(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】情報伝達装置
(51)【国際特許分類】
G09B 5/02 20060101AFI20231031BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20231031BHJP
G09B 5/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G09B5/02
G06F3/01 560
G09B5/06
(21)【出願番号】P 2022157670
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-12-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593146017
【氏名又は名称】光精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】西村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌能
(72)【発明者】
【氏名】駒瀬 篤史
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-530903(JP,A)
【文献】藤吉 賢,移動携帯端末による自閉症児のための多機能タイムエイドの開発 ,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2005年01月20日,第104巻、第638号,25~30頁
【文献】発達障害とは,宮城県 [online],2020年10月13日,https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kodomo_s/hattatu.html,[検索日:2023年月日]
【文献】発達障害者と仕事をするポイントは指示の出し方,障がい者としごとマガジンについて [online],2020年12月22日,https://shigoto4you.com/developmentaldisabilities_siji_point/,[検索日:2023年月日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01、3/048-3/04895
G09B 1/00-9/56
17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発達障害者や幼児等の対象者に伝えたい情報を、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画または静止画(以下「動画等」という)により前記対象者に伝達し得る情報伝達装置であって、
前記伝えたい情報に対応した所定情報の入力を受け付ける入力部と、
前記所定情報に関連付けられた前記動画等を記憶する記憶部と、
前記動画等を表示する表示部と、
前記対象者が視認可能に発光する発光部と、
前記対象者の聴覚を刺激し得る媒体を出力する第1出力部、同者の嗅覚を刺激し得る媒体を出力する第2出力部および同者の触覚を刺激し得る媒体を出力する第3出力部のうち、少なくとも異なる2種以上の出力部と、
前記表示部の表示制御、前記発光部の発光制御および前記少なくとも異なる2種以上の出力部の出力制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記入力部に前記所定情報が入力されると前記発光部を点灯させた後または点灯させるとともに、前記所定情報に基づいて前記記憶部から読み出した前記動画等を、前記表示部に繰り返し表示させ、かつ、前記2種以上の出力部の中から1種以上の出力部をランダムに選択して前記媒体を出力させ、または前記2種以上の出力部について前記媒体を出力する時期および期間をランダムに選択して前記媒体を出力させる、ことを特徴とする情報伝達装置。
【請求項2】
発達障害者や幼児等の対象者に伝えたい情報を、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画または静止画(以下「動画等」という)により前記対象者に伝達し得る情報伝達装置であって、
前記伝えたい情報に対応した所定情報の入力を受け付ける入力部と、
前記所定情報に関連付けられた前記動画等を記憶する記憶部と、
前記動画等を表示する表示部と、
前記対象者が視認可能に発光する発光部と、
前記対象者の嗅覚または触覚を刺激し得る媒体を出力する出力部と、
前記表示部の表示制御および前記発光部の発光制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記入力部に前記所定情報が入力されると前記発光部を点灯させた後または点灯させるとともに、前記所定情報に基づいて前記記憶部から読み出した前記動画等を、前記表示部に繰り返し表示させ、かつ、前記動画等を前記表示部に表示させる期間中に前記出力部から前記媒体を出力させる、ことを特徴とする情報伝達装置。
【請求項3】
発達障害者や幼児等の対象者に伝えたい情報を、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画または静止画(以下「動画等」という)により前記対象者に伝達し得る情報伝達装置であって、
前記伝えたい情報に対応した所定情報の入力を受け付ける入力部と、
前記所定情報に関連付けられた前記動画等を記憶する記憶部と、
前記動画等を画面に表示する表示部と、
前記対象者が視認可能に発光する発光部と、
前記表示部の表示制御および前記発光部の発光制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記入力部に前記所定情報が入力されると、
前記発光部を点灯させる第1の引付け動作を行った後または行うとともに、
視覚的に全面が黒色または黒色に近似した低明度かつ低彩度の色(以下「黒色等」という)の前記画面から始まり前記画面の中心から前記黒色等が徐々に消えるように中明度かつ高彩度の高い1つ以上のパーツが現れ最後に前記黒色等が消えて前記パーツを囲むように前記画面の四隅まで拡がる白色または白色に近似した高明度かつ低彩度の色が背景色として現れるコンテンツを、前記表示部に表示させる第2の引付け動作を行い、
前記第2の引付け動作に続けて、
前記所定情報に基づいて前記記憶部から読み出した前記動画等を前記表示部に表示させる、ことを特徴とする情報伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発達障害児(発達障害者)や幼児等の対象者に対して、伝えたい情報を動画または静止画により伝達し得る情報伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群、注意欠損多動性障害、学習障害等々の発達障害の特性を有する者(以下「発達障害者」という)は、自分では見通しが立ち難い事象が生じたときの対応を苦手にしている傾向がある。例えば、自分のいる周囲環境が突然変化した場合には、パニック状態に陥って無意識のうちに大声を出したり騒いだりし易い。そのため、公共の施設や公共の交通機関等、クールダウン室やカームダウン室のない空間で発達障害者が上述のようなパニック状態になると、周囲の利用者や乗客に迷惑をかけてしまう可能性がある。
【0003】
つまり、発達障害者は、突然の変化に対する対応を苦手にすることが多いため、社会に上手く適応することが難しい。そこで、このような問題を解決する一案として、例えば、下記特許文献1に開示されている「声量表示装置及び声量表示プログラム」の発明がある。この文献1では、自分の声量が適切かどうかを分かり易く呈示することが可能であるとともに、安価で測定精度の良い声量表示端末が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の声量表示端末では、そのディスプレィ上に音量が数字やイラストで表示され、その表示を発達障害者の児童が目視することで、自分の声の大きさの適正さを判断することを可能にしている。しかし、この声量表示端末は、このような数字やイラストをディスプレィに表示するにとどまる一方で、必ずしも当該児童が同装置のディスプレィに注視しているとは限らない。そのため、ディスプレィの表示に興味を持たない児童や、パニック状態になってディスプレィの表示に注目できない児童に対しては、ディスプレィに表示される数字やイラストの内容が伝わり難いという問題がある。
