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▶ イノベイティブ ウォーター ケア, エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】低溶解性次亜塩素酸塩含有錠剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/08 20060101AFI20231031BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231031BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20231031BHJP
   C01B 11/06 20060101ALI20231031BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20231031BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01P3/00
A01N25/34 C
C01B11/06 D
C02F1/50 510A
C02F1/50 520L
C02F1/50 531P
C02F1/50 540E
C02F1/50 540D
C02F1/50 531J
A01N25/08
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092406
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2017559593の分割
【原出願日】2016-05-16
(65)【公開番号】P2021155424
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】62/161,352
(32)【優先日】2015-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519167438
【氏名又は名称】イノベイティブ ウォーター ケア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハニ,ラヒム
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー,フィリップ ガードン
(72)【発明者】
【氏名】アカンデ,ジャネット
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6951255(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A01N
C01B
C02F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドを含む造形品であって、該造形品中の総石灰含量が、造形品の総重量に対して11重量%から20重量%の間を占め、前記次亜塩素酸カルシウムは、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して16重量%から25重量%の間の水を含有し、該造形品が硫酸マグネシウムをさらに含み、使用中に柔軟にならないか、ひび割れ若しくは亀裂を形成しないか、又は崩壊しない、上記造形品。
【請求項2】
前記硫酸マグネシウムが、硫酸マグネシウム七水和物を含む、請求項1に記載の造形品。
【請求項3】
前記造形品中の前記硫酸マグネシウムが、造形品の総重量の最大30重量%の量である、請求項1に記載の造形品。
【請求項4】
添加剤をさらに含む、請求項1に記載の造形品。
【請求項5】
前記添加剤が、水溶性亜鉛塩又は亜鉛塩水和物、スケール防止剤、顔料、染料、結合剤、潤滑剤、色素を含有する塩、及びこれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の造形品。
【請求項6】
錠剤、ブリック(brick)、ブリケット、ペレット又は押出し品の形態である、請求項1に記載の造形品。
【請求項7】
錠剤の形態である、請求項6に記載の造形品。
【請求項8】
錠剤の形態の前記造形品が3日から14日の範囲で溶解するような溶解速度を有する、請求項7に記載の造形品。
【請求項9】
錠剤の形態の前記造形品が3日から7日の範囲で溶解するような溶解速度を有する、請求項8に記載の造形品。
【請求項10】
総重量が1から500グラムである、請求項1に記載の造形品。
【請求項11】
