(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】積層造形物の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/16 20060101AFI20231031BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20231031BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20231031BHJP
B23K 9/32 20060101ALI20231031BHJP
B23K 10/02 20060101ALI20231031BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20231031BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20231031BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20231031BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20231031BHJP
【FI】
B23K9/16 M
B23K9/032 Z
B23K9/04 G
B23K9/04 N
B23K9/04 Y
B23K9/32 Z
B23K10/02 501Z
B23K15/00 501Z
B23K26/21 Z
B23K26/34
B23K26/70
(21)【出願番号】P 2020213839
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 朱耀
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 瑛介
(72)【発明者】
【氏名】椋田 雄
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512961(JP,A)
【文献】特公昭47-030495(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/16
B23K 9/032
B23K 9/04
B23K 9/32
B23K 10/02
B23K 15/00
B23K 26/21
B23K 26/34
B23K 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記溶加材をトーチに供給しつつ前記溶加材をトーチ先端で加熱、溶融させて溶着ビードを形成する工程と、
シールドガスを噴射して前記溶着ビードを大気雰囲気からシールドする工程と、
を含み、
前記シールドする工程は、
前記トーチ先端に設けた噴射口から前記シールドガスを噴射するとともに、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられ、前記シールドガスの噴射領域が前記トーチから一方向に延びて形成される一対のガスシールド治具のうち、一方を前記トーチの移動方向前方に配置し、他方を前記トーチの移動方向後方に配置
し、
前記トーチと前記一対のガスシールド治具との周囲を覆うカバー部材を配置して、噴射された前記シールドガスを前記カバー部材の内側に滞留させる、
積層造形物の製造方法。
【請求項2】
純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記溶加材をトーチに供給しつつ前記溶加材をトーチ先端で加熱、溶融させて溶着ビードを形成する工程と、
シールドガスを噴射して前記溶着ビードを大気雰囲気からシールドする工程と、
を含み、
前記シールドする工程は、
前記トーチ先端に設けた噴射口から前記シールドガスを噴射するとともに、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられ、前記シールドガスの噴射領域が前記トーチから一方向に延びて形成される一対のガスシールド治具のうち、一方を前記トーチの移動方向前方に配置し、他方を前記トーチの移動方向後方に配置する
工程であり、
前記トーチを移動させながら前記溶着ビードを形成する途中で、前記トーチの姿勢を変更する場合、又は前記トーチの移動方向前方に障害物が存在する場合に、前記一対のガスシールド治具の少なくとも一方を、前記トーチを中心に回転又は前記トーチの軸方向に移動させる、
積層造形物の製造方法。
【請求項3】
純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造装置であって、
トーチと、
前記トーチを移動させるトーチ移動機構と、
前記トーチに前記溶加材を供給する溶加材供給部と、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられた一対のガスシールド治具と、