【0006】
また、この声量表示端末のディスプレィに表示される内容は、声量の大きさに関するものであり、そのような場面において自分がどのようにすべきであるかを当該児童に伝えるものではない。つまり、当該端末では、発達障害者にとって見通しが立ち難い事象を見通しが立ち易いものにする支援については考慮されていない。そのため、突然の変化に対する対応をパターン化して見通しをつけ易くするという学習効果までは望めない。このような突然の変化に対する対応パターンの学習は、発達障害者以外の定型発達の幼児や小学校低学年の児童等に対しても有効である。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、発達障害者や幼児等の対象者に対して、伝えたい情報を容易に伝達し得る情報伝達装置を提供することを目的とする。また別の目的は、発達障害者や幼児等の対象者に対して、対応パターンの学習を容易に行い得る情報伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項1の情報伝達装置は、入力部、記憶部、表示部、発光部、出力部および制御部を備える。入力部は、発達障害者や幼児等の対象者に伝えたい情報に対応した所定情報の入力を受け付ける。所定情報は、例えば、対象者に伝えたい情報が複数存在する場合には複数の中から1つを選択する情報であり、対象者に伝えたい情報が1つしか存在しない場合にはそれを示す情報である。記憶部は、所定情報に関連付けられた動画等を記憶する。動画等は、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画または静止画である。表示部は動画等を表示し、発光部は、対象者が視認可能に発光する。出力部は、対象者の聴覚を刺激し得る媒体を出力する第1出力部、同者の嗅覚を刺激し得る媒体を出力する第2出力部および同者の触覚を刺激し得る媒体を出力する第3出力部のうち、少なくとも異なる2種以上である。制御部は、表示部の表示制御および発光部の発光制御を行い、入力部に所定情報が入力されると、(1)発光部を点灯させた後または点灯させるとともに、(2)所定情報に基づいて記憶部から読み出した動画等を、表示部に繰り返し表示させる。記憶部から動画等を読み出すタイミングは、所定情報の入力後から動画等の表示前であれば、発光部の点灯前でも点灯後でもよい。また、制御部は、2種以上の出力部の中から1種以上の出力部をランダムに選択して媒体を出力させる。または2種以上の出力部について媒体を出力する時期および期間をランダムに選択して媒体を出力させる。
【0009】
これにより、入力部に所定情報が入力されると、発光部が点灯した後または点灯させるとともに、動画等が表示部に繰り返し表示されるので、例えば、パニック状態の対象者に対しても、発光部の点灯によって注意を促して表示部に注目させることが可能になり、対象者に伝えたい情報を、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画等として何回も繰り返して見せることができる。また、当該対象者のいる周囲環境が突然変化した場合にも、その変化に対応して自分がとるべき行動(動作)を絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上により表した動画等を、選択し得る所定情報が入力部に入力されることによって、その動画等が表示部に繰り返し表示される。そのため、対象者がその動画等を何回も繰り返して見ることにより、そのような突然の変化に対する対応がパターン化されて、見通しをつけ易くすることが可能になる。また、対象者の聴覚、嗅覚または触覚が、選択的や時間的に不規則に刺激されるので、当該対象者が同じ動画等を見ることに慣れたり飽きたりするのを抑制することが可能になる。なお、第1出力部、第2出力部および第3出力部のうちの1つを出力部として備えて、当該出力部から媒体を出力する時期および期間をランダムに選択して媒体を出力させてもよい。
【0010】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項2の情報伝達装置は、入力部、記憶部、表示部、発光部、出力部および制御部を備える。入力部は、発達障害者や幼児等の対象者に伝えたい情報に対応した所定情報の入力を受け付ける。所定情報は、例えば、対象者に伝えたい情報が複数存在する場合には複数の中から1つを選択する情報であり、対象者に伝えたい情報が1つしか存在しない場合にはそれを示す情報である。記憶部は、所定情報に関連付けられた動画等を記憶する。動画等は、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画または静止画である。表示部は動画等を表示し、発光部は、対象者が視認可能に発光する。出力部は、対象者の嗅覚または触覚を刺激し得る媒体を出力する。制御部は、表示部の表示制御および発光部の発光制御を行い、入力部に所定情報が入力されると、(1)発光部を点灯させた後または点灯させるとともに、(2)所定情報に基づいて記憶部から読み出した動画等を、表示部に繰り返し表示させる。記憶部から動画等を読み出すタイミングは、所定情報の入力後から動画等の表示前であれば、発光部の点灯前でも点灯後でもよい。また、制御部は、動画等を表示部に表示させる期間中に出力部から、対象者の嗅覚等を刺激し得る媒体を出力させる。これにより、入力部に所定情報が入力されると、発光部が点灯した後または点灯させるとともに、動画等が表示部に繰り返し表示されるので、例えば、パニック状態の対象者に対しても、発光部の点灯によって注意を促して表示部に注目させることが可能になり、対象者に伝えたい情報を、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画等として何回も繰り返して見せることができる。また、当該対象者のいる周囲環境が突然変化した場合にも、その変化に対応して自分がとるべき行動(動作)を絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上により表した動画等を、選択し得る所定情報が入力部に入力されることによって、その動画等が表示部に繰り返し表示される。そのため、対象者がその動画等を何回も繰り返して見ることにより、そのような突然の変化に対する対応がパターン化されて、見通しをつけ易くすることが可能になる。また、動画等が表示部に表示される前に発光部が点灯することに加えて、動画等が表示部に表示されている期間中は対象者の嗅覚等を刺激し得る媒体が出力部から出力されるので、対象者の注意を動画等が表示される表示部に容易に引き付けることが可能になる。
【0011】
また、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項3の情報伝達装置は、入力部、記憶部、表示部、発光部および制御部を備える。入力部は、発達障害者や幼児等の対象者に伝えたい情報に対応した所定情報の入力を受け付ける。所定情報は、例えば、対象者に伝えたい情報が複数存在する場合には複数の中から1つを選択する情報であり、対象者に伝えたい情報が1つしか存在しない場合にはそれを示す情報である。記憶部は、所定情報に関連付けられた動画等を記憶する。動画等は、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表した動画または静止画である。表示部は動画等を表示し、発光部は、対象者が視認可能に発光する。制御部は、表示部の表示制御および発光部の発光制御を行い、入力部に所定情報が入力されると、発光部を点灯させる第1の引付け動作を行った後または行うとともに、所定のコンテンツを表示部に表示させる第2の引付け動作を行う。そして、第2の引付け動作に続けて、所定情報に基づいて記憶部から読み出した動画等を表示部に表示させる。所定のコンテンツは、視覚的に全面が黒色または黒色に近似した低明度かつ低彩度の色(以下「黒色等」という)の画面から始まり画面の中心から黒色等が徐々に消えるように中明度かつ高彩度の高い1つ以上のパーツが現れ最後に黒色等が消えてパーツを囲むように画面の四隅まで拡がる白色または白色に近似した高明度かつ低彩度の色(以下「白色等」という)が背景色として現れるものである。