総重量が150から300グラムである、請求項10に記載の造形品。
【請求項12】
パック(puck)状物品の形態である、請求項1に記載の造形品。
【請求項13】
直径が1から4インチの間である、請求項12に記載の造形品。
【請求項14】
厚さが1から2インチの間である、請求項13に記載の造形品。
【請求項15】
前記石灰が水酸化カルシウムを含む、請求項1に記載の造形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌水における使用のための、低溶解性次亜塩素酸カルシウム造形品に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸カルシウムは、水の殺菌処理剤としての使用により知られている。次亜塩素酸カルシウムは、飲料水、プール、温泉、温水浴槽等を含むが、これらに限定されないレクリエーション水域、並びに冷却塔及び製品の製造に使用される水等の産業用水のための殺菌剤として使用されてきた。次亜塩素酸カルシウムは、塩素源として役立ち、塩素は、水中病原体及び他の生物、たとえば藻類を含まない状態に水を保つ殺菌剤として作用する。錠剤を含む次亜塩素酸カルシウム組成物の例は、たとえば、米国特許第3,793,216号、同第4,201,756号、同第4,145,306号、同第4,692,335号、同第5,164,109号、及び同第5,753,602号に見出される。特に、米国特許第6,638,446号及び同第6,984,398号は、次亜塩素酸カルシウム及び硫酸マグネシウム七水和物の混合物を含む、レクリエーション水域の処理のための組成物を開示する。米国特許第6,969,527号は、次亜塩素酸カルシウム、硫酸マグネシウム七水和物、及び石灰の混合物を含む、レクリエーション水域の処理のための組成物を開示する。
【0003】
トリクロロイソシアヌル酸(1,3,5-トリクロロ-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、TCAA、又はトリクロールとしても知られている)は、その塩素を低速で放出する能力ゆえに、水泳プール及び温泉において使用されることが多い低溶解性(次亜塩素酸カルシウムと比較して)塩素放出材料である。多くの場合、トリクロロイソシアヌル酸錠剤は、プールスキマー内に置かれたとき、溶解するのに3~7日間かかると考えられる。溶解にかかる実際の時間は、様々な要因、たとえば水温、スキマーにおける流量及び錠剤の初期サイズに依存する。トリクロロイソシアヌル酸は、処理される水中で、低速で反応及び溶解する。だが、トリクロロイソシアヌル酸が水と反応して塩素を放出するにつれて、トリクロロイソシアヌル酸はまた、副産物としてシアヌル酸も放出する。シアヌル酸は非常に安定的であり、シアヌル酸の濃度がプール内で上昇すると考えられる。高いシアヌル酸濃度では、通常の塩素レベルが水中病原体に対して有効でないものとなりうる。結果として、プール内のシアヌル酸のレベルを低下させる必要があると考えられる。これは多くの場合、プールの排水及び清水の再注水による希釈を要する。代わりに、一般に使用される別の方法は、異常に高い用量の塩素を添加し、シアヌル酸の効果を克服することである。これは、プールの使用者にとって多くの場合不快なプール用水をもたらす。
【0004】
次亜塩素酸カルシウムは、とりわけ顆粒形態で、水中に急速に溶解することが知られている。それは多くの場合、プール内の塩素含量を増加させるプールショック(pool shock)として使用される。Casbergに付与された米国特許第4,876,003号及び同第4,928,813号の両方が示すとおり、水中の次亜塩素酸カルシウムの溶解速度を遅らせることが当該技術分野において試みられてきた。プラスチックスリーブが、次亜塩素酸カルシウム錠剤の溶解速度を遅らせるために錠剤の周囲に配置された。それらが錠剤の周囲に置かれたとき、錠剤はより長く持続し、それゆえ、水泳プールの塩素処理及び他の用途における利便性を提供した。しかしながら、そのようなプラスチックスリーブは、使用後、それらが使用された水泳プール用のスキマー、フィーダー及びフローターから除去されなければならない。この除去及び廃棄は、プール所有者にとって不便でありうる。代わりに、微粉化ポリフッ素化ポリマーが、錠剤がより低速で溶解するよう次亜塩素酸カルシウム錠剤に添加されてきた。米国特許第4,865,760号、同第4,970,020号、同第5,009,806号及び同第5,205,961号を参照のこと。
【0005】
