(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】人の眼球光学系の光学式走査を自己管理するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20231031BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G02C13/00
(21)【出願番号】P 2020544352
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 US2018058517
(87)【国際公開番号】W WO2019089801
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520146031
【氏名又は名称】オクトヘルス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】OCTHEALTH, LLC
【住所又は居所原語表記】1395 Garden Highway, Suite 250, Sacramento, California 95833, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】バードナー スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース ジョン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515194(JP,A)
【文献】特開2008-246153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0169925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の光学系のデータを取得するシステムに用いられるアイピースであって、
前記アイピースは、前記個人の眼窩に接触し且つフィットするようにカスタマイズされており、前記個人の眼の屈折特性に応じてカスタマイズされた屈折レンズを有するレンズポケットを有していることを特徴とするアイピース。
【請求項2】
前記アイピースからの光を受けるための集光系を更に含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項3】
前記アイピース及び前記屈折レンズは、前記個人の非点収差及び収差に合わせてカスタマイズされていることを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項4】
前記個人の左眼と右眼用に、それぞれ左のアイピースと右のアイピースを備える
ことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項5】
前記アイピースは、それぞれのインデックスを有する着脱可能な右及び左のアイカップを備え、それぞれ対応する右及び左のアイピース本体と嵌合するよう調整されており、前記右及び左のアイカップは対応する前記右及び左のアイピース本体と正しく嵌合することを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項6】
前記アイピースを介して画像形成ビームを送信するように調整された画像形成ビーム発生器と走査モジュールとを備え、前記個人の眼は、前記走査モジュールへと、前記画像形成ビームを反射することを特徴とする請求項2記載のアイピース。
【請求項7】
前記画像形成ビーム発生器は、赤外線光学画像形成ビームを発生することを特徴とする請求項6記載のアイピース。
【請求項8】
前記走査モジュールはMEMS走査モジュールであることを特徴とする請求項6記載のアイピース。
【請求項9】
前記レンズは可変焦点レンズであることを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項10】
前記レンズは、フォロプタ検眼レンズセットであることを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項11】
前記アイピースは、前記アイピースがカスタマイズされた前記個人を一意に特定するためのRFIDチップと、カスタマイズのためのパラメータとを含むことを
特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項12】
前記アイピースは、少なくとも一つのスペクトルフィルタを含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項13】
前記屈折レンズは、前記個人の網膜の異なる領域の像を作るために最適化された異なる部分を有することを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項14】
前記アイピースは、眼底撮像装置を含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項15】
