(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】多層メッキ層を備えた光学偽造防止素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20231031BHJP
B42D 25/40 20140101ALN20231031BHJP
G07D 7/00 20160101ALN20231031BHJP
【FI】
G02B5/18
B42D25/40
G07D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2021566158
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2020081589
(87)【国際公開番号】W WO2020224352
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】201910368308.4
(32)【優先日】2019-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517026966
【氏名又は名称】中▲鈔▼特▲種▼防▲偽▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHONGCHAO SPECIAL SECURITY TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6 Xinghuo Road, Science City, Fengtai District, Beijing 100070, China
(73)【特許権者】
【識別番号】516001694
【氏名又は名称】中国印▲鈔▼造▲幣▼▲総▼公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA BANKNOTE PRINTING AND MINTING CORPORATION
【住所又は居所原語表記】Kaixuan Mansion, Jia 143 Xizhimenwai Avenue,Xicheng District Beijing 100044 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】胡 春華
(72)【発明者】
【氏名】張 巍巍
(72)【発明者】
【氏名】張 宝利
(72)【発明者】
【氏名】朱 軍
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104647934(CN,A)
【文献】国際公開第2010/147185(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103963510(CN,A)
【文献】国際公開第2012/161257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
B42D 25/40
G07D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学偽造防止素子であって、
第1微細構造を有する第1領域(A)と、構造的パラメータが前記第1微細構造の構造的パラメータよりも大きい第2微細構造を有する第2領域(B)とを含む起伏構造層(2)を含み、前記構造的パラメータは、深幅比又は比体積を含み、
前記第1領域(A)に第1メッキ層(3)及び前記第1メッキ層(3)上にある第1保護層(4)が設けられ、前記第1保護層(4)及び前記第2領域(B)に第2メッキ層(5)が設けられ、前記第2メッキ層(5)と前記第1メッキ層(3)は、2つの異なるメッキ層であり、前記第1領域(A)は前記第1微細構造と前記第1メッキ層(3)を結合した光学特徴を有し、前記第2領域(B)は前記第2微細構造と前記第2メッキ層(5)を結合した光学特徴を有する、
ことを特徴とする光学偽造防止素子。
【請求項2】
前記第1微細構造又は前記第2微細構造は、周期的構造及び非周期的構造のうちの1つの構造、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第1微細構造又は前記第2微細構造の延在方向に沿う断面構造は、平坦構造、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧状格子構造のうちの1つの構造、又は平坦構造、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧状格子構造のうちの少なくともいずれか2つの構造を組み合わせた構造である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項3】
前記第2微細構造の構造的二次パラメータは、前記第1微細構造の構造的二次パラメータよりも大きく、
前記構造的パラメータは、深幅比及び比体積から選択される一方のパラメータであり、
前記構造的二次パラメータは、前記構造的パラメータではない、前記深幅比及び前記比体積のうちの他方のパラメータである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項4】
前記構造的パラメータは深幅比であり、
前記第1微細構造の深幅比の範囲は0
よりも大きく0.3未満であり、
前記第2微細構造の深幅比の範囲は0.2よりも大きく0.5よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の光学偽造防止素子。
【請求項5】
前記構造的パラメータは比体積であり、
前記第1微細構造の比体積の範囲は0um
3/um
2
よりも大きく0.5um
3/um
2未満であり、
前記第2微細構造の比体積の範囲は0.4um
3/um
2よりも大きく2um
3/um
2よりも小さい
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の光学偽造防止素子。
【請求項6】
前記第1メッキ層(3)及び前記第2メッキ層(5)は、いずれも金属反射メッキ層であるか、或いは、
前記第1メッキ層(3)及び前記第2メッキ層(5)は、いずれも多層干渉光学的変色メッキ層であるか、或いは、
前記第1メッキ層(3)は金属反射メッキ層で、前記第2メッキ層(5)は多層干渉光学的変色メッキ層であるか、或いは、
前記第1メッキ層(3)は多層干渉光学的変色メッキ層で、前記第2メッキ層は金属反射メッキ層(5)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項7】
前記金属反射メッキ層の材料は、アルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの1つの金属、又はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの少なくともいずれか2つの金属を組み合わせた合金を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の光学偽造防止素子。
【請求項8】
前記金属反射メッキ層の材料は、アルミニウムである、
ことを特徴とする請求項7に記載の光学偽造防止素子。
【請求項9】
前記多層干渉光学的変色メッキ層は、反射層、誘電体層、及び吸収層を含み、
前記反射層の材料は、アルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの1つの金属、又はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの少なくともいずれか2つの金属を組み合わせた合金を含み、
前記誘電体層の材料は、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、硫化亜鉛、窒化チタン、二酸化チタン、一酸化チタン、三酸化二チタン、五酸化三チタン、五酸化二タンタル、五酸化二ニオブ、二酸化セリウム、三酸化二ビスマス、三酸化二クロム、酸化鉄、二酸化ハフニウム又は酸化亜鉛を含み、
前記吸収層の材料は、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの1つの金属、又はニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの少なくともいずれか2つの金属を組み合わせた合金を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の光学偽造防止素子。
【請求項10】
前記反射層の材料は、アルミニウムであり、
前記吸収層の材料は、ニッケル又はクロム、又はニッケルクロム合金である、
ことを特徴とする請求項9に記載の光学偽造防止素子。
【請求項11】
前記起伏構造層(2)は、第3微細構造を有する第3領域(C)をさらに含み、
