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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20231031BHJP
   H01Q 5/30 20150101ALI20231031BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H01Q5/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021554513
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043757
(87)【国際公開番号】W WO2021090453
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 実
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016838(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03413543(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/125556(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/121861(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/061349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/24
H01Q 5/30
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された本体部の側面を囲む金属フレームと、
前記本体部に収容されるグランド板と、を備え、
前記金属フレームは、
前記金属フレームに設けられた第1間隙と第2間隙とによって区画された第1フレームの途中部分において給電点と電気的に接続され、前記途中部分と前記第2間隙とによって区画された第1周波数の電波で共振するモノポールアンテナと、
前記第2間隙と前記金属フレームに設けられた第3間隙とによって区画され、前記グランド板から絶縁される第1導体部と、
前記第1間隙と前記第3間隙とによって区画され、少なくとも前記第3間隙側の端部が前記グランド板と電気的に接続される第2導体部と、を含み、
前記モノポールアンテナおよび前記第1導体部を合わせた長さは、ループアンテナとして前記第1周波数の電波で共振可能な長さである、
無線通信装置。
【請求項2】
前記第1導体部の長さは、前記第1周波数の電波の波長の1/4である、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記金属フレームは長方形状に形成され、
前記第1間隙と前記第2間隙は、長方形状に形成された金属フレームの対向する長辺に形成される、
請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第1導体部には、前記給電点とは異なる第2給電点が接続され、
前記第1導体部と前記第2給電点との間には、前記第1周波数で前記モノポールアンテナに給電しているときは前記第1導体部と前記第2給電点とを切り離し、前記第1周波数で前記モノポールアンテナに給電していないときは前記第1導体部と前記第2給電点とを接続する選択回路が介在する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記選択回路は、前記第1周波数において開放となるLC並列回路を含む、
請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記選択回路は、前記給電点が前記モノポールアンテナに給電しているときは前記第1導体部を前記第2給電点から切り離し、前記給電点が前記モノポールアンテナに給電していないときは前記第1導体部を前記第2給電点に接続するスイッチを含む、
請求項4に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の無線通信装置が知られている。このような無線通信装置は、手で把持されるとアンテナ性能が低下することがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、本体内にアンテナ素子を設け、外装フレームが間隙部を挟んで第1の金属フレームと第2の金属フレームとに分かれた携帯無線端末について記載されている。