前記アイピースは、眼撮影装置を含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項16】
前記アイピースは、ドライアイテストを実行するためのアイカップを含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項17】
前記アイピースは、多焦点電気生理学試験を実行するための電気センサを有する、カスタマイズされたアイカップを含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項18】
前記アイピースは、眼を照らすための光源を含むことを特徴とする請求項1記載のアイピース。
【請求項19】
個人の光学系のデータを取得するシステムに用いられるアイピースであって、
前記アイピースは、前記個人の眼窩に接触し且つフィットするようにカスタマイズされており、前記個人の眼の屈折特性に応じてカスタマイズされた屈折レンズを有するレンズポケットを備え、
前記屈折レンズからの光を受けて集光する集光系と
前記集光系からの集光された光を受ける鏡と
前記鏡からの光を受けるレトロリフレクターと、
前記アイピース及び前記レトロリフレクターに接続され、前記アイピースに対して前記レトロリフレクターの位置を調整する調整アームを有する
ことを特徴とするアイピース。
【請求項20】
前記個人の左眼と右眼用に、それぞれ左のアイピースと右のアイピースを備えることを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項21】
前記アイピースは、それぞれのインデックスを有する着脱可能な右のアイカップと左のアイカップを備え、それぞれ対応する右と左
のアイピース本体と嵌合するよう調整されており、右又は左の前記アイカップは対応する前記アイピース本体と正しく嵌合することを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項22】
前記屈折レンズは、可変焦点レンズであることを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項23】
前記屈折レンズは、フォロプタ検眼レンズセットであることを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項24】
前記アイピースは、前記アイピースがカスタマイズされた前記個人を一意に特定するためのRFIDチップと、カスタマイズのパラメータとを含むことを
特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項25】
前記アイピースは、少なくとも一つのスペクトルフィルタを含むことを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項26】
前記屈折レンズは、前記個人の網膜の異なる領域の像を作るために最適化された異なる部分を有することを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項27】
前記アイピースは、眼底撮像装置を含むことを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項28】
前記アイピースは、眼撮影装置を含むことを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項29】
前記アイピースは、ドライアイテストを実行するためのアイカップを含むことを特徴と
する請求項19記載のアイピース。
【請求項30】
前記アイピースは、多焦点電気生理学試験を実行するための電気センサを有する、カスタマイズされたアイカップを含むことを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【請求項31】
前記アイピースは、眼を照らすための光源を含むことを特徴とする請求項19記載のアイピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年10月31日に出願の米国特許出願番号第62/579,599号の優先権を主張する。そしてこれは、本願明細書で参照されることにより組み込まれる。
【0002】
本発明は眼科専門医がいなくても、患者自身(使用者)で眼球光学系の光学式走査データを得るための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光コヒーレンス断層撮影法(OCT)は、網膜に現れる様々な疾患に対する眼科診療の標準治療となっている。これらの装置の価格は30,000ドル~90,000ドルであり、所望の結果を得るには高いスキルを有する作業者が通常必要である。
近年では患者の目の位置合わせを自動で行い、そして焦点を合わせる機能を備えたOCT機器があるが、やはり、作業者による入力や患者の位置合わせを行う必要がある。これらの装置が現在多くの眼科診療で使用される一方で、未だ患者は、最初の診断や疾患の進行のモニタリングのために診療所を訪れなくてはならない。多くの場合患者は数カ月に一度診療所を訪れるが、時おり視野が急変する。