前記トーチと前記一対のガスシールド治具とにシールドガスを供給するシールドガス供給部と、
を備え、
前記一対のガスシールド治具は、前記シールドガス供給部から供給される前記シールドガスの噴射口が、前記トーチから一方向に延びて形成され、
前記一対のガスシールド治具の一方は、前記トーチの移動方向前方に配置され、他方は前記トーチの移動方向後方に配置され
ており、
さらに、前記トーチと前記一対のガスシールド治具との周囲を覆うカバー部材を備え、
噴射された前記シールドガスを前記カバー部材の内側に滞留させる、
積層造形物の製造装置。
【請求項4】
純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造装置であって、
トーチと、
前記トーチを移動させるトーチ移動機構と、
前記トーチに前記溶加材を供給する溶加材供給部と、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられた一対のガスシールド治具と、
前記トーチと前記一対のガスシールド治具とにシールドガスを供給するシールドガス供給部と、
を備え、
前記一対のガスシールド治具は、前記シールドガス供給部から供給される前記シールドガスの噴射口が、前記トーチから一方向に延びて形成され、
前記一対のガスシールド治具の一方は、前記トーチの移動方向前方に配置され、他方は前記トーチの移動方向後方に配置され
ており、
さらに、前記トーチの移動方向前方に配置された前記ガスシールド治具を、前記トーチを中心に回転移動させる回転機構と、前記トーチの軸線に沿って移動させる直動機構との少なくとも一方を備える、
積層造形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接部にシールドガス(不活性ガス)を供給して、溶接部を空気から遮蔽して酸化を防止するガスシールドアーク溶接が知られている。このようなガスシールドアーク溶接に用いるガスシールド溶接用のトーチが、例えば特許文献1、2に記載されている。
特許文献1のトーチは、トーチに設けるシールドガス通路と、溶接ビードの断面形状を制御する制御ガス通路とを、各々独立した通路となし、溶接アーク部を中心として溶接進行方向に対し前後対称の位置に、上記したそれぞれの通路を縦1列に配列した構成となっている。これによれば、狭開先の溶接において、前方シールドガス流路と後方シールドガス流路を設けてガスの流速をコントロールすることで、溶着ビードの断面形状と溶け込みを改善する、と特許文献1に記載されている。
【0003】
また、特許文献2のトーチは、シールドガス供給部がフロントシールドガス供給部、センターシールドガス供給部、アフターシールドガス供給部に分かれており、センターシールドガス供給部は狭開先の開先底部まで挿入できる外形寸法であって、その中心部にはタングステン電極の周囲がセンターシールドガスの流路になっている。これによれば、溶け込み深さ、ビード形状を調節しつつ溶接欠陥の発生を防止した溶接が行える、と特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭64-48678号公報
【文献】特開平9-295149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、活性金属からなる母材又は溶加材(溶接ワイヤ)を用いてガスシールドアーク溶接する場合、活性金属は、大気との親和力が高温時に特に強くなり、空気中の酸素、窒素と反応して酸化物、窒化物を形成しやすくなる。そのため、溶接後の酸化物、窒化物の形成部分の硬化及び脆弱化が顕著となる。
そこで、活性金属をガスシールドアーク溶接する場合、一般的には大気と活性金属との接触を避けるために、アフターシールド用の治具を用い、トーチ付近の局部的なガスシールドを実施している。
ところが、純チタン又はチタン合金等の溶加材を溶融させて積層造形する際には、アフターシールド用の治具を用いただけでは造形体への酸素及び窒素の侵入を規定値以下に抑えることは依然として困難となる。
【0006】
そこで本発明は、純チタン又はチタン合金の溶加材を用いる場合であっても、溶着ビードへの酸素及び窒素の侵入を抑制して、積層造形物の機械的特性が低下することを防止できる積層造形物の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記溶加材をトーチに供給しつつ前記溶加材をトーチ先端で加熱、溶融させて溶着ビードを形成する工程と、
シールドガスを噴射して前記溶着ビードを大気雰囲気からシールドする工程と、
を含み、
前記シールドする工程は、
前記トーチ先端に設けた噴射口から前記シールドガスを噴射するとともに、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられ、前記シールドガスの噴射領域が前記トーチから一方向に延びて形成される一対のガスシールド治具のうち、一方を前記トーチの移動方向前方に配置し、他方を前記トーチの移動方向後方に配置する、
