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特許7376641ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/04 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
C08J11/04 ZAB
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022077016
(22)【出願日】2022-05-09
(65)【公開番号】P2023064036
(43)【公開日】2023-05-10
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】110139422
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】▲荘▼ 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ 崇智
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035022(JP,A)
【文献】特開2008-222570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00
B29B 17/00
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を提供すると共に、前記廃布地を布地チップに分割するステップと、
前記布地チップを、酸触媒を0.1重量%~1重量%含む酸触媒水溶液に浸漬して、160℃~170℃の温度で1時間~15時間の反応時間で水熱反応を行うことで、前記廃布地中のウール繊維を分解してポリエステル繊維から分離する処理を行うステップと、
処理後の前記廃布地を回収するステップと、
を含む、
ことを特徴とする、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項2】
前記酸触媒水溶液を用いて前記廃布地を処理するステップにおいて、前記酸触媒水溶液を前記布地チップと循環還流の方式で周期的に繰り返し接触させて、160℃~170℃の温度で1時間~5時間の反応時間で水熱反応を行うことで、その中のウール繊維を分解することを含み、前記酸触媒水溶液と布地チップとの接触頻度は1分間に3回から5回である、請求項に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項3】
前記酸触媒水溶液を用いて前記廃布地を処理するステップにおいて、前記酸触媒水溶液に対する前記廃布地の固液比が1:5~1:100である、請求項1に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項4】
前記酸触媒水溶液を用いて前記廃布地を処理するステップにおいて、前記廃布地と前記酸触媒水溶液との固液比が1:5~1:10である、請求項に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項5】
前記酸触媒が、有機酸、有機無水物、ルイス酸、またはそれらの組み合わせである、請求項に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項6】
前記有機酸がシュウ酸であり、前記有機無水物が無水酢酸であり、前記ルイス酸が塩化亜鉛である、請求項に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項7】
前記酸触媒がシュウ酸と無水酢酸からなり、シュウ酸と無水酢酸が重量比で1:1~10:1の割合で存在する、請求項に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【請求項8】
処理後の前記廃布地からポリエステル繊維を回収し、ポリエステルペレットを製造することをさらに含む、請求項1に記載のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃布地の資源化技術に関し、特に、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を、酸触媒による水熱反応によって処理し、廃布地からポリエステル繊維とウール繊維を分離・回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活水準や消費水準の向上に伴い、繊維製品のライフサイクルは著しく短縮され、その結果、大量の繊維廃棄物が発生しているが、その中でもポリエステル/ウール繊維混合物は一定の割合を占めているが、これらの混合物はリサイクルが容易ではなく、廃棄後に環境に悪影響を与えやすいという問題点がある。なお、環境保護・省資源の観点から、廃布地の処理方法として最も理想的なのが、やはりリサイクルである。
【0003】
現在、使用済み繊維製品のリサイクル方法は、物理的回収、エネルギー回収、化学的回収の3つに大別される。物理的回収とは、使用済みの衣類を小さく切って雑巾にしたり、傷みの少ない中古のカーペットを再生したりするなど、廃布地を再利用できる状態に初期加工することである。エネルギー回収法は、廃布地に含まれる発熱量の高い化学繊維を燃やして熱を発生させ、発電する方法で、リサイクルできない廃布地に適している。化学的回収法は、廃布地からポリマーを解重合し、モノマーなどの解重合物を利用して新たな化学繊維を製造するもので、価値の高い化学ポリマーのリサイクルに初期の成果が出ている。