この携帯無線端末では、間隙部に手が触れることで第1の金属フレームと第2の金属フレームとが高周波的に接続されると第2の金属フレームが接地され、アンテナ素子の共振周波数の低周波数化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-227850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外装の金属フレームの一部をアンテナとして利用する無線通信装置では、アンテナとして利用する部分とそれ以外の部分とを間隙によって電気的に分離する。このような無線通信装置を手で把持すると、間隙が手によって電気的に接続されることでアンテナ長が変化し、その結果、アンテナの共振周波数が変動することがある。そのため、所望の周波数におけるアンテナの性能が低下する虞がある。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、外装の金属フレームをアンテナとして利用する無線通信装置において、金属フレームに手が触れることによるアンテナ性能の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような無線通信装置によって例示される。本無線通信装置は、板状に形成された本体部の側面を囲む金属フレームと、前記本体部に収容されるグランド板と、を備え、前記金属フレームは、前記金属フレームに設けられた第1間隙と第2間隙とによって区画された第1フレームの途中部分において給電点と電気的に接続され、前記途中部分と前記第2間隙とによって区画された第1周波数の電波で共振するモノポールアンテナと、前記第2間隙と前記金属フレームに設けられた第3間隙とによって区画され、前記グランド板から絶縁される第1導体部と、前記第1間隙と前記第3間隙とによって区画され、少なくとも前記第3間隙側の端部が前記グランド板と電気的に接続される第2導体部と、を含み、前記モノポールアンテナおよび前記第1導体部を合わせた長さは、ループアンテナとして前記第1周波数の電波で共振可能な長さである。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術は、外装の金属フレームをアンテナとして利用する無線通信装置において、金属フレームに手が触れることによるアンテナ性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図2図2は、図1の矩形R1によって囲まれる部分を模式的に示す第1の図である。
図3図3は、図1の矩形R1によって囲まれる部分を模式的に示す第2の図である。
図4図4は、実施形態に係るスマートフォンのアンテナの放射効率を例示する図である。
図5図5は、第1比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図6図6は、図5の矩形R2によって囲まれる部分を模式的に示す第1の図である。
図7図7は、図5の矩形R2によって囲まれる部分を模式的に示す第2の図である。
図8図8は、第2比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図9図9は、第1比較例、第2比較例および実施形態の放射効率を比較する図である。
図10図10は、第3比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図11図11は、第4比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図12図12は、第4比較例係るスマートフォンにおいて複数の周波数用のアンテナを設けた場合を模式的に示す図である。
図13図13は、実施形態に係るスマートフォンにおいて複数の周波数用のアンテナを設けた場合を模式的に示す図である。
図14図14は、第1変形例に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図15図15は、選択回路の他の例を示す図である。
図16図16は、スイッチ以外の回路を使用して周波数切り替えを行う構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る無線通信装置は、
板状に形成された本体部の側面を囲む金属フレームと、
前記本体部に収容されるグランド板と、を備え、
前記金属フレームは、
前記金属フレームに設けられた第1間隙と第2間隙とによって区画された第1フレームの途中部分において給電点と電気的に接続され、前記途中部分と前記第2間隙とによって区画された第1周波数の電波で共振するモノポールアンテナと、
前記第2間隙と前記金属フレームに設けられた第3間隙とによって区画され、前記グランド板から絶縁される第1導体部と、
前記第1間隙と前記第3間隙とによって区画され、少なくとも前記第3間隙側の端部が前記グランド板と電気的に接続される第2導体部と、を含み、
前記モノポールアンテナおよび前記第1導体部を合わせた長さは、ループアンテナとして前記第1周波数の電波で共振可能な長さである。
【0011】