積層造形物の製造方法。
(2) 純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造装置であって、
トーチと、
前記トーチを移動させるトーチ移動機構と、
前記トーチに前記溶加材を供給する溶加材供給部と、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられた一対のガスシールド治具と、
前記トーチと前記一対のガスシールド治具とにシールドガスを供給するシールドガス供給部と、
を備え、
前記一対のガスシールド治具は、前記シールドガス供給部から供給される前記シールドガスの噴射口が、前記トーチから一方向に延びて形成され、
前記一対のガスシールド治具の一方は、前記トーチの移動方向前方に配置され、他方は前記トーチの移動方向後方に配置される、
積層造形物の製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、純チタン又はチタン合金の溶加材を用いる場合であっても、溶着ビードへの酸素及び窒素の侵入を抑制して、積層造形物の機械的特性が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ガスシールド溶接装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、トーチに取り付けられる一対のガスシールド治具とカバー部材との概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3の(A)は、ガスシールド治具の内部構造を示す概略断面図であり、(B)は、(A)に示すガスシールド治具のIII-III線に沿った概略断面図である。
【
図4】
図4は、溶接中のガスシールド治具とカバー部材によるシールドガスの流れを模式的に示す説明図である。
【
図5】
図5の(A),(B)は、トーチの溶接方向の下流側にのみガスシールド治具を設けて、ビフォーシールドガスを供給しない場合の様子を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6の(A),(B)は、トーチの溶接方向の上流側及び下流側にガスシールド治具を設けて、ビフォーシールドガス及びアフターシールドガスを供給する場合の様子を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7の(A),(B)は、ガスシールド治具を回転させて障害物との干渉を回避する様子を上面視で示す説明図である。
【
図8】
図8の(A),(B)は、ガスシールド治具を昇降移動させて障害物との干渉を回避する様子を側面視で示す説明図である。
【
図9】
図9は、酸素濃度と窒素濃度の分析結果をビフォーシールドの有無とカバー部材の有無に応じて示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る積層造形物の製造装置は、ここではガスシールドアーク溶接により積層造形物を造形する場合を例に説明するが、本発明はこれに限らず、レーザ溶接等の他の溶接方式を用いた場合にも適用できる。
【0011】
<ガスシールド溶接装置>
図1は、ガスシールド溶接装置の概略構成図である。
積層造形物の製造装置であるガスシールド溶接装置100は、溶接ロボット11と、ロボットコントローラ13と、溶加材供給部15と、シールドガス供給部17と、溶接電源19と、制御部21と、を備える。
【0012】
溶接ロボット11は、多関節ロボットであり、先端軸にトーチ23が支持される。トーチ23の位置及び姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。トーチ23は、溶加材供給部15から連続供給される溶加材Mをトーチ先端から突出した状態に保持する。このように、溶接ロボット11はトーチ移動機構として機能する。
【0013】
トーチ23は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが溶接部に供給される。アーク溶接法としては、被覆アーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接又はプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。
【0014】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ23は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構によりトーチ23に送給される。そして、トーチ23を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、ベースプレート25上に溶加材Mの溶融凝固体である溶着ビードBが形成される。
【0015】
溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビーム又はレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビーム又はレーザにより加熱する場合、加熱量をさらに細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層造形物の更なる品質向上に寄与できる。
【0016】
溶加材Mは、チタン及びチタン合金溶接用の溶接ワイヤが用いられる(例えば、JIS Z 3331参照)。
【0017】
シールドガス供給部は、不活性ガスを溶接部に供給する。MIG溶接ではアルゴン、ヘリウム(又はこれらの混合ガス)、あるいは、これに酸素、炭酸ガスのような活性ガスを少量添加したガスをシールドガスとして用いる。一方、MAG溶接では炭酸ガス、アルゴンと炭酸ガスの混合ガスをシールドガスとし、TIG溶接ではアルゴンガスを用いる。さらに、レーザ溶接では、窒素、アルゴン、ヘリウム等をシールドガスとする。
【0018】
トーチ23には、詳細は後述するが、シールドガスの噴射領域がトーチ23から一方向に延びて形成される一対のガスシールド治具27A,27Bが、それぞれ独立して設けられる。一方のガスシールド治具27Aは、トーチ23の移動方向前方に配置されて、ビフォーシールドガスを溶接部の溶接方向WDの上流側に噴射する。他方のガスシールド治具27Bは、トーチ23の移動方向後方に配置されて、アフターシールドガスを溶接部の溶接方向WDの下流側に噴射する。
【0019】
また、トーチ23には、トーチ23と一対のガスシールド治具27A,27Bとの周囲を覆うカバー部材29を設けることが好ましい。
【0020】
ロボットコントローラ13は、制御部21からの指示を受けて、溶接ロボット11の各部を駆動し、必要に応じて溶接電源の出力を制御する。
【0021】
制御部21は、CPU、メモリ、ストレージ等を備えるコンピュータ装置により構成され、予め用意された駆動プログラム、又は所望の条件で作成した駆動プログラムを実行して、溶接ロボット11等の各部を駆動する。これにより、駆動プログラムに応じてトーチ23が移動して、ベースプレート25上に複数層の溶着ビードBを積層することで、多層構造の積層造形物Wが造形される。
【0022】
<ガスシールド治具>
図2は、トーチ23に取り付けられる一対のガスシールド治具27A,27Bとカバー部材29との概略構成を示す斜視図である。
一対のガスシールド治具27A,27Bは、トーチ23に固定された支持部31にそれぞれ支持される。支持部31は、ガスシールド治具27Aをトーチ23の軸線Lを中心に回転自在に支持するとともに、軸線Lに沿って移動自在に支持する。また、支持部31は、ガスシールド治具27Bについても軸線Lを中心に回転自在に、且つ軸線Lに沿って移動自在に支持するのが好ましいが、回転と移動とのいずれか一方のみ自在に支持してもよく、ガスシールド治具27Bをトーチ23に不動に固定することであってもよい。
【0023】
支持部31は、図示しない空圧式又は電動式等のアクチュエータを備える。これにより、支持部31は、制御部21又はロボットコントローラ13からの指令を受けて、トーチ23の移動方向前方に配置されたガスシールド治具27Aを、トーチ23を中心に回転移動させる回転機構として機能するとともに、トーチ23の軸線Lに沿って移動させる直動機構として機能する。支持部31は、ガスシールド治具27Bをガスシールド治具27Aと同様に、回転及び直動させる機能を有していてもよい。
【0024】
図3の(A)は、ガスシールド治具27A,27Bの内部構造を示す概略断面図であり、(B)は、(A)に示すガスシールド治具27A,27BのIII-III線に沿った概略断面図である。なお、
図3では支持部31を省略して示している。
図3の(A)に示すように、ガスシールド治具27A,27Bは、開口部33aを有する直方体の箱形である筐体33と、開口部33aを覆う銅又はステンレス材からなる金網35と、筐体33の内部に配置され、スチールウール又はメッシュの積層材からなる整流体37と、筐体33にシールドガスG2を供給するガス供給管39と、ガス供給管39に接続された拡散パイプ41と、を有する。整流体37は、筐体33内の金網35側に配置され、整流体37の金網35側と反対側には、拡散パイプ41が配置されるとともに内部空間43が画成されている。
【0025】
ガス供給管39は、筐体33の上面33bから筐体内33に導入され、筐体33内に配置された拡散パイプ41に接続される。拡散パイプ41には複数の開口41aが形成され、各開口41aからシールドガスG2が筐体33内の内部空間43に分散して放出される。拡散パイプ41から放出されたシールドガスG2は、内部空間43で対流した後、整流体37によってガスの流れを層流化された後、金網35から筐体33の外部に放出される。上記のガスシールド治具27A,27Bの構成は一例であって、例えば、拡散パイプ41を省略した構成、又は筐体33内を空洞とした構成にしてもよい。また、一対のガスシールド治具27A,27Bは、直方体状の互いに同じ形状を有しているが、形状はこれに限らない。