前記第3微細構造の構造的パラメータは前記第2微細構造の構造的パラメータよりも大きく、前記構造的パラメータは、深幅比又は比体積を含み、
前記第3領域(C)は前記第1メッキ層(3)又は前記第2メッキ層(5)を有さず、
透過観察する際、前記第3領域(C)は
完全に透明又はほぼ完全に透明又は半透明である特徴を示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項12】
前記構造的パラメータは、深幅比であり、
前記第3微細構造の深幅比の範囲は、0.3よりも大きく1よりも小さい、
ことを特徴とする請求項11に記載の光学偽造防止素子。
【請求項13】
前記構造的パラメータは、比体積であり、
前記第3微細構造の比体積の範囲は、1um
3/um
2よりも大きく3um
3/um
2よりも小さい、
ことを特徴とする請求項11に記載の光学偽造防止素子。
【請求項14】
前記第1メッキ層(3)及び前記第2メッキ層(5)のうちの一方は多層干渉光学的変色メッキ層であり、
前記多層干渉光学的変色メッキ層は、反射層、誘電体層、及び吸収層を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の光学偽造防止素子。
【請求項15】
前記第3領域(C)は、反射層、誘電体層、又は吸収層のうちのいずれかを有しない、
ことを特徴とする請求項14に記載の光学偽造防止素子。
【請求項16】
前記第3領域(C)は、吸収層及び誘電体層を有し、反射層を有しない、
ことを特徴とする請求項14に記載の光学偽造防止素子。
【請求項17】
光学偽造防止素子の製造方法であって、
第1微細構造を有する第1領域(A)と、構造的パラメータが前記第1微細構造の構造的パラメータよりも大きい特徴を有する第2微細構造を有する第2領域(B)とを有する起伏構造層(2)を形成するステップS1であって、前記構造的パラメータは、深幅比又は比体積を含む、ステップS1と、
第1メッキ層(3)を得るためのメッキ層を形成するステップS2と、
第1保護層を形成するステップS3と、
前記第2領域(B)にステップS2で形成されたメッキ層の一部又は全部が除去されるまで、ステップS3の半製品をステップS2で形成されたメッキ層と反応可能な雰囲気に放置し、反応が停止すると、前記第1メッキ層(3)を得るステップであって、前記第1メッキ層(3)と前記第1微細構造は前記第1領域(A)で結合した光学特徴を示すステップS4と、
第2メッキ層(5)を得るためのメッキ層を形成するステップS5であって、前記第2メッキ層(5)と前記第1メッキ層(3)は、2つの異なるメッキ層である、ステップS5と、を含む、
ことを特徴とする光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項18】
ステップS1において、
前記起伏構造層は、構造的パラメータが前記第2微細構造の構造的パラメータよりも大きい特徴を有する第3微細構造を有する第3領域(C)をさらに有する、
ことを特徴とする請求項17に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項19】
ステップS1において、
前記第2微細構造は、構造的二次パラメータが前記第1微細構造の構造的二次パラメータよりも大きい特徴を有し、
前記構造的パラメータは、深幅比及び比体積から選択される一方のパラメータであり、
前記構造的二次パラメータは、前記構造的パラメータではない、前記深幅比及び前記比体積のうちの他方のパラメータである、
ことを特徴とする請求項17又は18に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項20】
第2保護層を形成するステップS6と、
前記第3領域(C)にステップS5で形成されたメッキ層の一部又は全部が除去されるまで、ステップS6の製品をステップS5で形成されたメッキ層と反応可能な雰囲気に放置し、反応が停止すると、前記第2メッキ層(5)を得るステップであって、前記第2メッキ層(5)と前記第2微細構造は前記第2領域(B)で結合した光学特徴を示し、透過観察する際、前記第3領域(C)は前記第1領域(A)及び前記第2領域(B)に対してホロウ特徴を有するステップS7と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項21】
ステップS2で第1メッキ層(3)を得るためのメッキ層及び/又はステップS5で第2メッキ層(5)を得るためのメッキ層は、アルミニウム層を有し、
ステップS2でのメッキ層と反応可能な雰囲気及び/又はステップS5でのメッキ層と反応可能な雰囲気として酸性溶液を選択するか、或いは、ステップS2でのメッキ層と反応可能な雰囲気及び/又はステップS5でのメッキ層と反応可能な雰囲気としてアルカリ性溶液を選択する、
ことを特徴とする請求項20に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項22】
無機又は有機メッキ層、或いは、無機又は有機塗布層プロセスを施して、付加的な光学偽造防止機能又は補助機能を実現するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項17又は20に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学偽造防止の技術分野に関し、具体的には、光学偽造防止素子及び光学偽造防止素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査やコピー等の手段による偽造を防止するために、光学偽造防止技術は紙幣、クレジットカード、パスポート、有価証券及び製品包装等の様々な高セキュリティ又は高付加価値の印刷物に広く適用されており、非常に良い効果をもたらしている。
【0003】
様々な光学偽造防止技術では、微細構造による光学効果は回折、非回折等の効果を含み、輝度が高く、動的効果が明らかであるため、広く適用されている。微細構造による光学偽造防止技術は、画像の輝度を高めるために、一般には、金属反射層、例えば、アルミニウムによるものを適用する。現在、光学薄膜に最も広く適用されている光学偽造防止技術であるホログラフィック技術は、微細構造による回折効果を利用して発展する光学技術である。1999版第5版人民元の5元、10元、20元、50元、100元の偽造防止線はホログラフィック技術を採用した。また、多層干渉光学的変色技術は、異なる観察視角で強い光学的変色効果を現すため、ますます人々に重要視されている。多層干渉光学的変色技術は一般には、気相成長方法によって多層の干渉メッキ層の蒸着を実現する。典型的な多層干渉メッキ層は、一般には反射層、誘電体層及び吸収層を含む。反射層は一般には、高輝度の金属材料で製造され、誘電体層は一般には、透明な無機又は有機材料で製造され、吸収層は半透明層とも呼ばれ、一般には、吸収性に優れた薄い金属材料で製造される。2015版第5版人民元の100元の安全線は多層干渉光学的変色技術を採用し、正面から見るとマゼンタとなり、傾斜して見ると緑色となる。
【0004】
光学微細構造、高輝度の金属反射層の特徴及び多層干渉光学的変色特徴を同一の光学偽造防止素子に集積すると、光学偽造防止効果を大幅に強化できる。中国の特許出願CN200980104829.3は、部分印刷ホロウプロセスによって多層干渉光学的変色メッキ層と高輝度の金属反射層とを集積した光学偽造防止製品の製造を実現し、即ち、一部の領域は多層干渉光学的変色特徴を有し、一部の領域は高輝度の金属反射層の光学特徴を有し、残りの領域はホロウ効果を有する。しかしながら、当該特許出願では、3つの領域をお互いに位置合わせする精度は印刷の精度次第であるが、印刷の精度は一般には100um以上であり、ある程度、ハイエンド偽造防止光学製品での応用を制限している。
【0005】
従って、高輝度の金属反射層の特徴と多層干渉光学的変色特徴を兼ね備えるとともに、2つの特徴領域同士の位置決めのゼロ誤差を実現する光学偽造防止素子を製造することは、重要な意義がある。さらに、光学偽造防止素子にホロウ(hollow、鏤空)特徴をさらに集積し、ホロウ領域と画像領域もゼロ誤差の位置決めである場合、製品の偽造防止性能をさらに向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、光学偽造防止素子の一側から反射観察する際、2つの異なるメッキ層による光学特徴を有し、これら2つの異なる光学特徴の領域は厳密なゼロ誤差の位置決めを有し、特に、2つのメッキ層がそれぞれ金属メッキ層及び多層干渉光学的変色メッキ層である場合、製品は豊な高輝度の金属反射層の特徴(例えば、ホログラフィック)と干渉光学的変色特徴を現すことができ、優れた総合的な集積偽造防止性能を有し、また、光学偽造防止素子にホロウ特徴をさらに集積し、ホロウ領域と画像領域もゼロ誤差の位置決めである場合、製品の偽造防止性能をさらに向上させることができる光学偽造防止素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明の実施例は、