本無線通信装置において、グランド板は接地された部材である。グランド板は、部品を実装する基板であってもよいし、部品が実装されていない金属板であってもよい。金属フレームの一部をモノポールアンテナとして利用する無線通信装置では、モノポールアンテナは、第1間隙と第2間隙とによって、金属フレームの他の領域から電気的に分離される。金属フレームは、無線通信装置の本体部の側面を囲むため、無線通信装置が手で把持されると、手によって第1間隙や第2間隙が容量結合することにより、モノポールアンテナが金属フレームの他の領域と電気的に接続されることがある。モノポールアンテナが金属フレームの他の領域と電気的に接続されてしまうとアンテナ長が変動することにより、モノポールアンテナの共振周波数が変動する。その結果、第1周波数におけるアンテナ性能が低下することになる。
【0012】
本実施形態に係る無線通信装置では、第2間隙と第3間隙によって区画される第1導体部がグランド板と接続されておらず、第2導体部の第3間隙側がグランド板と電気的に接続される。そして、モノポールアンテナおよび前記第1導体部を合わせた長さは、ループアンテナとして第1周波数の電波で共振可能な長さとなっている。このような構成により、本無線通信装置は、例えば、第2間隙と第3間隙のそれぞれが無線通信装置を手で把持することで容量結合しても、モノポールアンテナと第1導体部とが第1周波数で共振可能なループアンテナとして通信可能である。そのため、金属フレームに手が触れることによる第1周波数の電波についてのアンテナ性能の低下が抑制される。なお、金属フレームは長方形状に形成されてもよく、第1間隙と第2間隙は、長方形状に形成された金属フレームの対向する長辺に形成されてもよい。なお、無線通信装置としては、例えば、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット型コンピュータ、ノートブック型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ等を挙げることができる。
【0013】
実施形態に係る無線通信装置は、次の特徴を備えてもよい。第1導体素子の長さは、第1周波数の電波の波長の1/4であってもよい。モノポールアンテナと第1導体部とが第1周波数で共振可能なループアンテナとして動作可能とするには、第1導体素子の長さは第1周波数の電波の波長の1/4の奇数倍であればよい。ここで、第1導体素子はグランド板から離されるため、第1導体素子を長くすると、金属フレームが外力に対して弱くなることが考えられる。第1導体素子を第1周波数の電波の波長の1/4とすることで、グランド板と接触させることが可能な第2導体部を可及的に長くすることができ、金属フレームの強度低下を抑制することができる。
【0014】
実施形態に係る無線通信装置は、次の特徴を備えてもよい。前記第1導体部には、前記給電点とは異なる第2給電点が接続され、前記第1導体部と前記第2給電点との間には、前記第1周波数で前記モノポールアンテナに給電しているときは前記第1導体部と前記第2給電点とを切り離し、前記第1周波数で前記モノポールアンテナに給電していないときは前記第1導体部と前記第2給電点とを接続する選択回路が介在する。このような特徴を備えることで、第1導体素子を第1周波数とは異なる周波数で共振するアンテナとして使用することができる。選択回路は、前記第1周波数において開放となるLC並列回路を含んでもよい。また、選択回路は、前記給電点が前記モノポールアンテナに給電しているときは前記第1導体部を前記第2給電点から切り離し、前記給電点が前記モノポールアンテナに給電していないときは前記第1導体部を前記第2給電点に接続するスイッチを含んでもよい。
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係るスマートフォンの一例を示す図である。図1は、実施形態に係るスマートフォン1の前面側のカバーを開けた状態を例示する。スマートフォン1は、枠状の側面フレーム100と、側面フレーム100で区画される本体部200内に収容されるグランド板210およびプリント基板220を備える。スマートフォン1は、全体として略長方形に形成された板状である。以下、本明細書において、+Y方向を上方向、-Y方向を下方向、+X方向を右方向、-X方向を左方向とも称する。また、図1において、手前に向かう方向を前方向、奥に向かう方向を後ろ方向とする。スマートフォン1は、「無線通信装置」の一例である。
【0016】
スマートフォン1は可搬型の無線通信装置である。スマートフォン1は、前後のカバーと側面フレーム100によって区画される本体部200内に、Central Processing Unit(CPU)、主記憶部、補助記憶部等の各種電子部品を収容する。
【0017】