これにより、発光部を点灯させる第1の引付け動作によって当該情報伝達装置に注目した対象者の視界には、第2の引付け動作によって、黒色等だけから始まり白色等の背景色をバックに中明度かつ高彩度の高い1つ以上のパーツが鮮明に映し出されて終わるコンテンツが表示部の画面に映し出されることから、単に発光部の発光に興味を示した対象者であってもその視線や注意を表示部の画面表示に引き付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、入力部に所定情報が入力されると、発光部が点灯した後、動画や静止画が表示部に繰り返し表示されるので、例えば、パニック状態の対象者に対しても、発光部の点灯によって注意を促して表示部に注目させることが可能になり、対象者に伝えたい情報を、絵等で表した動画等として何回も繰り返して見せることができる。したがって、伝えたい情報を容易に伝達することができる。また、対象者のいる周囲環境が突然変化した場合には、その変化に対応した行動(動作)を表した動画等を当該対象者が何回も繰り返して見ることで精神的に落ち着くことができ、またそのような突然の変化に対する対応がパターン化されて、見通しをつけ易くすることが可能になる。したがって、対応パターンの学習を容易に行うことができる。また、対象者の聴覚、嗅覚または触覚が、選択的や時間的に不規則に刺激されるので、当該対象者が同じ動画等を見ることに慣れたり飽きたりするのを抑制することが可能になる。したがって、伝えたい情報が同じであっても容易に伝達することができる。また、同じ対応パターンであってもその繰り返し学習を容易に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明では、入力部に所定情報が入力されると、発光部が点灯した後、動画や静止画が表示部に繰り返し表示されるので、例えば、パニック状態の対象者に対しても、発光部の点灯によって注意を促して表示部に注目させることが可能になり、対象者に伝えたい情報を、絵等で表した動画等として何回も繰り返して見せることができる。したがって、伝えたい情報を容易に伝達することができる。また、対象者のいる周囲環境が突然変化した場合には、その変化に対応した行動(動作)を表した動画等を当該対象者が何回も繰り返して見ることで精神的に落ち着くことができ、またそのような突然の変化に対する対応がパターン化されて、見通しをつけ易くすることが可能になる。したがって、対応パターンの学習を容易に行うことができる。また、動画等が表示部に表示される前に発光部が点灯することに加えて、動画等が表示部に表示されている期間中は対象者の嗅覚等を刺激し得る媒体が出力部から出力されるので、対象者の注意を動画等が表示される表示部に容易に引き付けることが可能になる。したがって、伝えたい情報をさらに容易に伝達することができる。また、対応パターンの学習をより容易に行うことができる。
【0014】
請求項3の発明では、発光部を点灯させる第1の引付け動作によって当該情報伝達装置に注目した対象者の視界には、第2の引付け動作によって、黒色等だけから始まり白色等の背景色をバックに中明度かつ高彩度の高い1つ以上のパーツが鮮明に映し出されて終わるコンテンツが表示部の画面に映し出されることから、単に発光部の発光に興味を示した対象者であってもその視線や注意を表示部の画面表示に引き付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクールダウンパッドの外観構成の例を示す説明図である。
図1(A)は正面斜め右方向から見た斜視図、
図1(B)は右方向から見た側面図である。
【
図2】本実施形態のクールダウンパッドの電気的なハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のクールダウンパッドのソフトウェア制御の処理(以下「制御処理」という)の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図3に表されている制御処理により起動されるアイキャッチング動作処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図3に表されている画像表示処理中において液晶ディスプレィに表示される動画の例として第2の引付け動作のコンテンツ断片を切り出した表示例を示す説明図である。
【
図6】
図3に表されている画像表示処理中において液晶ディスプレィに表示される動画の例として伝えたい情報のコンテンツの一例から切り出したコンテンツ断片の表示例を示す説明図である。
【
図7】
図3に表されている画像表示処理中において液晶ディスプレィに表示される動画の例として伝えたい情報のコンテンツの一例から切り出したコンテンツ断片の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の情報伝達装置の一実施形態であるクールダウンパッドについて各図を参照して説明する。本実施形態のクールダウンパッド10は、発達障害者や幼児等の対象者に対して、伝えたい情報を動画または静止画により伝達し得る情報伝達装置の一例であり、例えば、発達障害者や幼児等の対象者を介助または介護する者(以下「介助者等」という)が使用する装置である。
【0017】
まず、クールダウンパッド10のハードウェア構成を
図1および
図2に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係るクールダウンパッド10の外観構成の例を表す説明図として、正面斜め右方向から見た斜視図(
図1(A))と、右方向から見た側面図(
図1(B))が図示されている。また、
図2には、本実施形態のクールダウンパッド10の電気的なハードウェア構成の例を表すブロック図が図示されている。
【0018】
図1(A)および
図1(B)に示すように、クールダウンパッド10は、主に、本体ケース11と、この本体ケース11に収容されるタブレットパソコン20とにより構成されている。本体ケース11には、タブレットパソコン20に接続されるドライバユニット41や、このドライバユニット41により駆動されるLED42、ファン45,46、ペルチェユニット47等が収容されている。またバッテリ49も収容されている。
【0019】
本体ケース11は、矩形の板形状を有する樹脂製筐体であり、タブレットパソコン20の前面部分を除いてその周囲を覆うことが可能な寸法に設定されている。本実施形態では本体ケース11は、例えば、耐衝撃性や耐熱性に優れたポリカーボネートにより構成されている。本体ケース11(クールダウンパッド10)の正面側には、タブレットパソコン20を収容可能なタブレット収容部12が形成されているとともに、排気スリット13,14やLEDホルダ16が形成されている。
【0020】
排気スリット13,14は、後述するように本体ケース11に内蔵されたファン45,46が吐き出した空気を外部に排出するための複数の長穴であり、本実施形態では、本体ケース11の短手方向一端側に長手方向に沿って設けられており、ファン45,46のそれぞれに対応して2箇所に形成されている。排気スリット13,14の間に位置するように設けられるLEDホルダ16は、後述するLED42が発した光を外部に向けて出射可能に当該LED42を本体ケース11に保持する取付穴である。
【0021】
短手方向一端側である本体ケース11の上端部には吸気スリット15が設けられている。この吸気スリット15は、ファン45,46が吸い込む空気を外部から導入するための複数の長穴である。これに対して、本体ケース11の下端部、つまり本体ケース11の短手方向他端側には、本体ケース11に収容されたタブレットパソコン20の液晶ディスプレィ26等を覆い得るとともに本体ケース11のスタンドとしても機能し得るカバー19が取り付けられている。本実施形態では、カバー19は、本体ケース11の短手方向において複数箇所で折り曲げ可能に形成された薄板状の平板部材で構成されている。
【0022】
本体ケース11の内部には、上方収容室11aとバッテリ収容室11bが形成されている。上方収容室11aは、本体ケース11の内部に形成される上端側の空間であり、バッテリ収容室11bに比べて、本体ケース11(クールダウンパッド10)の背面側に向けて拡がるように形成されている。この上方収容室11a内には、ドライバユニット41、LED42、フィルタ43,44、ファン45,46、ペルチェユニット47等が収容されている。一方、バッテリ収容室11bは、上方収容室11aを除く範囲、つまりタブレット収容部12の背面側のほぼ全域に亘って形成される空間である。このバッテリ収容室11bには、平板形状を有するバッテリ49が収容されている。
【0023】
