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特許7376555ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造並びに保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造並びに保持方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231031BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/306 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021182739
(22)【出願日】2021-11-09
(65)【公開番号】P2023070516
(43)【公開日】2023-05-19
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 一朗
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊一
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192545(JP,A)
【文献】特開2007-221070(JP,A)
【文献】国際公開第2008/087725(WO,A1)
【文献】実開平05-038892(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン処理装置におけるウェーハと前記ウェーハより径大なウェーハ積層体の両方に対応したウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造であって、
前記ウェーハ又は前記ウェーハ積層体であるウェーハ体が載置される回転テーブルと、
前記回転テーブルに設けられ、前記ウェーハ体の外周周囲に、略等間隔に配置されてなる第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材と、
を含み、
前記第1外周ピン部材は、前記ウェーハ又は前記ウェーハ積層体の供給/取出し時の状態である全開状態と、
前記全開状態よりも回転テーブル中心からの距離が小さい、前記ウェーハ積層体を保持する中間停止位置と、
前記中間停止位置よりも回転テーブル中心からの距離が小さい、前記ウェーハを保持する全閉状態を取り得るものであり、
前記第2外周ピン部材は、前記ウェーハ積層体を保持する全開状態と、前記全開状態よりも回転テーブル中心からの距離が小さい、前記ウェーハを保持する全閉状態を取り得るものであり、
前記第3外周ピン部材は、前記ウェーハ積層体を保持する全開状態と、前記全開状態よりも回転テーブル中心からの距離が小さい、前記ウェーハを保持する中間停止位置を取り得るものであり、
前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有し、
前記ウェーハ積層体を保持する際には、前記第2外周ピン及び前記第3外周ピンを全開状態とし、前記第1外周ピンを全開状態から中間停止位置として前記ウェーハ積層体をセンターリングするようにし、
前記ウェーハを保持する際には、前記第1外周ピン及び前記第2外周ピンを全閉状態とし、前記第3外周ピンを全開状態から中間停止位置として前記ウェーハをセンターリングするようにされてなる、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造。
【請求項2】
前記ウェーハの直径が300mmであり、前記ウェーハ積層体の直径が301mmである、請求項1記載のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造を用いた、スピン処理装置におけるウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持方法であり、
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体の外周部を押さえる第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなる、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持方法。
【請求項4】
前記ウェーハの直径が300mmであり、前記ウェーハ積層体の直径が301mmである、請求項記載のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持方法。
【請求項5】
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体が前記ウェーハ積層体の場合、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材に向かって、前記ウェーハ積層体を第1外周ピン部材で押さえてなり、