第1微細構造を有する第1領域と、構造的パラメータが前記第1微細構造の構造的パラメータよりも大きい第2微細構造を有する第2領域とを含む起伏構造層を含み、
前記第1領域に第1メッキ層が設けられ、前記第2領域に第2メッキ層が設けられ、前記第1領域は前記第1微細構造と前記第1メッキ層を結合した光学特徴を有し、前記第2領域は前記第2微細構造と前記第2メッキ層を結合した光学特徴を有し、
反射観察する際、示される2つの画像領域(前記第1領域及び前記第2領域)は微細構造によって決定されるため、位置決めがゼロ誤差となる特徴を有する光学偽造防止素子を提供する。
【0008】
さらに、前記第1微細構造又は前記第2微細構造は、周期的構造及び非周期的構造のうちの1つの構造、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第1微細構造又は前記第2微細構造の延在方向に沿う断面構造は、平坦構造、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧状格子構造のうちの1つの構造、又は平坦構造、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧状格子構造のうちの少なくともいずれか2つの構造を組み合わせた構造であることができる。第1微細構造及び第2微細構造のサイズ及び横方向配置は、所要の光学効果に応じて決定される。
【0009】
さらに、前記第2微細構造の構造的二次パラメータは前記第1微細構造の構造的二次パラメータよりも大きく、前記構造的パラメータは深幅比及び比体積から選択される一方のパラメータであり、前記構造的二次パラメータは、前記構造的パラメータではない、前記深幅比及び前記比体積のうちの他方のパラメータであることができる。
【0010】
ここでの起伏構造の微細構造の深幅比とは、起伏構造の深さと周期(又は基準周期)方向に沿う幅との比であり、起伏構造の比体積とは、起伏構造層を水平状態にし、起伏構造の表面をちょうど完全に被覆すると想定される液体の体積と起伏構造の水平面での投影面積との比であり、この定義によれば、深幅比は無次元の物理量であり、比体積の次元はum3/um2であり、この定義によれば、平坦構造は、深幅比がゼロで、比体積がゼロの起伏構造となる。深幅比及び比体積は、数値上、直接的な関係のない2つの物理量であり、例えば、A構造は深さが1umで周期方向に沿う幅が1umの一次元鋸歯状格子である場合、その深幅比は1、比体積は0.5um3/um2であり、B構造は深さが2um、周期方向に沿う幅が4umの一次元鋸歯状格子である場合、その深幅比は0.5、比体積は1um3/um2であり、つまり、A構造の深幅比はB構造の深幅比よりも大きいが、B構造の比体積はA構造の比体積よりも大きく、第1微細構造と第2微細構造の深幅比及び比体積の差によって、ホロウ工程用の方法を直接決定する。
【0011】
さらに、前記構造的パラメータは、深幅比又は比体積を含むことができる。
【0012】
さらに、前記構造的パラメータは深幅比であり、前記第1微細構造の深幅比の範囲は0以上0.3未満であり、前記第2微細構造の深幅比の範囲は0.2よりも大きく0.5よりも小さいことができる。
【0013】
さらに、前記構造的パラメータは比体積であり、
前記第1微細構造の比体積の範囲は0um3/um2以上0.5um3/um2未満であり、
前記第2微細構造の比体積の範囲は0.4um3/um2よりも大きく2um3/um2よりも小さいことができる。
【0014】
さらに、前記第1メッキ層及び前記第2メッキ層はいずれも金属反射メッキ層であり、且つ異なる金属反射層(例えば、第1メッキ層はアルミニウム層、第2メッキ層は銅層)であるか、或いは、前記第1メッキ層及び前記第2メッキ層はいずれも多層干渉光学的変色メッキ層であり、且つ異なる多層干渉光学的変色メッキ層(例えば、第1メッキ層はマゼンタ-緑干渉光学的変色メッキ層、第2メッキ層は緑-青干渉光学的変色メッキ層)であるか、或いは、前記第1メッキ層は金属反射メッキ層、前記第2メッキ層は多層干渉光学的変色メッキ層であり、又は前記第1メッキ層は多層干渉光学的変色メッキ層、前記第2メッキ層は金属反射メッキ層であることができる。
【0015】
好ましくは、前記第1メッキ層及び前記第2メッキ層のうち、一方は金属反射メッキ層であり、他方は多層干渉光学的変色メッキ層である。特に、第1メッキ層及び第2メッキ層のサブメッキ層は異なる領域を被覆する同一メッキ層の異なる部分によって実現されてもよく、即ち、金属反射メッキ層の部分領域は多層干渉光学的変色メッキ層に属するサブメッキ層であってもよい。
【0016】
さらに、前記金属反射メッキ層の材料は、アルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの1つの金属、又はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの少なくともいずれか2つの金属を組み合わせた合金を含むことができる。
【0017】
好ましくは、前記金属反射メッキ層の材料はアルミニウムである。
【0018】
さらに、前記多層干渉光学的変色メッキ層は反射層、誘電体層、及び吸収層を含み、
前記反射層の材料はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの1つの金属、又はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、及びチタンのうちの少なくともいずれか2つの金属を組み合わせた合金を含み、
前記誘電体層の材料はフッ化マグネシウム(MgF2)、二酸化ケイ素(SiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、窒化チタン(TiN)、二酸化チタン(TiO2)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti2O3)、五酸化三チタン(Ti3O5)、五酸化二タンタル(Ta2O5)、五酸化二ニオブ(Nb2O5)、二酸化セリウム(CeO2)、三酸化二ビスマス(Bi2O3)、三酸化二クロム(Cr2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、二酸化ハフニウム(HfO2)又は酸化亜鉛(ZnO)を含み、
前記吸収層の材料は、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの1つの金属、又はニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、及びチタンのうちの少なくともいずれか2つの金属を組み合わせた合金を含むことができる。
【0019】
好ましくは、前記反射層の材料はアルミニウムであり、前記吸収層の材料はニッケル又はクロム、又はニッケルクロム合金である。
【0020】
さらに、前記起伏構造層は第3微細構造を有する第3領域をさらに含み、前記第3微細構造の構造的パラメータは前記第2微細構造の構造的パラメータよりも大きく、前記第3領域は前記第1メッキ層又は前記第2メッキ層を有さず、
透過観察する際、前記第3領域は前記第1領域及び前記第2領域に対してホロウ特徴を有することができる。このように、透過観察する際、光学偽造防止素子の第3領域はホロウ特徴を有し、つまり、ホロウ領域と2種のメッキ層によって形成される画像領域もゼロ誤差の位置決めであるため、より優れた偽造防止特徴を有する。
【0021】
さらに、前記第3微細構造は、周期的構造及び非周期的構造のうちの1つの構造、又は周期的構造と非周期的構造を組み合わせた構造であり、
前記第3微細構造の延在方向に沿う断面は、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、及びブレーズド格子構造のうちの1つの構造、又は正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、及びブレーズド格子構造のうちの少なくともいずれか2つの構造を組み合わせた構造であることができる。第3微細構造の作用は一般にはホロウのみであり、別の光学効果を提供しないため、簡素化可能であり、例えば、一次元配置され、横断面が二等辺三角形で、深幅比又は比体積が大きいブレーズド格子である。
【0022】
さらに、前記構造的パラメータは深幅比であり、前記第3微細構造の深幅比の範囲は0.3よりも大きく1よりも小さいことができる。
【0023】
さらに、前記構造的パラメータは比体積であり、前記第3微細構造の比体積の範囲は1um3/um2よりも大きく3um3/um2よりも小さいことができる。
【0024】
さらに、前記第1メッキ層及び前記第2メッキ層のうちの一方は多層干渉光学的変色メッキ層であり、前記多層干渉光学的変色メッキ層は反射層、誘電体層、及び吸収層を含むことができる。