タブレットパソコン20は、タブレットタイプのパーソナルコンピュータであり、主に、MPU22、メモリ23、システムバス24、入出力インタフェース25等を備える制御ユニット、液晶ディスプレィ26、タッチパネル27、バッテリ29、周辺ユニット(スピーカユニット31、マイクユニット32、カメラユニット33、バイブレータユニット34、無線通信ユニット37)や、これらを収容するハウジング21から構成されている。ハウジング21は、A4判(210mm×297mm)相当のサイズを有する薄板形状に形成されている。なお、タブレットパソコン20のハウジング21の側部には、不図示のハードウェアボタン(機械的な押しボタンスイッチ等)が設けられている。
【0024】
MPU22はCPUの機能等を有する演算処理ユニットであり、システムバス24を介してメモリ23、入出力インタフェース25や図略のGPU等に接続されている。メモリ23は、半導体記憶装置でありRAM、ROMやSSD(Solid State Drive)により構成されている。入出力インタフェース25は、液晶ディスプレィ26、タッチパネル27、スピーカユニット31等の周辺ユニットやドライバユニット41と、システムバス24との間に介在しており、HDMI等のパラレルインタフェースやUSB等のシリアルインタフェースで構成されている。なお、タブレットパソコン20には、例えば、アンドロイドOS(Operating System)等が実装されている。「アンドロイド」と「HDMI」は登録商標である。
【0025】
液晶ディスプレィ26は、例えば、ワイド型(画面アスペクト比16:9)10インチ相当の液晶ディスプレィ装置であり、タッチパネル27による入力機能を備えている。例えば、液晶ディスプレィ26の表面にガラス基板等の透明板状のタッチパネル27が設けられた構成を採る。これにより、液晶ディスプレィ26に表示される、ソフトウェアキー、ラジオボタンやチェックボックスを、当該タブレットパソコン20(クールダウンパッド10)の使用者である介助者等がタッチペンや指で触れることでこれらの選択情報がタッチパネル27を介してMPU22に入力される。なお、液晶ディスプレィ26は、後述するように、全面同色で画面全体を発光させることによって、特許請求の範囲に記載の「発光部」として機能し得るものである。
【0026】
スピーカユニット31は、MPU22等から入出力インタフェース25を介して入力される電気信号を音波に変換して外部に出力する発音体を含む音響機器であり、対象者の聴覚を刺激する空気(媒体)の振動を出力するものである。本実施形態では、例えば、後述する制御処理により所定の音響データがMPU22からスピーカユニット31に出力されることで、スピーカユニット31から音声や音楽等が出力される。
【0027】
マイクユニット32は、外部から入力される音波(空気の振動)を電気信号に変換し入出力インタフェース25を介してMPU22に入力する受音体を含む音響機器である。カメラユニット33は、外部から入力される光学画像を電気信号に変換して入出力インタフェース25を介してMPU22に入力する撮像素子(CCDセンサやCMOSセンサ)や光学レンズ等を含む光学機器である。
【0028】
バイブレータユニット34は、MPU22等から入出力インタフェース25を介して入力される電気信号を機械振動に変換して外部に出力する振動モータを含む振動機器である。本実施形態では、ハウジング21を介して対象者の触覚を刺激する機械的な振動を出力する。例えば、後述の制御処理により所定の振動データがMPU22からバイブレータユニット34に出力されることで、当該バイブレータユニット34から機械的な振動が出力されてタブレットパソコン20のハウジング21が振動する。
【0029】
無線通信ユニット37は、無線通信可能な近距離無線モジュールであり、例えば、無線LAN装置である。例えば、インターネットのアクセスポイント(ISP)に接続されている無線LANの基地局やルータにアクセスすることで、インターネット上のウェブサイトに接続することが可能になる。本実施形態では、例えば、後述するアプリケーションソフトウェア(以下「アプリ」という)等を当該タブレットパソコン20にインストールする場面において利用される。
【0030】
バッテリ29は、制御ユニット(MPU22、メモリ23、システムバス24、入出力インタフェース25等)、液晶ディスプレィ26、タッチパネル27、周辺ユニット(スピーカユニット31、マイクユニット32、カメラユニット33、バイブレータユニット34、無線通信ユニット37)等に対して、直流電力を供給し得る二次電池であり、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池で構成されている。なお、図示されていないが、バッテリ29から出力される直流電力は、制御ユニット等の各負荷に対して適正な電圧を出力可能な電源ユニットを介して供給される。
【0031】
本体ケース11の上方収容室11aには、前述したようにドライバユニット41等が収容されている。ドライバユニット41は、LED42、ファン45,46やペルチェユニット47に対して駆動制御を行い得るように構成されており、本実施形態ではUSBインタフェース28を介してタブレットパソコン20に接続されている。これにより、ドライバユニット41は、タブレットパソコン20のMPU22から出力される制御信号が入力されることで、LED42の発光、ファン45,46の送風、ペルチェユニット47の吸熱や発熱の制御を行う。
【0032】
LED42は、高輝度タイプの発光ダイオードであり、対象者の視覚を強く刺激することが可能な色(例えば、白色または寒色以外の有彩色(赤色や黄色等))の光を発する。本実施形態ではLED42は1つで構成されているが、複数のLEDを束ねて構成してもよい。また、LED42に代えて、例えば、タブレットパソコン20の液晶ディスプレィ26を全面同色(例えば白色等)にして、当該液晶ディスプレィ26の全体を発光させてもよい。また、LED42や液晶ディスプレィ26は、対象者の視覚を強く刺激することが可能な色に代えて、視覚的に興味を引き得る態様(例えば、所定の七色(赤色、橙色、黄色、黄緑色、緑色、青色、紫色)を順次変化させる態様)で発光色を連続または不連続に変化させてもよい。
【0033】
フィルタ43,44は、本体ケース11の排気スリット13,14の内側に装着される濾紙や濾布である。本実施形態では、フィルタ43はファン45に、またフィルタ44はファン46にそれぞれ対応して、ファン45,46の排気に含まれる塵や埃を除去する機能のほかに香水やアロマオイルを染み込ませたり芳香化合物を包み込んだりして芳香を保持する機能を有する。これにより、ファン45,46が回転すると、排気スリット13,14から芳香を有する風が放出されるため、対象者の嗅覚を刺激することが可能になる。なお、フィルタ43,44は、いずれか一方だけが芳香を発するように香水やアロマオイルを染み込ませたり芳香化合物を包み込んだりしてもよい。
【0034】
ファン45,46は、吸い込んだ空気(気体)を回転翼の回転に沿って径方向に吐き出す遠心方式の多翼送風機であり、単に風を送るだけでなく、対象者の触覚を刺激する機能を有する。本実施形態では、本体ケース11の短手方向一端側において長手方向に沿って広範囲に送風し対象者を刺激する可能性を高める必要から、例えば、円筒形状を有するクロスフローファンを2つ用いる。狭い範囲(スポット的)に送風する場合には、回転翼の軸方向に空気(気体)を吐き出す軸流方式のファンでもよい。ファン45,46は、その回転と停止がドライバユニット41を介してMPU22により制御される。
【0035】
ペルチェユニット47は、薄板形状の冷熱モジュールであり、吸熱体や発熱体として機能し、例えば多数のペルチェ素子を有する。ペルチェ素子は、異種金属の接合部に電流を流すと一方の金属から他方に金属に熱が移動するペルチェ効果を利用した半導体素子である。ペルチェユニット47は、このようなペルチェ素子を多数、電気的に直列に接続して2枚のセラミック基板の間に挟み込むように構成されている。ペルチェユニット47は、順方向に電流を流すと一方面側で吸熱し他方面側で発熱し、逆方向に電流を流すと一方面側で発熱し他方面側で吸熱する。また、ペルチェユニット47に供給される電力(駆動電力)を増減により吸熱量や発熱量を増やしたり減らしたりすることができる。
【0036】
本実施形態では、図示されていないがペルチェユニット47の一方面側には、例えば、放熱ピンがマトリクス状に配置された多ピン型のヒートシンクが取り付けられており、そのようなヒートシンクがファン45の排気空間(排気スリット13の近傍)に向くように上方収容室11a内に配置されて取り付けられている。また、ペルチェユニット47の他方面側にも、図略のヒートシンクが取り付けられている。なお、ファン46の排気空間(排気スリット14の近傍にペルチェユニット47のヒートシンクを配置してもよい。