前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなる、請求項又は記載のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持方法。
【請求項6】
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体が前記ウェーハの場合、前記第1外周ピン部材及び前記第2外周ピン部材に向かって、前記ウェーハを第3外周ピン部材で押さえてなり、
前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなる、請求項又は記載のウェーハ保持方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造を備えた、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のスピンエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのみのベアウェーハであっても、ウェーハに貼り付け剤でサポート部材が貼り付けられることにより前記ウェーハよりも経大とされた直径を有するウェーハ積層体であっても、段取り替えの必要がない、スピン処理装置における、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造並びに保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、シリコンなどの半導体ウェーハ(以下「ウェーハ」という)を回転させつつ処理を行う工程(スピン処理工程とも呼ばれる)が行われている。
【0003】
このようなスピン処理を行うためのスピン処理装置の例としては、例えば、特許文献1や特許文献2がある。
【0004】
一方、半導体基板であるウェーハの厚さは益々薄化しており、厚さ100μm以下のウェーハ、例えば厚さ60μm程度、や、或いは、さらに厚さ50μm或いはそれ以下に薄くした極薄ウェーハも用いられるようになってきている。
【0005】
ウェーハを薄化するにあたっては、ウェーハを裏面研削(バックグラインド)して、ウェーハを薄化することが行われる。しかしながら、裏面研削して100μm~50μm程度にウェーハを薄化していくと、ウェーハの反りの問題やウェーハ強度の問題が発生する。
【0006】
ウェーハを薄く研削すると取り扱いが困難になることから、ウェーハのデバイス領域に対応する裏面のみを研削して薄く加工しデバイス領域を囲繞する外周余剰領域にリング状の補強部を残存させウェーハを凹形状に加工する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。このような、ウェーハを凹形状に加工する技術は、TAIKO研削やTAIKOプロセスと呼ばれることがある。TAIKO研削では、ウェーハの外周端部を数mm程度残してウェーハの中央部のみを機械研削して薄化することにより、外周端部に凸部が形成された外周端部凸部形成ウェーハとなる。
【0007】
さらに、極薄ウェーハの場合、シリコンなどのウェーハのみだと、ウェーハの反りや歪みによって、半導体基板のウェーハが割れやすく、取り扱いができない。そのため、ウェーハに機械的研摩や化学的浸食などの処理を行なう前に、支持板を貼り付け剤でウェーハに貼り付けてから、ウェーハへの処理を施すことが行われている。そして、ウェーハに対する機械的研摩や化学的浸食などの処理には、スピン処理装置にウェーハを保持しながらのスピン処理が行われる。
【0008】
上記支持板はガラス製のガラスサポートが用いられることが多く、上記貼り付け剤としては、接着剤が用いられることが多い。このようなサポートガラスをウェーハに貼り付けたウェーハ積層体の例としては、例えば、特許文献4がある。
【0009】
そして、これらウェーハの例を本願の図5に示す。図5(a)は極薄ウェーハにサポートガラスを貼り付けたウェーハ積層体の例であり、ウェーハ積層体100は、外周端部に凸部102が形成された外周端部凸部形成ウェーハW1にサポートガラス104が接着剤によって貼り付けられた構造となっている。
【0010】
図5(b)は、ベアウェーハW2を示しており、最も一般的である、面が全て平坦なウェーハである。本明細書では、この面が全て平坦なウェーハのみのウェーハを「ベアウェーハ」と呼ぶ。
【0011】
図5(c)は、外周端部に凸部102が形成された外周端部凸部形成ウェーハW1である。
【0012】
近年のウェーハの極薄化に伴い、図5に示すような、様々な種類のウェーハやウェーハ積層体をウェーハ回転保持装置に保持してスピン処理を行う必要がある。そして、図5(a)に示すようなサポートガラスをウェーハに貼り付けた積層体の場合、その構造上、サポートガラス104の分だけ、外周端部凸部形成ウェーハW1に比べて直径が大きくなる。図5(b)に示すような通常の平坦なウェーハW2(ベアウェーハ)にサポートガラスを貼り付けてウェーハ積層体にすることもあるが、やはり、サポートガラス104の分だけ、ウェーハW2に比べて直径が大きくなる。
【0013】
直径300mmウェーハの場合、サポートガラスを貼り付けてウェーハ積層体にすると、直径301mmとなる。そして、この1mmの差を無視して、同一のスピン処理装置に載置してスピン処理を行うと、直径301mmのウェーハ積層体の場合、偏芯してしまう。
