(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】車体
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2021060474
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 心
(72)【発明者】
【氏名】大島 克哉
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0051850(KR,A)
【文献】特開2021-41818(JP,A)
【文献】特開2007-30589(JP,A)
【文献】特開2013-224127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0237659(US,A1)
【文献】特開2020-26232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
B62D 41/00- 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの上に設けられているとともに孔を有しているクロスメンバと、
前記クロスメンバの内面に接合されているとともに前記孔から露出している銘板と、
を備えており、
前記銘板の硬度が、前記クロスメンバに用いられている鋼板の硬度よりも低く、前記銘板の前記孔から露出している範囲に車両識別番号が打刻されている、車体。
【請求項2】
前記フロアパネルと前記クロスメンバで閉空間が形成されている、請求項1に記載の車体。
【請求項3】
前記クロスメンバは、車幅方向の中央に位置する中央部と、一端が前記中央部と重なっており他端がロッカに連結されている延長部に分割されており、前記銘板は前記中央部と前記延長部とが重なっている部位に接合されている、請求項1又は2に記載の車体。
【請求項4】
前記銘板は、頭頂面が平坦な台座部を有しており、前記台座部が前記孔から露出している、請求項1から3のいずれか1項に記載の車体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車体に関する。特に、クロスメンバに車両識別番号が打刻された車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車体はフロアパネルと、フロアパネルの上に設けられているクロスメンバを備える。特許文献1に、フロアパネルとクロスメンバを有する車体の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体に要求される衝突安全性は年々高まってきており、クロスメンバには従来よりも硬度の高い鋼板が用いられるようになってきている。一方、クロスメンバには車両識別番号が打刻される。硬度の高い鋼板で作られているクロスメンバに打刻するには打刻機の性能も高めなくてはならない。性能の高い打刻機を用いると打刻に要するコストが増加する。本明細書は、クロスメンバに硬度の高い鋼板を用いつつ、車体識別番号の打刻に要するコスト増を抑えることのできる車体を提供する。車体識別番号を打刻した板(銘板)をクロスメンバの上に固定する構造だと、後から銘板を交換することが容易となる。すなわち、車体識別番号の偽造が容易となる。本明細書は、車体識別番号の偽造を行い難い構造も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車体は、クロスメンバと銘板を備える。クロスメンバは、フロアパネルの上に設けられているとともに孔を有している。銘板は、クロスメンバの内面に接合されているとともに孔から露出している。銘板の硬度は、クロスメンバに用いられている鋼板の硬度よりも低く、銘板の孔から露出している範囲に車両識別番号が打刻されている。本明細書が開示する車体は、クロスメンバの鋼板よりも硬度が低い銘板に車両識別番号を打刻することができるので、従来の性能の打刻機で車両識別番号を打刻することができる。クロスメンバに硬度の高い鋼板を用いつつ、車体識別番号の打刻に要するコスト増を抑えることができる。
【0006】
銘板は、クロスメンバの内面に接合されているので容易に外すことができない。すなわち、銘板を、別の車体識別番号が打刻された別の銘板に交換することができない。本明細書が開示する車体は、車体識別番号の偽造を防止できる。
【0007】
フロアパネルとクロスメンバで閉空間が形成されていてもよい。クロスメンバの下側から銘板を外すこともできなくなる。
【0008】
クロスメンバは、車幅方向の中央に位置する中央部と、一端が中央部と重なっており他端がロッカに連結されている延長部に分割されている場合がある。その場合、銘板は中央部と延長部とが重なっている部位に接合されているとよい。銘板がさらに外し難くなる。
【0009】
銘板は、頭頂面が平坦な台座部を有しており、台座部がクロスメンバの孔から露出していてもよい。クロスメンバの孔の縁と銘板の間の段差が小さくなり、見栄えが良くなる。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図2の矢印IIIの方向から見た車体の正面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿ってカットした車体の断面図である。
【
図5】
図2のV-V線に沿ってカットした車体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施例の車体2を説明する。
図1に、車体2の一部の斜視図を示す。なお、
図1の座標系の「Fr」/「LH」/「Up」は、夫々、車体2の前方/左側方/上方を意味する。以後の図でも、座標系の各軸の意味は同じである。
【0013】
車体2は、フロアパネル3、ダッシュパネル4、一対のロッカ7a、7b、クロスメンバ6、10を備える。フロアパネル3は、キャビンの床に相当する。ダッシュパネル4は、キャビンとフロントコンパートメントの間の仕切板である。ロッカ7a、7bは、車体2の下側方にて前後方向に延びている梁である。フロアパネル3の右端と左端がそれぞれロッカ7に連結されている。
【0014】