従来、次亜塩素酸カルシウム分野において、打錠される次亜塩素酸カルシウムブレンド中に10重量%までの石灰を使用することが示唆されてきた。石灰が、次亜塩素酸カルシウムを含有する錠剤の、水性環境中への塩素送達時間を延長できることが認められる一方で、当該技術分野において、10%超の石灰を次亜塩素酸カルシウムとブレンドする示唆はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、シアヌル酸副産物が処理される水中に放出されるという欠点なしに、トリクロロイソシアヌル酸の好ましい溶解(溶解度)プロファイルを有する水消毒組成物が、又は、スキマー又は塩素処理システムからフィルム材料を除去することが、当該技術分野において必要とされている。本発明は、そのニーズに応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次亜塩素酸カルシウム及び造形品の総重量に対して10%超の石灰を含有するブレンドを含有する組成物から造形品を形成して、副産物のシアヌル酸が処理される水に放出されることなく、造形品の溶解速度をトリクロロイソシアヌル酸のそれに合致させることができることが発見された。更に、次亜塩素酸カルシウム及び造形品の総重量に対して10%超の石灰を含有するブレンドからの造形品がまた、使用環境における溶解中に構造的統合性を維持することが発見された。すなわち、造形品は一般に同じ形状を有するが、溶解中にサイズを減少させ、溶解中に柔軟又は脆弱にならない。
【0008】
一態様では、本発明は、低溶解性次亜塩素酸カルシウム造形品を提供する。
【0009】
本発明の別の一態様では、次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドを含有する造形品であって、石灰が、造形品の総重量に対して10重量%を超える量で存在する造形品が提供される。
【0010】
本発明の別の一態様では、造形品中の石灰は、水酸化カルシウムである。
【0011】
さらなる態様では、造形品は、造形品の総重量の少なくとも11重量%、典型的には造形品の総重量の少なくとも12重量%の石灰を含有する。一般に、石灰は、造形品の総重量の11重量%から70重量%の間、典型的には、造形品の総重量の11重量%から50重量%の間、より典型的には、造形品の総重量の11重量%から30重量%の間を占めると考えられる。特定の一実施形態では、石灰は、造形品の総重量の11重量%から20重量%の間を占める。
【0012】
別の一実施形態では、造形品は、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して25重量%までの量の水和水を含有する次亜塩素酸カルシウムを含有する。より典型的には、次亜塩素酸カルシウムは、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して約5重量%から約16重量%の間の水和水を含有すると考えられる。
【0013】
特定の一実施形態では、造形品は、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して約5重量%から約16重量%の間の量で水和水を含有する次亜塩素酸カルシウムを含有し、石灰は、水酸化カルシウムを含み、水酸化カルシウムは、造形品の総重量の11重量%から30重量%の間を占める。
【0014】
さらなる一実施形態では、造形品は、錠剤、ブリック(brick)、ブリケット、ペレット又は押出し品の形態である。造形品は、典型的には、1から500グラムの間のサイズである。
【0015】
別の一実施形態では、水を処理する方法であって、前の実施形態のうちの1つの造形品又は本明細書に記載の造形品と水を接触させることによる方法が提供される。造形品は、造形品を水泳プールのスキマーに置くことにより、水泳プール内の水を処理するために使用できる。加えて、塩素フィーダーに造形品を置き、造形品を塩素フィーダー内の水と接触させることにより、造形品を用いて水を処理できる。代わりに、造形品を、処理対象の水に置かれる浮動デバイスに置いてもよく、水は浮動デバイスに入り造形品と接触することができる。
【0016】
別の一実施形態では、実施形態のうちのいずれか1つによる造形品を製造する方法であって、次亜塩素酸カルシウムと石灰をブレンドしてブレンドを形成し、ブレンドを圧縮して造形品を形成することによる方法が提供される。さらなる一実施形態では、次亜塩素酸カルシウム及び石灰は、それぞれ、自由流動粒子の形態である。
【0017】