【0004】
特許公開第US9932456B2号には、水酸化ナトリウムを加水分解剤として使用し、ポリエステル/ウール繊維ブレンド中のウール繊維を分解してケラチン溶液を形成し、ポリエステル繊維は影響を受けないようにして、2つの繊維の分離を達成することが言い及ばされる。また、特許公開第JP2000344933A号公報には、ポリエステル/ウール繊維のブレンドにおいて、ポリエステル繊維に影響を与えずにウール繊維を分解し、2つの繊維の分離を実現するために生物酵素を使用することが記載されている。
【0005】
しかし、上記の方法では、比較的に環境に有害な物質を使用するか、より高価な溶剤を使用するため、環境への負荷が大きく、コストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許公開第US9932456B2号
【文献】特許公開第JP2000344933A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法であって、低コストで大量処理が可能であり、処理後に得られたポリエステル繊維はリサイクルが可能であるという利点を有する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用した技術的解決策の1つは、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を提供することと、前記廃布地を酸触媒水溶液で160℃~170℃の温度で処理して、前記廃布地中のウール繊維を分解してポリエステル繊維から分離することと、処理後の前記廃布地を回収することと、処理後の前記廃布地を回収することと、を含むポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を処理する方法を提供することである。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記廃布地を提供するステップにおいて、前記廃布地を布地チップに分割することをさらに備える。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記使用済みの布地チップを前記酸触媒水溶液で処理するステップでは、前記布地チップを前記酸触媒水溶液に浸漬して160℃~170℃の温度で1時間~5時間の反応時間で水熱反応を行い、その中のウール繊維を劣化させる。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記廃布地を前記酸性触媒水溶液で処理するステップにおいて、前記布地チップを周期的な還流で前記酸性触媒水溶液と繰り返し接触させて、160℃~170℃の温度で1時間~15時間の反応時間で水熱反応させて、布地チップに含まれるウール繊維を劣化させる。ここで、前記酸性触媒水溶液と複数の前記布地チップとの接触の頻度は、1分間に3回から5回である。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記廃布地を前記酸触媒水溶液で処理するステップにおいて、前記廃布地と前記酸触媒水溶液との固液比が、1:5~1:100である。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記廃布地を前記酸性触媒水溶液で処理するステップにおいて、前記廃布地と前記酸性触媒水溶液との固液比が、1:5~1:10であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記酸触媒水溶液は、酸触媒を0.1重量%~1重量%含んでいる。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記酸触媒は、有機酸、有機無水物、ルイス酸、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記有機酸はシュウ酸であり、前記有機無水物は無水酢酸であり、前記ルイス酸は塩化亜鉛である。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記酸触媒はシュウ酸と無水酢酸からなり、シュウ酸と無水酢酸は重量比で1:1~10:1の割合で存在する。
【0018】
本発明の一実施形態では、ポリエステル繊維およびウール繊維を含む廃布地を処理する前記方法は、処理後の前記廃布地からポリエステル繊維を回収し、ポリエステルペレットを製造することをさらに含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果の一つは、「ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を、酸触媒水溶液を用いて、160℃~170℃の温度で処理することにより、前記廃布地中の前記ウール繊維を劣化させ、処理後の前記廃布地を回収する」ことにより、ウール繊維とポリエステル繊維を分離することができる処理方法である。また、処理の過程で水を溶媒として使用するため、環境への配慮もなされている。
