(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20231031BHJP
F02M 35/12 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
F02M35/10 101D
F02M35/12 Z
F02M35/10 301L
(21)【出願番号】P 2021046611
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正盛
(72)【発明者】
【氏名】谷口 剛士
(72)【発明者】
【氏名】守谷 千夏
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】西独国実用新案公開第01642857(DE,U)
【文献】中国実用新案第205225523(CN,U)
【文献】特表2018-525567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0173284(US,A1)
【文献】実開平05-057308(JP,U)
【文献】実開昭56-008849(JP,U)
【文献】特開2003-083186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0029927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気が流通する筒状の周壁を備える内燃機関の吸気ダクトであって、
前記周壁の流路断面積は、前記周壁の延在方向の中間部から両端部に向かって徐々に大きくなっており、
前記中間部は、前記周壁の延在方向に沿って延在しており、
前記中間部の流路断面積は、前記周壁の延在方向において一定であり、
前記中間部は、前記周壁の内部と、前記周壁の外部であって且つ前記吸気ダクトの外部とを連通する多数の孔を有して
おり、
前記周壁は、前記周壁を周方向に分割して構成する複数の分割体を有しており、
前記複数の分割体の少なくとも1つの分割体には、前記周方向に互いに間隔をおいて多数の前記孔が設けられており、
当該分割体における多数の前記孔は、互いに同一の方向に沿って延在している、
内燃機関の吸気ダクト。
【請求項2】
多数の前記孔は、前記周壁の周方向及び延在方向の双方に互いに間隔をおいて設けられている、
請求項1に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【請求項3】
前記孔の流路断面積は、前記周壁の内側から外側に向かって徐々に変化している、
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【請求項4】
前記周壁の板厚は、前記中間部から前記両端部に向かって徐々に小さくなっている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディフューザ部を有する吸気管が開示されている。ディフューザ部は、ディフューザ部の始点から下流側ほど拡径している。吸気管において上記ディフューザ部よりも上流側には、吸気口に続く前方部分が設けられている。
【0003】
こうした吸気管によれば、ディフューザ部よりも上流側の絞り部によって、吸気管内に発生する騒音が外部へ発散することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、内燃機関の吸気ダクトにおいては、吸気騒音の更なる低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための内燃機関の吸気ダクトは、吸気が流通する筒状の周壁を備える。前記周壁の流路断面積は、前記周壁の延在方向の中間部から両端部に向かって徐々に大きくなっており、前記中間部は、前記周壁の内部と、前記周壁の外部であって且つ前記吸気ダクトの外部とを連通する多数の孔を有しており、多数の前記孔は、前記周壁の周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】内燃機関の吸気ダクトの一実施形態を示す断面図。
【
図4】変形例の吸気ダクトの一部を拡大して示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図3を参照して、内燃機関の吸気ダクトの一実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、内燃機関の吸気ダクトは、吸気が流通する筒状の周壁10を備える。
【0009】
図1及び
図2に示すように、周壁10は、第1端部11、周壁10の延在方向、すなわち吸気ダクトの軸線方向において第1端部11とは反対側に位置する第2端部12、及び周壁10の延在方向において第1端部11と第2端部12との中間に位置する中間部13を有している。例えば第1端部11が、吸気ダクトの上流側端部であり、第2端部12が吸気ダクトの下流側端部である。周壁10は、直線状の軸線を有している。なお、周壁10は、直線状の軸線を有するものに限定されず、曲線状の軸線を有するものであってもよい。
【0010】
図1に示すように、周壁10の流路断面積は、中間部13から両端部11,12に向かって徐々に大きくなっている。
周壁10の外径は、周壁10の延在方向の全体にわたって同一である。周壁10の内径は、周壁10の延在方向の中間部13から両端部11,12に向かって徐々に大きくなっている。すなわち、周壁10の板厚は、中間部13から両端部11,12に向かって徐々に小さくなっている。したがって、中間部13は、周壁10の延在方向において中間部13に近くなるほど周壁10の板厚、すなわち質量が大きくなる。
【0011】
図1~
図3に示すように、中間部13は、周壁10の内部と、周壁10の外部であって且つ吸気ダクトの外部とを連通する多数の孔14を有している。
多数の孔14は、周壁10の周方向及び延在方向の双方に互いに間隔をおいて設けられている。多数の孔14は、同一の形状及び同一の大きさを有している。孔14は、例えば円孔である。
【0012】
多数の孔14は、周壁10の周方向において等間隔にて設けられている。多数孔14は、周壁10の延在方向において等間隔にて設けられている。
図3に示すように、孔14の内径は、孔14の軸線方向全体にわたって同一である。孔14の内径は、0.5mm~5mmであることが好ましく、1mm~3mmであることが更に好ましい。多数の孔14は、周壁10の中心から放射状に延びている。