【0026】
<カバー部材>
図2に示すように、カバー部材29は、トーチ23に固定されるカバー支持部45と、カバー支持部45に弾性変形自在に保持され、トーチ23を囲んで配置される骨格部材47と、骨格部材47を覆って設けられ、トーチ周囲空間51を画成するシート部材49と、を備える。本構成では、シート部材49の内側に画成されたトーチ周囲空間51に、シールドガスG1,G2がシールドガス供給部17から供給される。
【0027】
カバー支持部45は、骨格部材47とシート部材49とを一体に支持し、必要に応じて骨格部材47とシート部材49とをトーチ23の軸線Lに沿って上下動させるスライド機構を設けてもよい。その場合のスライド機構としては、不図示のねじによる螺合、又はエアシリンダ等のアクチュエータを用いた構成等を採用できる。
【0028】
骨格部材47は、少なくとも1つの棒状の支持片47aと、円環状の第1環状部47bと、円環状の第2環状部47cと、複数の棒状の支柱部47dと、を有する。
支持片47aの一端側はカバー支持部45に固定され、他端側は第1環状部47bに固定される。
図2に示す構成では、複数の支持片47aがカバー支持部45に放射状に接続されている。
【0029】
第1環状部47bはトーチ23の基端側に配置され、第2環状部47cは第1環状部47bとは離れてトーチ23の先端側に配置されている。第1環状部47bと第2環状部47cとは、複数の支柱部47dによって連結されている。第2環状部47cは第1環状部47bよりも大径であり、これにより、骨格部材47は、トーチ23の軸線Lに沿ってトーチ基端側からトーチ先端側に向かうに従って裾広がりになる形状を有する。
【0030】
シート部材49は、骨格部材47を覆って設けられる。シート部材49は、その内側のトーチ周囲空間51がシールドガスによって満たされることで、シート部材49の内側の溶接部を大気から遮断する。また、シート部材49のトーチ基端側となる上方には開口部49aが設けられ、トーチ周囲空間51を大気に解放している。つまり、シート部材49は、トーチ23の軸線Lに沿って貫通する円錐台形状(円錐台の周面形状)を有し、骨格部材47の裾広がりした先端縁(第2環状部47cの位置)から更に延びた位置に外縁端49bが設けられる。シート部材49は、骨格部材47に接する部分の少なくとも一部が骨格部材47と接着されるか係止されることで、骨格部材47と一体にされる。
【0031】
骨格部材47は、シート部材49の形状を維持できる程度の強度があればよく、変形が容易なスチール線、ピアノ線、硬鋼線、ステレス線等の金属製の線材、樹脂製の線材で構成される。更に線材に限らず、帯材、板材等を単独、又は組み合わせて構成してもよい。
【0032】
シート部材49は、トーチ23近くに配置されるため、耐火シート又は防炎シートであることが好ましい。また、シート部材49の全体又は少なくとも一部が透光性を有する材料であれば、シート部材49の内側となる溶接部の様子を視認でき、溶接状態を簡単に監視できるため好ましい。
【0033】
防炎シート又は不燃シートとしては、例えば、JIS A 8952 「建築用工事シート」に定められた防炎性を備えるシート、JIS A 1323-1995 「建築工事用シートの溶接及び溶断火花に対する難燃性試験方法」に定められたA種、B種、C種のシート等が一例として挙げられる。また、透光性を有するシートとしては、例えば、ガラス繊維クロスの基布に光硬化樹脂をコーティングした透明不燃シート等が一例として挙げられる。
【0034】
本構成のカバー部材29は、トーチ23と一対のガスシールド治具27A,27Bとを覆い、トーチ23に供給されるシールドガスG1と、ガスシールド治具27A,27Bに供給されるシールドガスG2とを、カバー内側の空間に滞留させる。
【0035】
<ガスシールド治具による作用効果>
次に、ガスシールド治具27A,27Bによるガスシールドの様子について説明する。
図4は、溶接中のガスシールド治具27A,27Bとカバー部材29によるシールドガスの流れを模式的に示す説明図である。
【0036】
トーチ23からアークを発生させてベースプレート25上に溶着ビードBを形成する場合、トーチ23からシールドガスG1が溶接部に供給されるとともに、ガスシールド治具27Aからビフォーシールドガス、及びガスシールド治具27Bからアフターシールドガスが供給される。ビフォーシールドガスとアフターシールドガスとは、同じ種類のシールドガスであってもよく、異なる種類であってもよい。また、ガス供給速度(圧力)は、双方で同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
ここで、ビフォーシールドガスの有無による溶接部の状態の違いについて説明する。