【0020】
さらに、酸触媒水溶液を廃布地(または布地チップ)と周期的な還流で接触させることで、反応系の固液比を1:5~1:10に抑えることができ、酸触媒水溶液の量を大幅に減らして処理コストを下げることができるほか、反応時間も短縮することができる。
【0021】
本発明の特徴および技術的内容をさらに理解するために、本発明に関する以下の詳細な説明および図面を参照してください。ただし、提供される図面は、参照および説明のみを目的としており、本発明を限定するものではありません。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法のフローチャート1を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法を実施するための装置を示す。
図3】本発明の第2の実施形態のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法のフローチャートを示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法を実施するための別の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記より、「ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃棄物の処理方法」に関連して開示された本発明の具体的な実施形態によって本発明が実施される方法の説明である。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目における何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0024】
特に定義されていない限り、本発明で使用される用語は、当業者が一般的に理解する意味を持ちる。以下の実施形態で使用する材料は、特に指定のない限り、市販されている材料を使用している。以下の実施形態で使用される操作または装置は、特に指定のない限り、当技術分野で一般的に見られるものである。以下の実施例に記載されている割合や内容物などは、特に記載がない限り重量によるものである。
[第1の実施形態]
【0025】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態では、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を、酸触媒による水熱反応によって処理する方法を提供しており、この処理によって、ウール繊維の分解物とポリエステル繊維のみを含む廃布地とが得られ、廃布地中のウール繊維からポリエステル繊維を分離してリサイクルすることが可能となる。図1に示すように、本発明の処理方法は、具体的な実施工程として、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を提供するステップS100と、廃布地中のウール繊維を分解してポリエステル繊維から分離するために、廃布地を酸触媒水溶液で160℃~170℃の温度で処理するステップS102と、処理された廃布地を回収するステップS104とを主に備えている。ここでいう「廃布地」とは、衣類やベッドリネンなどの廃棄された布や使用済みの布、あるいは繊維製品の製造過程で発生する端切れや布切れなどの廃棄物を指すことがある。
【0026】
ステップS100では、廃布地を、切断または引き裂くことによって、複数の布地チップに分割してもよく、布地チップのそれぞれには、ポリエステル繊維とウール繊維が含まれている。さらに、廃布地は、ポリエステル/ウール混紡織物であってもよい。なかでも、ポリエステル繊維の含有量は1~99重量%であってもよい。例えば、廃布地中のポリエステル繊維とウール繊維の含有量はともに50重量%である。また、布地チップの大きさは、その後の加工条件によって異なるが、例えば、布地チップの大きさは、長さ3センチ×幅3センチとすることができる。上記はあくまでも可能な実施方法であり、本発明を限定するものではない。
【0027】
図2を参照すると、ステップS102の実施方法の1つは、廃布地(または布地チップ)を酸触媒水溶液に浸漬して固液混合系を形成した後、130℃から170℃の温度で水熱反応を行うことである。反応時間は1時間から15時間で、ウール繊維は分解されて溶出し、ポリエステル繊維は影響を受けないようにしている。ポリエステル繊維とウール繊維の分離効率を向上させるために、廃布地(または布地チップ)を酸触媒水溶液に均一に分散させ、廃布地(または布地チップ)と酸触媒水溶液の固液比を1:5~1:100、反応温度を160℃~170℃に制御する。特筆すべきは、廃布地を処理する工程において溶媒としては水のみ使用されるため、より環境に配慮している点である。
【0028】
実際には、図2に示すように、布地チップFと酸触媒水溶液の混合系を密閉型の高圧反応器1に入れ、攪拌条件下で5℃/分の加熱速度で130℃~170℃に加熱し、1時間~5時間保持する。前述の内容は可能な実施方法に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0029】