クロスメンバ6、10は、車体の幅方向に延びている梁である。クロスメンバ6、10は、フロアパネル3の上に設けられており、一端がロッカ7aに連結され、他端がロッカ7bに連結されている。
図1は、キャビンの前席の周辺の部分斜視図であり、2本のクロスメンバ6、10の上に前席(不図示)が固定される。クロスメンバ10は、前席の前側の下部を支持し、クロスメンバ6は、前席の後側の下部を支持する。
【0015】
図1の破線IIの範囲の平面図を
図2に示す。また、
図2の矢印IIIの方向から見た正面図を
図3に示す。
図2、
図3は、クロスメンバ10とロッカ7aの連結部付近を示している。
【0016】
法令の要請により、クロスメンバ10には車体識別番号を付す必要がある。クロスメンバ10の上面には孔15が設けられている。孔15から銘板20が露出しており、銘板20に車体識別番号VINが打刻されている。銘板20は孔15を内側(クロスメンバ10の内側)から覆っているが、孔15の縁と銘板20の縁との間に隙間があってもよい。銘板20の孔15から露出している領域に車体識別番号VINが打刻されている。
図2に示されているように、実施例の車体2の車体識別番号VINは、「#ABCD12345678」である。
図2に示した車体識別番号VINは一例である。
【0017】
銘板20には、その硬度(ビッカース硬度)がクロスメンバ10に用いられている鋼板の硬度よりも低い材料が用いられる。銘板20にクロスメンバ10の鋼板よりも硬度の低い材料を用いる理由は後に述べる。
【0018】
クロスメンバ10は角筒の梁であり、銘板20はクロスメンバ10の内面に接合されている。
図2、
図3にて、銘板20のクロスメンバ10に隠れている部分は破線で描かれている。銘板20は、複数の溶接スポット31でクロスメンバ10の内面に接合されている。
【0019】
なお、クロスメンバ10は、車体の幅方向の中央に位置する中央部11と、一端が中央部11と重なっており他端がロッカ7aに連結されている延長部12に分かれている。図中の符号13が示す範囲が、中央部11と延長部12が重なっている範囲(重なり範囲13)である。溶接スポット31aは、重なり範囲13に位置する。すなわち、銘板20は、中央部11と延長部12が重なっている範囲(重なり範囲13)に接合されている。
【0020】
図2のIV-IV線に沿って車体2をカットした断面を
図4に示し、
図2のV-V線に沿って車体2をカットした断面を
図5に示す。
図4は孔15と溶接スポット31b、31cを通る平面で車体2をカットした断面を示しており、
図5は溶接スポット31aを通る平面で車体2をカットした断面を示している。
図5は、中央部11と延長部12の重なり範囲13でクロスメンバ10をカットした断面を示している。
【0021】
図4、
図5に示されているように、矩形筒形状のクロスメンバ10は、フロアパネル3の上に溶接されており、フロアパネル3とクロスメンバ10で閉空間CSPが形成されている。
【0022】
図4に示すように、銘板20は、頭頂面21aが平坦な台座部21を有している。別言すれば、台座部21は、頭頂面21aが平坦な凸部である。台座部21がクロスメンバ10の孔15から露出しており、頭頂面21aに車体識別番号VINが打刻されている。台座部21の頭頂面21aは、クロスメンバ10の上面と面一になっている。銘板20に台座部21を設けることで、クロスメンバ10の孔15の縁と銘板20(頭頂面21a)の間の段差が小さくなり、見栄えが良くなる。
【0023】
溶接スポット31b、31cは、中央部11と延長部12と銘板20を一緒に溶接している。銘板20は、複数の溶接スポット31でクロスメンバ10に接合されている。銘板20は、クロスメンバ10の上面の裏面と側面の裏面のそれぞれに接合されている。
【0024】
車体2の利点、特に、クロスメンバ10と銘板20の構造に起因する利点を説明する。車体2の強度を高めるため、クロスメンバ10には高い硬度の鋼板が用いられる。一方、法令の要請により、クロスメンバ10には車体識別番号VINを打刻する必要がある。高い硬度の鋼板に識別番号を打刻するには高価な打刻機が必要になる。すなわち、硬度の高い鋼板をクロスメンバ10に採用すると、車体識別番号VINの打刻に要するコストが増える。そこで、車体2では、クロスメンバ10の一部に硬度の低い銘板20を取り付け、銘板20に車体識別番号VINを打刻する。あるいは、車体識別番号VINを打刻した銘板20をクロスメンバ10に接合する。硬度の低い銘板20に車体識別番号VINを打刻すればよいので、高価な打刻機が不要となり、打刻のコスト上昇を抑えることができる。
【0025】
銘板20は、その一部(台座部21)がクロスメンバ10の孔15から露出しており、残部(台座部21の周囲)がクロスメンバ10の内面に接合されている。台座部21の周囲がクロスメンバ10の内面に接合されているので、銘板20をクロスメンバ10から容易に取り外すことができない。車体2の構造は、車体識別番号VINの偽造を防ぐことができる。特に、クロスメンバ10が中央部11と延長部12に分割されており、銘板20は中央部11と延長部12と一緒に溶接される。
図5に示すように、溶接スポット31aが、中央部11と延長部12と銘板20を一緒に接合している。銘板20をクロスメンバ10から外そうとすると、中央部11と延長部12の接合部が破壊され、クロスメンバ10が分解される。この構造も、銘板20の取り外しを困難にする。すなわち、この構造も、車体識別番号VINの偽造防止に貢献する。
【0026】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。車体識別番号VINが打刻された銘板20は、前席の前方を支持するクロスメンバ10に接合されている。銘板20は、他のクロスメンバに取り付けられていてもよい。銘板20が露出する孔15は、クロスメンバ10の上面に設けられている。銘板20が露出する孔は、クロスメンバ10の側面に設けられてもよい。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
2:車体 3:フロアパネル 4:ダッシュパネル 6、10:クロスメンバ 7a、7b:ロッカ 11:中央部 12:延長部 15:孔 20:銘板 21:台座部 21a:頭頂面 31、31a、31b、31c:溶接スポット CSP:閉空間