【0025】
さらに、前記第3領域は反射層、誘電体層又は吸収層のうちのいずれかを有しないことができる。このとき、第3領域は完全に透明又はほぼ完全に透明である。
【0026】
さらに、前記第3領域は吸収層及び誘電体層を有し、反射層を有しないことができる。このとき、第3領域は半透明である。
【0027】
本発明の実施例は、
第1微細構造を有する第1領域と、構造的パラメータが前記第1微細構造の構造的パラメータよりも大きい特徴を有する第2微細構造を有する第2領域とを有する起伏構造層を形成するステップS1と、
第1メッキ層を得るためのメッキ層を形成するステップS2と、
第1保護層を形成するステップS3と、
前記第2領域にステップS2で形成されたメッキ層の一部又は全部が除去されるまで、ステップS3の半製品をステップS2で形成されたメッキ層と反応可能な雰囲気に放置し、反応が停止すると、前記第1メッキ層を得るステップであって、前記第1メッキ層と前記第1微細構造は前記第1領域で結合した光学特徴を示すステップS4と、
第2メッキ層を得るためのメッキ層を形成するステップS5と、を含む、
光学偽造防止素子の製造方法を提供する。
【0028】
具体的には、ステップS1において、前記起伏構造層は、第3微細構造を有する第3領域をさらに有し、前記第3微細構造の構造的パラメータが前記第2微細構造の構造的パラメータよりも大きい特徴を有する。
【0029】
具体的には、ステップS1において、前記第2微細構造は前記第2微細構造の構造的二次パラメータが前記第1微細構造の構造的二次パラメータよりも大きい特徴を有し、
前記構造的パラメータは深幅比及び比体積から選択される一方のパラメータであり、
前記構造的二次パラメータは、前記構造的パラメータではない、前記深幅比及び前記比体積のうちの他方のパラメータである。
【0030】
具体的には、ステップS1において、
前記構造的パラメータは、深幅比又は比体積を含むことをさらに含む。
【0031】
深幅比の差による特定の微細構造上のメッキ層の高精度除去を実現する場合、メッキ層上に気相成長プロセスを採用して保護層を形成する必要がある。例えば、第1微細構造の深幅比が第2微細構造の深幅比よりも小さい場合、保護層を気相成長した後、第2微細構造上の保護層は第1微細構造上の保護層よりも緻密性が小さい、又は多くのクラックがあるため、保護性がさらに低い。このように、腐食雰囲気において、所定時間後、第2微細構造上のメッキ層は除去されるが、第1微細構造上のメッキ層は腐食されていない、又はほぼ腐食されていないことによって、第1微細構造上に高精度に位置するメッキ層を得て、換言すれば、保護層気相成長プロセスを採用することで、深幅比が小さい微細構造上に高精度に位置するメッキ層を得ることができる。
【0032】
比体積の差による特定の微細構造上のメッキ層の高精度除去を実現する場合、塗布プロセスを用いてメッキ層上に保護層を形成する必要がある。例えば、第1微細構造の比体積が第2微細構造の比体積よりも小さい場合、特定量の液体保護接着剤を塗布しレベリングして乾燥させた後、保護層の第2微細構造での最小厚さは第1微細構造での最小厚さ(一般には、微細構造の最上部)よりも小さいため、保護接着剤の第2微細構造での保護性は低いが、第1微細構造での保護性は高い。このように、腐食雰囲気において、所定時間後、第2微細構造上のメッキ層は除去されるが、第1微細構造上のメッキ層は腐食されていない、又はほぼ腐食されていないことによって、第1微細構造上に高精度に位置するメッキ層を得て、換言すれば、保護層塗布プロセスを採用することで、比体積が小さい微細構造上に高精度に位置するメッキ層を得ることができる。
【0033】
明らかなように、第1微細構造の深幅比が第2微細構造の深幅比よりも小さく、第1微細構造の比体積が第2微細構造の比体積よりも小さい場合、保護層気相成長プロセスも保護層塗布プロセスも第1微細構造上に高精度に位置するメッキ層を得ることができる。
【0034】
具体的には、該製造方法は、
第2保護層を形成するステップS6と、
前記第3領域にステップS5で形成されたメッキ層の一部又は全部が除去されるまで、ステップS6の製品をステップS5で形成されたメッキ層と反応可能な雰囲気に放置し、反応が停止すると、前記第2メッキ層を得て、前記第2メッキ層と前記第2微細構造は前記第2領域で結合した光学特徴を示し、且つ透過観察する際、前記第3領域は前記第1領域及び前記第2領域に対してホロウ特徴を有するステップS7と、をさらに含む。
【0035】
具体的には、ステップS2で第1メッキ層を得るためのメッキ層及び/又はステップS5で第2メッキ層を得るためのメッキ層はアルミニウム層を有し、ステップS2でのメッキ層と反応可能な雰囲気及び/又はステップS5でのメッキ層と反応可能な雰囲気として、酸性溶液を選択し、又はステップS2でのメッキ層と反応可能な雰囲気及び/又はステップS5でのメッキ層と反応可能な雰囲気としてアルカリ性溶液を選択する。
【0036】
具体的には、該製造方法は、無機又は有機メッキ層、或いは、無機又は有機塗布層工程を施して、付加的な光学偽造防止機能又は補助機能を実現するステップをさらに含む。
【0037】
本発明の実施例のほかの特徴及び利点について、後述する具体的な実施形態で詳細に説明する。
【0038】
添付の図面は、本発明の実施例をさらに理解させるためのものであり、明細書の一部として組み込まれており、以下の具体的な実施形態とともに本発明の実施例を説明するが、本発明の実施例を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の上面構造模式図である。
【
図2】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の断面構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の細部の断面構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の上面構造模式図である。
【
図5】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の断面構造模式図である。
【
図6】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の細部の断面構造模式図である。
【
図7】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の第3領域に誘電体層及び吸収層を有する場合の細部の断面構造模式図である。
【
図8】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の起伏構造層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図9】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の第1メッキ層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図10】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子に第1保護層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図11】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の腐食雰囲気で反応した後の断面構造模式図である。
【
図12】本発明の実施例における第1種類の例示的な光学偽造防止素子の第2メッキ層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図13】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の起伏構造層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図14】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の第1メッキ層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図15】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の第1保護層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図16】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の1回目の腐食雰囲気で反応した後の断面構造模式図である。
【