図5の(A),(B)は、トーチ23の溶接方向WDの下流側にのみガスシールド治具27Bを設けて、ビフォーシールドガスを供給しない場合の様子を模式的に示す説明図である。
図6の(A),(B)は、トーチ23の溶接方向WDの上流側及び下流側にガスシールド治具27A,27Bを設けて、ビフォーシールドガス及びアフターシールドガスを供給する場合の様子を模式的に示す説明図である。
【0038】
図5の(A)に示すように、ベースプレート25の表面には、吸着酸素・吸着窒素55が存在している。
図5の(B)に示すように、トーチ23を溶接方向WDに移動させていくと、トーチ23の直下における溶接部では、吸着酸素・吸着窒素55が溶接金属に取り込まれ、溶着ビードに酸素が侵入しやすくなる。
【0039】
一方、
図6の(A)に示すように、トーチ23の溶接方向WDの上流側にガスシールド治具27Aを設けてビフォーシールドガスを供給すると、ベースプレート25の表面の吸着酸素・吸着窒素55がビフォーシールドガスによって吹き飛ばされる。その結果、
図6の(B)に示すように、トーチ23の直下における溶接部では、吸着酸素・吸着窒素55が減少する。このようにして、ビフォーシールドガスを供給すると、溶着ビードへの酸素・窒素の侵入を抑制できる効果が得られると考えられる。
【0040】
また、
図4に示すように、トーチ23からのシールドガスG1と、ガスシールド治具27A,27BからシールドガスG2とがカバー部材29内に供給されると、供給されたシールドガスG1,G2は、シート部材49で囲まれたトーチ周囲空間51内で対流する。すると、アルゴン、炭酸ガス等のシールドガスG1,G2は比重が空気より大きいため、トーチ周囲空間51の下方(ベースプレート25の表面から高さH1までの領域)に溜まる。また、溶接時のヒューム、及び余剰となったシールドガスG1,G2は、シート部材49のトーチ基端側(
図4の上方)に設けられた開口部49aを通じてトーチ周囲空間51から排出される。
【0041】
そして、シート部材49の裾広がりした外縁端49bは、ベースプレート25と接するか、ベースプレート25の表面近くまで延びて配置されるため、外縁端49bとベースプレート25との間の高さH2の全隙間面積は、開口部49aの開口面積と比較して小さい。そのため、シールドガスG1,G2は、シート部材49の外縁端49bからの漏出が抑制され、トーチ周囲空間51の下側で滞留し続ける。これにより、溶接部、及び溶接終了部は、シールドガスG1,G2で常時覆われて、大気との遮断性が向上する。
【0042】
このように、トーチ周囲空間51に供給されたシールドガスG1,G2は、トーチ周囲空間51の下部(高さH1の領域)で一度滞留した後に、主に上方の開口部49aから排出される。
また、シート部材49の外縁端49bの高さH2が高くなるほど、トーチ周囲空間51に供給されたシールドガスG1,G2は、高さH2の隙間からの排出割合が増加し、トーチ周囲空間51での滞留時間が短くなる。したがって、カバー部材29の高さH2の隙間を調整することで、トーチ周囲空間51におけるシールドガスG1,G2の濃度、圧力、入れ替わり頻度等の溶接環境条件を変更できる。これによれば、溶接対象に応じた溶接条件の適正化が図れ、溶接品質を向上できる。
【0043】
また、
図4に示すガスシールド治具27Aにように、溶接方向WDの上流側に配置されたままでは、溶接場所によっては障害物と干渉する場合が生じる。そこで、本構成のガスシールド治具27Aでは、前述したようにトーチ23を中心に回転自在に支持している。
【0044】
図7の(A),(B)は、ガスシールド治具27Aを回転させて障害物との干渉を回避する様子を上面視で示す説明図である。
図7の(A)に示すように、溶接方向WDの上流側に障害物となる壁部57が存在する場合、ガスシールド治具27A,27Bが直線状に配置されたままトーチ23を移動させると、ガスシールド治具27Aが壁部57に突き当たる。その場合、トーチ23を壁部57の近傍にまで移動できない。そこで、
図7の(B)に示すように、ガスシールド治具27Aを、トーチ23を中心に矢印R方向に回転させ、ガスシールド治具27Aと壁部57との干渉を回避する。これにより、トーチ23を壁部57により接近した位置に配置でき、溶接可能な範囲を拡大できる。
【0045】
ガスシールド治具27Aの障害物からの回避動作は、回転動作に限らず、溶接位置からの高さを変更するスライド動作であってもよい。
図8の(A),(B)は、ガスシールド治具27Aを昇降移動させて障害物との干渉を回避する様子を側面視で示す説明図である。
【0046】
図8の(A)に示すように、溶接方向WDの上流側に障害物となる既設の溶着ビードBが存在する場合、ガスシールド治具27A,27Bが同じ高さで直線状に配置されたままトーチ23を移動させると、ガスシールド治具27Aが溶着ビードBに突き当たる。その場合、トーチ23を溶着ビードBの近傍にまで移動できない。そこで、
