(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20231031BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231031BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231031BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2020520106
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 US2018053867
(87)【国際公開番号】W WO2019079026
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】オーヴィル、テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ジアランフィラ、ゲイリー、エル.
(72)【発明者】
【氏名】コール、エリック、イー.
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、ダニエル
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/044402(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044401(WO,A1)
【文献】特表2008-531817(JP,A)
【文献】特開2016-098333(JP,A)
【文献】特開2015-108077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)
(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び
(b)カシューナッツ殻液でキャップされた、少なくとも1種のポリウレタン強靱化剤 を含む液体樹脂系であって;
前記液体樹脂系、構成成分(I)の粘度が、15℃の温度で800Pa・s未満であり;及び前記液体樹脂系、構成成分(I)の前記粘度が、60℃の温度で5Pa・s超である液体樹脂系と;
(II)
(c)少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカ
を含む固体材料であって、前記ヒュームドシリカが5重量パーセント超の濃度で接着剤組成物中に存在する固体材料と;
(III)
(d)少なくとも1種の潜在的な熱活性化硬化剤
を含む硬化性材料と
を含むエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物であって、
前記エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物のレオロジーは、前記接着剤組成物が15℃以上の温度でポンピングできるものであり、ポンピングできるとは、15℃の温度での接着剤組成物の粘度が4,000Pa・s未満であることを意味し、
前記固体材料、構成成分(II)の前記疎水性ヒュームドシリカ 対 前記液体樹脂系、構成成分(I)の質量比が0.08以上であ
り、
前記少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカが、少なくとも1つのグレードのポリ(ジメチルシロキサン)で処理されたヒュームドシリカである、接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂、構成成分(a)が、ビスフェノールA又はビスフェノールFから誘導される少なくとも1種の液体エポキシ樹脂;及び/又はビスフェノールA又はビスフェノールFから誘導される少なくとも1種の液体エポキシ樹脂と、ビスフェノールA又はエポキシノボラック樹脂から誘導される少なくとも1種の固体エポキシ樹脂とのブレンドである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の硬化剤、構成成分(d)がジシアンジアミドである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記接着剤組成物の耐洗い流し性が、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤が油を引いた金属パネル上で7ミリメートルよりも多く流れないものであり、前記スプレー洗い流し試験条件とは、前記接着剤組成物が、スプレー洗い流し試験において60℃以下の水温及び1平方インチ当たり50ポンド(psi)以下の圧力に曝されることをいう、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(e)少なくとも1種の充填材;(f)少なくとも1種の硬化促進剤;及び(g)構成成分(a)とは異なる少なくとも1種の液体樹脂の1つ以上を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(1)(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)カシューナッツ殻液でキャップされた、少なくとも1種のポリウレタン強靱化剤 を含む液体樹脂系であって、粘度が15℃の温度で800Pa・s未満であり60℃の温度で5Pa・s超である、液体樹脂系と;
(2)(c)接着剤組成物中に5重量パーセント超の濃度で存在する少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含
み、前記少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカが、少なくとも1つのグレードのポリ(ジメチルシロキサン)で処理されたヒュームドシリカである、固体材料と;
(3)(d)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性材料と
を混ぜ合わせる工程を含む、接着剤組成物の製造方法であって、
前記接着剤組成物が、少なくとも15℃の温度に曝された場合にポンピングできるレオロジーを示し、ポンピングできるとは、15℃の温度での前記接着剤組成物の粘度が4,000Pa・s未満であることを意味し、
前記接着剤組成物が、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤組成物が油を引いた金属パネル上で7ミリメートルよりも多く流れない耐洗い流し性を示し、前記スプレー洗い流し試験条件とは、前記接着剤組成物が、スプレー洗い流し試験において60℃以下の水温及び1平方インチ当たり50ポンド(psi)以下の圧力に曝されることをいう、方法。
【請求項7】
2つの基材の接合方法であって、
(1)(I)(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)カシューナッツ殻液でキャップされた、少なくとも1種のポリウレタン強靱化剤を含む、液体樹脂系であって、粘度が15℃の温度で800Pa・s未満であり60℃の温度で5Pa・s超である、液体樹脂系と;
(II)(c)接着剤組成物中に5重量パーセント超の濃度で存在する少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含
み、前記少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカが、少なくとも1つのグレードのポリ(ジメチルシロキサン)で処理されたヒュームドシリカである、固体材料と;
(III)(d)少なくとも1種の硬化剤を含む、硬化性材料と
を混ぜ合わせることによって、エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物を形成する工程であって、
前記エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物は、
(i)少なくとも15℃の温度に曝された場合にポンピングできるレオロジーを示し、ポンピングできるとは、15℃の温度での前記接着剤組成物の粘度が4,000Pa・s未満であることを意味し、かつ
(ii)スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤組成物が油を引いた金属パネル上で7ミリメートルよりも多く流れない耐洗い流し性を示し、前記スプレー洗い流し試験条件とは、前記接着剤組成物が、スプレー洗い流し試験において60℃以下の水温及び1平方インチ当たり50ポンド(psi)以下の圧力に曝されることを意味
する、工程と;
(2)第1基材を別の第2基材と接触させる前に工程(1)からの前記エポキシベースの接着剤組成物を前記第1基材の表面の少なくとも一部に接触させ、前記2つの基材間のボンドラインにおいて工程(1)の前記接着剤組成物の層を形成してアセンブリを形成する工程と;
(3)前記2つの基材間の前記ボンドラインにおける前記エポキシベースの接着剤組成物の前記層を介して前記第1基材と第2基材とを接触させてアセンブリを形成する工程と;
(4)工程(3)の前記アセンブリを、洗浄、スプレー及び/又は浴処理にかける工程と;
(5)工程(4)後に、前記ボンドラインにおいて前記2つの基材に接合した硬化接着剤を形成するのに十分な硬化温度に加熱することによって前記ボンドラインにおける前記エポキシベースの接着剤組成物層を硬化させる工程と
を含む2つの基材の接合方法。
【請求項8】
請求項1に記載のエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物を含む、自動車部品を接合するためのポンピングでき、耐洗い流し性のエポキシペースト接着剤であって、
ポンピングできるとは、15℃の温度での前記接着剤の粘度が4,500Pa・s未満であることを意味し、
耐洗い流し性のエポキシペースト接着剤とは、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤が油を引いた金属パネル上で7ミリメートルよりも多く流れないものであり、前記スプレー洗い流し試験条件とは、前記接着剤が、スプレー洗い流し試験において60℃以下の水温及び1平方インチ当たり50ポンド(psi)以下の圧力に曝されることをいう、エポキシペースト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐洗い流し性のエポキシベースの構造用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な自動車製造プロセスにおいて、まだ硬化していない、一成分型(1K)衝突耐久性接着剤(CDA)ペーストが、車両の金属パネルにロボットによって適用される。次に、金属パネルは、一緒に対にされ、所定の位置にパネルを固定するためにボンドラインに沿って機械的に締結されるか又は溶接される。次に、(一緒に機械的に締結された)金属パネルを持った車両の全車体は、(1)油/ほこりを除去する及び/又は(2)防食のために車体の表面にコーティングを適用するために一連のスプレー及び浴にさらされる。
