施形態では、プリズムアセンブリの手前で、(例えば、別の初段プリズムアセンブリなどを用いて)白色光からの各種色成分を分離した後に、それらの個別の色成分を、本出願の原理に従って構成されたプリズムアセンブリを用いて処理することが可能であり得る。
【0037】
図7A~7Dは、動作時に、本出願のプリズムアセンブリによって入力光ビームが処理される様子を示している。図7Aは、(例えば、白色光、緑色レーザ光、および/または部分的にコヒーレントな緑色光からの)緑色光ビームが(ビーム702として)システムに入力される状況を示している。ビーム702は、図示のように、楔600の面に反射して、(ビーム704として)DMD反射器700に伝送される。
【0038】
図7Bは、DMD反射器がオン状態に設定されているときの反射ビーム708を示している。ビーム708は、さらなる変調および/または投影に向かって、緑用楔612を透過する。図7Cは、DMD反射器がオフ状態に設定されているときの反射ビーム708を示している。ビーム708は、さらなる変調および/または投影を回避するように、緑用ダンプ楔602を透過する。図7Dは、DMD反射器がフラット状態に設定されているときの反射ビーム708を示している。ビーム708は、さらなる変調および/または投影をやはり回避するように、同じく緑用ダンプ楔602を透過する。
【0039】
[改善された熱プロファイル]
上述のように、最近のプロジェクタ・システムは、より高パワーの光源を用いて照射される。そのような光源として、キセノン白色ランプ、高パワーのカラーレーザ、および/または高パワーの部分的コヒーレント光源が挙げられる。そのような先行技術のプリズム構成の性能は、様々な理由で、高パワーの画像プロジェクタ・ディスプレイ・システムでは望ましくない場合がある。単なる一例として、図8は、従来のプリズム(例えば、図4A~4Cに示すものと同一または類似のプリズム)の熱負荷を示している。
【0040】
図示のように、凡例の熱負荷は、1×(802)、2×(804)、3×(806)、4×(808)、6×(810)というように、最も低いものから最も高いものまで展開されている。図示のように、先行技術のプリズムは、全照射の下では、記載のように、高熱負荷の領域を多く有するものとされている。
【0041】
これに対して、図9は、図6A~6Dの9ピースプリズム構成、および本出願の原理に従って構成された他の実施形態の、熱負荷を示している。この実施形態では、プリズムアセンブリは、個別のカラーチャネルに別々の照射入力を受けるので、このプリズムアセンブリの熱負荷は、より良好に分散されることが分かる。
【0042】
[代替実施形態]
本明細書に記載のように、いくつかの代替実施形態は、以下のものを含むことができる。(1)顕著に簡素化されたダイクロイックコーティング(Dichroic Coatings)(2)現在の3チッププリズムとは異なる(例えば、入射するときに、楔/コーティングを通して異なる角度でカラープリズムを通過しなくてよい)、単一の公称角度のシングルパス(3)f/4.5で、角拡散は顕著に小さくなる(4)それぞれの素子で、2~3倍の熱的吸収マージン(thermal absorption margin)(5)散乱を抑えることで、自然に、より高コントラストとなる(6)(例えば、ダイクロイックコーティングと、一部のARコーティングの通過がより少ないことによる)照射路からの後方散乱の低減/排除(7)(例えば、ダイクロイックコーティングと、一部のARコーティングの通過がより少ないことによる)カラープリズムにおけるオフ状態の光路からの前方散乱の低減/排除(8)コストを削減するための、より短尺のカラープリズム(9)現在のデュアル6ピースプリズム構成でのレーザ光源の色合成/分離による損失を排除する(10)より高パワーおよび/または熱管理の改善のための、各色用の個別の光ダンプ(Discrete light dump)
多くの実施形態では、以下の範囲のf/#であれば十分であり得る:非レーザ照射の場合はf/2~f/3、レーザ照射の場合はf/4~f/8。いくつかの好ましい実施形態では、その範囲は、非レーザ照射の場合にf/2.4~f/3、レーザ照射の場合にf/4~f/5とすることができる。具体例として、典型的なキセノンの場合のf/2.4、典型的なレーザの場合のf/4.5が挙げられる。
【0043】
反射防止(AR:Anti-Reflective)コーティング、および光を合成するダイクロイックコーティングに対して、コーティング最適化を実施することができる。入力枝におけるARコーティングは、(例えば、各枝は1色を認識し得るので)色ごと、および(より高いf/#のPSFリレーを使用すると仮定して)角度ごとに、最適化することができる。この最適化の結果として、より良好な透過率(個別の各光路に7面を有して、1面あたり~0.2%)が得られる可能性がある。場合によっては、その角度は「入射角」に関連し、角度がより小さい場合の一部のケースでは、より良好なコーティング透過率を得ることが、より容易であり得る。ダイクロイックコーティングは、(ランプ以外の光源を想定して)狭帯域光について最適化することができ、これにより、より広帯域のコーティングと比較して改善された反射率および透過率を有することができ、さらに、(狭帯域波長の選択に応じて異なる)より狭角について最適化することもできる。いくつかの実施形態において、プリズムアセンブリにおける様々な界面にコーティングを施すことができる。例えば、図6Dにおいて、612と614との界面に赤色反射/緑色透過ダイクロイックコーティングを施すことができる。614と616との界面に青色反射/緑色・赤色透過ダイクロイックコーティングを施すことができる。これらのコーティングを、入力光の全体が透過するわけではないので、散乱または部分的反射の機会は回避される傾向がある。
【0044】
また、ダイクロイックコーティングにおける光制御が望ましい場合があり、意図しない反射はコントラストを低下させる可能性があるので、ダイクロイックコーティングの改善は、コントラスト比にとっても有益であり得る。他の実施形態では、この構成を、単色またはカラーシーケンシャル方式のシングルチップDLPプロジェクタに適用することもできる。
【0045】
以上、本発明の原理を示す添付の図面を併用して読まれる本発明の1つ以上の実施形態についての詳細な説明を提示した。理解されるべきことは、本発明は、かかる実施形態に関連させて記載されているが、本発明は、いずれの実施形態にも限定されないということである。本発明の範囲は請求項によってのみ限定され、本発明は、多くの代替案、変更、および均等物を包括する。本発明についての完全な理解を与えるため、様々な具体的詳細を本明細書で記載している。それらの詳細は、例示目的で提示されるものであり、本発明は、それら特定の詳細の一部またはすべてを伴うことなく、請求項に従って実施することができる。明確にする目的で、発明が不必要に不明瞭になることがないよう、本発明に関連する技術分野で知られている技術的事項については詳細に記載していない。
図1
図2
図3
図4A-4B】
図4C
図5A-5B】
図5C-5D】
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9