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特許7376501弾性運動連鎖を有する線形コンパクト電気アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】弾性運動連鎖を有する線形コンパクト電気アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20231031BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20231031BHJP
【FI】
H02K7/06 A
H02K11/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020555016
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2019059558
(87)【国際公開番号】W WO2019197668
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】1853245
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520430848
【氏名又は名称】ソンセボ オートモティブ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フーコー,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ,バンジャマン
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/028395(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/160622(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/048315(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0895346(EP,A2)
【文献】国際公開第2014/173667(WO,A1)
【文献】特開平10-164878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(1)を固定する底部(15)を有するケーシング(35)を備え、
上記電気モータ(1)は、放射状に延在する直線状の歯を有し、かつ、複数のコイル(23)を有するステータ(22)と、複数の磁石(25)で構成されたロータ(24)とを備え、
上記複数のコイル(23)は、上記ケーシング(35)の上記底部(15)に平行な平面上に延在し、
上記ロータ(24)は、上記複数のコイル(23)の方向に対して垂直な軸を有するウォームギヤ(2)を構成するピニオンによって延在し、
上記ウォームギヤ(2)は、上記ケーシング(35)の上記底部(15)に平行に延在するねじ棒(10)と直接係合し、
上記ねじ棒(10)は、その後部において、固定されたスライドベアリング(30a)または固定されたナット(30)によって案内され、
上記スライドベアリング(30a)または上記ナット(30)は、上記ケーシング(35)に連結され、
上記複数のコイル(23)が接続するプリント回路(37)が、上記ステータ(22)と上記ねじ棒(10)との間に設けられることを特徴とするアクチュエータ(20)。
【請求項2】
上記プリント回路(37)は上記ステータ(22)の上方に配置される、請求項1に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項3】
上記ウォームギヤ(2)の軸端部はカバー(5)により案内される請求項1に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項4】
上記スライドベアリング(30a)または上記ナット(30)は、上記カバー(5)に連結され、
上記カバー(5)は上記ケーシング(35)を密閉する、請求項3に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項5】
運動連鎖を備え、
上記運動連鎖は、上記電気モータ(1)が上記ウォームギヤ(2)を支持する上記ロータ(24)を駆動し、上記ねじ棒(10)はウォームギヤ式の変換に従って上記ウォームギヤ(2)によって回転移動し、上記変換は不可逆であり、上記ねじ棒(10)は回転運動から直線運動の変換に従って直線運動により制御部材(32)を駆動し、上記制御部材(32)は連結アーム(12)を駆動し、上記連結アーム(12)は一端においてバルブ部材(9)を駆動し、上記バルブ部材(9)はシート(6)と当接するストローク終了位置に移動する、という複数の要素で少なくとも構成され、