もしも、より容易に機器を利用でき、それが安価であり、スキャンを行うのに眼科専門作業者が必要でなければ、この状況は潜在的に回避することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、複数の方法によりこの課題を解決する。本発明は第一に、患者ごとに個別の修整が加えられ(カスタマイズされ)た、新しい光学設計を利用した非常に安価な商品を提供する。装置設定を前もって行っておくことにより、患者の眼の屈折力に適応した個別の修整を装置に適用することができる。
一実施例では、それぞれの患者の眼に対する特注レンズを製造するために患者の眼鏡処方が利用され、この特注レンズをシステムのアイピース(接眼レンズ)に取り付ける。
この態様では新しい光学設計が可能であり、いくつかの可動部品を省くことができるが、他の市販機器では、広きにわたる患者の眼の差異や顔のトポグラフィ合成に適応しなければならないので、こうした可動部品が通常使用されている。
検討される主な使用例は家庭での使用である。患者は、自分の屈折を備えたレンズ(アイカップ内に取り付けられる)を含んだ新規なアイカップインタフェースを用いて、自分で位置合わせを行うことが可能である。更なる使用例には、高いスキルを有する作業者及び/又は臨床医がいなくても可能な設定が含まれる。実施例の一つは、小売の薬局診療所(pharmacy clinic)が位置する場所、又はキオスクに組み込む技術である。アイカップの輪郭としては、蓋は開いたままであり、反復的に眼窩への位置合わせが行われる、突出した外観が新規である。
家庭用シナリオでは、スキャンは作業者がいなくても実行される。そして、スキャン品質や、セグメント化層、行われた測定及び測定データ、及び眼科又は他の医学専門家による検査のために作られた報告書を最大限に利用するために、画像処理が行われるクラウドに自動的にアップロードされる。
一実施例において、(一例として中心網膜厚のような)測定における変化を追跡するために、選択した測定をダッシュボードビューで経時的に追跡することができるサブシステムがある。このアイカップは使い捨て(患者による一回の使用)でもよいが、反復使用できるものでもよく、使用の度に洗浄される。そして、機械情報(例えばOCTのコヒーレンス位置)を設定する機能を含むことができる。また別の実施例では、アイカップは他の眼科測定及び撮像装置で利用可能である。
【0005】
要約すると本発明は、(診療所を)訪れる間の視野損失を防止するために、商品を低費用とすることにより装置の潜在的レンタルを可能とし、OCT計測を行う際の使いやすさの問題を解決する。費用低減は、更に記載されている複数の新規な要素により達成される。加えてクラウドベースの分析の態様では、医師が追跡及び検出したいと思う変化があるときには、直ちに医師から通知があり、そして、更なる評価及び潜在的治療のために診療に戻るよう患者は通知を受け取る。
【0006】
予想される主な使用例は家庭での使用であるが、一方また別の実施例では、装置は患者に都合のいい他の位置にあってもよい。別の実施例では装置は小売り薬局キオスク又は他のキオスクに設置されていてもよく、生体情報や他の健康情報を収集するために利用される。
【0007】
本発明は新規なアイカップが使用されているという点で、他の発明とは異なっている。そして、この新規なアイカップには、個々の患者に適当するよう個別の修整が加えられたレンズが含まれているので、複数の可動部品を省くことができ、大幅な費用低減が実現され、使用も容易となる。そして、個別の修整が加えられたアイカップを使用することによりすべてのパラメータが設定される装置により、単一なハードウェアの実装が可能となる。この個別に修整されたアイカップ及びレンズにより、典型的な眼科機器では困難又は不可能な球面及び非点収差誤差の修正を可能にし、そして、通常の眼科撮像装置では不可能である高次収差の修正が可能となる。
本発明は、光源と、より低コストで光源を利用できるようにする較正方法において、(他の発明とは)異なっている。比較的安価な光源及び単純な干渉計を使用する本発明の新規性は、アイカップ又はレンズに依存することはなく、いかなるOCTシステムでも使用することができる。
【0008】
他のOCT機器に対する本発明の基本的な改良については上記されている。
【0009】
本発明を使用する工程段階は以下である。
視野損失の前に発生するかもしれない変化を検出するために、眼科専門医が(次に)診療所を訪れるまでの間は連続して家庭でモニタリングすることが患者の診断に必要であると判断する。一つの使用例では、早期警告制度として、時間をかけて中心網膜厚を監視する。
次の工程は、患者の屈折の取得、及び/又は市販のレンズメータで患者の眼鏡(各眼)を測定することである。このステップは、最高の網膜像を獲得するために必要とされ、より正確な光学的補正の測定とするために、「眼検査」又は自動屈折器測定(例えば角膜、レンズ形状、及び厚みの専門的なOCT計測)よりも複雑な検査を行い達成されてもよい。