図17】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の第2メッキ層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図18】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の第2保護層を形成した後の断面構造模式図である。
【
図19】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の2回目の第1種類の腐食雰囲気で反応した後の断面構造模式図である。
【
図20】本発明の実施例における第2種類の例示的な光学偽造防止素子の2回目の第2種類の腐食雰囲気で反応した後の断面構造模式図である。
【符号の説明】
【0040】
1…基材 2…起伏構造層
3…第1メッキ層 4…第1保護層
5…第2メッキ層 51…吸収層
52…誘電体層 53…反射層
6…第2保護層 7…他の機能塗布層
A…第1領域 B…第2領域
C…第3領域
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施形態は、単に本発明の実施例を説明及び解釈するものであり、本発明の実施例を限定しない。
【0042】
(実施例1)
【0043】
図1に示すように、該光学偽造防止素子は第1領域A及び第2領域Bを含み、第1領域Aは第1光学微細構造と第1メッキ層を結合した光学特徴を有し、第2領域Bは第2光学微細構造と第2メッキ層を結合した光学特徴を有する。2つの領域は互いに厳密に位置決めされる。画像の線は非常に細い場合が多く、例えば、50umよりも小さい。前記第1メッキ層、第2メッキ層はいずれも金属反射メッキ層、及び多層干渉光学的変色メッキ層から選択されることができる。
【0044】
図2は
図1に示す例示的な光学偽造防止素子のX-Xに沿う実施可能な断面図であり、光学偽造防止素子は基材1、起伏構造層2、第1メッキ層3、第1保護層4、第2メッキ層5、及び他の機能塗布層7を含む。基材1及び起伏構造層2は、一般的には透明材料からなる。前記起伏構造層2は、第1微細構造から構成される第1領域A、及び第2微細構造から構成される第2領域Bを含み、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きい。第1領域A上に第1メッキ層3が設けられ、第2領域B上に第2メッキ層5が設けられている。偽造防止素子の側(基材側、下方とする)から見ると、第1領域Aは外部に第1微細構造と第1メッキ層3を結合した光学特徴を示し、第2領域Bは外部に第2微細構造と第2メッキ層5を結合した光学特徴を示す。第1メッキ層3に第1保護層4が隣接する。第1保護層は製造中の自然な生成物として、一般には付加的な光学効果を提供しない。特に、第1メッキ層3、第1保護層4、第2メッキ層5は1つの機能メッキ層群(典型的には、多層干渉光学的変色メッキ層であることができる)を構成でき、この場合、第1領域Aは外部に機能メッキ層群と第1微細構造を結合した光学特徴を示す。このとき、機能メッキ層群の第1領域Aに属する部分は外部に光学効果を示す「第1メッキ層」である。他の機能塗布層7は必要に応じて設定でき、例えば、保護される主製品と接着される接着層が挙げられる。
【0045】
図3は
図1に示す例示的な光学偽造防止素子のX-Xに沿う別の実施可能な断面図であり、
図2のより具体的な状況であり、即ち、第1メッキ層3は単一の金属メッキ層(例えば、アルミニウム層)、第2メッキ層5は多層干渉光学的変色メッキ層である。典型的には、光学的変色メッキ層は、反射層53、誘電体層52、及び吸収層51から構成される。光学的変色メッキ層の吸収層側から見ると、第1領域Aは単一の金属メッキ層自体の特徴(例えば、アルミニウム層の銀色特徴)を示し、第2領域Bは傾斜角度に依存する色変化特徴を示す。
【0046】
図4に示すように、該光学偽造防止素子は第1領域A、第2領域B及び第3領域Cを含み、第1領域Aは第1光学微細構造と第1メッキ層を結合した光学特徴を有し、第2領域Bは第2光学微細構造と第2メッキ層を結合した光学特徴を有し、透視観察する際、第3領域Cはホロウ特徴(空洞となる部分)を有する。3つの領域は互いに厳密に位置決めされ、例えば、
図4に示すホロウ領域Cは厳密に第2領域Bの境界に位置する。画像又はホロウの線は非常に細い場合が多く、例えば、50umよりも小さい。前記第1メッキ層、第2メッキ層は、いずれも金属反射メッキ層、多層干渉光学的変色メッキ層から選択されることができる。第3領域Cはメッキ層が残留せず、完全に又はほぼ完全に透明(例えば、光透過率が90%よりも大きい)なものとしてもよく、一部のメッキ層が残留し、半透明(例えば、光透過率が50%よりも小さい)なものとしてもよい。
【0047】
図5は
図4に示す例示的な光学偽造防止素子のX-Xに沿う実施可能な断面図であり、光学偽造防止素子は、基材1、起伏構造層2、第1メッキ層3、第1保護層4、第2メッキ層5、第2保護層6、及び他の機能塗布層7を含む。基材1及び起伏構造層2は、一般的には透明材料からなる。前記起伏構造層2は、第1微細構造から構成される第1領域A、第2微細構造から構成される第2領域B、及び第3微細構造から構成される第3領域Cを含み、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きく、また、前記第3微細構造の深幅比は前記第2微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第3微細構造の比体積は前記第2微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第3微細構造の深幅比は前記第2微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第3微細構造の比体積は前記第2微細構造の比体積よりも大きい。第1領域A上に第1メッキ層3が設けられ、第2領域B上に第2メッキ層5が設けられ、第3領域Cには第1メッキ層又は第2メッキ層が設けられていない。偽造防止素子の側(即ち、下方)から見ると、第1領域Aは外部に第1微細構造と第1メッキ層3を結合した光学特徴を示し、第2領域Bは外部に第2微細構造と第2メッキ層5を結合した光学特徴を示す。第1メッキ層3に第1保護層4が隣接し、第2メッキ層5に第2保護層6が隣接する。2つの保護層は、いずれも製造中の自然な生成物として、一般には付加的な光学効果を提供しない。透過観察する際、第3領域Cは完全に又はほぼ完全に透明なものとするが、一部のメッキ層又はサブメッキ層が残留し、半透明なものとしてもよい。特に、第1メッキ層3、第1保護層4、第2メッキ層5は、1つの機能メッキ層群(典型的には、多層干渉光学的変色メッキ層であることができる)を構成でき、この場合、第1領域Aは外部に機能メッキ層群と第1微細構造を結合した光学特徴を示す。このとき、機能メッキ層群の第1領域Aに属する部分は外部に光学効果を示す「第1メッキ層」である。他の機能塗布層7は必要に応じて設定でき、例えば、保護される主製品と接着される接着層が挙げられる。
【0048】
図6及び
図7は
図1に示す例示的な光学偽造防止素子のX-Xに沿う別の2つの実施可能な断面図であり、
図5のより具体的な状況であり、即ち、第1メッキ層3は単一の金属メッキ層(例えば、アルミニウム層)、第2メッキ層5は多層干渉光学的変色メッキ層である。典型的には、光学的変色メッキ層は、反射層53、誘電体層52、及び吸収層51から構成される。光学的変色メッキ層の吸収層側から見ると、第1領域Aは単一の金属メッキ層自体の特徴(例えば、アルミニウム層の銀色特徴)を示し、第2領域Bは傾斜角度に依存する色変化特徴を示す。
図6に示すように、第3領域Cにアルミニウム層又は光学的変色メッキ層のうちのいずれかのメッキ層又はサブメッキ層が存在しない場合、透視観察すると、第3領域Cは完全に透明又はほぼ完全に透明である特徴を示す。
図7に示すように、第3領域Cに光学的変色メッキ層におけるサブメッキ層(通常、吸収層51及び誘電体層52)が保留されている場合、透視観察すると、第3領域Cは半透明である特徴を示す。
【0049】
以下、
図8~
図12を参照しながら本発明の
図1に示す光学偽造防止素子の製造方法を説明し、該方法はステップS1~S5を含む。説明の便宜上、第1メッキ層は単一の金属メッキ層とし、第2メッキ層は多層干渉光学的変色メッキ層とし、即ち、断面構造図は
図3に示される光学偽造防止素子である。
【0050】
S1において、基材1の表面に起伏構造層2を形成し、前記起伏構造層2は第1微細構造を有する第1領域A、及び第2微細構造を有する第2領域Bを少なくとも含み、同じ次元で比較したところ、前記第2微細構造の深幅比又は比体積は第1微細構造の深幅比又は比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比及び比体積の各々は、ともに前記第1微細構造の深幅比及び比体積の各々よりも大きく、即ち、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きい。