上記運動連鎖を構成する上記複数の要素のうちの任意の要素、あるいは複数の要素は、圧縮または曲げにおいて弾性的に変形可能なプラスチック材料から作製され、
電気モータ(1)に動力がない場合であっても、上記ストローク終了位置において上記バルブ部材(9)が上記シート(6)に力を加えるように、上記運動連鎖のストロークは上記バルブ部材(9)のストロークよりも大きい、請求項1に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項6】
上記連結アーム(12)または上記制御部材(32)は、上記制御部材(32)または上記連結アーム(12)それぞれに対して少なくとも1つの自由度を有するためにボールジョイントの形態である、請求項5に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項7】
上記ねじ棒(10)は、一方で固定されたナット(30)と協働し、他方で上記制御部材(32)を構成する可動ナット(31)と協働し、
上記ねじ棒(10)は螺旋運動する、請求項5または6に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項8】
上記固定されたナット(30)は、上記アクチュエータ(20)のカバー(5)に溶接される、請求項7に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項9】
上記制御部材(32)が上記ねじ棒(10)に平行に延在する永久磁石(40)に連結し、上記永久磁石(40)に対して固定された感磁プローブ(39)が、上記制御部材(32)の直線位置を検出するために、上記アクチュエータ(20)のプリント回路(37)の上方に位置する、請求項5から8の何れか1項に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項10】
永久磁石(40)は、プラスチック材料に封入され、固定されたベアリングによって並進案内される、請求項9に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項11】
上記ベアリングは、上記固定されたナット(30に連結する、請求項10に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項12】
上記可動ナット(31)は上記アクチュエータ(20)の上記ケーシング(35)によって案内される、請求項7に記載のアクチュエータ(20)。
【請求項13】
アクチュエータ(20)の制御方法であって、
少なくとも、ウォームギヤ(2)を支持するロータ(24)を駆動する電気モータ(1)、ねじ棒(10)、制御部材(32)、及び連結アーム(12)という複数の要素によって構成された運動連鎖を含み、
上記ねじ棒(10)はウォームギヤ式の変換に従って上記ウォームギヤ(2)によって回転移動し、上記変換は不可逆であり、上記ねじ棒(10)は回転運動から直線運動の変換に従って直線運動により制御部材(32)を駆動し、上記制御部材(32)は連結アーム(12)を駆動し、上記連結アーム(12)は一端においてバルブ部材(9)を駆動し、上記バルブ部材(9)はシート(6)と当接するストローク終了位置に移動し、
上記運動連鎖を構成する上記複数の要素のうちの任意の要素、あるいは複数の要素は、圧縮または曲げにおいて弾性的に変形可能なプラスチック材料から作製され、
電気モータ(1)に動力がない場合であっても、上記ストローク終了位置において上記バルブ部材(9)が上記シート(6)に力を加えるように、上記運動連鎖のストロークは上記バルブ部材(9)のストロークよりも大きく、
上記アクチュエータ(20)は一連の電気パルスに従って制御され、
中間電流レベルに続く第1の一連の電気パルスは、上記バルブ部材(9)を開位置から閉位置に移動させ、当該閉位置では、上記ストローク終了位置において上記バルブ部材(9)が上記シート(6)に当接し、
上記第1の一連の電気パルスの上記中間電流レベルよりも高いハイレベルに続く第2の一連の電気パルスは、上記連結アーム(12)を弾性変形させ、上記バルブ部材(9)は上記シート(6)に力を加え、
上記第1の一連の電気パルスの上記中間電流レベルよりも低いローレベルに続く第3の一連の電気パルスは、上記バルブ部材(9)の位置を上記シート(6)上に保持する、アクチュエータ(20)の制御方法。
【請求項14】
上記ローレベルは空値である、請求項13に記載のアクチュエータ(20)の制御方法。