【0014】
例えば、直径300mmウェーハ用のウェーハ保持構造を有するスピン処理装置に、上記したサポートガラスを貼り付けたウェーハ積層体である直径301mmのウェーハ体を載置してスピン処理をする場合、偏芯のズレ量が1mmあるので、回転数1500rpmの場合の遠心力は、約1.5kgにも達する。このため、このように偏芯した状態で、直径301mmのウェーハ体に対してスピン処理を行うと、エッチングなどのスピン処理にムラが生じたり、或いは装置の故障に繋がってしまったりすることとなる。
【0015】
このため、従来は、スピン処理装置における回転テーブルに載置したウェーハを押さえるためのピンの位置が異なるスピン処理装置に段取り替えを行う必要があった。このような段取り替えには、約30分の時間がかかり、動作確認、試運転を含むと合計1時間位、ロス時間が発生してしまい、稼働率を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特許第6634154号
【文献】特開2018-67684
【文献】特開2013-141032
【文献】特開2004-64040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、ウェーハのみであっても、ウェーハに貼り付け剤でサポート部材が貼り付けられることにより前記ウェーハよりも経大とされた直径を有するウェーハ積層体であっても、その回転中心がずれることがなく、段取り替えの必要がない、スピン処理装置における、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体ウェーハ保持構造及び保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造は、スピン処理装置におけるウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造であって、ウェーハ又はウェーハ積層体であるウェーハ体が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルに設けられ、前記ウェーハ体の外周周囲に、略等間隔に配置されてなる第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材と、を含み、前記第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材のそれぞれが、前記ウェーハ体の外周部に当接した状態と前記外周部から離隔した状態となる可動域を有し、前記回転テーブルに載置された前記ウェーハ体の外周部を、前記第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材のそれぞれが、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなる、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造である。
【0019】
前記ウェーハの直径が300mmであり、前記ウェーハ積層体の直径が301mmである、のが好適である。
【0020】
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体が前記ウェーハ積層体の場合、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材に向かって、前記ウェーハ積層体を第1外周ピン部材で押さえてなり、前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなるのが好適である。
【0021】
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体が前記ウェーハの場合、前記第1外周ピン部材及び前記第2外周ピン部材に向かって、前記ウェーハを第3外周ピン部材で押さえてなり、前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなるのが好適である。
【0022】
本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持方法は、前記ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造を用いた、スピン処理装置におけるウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持方法であり、前記回転テーブルに載置されたウェーハ体の外周部を押さえる第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなる、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持方法である。
【0023】
前記ウェーハの直径が300mmであり、前記ウェーハ積層体の直径が301mmであるのが好適である。
【0024】