これら及び他の態様は、本発明の詳細な説明を読めば明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
今や驚くべきことに、次亜塩素酸カルシウム及び造形品の総重量に対して10重量%超の石灰のブレンドを含有する組成物を固形造形品へと形成でき、固形造形品は、好ましい溶解(溶解度)プロファイルを有することが見出された。加えて、驚くべきことに、組成物から製造される固形造形品が、水性環境における使用中にその構造的統合性を維持することが発見された。
【0019】
本明細書において使用する「ブレンド」という用語は、2種以上の材料の任意の均質又は均質に近い混合物を指す。本明細書において使用する「ブレンド」という用語は、カプセル化又は層化生成物を含まない。
【0020】
本発明の組成物又はその成分との関連で使用する「水和された」という用語は、少なくとも4重量%の含水量を有する任意の物質を指す。同様に、特定の物質の文脈で使用する「水和物」という用語は、水和水を指す。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する「造形品」という用語は、次亜塩素酸カルシウム及び石灰を含有するブレンドから圧縮される任意の形状又はサイズの物品を包含することが意図される。本明細書において使用する「造形品」という用語は、圧縮されていない顆粒状材料を包含しない。典型的には、造形品は、任意の形状又はサイズの錠剤、ブリック、ブリケット、ペレット、押出し品等を含むと考えられる。錠剤は、一般に円盤状又は円筒状の形状だと考えられるが、他の形状も有しうる。
【0022】
本明細書において使用する「その構造的統合性を維持する」という用語は、完全なまま、使用環境においてその全体の形状及び硬度を本質的に保持する造形品の能力を意味すると意図される。使用中に脆弱、柔軟になるか又は崩壊する造形品は、その構造的統合性を維持するとは考えられない。硬いまま、使用中にその全体構造を保持するが、溶解によりそのサイズを減少させる造形品は、その構造的統合性を維持すると考えられる。
【0023】
本発明の造形品において使用される次亜塩素酸カルシウムは、無水か又は水和されるかのいずれかでありうる。市販の無水次亜塩素酸カルシウムは、少なくとも約60重量%のCa(OCl)2を含有する。水和次亜塩素酸カルシウムは、少なくとも約50重量%のCa(OCl)2を含有し、次亜塩素酸カルシウムの重量に対して、約4から約25重量%の範囲の水和水含量を有する。水和次亜塩素酸カルシウムは、米国特許第3,544,267号及び同第3,669,984号に記載の方法により調製できる。市販の水和次亜塩素酸カルシウムは、Alpharetta, Georgiaにオフィスを持つArch Chemicals, Inc.から、TURBO SHOCK(登録商標)の商品名、及びRAPID RATE(登録商標)のプール用化学物質ブランド名で入手可能である。市販の次亜塩素酸カルシウム組成物は、一般に、5から16重量%の水和水を含む。一般に、市販の次亜塩素酸カルシウム組成物は、50~95重量%の次亜塩素酸カルシウム及び水和水以外の他の成分、たとえば塩(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム等)を、20重量%までの量で含有する。しかしながら、これらの他の成分を最小限に留めることが望まれる。次亜塩素酸カルシウムを製造するために使用する方法はまた、石灰が次亜塩素酸カルシウム中に、次亜塩素酸カルシウム組成物の重量に対して約2~4重量%までの量で存在する結果になってもよい。
【0024】
次亜塩素酸カルシウムとブレンドされるのは石灰である。石灰は、酸化カルシウムであっても水酸化カルシウムであってもよい。本発明における石灰は、好ましくは、不活性型水酸化カルシウム(Ca(OH)2)である。石灰は、得られた組成物が造形品の総重量に対して10重量%超を含有する量で、次亜塩素酸カルシウムとブレンドされる。上述のとおり、石灰はまた、次亜塩素酸カルシウムを製造するために使用する製造方法に応じて、約2~4重量%の量で次亜塩素酸カルシウム中に存在していてもよい。いずれにせよ、石灰が組成物を製造するために使用される次亜塩素酸カルシウム中に存在する場合、次亜塩素酸カルシウムの石灰含量は、組成物中の総石灰含量に考慮される。たとえば、次亜塩素酸カルシウムが3重量%の石灰を含有し、10重量%の石灰が次亜塩素酸カルシウムに添加される場合、得られたブレンドは、12.7重量%の石灰を含有する。(90%×3%(Ca(OCl)2中の石灰)+10%の石灰=12.7%)。
【0025】