【請求項15】
上記ローレベルは100mA未満である、請求項13に記載のアクチュエータ(20)の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、EGRバルブのバルブ部材、および、より一般的には、負荷に対して位置を維持する必要のある部材などの可動部材を駆動するためのリニアアクチュエータの技術分野に関する。そのようなリニアアクチュエータは、電気エネルギーの消費が最小限であるか、あるいは電気エネルギーを全く消費しない。
【0002】
特に、EGR冷却バイパスバルブ(英語で“an EGR cooler bypass valve”)と称される排気ガス再循環回路式バルブのバルブ部材を制御するためのアクチュエータは、制御対象となる部材に対してギヤモータの力を伝達するトランスミッションロッドにより制御される。
【背景技術】
【0003】
排気ガス再循環式モータに長年取り付けられているバルブは、通常、空気圧シリンダによって制御される。この作動装置は、出力が高く、小型でかつ質量において利点を有するが、高価な空気圧回路と永続的に作動する真空ポンプを必要とする。空気圧で作動させる場合、バルブ部材の閉位置は、真空ポンプにより生成される永久真空により難なく維持される。この真空ポンプは、将来の自動車プラットフォームで排除される可能性が最も高く、それゆえ、純粋に電気的作動に基づいて、この空気圧シリンダの代替品を見出すことが重要になりつつある。
【0004】
流体調整バルブを制御し、排気ラインの過酷な環境、特に高温に耐えるのに適した多くの電動アクチュエータが存在する。
【0005】
例えば、国際特許出願公開公報WO2014/173667が知られている。この公報は、ギヤモータによって螺旋状に動作させることが可能なウォームギヤにより直線的に部材を変位させるための電気アクチュエータを開示する。開示された技術的解決策は、興味深く、関連性がある。しかしながら、この公報は、上記部材がどのようにしてシステム(application)に連結されるか、あるいは、移動フラップに連結されるかを特定していない。この公報は、制御すべきバルブ部材が閉位置にあるとき、アクチュエータの電力消費を制限する動機付けを与えない。
【0006】
国際特許出願公開公報WO2017/068285も知られている。この公報は、運動変換を伴わない直接駆動アクチュエータの形態であって、特に、1または2の安定したストローク終端位置を有するリニアアクチュエータのための他の解決法を開示する。
【0007】
加えて、ここでは詳細は説明しないが、例えば圧電のような電気機械原理に基づいて安定した位置を得るための複数の類似する線形作動解決法が存在する。
【0008】
従来技術の作動解決法はいずれも、小型、軽量、及び、かなりの気体脈動を吸収できる高いブロッキングフォース(blocking force)という利点を維持しながら、現在の空気圧解決法に置き換わることができない。これらの脈動は、140°までの高温において、上記バルブに非常に近いシリンダから生じ、バルブのバルブ部材の制御ステムによって伝達される。
【0009】
さらに、従来のいずれの解決策も、実質的な電力消費を引き起こすことなくこれらのブロッキング機能をもたらすものではない。国際特許出願公開公報WO2017/068285号に提示された解決策はこの目的のために興味深いが、高度に非線形な力の法則によって、および比較的低い質量力密度によって、さほど制御可能ではない。さらに、バルブ部材のシールが困難である。これは、アクチュエータ内部の残留磁気ギャップによってシールを得る必要があるためである。実際に、この使用の場合、バルブ部材位置に対するアクチュエータの位置決め公差を克服するように磁力の範囲を大きくする必要がある。その結果、嵩高くなり、非効率なアクチュエータとなる。
【0010】
従って、従来技術の解決策は、高い質量力密度(mass force density)、バルブ部材のシール性、及び、バルブ部材を作動するのに必要な電気消費量と比較してゼロまたは低消費電力、を得るうえで必要な全ての機能を全体的に満たすわけではない。
【0011】
排気ガス再循環熱交換器のためのこの電動バルブ適用に関連する技術的課題、しかしながら、この用途に限定されない課題は、空気圧アクチュエータ解決法と組み合わされるが、公知の電動アクチュエータ解決法によっては満たされない、幾つかの技術的特徴の組み合わせにある。
【0012】
実際、ガス再循環交換器アクチュエータは、以下の特徴の全てを組み合わせるのがよい。
・アクチュエータを固定する熱交換器に損傷を与えず、かつモータの強い振動に抵抗するように、アクチュエータの質量はできるだけ小さくしなければならない。