側面フレーム100は、スマートフォン1の側面を囲むカバーである。側面フレーム100は、本体部200の側面を囲むカバーということもできる。側面フレーム100は、例えば、金属等の導体で形成される。側面フレーム100は、略長方形状のスマートフォン1の側面を囲むため、略長方形状である。側面フレーム100には、複数のスリット101、102、103が設けられる。スリット101、102は、側面フレーム100のうち対向する長辺の下方に設けられる。スリット103は、側面フレーム100のうちスリット102が設けられた長辺と同じ長辺上において、スリット102よりも上側に設けられる。スリット101、102、103のそれぞれには、例えば、樹脂を充填してもよい。側面フレーム100は、「金属フレーム」の一例である。スリット101は、「第1間隙」の一例である。スリット102は、「第2間隙」の一例である。スリット103は、「第3間隙」の一例である。
【0018】
プリント基板220は、各種電子部品を搭載可能な基板である。プリント基板220は、例えば、本体部200内の下側に配置される。プリント基板220は、給電点221を有する。
【0019】
下部フレーム110は、側面フレーム100のうち、スリット101、102によって区画される領域である。下部フレーム110は、その途中部分111において、給電点221と電気的に接続される。下部フレーム110において、途中部分111とスリット102とによって区画される領域は、アンテナ素子112となる。アンテナ素子112は、給電点221から給電されるアンテナ素子である。途中部分111は、「途中部分」の一例である。給電点221は、「給電点」の一例である。下部フレーム110は、「第1フレーム」の一例である。
【0020】
アンテナ素子112は、第1周波数の電波で共振するモノポールアンテナである。アンテナ素子112の長さは、例えば、第1周波数の電波の波長の1/4である。第1周波数は、例えば、2.2GHzである。アンテナ素子112は、「モノポールアンテナ」の一例である。
【0021】
側面導体素子120は、側面フレーム100において、スリット102、103によって区画される領域である。側面導体素子120は、グランド板210と接しない導体素子である。すなわち、側面導体素子120は、接地されない導体素子である。側面導体素子120の長さは、例えば、第1周波数の電波の波長の1/4である。側面導体素子120は、「第1導体部」の一例である。
【0022】
上部フレーム130は、側面フレーム100において、スリット101、103によって区画される領域である。グランド板210は、接地された金属板や実装基板等である。グランド板210は、例えば、本体部200内の上側に配置される。グランド板210は、例えば、側面フレーム100のうちの上部フレーム130の内側と接することで、上部フレーム130を接地するとともに、上部フレーム130の強度を高める。上部フレーム130は、「第2導体部」の一例である。
【0023】
側面フレーム100のうち、少なくとも、アンテナ素子112と側面導体素子120はグランド板210から離れている。すなわち、アンテナ素子112および側面導体素子120は、グランド板210とは電気的に接続されていない。グランド板210は、「グランド板」の一例である。
【0024】
図2および図3は、図1の矩形R1によって囲まれる部分を模式的に示す図である。図2は側面フレーム100に指が触れていない状態を例示し、図3は側面フレーム100に指が触れている状態を例示する。図2では、スリット102およびスリット103のいずれも電気的に接続されていないため、アンテナ素子112が第1周波数の電波で動作するモノポールアンテナとなる。
【0025】
図3では、スマートフォン1のユーザがスマートフォン1を手で把持した状態が例示される。そのため、ユーザの手(例えば、親指F1)によってスリット102が容量結合によって電気的に接続されるとともに、スリット103も容量結合によって電気的に接続される。本実施形態では、上部フレーム130の少なくともスリット103側の端部はグランド板と電気的に接続されることで接地されている。そのため、スリット102、103のそれぞれが容量結合した場合、給電点221と電気的に接続された途中部分111からアンテナ素子112、側面導体素子120を経て上部フレーム130のスリット103側の端部からグランドに至るループアンテナが形成される。ここで、アンテナ素子112の長さが第1周波数の電波の波長の1/4であり、側面導体素子120の長さが第1周波数の電波の波長の1/4であることから、形成されたループアンテナの長さは第1周波数の電波の波長の1/2となる。すなわち、形成されたループアンテナは、第1周波数で共振するループアンテナとなる。
【0026】
そのため、スマートフォン1では、手で把持されていない状態では第1周波数の電波の波長の1/4で共振するモノポールアンテナを用いて通信でき、手で把持されている状態では第1周波数の電波の波長の1/2で共振するループアンテナを用いて通信することができる。すなわち、スマートフォン1では、手で把持する前後においてアンテナが共振する周波数に大きな変動は生じない。換言すれば、スマートフォン1は、手で把持している状態においても手で把持していない状態においても、第1周波数の電波で効率よく通信することができる。
【0027】