【0003】
未硬化CDAは、自動車製造プロセス中の比較的高い温度(例えば、約60℃以下)と大量の水への暴露とに耐えるように設計されるべきである。CDAが上記の条件に耐えることができない場合、車体が洗浄/処理浴にさらされるときにCDAは車体から「洗い流される」であろう。そのとき、車体の表面から洗い流されるCDAは、洗浄/処理浴と接触し、汚染するであろう。オリジナルエンジニアリング製造業者(OEM)にとって更により大きな問題は、洗浄/処理浴中に分散した、洗い流されたCDAが多くの場合、洗い流されたCDAが堆積することを望まれない車体の異なるエリアで車体の表面上へ再堆積するであろうことである。再堆積したCDAは、その後、洗い流されたCDAが望ましくもなく再堆積した車体表面エリアの手動除去及び修復を必要とし、望まれない消費時間及び余分な仕事につながる。除去及び修復のこの余分な仕事は、洗い流されたCDAが望ましくもなく再堆積した車体表面エリアのペイント欠陥を防ぐために必要とされる。
【0004】
洗い流しを防ぐための高温で適切なレオロジーを有するCDAの必要性に加えて、CDAは、低温での良好なポンパビリティを有するべきである、すなわち、CDAは、CDAが15度摂氏(℃)ほどに低い温度でポンプ送液することができるようなレオロジー材料特性を有するべきである。CDAを含めて、ほとんどの材料は、材料が冷えるにつれて粘度が指数関数的に増加する。上記の理由で、これまで、CDAのポンパビリティを維持しながら、洗い流しを最小限にするためのCDAのレオロジー特性を達成することは、当業者による課題であった。これまで、公知の接着剤は、許容できる耐洗い落とし性を提供せず、低温でポンピングできない。それ故、低温でのポンパビリティのためのCDAのレオロジー要件を維持しながら、CDAの耐洗い流し性特性を向上させることは、CDAの製造の分野における進歩であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外にも、(i)所定の粘度での液体樹脂及び(ii)エポキシ接着剤組成物中の疎水性ヒュームドシリカ:液体樹脂の所定の比を含めることによって、低温でのポンパビリティのためのそのレオロジー要件を維持しながら接着剤の耐洗い流し性を改善できることが見出された。
【0006】
本発明は、有益なレオロジー特性を有する、エポキシベースの衝突耐久性接着剤(CDA)組成物を指向する。一実施形態において、本発明のCDA組成物は、低温(例えば、約25℃未満)でポンピングできるし、約15℃以上の温度で耐洗い流し性の増加を示す。低温ポンピングできる、耐洗い流し性のCDA組成物は、(I)液体樹脂系と;(II)固体材料と、(III)硬化性材料とを組み合わせることによって提供される。耐洗い流し性の増加は、有益には、少なくとも0.08超の疎水性ヒュームドシリカ:液体樹脂比(すなわち、構成成分(II):構成成分(I)比)での接着剤によって示される。
【0007】
一実施形態において、エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物の液体樹脂系、構成成分(I)は、例えば、(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)少なくとも1種の強靱化剤を含み;液体樹脂系、構成成分(I)の粘度は、15℃の温度で約800パスカル-秒(Pa・s)未満であり;60℃の温度で約5Pa・s超である。エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物の固体材料、構成成分(II)は、例えば、(c)少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含む。有利には、ヒュームドシリカは、約5重量パーセント(重量%)超の濃度で接着剤組成物中に存在し得る。エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物の硬化性材料、構成成分(III)は、例えば、(d)少なくとも1種の硬化剤を含む。結果として生じるエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物のレオロジーは、接着剤組成物が15℃以上の温度でポンピングできるようなものである。
【0008】
一般に、本発明のエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物は、有益には、(1)接着剤が約15℃ほどに低い温度に曝された場合にポンピングでき得るようなレオロジー;及び(2)接着剤が、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に油を引いた金属パネル上で約7ミリメートル(mm)よりも多く流れないような耐洗い流し性を示す。
【0009】
本発明の別の実施形態は、上記の接着剤組成物の製造方法を指向する。
【0010】
そして本発明のその上別の実施形態は、自動車用途において材料を接合するための上記の構造用接着剤組成物の使用方法を指向する。
【0011】
本発明の目的は、低温での接着剤のポンパビリティ特性を維持しながら、高められた耐洗い流し性特性を示す衝突耐久性接着剤として有用な接着剤製品を提供することである。本発明の好ましい目的は、例えば、自動車産業用の構造用接着剤として使用することができる、耐洗い流し性及び低温でのポンパビリティという有益な特性を持った、エポキシベースの、高度に耐洗い流し(洗い落とし)性の一成分型(1K)衝突耐久性接着剤(CDA)調合物を提供することである。より具体的には、本発明の接着剤は、(i)約15℃ほどに低い温度で容易にポンプ送液することができる、及び(ii)硬化する前に基材表面から洗い流されることに耐性を示す熱硬化性のエポキシベースの接着剤ペースト組成物を調製することを含む。本発明の接着剤は、有利にも、車両組立プラントにおけるスプレー又は浴処理中に本発明の接着剤が車両の表面から有意に洗い流されないように車体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】接着剤中の固体エポキシ樹脂(例えば、XZ92579)濃度が低減され、接着剤中に液体エポキシ樹脂(例えば、D.E.R.331)が接着剤樹脂に組み込まれ、及び接着剤中のヒュームドシリカ含有量が変えられる場合に15℃での接着剤樹脂の粘度への影響を示すグラフ図である。
【
図2】接着剤中の固体エポキシ樹脂(例えば、XZ92579)濃度が低減され、接着剤中に液体エポキシ樹脂(例えば、D.E.R.331)が接着剤樹脂に組み込まれ、及び接着剤中のヒュームドシリカ含有量が変えられる場合に58℃での接着剤樹脂の粘度への影響を示すグラフ図である。
【
図3】15℃及び58℃での接着剤の粘度へのポリウレタン強靱化剤の影響を示すグラフ図である。
【
図4】比較接着剤例の及び本発明接着剤例の樹脂系についての粘度対温度の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、接着剤として有用な組成物、及びより具体的には硬化する前に基材表面から洗い流されることに耐性を示す熱硬化性のエポキシベースの接着剤組成物を含む。液体樹脂、構成成分(I)、及び制御された疎水性ヒュームドシリカ:液体樹脂比での疎水性ヒュームドシリカ、構成成分(II)の組み込みは、低温でポンプ送液することによって接着剤が容易に計量分配されることを依然として可能にしながら、接着剤の耐洗い流し性を著しく高めることができる。優れた耐洗い流し性を持った本発明のエポキシ接着剤組成物は、例えば、自動車産業において、例えば、製造プロセスにおいて使用され得る。
【0014】
エポキシ接着剤組成物は、(I)(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)少なくとも1種の強靱化剤を含む液体樹脂系と;(II)(c)少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含む固体材料と;(III)(d)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性材料とを含み;他の構成成分を任意選択的に含み得る。本発明の接着剤組成物は、有益にも、15℃以上の温度で低い(例えば、約800Pa・s未満の)粘度を持った樹脂ブレンドであることができ;接着剤組成物は、好ましくは、例えば、15℃ほどに低い温度でロボットによる適用システムによって、ポンプ送液することができるペースト材料の形態にある。加えて、本発明の接着剤組成物は、有益にも、約60℃以下の温度で高い耐洗い流し性(例えば、接着剤が、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に油を引いた金属パネル上で約7mmよりも多く流れないような)を示す。
【0015】
接着剤組成物に関連して、「ポンピングできる」又は「ポンパビリティ」は、本明細書では、接着剤組成物が流れることができる及び従来のポンピング手段によってポンプ送液できるような所望のレオロジーを有する接着剤組成物を意味し;一般に、ポンピングできる接着剤組成物は、本明細書では、約15℃の温度で約6,000Pa・s未満、好ましくは約4,500Pa・s未満、より好ましくは約3,500Pa・s未満の粘度を示す。
【0016】
接着剤組成物に関連して「耐洗い流し性」又は「耐洗い落とし性」は、本明細書では、接着剤組成物が、スプレー洗い流し試験において60℃以下の水温及び1平方インチ当たり50ポンド(psi)以下の圧力に曝された場合に油を引いた金属パネルから洗い流れない;及び製造プロセスの間にボンドラインから洗い落とされないことを意味する。
【0017】
固体材料に関連して「疎水性材料」又は「疎水性を示す材料」は、本明細書では、固体材料が、ポリジメチルシロキサン又はオクチルシランなどの疎水性であることが知られる別の別個の処理材料で前処理されていることを意味する。
【0018】
1つの一般的な実施形態において、本発明は、(I)液体樹脂系と;(II)固体材料と;(III)硬化性材料との組み合わせを含む1K CDA組成物を含む。液体樹脂系、構成成分(I)は、少なくとも1種の液体構成成分であることができ;固体材料、構成成分(II)は、少なくとも1種の固体構成成分であることができ;硬化性材料、構成成分(III)は、液体又は固体形態での少なくとも1種の潜在的硬化剤であることができる。必要ならば、他の任意選択の成分を、液体樹脂系、構成成分(I)に、固体材料、構成成分(II)に、及び/又は硬化性材料、構成成分(III)に添加して、本発明接着剤組成物を形成することができる。