・異なるすべてのモータ設置構成において既存の空気圧アクチュエータに置き換わらなければならないため、アクチュエータの外形寸法は、利用可能なスペースを縮小することを含め、縮小しなければならない。理想的には、電動アクチュエータは、現在使用されている特に小型の空気圧アクチュエータの外形寸法を保持する。小型という特徴は、アクチュエータを固定する熱交換器の本体を構成する複雑で高価な金属部品を改造しなければならないというリスクを負うことなしにアクチュエータの使用を担保する条件である。
・アクチュエータの消費電流は、全開または全閉のいずれかの位置に対応する、少なくともバルブの安定した位置において、低くなるか、またはゼロとなる。このことは、アクチュエータが、高電流を必要とすることなく脈動に対してバルブを閉に維持するために高い剛度を有する必要があることを意味する。
・小スペースかつ低電流で高レベルの力性能を提供するため、アクチュエータは高い力密度を有しなければならない。
・バルブのバルブ部材で発生し、トランスミッションレバーを伝播する気体脈動を取り除くために、バルブアクチュエータの伝動運動力学(the transmission kinematics)は不可逆でなければならない。この不可逆性は、電気アクチュエータの耐用年数を保証するために、これらの繰り返されるストレス(圧力)から駆動ロータを保護する。
・モジュール設計は、各製造業者の特定の要件に適合するように、製品の形状を変更することなく、位置センサまたは密封ベローズを容易に追加できるものでなければならない。
【0013】
このように、公知技術は、期待される力密度と不可逆特性を提供する、運動減速要素の大きいギヤモータに基づく電動アクチュエータの必要性を生み出した。
【発明の概要】
【0014】
本発明による解決策は、従来技術の解決策と比較して、以下の技術的利点を提供する。
【0015】
・電気駆動モータの構造は平坦であり、ステータを形成するラミネーションパックの高さは非常に低く、5mmのオーダーであり、最小の体積および質量をもたらす。
【0016】
・この平坦な磁気構造によって、位置センサを収容するように適合された小型のアセンブリを構成するように電子制御ユニットを配置することができる。
【0017】
・ロータは、高減速比を有するウォームギヤ減速機を極小スペースにおいて駆動する。部品はプラスチック製であり、質量及び弾性特性が大きく軽減される。
【0018】
・ロータは、ねじ棒と直接噛み合うウォームギヤを形成するピニオンによって延在する。ここでいう「直接噛み合い」とは、ウォームギヤとねじ棒との間に媒介を設けることなく、直接的な機械的接点により噛み合うことをいう。
【0019】
・また、電動アクチュエータの全体的なコンパクト性を最適化するため、運動変換は、モータの特定構造の空間と平行する空間を使用する。
【0020】
・ウォームギヤのねじ部の螺旋ピッチは小さいピッチが選択される。その結果、運動変換の不可逆性が担保され、減速機の歯車およびロータガイドを保護するために気体脈動が除去される。減速機の歯車およびロータガイドはプラスチック製である。
・第2の実施形態において、多相モータの磁気構造によって、全てのコイルをロータ軸と同じ側に移動させ、アクチュエータのケーシングの幾何中心に対してロータをオフセットすることができる。このようにして、オフセット軸を有するウォームギヤ減速機との協働により、アクチュエータのケーシング内でねじ棒を再び中心に置き、アクチュエータの外形寸法を最適化することができる。
・第2の実施形態において、リニアアクチュエータの制御部材は、ケーシングに接続する摺動可能な係合において並進移動が可能であり、ねじ軸と協働するナットと、一次トランスミッションレバーとの機械的接続が可能な球形エンドピースとで構成される。一次トランスミッションレバーは、バルブのバルブ部材に連結された二次レバーが回転可能となるように、運動中に旋回しなければならない。リニアアクチュエータの出力部材の一次レバーとのボール接続は、寄生応力及び摩擦を最小にすることによって運動を伝達するのに特に適している。
【0021】
より具体的に、本発明に係るアクチュエータは、電気モータを固定する底部を有するケーシングを備え、上記電気モータは、放射状に延在する直線状の歯(straight teeth)を有し、かつ、複数のコイルを有するステータと、複数の磁石で構成されたロータとを備え、上記複数のコイルは、上記ケーシングの上記底部に平行な平面上に延在し、上記ロータは、上記複数のコイルの方向に対して垂直な軸を有するウォームギヤを構成するピニオンによって延在し、上記ウォームギヤは、上記ケーシングの上記底部に平行に延在するねじ棒と直接係合し、上記ねじ棒は、その後部において、固定されたスムースベアリングまたは固定ナットによって案内され、スムースベアリングまたは固定ナットは、ケーシングカバーに堅固に連結され、上記ウォームギヤの軸端部は、上記カバーに案内され、上記複数のコイルが接続するプリント回路が、上記ステータと上記ねじ棒との間に設けられる。