【0037】
ペルチェユニット47には、直流電力を供給するためのプラス電極とマイナス電極が設けられており、本実施形態では、ドライバユニット41に内蔵された図略のペルチェドライバ回路に接続されている。ペルチェユニット47は、供給される直流電力の極性が入れ替わることによって一方面側または他方面側の吸熱(冷却)や発熱(加熱)を切り換えることができる。これにより、対象者の触覚を刺激することが可能な冷風や熱風を排気スリット13,14から送風(排気)することが可能になる。
【0038】
バッテリ49は、ドライバユニット41、LED42、ファン45,46、ペルチェユニット47等に対して、直流電力を供給し得る二次電池であり、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池で構成されている。なお、図示されていないが、バッテリ49から出力される直流電力は、制御ユニット等の各負荷に対して適正な電圧を出力可能な電源ユニットを介して供給される。また、バッテリ49は、外部から供給される直流電力により充電され得るように構成されている。なお、タブレットパソコン20からUSBバスパワー(USB給電)が供給される場合には、バッテリ49を省略することができる。
【0039】
なお、本実施形態のクールダウンパッド10では設けられていないが、例えば、超音波方式で霧を発生させることが可能なミストジェネレータ(蒸気発生装置)を上方収容室11aに設けてもよい。この場合、本体ケース11に霧を放出可能なミスト穴を形成するとともにミストジェネレータをドライバユニット41に接続する。これにより、対象者の触覚を刺激する一手段として、ミスト(霧)をクールダウンパッド10から放出することが可能になる。
【0040】
本実施形態のクールダウンパッド10では、ハードウェアをこのように構成することにより、次のような制御処理を行う。この制御処理は、クールダウンパッド10のタブレットパソコン20において実行されるソフトウェア制御の処理である。
【0041】
このような制御処理の流れを
図3および
図4に基づいて説明する。
図3には、本実施形態のクールダウンパッド10の制御処理の流れを表すフローチャートが図示されている。また
図4には、
図3に表されている制御処理により起動されるアイキャッチング動作処理の流れを表すフローチャートが図示されている。
【0042】
この制御処理は、タブレットパソコン20のメモリ23に読み出された基本制御プログラムをMPU22が実行することによって実現される。基本制御プログラムは、例えば、インターネット上に構築される所定のウェブサイトからタブレットパソコン20にダウンロードすることによって取得することができ、アプリとして当該タブレットパソコン20にインストールされる。そのため、本実施形態では、タブレットパソコン20にインストールされた本アプリを介助者等が起動させることにより当該制御処理が開始される。
【0043】
図3に示すように、制御処理が始まると(START)、まずステップS101による初期化処理が行われる。この処理では、例えば、メモリ23(RAM)の本処理用のワーク領域やフラグをクリアしたり、ドライバユニット41に初期設定用の制御コマンドを送出したりする。
【0044】
次のステップS103ではメニュー表示処理が行われる。この処理では、対象者に伝えたい情報として、例えば、「0の声にするよ」、「1の声にするよ」、「踊るのをやめるよ」、「パッドをやめるよ」、「落ち着くよ」等というように、複数の「伝えたい情報のタイトル」がメニュー形式で表示される。また本制御処理を途中で止める(中止する)際に選択する「Exit」ボタンも表示される。例えば「0の声にするよ」にはタイトル情報#01、「1の声にするよ」にはタイトル情報#02というようにそれぞれの「伝えたい情報のタイトル」にタイトル情報#xx(xxは01~99)が関連付けられている。
【0045】
本実施形態では、液晶ディスプレィ26に複数の「伝えたい情報のタイトル」を表示するとともに、表示された「伝えたい情報のタイトル」を介助者等がタッチペン等で触れることによって、タッチパネル27からタッチした情報が入力されてMPU22に出力される。つまり、伝えたい情報に対応した所定情報として、伝えたい情報に関連付けられているタイトル情報#xxをMPU22が受け付ける。この処理は、ステップS105の入力情報取得処理により行われる。
【0046】
続くステップS107では、選択入力の有無を判定する処理が行われる。ステップS105ではタッチパネル27から入力された情報が取得されるため、ステップS107では、その入力情報に基づいて、メニュー表示された「伝えたい情報のタイトル」のどれが選択されたか否かが判定される。例えば、タイトル情報として「0の声にするよ」(タイトル情報#01)が選択されたと判定した場合には(S107;Yes)、続くステップS109により当該タイトル情報#01に対応する画像データをメモリ23(SSD)から読み出す処理が行われる。
【0047】
メモリ23のSSDには、本アプリのタブレットパソコン20にインストールした際に「伝えたい情報のタイトル」のタイトル情報#xxに対応する画像データが格納(記憶)される。先の例では、「0の声にするよ」、「1の声にするよ」、「踊るのをやめるよ」、「パッドをやめるよ」、「落ち着くよ」の5種類のタイトル情報#01~#05に対応してそれぞれの画像データ等がメモリ23のSSDに記憶されている。なお、この画像データは、伝えたい情報を、絵、文字、記号、図形または写真の少なくとも1つ以上で表したものである。
【0048】
一方、液晶ディスプレィ26に表示された「伝えたい情報のタイトル」のいずれについても介助者等が選択していないと判定したりタイトル以外のものを選択していたりする場合には(S107;No)、再度、ステップS105に戻り入力情報習得処理が行われる。また、液晶ディスプレィ26に表示された「Exit」ボタンを介助者等が選択していると判定した場合には(S107;Exit)、本制御処理を終わる(END)。
【0049】
ステップS107により選択入力があると判定された場合には(S105;Yes)、ステップS109により画像データ読出し処理が行われる。この処理では、入力情報取得処理(S105)において入力されたタイトル情報#xxに基づいて、当該タイトル情報#xxに対応する画像データがメモリ23のSSDから読み出される。
【0050】
画像データは、例えば、再生時間(記録時間)が3~5秒間の動画である場合や、複数の静止画である場合がある。なお、複数の静止画をスライドショーのように時間の経過とともに切り替えて表示したものを動画データとして構成している場合には動画に含まれる。例えば、動画はMP4形式であり、静止画はJPEG形式やPNG形式である(PDF形式でもよい)。動画のMP4形式では、動画データと音(音声や音楽等)データを記録することが可能である。
【0051】
次のステップS111ではLED点灯処理が行われる。この処理では、LED42を所定時間、点灯させるものであり、当該クールダウンパッド10の液晶ディスプレィ26(の画面)に対象者の注意を引き付けるための第1の引付け動作として行われる。所定時間(点灯時間)は、例えば1~2秒間であり、連続点灯でも間欠点灯(点滅の繰り返し)でもよい。また画像表示処理(S115)が終わるまで点灯を継続してもよい。なお、このLED42の点灯と同時に(またはLED42の点灯に代えて)、タブレットパソコン20の液晶ディスプレィ26を全面、白色または寒色以外の有彩色(赤色や黄色等)にして、当該液晶ディスプレィ26の全体を発光させてもよい。
【0052】
続くステップS113ではアイキャッチング動作起動処理が行われる。この処理は、
図4に表されているアイキャッチング動作処理を起動するものであり、当該アイキャッチング動作処理は本制御処理と並行して行われる。このアイキャッチング動作処理は、対象者の注意を引くため、前述のLED42の点灯に加えて行われるものであり、例えば、前述したスピーカユニット31、バイブレータユニット34、ファン45,46やペルチェユニット47等のアイキャッチングデバイス(以下「ECデバイス」という)を作動させるものである。アイキャッチング動作処理については、後で詳しく説明する。
【0053】