図8に示す通りである。
【0051】
基材1は少なくとも一部が透明であってもよく、色付きの誘電体層であってもよく、表面に機能塗布層を有する透明誘電体薄膜であってもよく、複合した多層膜であってもよい。基材1は一般には、物理的及び化学的耐性に優れ且つ機械的強度の高い薄膜材料で形成され、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、ポリエチレンナフタレート(PEN)薄膜及びポリプロピレン(PP)薄膜等のプラスチック薄膜を利用して基材1を形成してもよく、基材1は、好ましくはPET材料で形成される。基材1と起伏構造層2との接着を強化するように、基材1上に接着強化層を含んでもよい。最終製品での基材1と起伏構造層2との分離を実現するように、基材1上に剥離層を含んでもよい。
【0052】
起伏構造層2は紫外線鋳造、圧縮成形、ナノインプリント等の加工によってバッチ複製して形成されてもよい。例えば、起伏構造層2は熱可塑性樹脂で圧縮成形プロセスによって形成されてもよく、即ち、基材1上に予め塗布された熱可塑性樹脂が高温の金属ダイプレートを通過する時、加熱されて軟化して変形することで、特定の起伏構造を形成し、その後、冷却成形する。起伏構造層2は放射線硬化鋳造プロセスを用いて形成されてもよく、即ち、放射線硬化性樹脂を基材1に塗布し、型板をそれに押し当てながら紫外線又は電子ビーム等の放射線を照射し、上記材料を硬化させた後、型板を取り外して起伏構造層2を形成する。
【0053】
後続のホロウの要求を満たすために、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きい。後続では気相成長プロセスを用いて保護層を形成する場合、好ましくは、前記第1微細構造の深幅比は0以上0.3未満であり、第2微細構造の深幅比は0.2よりも大きく0.5よりも小さい。後続では塗布プロセスを用いて保護層を形成する場合、好ましくは、前記第1微細構造の比体積は0um3/um2以上0.5um3/um2未満であり、第2微細構造の比体積は0.4um3/um2よりも大きく2um3/um2よりも小さい。
【0054】
前記第1微細構造及び第2微細構造は、いずれも周期的構造又は非周期的構造のうちの1つ又は組み合わせであってもよく、その構造は、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧状格子構造のうちの1つ又は組み合わせである。第1微細構造及び第2微細構造のサイズ及び横方向配置は所要の光学効果に応じて決定できる。第1微細構造は平坦構造とすることができる。
【0055】
S2において、
図9に示すように、起伏構造層2上に第1メッキ層3を得るためのメッキ層を形成する。
【0056】
本実施例では、第1メッキ層3は単一の金属反射メッキ層とする。金属反射メッキ層は、微細構造による光学効果の輝度を向上させるように機能する。金属反射メッキ層の材料はAl、Cu、Ni、Cr、Ag、Fe、Sn、Au、Pt等の金属又はその混合物又は合金であってもよく、アルミニウムは、コストが低く、輝度が高く、酸性溶液やアルカリ性溶液と反応して除去されやすいため、好ましい。金属反射メッキ層の厚さは一般には、10nmよりも大きく80nmよりも小さく、好ましくは20nmよりも大きく50nmよりも小さい。金属反射メッキ層は、薄すぎると、輝度が十分ではないし、厚すぎると、起伏構造層との堅牢性が悪く、コストが高くなる。
【0057】
第1メッキ層3は一般には、物理及び/又は化学気相成長方法によって起伏構造層2に形成されてもよく、例えば、熱蒸着、マグネトロンスパッタリング、及びMOCVD等を含むが、これらに限定されない。好ましくは、第1メッキ層3は均一な表面密度で、同型被覆の態様によって起伏構造層2に形成される。
【0058】
S3において、
図10に示すように、第1保護層4を形成する。
【0059】
第1微細構造の深幅比が第2微細構造の深幅比よりも小さい場合、気相成長プロセスを用いて第1保護層4を形成できる。第1微細構造の比体積が第2微細構造の比体積よりも小さい場合、塗布プロセスを用いて第1保護層4を形成できる。第1微細構造の深幅比が第2微細構造の深幅比よりも小さく、且つ第1微細構造の比体積が第2微細構造の比体積よりも小さい場合、気相成長プロセスを用いて第1保護層4を形成してもよく、塗布プロセスを用いて第1保護層4を形成してもよい。
【0060】
気相成長プロセスを用いて第1保護層4を形成する場合、第1保護層の材料は気相成長プロセスに適用できる無機物又は有機物から選択されてもよく、例えば、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、Ni、Cu、Au、Ag、TiO2、MgO、SiO2及びAl2O3、及びアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の重合性有機化合物が挙げられる。特に、有機化合物を開始剤と混合して使用し、気相成長後、放射線硬化させることで重合して有機化合物を形成するようにしてもよい。気相成長後、保護層の表面形態は第1メッキ層の形態と同型又はほぼ同型となる。気相成長によって形成される保護層の量は、第1領域の第1メッキ層に対する十分な保護性を確保できるように設定されるべきである。一般には、気相成長によって形成される保護層の厚さは(平坦領域に対して)20nmよりも大きい。
【0061】
塗布プロセスを用いて第1保護層4を形成する場合、保護層の塗布量は、第1保護層4の第1微細構造での最小厚さが第2微細構造での最小厚さよりも遥かに大きいことを満たすべきである。保護層の微細構造での最小厚さは一般には、微細構造の最上部にある。このように、第1保護層は、第1領域の第1メッキ層に対する保護作用が、第2領域の第1メッキ層に対する保護作用よりも遥かに高い。一般には、保護層の単位面積あたりの塗布量は0.1g/m2よりも大きく0.6g/m2よりも小さい必要がある。保護層の塗布前の粘度が小さいほど、レベリングに有利であるため、保護接着剤液の粘度は一般には、100cPよりも小さい必要があり、好ましくは、50cPよりも小さい。保護層の成分について、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂又はその組み合わせを主樹脂とするワニス又はインクであってもよい。
【0062】
S4において、
図11に示すように、第2領域Bに位置する第1メッキ層3の一部又は全部が除去されるまで、ステップS3で得た多層構造体を第1メッキ層3と反応可能な雰囲気に放置する。
【0063】
上記したように、第1保護層4は、第1領域の第1メッキ層に対する保護作用が、第2領域の第1メッキ層に対する保護作用よりも遥かに高い。従って、所定時間内に、腐食雰囲気は第2領域の保護層の脆弱点から第1メッキ層に到達して腐食し、この期間内に、第1保護層は第1領域の第1メッキ層に対して効果的な保護を形成する。このように、第1領域に高精度に位置する第1メッキ層を得る。第1メッキ層がアルミニウム又はアルミニウム含有のメッキ層である場合、腐食雰囲気は酸性溶液又はアルカリ性溶液であってもよい。通常、第2領域での第1メッキ層が腐食された後、メッキ層上の第1保護層もリフトオフされる。場合によっては、第2領域上の第1メッキ層が腐食されると、メッキ層上の第1保護層は部分的にひいては完全に起伏構造層に残留する可能性があるが、後続の工程の実施に支障をもたらすことはない。
【0064】
S5において、
図12に示すように、第2メッキ層5を得るためのメッキ層を形成する。
【0065】
本実施例では、第2メッキ層5は多層干渉光学的変色メッキ層とする。多層干渉光学的変色メッキ層5は一般には、吸収層51、誘電体層52、及び反射層53からなる。吸収層側から見ると、多層干渉光学的変色メッキ層は異なる角度から異なる色特徴を示すため、多層干渉光学的変色メッキ層の形成順は一般には、吸収層51、誘電体層52、反射層53である。反射層は一般には、厚い金属材料であり、反射性が高く、透視観察すると、不透明又はほぼ不透明である特徴を示し、誘電体層は一般には、完全に透明又はほぼ完全に透明な化合物材料であり、吸収層は一般には、薄い金属材料であり、光を透過すると半透明である特徴を示す。前記反射層53はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、チタン又はこれらの合金からなってもよく、アルミニウムは、コストが低く酸性溶液又はアルカリ性溶液により除去されやすいため、好ましい。前記誘電体層52はMgF2、SiO2、ZnS、TiN、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti3O5、Ta2O5、Nb2O5、CeO2、Bi2O3、Cr2O3、Fe2O3、HfO2又はZnOからなってもよく、前記吸収層53はニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、チタン又はこれらの合金からなってもよく、好ましくはニッケル、クロムである。反射層53の厚さは一般には、10nm~80nmであり、好ましくは、20nm~50nmである。吸収層51の厚さは一般には、3~10nmである。誘電体層52の厚さは所要の光学的変色特徴に応じて決定され、一般には200~600nmである。