【0022】
好ましくは、本発明は電気アクチュエータに関し、当該電気アクチュエータは、少なくとも、ウォームギヤを支持するロータを駆動する電気モータ、ねじ棒、制御部材、及び連結アームという複数の要素によって構成された運動連鎖を含み、上記ねじ棒はウォームギヤ式の変換に従って上記ウォームギヤによって回転移動し、上記変換は不可逆であり、上記ねじ棒は回転運動から直線運動の変換に従って直線運動により制御部材を駆動し、上記制御部材は連結アームを駆動し、上記連結アームは一端においてバルブ部材を駆動し、上記バルブ部材はシートと当接するストローク終了位置に移動し、上記運動連鎖を構成する上記複数の要素のうちの任意の要素、あるいは複数の要素は、圧縮または曲げにおいて弾性的に変形可能なプラスチック材料から作製され、電気モータに動力がない場合であっても、上記ストローク終了位置において上記バルブ部材が上記シートに力を加えるように、上記運動連鎖のストロークは上記バルブ部材のストロークよりも大きい。
【0023】
好ましくは、限定的ではないが、上記連結アームまたは上記制御部材は、上記制御部材または上記連結アームそれぞれに対して少なくとも1つの自由度を有するためにボールジョイントの形態である。
【0024】
好ましい実施形態において、上記ねじ棒は、一方で固定ナットと協働し、他方で上記制御部材を構成する可動ナットと協働し、上記ねじ棒は螺旋運動する。上記固定ナットは上記アクチュエータのカバーに溶接されてよい。
【0025】
他の実施形態において、上記制御部材は、上記ねじ棒に平行に延在する永久磁石に堅固に連結し、上記永久磁石に取り付けられた感磁プローブが、上記制御部材の直線位置を検出するために、上記アクチュエータのプリント回路の上方に位置する。永久磁石は、プラスチック材料に封入され、固定されたベアリングによって並進案内される。上記ベアリングは、上記固定ナットに堅固に連結してよい。
【0026】
好ましい実施形態において、上記可動ナットは上記アクチュエータの上記ケーシングに案内される。
【0027】
好ましくは、本発明は電気アクチュエータの制御方法に関し、当該電気アクチュエータは、少なくとも、ウォームギヤを支持するロータを駆動する電気モータ、ねじ棒、制御部材、及び連結アームという複数の要素によって構成された運動連鎖を含み、上記ねじ棒はウォームギヤ式の変換に従って上記ウォームギヤによって回転移動し、上記変換は不可逆であり、上記ねじ棒は回転運動から直線運動の変換に従って直線運動により制御部材を駆動し、上記制御部材は連結アームを駆動し、上記連結アームは一端においてバルブ部材を駆動し、上記バルブ部材はシートと当接するストローク終了位置に移動し、上記運動連鎖を構成する上記複数の要素のうちの任意の要素、あるいは複数の要素は、圧縮または曲げにおいて弾性的に変形可能なプラスチック材料から作製され、電気モータに動力がない場合であっても、上記ストローク終了位置において上記バルブ部材が上記シートに力を加えるように、上記運動連鎖のストロークは上記バルブ部材のストロークよりも大きい。上記アクチュエータは一連の電気パルスに従って制御される。
・中間電流レベルにおける第1の一連の電気パルスは、上記バルブ部材を開位置から閉位置に移動させ、当該閉位置では、上記ストローク端において上記バルブ部材が上記シートに当接する。
・上記第1の一連の電気パルスの上記中間電流レベルよりも高いハイレベルにおける第2の一連の電気パルスは、上記連結アームを弾性変形させ、上記バルブ部材は上記シートに力を加える。
・上記第1の一連の電気パルスの上記中間電流レベルよりも低いローレベルにおける第3の一連の電気パルスは、上記バルブ部材の位置を上記シート上に保持する。
【0028】
好ましくは、本発明は電気アクチュエータの制御方法に関し、当該電気アクチュエータは、少なくとも、ピニオンを支持するロータ、ねじ棒、制御部材、及び連結アームという複数の要素によって構成された運動連鎖を含み、上記ねじ棒はウォームギヤ式の変換に従って電機モータによって駆動する上記ピニオンにより回転移動し、上記変換は不可逆であり、上記ねじ棒は回転運動から直線運動の変換に従って直線運動により制御部材を駆動し、上記制御部材は連結アームを駆動し、上記連結アームは一端においてバルブ部材を駆動し、上記バルブ部材はシートと当接するストローク終了位置に移動し、上記運動連鎖を構成する上記複数の要素のうちの任意の要素、あるいは複数の要素は、上記連結アームが動く方向において圧縮または曲げにおいて弾性的に変形可能であり、上記運動連鎖のストロークは上記連結アーム端のストロークよりも大きく、上記アクチュエータは一連の電気パルスに従って制御される。