組成物中の石灰の総含量は、造形品の総重量に対して、10重量%を超える量、一般に11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、14重量%以上又は15重量%以上の量である。「総石灰含量」により、添加石灰(次亜塩素酸カルシウム組成物に添加された石灰)及び添加石灰がブレンドされる次亜塩素酸カルシウム組成物中に存在する石灰を意味する。これは、トリクロロイソシアヌル酸のそれと類似する好ましい溶解プロファイルを有するブレンドから製造された造形品を、プール中に過度の量のシアヌル酸を生成する欠点なしにもたらすと考えられる。加えて、得られた造形品は、構造的統合性を有すると考えられる。一般に、得られた造形品は、石灰を、造形品の総重量の11重量%から70重量%の間の量で含有すると考えられる。典型的には、造形品は、石灰を、造形品の総重量の11重量%から50重量%の間、より典型的には造形品の総重量の11重量%から30重量%の間の量で含有すると考えられる。一般に、通常の流量で1日に8時間水を再循環させる水泳プールのスキマー内に置かれる造形品は、典型的には、約11から20重量%の間の総石灰含量を含有すると考えられる。造形品中に使用される実際の石灰の量は、造形品の計画された最終用途に依存すると考えられる。造形品中の石灰の量を増加させると、水性環境を処理する塩素を造形品が放出する時間が増加する。
【0026】
次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドから製造された造形品が、石灰が造形品の10重量%を超える量で存在する場合、停滞水又は循環水の水性環境における使用中にその統合性を維持する造形品をもたらすことが、更に発見された。すなわち、造形品は、ひび割れしないか又は構造的に不安定にならない。「構造的に不安定」により、造形品が使用中に柔軟で「粥状」になるか、ひび割れ若しくは亀裂を形成するか、又は崩壊することを意味する。造形品がひび割れるか又は統合性を失うとき、造形品の表面積は増加し、そのことにより造形品はより速い速度で溶解する。更に、これらのブレンド造形品は、石灰をブレンドの10重量%を超える量で含むとより安定的で、造形品の保存期間の延長もまたもたらすと考えられる。
【0027】
造形品は、本発明の石灰との次亜塩素酸カルシウムのブレンドから形成され、石灰、特に水酸化カルシウムとの次亜塩素酸カルシウムの顆粒状ブレンドでできていてもよい。次亜塩素酸カルシウム及び石灰は、任意の既知の手法を使用してブレンドされる。たとえば、タンブルブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー等を、バッチモードで、次亜塩素酸カルシウム及び石灰の組成物をブレンドするために使用できる。加えて、ねじ錐、コンベア等を、連続モードで、組成物をブレンドするために使用できる。他の混合方法を使用できるが、水酸化カルシウム及び次亜塩素酸カルシウムの自由流動粒又は粉末の乾式ブレンドが、統合性及び溶解プロファイルが改善した造形品をもたらすことが見出された。代替的方法は、次亜塩素酸カルシウム及び石灰が湿った状態で、石灰を次亜塩素酸カルシウムとブレンドし、得られた混合物を乾燥させるものである。
【0028】
次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドを製造した後、次亜塩素酸カルシウム含有造形品を製造するために通常使用される任意の従来の打錠方法及び設備を、本発明の造形品を製造するために使用できる。成形圧縮生成物、たとえば錠剤、カプレット若しくはブリケット、又は本発明のブレンドを使用する他の既知の成形圧縮生成物を生成する任意の好適な設備を使用できる。任意の形状又はサイズの造形品を使用できる。好ましい造形設備は、液圧錠剤プレス(たとえばHydratron又はHydramet又はBipel液圧プレス)、ブリケット機器(たとえばBepex Compactor)等を含む。任意の好適な保圧時間及び圧力を、そのような液圧プレスの操作で使用できる。詳細には、これらの造形品は、水処理消毒剤(たとえば、水泳プール及び温泉における)として有用であり、次亜塩素酸カルシウム自体よりも輸送及び保存するのにとりわけ安全である。
【0029】