【0019】
例えば一実施形態において、液体樹脂系、構成成分(I)は、(a)(i)液体エポキシ樹脂又は(a)(ii)液体樹脂と固体樹脂とのブレンドと;(b)強靱化剤との組み合わせを含み得るし;;固体材料、構成成分(II)は、(c)疎水性ヒュームドシリカを含み得るし;硬化性材料、構成成分(III)は、(d)エポキシベースの1K CDA接着剤組成物を形成する硬化剤を含み得る。
【0020】
前述の通り、他の任意選択の成分は、本発明接着剤組成物を形成するために、必要ならば、接着剤組成物構成成分(I)~(III)の任意の1つ以上に添加することができる。例えば、接着剤組成物の構成成分(II)は、任意選択的に、(e)充填材材料を含み得る。他方では、接着剤組成物の構成成分(I)は、任意選択的に、(f)液体硬化促進剤;及び/又は(g)構成成分(a)の液体エポキシ樹脂とは異なる液体樹脂若しくはポリマー組成物を含み得る。本発明の接着剤組成物によって示される便益は、固体材料、構成成分(II)対液体樹脂組成物、構成成分(I)の質量比が、例えば、約0.08超である場合に実現することができる。この質量比は、質量固体/質量液体構成成分と定義される。
【0021】
本発明に有用な、エポキシ樹脂、構成成分(a)は、多種多様な硬化性エポキシ化合物及びそれらの組み合わせを含み得るし;結果として生じるエポキシ樹脂が15℃までの温度でポンピングできるレオロジー特性を満たす粘度を持った液体樹脂系を提供するように適合させられるという条件で液体、及び液体と固体との混合物を含み得る。また、エポキシ樹脂の組み合わせが、エポキシベースの衝突耐久性接着剤の特性を調整するために使用され得る。
【0022】
液体樹脂系のエポキシ樹脂、構成成分(a)は、有利には、温度への最小限の粘度依存性を示す系である。本発明の接着剤調合物は、例えば、構成成分(a)としての1種以上の液体エポキシ樹脂;又は(i)1種以上の液体エポキシ樹脂と(ii)1種以上の固体エポキシ樹脂とのブレンドを含み得る。本発明に有用な液体エポキシ樹脂としては、硬化性エポキシ化合物及び2種以上の硬化性エポキシ化合物の組み合わせが挙げられ得る。エポキシ化合物は、飽和、不飽和、環状若しくは非環状、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環エポキシ化合物であり得る。ポリエポキシドとも言われる、エポキシ化合物としては、単量体であることができるエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラックベースのエポキシ樹脂、及びトリス-エポキシ樹脂);より高い分子量の樹脂(例えば、ビスフェノールAで進展させられた(advanced)ビスフェノールAのジグリシジルエーテル);又はホモポリマーに若しくはコポリマーに重合する不飽和モノエポキシド(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等)が挙げられる。エポキシ化合物は、平均して、1分子当たり少なくとも1個のペンダント又は末端1,2-エポキシ基(すなわち、ビシナルエポキシ基)を含有する。
【0023】
本発明に有用な、好適なポリエポキシド、構成成分(a)の例としては、アルカリの存在下でエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって調製される、ポリグリシジルエーテルが挙げられる。そのための好適なポリフェノールは、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-メタン)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、及び1,5-ジヒドロキシナフタレンである。ポリグリシジルエーテルの基盤としての他の好適なポリフェノールは、ノボラック樹脂型のフェノールとホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとの公知の縮合生成物である。
【0024】
1つの好ましい実施形態において、本発明に有用な液体エポキシ樹脂は、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応によって誘導することができる。本発明に有用であるエポキシ樹脂は、室温で液体であり(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルは、約25℃で液体であり)一般に、約150~約480のエポキシ当量を有する。本発明に有用な、好適なエポキシ樹脂としては、全てOlin Corporationから入手可能な、例えば、D.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.383、D.E.R.431及びD.E.R.736が挙げられ得る。
【0025】
1つの好ましい実施形態において、液体エポキシ樹脂が本発明に使用され、そのような液体エポキシ樹脂は、次の一般式:
【化1】
(式中、nは、一般に、0~約25の範囲にある)
を有することができる。基本的な液体エポキシ樹脂、例えばD.E.R.331は、約180~195g/モルの範囲のエポキシ当量を有する。
【0026】
本発明に使用され得る、他のエポキシ樹脂としては、ポリアルコール又はジアミンのポリグリシジルエーテルが挙げられ得る。そのようなポリグリシジルエーテルは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール又はトリメチロールプロパンなどの、ポリアルコールから誘導される。
【0027】
本発明に有用な、更に他の好適なエポキシ樹脂としては、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えば、グリシドール又はエピクロロヒドリンと、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸又は二量体脂肪酸などの、脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸との反応生成物が挙げられ得る。
【0028】
その上他の有用なエポキシ樹脂としては、オレフィン性不飽和の脂環式化合物のエポキシ化生成物から又は天然油及び脂肪から誘導されるエポキシ樹脂が挙げられ得る。
【0029】
固体エポキシ樹脂が、液体エポキシ樹脂と組み合わせて使用される場合、本発明に使用され得る固体エポキシ樹脂は、ビスフェノールAを主としてベースとすることができる。本発明に有用な、好ましい固体エポキシ樹脂としては、Olin Corporationから商業的に入手可能なD.E.R.664 UE固体エポキシなどのビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられ得る。
【0030】
本発明の接着剤組成物を調製する際に、接着剤組成物は、任意の量のエポキシ樹脂を含み得る。好ましい実施形態において、たった1つの液体エポキシ樹脂が構成成分(a)として使用される場合、本発明の接着剤調合物の、液体樹脂系、構成成分(I)を調製するのに使用される、液体エポキシ樹脂、構成成分(a)の濃度は、一実施形態においては、液体樹脂系、構成成分(I)の重量を基準として約25重量%~約75重量%;別の実施形態においては約30重量%~約70重量%;及び更に別の実施形態においては約34重量%~約67重量%の範囲にあることができる。
【0031】
ある実施形態において、例えばエポキシ樹脂XZ92579などの、液体エポキシ樹脂と固体エポキシ樹脂とのブレンドが構成成分(a)として使用される場合に、本発明の接着剤調合物の、液体樹脂系、構成成分(I)を調製するのに使用される、そのブレンド、構成成分(a)の濃度は、一実施形態においては、液体樹脂系、構成成分(I)の重量を基準として約50重量%~約85重量%;別の実施形態においては約55重量%~約80重量%;及び更に別の実施形態においては約60重量%~約75重量%の範囲にあることができる。
【0032】
本発明の接着剤調合物の、液体樹脂系、構成成分(I)を調製するために、接着剤調合物は、「強靱化剤」又は「衝撃改質剤」とも言われる1種以上の強化剤を含むことができる。一般に、本発明の、強靱化剤、構成成分(b)は、有利には、本発明のCDAを調製する際に強化剤を容易に取り扱うことができるような流動性粘度を有する液体強化剤である。本発明に有用な強化剤としては、例えば、ポリウレタン(PU)ベースの材料;液体ゴム;エポキシ化ポリオール;液体ゴム強靱化剤;参照により本明細書に援用される米国特許第8,545,667B2号明細書に記載されているコア-シェルゴム材料;又はそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0033】
例えば1つの好ましい実施形態において、強靱化剤、構成成分(b)は、温度への最小限の粘度依存性を示すキャップされたポリウレタン強靱化剤であることができる。強靱化剤としては、例えば、フェノール化合物、カシューナッツ殻液(CNSL)若しくはカルダノール、ベンゾオキサゾリノン、又はモノヒドロキシル化エポキシドなどのエポキシ化合物、及びそれらの混合物でキャップされたポリウレタン(PU)強靱化剤を挙げることができる。キャップされたポリウレタン強靱化剤としてはまた、o,o’-ジアリルビスフェノールA(ODBA)などの連鎖延長剤を挙げることができる。
【0034】
本発明に有用な、他の強靱化剤、構成成分(b)としては、例えば、ビスフェノールAで鎖延長され、ジイソプロピルアミンでキャップされた-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)から誘導されたPU-強靱化剤が挙げられ得る。例えば、本発明に有用な強靱化剤としては、The Dow Chemical Companyから製品名「RAM DIPA」で入手可能なジイソプロピルアミンキャップトウレタンのような、参照により本明細書に援用される、公開国際公開第2016108958A1号パンフレットに記載されている強靱化剤が挙げられ得る。本発明に有用な、更に他の強靱化剤、構成成分(b)としては、例えば、参照により本明細書に援用される、公開国際公開第2017/044402号パンフレットに記載されているような、好ましくはODBAで鎖延長され、CNSLでキャップされた、PTMEGとヒドロキシル末端ポリブタジエンとのブレンドが挙げられ得る。
【0035】