・中間電流レベルにおける第1の一連の電気パルスは、上記バルブ部材を開位置から閉位置に移動させ、当該閉位置では、上記ストローク端において上記バルブ部材が上記シートに当接する。
・上記第1の一連の電気パルスの上記中間電流レベルよりも高いハイレベルにおける第2の一連の電気パルスは、上記連結アームを弾性変形させ、上記バルブ部材は上記シートに力を加える。
・上記第1の一連の電気パルスの上記中間電流レベルよりも低いローレベルにおける第3の一連の電気パルスは、上記バルブ部材の位置を上記シート上に保持する。
【0029】
好ましくは、低電流レベルは、空値であるが、非空値であってもよく、100mAの典型的な値未満であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、添付の図面によって示される実施形態の非限定的な例の以下の説明からより良く理解されるのであろう。
図1】本発明の運動学的図である。
図2】本発明に係るアクチュエータを使用するためのEGR冷却バイパスバルブの斜視図である。
図3a】本発明に係るアクチュエータの斜視図である。
図3b】一実施形態に係る制御部材の斜視図である。
図4】本発明に係るアクチュエータの運動連鎖の一実施形態の斜視図である。
図5】一実施形態に係るカバーなしアクチュエータの斜視図である。
図6】本発明に係るアクチュエータの運動連鎖の一実施形態の他の斜視図である。
図7】本発明によるアクチュエータの他の実施形態を示す図である。
図8】本発明によるアクチュエータの代替実施形態を示す図である。
図9】本発明によるアクチュエータの他の代替実施形態を示す。
図10】本発明によるアクチュエータの他の代替実施形態を示す。
図11】本発明によるアクチュエータの他の代替実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による解決策は、リニアアクチュエータ(20)に関連する電子制御装置を備えた、排気ガス再循環交換器用の電動バルブを一例とする実施形態において以下に説明される。リニアアクチュエータ(20)は、好ましくは平坦状のステータとウォームギア(2)を駆動するロータとを有する電気モータ(1)と、ウォームギア(2)と噛み合うホイール(26)を支持し、かつ、2つのねじ部(3、4)によって延在するねじ棒(10)と、固定ナット(30)と、制御部材(32)によって延在する可動ナット(31)と、制御部材(32)とボールジョイント接続された連結アーム(12)と、バルブ(42)のバルブ部材(9)を一体的に回転駆動する二次トランスミッションレバー(13)とで構成される。運動変換装置のねじ棒(10)は、プラスチック製のナット(30、31)を用いて、反対の螺旋方向を有する2つの螺旋型接続部によってのみ案内される。この変換運動は、国際特許出願公開公報WO2014/173667にさらに詳細に開示されているようにして得られ、限定的ではない。図7に示されるように、ねじ棒(10)は、単一ねじとして得ることができる。この単一ねじは、ねじ棒(10)の回転運動のみを得るようにウォームギア(2)と協働する。図2は、本発明に係る電動バルブの現実的な実施形態を示し、バルブ部材がそのストロークの端部で当接するバルブのシート(6)も認められる。
【0032】
図3aは、好ましい実施形態におけるアクチュエータ(20)を示す。制御部材(32)はボールジョイントの形態であり、その詳細が図3bに示されている。ボールジョイントは取り付けを容易にするために半球形状であるが、これは一実施形態に過ぎない。このボールジョイントによって、有利には、アクチュエータ(20)の連結アーム(12)との連結にある程度の回転自由度をもたらすことができる。これにより、連結アーム(12)は、連結アーム(12)に対するアクチュエータ(32)のずれ(dealignment)を許容しうる。ここで、アクチュエータ(20)が平坦な箱状であることを前提に、制御部材(32)の直線運動に対して横方向での高さが低いことを通じて、アクチュエータ(20)の形状面での要素が強調される。本実施形態の他の利点として、ケーシング(35)の締結部材(11)に対して運動出力を中央に位置付けることができ、それにより、2つの締結部材(11)から等距離の位置にノーズ(35a)が形成される点も挙げられる。
【0033】