次亜塩素酸カルシウム及び石灰に加えて、造形品の約30重量%までの量の他の添加剤を、次亜塩素酸カルシウム及び石灰とブレンドできる。例には、硫酸マグネシウム、特にBrennanらに付与された米国特許第6,984,398号に記載の安定剤としての硫酸マグネシウム七水和物、Mullinsらに付与された米国特許第8,372,291号に記載の殺藻剤としての水溶性亜鉛塩又は亜鉛塩水和物、Brennenに付与された米国特許第7,410,938号に記載のアルカリ金属リン酸塩等のスケール防止剤及び残渣分散アルカリ金属リン酸塩の組合せが含まれる。他の添加剤には、顔料、染料、結合剤、潤滑剤、色を含有する塩等が含まれる。これらの添加剤は、次亜塩素酸カルシウム及び/又は石灰と事前にブレンドできるか、又はブレンド方法において別個の固体として添加できる。いくつかの添加剤は造形品の溶解速度を増加させるので、注意を要する。
【0030】
本発明により製造された造形品は、温泉、水泳プール、温水浴槽、トイレ及び水源を消毒するために塩素が必要な他の類似の用途のための塩素源を含む多様な用途に使用できる。本発明の固形次亜塩素酸カルシウム組成物を、塩素処理が求められる水体に取り付けられた塩素処理ユニット又はフィーダーに直接添加できる。そのような仕方で使用されるとき、固形次亜塩素酸カルシウム組成物は、それが水流と接触するときに溶解し、水体中に分散する。代わりに、造形品組成物は、スキマー又は浮動デバイス(「フローター」として知られている)又はフィーダー、たとえば塩素処理されたイソシアヌレートを水泳プール及び温泉に供給するために使用されるものにおいて使用できる。
【0031】
本発明において有用な造形品は、典型的には、約1グラムから約500グラム以上の間、典型的には約7から350グラムの間、より典型的には150から300グラムの間の質量を有していてもよい。造形品の実際のサイズは、得られた造形品の意図される使用に応じて調整できる。一実施形態では、造形品は、錠剤の形態であると考えられる。圧縮された錠剤は、水泳プールで使用されるスキマー若しくは溶解バスケット、又は次亜塩素酸カルシウムの濃縮溶液を形成するために使用される溶解器内に、容易に挿入できるサイズであってもよい。本発明の造形品は、水泳プール、温泉等で使用したとき、3から14日で、より典型的には3から7日で溶解すると考えられ、典型的にはそのように溶解するよう設計されるが、トイレ消毒剤の場合には、28から35日で溶解するよう設計できる。造形品上の水の流量、水の温度等を含む様々な要因が、造形品の溶解速度に影響を及ぼすことに留意すべきである。溶解速度は、次亜塩素酸カルシウムに添加される石灰の量により調整できる。本発明の造形品の例示的形状は、パック(puck)状物品であり、1から4インチ(2.54から10.16センチメートル)の間の直径及び1から2インチ(2.54から5.08センチメートル)の間の厚さを有する。より大きい又は小さい造形品も使用できる。
【0032】
本発明を、以下の実施例により更に詳細に説明する。特に明示しない限り、すべての部及びパーセントは重量に基づき、すべての温度は摂氏度である。
【0033】
[実施例]
[実施例1]
Alpharetta, Gaにオフィスを持つArch Chemicals, Inc.から入手可能な市販のTURBO SHOCK(登録商標)次亜塩素酸カルシウム組成物を、水酸化カルシウム粉末(石灰)と2本ロールミルにおいて乾式ブレンドし、均質な混合物を表1に示す量で形成する。次亜塩素酸カルシウム組成物は、約3%の水酸化カルシウム(石灰)を含有していた。次に、得られたブレンドを、15トン及び5秒保圧時間で製造された15グラムの錠剤へと打錠した。試料2~6は本発明の範囲内であり、試料1は先行技術の一般的教示内である。比較目的で、2つの比較例、20%の水酸化バリウム又は20%の酸化亜鉛をそれぞれ含有する試料7及び8もまた、TURBO SHOCK(登録商標)次亜塩素酸カルシウム組成物とブレンドした。錠剤の初期重量、直径、厚さを表1に報告する。
【0034】
【表1】
【0035】
試料1~8のそれぞれが、800mLの水を含有する1リットルビーカー内に、錠剤がビーカー内で垂直に立つよう置かれた。磁性スターバーをビーカー内に付加し、一番低い設定で24時間撹拌した。24時間後、各試料錠剤をビーカーから除去し、ペーパータオルを軽く当てて乾燥させ、秤量した。秤量したら、各試料錠剤を新鮮な800mLの水を有するビーカー内に戻し、もう一度更に24時間撹拌した。これを、7日間(168時間)反復した。記録された重量を表2に示す。
【0036】