【0013】
図1~
図3に示すように、周壁10は、周壁10を周方向に分割して構成する第1分割体20及び第2分割体30を有している。
図2及び
図3に示すように、第1分割体20は、半割円筒状の周壁部21と、周壁部21の周方向の両端に設けられた一対のフランジ部22とを有している。
【0014】
フランジ部22は、周壁部21から外周側に向かって突出している。
図2に示すように、フランジ部22は、周壁10の延在方向の全体にわたって設けられている。
【0015】
図2及び
図3に示すように、第2分割体30は、半割円筒状の周壁部31と、周壁部31の周方向の両端に設けられた一対のフランジ部32とを有している。周壁部31及びフランジ部32は、第1分割体20の周壁部21及びフランジ部32と同様な形状及び大きさである。
【0016】
第1分割体20及び第2分割体30は、共に硬質樹脂成形体により構成されている。
一対のフランジ部22と一対のフランジ部32とを互いに接合することにより、周壁10が形成されている。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。
周壁10の流路断面積は、中間部13に向かって徐々に小さくなる。このため、周壁10の内面と吸気との間に摩擦抵抗が発生しやすくなる。これにより、吸気音のエネルギが摩擦熱に変換されやすくなることで、吸気音のエネルギが低減されるようになる(以上、作用1)。
【0018】
また、吸気の圧力は、流路断面積が他の部分よりも小さい中間部13において高められるようになる。こうして圧力が高められた吸気の一部が、中間部13に設けられた多数の孔14を通じて吸気ダクトの外部に逃がされる。このとき、孔14の内面と吸気との間に摩擦抵抗が発生する。これにより、吸気音のエネルギが摩擦熱に変換されることで、吸気音のエネルギが低減されるようになる(以上、作用2)。
【0019】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)周壁10の流路断面積は、周壁10の延在方向の中間部13から両端部11,12に向かって徐々に大きくなっている。中間部13は、周壁10の内部と、周壁10の外部であって且つ吸気ダクトの外部とを連通する多数の孔14を有している。
【0020】
こうした構成によれば、上記作用1及び作用2を奏するため、吸気騒音を低減することができる。
(2)多数の孔14は、周壁10の周方向及び延在方向の双方に互いに間隔をおいて設けられている。
【0021】
こうした構成によれば、より多くの孔14を中間部13に設けることができる。これにより、より多くの吸気音のエネルギが摩擦熱に変換されることで、吸気音のエネルギが一層低減されるようになる。したがって、吸気騒音を一層低減することができる。
【0022】
(3)周壁10の板厚は、中間部13から両端部11,12に向かって徐々に小さくなっている。
吸気ダクトにおいては、吸気の圧力が高い部位ほど、周壁10が加振されやすい。このため、周壁10の加振に起因した吸気騒音が発生しやすい。
【0023】
この点、上記構成によれば、周壁10の延在方向において中間部13に近くなるほど周壁10の板厚、すなわち質量が大きくなる。これにより、中間部13が加振されることを抑制できるため、周壁10の加振に起因した吸気騒音を低減することができる。
【0024】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0025】
・周壁10の板厚を、周壁10の延在方向の全体にわたって同一にすることもできる。この場合、周壁10の外径を、周壁10の内径と同様、周壁10の延在方向の中間部13から両端部11,12に向かって徐々に大きくすればよい。
【0026】
・上記実施形態では、多数の孔14を、周壁10の周方向の全体にわたって互いに間隔をおいて設けるようにした。また、多数の孔14が周壁10の中心から放射状に延びる構成について例示した。
【0027】
これに代えて、
図4及び
図5に示すように、第1分割体20のみに多数の孔14を設けるようにしてもよい。この場合、多数の孔14が、互いに同一の方向に沿って延在する構成を採用することもできる。
図5に示すように、多数の孔14は、第1分割体20と第2分割体30との接合面に直交する方向(同図の上下方向)に沿って延在している。
【0028】
この場合、周壁部21及びフランジ部22を成形する一対の成形型によって多数の孔14を成形することができるため、第1分割体20を成形する成形型の構成を簡単にすることができる。したがって、第1分割体20を容易に成形することができる。
【0029】
・周壁10は、3つ以上の分割体によって周方向に分割して構成されるものであってもよい。
・周壁10は、周方向に分割して構成されていないものであってもよい。
【0030】
・上記実施形態では、孔14の内径が孔14の軸線方向全体にわたって同一である構成について例示した。これに代えて、孔14が、周壁10の内部から孔14を通じて吸気ダクトの外部に空気が流れる際に渦流の発生を促進する形状を有するものであってもよい。この場合、周壁10の内部から孔14を通じて吸気ダクトの外部に吸気が流れる際に渦流が発生しやすくなる。渦流の発生に伴って吸気音のエネルギが低減されるため、吸気騒音を一層低減できる。
【0031】
上記渦流の発生を促進する形状としては、
図6に示すように、孔14の内径が、周壁10の内側から外側に向かって徐々に小さくなる構成を採用することができる。また、
図7に示すように、孔14の内径が、周壁10の内側から外側に向かって徐々に大きくなる構成を採用することもできる。
【0032】
このように、孔14の内径、すなわち孔14の流路断面積を、周壁10の内側から外側に向けて徐々に変化させることによって、渦流の発生を促進する形状を容易に実現することができる。
【0033】
・渦流の発生を促進する他の形状としては、孔14の内面に設けられた微少な突起などが挙げられる。
・多数の孔14は、周壁10の周方向のみに互いに間隔をおいて設けられるものであってもよい。また、多数の孔14は、周壁10の延在方向のみに互いに間隔をおいて設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…周壁
11…第1端部
12…第2端部
13…中間部
14…孔
20…第1分割体
21…周壁部
22…フランジ部
30…第2分割体
31…周壁部
32…フランジ部