本発明の接着剤調合物の、液体樹脂系、構成成分(I)を調製する際に使用される、強靱化剤、構成成分(b)の濃度は、一実施形態においては、液体樹脂系、構成成分(I)の重量を基準として約20重量%~約40重量%;別の実施形態においては約23重量%~約37重量%;及び更に別の実施形態においては約25重量%~約35重量%の範囲にあることができる。
【0036】
本発明の液体樹脂系、構成成分(I)は、有利には、樹脂系が本発明のCDAを調製する際に適用温度で容易に取り扱うことができるような流動性粘度を有する液体樹脂系である。例えば、一実施形態において、約15℃の温度での、液体樹脂系、構成成分(I)の粘度は、一般に約800Pa・s未満である。他の実施形態において、約15℃の温度での、液体樹脂系、構成成分(I)の粘度は、約400Pa・s未満及び約250Pa・s未満であり得る。更に別の実施形態において、約15℃の温度での、液体樹脂系、構成成分(I)の粘度は、約200Pa・sから約800Pa・s未満であり得る。
【0037】
別の一般的な実施形態において、液体樹脂系、構成成分(I)の粘度は、約60℃の温度で約5Pa・s超;更に別の実施形態においては60℃の温度で約7Pa・s超;及び60℃の温度で約11Pa・s超である。その上別の実施形態において、液体樹脂系、構成成分(I)の粘度は、約60℃の温度で、約5Pa・s超から約20Pa・sであり得る。
【0038】
本発明の接着剤組成物を調製する際に、構成成分(II)としての、1種以上の固体疎水性材料を、液体樹脂系構成成分(I)と混合することができる。例えば、固体材料は、構成成分(c)としての疎水性ヒュームドシリカであることができる。本発明の一実施形態において、接着剤は、少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含有する。ヒュームドシリカは、当技術分野における周知のチキソトロピー剤であり、Cabot CorporationによってCAB-O-SIL商標で販売されるヒュームドシリカ製品及びDegussaによってAEROSIL商標で販売されるヒュームドシリカ製品を含めて、幾つかの商業的供給源から入手可能である。疎水性ヒュームドシリカは、ヒュームドシリカの表面上のヒドロキシル基の少なくとも一部をメチル基などの他の基で置き換えるために化合物(通常、ジメチルジクロロシラン、トリメトキシオクチルシラン、ポリジメチルシロキサン又はヘキサメチルジシラザンなどの有機ケイ素化合物)と反応させられた又は化合物で処理されたヒュームドシリカである。本発明に有用な具体的なヒュームドシリカとしては、CAB-O-SIL TS-720及びCab-O-Sil ULTRABONDが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の特定の実施形態において、ヒュームドシリカは、約80~約300m2/gの範囲のBET表面積及び/又は約0.5重量%~約7重量%の炭素含有量を有する。望ましくは、疎水性ヒュームドシリカの表面積は、できるだけ高いものであるべきである。
【0039】
疎水性ヒュームドシリカの調製方法は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第2,739,075号明細書及び同第2,786,042号明細書(それらのそれぞれは、その全体を参照により本明細書に援用される)に記載されている方法を含む。1つの好ましい実施形態において、ヒュームドシリカは、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)などの疎水性シランで処理されているヒュームドシリカであり得る。別の実施形態において、本発明に有用な疎水性ヒュームドシリカとしては、例えば、オクチルシラン処理ヒュームドシリカが挙げられ得る。ヒュームドシリカの組み合わせもまた、接着剤組成物を調製するのに使用することができる。
【0040】
典型的には、接着剤調合物に添加される、ヒュームドシリカ、構成成分(c)の濃度は、一実施形態においては約2重量%~約15重量%;別の実施形態においては約4重量%~約12重量%;更に別の実施形態においては約5重量%~約10重量%;及びその上別の実施形態においては約6重量%~約8重量%の範囲にあることができる(特に明記しない限り、本明細書に示される全ての濃度は、全体として接着剤組成物を基準とする問題になっている構成成分の重量パーセントの観点から表される)。
【0041】
接着剤のレオロジー特性及び耐洗い流し性特性を実現するために、エポキシ接着剤組成物中の疎水性ヒュームドシリカ(構成成分(II)):液体エポキシ樹脂(構成成分(I))の質量比を適切な量に調整する及び制御することが重要である。有利には、本発明の接着剤組成物は、高いヒュームドシリカ対樹脂質量比を含む。例えば、疎水性ヒュームドシリカ:樹脂比は、一実施形態においては約0.08以上、別の実施形態においては約0.08~約0.14、及び更に別の実施形態においては約0.08~約0.10であることができる。
【0042】
本発明の接着剤組成物は、好ましくは、一成分型、単一成分型、又は1K組成物である。当技術分野において公知であるように、1Kエポキシ接着剤は、単一組成物中に接着剤用の成分の全てを含有し、組成物中に存在する硬化剤(ハードナー)を活性化させる、熱又は放射線などの、適切な条件に曝されるまで硬化しない。1K接着剤組成物用の硬化剤は、好ましくは、周囲条件(「周囲条件」は、例えば、典型的な室温及び通常の照明条件を意味する)下で硬化を引き起こさない潜在的硬化剤を含む。典型的には、エポキシ接着剤は、周囲温度で未反応形態で、ある期間貯蔵された後に高温で硬化させられるので、加熱によってエポキシ接着剤を硬化できるようにする潜在的硬化剤が、好ましくは、本発明に使用される。したがって、本発明の接着剤組成物はまた、接着剤組成物が室温を大幅に上回る温度に加熱される場合に接着剤組成物の架橋又は硬化を成し遂げることができる1種以上の硬化剤(ハードナー)を含有する。すなわち、ハードナーは、加熱することによって活性化される。
【0043】
本発明の接着剤調合物を調製する際に、構成成分(III)としての、1種以上の硬化剤を、本発明の接着剤組成物に添加することができる。高温で活性化される、潜在的な、熱硬化剤は、一緒に構成成分(I)及び(II)と組み合わせることができるか;又は硬化剤は、液体樹脂系、構成成分(I)、固体材料、構成成分(II)、又は構成成分(I)及び(II)の両方に混ぜ込むことができる。
【0044】
1K接着剤にとって適切な、任意の硬化剤が、接着剤組成物に使用され得る。例えば、本発明に有用ないくつかのハードナーとしては、ジシアンジアミド、イミダゾール類、アミン、アミド、多価フェノール、ポリ酸無水物、ジヒドラジド、及びそれらの混合物が挙げられる。例えば1つの好ましい実施形態において、硬化剤は、構成成分(d)として、Evonikから入手可能なAmicure CG-1200 Dicyなどの、ジシアンジアミドであることができる。ジシアンジアミドはまた、Dicy、ジシアノジアミド、及び1-又は2-シアノグアニジンとしても知られる。Dicy(CAS 461-58-5)は、実験式C
2N
4H
4、分子量84を有し、次の構造式で表され得る:
【化2】
【0045】
硬化剤の任意の量が、本発明による任意の特定の1K接着剤組成物にとって適切なように使用され得るし、当業者によって決定され得る。例えば、接着剤調合物に添加される、硬化剤、構成成分(d)の濃度は、一実施形態においては約0.01重量%~約10重量%;別の実施形態においては約0.1重量%~約10重量%;及び更に別の実施形態においては約1重量%~約5重量%の範囲にあることができる。他の実施形態において、本発明に使用される、硬化剤、構成成分(d)の量は、エポキシ接着剤の好ましくは約1重量%以上、より好ましくは約2重量%以上、より好ましくは約3重量%以上であり得る。更に他の実施形態において、本発明に使用される硬化剤の量は、エポキシド接着剤の好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約4重量%以下であることができる。
【0046】
本発明の接着剤組成物のために有用な、他の熱的な活性化できる又は潜在的なハードナーとしては、例えば、グアニジン類、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、環状第三級アミン、芳香族アミン及び/又はそれらの混合物が挙げられ得る。置換グアニジンの例は、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン及び、よりとりわけ、シアノグアニジン(ジシアンジアミド)である。挙げられ得る、好適なグアナミン誘導体の代表は、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂又はメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンである。熱硬化性接着剤系への室温での低い溶解度を有する、単一成分の、固体の、細挽きのハードナーが良好な貯蔵安定性を持った接着剤組成物を提供するために好ましい。
【0047】
上述のハードナーに加えて、又はそれらの代わりに、例えば、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モニュロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)又は3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)などの、触媒活性の置換尿素が使用され得る。ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)フェノール、ピペリジン又はピペリジン誘導体などの、触媒活性の第三級アクリル-又はアルキルアミンもまた使用され得る。典型的には、EP-796などの、そのようなアミンは、改善された安定性のためのフェノール系官能化ポリマーとの錯体として接着剤組成物へ組み入れられる。EP796は、参照により本明細書に援用される、米国特許第4,659,779号明細書の欄2、行39~57及び欄4、行34~欄6、行54に記載されているような、ポリマーマトリックス中のトリス(2,4,6-ジメチルアミノメチル)フェノールである。米国特許出願公開第20040131839A1明細書に記載されているような、アクセレリン(accelerine)触媒もまた、本発明に有用である。
【0048】
本発明の接着剤調合物は、充填材、硬化促進剤、他の樹脂、及びそれらの意図される使用向けに機能することが先行技術において公知である他の材料などの任意選択の添加物を含むことができる。本発明の接着剤調合物を調製する際に、1種以上の任意選択の材料/添加物が、液体樹脂系構成成分(I)に、固体材料構成成分(II)に、又は構成成分(I)及び(II)の両方に添加されてよいし、それらと混合されてもよい。