加えて、秤量するためビーカーから除去するときに、錠剤の完全性及び硬度を確認することにより、錠剤の統合性を視覚的にマニュアルでモニタリングした。各錠剤の完全性を評価するため、各錠剤を手を使ってマニュアルで加圧し、柔軟性又は穏やかな手の圧力によりそれが崩壊する傾向を観察した。錠剤の表面のテクスチャも記録した。特に記載しない限り又は表2に記載のとおり柔軟若しくは「粥状」と見出されない限り、すべての錠剤が溶解するまでその形状を留めた。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
結果の考察。試料2、3、4、5、及び6はそれぞれ、12.7重量%、17.6重量%、22.4重量%、27.3重量%、及び32.1重量%の水酸化カルシウムを有し、試料1、7及び8と比較して溶解速度の減少を示した。試料4、5及び6は、TCAA(トリクロロイソシアヌル酸)に匹敵し、6~7日間持続した。20重量%の水酸化バリウム又は20重量%の酸化亜鉛を含有する試料7及び8は、ほんの数時間後に崩壊した。表2に、24時間ごとの試料の重量を列挙する。本発明の範囲内のすべての錠剤が、溶解するまでその形状を留めた。試料1及び2(5重量%及び10重量%の添加水酸化カルシウムを有する錠剤)は崩壊し、試験ビーカーからの除去時にその硬度を留めず破損した。しかしながら、試料2は、溶解速度の減少を示した。錠剤のサイズの小ささが、試料2の4日未満での溶解に貢献したと考えられる。
【0039】
[実施例2]
次亜塩素酸カルシウム(TURBO SHOCK(登録商標))及び水酸化カルシウム粉末の75/25及び80/20(重量%)ブレンドを調製するために、Vブレンダーを使用した。上のブレンドの錠剤を調製するため、Bipelパフォーマー(performer)70トンプレスを5秒の保圧時間で使用した。錠剤はそれぞれおよそ200グラムだった。錠剤を10,000ガロンのプールのスキマー内に置き、その溶解速度を確認した。プールのポンプを、1日当たり8時間作動させた。錠剤を24時間ごとにスキマーから除去し、秤量した。錠剤3及び4は、研究期間の間の各錠剤の重量を示す。表3の錠剤を同じスキマーに配置し、表4の錠剤を異なるスキマーにまとめて配置した。表3及び表4は、各錠剤の溶解速度/時間を要約する。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
表3及び表4からわかるとおり、プールスキマー内のより大きな錠剤が、その形状を保持し、7日の期間にわたって溶解し続けた。錠剤は溶解度が低く、8日間の試験にわたってきわめて均一に溶解し、そのことによりきわめて安定した速度で塩素を放出した。加えて、溶解速度はTCAAのそれと類似する。更に、錠剤のそれぞれがその構造的統合性を保持し、結果として、それらを実施例1と同様の仕方でスキマーから除去して秤量できた。
【0043】
[実施例3]
ブレンドの重量に対して、約3.5%の石灰を含有する次亜塩素酸カルシウムと5.5%の石灰及び9.0%の石灰とのブレンドを調製するために、ロールミルを使用した。得られたブレンドはそれぞれ、8.8重量%の総量の石灰及び12.2重量%の総量の石灰を含有していた。2インチ(5.08センチメートル)のダイを備えるプレスを使用して、約100グラムの錠剤を調製した。ブレンドをダイ内に配置し、18トンの圧力を30秒の保圧時間で適用した。錠剤の重量を記録し、表5に示す。錠剤を100ガロンのタンクのスキマー内に置き、水を毎分20ガロンの速度で循環させながら、その溶解速度を確認した。各試料錠剤をスキマーから除去し、ペーパータオルを軽く当てて乾燥させ、秤量した。秤量したら、継続試験のため試料をスキマー内に戻した。錠剤重量は表5に示すとおりだった。
【0044】
【表5】
【0045】
表5からわかるとおり、次亜塩素酸カルシウム中に存在する石灰は、次亜塩素酸カルシウムに添加された石灰にさらなる効果を加える。加えて、10%を超える石灰の総量の増加が、10重量%未満の石灰を有する試料よりも低速な造形品の溶解速度をもたらすことがわかる。驚くべきことに、造形品の10重量%を超える総石灰含量を有することは、好ましい溶解速度をもたらす。
【0046】
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[1]次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドを含む造形品であって、該造形品中の総石灰含量が、造形品の総重量に対して10重量%を超えるものである、上記造形品。
[2]前記石灰が水酸化カルシウムを含む、[1]に記載の造形品。
[3]前記造形品中の総石灰含量が、造形品の総重量に対して少なくとも11重量%である、[1]又は[2]に記載の造形品。