アイキャッチング動作処理が起動されると、次のステップS115により画像表示処理が行われる。即ち、メモリ23のSSDから読み出された画像データ(伝えたい情報)を液晶ディスプレィ26に所定時間、表示する。例えば、画像データが動画である場合には、その記録時間(例えば3~5秒間)が満了するまで当該動画の動画データを再生する。また動画に音データが含まれている場合には画像に合わせて音データも再生されるため、スピーカユニット31が使用可能であるときにはスピーカユニット31から音声や音楽等が出力される。この記録時間や次に説明する所定時間は、本実施形態では3~5秒に設定されている。一般に、2秒以下では時間が短すぎて対象者に伝わり難く、また10秒以上では時間が長すぎて対象者が集中力を持続させ難いことが本願発明者らによる実験により確認されているためである。記録時間や所定時間は、対象者の特性に応じて、3~9秒の範囲で設定してもよい(例えば、5~8秒等)。
【0054】
また、画像データが静止画である場合には、予め定められた順番とタイミングで表示する静止画を切り替えて所定時間(例えば3~5秒間)内に当該複数の静止画を全て表示する(所定時間のスライドショーが行われる)。またテキストデータ付きのPDF形式のように、静止画の画像データ中にテキストデータが含まれており、かつ音響出力ありに設定されている場合には、アイキャッチング動作処理によりそのテキストが合成音声で読み上げられてスピーカユニット31から出力される。なお、JPEG形式やPNG形式のように、静止画の中に画像データにより表現されている文字列のテキストデータが画像データ中に含まれていない場合には、光学文字認識(OCR)機能を有するアプリを用いて当該文字を変換して得たテキストデータを合成音声で読み上げる。
【0055】
本実施形態では、例えば、
図5に示すようなコンテンツ50の動画または静止画(以下「動画等」という)が最初に液晶ディスプレィ26に表示される。即ち、対象者の注意を引き付けるための第2の引付け動作として、例えば、4種類のパーツ51~54で構成されるコンテンツ50(アニメーション)を液晶ディスプレィ26に表示する(
図5(A)~
図5(D))。パーツ51は、キザキザタイプの黄色の吹き出し内に「注目!」の赤色文字を配置したイラスト(絵と文字の複合)であり、パーツ52は、線画で表した指さしのイラスト(絵)である。パーツ53は黒色ベタ塗りであり、パーツ54は白色背景である。
【0056】
このコンテンツ50が動画である場合には、例えば、最初に黒色ベタ塗りパーツ53だけを液晶ディスプレィ26に表示した後、その中心部分から、楕円形状に黒色が消えるように色抜きされて経時とともに色抜き範囲が徐々に拡大することで、吹き出しの黄色を背景にした「注目!」の赤色文字が目視可能に出現するように表示する(コンテンツ断片50a)。そして、時間が経過すると、パーツ51のほぼ全部が現れ(コンテンツ断片50b)、やがてパーツ52も全体が現れた後(コンテンツ断片50c)、黒色ベタ塗りパーツ53が全て消えるように表示する(コンテンツ断片50d)。
【0057】
また、コンテンツ50が静止画である場合には、例えば、黒色ベタ塗りパーツ53だけのコンテンツ(不図示)とコンテンツ断片50a~50dの合計5つの静止画をこの順番で、例えば0.2秒間隔で現れるように液晶ディスプレィ26に表示する。つまり、約1秒間に5つの静止画がパラパラ漫画のように表示される。前述の動画である場合にも黒色ベタ塗りパーツ53だけから始まってコンテンツ断片50dで終わるコンテンツ50のアニメーションが約1秒間、表示される。
【0058】
これにより、動画および静止画のいずれにおいても、LED42の発光によりクールダウンパッド10に注目した対象者の視界には、黒色ベタ塗りパーツ53だけから始まり白色背景のパーツ54をバックにパーツ51,52が鮮明に映し出されて終わるアニメーションが、液晶ディスプレィ26の画面に映し出されることから、単にLED42の発光に興味を示した対象者であってもその視線や注意を液晶ディスプレィ26の画面表示に引き付けることが可能になる。
【0059】
なお、このような第2の引付け動作は、何も映し出されていないように視覚的に感じさせる全面が黒色(または黒色に近似した低明度かつ低彩度の色)の画面から始まり、その画面中心から当該黒色が徐々に消えるように中明度かつ高彩度の高いパーツ51が現れ、最後に当該黒色が消えてパーツ51を囲むように画面の四隅まで拡がる白色(または白色に近似した高明度かつ低彩度の色)が背景色として現れるコンテンツであれば、例えば、パーツ51の線図や文字の構成、パーツ51の数や組み合わせ等は任意であり、パーツ52は省略されていても、他のパーツが追加されていてもよい。
【0060】
本実施形態では、このような第2の引付け動作としてのコンテンツ50の表示に続けて、伝えたい情報として、例えば「0の声にするよ」では、
図6に示すようなコンテンツ60の動画等が液晶ディスプレィ26に表示される。例えば「0の声にするよ」のコンテンツ60は、8種類のパーツ61~68で構成されるアニメーションである(
図6(A)~
図6(D))。パーツ61は、耳を塞いで辛い表情をしている人物の顔を前から見た線画で表したイラスト(絵)であり、パーツ62は、人差し指を口元に当てている人物の顔を横から見た線画で表したイラスト(絵)である。パーツ63は、人差し指を口元に当てている人物の顔を前から見た線画で表したイラスト(絵)である。パーツ64は、5段階のレベル表示が最大レベルの5である状態を表したイラスト(絵)であり、パーツ65は、同レベル表示が最小レベルの0である状態を表したイラスト(絵)である。パーツ66は「こえ」を黒色太字で表した文字表記、パーツ67は「こえ 大きいよ」を黒色太字で表した文字表記、パーツ68は「こえ「0」にするよ!!」を黒色太字で表した文字表記である。
【0061】
このコンテンツ60が動画である場合には、まず最初に、例えば、パーツ61,64,66で構成されるコンテンツ断片60aによって、「こえ」の文字のパーツ66と、耳を塞いで辛い表情をしている人物の顔の絵のパーツ61と、最大レベルの5であるレベル表示の絵のパーツ64と、により声(声量)が大きいイメージ(情報)をイラスト等で視覚的に伝える(
図6(A))。そして、時間が経過すると、レベル表示のパーツ64を徐々に消す一方でその顔の絵のパーツ61を徐々に拡大するとともに「こえ 大きいよ」の文字のパーツ67を表示する(
図6(B)のコンテンツ断片60b)。これにより、対象者には現在の自分の声が大きいことがイメージ(情報)および文字(情報)として伝わり得る。
【0062】
このため、次に、当該対象者がとるべき行動を表したイラスト等を表示する。例えば、パーツ62,65,68で構成されるコンテンツ断片60cによって、「こえ「0」にするよ!!」の文字のパーツ68と、人差し指を口元に当てている人物の顔の絵のパーツ62と、最小レベルの0であるレベル表示の絵のパーツ65と、により声(声量)を小さくするイメージ(情報)をイラスト等で視覚的に伝える(
図6(C))。そして、その後、人差し指を口元に当てている人物の大きな顔の絵のパーツ63に表示を切り替える(
図6(D)のコンテンツ断片60d)。これにより、現在のそのような場面において、対象者自身がどのような行動をとるべきであるかを当該対象者にイメージ(情報)および文字(情報)として伝えることが可能になる。
【0063】
コンテンツ60が静止画である場合には、例えば、これらコンテンツ断片60a~60dの合計4つの静止画をこの順番で、例えば約1.2~1.3秒間隔で現れるように液晶ディスプレィ26に表示する。つまり、約5秒間に4つの静止画がスライドショーのように表示される。動画である場合にも、前述のコンテンツ断片60aから始まってコンテンツ断片60dで終わるコンテンツ60のアニメーションが約5秒間、表示される。
【0064】
このようなコンテンツ50,60は、介助者等が「伝えたい情報のタイトル」として「0の声にするよ」を選択した場合には液晶ディスプレィ26に表示されるが、例えば「踊るのをやめるよ」を選択した場合には、コンテンツ50に続けて、
図7に示すようなコンテンツ70が動画等で表示される。この「踊るのをやめるよ」のコンテンツ70は、4種類のパーツ71~74で構成される(
図7(A)~
図7(D))。パーツ71,72は、楽しく踊っている人物の全体を線画で表したイラスト(絵)であり、パーツ73は、右手を前に出して制止する身振りしている人物の全体を線画で表したイラスト(絵)である。また、パーツ74は「踊るのをやめるよ!!」を黒色太字で表した文字表記である。
【0065】