図8の(B)に示すように、ガスシールド治具27Aを、トーチ23の軸線Lに沿った矢印S方向にスライドさせ、ガスシールド治具27Aと溶着ビードBとの干渉を回避する。これにより、トーチ23を溶着ビードBにより接近した位置に配置でき、溶接可能な範囲を拡大できる。この場合には、更にトーチ23を上昇させることで、溶着ビードB上へ新たな溶着ビードを形成することもできる。
【0047】
ガスシールド治具27Aの回転方向、回転角等の条件、及びスライド方向、スライド量等の条件は、壁部57、溶着ビードB等の障害物の形状に応じて適宜設定される。ガスシールド治具27Aの回転駆動、スライド駆動の指示は、予め定めた駆動プログラムに含ませてもよく、トーチ23と一体に移動するイメージセンサ、磁気センサ、各種の接触式の位置センサを設けることで、障害物をリアルタイムで検出し、溶着ビード形成時に障害物が検出された場合に、ガスシールド治具27Aを回転駆動、スライド駆動、又は回転及びスライド駆動して、障害物との干渉を回避する構成にしてもよい。
【0048】
上記はガスシールド治具27Aのみ回転、スライド動作させているが、ガスシールド治具27Bについても同様に回転、スライド動作を可能にしてもよい。いずれの場合でも、トーチ23を保持したロボットの姿勢限界と可動範囲の限界とを拡大でき、各種の溶接場面に柔軟に対応できる。
【0049】
なお、カバー部材29は、柔軟に変形できる構造であり、骨格部材47は、外力によって撓んだ形状が、その外力が解除されると自身の弾性によって元の形状に復帰する弾性復元力を有する。そのため、カバー部材29はトーチ23の移動を妨げない。
【実施例】
【0050】
前述したガスシールド治具27A,27Bによるビフォーシールド、アフターシールドを実施しない場合と実施する場合、及びガスシールド治具27Bを使用する場合としない場合との溶着ビードの酸素濃度と窒素濃度とをそれぞれ求めた。
【0051】
溶着ビードを形成した溶接条件は、以下のとおりである。
溶接電流:160A
溶接電圧:15V
(直流パルス駆動)
溶接速度:20cm/min
(溶接入熱量:約720J/mm)
トーチガス流量:25L/min、Ar(100%)
ビフォーシールドガス流量:25L/min、Ar(100%)
アフターシールドガス流量:25L/min、Ar(100%)
溶加材:純チタンソリッドワイヤ WT2G(大同特殊鋼製)
造形形状:3パス×3層の積層体
【0052】
上記した3×3の溶着ビードからなる積層体の溶着ビード毎に酸素濃度と窒素濃度とを不活性化ガス溶解法により測定した(酸素測定方法:JIS H 1620、窒素測定方法:JIS H 1612)。
【0053】
アフターシールドを実施した場合における、ビフォーシールドの有無とカバー部材の有無による酸素濃度と窒素濃度との分布の違いを確認したところ、カバー部材を使用してシールドガスを滞留させた場合は、滞留させない場合と比較すると、酸素濃度及び窒素濃度の低下が認められた。ただし、酸素濃度及び窒素濃度の分布はバラつきがあり、JIS H4600 2種の規格である酸素濃度2000ppm以下、窒素濃度300ppm以下の範囲を外れることもあった。具体的には、窒素濃度に関して限界値0.03質量%(上記したJIS規格による300ppm対応値)を超えることがあった。
【0054】
図9は、酸素濃度と窒素濃度の分析結果をビフォーシールドの有無とカバー部材の有無に応じて示したグラフである。
【0055】
ビフォーシールドを実施せず、カバー部材を設けない場合(試験例1)は、酸素含有量が0.16質量%、窒素含有量が0.046質量%であった。
また、ビフォーシールドを実施せず、カバー部材を設けた場合(試験例2)は、酸素含有量が0.14質量%、窒素含有量が0.043質量%となり、試験例1よりも特に酸素含有量が低下した。
【0056】
一方、ビフォーシールドを実施し、カバー部材を設けない場合(試験例3)は、酸素含有量が0.143質量%、窒素含有量が約0.03質量%となり、試験例1、2よりも窒素含有量が更に低下した。
更に、ビフォーシールドを実施し、カバー部材を設けた場合(試験例4)は、酸素含有量が0.133質量%、窒素含有量が約0.03質量%となり、試験例3よりも酸素含有量が更に低下した。
【0057】
以上より、ビフォーシールドとアフターシールドとを共に実施し、且つカバー部材を設ける場合には、酸素含有量と窒素含有量とがいずれも最小値になり、高品質な溶着ビードが形成された。
【0058】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0059】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造方法であって、
前記溶加材をトーチに供給しつつ前記溶加材をトーチ先端で加熱、溶融させて溶着ビードを形成する工程と、
シールドガスを噴射して前記溶着ビードを大気雰囲気からシールドする工程と、
を含み、
前記シールドする工程は、