患者はそれから試験器具を用いて、各眼に対して自身の装置を最適化するのに必要な他の設定すべてを決定するための検査を受ける。
患者には、装置を用いて自身で適切に位置合わせを行う方法が教示され、そして、試験測定を複数所有する。
患者の(各眼の)屈折に適応するような個別の修整が加えられたアイカップが製造される。このように個別に修整されたアイカップは、患者の処方に適合するよう製造されたレンズを含む。
装置は、個別の修整が加えられたアイカップと一緒に患者の家に出荷される。
装置は、データ送信のために家庭用wifi又はセルラーインターネットに接続されている。
患者は、自身のOCTスキャンデータを得るために、自分で検査を行う。
データはインターネットを通じて、画像処理、層分割、分析、及び眼科専門医への結果の報告のためのクラウドに自動的にアップロードされる。
眼科専門医は、危険性のあるものに対し設定ごとに色分けが施された結果と、専門家が選択した閾値とが示されたダッシュボードを有する。
クリニカルビューア上の設定は、測定図、分析、イベントに対する閾値、及び、診察のために眼科専門医の診療所を再び訪れるように自動化された患者との窓口(及び患者が他にすべき事及びメッセージ(診療所の訪問を含む/含まない))に対し、すべて修整可能である。
【0010】
潜在的に病気を管理するために装置を用いることができる一方で、最初に意図されていた調節目的での使用は、定期的な予定の訪問より前に、視野損失を防止するために眼科専門医の診療所を再度訪れさせるための早期警告のシステムである。
【0011】
本発明の使用は、網膜に現れるすべての病気及び疾患(必ずしも単なる網膜疾患でない)のためにある。一実施例においてこの装置は、神経変性疾患をモニタするために用いることができる。本発明が所望の結果を成し遂げる方法によると、新しい設計により、費用低減、使いやすさ、自己管理、及び自動的に生成される結果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】2つの眼と、本発明の一部を成す2つのアイカップのブロック図である。
【
図1B】眼と、撮像される眼のための屈折補償素子を含むアイカップと、走査ビーム集光系MEMS(微小電子機械システム)(又はガルボスキャナ)と、レトロリフレクター(再帰反射体)のブロック図であり、(走査)ビームが点線でトレースされている。
【
図1C】ダイクロイックミラーが追加された、
図1Bの別の構成である。
【
図2A】長さ調節が可能なアームを備えた、
図1Bの別の構成である。片方の眼に対する光路が(もう片方と比べ)長く、アームの長さは検査を受ける眼に適するよう修整されており、この長さは、システムのレトロリフレクターの位置により決定される。この長さは、傾斜する円形部分を回転させることにより設定することができる。
【
図2C】
図2A及び2Bの実施例で使用することができる円形部分を示しており、この傾斜面を有する円形部分を回転させることにより長さを調整する。
【
図3】
図1A、1B、1C、2A、2b、及び2Cと類似したシステムのブロック図である。アイカップには、左眼と右眼どちら側用に設計されているか示すためのしるしが含まれる。集光レンズシステムのリレーレンズは、どちら側にアイカップがあるか(設置されているか)確認する目印を検出するためのセンサを含む。センサは、アイカップ上の突起によって作動するリレーレンズシステムの機械的スイッチであってもよい。
【
図4】埋め込み屈折補償素子を有する代わりに、使用者の眼鏡(eyeglasses/spectacles)を受けるための溝穴を含むアイカップを示す。そしてアイカップは屈折を修正するための使用者の眼鏡を用いて、正しい経長とするために、眼窩とシステム間の接触に対する方法を更に提供する。
【
図5】画像形成データを遠隔地(例えば眼科専門医が処理を行い、アクセスするクラウド)に送信するための分光計及びカメラモジュール、処理及びアップロードモジュール、及び通信網を示しているブロック図である。示されているアイカップは右眼用である。そして、このアイカップをフィットさせ、また右のアイカップと認識させるために、人の顔の横側周辺で伸びる輪郭を有する。左のアイカップは、右のアイカップの鏡像(鏡に映った像)である。
【
図6A】ブロック図により、眼、アイカップ、及び手で持てるサイズ又は携帯用の画像処理システムを示す。網膜がシステムから正しい距離となるように、アイカップが眼と画像処理システムとに当接し、眼と画像処理システム間の正しい屈折と光路長とが設定される。これは、OCTのようなコヒーレンスベースの映像技術にとって重要である。この構成により、画像処理システムの操作及び設計が単純化され、コスト及び複雑さが低減される。この図では、左眼のためのアイカップは、右眼のためのアイカップより長い。
【
図6B】
図6Aと同様のシステムを示す(
図6Aでは左眼のアイカップの長さは右眼のアイカップの長さより短いという点を除く)。
図6A及び6Bのアイカップの長さはそれぞれ、人の眼の光学系に基づいて設定される。