このコンテンツ70が動画である場合には、例えば、パーツ71で構成されるコンテンツ断片70aとパーツ72で構成されるコンテンツ断片70bとを交互に表示するにより楽しく踊っている様子をイラストで視覚的に伝える(
図7(A),
図7(B))。これにより、対象者には現在の自分の行動(踊っていること)がイメージ(情報)として伝わり得る。そのため、次に、当該対象者がとるべき行動を表したイラスト等を表示する。例えば、パーツ71,73で構成されるコンテンツ断片70cによって、楽しく踊っている人物(パーツ71)を別の人物(パーツ73)が制止する様子をイラストで視覚的に伝える(
図7(C))。そして、時間が経過すると、楽しく踊っている人物のパーツ71を徐々に消す一方で右手を前に出して制止する身振りしている人物のパーツ73を徐々に拡大するとともに「踊るのをやめるよ!!」の文字のパーツ74を表示する(
図7(D))。これにより、現在のそのような場面において、対象者自身がどのような行動をとるべきであるかを当該対象者にイメージ(情報)および文字(情報)として伝えることが可能になる。
【0066】
コンテンツ60が静止画である場合には、例えば、これらコンテンツ断片70a~70dの合計4つの静止画をこの順番で、例えば約1.2~1.3秒間隔で現れるように液晶ディスプレィ26に表示する。つまり、約5秒間に4つの静止画がスライドショーのように表示される。動画である場合にも、前述のコンテンツ断片70aから始まってコンテンツ断片70dで終わるコンテンツ70のアニメーションが約5秒間、表示される。
【0067】
ここでは説明を省略するが、本実施形態では、介助者等が「伝えたい情報のタイトル」として「1の声にするよ」、「パッドをやめるよ」や「落ち着くよ」等を選択した場合においても、それぞれに対応したコンテンツの動画等が伝えたい情報として、コンテンツ50の表示に続けて液晶ディスプレィ26に表示される。
【0068】
ステップS115の画像表示処理が終了すると、次のステップS117のアイキャッチング動作停止処理によって停止指示情報がアイキャッチング動作処理に出力される。アイキャッチング動作処理はこの停止指示情報を受けるとアイキャッチング動作を終了する。即ち、後述のアイキャッチング動作処理は、ステップS115の画像表示処理が行われている期間中、実行し、対象者の注意を液晶ディスプレィ26に集中させる役割を果たす。
【0069】
このようにステップS115の画像表示処理によって、介助者等が選択した「伝えたい情報のタイトル」に対応する動画等が液晶ディスプレィ26に表示されている期間中は、対象者が液晶ディスプレィ26に向くように後述のアイキャッチング動作が行われるが、当該対象者が必ずしも表示されている動画等に注目するとは限らない。また数秒間の動画等では伝えたい情報が当該対象者に直ぐには伝わり難いこともある。そのため、本実施形態では、続くステップS119によりソフトウェアボタンを液晶ディスプレィ26に表示して、同じ動画等を再度、表示させる必要があるか否かを介助者等の判断に委ねる。
【0070】
即ち、ステップS119では画像表示処理(S115)が終わると、例えば、動画等の表示を終了するか否かを問う文字表示(例えば「終了しますか?」)と、「YES」および「NO」のソフトウェアボタンを液晶ディスプレィ26に表示する。そして、ステップS121の入力情報取得処理により入力情報を取得する。ステップS123により、取得された入力情報が、「YES」のソフトウェアボタンを介助者等がタッチペン等で触れたものであると判定した場合には(S123;Yes)、液晶ディスプレィ26に動画等を表示する必要がないため、本制御処理を終了する。
【0071】
これに対して、「NO」のソフトウェアボタンを介助者等が触れたものであると判定した場合や、「YES」および「NO」のソフトウェアボタンが液晶ディスプレィ26に表示した後、所定時間(例えば2秒間)を経過したと判定した場合には(S121;No)、アイキャッチング動作起動処理(S113)に戻る。そして、再度、ステップS113以降の各処理を行って、液晶ディスプレィ26に動画等を表示させる。これにより、「NO」のソフトウェアボタンに触れなくても、短時間(数秒)の動画等が液晶ディスプレィ26に繰り返し表示されることになるので、当該対象者に何回も繰り返して見せることが可能になる。
【0072】
なお、このような文字表示や「YES」および「NO」のソフトウェアボタンに代えて、例えば「終了?」のソフトウェアボタンだけを表示してステップS123により「終了?」のソフトウェアボタンを介助者等が触れたか否かを判定してもよい。
【0073】
また、終了ボタン表示処理(S119)、入力情報取得処理(S121)および表示終了判定処理(S123)を行うことなく、ステップS113~S117の処理中においてタブレットパソコン20の特定のハードウェアボタンが押下されたか否かをハードウェア割込み処理により検出し、当該ハードウェアボタンが押下された場合に本制御処理を終了し、当該ハードウェアボタンが押下されていない場合にはステップS113~S117の処理を繰り返し行うようにアルゴリズムを構成してもよい。またこの場合、アイキャッチング動作停止処理(S117)を省略して当該ハードウェアボタンが押下されるまでアイキャッチング動作を継続し続けてもよい。
【0074】
続いて、アイキャッチング動作処理について
図4を参照しながら説明する。アイキャッチング動作処理は、対象者の注意を引き付けるためのアイキャッチング動作を第3の引付け動作として行うものであり、制御処理によるアイキャッチング動作起動処理(S113)によって処理が開始される。アイキャッチング動作は、例えば、前述したスピーカユニット31等のECデバイスを動作させることにより行われる。このような第3の引付け動作は、前述した第2の引付け動作と同時期に行われ、また第2の引付け動作が終わった後も引き続き行われる。そのため、このアイキャッチング動作処理は、前述の制御処理と並列して実行される。
【0075】
まずステップS201により所定の初期化処理が行われて、例えば、メモリ23(RAM)の本処理用のワーク領域やフラグがクリアされる。続くステップS203では設定情報読出し処理が行われる。この処理では、予め設定されている所定の設定情報をメモリ23から読み出すことによって、次のステップS205により動作を開始させる対象となるECデバイスの情報を得たりECデバイスの動作態様の情報等を得たりする。
【0076】
所定の設定情報は、本処理とは別タスクで実行される「デバイス設定処理」により設定が行われる。例えば、制御処理のメニュー表示処理(S103)により表示される歯車マークを介助者等がタッチペン等で触れることによって、デバイス設定処理が起動されて当該所定の設定情報を設定することが可能になる。ここでは、デバイス設定処理に関する具体的なアルゴリズム等は図示や説明しないが、設定可能な項目を列挙する。
【0077】
所定の設定情報として設定可能な項目には、例えば、スピーカユニット31等のECデバイスを動作させるか否かの動作対象に関するもの(動作対象の設定)と、動作させる場合の詳細内容に関するもの(詳細内容の設定)がある。また本実施形態では、動作させる設定が行われているものを全て動作(全動作)させるか、またはそれらの中から1種以上をランダムに選択して動作(ランダム動作)させるか、についても設定可能な項目も含まれる(動作態様の設定)。
【0078】
例えば、スピーカユニット31の場合、「音響出力あり」、「出力なし」のいずれかを選択する(動作対象の設定)。「音響出力あり」を選択した場合には、「音声」、「音楽」のいずれかを選択し、さらに「男性」の声、「女性」の声のいずれかを選択する。そして、「男性」、「女性」のいずれの場合も「成人」の声、「子供」の声のいずれかを選択して完了する(詳細内容の設定)。一方、「音響出力あり」で「音楽」を選択した場合には、曲目として、例えば「楽曲A」、「楽曲B」、「楽曲C」のいずれかを選択して完了する(詳細内容の設定)。また「出力なし」を選択した場合にはそれで選択が完了する(動作対象の設定)。
【0079】
また、バイブレータユニット34の場合、「振動あり」、「振動なし」のいずれかを選択し(動作対象の設定)、「振動あり」を選択した場合には、「連続振動」、「間欠振動」、「ランダム振動」のいずれかを選択して完了する(詳細内容の設定)。また「振動なし」を選択した場合にはそれで選択が完了する(動作対象の設定)。「連続振動」は連続して振動し、「間欠振動」は所定時間間隔で振動する。また「ランダム振動」は不規則なタイミング(時期)や時間長さ(期間)で振動する。