ここで、側面導体素子120の長さについて検討する。図4は、実施形態に係るスマートフォンのアンテナの放射効率を例示する図である。図4では、スリット102の位置を固定し、スリット103の位置を移動させることで側面導体素子120の長さを変動させた場合の周波数2.2GHzの電波についての放射効率について例示している。図4の縦軸は放射効率(dB)を例示し、横軸はスリット102を基準とした場合のスリット103の位置(mm)を例示する。換言すれば、横軸は側面導体素子120の長さを例示するということもできる。図4では、スリット102、103の双方が親指F1によって容量結合されている場合(親指付)の放射効率と、スリット102、103のいずれもが容量結合されていない場合(自由空間)の放射効率とが例示されている。また、図4では、自由空間における放射効率の目安(自由空間目安)と、親指付の放射効率の基準(親指付目安)とが例示されている。なお、ここでは、親指F1の比誘電率を40.0、電気伝導率を1.40S/mと仮定している。
【0028】
図4を参照すると、自由空間における放射効率が自由空間目安を超えるとともに、親指付における放射効率が親指付目安を超える側面導体素子120の長さは、30mmから40mmの範囲と100mmから110mmの範囲であることが理解できる。30mmから40mmの範囲は周波数2.2GHzの波長の1/4に相当し、100mmから110mmの範囲は周波数2.2GHzの波長の3/4に相当する。このことから、側面導体素子120の長さは、アンテナ素子112が共振する電波の波長の1/4の奇数倍であることが好ましいことが理解できる。
【0029】
上記の通り、側面導体素子120の長さは、アンテナ素子112が共振する電波の波長の1/4の奇数倍であれば、好ましい放射効率を実現できる。しかしながら、側面導体素子120は、グランド板210と接しないため、側面導体素子120の長さを長くすると、側面フレーム100の強度が低下する虞がある。また、側面導体素子120の長さを長くすると、スマートフォン1の小型化にとって不利となる。そこで、側面導体素子120の長さは、第1周波数の電波の波長の1/4とすることが好ましい。
【0030】
<第1比較例>
ここで、比較例について説明する。図5は、第1比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。図5は、第1比較例に係るスマートフォン500の前面側のカバーを開けた状態を例示する。以下、図面を参照して、第1比較例に係るスマートフォン500について説明する。
【0031】
側面フレーム100aは、スリット103を有しない点で、側面フレーム100とは異なる。グランド板210aは、実施形態における側面導体素子120に相当する部分においても側面フレーム100aの内側に接する点で、グランド板210とは異なる。上部フレーム130aは、側面フレーム100aのうち、スリット101、102によって区画される領域の上側の領域である。図5を参照すると理解できるように、上部フレーム130aのスリット102側の端部は、接地されている。
【0032】
図6および図7は、図5の矩形R2によって囲まれる部分を模式的に示す図である。図6は側面フレーム100aに指が触れていない状態を例示し、図7は側面フレーム100aに指が触れている状態を例示する。図6では、スリット102が電気的に接続されていないため、アンテナ素子112が第1周波数の電波で動作するモノポールアンテナとなる。
【0033】
図7では、スマートフォン500のユーザがスマートフォン500を手で把持した状態が例示される。そのため、ユーザの手(例えば、親指F1)によってスリット102が容量結合によって電気的に接続される。第1比較例では、上部フレーム130aの少なくともスリット102側の端部はグランド板と電気的に接続されることで接地されている。そのため、スリット102が容量結合した場合、給電点と電気的に接続された途中部分111からアンテナ素子112を経て上部フレーム130aのスリット102側の端部からグランドに接続されてしまう。すなわち、モノポールアンテナであるアンテナ素子112の開放端が接地されてしまうことで、アンテナ素子112の共振周波数が第1周波数から大きく変動してしまうことになる。
【0034】
<第2比較例>
続いて、第2比較例について説明する。図8は、第2比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。図8は、第2比較例に係るスマートフォン600の前面側のカバーを開けた状態を例示する。第2比較例に係るスマートフォン600は、側面フレーム100bにおいてスリット103を有しない点で、実施形態に係るスマートフォン1とは異なる。第2比較例に係るスマートフォン600においても、少なくともスマートフォン1におけるスリット103に対応するスリット対応位置103aにおいて、グランド板210と電気的に接続される。第2比較例に係るスマートフォン600を手で把持した場合、実施形態に係るスマートフォン1と同様に、第1周波数の電波で共振するループアンテナを形成することができる。