【
図7A】ブロック図であり、広角リレーレンズシステムを含むシステムを示す。アイカップは、屈折矯正レンズに加えて、眼の内部で画角を広くするレンズシステムを含む。
【
図7B】ブロック図であり、広角リレーレンズシステムを含むシステムを示す。アイカップは、屈折矯正レンズに加えて、眼の内部で画角を広くするレンズシステムを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例について記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0014】
本発明では、人の光学系のデータを得るシステムで使用されるアイピース(接眼レンズ)を提供する。そしてこのアイピースは、患者の眼窩に接触ししっかりとフィットするよう個別に修整されており、そして、その患者の眼の屈折特性に対しても個別に修整された屈折レンズを受けるためのレンズポケットを有する。
【0015】
アイピースはさらに、アイピースから光を受けるための集光系と、集光系に光学的に接続しており人の光学系から光学式走査データを得るために2方向に傾斜可能な鏡を有している走査モジュールと、光学式走査データを取得及び格納するための走査モジュールに光学的に接続している画像処理システムと、を含む。アイピースと、集光系と、走査モジュールとは、光ビームを人の目に分配するための光路を提供し、走査モジュールに向けられる反射光を受けるよう配置される。
【0016】
アイピースは更に、処理が行われる遠隔地へ光学式走査データを伝達するための通信リンクを含むことができる。アイピース及びレンズには、患者のあらゆる非点収差及び収差に適応するように個別に修整を加えることができ、そしてその患者の眼の径に適応するように修整を加えることができる。
【0017】
アイピースは、患者の左の眼と右の眼それぞれに対応する、左のアイピースと右のアイピースとを含み得る。このアイピースは、それぞれのインデックスを備えた着脱可能な右及び左のアイカップを有することができ、そして、それぞれ対応するアイピース本体と嵌合するよう調整されており、この右又は左のアイカップは対応するアイピース本体と正しく嵌合する。
【0018】
アイピースレンズポケットは、患者の処方眼鏡のレンズを受けたり、その患者の眼に対して個別に修整された屈折レンズを収容するよう調整されてもよい。
【0019】
アイピースは、アイピースを介して画像形成ビームを送信するようも調整された、画像形成ビーム発生器を含んでもよい。これにより人の眼は、走査モジュールへ光ビームを反射し返す。画像形成ビーム発生器は、赤外線光学画像形成ビームを生じることができる。
【0020】
人の眼窩に対するアイピース接触部から走査モジュールまでの間は、焦点を合わせている人の眼の径に合わせるため、長さは調節可能でよい。アイピースには、眼瞼を開いた状態に保ちつつ、アイピースが眼窩に対して適切な位置に置かれるよう調節する突起部が含まれていてよい。
【0021】
通信リンクは、眼科専門医による画像処理、分析、及びアクセスのためのクラウドに光学式走査データを伝達するためのインターネットを備えてもよい。
【0022】
走査モジュールは、MEMS走査モジュールでもよい。アイピースは更に、視野におけるすべての変化を入力するためのグリッドを含むことができる。グリッドは、Amslerグリッド(アムスラーグリッド)又はYannuzziグリッドでもよい。
【0023】
アイピースのレンズは、可変レンズ又はフォロプタ検眼レンズセットでもよい。
【0024】
アイピースは、アイピースに加えられた個別の修整がどの患者に対するものであるかを一意に特定するためのRFIDチップと、この修整のためのパラメータとを含むことができる。
【0025】
アイピースは、少なくとも一つのフィルタを含むことができる。アイピースは、人の網膜の異なる領域の像を作るために最適化されたレンズを含んでもよい。アイピースは、眼底撮像装置、目測装置、又はドライアイテストを行うためのアイカップを含んでもよい。アイピースは、多焦点電気生理学試験を実行するための電気センサを有する個別の修整が加えられたアイカップを含んでもよい。アイピースは、眼を照らすための光源を含んでもよい。アイピースは、片側が、人の顔の側面に接触するために更に伸びているアイカップを含んでもよい。アイピースは、広域画像形成レンズを含んでもよい。アイピースは、眼の画像データをオートキャプチャするためのフィードバックループを含んでもよい。アイピースは、光コヒーレンス断層撮影画像を取得するためのシステムで用いてもよい。
【0026】
本発明は、人の光学系のデータを得るためのシステムを提供する。そして本発明は、患者の眼窩に接触し且つしっかりとフィットするよう個別に修整が加えられたアイピースを備え、そしてこのアイピースは、患者の眼の屈折特性に対しても個別に修整が加えられた屈折レンズを受けるためのレンズポケットを有しており、アイピースから光を受けるための集光系と、集光系に光学的に接続しており人の光学系から光学式走査データを得るために2方向に傾斜可能な鏡を有する走査モジュールと、光学式走査データを取得し格納するために走査モジュールに光学的に接続している画像処理システムとを備える。アイピースと、集光系と、走査モジュールとは、光ビームを人の眼に分配するための光路を提供するように、そして走査モジュールに向けられる反射光を受けるように配置される。