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体が前記ウェーハ積層体の場合、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材に向かって、前記ウェーハ積層体を第1外周ピン部材で押さえてなり、前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなるのが好適である。
【0025】
前記回転テーブルに載置されたウェーハ体が前記ウェーハの場合、前記第1外周ピン部材及び前記第2外周ピン部材に向かって、前記円形ウェーハ積層体を第3外周ピン部材で押さえてなり、
前記第1外周ピン部材、前記第2外周ピン部材及び前記第3外周ピン部材のそれぞれの押さえる力が、
第1外周ピン部材の押さえる力 > 第2外周ピン部材の押さえる力 > 第3外周ピンの押さえる力、
の相関性を有するように前記ウェーハ体の外周部を押さえることで、前記ウェーハ体が、前記回転テーブル上でセンターリングされてなるのが好適である。
【0026】
本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のスピンエッチング装置は、前記ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ保持構造を備えた、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のスピンエッチング装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ウェーハのみであっても、ウェーハに貼り付け剤でサポート部材が貼り付けられることにより前記ウェーハよりも経大とされた直径を有するウェーハ積層体であっても、その回転中心がずれることがなく、段取り替えの必要がない、スピン処理装置における、ウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体ウェーハ保持構造及び保持方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、ウェーハのみであっても、ウェーハに貼り付け剤でサポート部材が貼り付けられることにより前記ウェーハよりも経大とされた直径を有するウェーハ積層体であっても、その回転中心がずれることがなく、段取り替えの必要がない、スピン処理装置を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造の一つの実施の形態を示し、回転テーブルに設けられた第1外周ピン部材、第2外周ピン部材及び第3外周ピン部材の配置を示す平面図である。
図2】本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造の第1外周ピン部材の動きを示す断面図である。
図3】本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造の第2外周ピン部材の動きを示す断面図である。
図4】本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造の第3外周ピン部材の動きを示す断面図である。
図5】種々のウェーハを示す模式的断面図であって、図5(a)は外周端部凸部形成ウェーハにサポートガラスを貼り付けたウェーハ積層体、図5(b)はベアウェーハ、最も一般的である、面が全て平坦なウェーハ、図5(c)は外周端部凸部形成ウェーハ、をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号であらわされる。
【0031】
図1において、符号10は、本発明のウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造の一つの実施の形態を示す。ウェーハ体保持構造10は、スピン処理装置におけるウェーハ及びウェーハ積層体兼用のウェーハ体保持構造である。本明細書において、ウェーハ体12は、図5に示す様々な種類のウェーハを全て含む概念である。即ち、ウェーハ体12には、ウェーハ積層体100、ベアウェーハW2及び外周端部凸部形成ウェーハW1のいずれも含まれる。
【0032】
ウェーハ体保持構造10は、ウェーハ又はウェーハ積層体であるウェーハ体12が載置される回転テーブル14と、前記回転テーブル14に設けられ、前記ウェーハ体12の外周周囲に、略等間隔に配置されてなる第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20と、を含む構成とされている。ウェーハ体12をセンターリングする手法としては、正三角形方向から押すのが好適である。図1に示した例では、第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20を、それぞれ120°に配置した例を示した。
【0033】