図4は、平坦状のアクチュエータ(20)の電動モータ(1)を示す。電動モータ(1)は、3つのコイル(23)の形態のステータ(22)内に三相と、回転子(24)とを有する。回転子(24)は、5極磁石(25)を有し、プラスチック製のハブによって成形され、ウォームギヤ部分(2)を有する。ウォームギヤ(2)は、ねじ棒(10)に堅固に連結された歯付きホイール(26)を回転駆動する。ねじ棒(10)は、歯の両側に2つのねじ部分(3、4)を有し、一方のねじ部分は右ねじを有し、他方のねじ部分は左ねじを有する。回転子(24)が回転すると、ねじ棒(10)はプラスチック製の固定ナット(30)にねじ込まれる。固定ナット(30)は、ここでは溶接によって、アクチュエータを介してアクチュエータ(20)のカバー(5)に取り付けられ、これにより螺旋運動がもたらされる。ねじ棒(10)は、反対方向に移動可能なナット(31)と第2の螺旋接続をすることによって、アクチュエータケーシング(35)と摺動可能に係合する制御部材(32)をまったくの並進運動に従って駆動する。気体脈動がバルブ部材(9)に作用し、次いで種々のトランスミッションレバーに作用し、ねじ軸の軸方向の微小運動を発生させることから、この運動変換は特に用途(使用)に適している。これらの微小動作は、2つのナット(30)と(31)によって支持される。ナット(30)と(31)は、ねじ棒(10)を担持し、ナット(30)と(31)の長さと材料(好ましくはプラスチック製)によって、既存の解決法である空気圧シリンダの弾性膜と同様に、振動を減衰させ、良好な耐久性を確保する。実際には、このように生成された運動連鎖の様々な要素は変形可能であり、それらに加えられる負荷を減衰させることができる。さらに、ねじ棒(10)とモータ(1)の回転子(24)との間に配置されるウォームギヤ式の接続によって、これらの軸方向の微小変位を早期摩耗から保護する。この解決方法は、従来の解決方法に比べて決定的な利点である。従来の解決方法では、運動力学は、通常、ボールベアリングを含む。ボールベアリングは、バルブストロークの終端位置にのみ存在するため、固定位置においてこの種の両振応力(脈動)に耐えられない。運動連鎖の上記変形から得られる利点として、バルブシート(6)上のバルブ部材に機械的に張力(tension)を与えるために、バルブ部材のストロークと比較してより大きな運動連鎖のストロークを得られうる点を挙げられる。モータの停止と運動変換の不可逆性とによって、モータに動力が与えられなくなった場合であっても、負荷変動下においてバルブ部材の開放を妨げる圧力を加えることによって、バルブ部材を密閉位置に保持することができる。
【0034】
連結アーム(12)は、制御部材(32)とボールジョイント接続されており、同様に第2のレバー(13)を駆動する。第2のレバーは、ガス再循環交換器バルブのバルブ部材(9)に接続されている。このレバーによる伝達によって、バルブ(42)のバルブ部材(9)のための回転運動が生成されるとともに、高温に対して敏感な案内部材(30,31)及びプリント回路(37)上に配置された制御電子回路(36)を有する電気アクチュエータ(20)から、数百度の温度を有するバルブ(42)を熱的に分離することができる。
【0035】
好ましいが限定的ではない態様において、ステータ(22)は、同じ側で半径方向に延在する3つのコイル(23)を有する。その結果、ステータの外側外形から回転子(24)の位置をずらすことができ、かつ、出力ホイール(26)が、ステータの外形、従ってアクチュエータのケーシング(20)の外形上に位置するウォームギヤを使用することができる。
【0036】
回転運動を直線運動に変換する機構全体が、使用するモータと平行に動作し、かつ、同様の長さの空間を占めるように構成されている。アクチュエータは、ケーシング(35)に堅固に接続されたガスケット(34)を備えることが好ましく、このケーシング内で可動ナット(31)が摺動する。さらに、カバー(5)を介したレーザ溶接によってケーシング(35)のシールが仕上げられ、その上部のアクチュエータを密閉する。コネクタ(14)はガスケット(不図示)を有し、それによりシールを仕上げる。
【0037】
電子制御回路(36)はモータ(1)と並列に一体化され、制御信号に基づいて、ガス再循環バルブのバルブ部材(9)を所望の位置に移動させることができる。
【0038】
デジタル感磁素子(不図示)は、電子制御回路(36)上に配置され、回転子(24)の正確な位置を常時把握できる。最適な駆動トルクを維持するために、回転子の位置に従ってステータのコイルを制御するように構成されたマイクロプロセッサ(38)が設けられる。
【0039】