本実施形態では、酸触媒水溶液は、有機酸、有機無水物、ルイス酸、またはそれらの任意の組み合わせから選ばれる少なくとも1つの酸触媒に水を加えることによって調製される。ここで、酸触媒含有量は、水性酸触媒溶液の総重量の100重量%に対し、0.1重量%~10重量%が好ましく、4~5重量%がさらに好ましい。酸触媒の含有量を多くすると、廃布地(または布地チップ)中のウール繊維の分解が早くなり、反応時間が短くなるが、酸触媒の消費量やコストの増加になるので注意が必要である。
【0030】
有機酸の具体例としては、メタンスルホン酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸、酢酸などが挙げられ、好ましい有機酸としてはシュウ酸を挙げることができる。有機無水物の具体例としては、無水酢酸、無水プロパン酸、無水酪酸、無水バレリック、無水ラウリン酸、無水パルミチン酸、無水ステアリン酸、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水アクリル酸、無水桂皮酸、無水フタル酸、無水安息香酸アセテート、無水アミノ酸、およびそれらの誘導体などが挙げられ、好ましくは無水酢酸であってもよい。ルイス酸の具体例としては、三塩化ホウ素、塩化亜鉛、テトラフルオロホウ酸亜鉛などが挙げられ、好ましくは、塩化亜鉛であってもよい。しかし、本発明は上記の例に限定されるものではありません。いくつかの実施形態では、より良い環境と経済的利益を得るために、酸触媒はシュウ酸と無水酢酸を重量比で1:1から10:1の割合で使用している。
【0031】
実際には、反応系の酸触媒濃度を必要な濃度範囲内に維持するために、廃布地(または布地チップ)の処理中に新しい酸触媒水溶液を加えるようにしてもよい。また、酸触媒の濃度は反応系のpHに反映される。さらに、反応系のpHはサンプリングによる手動測定、またはpHメーターによる自動測定が可能であり、反応系のpHが4超えた場合には、新たに酸触媒水溶液を高圧反応器1に導入する。
【0032】
図3を共に参照されたい。ステップS102の代替的な実施形態は、酸触媒水溶液と廃布地(または布地片)とを周期的な還流方式で繰り返し接触させて、130℃~170℃の温度で1時間~15時間の反応時間で水熱反応を行い、ウール繊維を分解して溶出させる一方で、ポリエステル繊維には影響を与えないようにすることである。また、ポリエステル繊維とウール繊維の分離効率を向上させるために、酸触媒水溶液と廃布地(または布地片)の接触回数を3~5回/分、反応温度を160℃~170℃にしてもよい。なお、上記実施の形態では、廃布地(または布地片)と酸触媒水溶液の反応を固液比1:5~1:10で行うことができるため、酸触媒水溶液の使用量を大幅に削減することが可能である。そのため、酸触媒水溶液の使用量を大幅に減らすことができ、コスト削減につながるほか、反応時間の短縮にもつながる。同様に、廃布地処理の全工程で水を溶媒として使用するため、環境にも優しい。
【0033】
図4を参照すると、本発明のポリエステル繊維およびウール繊維を含む廃布地の処理方法を実施するための装置の概略図であり、酸触媒水溶液を廃布地(または布地チップ)に繰り返し接触させて、還流を行うものである。図4に示されているように、装置は、高圧反応器1と液体貯蔵タンク2とを含んでいてもよく、高圧反応器1は、内部に密閉環境100を形成すると共に、密閉環境100内に設置された少なくとも1つの多孔質管11を有するように構成される。多孔質管11は、循環輸送管路3を介して液体貯蔵タンク2に接続し、循環輸送管路3は、循環ポンプPに接続されていてもよい。処理中では、廃布地(または布地チップ)を適切な載置装置(例えば、スタンドや吊り下げフレーム、図示せず)を用いて密閉環境100に配置してもよい。酸性触媒水溶液は、循環輸送管路3を介して高圧反応器1と液体貯蔵タンク2の間を循環し、布地チップ中のウール繊維と繰り返し接触・反応してケラチン溶液を形成する。さらに、酸性触媒水溶液は多孔質管11から噴霧され、布地チップと完全かつ均一に接触するが、余剰の酸性触媒水溶液は高圧反応器11の底部から循環輸送管路3の上流側31に入り、その後液体貯蔵タンク2に導かれ、循環輸送管路3の下流側を通って酸性触媒水溶液を多孔質管11に搬送して再噴霧するという、完全に自動化されたプロセスが行われることになる。
【0034】
ステップS104では、処理された廃布地(布地チップ)をろ過によって、ポリエステル繊維とウール繊維を分離し、ポリエステル繊維を回収する。
[第2の実施形態]
【0035】
図3を参照すると、本発明の第2の実施形態は、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を処理する別の方法を提供するものであり、主には以下の工程を含む。ステップS100、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を提供する。ステップS102、廃布地中のウール繊維を分解してポリエステル繊維から分離するために、160℃~170℃の温度で酸触媒水溶液を用いて廃布地を処理する。ステップS104、処理済みの廃布地を回収する。ステップS100~S104の実施の具体的な内容は、第1の実施の形態で説明したので、ここでは繰り返さない。本実施形態と第1の実施形態との主な違いは、処理方法が、処理済みの廃布地からポリエステル繊維を回収してポリエステルペレットにするステップS106をさらに含むことである。ステップS106では、処理された廃布地(布地チップ)に含まれるポリエステル繊維を、物理的または化学的な再処理によってモノマーおよび/またはオリゴマーに解重合した後、再重合して再生ポリエステル・ペレット(r-PET)を製造する。評価の結果によると、ウール繊維を含まないと共に、解重合により得られたモノマーやオリゴマーの回収率は95%以上に達することが分かりました。