第1外周ピン部材16は第1外周ピン22a,22bから構成され、第2外周ピン部材18は第2外周ピン24a,24bから構成され、第3外周ピン部材20は第3外周ピン26a,26bから構成されている。このように、第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20は、それぞれ2本ずつのピンが立設されたダブルピン構造とされている。ダブルピン構造だと、ノッチを有するウェーハであっても対応できる利点がある。例えば、第1外周ピン22a,22bのどちらか片方(例えば第1外周ピン22a)にノッチが位置しても、他方(例えば第1外周ピン22b)で保持することで偏芯を防ぐことができる。図示例では、ピン単体(第1外周ピン22a,22b、第2外周ピン24a,24b、第3外周ピン26a,26b)は直径2.4mmのものを使用した例を示した。第1外周ピン22a,22b、第2外周ピン24a,24b及び第3外周ピン26a,26bというピン単体同士の間隔は、ウェーハのノッチよりも大きいのが好ましく、ピン単体の直径よりも広いのが好適である。
【0034】
図1の(I)、(II)、(III)は、それぞれ、回転テーブル14における第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20の配置に対応しており、それぞれの配置箇所における第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20の動きを図2図4に示す。
【0035】
第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20のそれぞれは、図2図4に示されるように、前記ウェーハ体12の外周部に当接した状態と前記外周部から離隔した状態となる可動域を有している。
【0036】
図2:第1外周ピン部材の動き>
図示例では、図2(a)によく示される如く、第1外周ピン部材16の前記可動域は4.3mmであり、第1外周ピン部材16は、前記ウェーハ体12の外周部から離隔した状態となるように、回転テーブル14の外周方向に11.1°の角度まで傾倒可能とされている。
【0037】
図2(b)は、ウェーハ体12が直径300mmのベアウェーハW2の場合の第1外周ピン部材16の状態を示している。図2(c)は、ウェーハ体12が直径301mmのウェーハ積層体100の場合の第1外周ピン部材16の状態を示している。
【0038】
図2(d)は、回転テーブル14へのウェーハ体12の受け渡し時、つまりウェーハ体12の供給/取出し時の第1外周ピン部材16の状態を示している。第1外周ピン部材16の開/閉(第1外周ピン部材16の最大傾倒動作)が必要なのはウェーハ体12の供給/取出し時である。ウェーハ体12の供給/取出しは、回転テーブル14は所定の回転角度に停止させた状態で行う。
【0039】
回転テーブル14の停止状態において、回転テーブル14の外周下部より、駆動シリンダー30により回転テーブル14下部のレバー28を押し上げテコの原理で第1外周ピン部材16を「開」状態にさせる。この「開」状態でウェーハ体12は、回転テーブル14に供給可能であり、回転テーブル14から取出し可能となる。「開」状態でウェーハ体12が回転テーブル14に供給されると、駆動シリンダー30を下げることで回転テーブル14内にセットされたスプリングで第1外周ピン部材16が閉方向に動き、第1外周ピン部材16は「閉」状態となる。第1外周ピン部材16は、この「閉」状態で、ウェーハ体12を保持する。
【0040】
3か所にある第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20のそれぞれは、対応するそれぞれの駆動シリンダー30で開/閉動作が行われる。また、図2図4において、符号32はストッパーであり、ストッパー32で、3か所にある第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20の可動領域、すなわちストローク量、の調整が行われる。駆動シリンダー30は図示されていない駆動源によって、上下に駆動せしめられる。
【0041】
また、第1外周ピン部材16の第1外周ピン22a,22bは一つの駆動シリンダーにて同時に駆動せしめられる。第2外周ピン部材18の第2外周ピン24a,24bも一つの駆動シリンダーにて同時に駆動せしめられ、第3外周ピン部材20の第3外周ピン26a,26bも一つの駆動シリンダーにて同時に駆動せしめられる。
【0042】
図3:第2外周ピン部材の動き>
図示例では、図3(a)によく示される如く、第2外周ピン部材18の前記可動域は1.07mmであり、第2外周ピン部材18は、前記ウェーハ体12の外周部に当接した状態となるように、回転テーブル14の中心方向に4.45°の角度まで傾倒可能とされている。
【0043】
図3(b)は、ウェーハ体12が直径300mmのベアウェーハW2の場合の第2外周ピン部材18の状態を示している。図3(c)は、ウェーハ体12が直径301mmのウェーハ積層体100の場合の第2外周ピン部材18の状態を示している。
【0044】
図3(d)は、回転テーブル14へのウェーハ体12の受け渡し時、つまりウェーハ体12の供給/取出し時の第2外周ピン部材18の状態を示している。第2外周ピン部材18の開/閉(第2外周ピン部材18の最大傾倒動作)が必要なのはウェーハ体12の供給/取出し時である。ウェーハ体12の供給/取出しは、回転テーブル14は所定の回転角度に停止させた状態で行う。
【0045】