【0049】
例えば、接着剤の耐洗い流し性を改善することを指向する実施形態において、充填材を含むことがまた望ましい可能性がある。本発明に有用な、好適な充填材としては、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、タルク、コールタール、カーボンブラック、織物繊維、繊維若しくは球の形態でのガラス粒子、中空ガラス球、ウォラストナイト、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭素繊維、無機ケイ酸塩、マイカ、粉末状石英、水和酸化アルミニウム、ベントナイト、ウォラストナイト、カオリン、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、アルミニウム粉又は鉄粉などの金属粉末、及びそれらの混合物などの、参照により本明細書に援用される国際公開第2016108958 A1号パンフレットに記載されている1種以上の充填剤が挙げられ得る。収縮を低減する及び耐食性を増加させるために炭酸カルシウムを使用することができる。酸化カルシウムは、最終硬化前の部分的に硬化したエポキシ接着剤を保存するのに役立つために使用され得る湿気捕捉剤である。Nyad(登録商標)200及びNyglos 8などのケイ酸マグネシウムアルミニウム(ウォラストナイト)は、Nycoから入手可能である。
【0050】
本発明に有用な充填材の中で、中空ガラス球は、単独或いは他の充填材構成成分とのいくつかの組み合わせでかのどちらかで、1つの好ましい実施形態において使用される。中空ガラス微小球が接着剤組成物中に存在する場合、中空ガラス微小球としては、Minnesota Mining&Manufacturing(3M)から入手可能なK25 Glass Bubbles及びPottersから入手可能なQ-CEL 7028などの材料が挙げられ得る。
【0051】
典型的には、接着剤組成物は、約10重量%以下(例えば、約0.5重量%~約5重量%)の中空ガラス微小球を含有し得るが;他の実施形態においては、本発明のエポキシペースト接着剤は、中空ガラス微小球を含まない。
【0052】
接着剤調合物中の存在する充填材の濃度は、いくつかの実施形態においては0重量%、約0.3重量%、若しくは約0.5重量%の、又はそれ以上の量であることができる。他の実施形態において、充填材は、約35重量%、約30重量%若しくは約25重量%の、又はそれ未満の量で接着剤組成物中に存在する。更に別の実施形態において、充填材は、一実施形態においては約10重量%~約30重量%;別の実施形態においては約15重量%~約30重量%;及び更に別の実施形態においては約20重量%~約30重量%の範囲で接着剤調合物中に存在することができる。
【0053】
本発明の接着剤調合物は、1種以上の硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤の使用は任意選択であるが、硬化促進剤を使用することは有益である。潜在的硬化剤が使用される場合、硬化促進剤は、好ましくは、潜在的硬化剤が硬化プロセスを触媒する、条件、例えば、温度に曝された場合に硬化反応を触媒するのに十分な量で存在する。使用される場合、任意の好適な硬化促進剤が使用され得るし、当業者によって選択され得る。いくつかの実施形態において、硬化促進剤としては、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モニュロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N,N’-ジメチル尿素(クロルトルロン)などの尿素類、ベンジルジメチルアミンのようなtert-アクリル-又はアルキレンアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピペリジン若しくはそれの誘導体、イミダゾール誘導体、一般にC1~C12アルキレンイミダゾール又はN-アリールイミダゾール、例えば2-エチル-2-メチルイミダゾール、又はN-ブチルイミダゾールなど、6-カプロタクタムが挙げられ得るし、好ましい触媒は、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックスに組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(米国特許第4,713,432号明細書及び欧州特許第0197892号明細書に記載されているような)である。硬化促進剤は、例えば、高沸点窒素塩基と、不飽和置換基を有するフェノールの付加ポリマーであるフェノール系ポリマーとの組み合わせから得られる組成物を含み得る。特に好ましい硬化促進剤としては、ポリ(p-ビニルフェノール)(PVP)又はノボラックのようなポリマーフェノールを使用するブロックされたtert-アミンが挙げられる。別の特に好ましい硬化促進剤は、PVPマトリックスに組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含む。また、本発明に有用な硬化促進剤としては、参照により本明細書に援用される、国際公開第2012006001号パンフレットに開示されている硬化促進剤が挙げられ得る。
【0054】
本発明に有用な硬化促進剤としてはまた、例えば、芳香族イソシアネートとジメチルアミンとから誘導される尿素硬化促進剤;又は脂肪族イソシアネートとジメチルアミンとから誘導される尿素硬化促進剤などのブロックされた第三級アミン(EP796又はEPCAT50技術)が挙げられ得る。本発明の接着剤調合物に有用な、別の硬化促進剤としては、参照により本明細書に援用される、米国特許第7,084,210 B2号明細書に詳細に記載されているような、Accelerine CEL 2191などのフェノール系官能性触媒が挙げられ得る。
【0055】
様々なイミダゾール誘導体、好ましくは固体イミダゾール誘導体もまた、触媒活性の硬化促進剤として使用され得る。そのような硬化促進剤の例は、2-エチル-2-メチルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、ベンズイミダゾール及びN-C1~C12アルキルイミダゾール又はN-アリールイミダゾールを含む。
【0056】
接着剤組成物中に存在する硬化促進剤の濃度は、いくつかの実施形態においては0重量%、約0.3重量%、若しくは約0.5重量%の、又はそれ以上の量であることができる。一実施形態において、硬化促進剤は、約2重量%、約1.5重量%若しくは約1.3重量%の、又はそれ未満の量で接着剤組成物中に存在する。更に別の実施形態において、硬化促進剤は、0重量%~約2重量%;その上別の実施形態においては約0.5重量%~約2重量%;及びなお更に別の実施形態においては約0.5重量%~約1重量%の範囲にあることができる。
【0057】
本発明の接着剤調合物は、他の任意選択の液体エポキシ樹脂化合物を含むことができる。例えば一実施形態において、他の液体エポキシ樹脂は、接着促進剤としても知られる;Huntsmanから入手可能なRAM 1087及びMomentiveから入手可能なSilquest A-187などのエポキシシランであることができる。別の実施形態において、接着剤組成物は、モノ-エポキシド(例えば、アルキル及びアルケニル置換フェノール又は、C8~C20直鎖飽和脂肪族アルコールなどの、長鎖脂肪族アルコールのモノグリシジルエーテル)などのエポキシ官能性の反応性希釈剤を含み得る。一般に、接着剤組成物は、0重量%~約30重量%以下の、又はそれ以上の量の任意選択の構成成分(g)を含有し得る。一般に、1種以上の他の任意選択の液体エポキシ樹脂化合物又は反応性希釈剤が、エポキシペースト接着剤の粘度を所望のレベルまで下げるのに有効な量で使用され得る。上記の任意選択の液体エポキシ樹脂化合物及び希釈剤は、液体エポキシ樹脂構成成分(I)に添加する又は別個の添加物として添加することができる。
【0058】
本発明の接着剤調合物は、他の更なる任意選択の補助剤又は添加物を含むことができる。接着剤調合物に有用な、好適な任意選択の成分としては、物理的タイプ剤及び化学的タイプ剤の両方が挙げられ得る。本発明の接着剤組成物に有用な、他の任意選択の成分としては、例えば、固体エポキシ樹脂付加体(0~15重量%);反応性希釈剤(0~10重量%);他の充填材、他の強化剤、硬化触媒、安定触媒、着色添加物、二量化脂肪酸、反応性希釈剤、顔料、染料、難燃剤、チキソトロピー剤、発泡剤、流量制御剤、接着促進剤、酸化防止剤、粘度調整剤、溶媒、及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0059】
一実施形態において、本発明に有用な、任意選択の添加物としては、例えば、単一のチキソトロープとしてか;ヒュームドシリカと組み合わせた1種以上のチキソトロピー剤かのどちらかで;代わりのチキソトロピー剤を挙げることができる。本発明に有用なチキソトロピー剤及び他の粘度調整剤としては、耐洗い流し性を改善することができるDynacol(25%ポリエステル7330及び75%LER 330)などの、ポリエステルと液体エポキシ樹脂(LER)との混合物が挙げられ得る。
【0060】
更に別の実施形態において、本発明に有用な、任意選択の添加物としては、例えば少なくとも1種の界面活性剤又は湿潤剤を挙げることができる。湿潤剤は、例えば、非イオン性のフッ素化ポリマーであることができる。そのような湿潤剤はまた、好ましくは、金属表面上の残留油(例えば、製造油及び加工油)を吸収し、それによって金属表面への接着を容易にすることができる。
【0061】
接着剤調合物中に使用され得る任意選択の成分の濃度は、一実施形態においては0重量%~約15重量%;別の実施形態においては約0.01重量%~約15重量%;及び更に別の実施形態においては約1重量%~約10重量%の範囲にあることができる。
【0062】
本発明の接着剤組成物の製造方法は、一実施形態においては約25℃~約60℃;別の実施形態においては約25℃~約50℃;及び更に別の実施形態においては約40℃~約50℃の温度で上に記載された成分を混ぜ合わせる工程を含む。エポキシペースト接着剤が所望のレオロジー特性を有するためには、レオロジー及び/又は接着性能に悪影響を及ぼすことができる、樹脂系の意図的ではない進展を最小限にする及び/又は接着剤の部分硬化を防ぐように混合温度を制御することが重要である。加えて、添加の順番は、好ましくは、安定した製品を生成するように、実施される。例えば、一実施形態において、成分は、早期に添加され、調整される。別の実施形態において、成分は、熱履歴を最小限にするために後で添加される。本明細書で用いるところでは、「安定した」は、レオロジー的に安定している材料であって、すなわち、材料が、指定温度(通常、約20℃~約50℃の範囲の)での時間の関数として粘度の最小限の増加を示す材料を意味する。