【0027】
本発明の好ましい実施例によると、
図1はアイカップモジュールを示しており、蓋部が開いている状態に保つことができる新しい設計及び要素が含まれる。一方でアイカップモジュールを眼球軌道(眼窩)の適切な位置に配置し、反復的に位置決めを行うことが可能である。アイカップモジュールはまた、患者の非点収差及び他の収差を含む屈折に適応するように個別の修整が加えられた一枚又は複数枚のレンズを含む。アイカップには、患者の屈折に合わせて個別の修整を行うための、距離及び他の位置決めの設定が含まれる。
【0028】
この装置の他の部分は、微小電気機械システム(MEMS)走査モジュールである。モジュールは、2方向(XYスキャン)に傾けられ、更に最適化された光学配置を可能にする単一鏡を用いる。例えばガルボスキャナは通常、別々のXスキャナとYスキャナとから成る。アイカップと他の要素との新しい組合せは、多様なパターン及び領域のスキャンを可能とし、光学収差を最小化する。
【0029】
装置の他の部分は、分光計及びカメラモジュールである。他の要素との新しい組合せは、費用低減及び高品位を可能にする。提案されたOCTシステムの広帯域光源及び分光計は、必要な特徴を有する波長掃引光源及びレシーバの電子機器を用いて達成してもよい。
【0030】
装置の他の部分は、インターネットを介してクラウドに画像及びデータをアップロードするための、場所が特定された処理及びアップロードモジュールである。処理はクラウドで完結されてもよい。事実各スキャニングユニットは、クラウドに格納されている処理のために必要とされるすべての較正ファイルを有するハードウェア及びソフトウェア(アイカップは専用化を含む)が同じであってもよい。
【0031】
装置の他の部分は、スイッチ又はオーディオ音声検出を介して、視野の変化を引き起こす場合がある変視症による他の変化、又は他の特徴があると使用者に示すこともできるグリッド(Amslerグリッド、Yannuzziグリッド、他)であってもよい。
【0032】
別の実施例では装置は、記載されているようなOCTを実行するための組合せ装置であり、そしてまた、Amslerグリッド、コントラスト感度、視野、マイクロ視野測定、又は他の機能的な視野評価を含む。
【0033】
別の実施例において、アイカップは挿入するレンズを有さないが、専用化は装置自体で成し遂げられる。
【0034】
別の実施例では、患者の屈折に合わせた個別の修整を加えるために、液体レンズ又は他の可変的なレンズの設定が行われる。
【0035】
別の実施例では、患者の屈折に合わせた個別の修整を加えるために、フォロプタ検眼レンズセットからのレンズが利用される。
【0036】
別の実施例では、通常数分で行われる眼球試験が、複数の箇所に対して何日/数ヶ月あるいは数年にわたって実行される。
【0037】
別の実施例では、新しい光学設計のため、他の補助的視覚検査のためのスキャン、視野、目標、及び視覚を最適化するために、MEMSを異なった位置に配置することができる。
【0038】
別の実施例では、個々のレンズを専用化することにより、個々の眼に基づいて修整されるよう後処理ができるようになる。
【0039】
別の実施例では、理想的な位置とするために様々な長さに調節可能であるピン又はレバーごとに、コヒーレンス位置が設定される。これにより、スライド機構、ねじ機構、又はねじることにより各眼の調節された設定に位置を調節する角度のある面を介して達成可能である。各眼のこの調節された位置によって、装置が特定の眼がそれぞれいつ撮像されているかについて確認することができる。別の実施例では、右眼(OD)又は左眼(OS)を検出し、目が適切な位置にあると確認するために、光スイッチが用いられる。
【0040】
別の実施例では、OCTフィードバックループは、最適な位置決めを決定し、データの存在及びデータの質に対して、スキャンキャプチャ及び/又はフラグを起動させる。
【0041】
別の実施例では、検査を受けている患者についての、装置調節のための識別子及びパラメータと、どちらの眼が撮像されているかを通知するために、RFIDチップがアイカップに挿入される。
【0042】
別の実施例においてMEMSでは、グリッド、Amslerグリッド、Yannuzziグリッド、Adaptiveグリッド、コントラスト感度、フリークエンシーダブルドテクノロジ(FDT)、視力、視野計測、及び微小視野測定を含むがこれに限らず、他の視力及び機能検査で利用される異なるパターンの表示が可能となる。
【0043】
別の実施例において、この装置では、さまざまな様相の従来の(OCTベースではない)眼底撮像のためのアイカップ及び光チャネルが可能である。
【0044】
別の実施例において、この装置では、さまざまな様相の従来及び他の(OCTベースではない)眼測定のためのアイカップ及び光チャネルが利用できる。