回転テーブル14の停止状態において、回転テーブル14の外周下部より、駆動シリンダー30により回転テーブル14下部のレバー28を押し上げテコの原理で第2外周ピン部材18を「開」状態にさせる。この「開」状態でウェーハ体12は、回転テーブル14に供給可能であり、回転テーブル14から取出し可能となる。「開」状態でウェーハ体12が回転テーブル14に供給されると、駆動シリンダー30を下げることで回転テーブル14内にセットされたスプリングで第2外周ピン部材18が閉方向に動き、第2外周ピン部材18は「閉」状態となる。第2外周ピン部材18は、この「閉」状態で、ウェーハ体12を保持する。
【0046】
図4:第3外周ピン部材の動き>
図示例では、図4(a)によく示される如く、第3外周ピン部材20の前記可動域は0.54mmであり、第3外周ピン部材20は、前記ウェーハ体12の外周部に当接した状態となるように、回転テーブル14の中心方向に2.22°の角度まで傾倒可能とされている。
【0047】
図4(b)は、ウェーハ体12が直径300mmのベアウェーハW2の場合の第3外周ピン部材20の状態を示している。図4(c)は、ウェーハ体12が直径301mmのウェーハ積層体100の場合の第3外周ピン部材20の状態を示している。
【0048】
図4(d)は、回転テーブル14へのウェーハ体12の受け渡し時、つまりウェーハ体12の供給/取出し時の第3外周ピン部材20の状態を示している。第3外周ピン部材20の開/閉(第3外周ピン部材20の最大傾倒動作)が必要なのはウェーハ体12の供給/取出し時である。ウェーハ体12の供給/取出しは、回転テーブル14は所定の回転角度に停止させた状態で行う。
【0049】
回転テーブル14の停止状態において、回転テーブル14の外周下部より、駆動シリンダー30により回転テーブル14下部のレバー28を押し上げテコの原理で第3外周ピン部材20を「開」状態にさせる。この「開」状態でウェーハ体12は、回転テーブル14に供給可能であり、回転テーブル14から取出し可能となる。「開」状態でウェーハ体12が回転テーブル14に供給されると、駆動シリンダー30を下げることで回転テーブル14内にセットされたスプリングで第3外周ピン部材20が閉方向に動き、第3外周ピン部材20は「閉」状態となる。第3外周ピン部材20は、この「閉」状態で、ウェーハ体12を保持する。
【0050】
<押さえる強さについて>
極薄ウェーハにサポートガラスを貼り付けたウェーハ積層体100は比較的重たいため、強めに押さえる必要が有る。一方、外周端部に凸部102が形成された外周端部凸部形成ウェーハW1やベアウェーハW2は、厚さが薄いため、あまり強く押さえない。
【0051】
<ピンの構成の一つの例>
図示例では、ピン単体(第1外周ピン22a,22b、第2外周ピン24a,24b、第3外周ピン26a,26b)は直径2.4mmのものを使用した。第1外周ピン22a,22b、第2外周ピン24a,24b、第3外周ピン26a,26bの各ピン単体同士の間隔(ピッチ)については、ノッチより広く、ピン単体の直径よりも広くするため、約7mmとした。
(I)第1外周ピン部材16(第1外周ピン22a,22bから構成されている)について
・押さえる力: 600g
・可動範囲(ストローク量): 4mm以上
・全開時(供給/取出し時): 154.3mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
・中間停止時(直径301.0mmのウェーハ積層体のサポートガラス部分保持時): 150.5mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
・全閉時(直径300.0mmのウェーハ体(ベアウェーハ等)保持時): 150.0mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
【0052】
(II)第2外周ピン部材18(第2外周ピン24a,24bから構成されている)について
・押さえる力:400g
・可動範囲(ストローク量):0.5mm
・全開時(直径301.0mmのウェーハ積層体のサポートガラス部分保持時): 150.5mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
・全閉時(直径300.0mmのウェーハ体(ベアウェーハ等)保持時): 150.0mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
【0053】
(III)第3外周ピン部材20(第3外周ピン26a,26bから構成されている)について
・押さえる力: 200 g
・可動範囲(ストローク量): 1.5mm
・全開時(直径301.0mmのウェーハ積層体のサポートガラス部分保持時): 150.5mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
・中間停止時(直径300.0mmのウェーハ体(ベアウェーハ等)保持時): 150.0mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
・全閉時: 149.0mm(第1外周ピン部材16のウェーハ高さ位置における回転テーブル中心からの距離)