【0063】
本発明の接着剤調合物を調製するのに使用される、構成成分(I)の濃度は、一実施形態においては接着剤調合物の重量を基準として約20重量%~約80重量%;及び別の実施形態においては約30重量%~約60重量%の範囲にあることができる。
【0064】
本発明の接着剤調合物を調製するのに使用される、構成成分(II)の濃度は、一実施形態においては接着剤調合物の重量を基準として約20重量%~約50重量%;及び別の実施形態においては約20重量%~約45重量%;及び更に別の実施形態においては約30重量%~約40重量%の範囲にあることができる。
【0065】
本発明の接着剤組成物は、本発明に従って調製される場合に、好ましくは、その後の処理工程において除去、洗い流し又は破損に耐性を示す。本発明を制限することなく、可能なその後の処理工程は、次のもの:洗浄、リン酸塩皮膜処理、塗装、及び/又はe-コート浴のいずれか又は全てを含む。
【0066】
上記の方法によって製造された本発明の結果として生じる接着剤組成物製品は、構成成分(I)~(III)の混合物である。構成成分(I)~(III)が一緒に混合される場合、結果として生じる材料(接着剤製品)は、十分に分散した構成成分(I)、(II)及び(III)からなるペーストである。接着剤ペースト製品は、周囲条件で安定しており;基材に容易に適用することができる。「安定している」とは、接着剤製品が、周囲条件で流動性であり、個々の構成成分が互いに不活性である、すなわち、成分が、一緒に混合された場合に互いに反応して望ましくない副生物を提供しないことを意味する。
【0067】
本発明の調合物が上に記載されたように調製されるとすぐに、調合物は、様々な用途に使用することができる。本発明の1つの幅広い実施形態において、調合物は、2つの基材を接合するための接着剤として使用され得る。本発明の接着剤調合物は、例えば、ブラッシング、カレンダリング、スプレーイング、ディッピング、ローリング又は他の常法によって、基材の表面に適用することができる。
【0068】
本調合物が接着剤として使用される場合に結果として生じる便益としては、例えば、(1)耐洗い流し性の増加;(2)接着剤の接着強度の保持;及び(3)ポンピングできるレオロジーが挙げられる。
【0069】
接着剤によって示される耐洗い流し性特性が大きければ大きいほど、接着剤が衝突耐久性接着剤として使用される場合にとりわけ、構造用接着剤としてより良好に機能する。接着剤の耐洗い流し性の観点からの性能向上は、本明細書では「スプレー洗い流し試験」方法と言われる接着剤ビーズ移動試験方法の観点からの改善として観察され得る。スプレー洗い流し試験において、加圧流体ジェット流が、本発明の接着剤組成物のビーズに適用される。一般に、流体は水である。しかしながら、適用次第で、水以外の流体、例えば、水溶液、水と有機溶媒との混合物(溶質あり又はなしの)、有機溶媒、空気等が使用され得る。スプレー洗い流し試験に用いられるパラメータは、好ましくは、特定のアセンブリ用途に関連しており、当業者によって決定することができる。
【0070】
スプレー洗い流し試験の目的は、ビーズが高温及び高せん断にさらされるときに、接着剤ビーズが基材の表面上を移動する程度を定量化するために用いられる。スプレー洗い流し試験は、(1)油を引いたパネル上に接着剤ビーズを適用する工程と、次に(2)ビーズの約1センチメートル(cm)上方の距離に配置される約58℃での約50psi水流にパネル上のビーズをさらす工程とを含む。接着剤ビーズがパネル上でビーズの元の位置から移動する距離は、自動車部品などの基材表面に適用された接着剤ビーズの耐洗い流し性の定量的尺度を提供することができる。
【0071】
特定の適用に関連した任意の水圧が、スプレー洗い流し試験に用いられ得る。例えば、いくつかの適用において、水圧は、一実施形態においては約1バール~約3バール(ゲージ)に設定することができ、及び約1.6バール(ゲージ)又は約2バール(ゲージ)を、他の実施形態におけるスプレー洗い流し試験に用いることができる。
【0072】
特定の適用に関連した任意の水温が、スプレー洗い流し試験に用いられ得る。例えば、いくつかの適用において、水温は、一実施形態においては約50℃~約80℃の範囲にあることができ、他の実施形態においては約58℃又は約60℃をスプレー洗い流し試験に用いることができる。
【0073】
水ジェットの任意の角度が、スプレー洗い流し試験に用いられ得る。例えば、いくつかの適用において、水ジェットの角度は、垂直に対して、約45°~約70°に設定することができ、一実施形態においてはスプレー洗い流し試験において、及び例えば約60°を別の実施形態においては用いることができる。
【0074】
スプレー洗い流し試験において、流体ジェットは、特定の適用に関連して任意の長さの時間ビーズに適用され得る。例えば、いくつかの適用において、ジェットは、一実施形態においては約10秒~約60秒間、別の実施形態においては約20秒~約40秒間、及び更に他の実施形態においては約30秒又は約40秒間ビーズに適用される。
【0075】
ノズルの先端からビーズの表面までの任意の距離が、スプレー洗い流し試験に用いられ得る。例えば、いくつかの適用において、約25cm~約30cmの距離が、一実施形態においてはスプレー洗い流し試験に用いられ得る。
【0076】
任意のタイプのノズルが、スプレー洗い流し試験に用いられ得る。例えば、Lechlerによって提供されるノズル、例えば、Nozzle No.617 044 16等が、一実施形態におけるスプレー洗い流し試験に使用するのに好適である。
【0077】
本発明のスプレー洗い流し試験を用いる1つの例示的な実施形態において、上記のスプレー洗い流し試験方法に使用される接着剤ビーズの寸法は、1/2インチ半円形(12.7mm幅×6.4mm高さ×125mm長さ)であることができ;パネルは、0.8mm厚さである(しかしながら、任意の厚さを用いることができる)4インチ×12インチの溶融亜鉛めっき(HDG)した長方形軟鋼パネルであることができ(しかしながら、アルミニウムなどの他の基材を使用することができ);ビーズ移動測定は、1ビーズ当たり平均3回の測定(ビーズの中心及びビーズの各端から約25mmにおいて)を含み、1つの接着剤ビーズ当たり平均3つのパネルを好ましくは使用することができる。上記のスプレー洗い流し試験方法において、浴仕様は、下記を含む:温度は、約55℃~約60℃であることができ;ビーズの約1cm上方の間接衝突を用いることができ;水圧は約50psiであることができ;水流のためのノズルは、65°ファンであることができ;及び水流のスプレー時間は約40秒であることができる。スプレー洗い流し試験において、接着剤は、パネルの下方へ移動し、接着剤材料が、水流と直接接触しない点に達する。一般に、本発明の接着剤は、パネルから全く洗い流されない;すなわち、接着剤のビーズは、スプレー洗い流し試験の条件下でいかなる距離をも移動しない傾向がある。
【0078】
一般に、本発明の接着剤調合物の耐洗い流し性特性は、本明細書に記載されるような適切なレオロジー特性及び適切な疎水性ヒュームドシリカローディングを持たない先行技術で公知の接着剤と比べた場合に向上し得る。上記のスプレー洗い流し試験による接着剤調合物の耐洗い流し性特性は、(ビーズの相対的な移動から)約3倍~約5倍だけ公知の一般的な接着剤よりも改善され得る。例えば、本発明の接着剤ビーズは、同じ条件下で約20mm~約25mmのオーダーで移動する、ポンピングできる接着剤の他の公知のビーズと比べて一実施形態においては0mm~約7mmのオーダーで移動し得る。本発明の究極的な目的は、そのような接着剤のビーズが上記のスプレー洗い流し試験にかけられた場合にいかなる距離をも移動しないであろう、すなわち、接着剤のどれも基材から洗い流れないであろう、ポンピングできる接着剤を提供することである。百分率洗い流し性能の観点から、本発明の接着剤組成物は、一実施形態においては僅か以下(例えば約5%未満)の洗い流しを示すべきであり、接着剤組成物は、別の実施形態においては無の洗い流し(例えば、0%洗い流し)を示すべきである。
【0079】
接着剤によって示される接着強度特性が大きければ大きいほど、接着剤が衝突耐久性接着剤として使用される場合にとりわけ、より良好である。有利にも、本発明の接着剤調合物の接着強度特性は、自動車用途におけるCDAとしての使用にとって良好である。一般に、本発明の接着剤調合物の接着強度特性は、ラップせん断強度、T-剥離強度及び衝撃剥離強度の観点から測定することができる。例えば、1つの一般的な実施形態において、本発明のCDAのラップせん断強度は、1.6mm冷延鋼板上で約20MPa~約30MPaであることができ;本発明のCDAのT-剥離強度は、0.8mm冷延鋼板上で約6N/mm~約12N/mmであることができ;及び本発明のCDAの約23℃での衝撃剥離強度は、0.8mm冷延鋼板上で約20N/mm~約40N/mmであることができる。
【0080】
衝突耐久性接着剤として使用される場合、本発明の接着剤調合物がほぼ室温(約25℃)でポンピングできることが一般に望ましい。本発明の調合された接着剤(すなわち、その構成成分の全てを持った調合物)を使用する便益としては、ポンピングできる接着剤が挙げられる。「ポンピングできる」とは、本明細書では、組成物が流れることができる及び従来のポンピング手段によってポンプ送液できるような所望のレオロジーを本発明の接着剤組成物が有することを意味する。一般に、「ポンパビリティ」は、粘度の観点から測定される。したがって、本発明の接着剤組成物は、有利には、室温で低い粘度を有する液体樹脂であり、こうして接着剤は、室温でポンプ送液し、適用することができる。例えば、一実施形態において、15℃の温度での接着剤の組み合わせられる液体構成成分の粘度は、一般に約800Pa・s未満、別の実施形態においては好ましくは400Pa・s未満、及び更に別の実施形態においてより好ましくは約250Pa・s未満であり得る。他の実施形態において、15℃の温度での接着剤の粘度は、一実施形態においては約4,500Pa・s未満、別の実施形態においては約4,000Pa・s未満、更に別の実施形態においては約3,500Pa・s未満;及びその上別の実施形態においては約2,500Pa・s未満であり得る。
【0081】
1つの好ましい実施形態において、本発明の接着剤調合物は、有利には、同じ又は似ていない金属基材を一緒に接合するために;又は金属を、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、強化プラスチック、若しくはガラスなどの他の基材に接合するために使用することができる。基材の接合方法は、例えば、次の工程:
(1)(i)(a)エポキシ樹脂が温度への最小限の粘度依存性を示す、少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)強靱化剤が温度への最小限の粘度依存性を示す、少なくとも1種の強靱化剤を含む液体樹脂系と;(ii)(c)疎水性ヒュームドシリカ(構成成分(II)):液体樹脂系(構成成分(I))の高いシリカローディング質量比での少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含む固体材料と;(iii)(d)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性材料とを混ぜ合わせる工程であって;エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物が、少なくとも15℃の温度に曝された場合にポンピングできるレオロジーを示し、及びエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物が、衝突耐久性接着剤調合物を形成するために本明細書に記載されるスプレー洗い流し試験条件に曝された場合に接着剤が、油を引いた金属パネル上で約7ミリメートルよりも多く流れないような耐洗い流し性を示す工程と;
(2)第1基材を別の第2基材と接触させる前に工程(1)からのエポキシベースの接着剤組成物を第1基材の表面の少なくとも一部に接触させ、2つの基材間のボンドラインにおいて工程(1)の接着剤の層を形成してアセンブリを形成する工程であって、この工程(2)における層が、約0.1mm~約3mmなどの所定の厚さを有し;ボンドラインが、接着剤層厚さを維持するためにガラスビーズなどの固体スペーサーを含有し得る工程と;
(3)2つの基材間のボンドラインにおけるエポキシベースの接着剤調合物の層を介して第1基材と第2基材とを接触させてアセンブリを形成する工程と;
(4)工程(3)のアセンブリを洗浄、スプレー及び/又は浴処理にかける工程と;
(5)工程(4)後に、ボンドラインにおいて2つの基材に接合した硬化接着剤を形成するのに十分な硬化温度に加熱することによってボンドラインにおけるエポキシベースの接着剤組成物層を硬化させる工程と
を含む。
【0082】
上記の方法は、有利にも、硬化工程前の接着剤組成物の耐洗い流し性特性を向上させ、硬化後の接着剤の接着強度が同じもののままであるか又は有意に劣化しない間ずっと維持する。
【0083】
本発明の接着剤組成物は、例えば、木材、金属、被覆又は前処理金属、プラスチック、充填材入りプラスチック、シート成形コンパウンドなどの熱硬化性材料等を含む、異なる材料でできた部品を一緒に接着するために好適である。接着剤を使用して接合されるべき基材は、互いに、同じものであっても、異なってもよい。例えば、本発明の調合物は、第1基材を第2基材に接合するための接着剤として使用され得る。第1及び第2基材は、似ていない基材であることができるし、又は第1及び第2基材は同じ基材であり得る。一実施形態において、第1基材は、アルミニウムなどの金属、及び例えば炭素鋼などの鉄ベースの金属から選択することができ;第2基材は、例えば、アルミニウム及び鋼などの金属、ガラス、布地、金属、ゴム並びに複合材料を含む様々なタイプの基材から選択することができる。好ましい実施形態において、第2基材は、アルミニウムなどの別の金属である。
【0084】
一実施形態において、本発明の接着剤組成物は、金属部品を接着するために、特に、例えば、冷間圧延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化電気亜鉛めっき鋼板及び/又は亜鉛/ニッケル被覆鋼板などの鋼板を接着するために使用され得る。本組成物は、とりわけ、接着剤の適用後に、しかし接着剤の加熱及び硬化前に、水性浴又は流れの形態での液体と接触させられるだろう基材を接合するために有用である。
【0085】
本発明の接着剤組成物は、当技術分野において公知の任意の技術によって基材表面に適用することができる。例えば、接着剤組成物は、基材上へのビーズ形態でのロボットからの押出によって、又はコーキングガン若しくは押出機などの機械的適用方法、若しくは任意の他の手動適用手段によって適用することができ、スワール若しくはストリーミング技術を用いて適用することができる。スワール及びストリーミング技術は、ポンプ、制御系、投薬ガンアセンブリ、リモート投薬装置及びアップリケーションガンなどの、当技術分野において周知の装置を利用する。一般に、接着剤組成物は、接合されるべき基材の1つ又は両方に適用され得る。基材は、一緒に接合されるべき基材間に接着剤が位置するように接触させられる。その後、接着剤組成物は、熱硬化剤又は潜在的硬化剤がエポキシペースト接着剤の硬化を開始する温度への加熱にかけられる。
【0086】
本発明のエポキシペースト接着剤は、例えば、約15℃~約45℃の温度で作業場所まで流れることができる又はポンプ送液できるように調合される。ほとんどの用途において、接着剤は、潜在的硬化剤がまだ活性化されない温度までしか加熱されない。接着剤組成物の粘度を作業可能なレベルまで下げるために(すなわち、それを液体として流れることができるようにするために)、好適な装置を用いてそれを高いせん断力にかけることが望ましいことであり得る。組成物は、基材表面に直接適用されてもよいし、又はヘムフランジング操作においてなどの、接合されるべき基材を分離する空間に流入させられ得る。本発明の利点は、接着剤が、基材表面に適用された後に、接着剤を洗い流しに耐性を示す状態にするのに有効な程度まで接着剤をゲル化させる又は硬化させるのに有効な時間、中間温度(すなわち、室温よりも上、しかし最終硬化温度よりも下の)に加熱されるプレ硬化又はゲル化工程に接着剤がかけられる必要がないことである。すなわち、本発明のエポキシペースト接着剤は、本質的に、プレ硬化又はケル化工程が必要ではなく、それによってそのような接着剤が使用されるアセンブリプロセスを簡略化するのに十分に高い降伏値を有する。
【0087】
本発明のエポキシペースト接着剤は、好ましくは、組成物が接合されるべき部品に適用された温度よりも明らかに上にある温度での、並びに硬化剤及び/又は硬化促進剤が活性化される温度(すなわち、硬化剤が、接着剤の他の構成成分に対して反応性が高くなる最低温度)以上の温度でのオーブン中で硬化させられる。例えば、上記の硬化工程(4)において、接着剤組成物は、組成物を硬化させるのに十分な、温度に、及び時間曝すことができる。好適な温度及び時間は、任意の特定の用途について当業者によって容易に決定することができる。一般に、硬化温度は、一実施形態においては約130℃以上、別の実施形態においては約210℃以下である。好ましい実施形態において、接着剤組成物の硬化温度は、約130℃以上~約210℃以下であることができる。一般に、硬化時間は、約3分(min)以上、約5分以上、又は約10分以上であることができる。一般に、硬化時間は、約20分以下、約15分以下、又は約12分以下であることができる。
【0088】
本発明による接着剤のための1つの特に好ましい用途は、ヘムフランジにおけるなど
の車両組立(例えば、ボディシェル組立)における構造用接合の形成である。
本発明は次の態様も含む。
(1)(I)
(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び
(b)少なくとも1種の強靱化剤
を含む液体樹脂系であって;
前記液体樹脂系、構成成分(I)の粘度が、約15℃の温度で約800Pa・s未満であり;及び前記液体樹脂系、構成成分(I)の前記粘度が、約60℃の温度で約5Pa・s超である液体樹脂系と;
(II)
(c)少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含む
固体材料であって、前記ヒュームドシリカが5重量パーセント超の濃度で接着剤組成物中に存在する固体材料と;
(III)
(d)少なくとも1種の潜在的な熱活性化硬化剤
を含む
硬化性材料と
を含むエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物であって、
前記エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物のレオロジーが、前記接着剤組成物が約15℃以上の温度でポンピングできるようなものである組成物。
(2)前記少なくとも1種のエポキシ樹脂、構成成分(a)が、ビスフェノールA又はビスフェノールFから誘導される少なくとも1種の液体エポキシ樹脂;及び/又はビスフェノールA又はビスフェノールFから誘導される少なくとも1種の液体エポキシ樹脂と、ビスフェノールA又はエポキシノボラック樹脂から誘導される少なくとも1種の固体エポキシ樹脂とのブレンドである、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(3)前記固体材料、構成成分(II)の前記疎水性ヒュームドシリカ対前記液体樹脂系、構成成分(I)の重量比が約0.08超である、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(4)前記少なくとも1種の強靱化剤、構成成分(b)が、少なくとも1種のキャップされたポリウレタン強靱化剤である、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(5)前記少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカ、構成成分(c)が、少なくとも1つのグレードのポリ(ジメチルシロキサン)で処理されたヒュームドシリカである、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(6)前記少なくとも1種の硬化剤、構成成分(d)がジシアンジアミドである、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(7)前記接着剤組成物の耐洗い流し性が、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤が油を引いた金属パネル上で約7ミリメートルよりも多く流れないようなものである、上記(1)に記載の組成物。
(8)(e)少なくとも1種の充填材;(f)少なくとも1種の硬化促進剤;及び(g)構成成分(a)とは異なる少なくとも1種の液体樹脂の1つ以上を更に含む、上記(1)に記載の組成物。
(9)(1)(a)エポキシ樹脂が温度への最小限の粘度依存性を示す、少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)強靱化剤が温度への最小限の粘度依存性を示す、少なくとも1種のキャップされたポリウレタン強靱化剤 を含む液体樹脂系と;