【0045】
別の実施例では、スペクトルフィルタ(シングル、複数、連続)を、装置及び/又はアイカップに取り付けることができる。
【0046】
別の実施例では、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を調整するものであってもよい。
【0047】
別の実施例では、複数の疾患のための眼球トラッキングテストを実行するものであってもよい。
【0048】
別の実施例では、瞳孔測定を実行するためのカメラを組み込むものであってもよい。
【0049】
別の実施例では、糖尿病の状態、及び/又は黙示的な血糖/ヘモグロビンA1cレベルに対する、凝集糖化最終産物の評価のための水晶体自発蛍光及びOCT技術を組み込むものでもよい。
【0050】
別の実施例ではアイカップは、アイカップに組み込まれ、減弱をアイカップに加える各眼の個々の最適化が可能な複数のアイデバイス及び、アイカップ上の異なるフィルタに適応することができる。
【0051】
別の実施例では、個別に修整が加えられたレンズの異なる部分は、網膜の異なる領域の像を作るために最適化される。これは、必要な形状、複合要素、又は複数素体を有する単一の光学素子で達成されてもよい。
【0052】
別の実施例では、各眼の屈折に合わせた個別の修整を行うアイピース技術は、従来の眼底撮像及び広視野眼底撮像の装置に組み込まれる。これにより、中心視野及び周辺における収差を減少させ、より良好な像質を成し遂げる。
【0053】
別の実施例では、アイカップは、眼底カメラ、OCT、スリットランプ撮像装置、スマートフォン撮像装置、広視野撮像装置(さまざまな様式全て―カラー、OCT、赤色フリー、自己蛍光、蛍光眼底血管造影法、ICG血管写、ハイパースペクトル、及びマルチスペクトルイメージング)を含むがこれに限らず、いずれの眼撮影装置を使用する場合でも像質を改良するよう調整することができる。
【0054】
別の実施例では、アイカップは、広視野イメージングを容易にするために、光学部品の位置を角膜の近くに配置できるレンズシステムを含む。
【0055】
別の実施例では、個別の修整が加えられたアイカップを有する装置は、ドライアイテストのために利用される。
【0056】
別の実施例では、装置は、前眼部及び顕微鏡搭載のアイ・イメージングアプリケーションのために利用される。
【0057】
別の実施例では、数日にわたり行われる長い検査の一部として、眼の刺激装置及び/又は撮像装置を用いて、個別に修整されたアイカップが使用される。このように、時間のかかる検査を、数日間連続して小さい規模で行うことができる。このことは、視覚の「視野計測試験」又は他の先に述べた視覚の機能テストのような試験が「配信形式」で受けられることを意味する。
【0058】
別の実施例では、個別の修整が加えられたアイカップは、多焦点電気生理学試験を実行するために、電気センサを含む。
【0059】
別の実施例では、コヒーレンス位置の調整が必要ないように、達成可能な光源が、十分に長いコヒーレンス長を有するOCTシステムにおいて使われる。
【0060】
別の実施例では、コヒーレンス位置の調節が必要でないように、イメージング範囲が充分であるように、分光計設計がOCTシステムにおいて使われる。
【0061】
別の実施例では、屈折要素が必要でないように、角膜の光学ビームウエストは十分に小さい。
【0062】
別の実施例では、患者に適応した個別の修整が加えられたレンズを備えるアイカップは、既存又は新規の装置に適応し、そして、他の眼撮影装置(眼底カメラ、Opto、OCT他)を使用する際も最適化される。これにより、患者特有の収差が修正される。
【0063】
別の実施例では、光源を備えた照明は、網膜撮像のために経強膜を照らすように、アイカップに組み込まれる。
【0064】
別の実施例では、広視野レンズは、アイカップにはめ込まれ、それから両眼検眼鏡、間接的な検眼鏡、スリットランプ、又は他の眼科用デバイスを用いて検査及び/又は撮像される。
【0065】
別の実施例では、アイカップは、いかなる携帯用の眼科撮像装置及び/又は測定装置の配置も最適化するよう用いられる。
【0066】
別の実施例では、自身の比屈折及び非点収差を修正するために、光学縦列において、患者自身の眼鏡(eyeglasses/spectacles)が利用される。
【0067】
別の実施例では広視野レンズはアイカップに取り付けられる。そして、網膜を撮像する網膜検査計測器(間接又は直接の検眼鏡、スリットランプ、スマートフォンベースの撮像装置)と連結/分離している。
【0068】
装置が、家庭環境で用いることができる(自己管理される)。
【0069】
装置は、検査を自己管理するために、(開業薬局にあるような)キオスクに設置することができる。
【0070】
装置は、高いスキルを有する作業者又は医学専門家がいない場合も、いずれの設定でも使用することができる。
【0071】
変形例含む好ましい実施例を記載してきたが、本発明はこれらの実施例に限られておらず、そして、その範囲は請求項により定められる。