【0035】
<第1比較例および第2比較例と実施形態との比較>
図9は、第1比較例、第2比較例および実施形態の放射効率を比較する図である。図9では、周波数2.2GHzの電波の放射効率を例示し、親指F1の比誘電率を40.0、電気伝導率を1.40S/mと仮定した。図9を参照すると、第1比較例に係るスマートフォン500では、自由空間における放射効率は-1.4dBであり、親指付における放射効率は-16.9dBであり、自由空間に対する親指付の放射効率の劣化量は-15.5dBである。第2比較例に係るスマートフォン600では、自由空間における放射効率は-13.4dBであり、親指付における放射効率は-9.3dBであり、自由空間に対する親指付の放射効率の劣化量は+4.1dBである。実施形態に係るスマートフォン1では、自由空間における放射効率は-1.3dBであり、親指付における放射効率は-11.3dBであり、自由空間に対する親指付の放射効率の劣化量は-10.0dBである。
【0036】
すなわち、第1比較例に係るスマートフォン500では、自由空間および親指付のいずれにおいても、実施形態に係るスマートフォン1よりも放射効率が低いことが理解できる。一方、第2比較例に係るスマートフォン600は、親指付における放射効率は実施形態に係るスマートフォン1よりも若干改善されているものの、自由空間における放射効率が極めて悪いことが理解できる。実施形態に係るスマートフォン1では、自由空間における放射効率が第1比較例および第2比較例のいずれよりも高く、また、親指付においては第2比較例に迫る放射効率を実現できることが理解できる。
【0037】
<他の比較例>
さらに、スリット102が容量結合された場合におけるアンテナの放射効率の低下に対応する他の比較例について検討する。図10は、第3比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。図10は、第3比較例に係るスマートフォン700の前面側のカバーを開けた状態を例示する。スマートフォン700は、アンテナ素子112に加えて、本体部200内の上部にアンテナ712を備える。スマートフォン700は、親指F1等によるスリット102の容量結合を検知すると、Dual Pole Dual Thorow(DPDT)713によって通信に使用するアンテナをアンテナ素子112からアンテナ712に切り替える。
【0038】
本体部200内の上部には、例えば、カメラやスピーカー等の様々な電子部品が実装されることが多い。そのため、本体部200内の上部では、アンテナ712のアンテナ長を短くすることが多い。また、アンテナ長が短くなる上に、アンテナ712の周囲には上記電子部品が存在するため、アンテナ712の性能はアンテナ素子112よりも低くなりやすく、また、アンテナ712が共振可能な周波数帯域も狭くなりやすい。そのため、アンテナ素子112からアンテナ712に切り替えることで、かえってスマートフォン700のアンテナ性能が劣化する可能性もある。
【0039】
図11は、第4比較例に係るスマートフォンの一例を示す図である。図11は、第4比較例に係るスマートフォン800の前面側のカバーを開けた状態を例示する。スマートフォン800は、略矩形に形成された側面フレーム100cの下方の辺に2つのスリット801、802を設ける。スマートフォン800では、途中部分111からスリット802側の端部までがアンテナ素子812となる。
【0040】
スリット801、802をこのような位置に設けることで、スマートフォン800が手で把持されても親指F1等の手がスリット801、802に触れにくいため、スリット801、802が容量結合しにくくなる。そのため、スマートフォン800では、手で把持した場合におけるアンテナ素子812の性能劣化が抑制されると考えられる。
【0041】
ここで、スマートフォン800に複数のアンテナを設けることで、複数の周波数に対応させることを検討する。スマートフォン800の大きさを縦方向(Y方向)が150mm、幅方向(X方向)が75mmと設定し、スリットには比誘電率3.0の樹脂を充填したものとする。この場合において、周波数850MHzの電波の1/4波長は51mm、1.5GHzの電波の1/4波長は29mm、2.2GHzの電波の1/4波長は20mmとなる。
【0042】
図12は、第4比較例係るスマートフォンにおいて複数の周波数用のアンテナを設けた場合を模式的に示す図である。図12を参照すると、850MHz用のアンテナと1.5GHz用のアンテナと、2.2GHz用のアンテナをスマートフォン800に設けようとすると、幅方向75mmよりもアンテナの長さが長くなるため、スマートフォン800には実装できないことが理解できる。
【0043】