【0036】
さらに、物理的な再処理として、廃布地(布地チップ)を押出機で溶かし、押し出してペレット化することも可能である。また、化学的再処理は、まず化学的解重合液を用いて廃布地(布地チップ)中のポリエステル繊維を解重合し、次いで得られたモノマーおよび/またはオリゴマーを特定の条件下で再重合し、ペレット化することによって行うことができる。化学的解重合液としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明する。
[実施例1]
【0038】
ポリエステルとウールの含有率が60/40のシャツを縦3cm×横3cmの布地チップに分割し、0.5%のシュウ酸を含む酸触媒水溶液に分散させて混合系を形成した。この混合系を密閉型反応器に入れ、ヒーターを作動させて反応器内の温度を160℃に上げ、3時間反応させた。
【0039】
反応終了後、ヒーターをオフにして、反応器内の温度が室温まで下がった後、反応生成物を取り出した。ろ過膜(PTFE、孔径0.45μm)を用いて反応生成物からポリエステル繊維を濾過し、洗浄した後、110℃オーブンで一定重量まで乾燥させた。評価の結果、ポリエステル繊維の回収率は96%であった。
[実施例2]
【0040】
ポリエステルとウールの含有率が60/40のズボンを縦3cm×横3cmの布地チップに分割し、0.5%の無水酢酸を含む酸触媒水溶液に分散させて混合系を形成した。この混合系を密閉型反応器に入れ、ヒーターを作動させて反応器内の温度を160℃に上げ、3時間反応させた。
【0041】
反応終了後、ヒーターをオフにして、反応器内の温度が室温まで下がった後、反応生成物を取り出した。ろ過膜(PTFE、孔径0.45μm)を用いて反応生成物からポリエステル繊維を濾過し、洗浄した後、110℃オーブンで一定重量まで乾燥させた。評価の結果、ポリエステル繊維の回収率は97%であった。
[実施例3]
【0042】
ポリエステルとウールの含有率が50/50のズボンを縦3cm×横3cmの布地チップに分割し、0.5%のリン酸を含む酸触媒水溶液に分散させて混合系を形成した。この混合系を密閉型反応器に入れ、ヒーターを作動させて反応器内の温度を170℃に上げ、3時間反応させた。
【0043】
反応終了後、ヒーターをオフにして、反応器内の温度が室温まで下がった後、反応生成物を取り出した。ろ過膜(PTFE、孔径0.45μm)を用いて反応生成物からポリエステル繊維を濾過し、洗浄した後、110℃オーブンで一定重量まで乾燥させた。評価の結果、ポリエステル繊維の回収率は95%であった。
[実施例4]
【0044】
ポリエステルとウールの含有率が30/70のズボンを縦3cm×横3cmの布地チップに分割し、0.5%の塩化亜鉛を含む酸触媒水溶液に分散させて混合系を形成した。この混合系を密閉型反応器に入れ、ヒーターを作動させて反応器内の温度を170℃に上げ、3時間反応させた。
【0045】
反応終了後、ヒーターをオフにして、反応器内の温度が室温まで下がった後、反応生成物を取り出した。ろ過膜(PTFE、孔径0.45μm)を用いて反応生成物からポリエステル繊維を濾過し、洗浄した後、110℃オーブンで一定重量まで乾燥させた。評価の結果、ポリエステル繊維の回収率は96%であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の有益な効果の一つとして、本発明のポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地の処理方法は、「前記廃布地を酸触媒水溶液で160℃~170℃の温度で処理することにより、前記廃布地中の前記ウール繊維を分解し、処理後の前記廃布地を回収することにより、前記ウール繊維を前記ポリエステル繊維から分離することが可能である」といった技術的特徴によって、ウール繊維からポリエステル繊維を分離することと、ポリエステル繊維をリサイクルすることを実現する。また、処理の過程で水を溶媒として使用するため、環境にも優しい。
【0047】
さらに、廃布地(または布地チップ)を循環還流の方式で酸触媒水溶液と繰り返し接触することで、反応系の固液比を1:5~1:10にすることができるため、酸触媒水溶液の量を大幅に削減でき、処理コストを低減することができる。
【0048】
さらに、ポリエステル繊維とウール繊維を含む廃布地を処理する本発明の方法は、布地資源のリサイクルを実現するのに役立ち、工業生産の要件を満たす大きな経済的利益をもたらしている。
【0049】
以上に開示された内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0050】
1:高圧反応器
100:密閉環境
11:多孔質管
2:液体貯蔵タンク
3:循環輸送管路
31:上流側
32:下流側
F:布地チップ
P:循環ポンプ
S100、S102、S104、S106:ステップ
図1
図2
図3
図4