(2)(c)約5重量パーセント超のシリカローディングで少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカ を含む固体材料と;
(3)(d)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性材料と
を混ぜ合わせる工程を含む接着剤組成物の製造方法であって、
前記エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物が、少なくとも約15℃の温度に曝された場合にポンピングできるレオロジーを示し、及び前記エポキシベースの衝突耐性の接着剤組成物が、スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤が油を引いた金属パネル上で約7ミリメートルよりも多く流れないような耐洗い流し性を示す方法。
(10)2つの基材の接合方法であって、
(i)(a)エポキシ樹脂が温度への最小限の粘度依存性を示す、少なくとも1種のエポキシ樹脂;及び(b)強靱化剤が温度への最小限の粘度依存性を示す、少なくとも1種のキャップされたポリウレタン強靱化剤を含む(a)液体樹脂系と; (c)約5重量パーセント超のシリカローディングで少なくとも1種の疎水性ヒュームドシリカを含む(b)固体材料と; (d)少なくとも1種の硬化剤を含む(c)硬化性材料と
を混ぜ合わせる工程であって、
(i)少なくとも15℃の温度に曝された場合にポンピングできるレオロジー、及び(ii)スプレー洗い流し試験条件に曝された場合に前記接着剤が油を引いた金属パネル上で約7ミリメートルよりも多く流れないような耐洗い流し性を示す、エポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物が形成される、工程と; (2)第1基材を別の第2基材と接触させる前に工程(1)からの前記エポキシベースの接着剤組成物を前記第1基材の表面の少なくとも一部に接触させ、前記2つの基材間のボンドラインにおいて工程(1)の前記接着剤の層を形成してアセンブリを形成する工程と; (3)前記2つの基材間の前記ボンドラインにおける前記エポキシベースの接着剤組成物の前記層を介して前記第1基材と第2基材とを接触させてアセンブリを形成する工程と; (4)工程(3)の前記アセンブリを、洗浄、スプレー及び/又は浴処理にかける工程と; (5)工程(4)後に、前記ボンドラインにおいて前記2つの基材に接合した硬化接着剤を形成するのに十分な硬化温度に加熱することによって前記ボンドラインにおける前記エポキシベースの接着剤組成物層を硬化させる工程と を含む2つの基材の接合方法。
(11)上記(1)に記載のエポキシベースの衝突耐久性接着剤組成物を含む、自動車部品を接合するためのポンピングでき、耐洗い流し性のエポキシペースト接着剤。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、詳細に本発明を更に例示するために本明細書に示されるが、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特に明記しない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【0090】
以下の実施例において用いられる様々な用語及び名称は、表1において本明細書で以下に説明される。
【0091】
【0092】
【0093】
以下の実施例を記載するという目的のためには、4,000Pa・s超の15℃での粘度を有する接着剤樹脂組成物は、ポンプ送液する及び従来のロボットアプリケータによって計量分配するのがやりがいのある及び困難であると本明細書では考えられる。以下の実施例において、本明細書で報告される粘度は、25mm平行板及び450ミクロン(μm)のギャップを用いるAR2000EXで測定した。接着剤樹脂組成物のそれぞれの粘度データ点は、特に明記しない限り、3秒-1の一定のせん断速度で180秒(s)後に採取した。
【0094】
加えて、以下の実施例において、接着剤ペースト組成物のビーズを油被覆金属パネルに適用し、及び上に記載されたスプレー洗い流し試験に従ってビーズを試験することによって洗い流しを試験する。洗い流し性能は、(1)洗い流しなし、(2)ほんのわずかな洗い流し、又は(3)厳しい及び許容できない洗い流しとしてパネル上のビーズの移動距離の目視観察によって定性的に等級分けすることができる。表に示される2つの粘度パラメータを最適化することによって、58℃で300Pa・s超のいかなる粘度も、従来の低温適用CDAと比べて「改善された洗い流し」を有すると考えることができる。結果を下の表に記載する。
【0095】
比較例A~C:ヒュームドシリカグレード及び固体エポキシ樹脂含有量の影響
Table 表IIに記載される比較例A~Cの調合物は、低減濃度のXZ29579を含有し;調合物に使用されるヒュームドシリカは、Cab-O-Sil TS-382であった。様々なサンプル調合物のジシアンジアミド(dicy)含有量を、調合物が一定のエポキシ:dicy比を含有するように変更した。これらの比較例の結果は、比較例Aが15℃での低下したポンパビリティ及び不十分な耐洗い流し性を有したこと;並びに比較例B及び比較例Cが15℃での良好なポンパビリティを有したが、不十分な耐洗い流し性を有したことを示す。
【0096】
【0097】
実施例1~3
樹脂調合物混合物の様々なサンプルを表IIIに記載する。表IIIに記載される実施例1~実施例3は、低減濃度の固体エポキシを含有した。調合物混合物に使用されるヒュームドシリカは、Cab-O-Sil TS 720であった。調合物のdicy含有量を、調合物が一定のエポキシ:dicy比を含有するように変更した。これらの実施例の結果は、実施例1が15℃での並みのポンパビリティ、しかし良好な耐洗い流し性を有したことを示す。これらの実施例の結果はまた、実施例2及び実施例3が15℃での良好なポンパビリティ、及び並みの耐洗い流し性を有したことを示す。
【0098】
【0099】
比較例D並びに実施例4及び5
樹脂調合物混合物の様々なサンプルを表IVに記載する。表IVに記載される比較例D、実施例4、及び実施例5は、低減濃度の固体エポキシを含有した。調合物混合物に使用されるヒュームドシリカは、Cab-O-Sil ULTRABONDであった。調合物のdicy含有量を、調合物が一定のエポキシ:dicy比を含有するように変更した。これらの実施例の結果は、比較例Dが15℃での不十分なポンパビリティ、しかし非常に良好な耐洗い流し性を有したことを示す。これらの実施例の結果はまた、実施例4及び実施例5が15℃での良好なポンパビリティ、及び良好な耐洗い流し性を有したことを示す。
【0100】
【0101】
総合的に、表II~IVに記載される上記実施例において得られた結果は、本発明の接着剤組成物を調合して低温でのポンパビリティと改善された耐洗い流し性との許容できるバランスを有する接着剤組成物を提供する機会を低粘度樹脂系が与えることを示す。また、耐洗い流し性に関して、本発明の接着剤組成物は、比較例の接着剤よりも明らかな利点を示す。
【0102】
実験ラン1~6:調合物粘度へのPU強靱化剤レオロジーの影響
上の表IVに記載される実施例の最初の5つの構成成分は、本発明の液体樹脂系、構成成分(I)を作り上げる。比較例D、実施例4、及び実施例5の構成成分(I)の粘度を、ヒュームドシリカ:構成成分(I)質量比が0.000~0.122の範囲である状態にて15℃で測定し;それぞれ、実験ラン1、実験ラン2、及び実験ラン3として表Vにおいて表示する。比較例D、実施例4、及び実施例5の構成成分(I)の粘度をまた、ヒュームドシリカ:構成成分(I)質量比が0.000~0.122の範囲である状態にて58℃で測定し;それぞれ、実験ラン4、実験ラン5、及び実験ラン6として表VIにおいて表示する。粘度対ヒュームドシリカ:構成成分(I)比の結果を、
図1に実験ラン1~3について、
図2に実験ラン4~6についてグラフにより示す。粘度対ヒュームドシリカ:構成成分(I)質量比の増加の観察される関係は、15℃及び58℃の両方で指数関数的である。しかしながら、これらの実験ランのデータは、総合的に、15℃での粘度がXZ92579濃度に重く依存するが、XZ92579濃度が58℃での粘度に最小限の影響を及ぼすことを実証する。
【0103】
【0104】
【0105】
比較例E及び実施例6~10:調合物粘度へのPU強靱化剤レオロジーの影響
表VIIは、異なるブロックされたポリウレタン強靱化剤を含有する接着剤組成物の様々な調合物混合物及びそのような調合物混合物の結果として生じる粘度を記載する。これらの実施例に使用される強靱化剤は、CDAと一般に考えられるために必要とされる靱性を接着剤組成物が達成することができるように約20%で存在する。したがって、強靱化剤は、調合物の粘度に重要な役割を果たすことができる。
図3のグラフは、試験される調合物のレオロジーバランスへの選択された強靱化剤の影響を例示する。この分析によって、実施例7、及び強靱化剤Dは、最適のレオロジーバランスを提供する。
【0106】
【0107】
実施例11~13-調合物粘度へのヒュームドシリカ濃度の影響
表VIIIは、本発明の接着剤組成物の様々な調合物混合物を記載する。表VIIIは、調合物混合物からの固体エポキシ樹脂の除去及びそのような調合物のヒュームドシリカ含有量の増加の影響を記載する。調合物混合物から固体エポキシを完全に除去することによって、そのような調合物は、15℃でポンピングできるようになる。また、ヒュームドシリカ含有量が6.20重量%から8.20重量%まで増加する場合、調合物は、58℃で粘度がほぼ2倍になり、それは、優れた耐洗い流し性を示す。
【0108】
【0109】
実験ラン7~10
表IXに実験ラン7~10として記載される一連の試験において、粘度対温度に関連して表IXに記載される調合物材料のそれぞれについてのデータは、ペルチャープレート及び鋼製25mm平行板を備えたAR2000EXで集めた。材料のそれぞれを、10℃に冷却されたペルチャープレートに添加し、鋼製25mm平行板を475μmのトリムギャップまで下げた。いかなる過剰の材料をも除去し、材料を10℃で1分間平衡させた。次に材料の粘度を、5℃/分のランプ速度で及び3 l/sの一定のせん断速度で10℃から70℃まで集めた。データを10秒間隔で集め、表IX及び
図4に記載されるように記録した。表IXのデータは、液体樹脂系(構成成分(I))の粘度と温度との関係を示す。実験ラン7は、比較例Eの構成成分(I)を利用している。実験ラン8は、実施例Dの構成成分(I)を利用している。実験ラン9は、実施例7の構成成分(I)を利用している。実験ラン10は、実施例11、12、及び13の構成成分(I)を利用している。
【0110】