[4]前記造形品中の総石灰含量が、造形品の総重量に対して少なくとも11重量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の造形品。
[5]前記造形品中の総石灰含量が、造形品の総重量に対して少なくとも12重量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の造形品。
[6]前記造形品中の総石灰含量が、造形品の総重量に対して少なくとも12重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の造形品。
[7]前記石灰が、造形品の総重量に対して、造形品の11重量%から70重量%の間を占める、[1]~[6]のいずれかに記載の造形品。
[8]前記石灰が、造形品の総重量に対して、造形品の11重量%から50重量%の間を占める、[1]~[7]のいずれかに記載の造形品。
[9]前記石灰が、造形品の総重量に対して、造形品の11重量%から20重量%の間を占める、[1]~[8]のいずれかに記載の造形品。
[10]前記次亜塩素酸カルシウムが、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して25重量%までの水和水を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の造形品。
[11]前記次亜塩素酸カルシウムが、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して5から16重量%の間の水和水を含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の造形品。
[12]前記次亜塩素酸カルシウムが、次亜塩素酸カルシウムの総重量に対して5から16重量%の間の水和水を含有し、前記石灰が水酸化カルシウムを含み、該水酸化カルシウムが、造形品の総重量の11重量%から30重量%の間を占める、[1]~[11]のいずれかに記載の造形品。
[13]造形品の総重量に対して約30重量%までの量の添加剤をさらに含む、[1]~[12]のいずれかに記載の造形品。
[14]前記添加剤が、硫酸マグネシウム、水溶性亜鉛塩又は亜鉛塩水和物、スケール防止剤、顔料、染料、結合剤、潤滑剤、色素を含有する塩、及びこれらの組み合わせを含む、[1]~[13]のいずれかに記載の造形品。
[15]錠剤、ブリック(brick)、ブリケット、ペレット又は押出し品の形態である、[1]~[14]のいずれかに記載の造形品。
[16]1から500グラムの間の総重量を有する、[1]~[15]のいずれかに記載の造形品。
[17]水を処理する方法であって、
(i)次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドを含む組成物から形成された造形品を準備する工程であって、造形品中の総石灰含量が、該造形品の総重量に対して10重量%を超えるものである、上記工程、
(ii)前記造形品を処理対象の水と接触させる工程
を含む方法。
[18]前記石灰が水酸化カルシウムを含み、該水酸化カルシウムが、造形品の総重量の11重量%から30重量%の間を占めるものである、[17]に記載の方法。
[19]前記造形品を、水泳プールのスキマーに造形品を置くことにより処理対象の水と接触させる、[18]に記載の方法。
[20]前記造形品を、塩素フィーダーに造形品を置くことにより処理対象の水と接触させ、前記処理対象の水が、該塩素フィーダー内の造形品と接触する、[17]に記載の方法。
[21]前記造形品を、処理対象の水に浮く浮動デバイスに造形品を置くことにより処理対象の水と接触させ、水が該浮動デバイスに侵入して造形品と接触する、[17]に記載の方法。
[22]次亜塩素酸カルシウム及び石灰のブレンドを含む造形品を製造する方法であって、石灰が、該ブレンドの総重量に対して10重量%を超える量で存在するものであり、上記方法が、次亜塩素酸カルシウムと石灰を乾燥ブレンドしてブレンドを形成する工程、及び該ブレンドを圧縮して造形品を形成する工程を含む、方法。
[23]前記次亜塩素酸カルシウム及び石灰が、それぞれ、自由流動粒子の形態である、[22]に記載の方法。
本発明をその特定の実施形態を参照しながら上で説明してきた一方で、本明細書に開示の本発明の発想から逸脱することなしに、多くの変更、修正及び変形が可能なことは明らかである。したがって、それは、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に収まるすべてのそのような変更、修正、及び変形を包含することが意図される。