【0066】
上記のようにして、第1領域が第1メッキ層の光学特徴を示すとともに、第2領域が第2メッキ層の光学特徴を示す光学偽造防止素子の半製品を得る。
図3に示す光学偽造防止素子の製造方法は、一般には、ステップS5の後、他の機能塗布層7を塗布するステップをさらに含み、例えば、光学メッキ層を保護するように機能する劣化防止接着剤、及び/又は、ほかの基材と接着するように機能するホットメルト接着剤が挙げられる。
【0067】
以下、
図13~
図20を参照しながら本発明の
図4に示す光学偽造防止素子の製造方法を説明し、該方法はステップS1’~S7’を含む。説明の便宜上、第1メッキ層は単一の金属メッキ層とし、第2メッキ層は多層干渉光学的変色メッキ層とし、即ち、断面構造図は
図6及び
図7に示される光学偽造防止素子である。
【0068】
S1’において、
図13に示すように、基材1の表面に起伏構造層2を形成し、前記起伏構造層2は第1微細構造から構成される第1領域A、第2微細構造から構成される第2領域B、及び第3微細構造から構成される第3領域Cを少なくとも含み、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きく、また、前記第3微細構造の深幅比は前記第2微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第3微細構造の比体積は前記第2微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第3微細構造の深幅比は前記第2微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第3微細構造の比体積は前記第2微細構造の比体積よりも大きい。
【0069】
基材1は少なくとも一部が透明であってもよく、色付きの誘電体層であってもよく、表面に機能塗布層を有する透明誘電体薄膜であってもよく、複合した多層膜であってもよい。基材1は一般には、物理的及び化学的耐性に優れ且つ機械的強度の高い薄膜材料で形成され、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、ポリエチレンナフタレート(PEN)薄膜及びポリプロピレン(PP)薄膜等のプラスチック薄膜を利用して基材1を形成してもよく、基材1は、好ましくはPET材料で形成される。基材1と起伏構造層2との接着を強化するように、基材1上に接着強化層を含んでもよい。最終製品での基材1と起伏構造層2との分離を実現するように、基材1上に剥離層を含んでもよい。
【0070】
起伏構造層2は紫外線鋳造、圧縮成形、ナノインプリント等の加工によってバッチ複製して形成されてもよい。例えば、起伏構造層2は熱可塑性樹脂で圧縮成形プロセスによって形成されてもよく、即ち、基材1上に予め塗布された熱可塑性樹脂が高温の金属ダイプレートを通過する時、加熱されて軟化して変形することで、特定の起伏構造を形成し、その後、冷却成形する。起伏構造層2は放射線硬化鋳造プロセスを用いて形成されてもよく、即ち、放射線硬化性樹脂を基材1に塗布し、型板をそれに押し当てながら紫外線又は電子ビーム等の放射線を照射し、上記材料を硬化させた後、型板を取り外して起伏構造層2を形成する。
【0071】
後続のホロウの要求を満たすために、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第2微細構造の深幅比は前記第1微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第2微細構造の比体積は前記第1微細構造の比体積よりも大きく、また、前記第3微細構造の深幅比は前記第2微細構造の深幅比よりも大きいか、或いは、前記第3微細構造の比体積は前記第2微細構造の比体積よりも大きいか、或いは、前記第3微細構造の深幅比は前記第2微細構造の深幅比よりも大きく、且つ前記第3微細構造の比体積は前記第2微細構造の比体積よりも大きい。後続では気相成長プロセスを用いて保護層を形成する場合、好ましくは、前記第1微細構造の深幅比は0以上0.3未満であり、第2微細構造の深幅比は0.2よりも大きく0.5よりも小さく、前記第3微細構造の比体積は0.3よりも大きく1よりも小さい。後続では塗布プロセスを用いて保護層を形成する場合、好ましくは、前記第1微細構造の比体積は0um3/um2以上0.5um3/um2未満であり、第2微細構造の比体積は0.4um3/um2よりも大きく2um3/um2よりも小さく、前記第3微細構造の比体積は1um3/um2よりも大きく3um3/um2よりも小さい。
【0072】
前記第1微細構造、第2微細構造、及び第3微細構造は、いずれも周期的構造又は非周期的構造のうちの1つ又は組み合わせであってもよく、その構造は、正弦型構造、矩形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧状格子構造のうちの1つ又は組み合わせである。第1微細構造及び第2微細構造のサイズ及び横方向配置は所要の光学効果に応じて決定される。第1微細構造は平坦構造とすることができる。第3微細構造の作用はホロウのみであり、一般には別の光学効果を提供しないため、簡素化可能であり、例えば、一次元配置され、断面が10umの幅、5umの高さの二等辺三角形(即ち、深幅比が0.5、比体積が2.5um3/um2)のブレーズド格子である。
【0073】
S2’において、
図14に示すように、起伏構造層2上に第1メッキ層3を得るためのメッキ層を形成する。
【0074】
本実施例では、第1メッキ層3は単一の金属反射メッキ層とする。金属反射メッキ層は、微細構造による光学効果の輝度を向上させるように機能する。金属反射メッキ層の材料はAl、Cu、Ni、Cr、Ag、Fe、Sn、Au、Pt等の金属又はその混合物又は合金であってもよく、アルミニウムは、コストが低く、輝度が高く、酸性溶液やアルカリ性溶液と反応して除去されやすいため、好ましい。金属反射メッキ層の厚さは一般には、10nmよりも大きく80nmよりも小さく、好ましくは20nmよりも大きく50nmよりも小さい。金属反射メッキ層は、薄すぎると、輝度が十分ではないし、厚すぎると、起伏構造層との堅牢性が悪く、コストが高くなる。第1メッキ層3又はそのサブメッキ層は、物理及び/又は化学気相成長方法によって起伏構造層2に形成されてもよく、例えば、熱蒸着、マグネトロンスパッタリング、及びMOCVD等を含むが、これらに限定されない。好ましくは、第1メッキ層3は均一な表面密度で同型被覆の態様によって起伏構造層2に形成される。
【0075】
S3’において、
図15に示すように、第1保護層4を形成する。
【0076】
第1微細構造の深幅比が第2微細構造及び第3微細構造の深幅比よりも小さい場合、気相成長プロセスを用いて第1保護層4を形成できる。第1微細構造の比体積が第2微細構造及び第3微細構造の比体積よりも小さい場合、塗布プロセスを用いて第1保護層4を形成できる。第1微細構造の深幅比が第2微細構造及び第3微細構造の深幅比よりも小さく、且つ第1微細構造の比体積が第2微細構造及び第3微細構造の比体積よりも小さい場合、気相成長プロセスを用いて第1保護層4を形成してもよく、塗布プロセスを用いて第1保護層4を形成してもよい。
【0077】
気相成長プロセスを用いて第1保護層4を形成する場合、第1保護層の材料は気相成長プロセスに適用できる無機物又は有機物から選択されてもよく、例えば、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、Ni、Cu、Au、Ag、TiO2、MgO、SiO2及びAl2O3、及びアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の重合性有機化合物が挙げられる。特に、有機化合物を開始剤と混合して使用し、気相成長後、放射線硬化させることで重合して有機化合物を形成するようにしてもよい。気相成長後、保護層の表面形態は第1メッキ層の形態と同型又はほぼ同型となる。気相成長によって形成される保護層の量は、第1領域の第1メッキ層に対する十分な保護性を確保できるように設定されるべきである。一般には、気相成長によって形成される保護層の厚さは(平坦領域に対して)20nmよりも大きい。
【0078】