図13は、実施形態に係るスマートフォンにおいて複数の周波数用のアンテナを設けた場合を模式的に示す図である。実施形態に係るスマートフォン1では、スリット101、102は、側面フレーム100のうち対向する長辺の下方に設けられるため、スリット101、102の位置を適宜決定することで、周波数、850MHz、1.5GHz、2.2GHzそれぞれのアンテナのアンテナ長を確保できることが理解できる。また、850MHz用のアンテナと1.5GHz用のアンテナとの間に1mm程度のスリット101aを設けることで、850MHz用のアンテナと1.5GHz用のアンテナとを絶縁できることも理解できる。すなわち、実施形態に係るスマートフォン1は、実装するアンテナを複数の周波数帯域に対応させる上でも有利である。
【0044】
<第1変形例>
実施形態に係るスマートフォンは、様々に変形することが可能である。図14は、第1変形例に係るスマートフォンの一例を示す図である。図14は、第1変形例に係るスマートフォン1aの前面側のカバーを開けた状態を例示する。スマートフォン1aでは、選択回路190を介して給電点221bが側面導体素子120に接続されている。選択回路190は、第1周波数の電波による通信が行われている間は側面導体素子120を給電点221bから切り離し、第2周波数の電波による通信を行う場合には側面導体素子120を給電点221bに接続する。このような実装により、スマートフォン1aは、第1周波数で通信を行っていない場合には、側面導体素子120を第2周波数の電波で共振するアンテナとして使用することが可能となる。選択回路190は、「選択回路」の一例である。給電点221bは、「第2給電点」の一例である。
【0045】
図15は、選択回路の他の例を示す図である。図15では、アンテナ素子112や側面導体素子120も例示されている。図15に例示される選択回路190は、マッチング回路191と側面導体素子120との間に、スイッチ195が介在する。スイッチ195は、第1周波数での通信を行っている場合(例えば、給電点221が給電を行っている場合)は、側面導体素子120を給電点221bから切り離す。また、スイッチ195は、第1周波数での通信を行っていな場合(例えば、給電点221が給電を行っていない場合)は、給電点221bと側面導体素子120とを接続する。このような実装によっても、スマートフォン1aは、第1周波数においてはアンテナ素子112を用いて通信を行い、第2周波数においては側面導体素子120をアンテナとして用いて通信を行うことができる。
【0046】
選択回路190の部分はスイッチ以外の回路を使用して、周波数切替えをすることも可能である。図16は、その変形の一例を示す図である。図16では、アンテナ素子112や側面導体素子120も例示されている。図16に例示される選択回路190は、マッチング回路191と側面導体素子120との間に、コイル193とコンデンサ194とを並列に接続したLC並列回路192が介在する。LC並列回路192は、第1周波数で共振させることによって、アンテナ素子112を共振させる第1周波数においてハイインピーダンスにすることができる。つまり、第1周波数で通信が行われている場合には、給電点221bから高周波的に切り離すことができる。また、第1周波数と異なる第2周波数においては、マッチング回路の一部として動作するため、側面導体素子120をアンテナとして通信を行うことができる。
【0047】
なお、以上説明した実施形態や変形例では、側面フレーム100は長方形状に形成されたが、側面フレーム100は正方形上、円形状、菱形形状等他の形状に形成されてもよい。この場合、アンテナ素子112の長さを第1周波数で共振可能な長さとし、側面導体素子120の長さを第1周波数の電波の波長の1/4の奇数倍とできるように、スリット101、102、103の位置が決定されればよい。
【0048】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、500、600、700、800・・・スマートフォン
100、100a、100b、100c・・・側面フレーム
101、101a、102、103、801、802・・・スリット
103a・・・スリット対応位置
110・・・下部フレーム
111・・・途中部分
112、812・・・アンテナ素子
120・・・側面導体素子
130、130a・・・上部フレーム
190・・・選択回路
191・・・マッチング回路
192・・・LC並列回路
193・・・コイル
194・・・コンデンサ
195・・・スイッチ
200・・・本体部
210、210a・・・グランド板
220・・・プリント基板
221、221a、221b・・・給電点
712・・・アンテナ
713・・・DPDT
F1・・・親指
図1
図2
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図4
図5
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図11
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図16