この「自動切替」制御モードによって、回転子とステータの磁界(stator field)との同期が決して失われることのないように、制御部材に加わる負荷に応じて速度と電流レベルが補正される。この制御モードは、オープンループ制御に対応するステッパ制御と比較して、回転子の位置制御なしで、従ってステップ損失セキュリティ(step loss security)なしで、追加的な制御安全をもたらす。また、モータの電子回路(36)は、図6に記載される第2の感磁プローブ(39)からの入力を受け付けることができ、それにより、可動ナット(31)に接続された永久磁石(40)の直線位置を検出することが可能となる。この位置センサによりバルブ部材(9)の位置が把握される。また、バルブ部材(9)を機械的な張力下に置くために、記載された運動連鎖においてより実質的なストロークを可能とすることで、バルブ部材(9)の変位を管理することができる。磁石(40)は、好ましくはプラスチック材料内に封入される。プラスチック材料は、固定軸受(33)と共に、可動ナット(31)、従って、ねじ棒(10)を案内するのにも役立つガイドを形成する。
【0040】
モータの電子回路(36)は、アナログまたはPWM制御信号、あるいはLINプロトコルに従うメッセージを受け付けるように設計されている。場合によっては、LIN又はPWM通信プロトコルのいずれかを使用して位置センサに関連する車両コンピュータ情報に戻すか、又はコネクタ(41)内の追加の別個の接続ピンを使用してこの位置信号が提供される。
【0041】
図7は、本発明に係るアクチュエータの他の製造方法を示す図である。この場合、電機モータ(1)のステータ(22)は、互いに60度離れて配置された6つのコイルを有する三相平型モータであり、ステータ歯によって支持され、図4で説明したモータと同様に、磁極ヘッドなしで放射状に延在する。本実施形態では、先の実施形態で使用されたのとは異なるねじ棒(10)を使用することができる。ねじ棒(10)は、ウォームギヤ(2)によって歯付きホイール(26)の高さで駆動される状態が維持される。しかしながら、ねじ棒(10)は、スライドベアリング(30a)によって案内されるシンプルな平滑棒(8)を後部に有する。本実施形態では、ねじ棒(10)は、ねじ棒(10)の軸線を中心とする1つの自由度(one degree of rotation)のみを有する。前述の実施形態と同様に、その前方部分において、ねじ棒は、制御部材(32)を前進させる可動ナット(31)と協働するねじ付き部分(4)によって延伸される。制御部材(32)は、連結アーム(22)(不図示)の挿入を容易にする開口部(7)を有する。モータ(1)、ウォームギヤ運動変換器(2、10)および制御部材(32)の構造についてなされる技術的選択は、限定的ではなく、さらに、図4または図7のいずれかから無差別に選択されうることが明記される。
【0042】
図8は、ナット(30)がカバー(5)とは連結せず、ケーシング(35)の底部(15)に堅固に連結された、代替的なコンパクトな実施形態を示す。この好ましくない実施例では、しかしながら、ナット(30)がケーシング(35)及びカバー(5)に堅固に接続されている好ましい実施形態と比較して、ナット(30)の振動抵抗は小さくなる。電気モータ(1)のステータ(22)は、ケーシング(35)の底部(15)において、機械的強度と後者の放出する熱エネルギーの放散とを向上させるためにオーバーモールドされる。モータのシールはベローズ(43)によって確保される。ベローズ(43)は、一端が可動ナット(31)の可動部材(32)に取り付けられた自由端に密閉されて取り付けられ、他端がケーシング(35)に取り付けられる。
【0043】
図9図10及び図11は、出力ホイール(44)を介した回転運動を出力する、本発明に係る他のアクチュエータを示す。この実施形態は特に、ねじ棒(10)が、出力ホイール(44)と、出力ホイール(44)及びねじ棒(10)により形成されたアセンブリとを駆動してウォームギア型の運動変換を形成する点において上記の第1の実施形態と相違する。このようにして、出力ホイール(44)の回転軸はねじ棒(10)に垂直となる。好ましくは、制限的ではないが、回転子(24)に連結されたウォームギヤ(2)の回転軸と出力ホイール(44)の回転軸とは平行である。
【0044】
本実施形態において、好ましくは射出成型されたプラスチックのケーシング(35)が、ねじ棒(35)の両側に位置する2つの穿孔されたハウジング(45、46)を有し、このハウジングはねじ棒の回転を案内する2つのシャフト(47、48)を受け入れる2つのスライドベアリングを形成する。これらのシャフト(47、48)は、ベアリングを形成するブラインドハウジング内のねじ棒(10)の内側にも配置される。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11