塗布プロセスを用いて第1保護層4を形成する場合、保護層の塗布量は、第1保護層4の第1微細構造での最小厚さが第2微細構造及び第3微細構造での最小厚さよりも遥かに大きいことを満たすべきである。保護層の微細構造での最小厚さは一般には、微細構造の最上部にある。このように、第1保護層は、第1領域の第1メッキ層に対する保護作用が、第2領域及び第3領域の第1メッキ層に対する保護作用よりも遥かに高い。一般には、保護層の単位面積あたりの塗布量は0.1g/m2よりも大きく0.6g/m2よりも小さい必要がある。保護層の塗布前の粘度が小さいほど、レベリングに有利であるため、保護接着剤液の粘度は一般には、100cPよりも小さい必要があり、好ましくは、50cPよりも小さい。保護層の成分について、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂又はその組み合わせを主樹脂とするワニス又はインクであってもよい。
【0079】
S4’において、
図16に示すように、第2領域B及び第3領域Cに位置する第1メッキ層3の一部又は全部が除去されるまで、ステップS3’で得た多層構造体を第1メッキ層3と反応可能な雰囲気に放置する。上記したように、第1保護層4は、第1領域の第1メッキ層に対する保護作用が、第2領域及び第3領域の第1メッキ層に対する保護作用よりも遥かに高い。従って、所定時間内に、腐食雰囲気が第2領域及び第3領域の保護層の脆弱点から第1メッキ層に到達して腐食し、この期間内に、第1保護層は第1領域の第1メッキ層に対して効果的な保護を形成する。このように、第1領域に高精度に位置する第1メッキ層を得る。第1メッキ層がアルミニウム又はアルミニウム含有のメッキ層である場合、腐食雰囲気は酸性溶液又はアルカリ性溶液であってもよい。通常、第2領域及び第3領域での第1メッキ層が腐食されると、メッキ層上の第1保護層もリフトオフされる。場合によっては、第2領域及び第3領域での第1メッキ層が腐食されると、メッキ層上の第1保護層は部分的にひいては完全に起伏構造層に残留する可能性があるが、後続の工程の実施に支障をもたらすことはない。
【0080】
S5’において、
図17に示すように、第2メッキ層5を得るためのメッキ層を形成する。
【0081】
本実施例では、第2メッキ層5は多層干渉光学的変色メッキ層とする。多層干渉光学的変色メッキ層5は一般には、吸収層51、誘電体層52、及び反射層53からなる。吸収層側から見ると、多層干渉光学的変色メッキ層は異なる角度から異なる色特徴を示すため、多層干渉光学的変色メッキ層の形成順は一般には、吸収層51、誘電体層52、反射層53である。反射層は一般には、厚い金属材料であり、反射性が高く、光を透過すると不透明又はほぼ不透明である特徴を示し、誘電体層は一般には、完全に透明又はほぼ完全に透明な化合物材料であり、吸収層は一般には、薄い金属材料であり、光を透過すると半透明である特徴を示す。前記反射層53はアルミニウム、銀、銅、錫、クロム、ニッケル、チタン又はこれらの合金からなってもよく、アルミニウムは、コストが低く酸性溶液又はアルカリ性溶液により除去されやすいため、好ましい。前記誘電体層52はMgF2、SiO2、ZnS、TiN、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti3O5、Ta2O5、Nb2O5、CeO2、Bi2O3、Cr2O3、Fe2O3、HfO2又はZnOからなってもよく、前記吸収層53はニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、錫、チタン又はこれらの合金からなってもよく、好ましくは、ニッケル、クロムである。反射層53の厚さは一般には、10nm~80nmであり、好ましくは、20nm~50nmである。吸収層51の厚さは一般には、3~10nmである。誘電体層52の厚さは所要の色特徴に応じて決定され、一般には200~600nmである。
【0082】
S6’において、
図18に示すように、第2保護層6を形成する。
【0083】
第2微細構造の深幅比が第3微細構造の深幅比よりも小さい場合、気相成長プロセスを用いて第2保護層6を形成できる。第2微細構造の比体積が第3微細構造の比体積よりも小さい場合、塗布プロセスを用いて第2保護層6を形成できる。第2微細構造の深幅比が第3微細構造の深幅比よりも小さく、且つ第2微細構造の比体積が第3微細構造の比体積よりも小さい場合、気相成長プロセスを用いて第2保護層6を形成してもよく、塗布プロセスを用いて第2保護層6を形成してもよい。第1保護層6の形成量は、保護層が第2領域Bの第2メッキ層5に対して効果的な保護を形成するが、第3領域Cの第2メッキ層5に対して効果的な保護を形成しないように設定されるべきである。第2保護層6を形成する材料及びプロセス要件は第1保護層4を形成する材料及びプロセス要件と同様である。ここでは詳細な説明を省略する。
【0084】
S7’において、
図19及び
図20に示すように、第3領域Cに位置する第2メッキ層5の一部又は全部が除去されるまで、ステップS6’で得た多層構造体を第2メッキ層5と反応可能な雰囲気に放置する。
【0085】
上記したように、第2保護層6は、第2領域Bの第2メッキ層に対する保護作用が、第3領域Cの第2メッキ層に対する保護作用よりも遥かに高い。従って、所定時間内に、腐食雰囲気は第3領域の保護層の脆弱点から第2メッキ層に到達して腐食し、この期間内に、第2保護層6は第2領域の第2メッキ層に対して効果的な保護を形成する。このように、第2領域に高精度に位置する第2メッキ層を得る。通常、第1領域の第2メッキ層も保留されるが、最終製品では第1メッキ層による遮蔽のため光学効果を提供しない。第2メッキ層がアルミニウム含有のメッキ層である場合、腐食雰囲気は酸性溶液又はアルカリ性溶液であってもよい。通常、第3領域での第2メッキ層が腐食されると、メッキ層上の第2保護層もリフトオフされる。場合によっては、第3領域での第2メッキ層が腐食されると、メッキ層上の第2保護層は部分的にひいては完全に起伏構造層に残留する可能性があるが、後続の工程の実施に支障をもたらすことはない。
【0086】
本実施例では、第2メッキ層5は多層干渉光学的変色メッキ層とする。多層干渉光学的変色メッキ層5は吸収層51、誘電体層52、及び反射層53からなる。
【0087】
図19に示すように、吸収層51は腐食雰囲気と反応可能であり、例えば、反射層及び吸収層がいずれもアルミニウム層であり、腐食雰囲気が酸性溶液である場合、腐食雰囲気は誘電体層52の脆弱位置を通過して吸収層51と反応可能であり、第3領域Cに何のメッキ層の成分も残留せず、完全に又はほぼ完全に透明である特徴を示す。
図20に示すように、吸収層51は腐食雰囲気と反応せず、例えば、反射層53がアルミニウム層で、吸収層51がニッケル層で、腐食雰囲気が酸性溶液である場合、腐食雰囲気は反射層53のみと反応し、第3領域Cに吸収層及び誘電体層が残留し、半透明である特徴を示す。
【0088】
図6及び
図7に示す光学偽造防止素子の製造方法は、一般には、ステップS7’の後、他の機能塗布層7を塗布するステップさらに含み、例えば、光学メッキ層を保護するように機能する劣化防止接着剤、及び/又は、ほかの基材と接着するように機能するホットメルト接着剤が挙げられる。本発明に係る光学偽造防止素子の製造方法は、孔付き安全線、ラベル、ロゴ、太い安全線、透明窓、被覆膜等の製造に適する。前記孔付き安全線付き偽造防止紙は、紙幣、パスポート、有価証券等の様々な高セキュリティ製品の偽造防止に適用される。
【0089】
以上、図面を参照しながら本発明の実施例の実施可能な実施形態を詳細に説明したが、本発明の実施例は上記実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の実施例の技術思想の範囲内で、本発明の実施例の技術案に対して種々の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形はすべて本発明の実施例の保護範囲に属する。
【0090】
またなお、上記具体的な実施形態で説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意に適宜組み合わせることができる。不必要な重複を回避するために、本発明の実施例は種々の実現可能な組み合わせ方式を別途説明しない。
【0091】
当業者であれば、上記実施例の方法の全部又は一部のステップをプログラムによって関連ハードウェアに命令を出して完了させることができると理解でき、該プログラムは1つの記憶媒体に記憶されており、複数の命令を含み、シングルチップマイコン、チップ又はプロセッサ(processor)に本願の各実施例に記載の方法の全部又は一部のステップを実行させる。上記記憶媒体は、USBディスク、モバイルハードディスク、読み取り専用メモリ(ROM、Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)、磁気ディスク又は光ディスクなどのプログラムコードを記憶できる様々な媒体を含む。
【0092】
また、本発明の実施例の様々な実施形態は任意に組み合わせることができ、本発明の実施例の思想を逸脱しない限り、同様に本発明の実施例に開示されるものとみなすべきである。