【0054】
<ウェーハ体の保持方法>
ウェーハ体の保持方法を次に説明する。直径300.0mmのウェーハ体と直径301.0mmのウェーハ体を保持するためには、本来はそれぞれに対応して外周ピンを立てた回転テーブルを別々に作らないといけないが、そうすると段取り替えが大変である。段取り替えには30分以上かかる。本発明では、直径300.0mmのウェーハ体と直径301.0mmのウェーハ体との両方に対応したウェーハ体保持機構としたことに特徴がある。
【0055】
ウェーハ体12の供給/取出し時は第1外周ピン部材16、第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20の全てのピンを「開」状態とする。
【0056】
[直径301.0mmのウェーハ体の場合]
直径301.0mmのウェーハ体を保持する時、即ち、極薄ウェーハにサポートガラスを貼り付けたウェーハ積層体を保持する時は、厚いのでしっかりおさえる。また、尚且つ偏芯しないように回転テーブル14の中心に持っていかないといけない。直径301.0mmのウェーハ体の例として、図5(a)に示される極薄の外周端部凸部形成ウェーハW1にサポートガラス104(直径301.0mm)を貼り付けたウェーハ積層体100(ノッチ無し)の場合で説明する。
【0057】
直径301.0mmのウェーハ体を保持する時のウェーハ体12を押さえる力のバランスとしては、
第1外周ピン部材16の押さえる力:600g > 第2外周ピン部材18の押さえる力:400g > 第3外周ピン部材20の押さえる力:200g、
の相関性を有する。
また、第1外周ピン部材16の押さえる力が、第2外周ピン部材18の押さえる力と第3外周ピン部材20の押さえる力の合計となるのが好適である。
第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20に向かって前記ウェーハ積層体100を第1外周ピン部材16で押さえるようにする。
【0058】
第2外周ピン部材18及び第3外周ピン部材20は、全開状態となり、第1外周ピン部材16で600gの力で、サポートガラス104を強く押さえることでセンターリングされる。第1外周ピン部材16は中間停止位置で押さえる。全閉状態でも全開状態でも、中間停止位置でも上記押さえる力は発生する。このようにセンターリングされた状態でウェーハ体を保持し、スピン処理を行う。
【0059】
[直径300.0mmのウェーハ体の場合]
直径300.0mmのウェーハ体を保持する時、即ち、ベアウェーハ等を保持する時は、薄いので弱く押さえる必要がある。また、尚且つ偏芯しないように回転テーブル14の中心に持っていかないといけない。直径300.0mmのウェーハ体の例として、図5(c)に示す外周端部凸部形成ウェーハW1にテープ貼り合せをしたウェーハ体(直径300.0mm、ノッチ有り)で説明する。
【0060】
直径300.0mmのウェーハ体を保持する時のウェーハ体12を押す力のバランスとしては、
第1外周ピン部材16の押さえる力:600g > 第2外周ピン部材18の押さえる力:400g > 第3外周ピン部材20の押さえる力:200g、
の相関性を有する。
また、第1外周ピン部材16の押さえる力が、第2外周ピン部材18の押さえる力と第3外周ピン部材20の押さえる力の合計となるのが好適である。
第1外周ピン部材16及び第2外周ピン部材18に向かって前記ウェーハ体を第3外周ピン部材20で押さえるようにする。
【0061】
第1外周ピン部材16及び第2外周ピン部材18は全閉状態となり、第3外周ピン部材20で200gの力で外周端部凸部形成ウェーハW1を弱く押さえることでセンターリングされる。第3外周ピン部材20は中間停止位置で押さえる。全閉状態でも全開状態でも、中間停止位置でも上記押さえる力は発生する。このようにセンターリングされた状態でウェーハ体を保持し、スピン処理を行う。
【0062】
このように、本発明では、ウェーハ体12のサイズによって、主として押さえる外周ピン部材を変えたり、外周ピン部材がウェーハ体12を押さえる力を変えたりしてセンターリングしているのである。
【0063】
このようにすれば、ウェーハのみのベアウェーハであっても、ウェーハに貼り付け剤でサポート部材が貼り付けられることにより前記ウェーハよりも経大とされた直径を有するウェーハ積層体であっても、その回転中心がずれることがないので、段取り替えの必要がない。従来は、段取り替えには、約30分の時間がかかり、動作確認、試運転を含むと合計1時間位、ロス時間が発生していたが、本発明によれば、このようなロス時間の発生が無く、稼働率を低下させずに済むという利点がある。
【符号の説明】
【0064】
10:ウェーハ体保持構造、12:ウェーハ体、14:回転テーブル、16:第1外周ピン部材、18:第2外周ピン部材、20:第3外周ピン部材、22a:第1外周ピン、22b:第1外周ピン、24a:第2外周ピン、24b:第2外周ピン、26a:第3外周ピン、26b:第3外周ピン、28:レバー、30:駆動シリンダー、32:ストッパー、100:ウェーハ積層体、102:凸部、104:サポートガラス、W1:外周端部凸部形成ウェーハ、W2:ベアウェーハ。
図1
図2
図3
図4
図5