前記トーチ先端に設けた噴射口から前記シールドガスを噴射するとともに、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられ、前記シールドガスの噴射領域が前記トーチから一方向に延びて形成される一対のガスシールド治具のうち、一方を前記トーチの移動方向前方に配置し、他方を前記トーチの移動方向後方に配置する、
積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、トーチの移動方向前方の配置したガスシールド治具により溶接部のビフォーシールドが行え、トーチの移動方向後方に配置したガスシールド治具により溶接部のアフターシールドが行える。そして、双方のガスシールド治具がトーチに独立して設けられるため、一対のガスシールド治具の一方と他方とを自在に配置できる。これにより、一対のガスシールド治具を溶接場面に応じた配置にでき、溶接部の表面に残存する吸着酸素・吸着窒素をより確実に除去できる。溶着ビードの酸素濃度及び窒素濃度を低減できる。
【0060】
(2) 前記シールドする工程は、前記トーチと前記一対のガスシールド治具との周囲を覆うカバー部材を配置して、噴射された前記シールドガスを前記カバー部材の内側に滞留させる、(1)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、カバー部材内のトーチ周囲空間にシールドガスを滞留させることができ、形成された溶着ビードを確実に大気雰囲気からシールドできる。
【0061】
(3) 前記トーチを移動させながら前記溶着ビードを形成する途中で、前記トーチの姿勢を変更する場合、又は前記トーチの移動方向前方に障害物が存在する場合に、前記一対のガスシールド治具の少なくとも一方を、前記トーチを中心に回転又は前記トーチの軸方向に移動させる、(1)又は(2)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、ガスシールド治具を回転又は移動させることで障害物との干渉を防止して、溶接可能範囲を拡大できる。
【0062】
(4) 純チタン又はチタン合金の溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを繰り返し積層して積層造形物を造形する積層造形物の製造装置であって、
トーチと、
前記トーチを移動させるトーチ移動機構と、
前記トーチに前記溶加材を供給する溶加材供給部と、
前記トーチにそれぞれ独立して設けられた一対のガスシールド治具と、
前記トーチと前記一対のガスシールド治具とにシールドガスを供給するシールドガス供給部と、
を備え、
前記一対のガスシールド治具は、前記シールドガス供給部から供給される前記シールドガスの噴射口が、前記トーチから一方向に延びて形成され、
前記一対のガスシールド治具の一方は、前記トーチの移動方向前方に配置され、他方は前記トーチの移動方向後方に配置される、
積層造形物の製造装置。
この積層造形物の製造装置によれば、トーチの移動方向前方の配置したガスシールド治具により溶接部のビフォーシールドが行え、トーチの移動方向後方に配置したガスシールド治具により溶接部のアフターシールドが行える。そして、双方のガスシールド治具がトーチに独立して設けられるため、一対のガスシールド治具の一方と他方とを自在に配置できる。これにより、一対のガスシールド治具を溶接場面に応じた配置にでき、溶接部の表面に残存する吸着酸素・吸着窒素をより確実に除去できる。溶着ビードの酸素濃度及び窒素濃度を低減できる。
【0063】
(5) 前記トーチと前記一対のシールド部材との周囲を覆うカバー部材を備え、
噴射された前記シールドガスを前記カバー部材の内側に滞留させる、(4)に記載の積層造形物の製造装置。
この積層造形物の製造装置によれば、カバー部材内のトーチ周囲空間にシールドガスを滞留させることができ、形成された溶着ビードを確実に大気雰囲気からシールドできる。
【0064】
(6) 前記トーチの移動方向前方に配置された前記ガスシールド治具を、前記トーチを中心に回転移動させる回転機構と、前記トーチの軸線に沿って移動させる直動機構との少なくとも一方を備える、(4)又は(5)に記載の積層造形物の製造装置。
この積層造形物の製造装置によれば、ガスシールド治具を回転又は移動させることで障害物との干渉を防止して、溶接可能範囲を拡大できる。
【符号の説明】
【0065】
11 溶接ロボット
13 ロボットコントローラ
15 溶加材供給部
17 シールドガス供給部
19 溶接電源
21 制御部
23 トーチ
25 ベースプレート
27A,27B ガスシールド治具
29 カバー部材
31 支持部
33 筐体
33a 開口部
35 金網
37 整流体
39 ガス供給管
41 拡散パイプ
41a 開口
43 内部空間
45 カバー支持部
47 骨格部材
47a 支持片
47b 第1環状部
47c 第2環状部
47d 支柱部
49 シート部材
49a 開口部
49b 外縁端
51 トーチ周囲空間
55 吸着酸素・吸着窒素
57 壁部
100 ガスシールド溶接装置(積層造形物の製造装置)
B 溶着ビード