【0080】
さらに、ファン45,46の場合には、「送風(香風)あり」、「送風(香風)なし」のいずれかを選択し(動作対象の設定)、「送風(香風)あり」を選択した場合には風量の「強」、「中」、「弱」のいずれかを選択して完了する(詳細内容の設定)。また「送風(香風)なし」を選択した場合にはそれで選択が完了する(動作対象の設定)。括弧内の香風は、ファン45(またはファン46)に対応するフィルタ43(またはフィルタ44)に香水等を染み込ませたり芳香化合物を包み込んだりしている場合である。
【0081】
なお、香りや芳香は、フィルタ43,44に染みこませる香水、アロマオイルや包む芳香化合物の種類により決まるが、例えば、フィルタ43,44に供給可能な香りのマイクロカプセルを機械的に選択可能な機構が上方収容室11a等に収容されており、かつ、その選択をソフトウェア的に行うことができる場合には、香風の香りについて、「ラベンダー」、「ペパーミント」、「レモン」等を選択可能に構成してもよい。
【0082】
また、ファン45の近傍に配置されているペルチェユニット47の場合には、「冷風あり」、「温風あり」、「冷熱風なし」のいずれかを選択し(動作対象の設定)、「冷風あり」または「温風あり」を選択した場合には、ファン45の設定に移行して風量の「強」、「中」、「弱」のいずれかを選択して完了する(詳細内容の設定)。また「冷熱風なし」を選択した場合にはそれで選択が完了する(動作対象の設定)。
【0083】
なお、図略のミストジェネレータ(蒸気発生装置)が上方収容室11aに設けられている場合には、「ミストあり」、「ミストなし」のいずれかを選択し(動作対象の設定)、「ミストあり」を選択した場合には、ファン45またはファン46の設定に移行して風量の「強」、「中」、「弱」いずれかを選択して完了する(詳細内容の設定)。また「ミストなし」を選択した場合にはそれで選択が完了する(動作対象の設定)。
【0084】
なお、このような「デバイス設定処理」により設定可能な各ECデバイスごとの「動作対象の設定」および「詳細内容の設定」は、各ECデバイスごとに設定した一群(ひとまとまり)の情報としてメモリ23に保存する(記憶させる)ことができる。
【0085】
例えば、動作対象の設定として『スピーカユニット31は○(動作させる)、バイブレータユニット34は○、ファン45,46は×(動作させない)、ペルチェユニット47は○』であり、詳細内容の設定として『スピーカユニット31は「女性」かつ「成人」の声、バイブレータユニット34は「連続振動」、ペルチェユニット47は「冷風あり」かつファン45が風量「強」』であるものをメモリ23に記憶させて「お気に入り!」として登録することが可能である。「お気に入り!」として登録された一群の情報は、例えば、設定情報読出し処理(S203)により優先的に読み出される。また、このような一群の情報は、識別可能に英数字等を付与して複数種類をメモリ23に記憶させて登録できるように構成してもよい。これにより、複数種類の一群の情報の中から任意のものを設定情報読出し処理(S203)により読み出し得るように設定することが可能になる。
【0086】
また、これらのECデバイスのうち、動作させる設定が行われているものを全て動作(全動作)させるか、または動作させる設定が行われているものの中から1種以上をランダムに選択して動作(ランダム動作)させるか、についての動作態様の設定も行われる。
【0087】
例えば、動作対象として『スピーカユニット31は○(動作させる)、バイブレータユニット34は○、ファン45,46は×(動作させない)、ペルチェユニット47は○』の設定が行われている場合には、スピーカユニット31、バイブレータユニット34およびペルチェユニット47の全てを動作させるか(全動作)、またはスピーカユニット31、バイブレータユニット34およびペルチェユニット47のうち1種以上をランダムに動作させるか(ランダム動作)を選択して完了する。
【0088】
このようなECデバイスの動作対象の設定、詳細内容の設定や動作態様の設定等が設定される所定の設定情報を、ステップS203の設定情報読出し処理によって取得すると、続くステップS205により設定動作開始処理が行われる。ステップS205では、動作対象の設定が行われているECデバイス(先の例では、スピーカユニット31、バイブレータユニット34およびペルチェユニット47)に対して、所定の動作を行わせる処理を開始する。ファン45,46は、ECデバイスであってもこれら単独では動作させる設定が行われていない(×(動作させない))ので、ここでは設定動作開始処理の対象にならない。
【0089】
動作対象の設定がされている、スピーカユニット31、バイブレータユニット34およびペルチェユニット47のそれぞれに対しては、設定情報読出し処理(S203)で読み出した所定の設定情報から、例えば、次のように詳細内容の設定が行われていると想定する。スピーカユニット31は「女性」かつ「成人」の声に設定され、バイブレータユニット34は「連続振動」に設定され、ペルチェユニット47は「冷風あり」かつファン45が風量「強」に設定されている。このような詳細内容の設定がスピーカユニット31等に行われている場合においては、これらは次のようなアイキャッチング動作を行う。
【0090】
例えば、制御処理による画像表示処理(S115)の開始と同時または開始前後のタイミングで、バイブレータユニット34が動作してクールダウンパッド10の本体ケース11が連続して振動する。またペルチェユニット47とファン45が動作して排気スリット13から冷たい風が強く吹き出す。そして、コンテンツ50の後に表示されるコンテンツにテキストデータが含まれている場合には、そのテキスト文が成人女性に近い合成音声で読み上げられてスピーカユニット31から出力される。
【0091】
先の例のタイトルが「0の声にするよ」のコンテンツ60においては、コンテンツ断片60aが表示されるタイミングで「こえ」、またコンテンツ断片60bが表示されるタイミングで「こえ、大きいよ」、さらにコンテンツ断片60cが表示されるタイミングで「こえ、0にするよ」とそれぞれ成人女性に近い合成音声で読み上げられてスピーカユニット31から出力される。また、タイトルが「踊るのをやめるよ」のコンテンツ70ではコンテンツ70dが表示されるタイミングで「踊るのをやめるよ」と成人女性に近い合成音声で読み上げられてスピーカユニット31から出力される。
【0092】
制御処理による画像表示処理(S115)が完了すると、つまり動画等の表示が終わると、アイキャッチング動作停止処理(S117)が行われる。そのため、アイキャッチング動作処理では、制御処理から出力される停止指示情報の有無をステップS207により判定し、停止指示情報が届くまで前述したアイキャッチング動作を続ける(S207;No)。制御処理から停止指示情報が届いた場合には(S207;Yes)、ステップS209により設定動作終了処理が行われる。これにより、動作対象の設定がされている、スピーカユニット31、バイブレータユニット34およびペルチェユニット47は、それぞれ動作を停止する。設定動作終了処理(S209)が完了すると、一連の本アイキャッチング動作処理が終了する。
【0093】
このようなアイキャッチング動作処理によるアイキャッチング動作により、コンテンツ50による視覚的に刺激のある動画等が液晶ディスプレィ26に映し出されることに加えて、排気スリット13からは冷たい風が吹き出し、またクールダウンパッド10の本体ケース11が振動し、さらにはスピーカユニット31からは成人女性のような音声で「こえ、大きいよ」や「踊るのをやめるよ」等の呼びかけが聞こえる。そのため、LED42の発光によりクールダウンパッド10に注目した対象者は、視覚だけでなく触覚や聴覚に対しても刺激を受けることができる。したがって、対象者の視線や注意を液晶ディスプレィ26の画面表示に引き付けることが可能になる。また動画等を対象者が繰り返して見たり動画等とともにスピーカユニット31から出力される呼び掛けの音声を聞いたりすることによって、精神的に落ち着くことが可能になる。
【0094】
なお、前述した動作態様の設定として、ランダム動作させる設定が行われている場合には、動作させる設定が行われているものの中から1種以上をランダムに選択して動作させることになる。例えば、先の例では、動作対象の設定がされている、スピーカユニット31、バイブレータユニット34およびペルチェユニット47のうち、スピーカユニット31だけがアイキャッチング動作を行ったり、バイブレータユニット34とペルチェユニット47の2つがアイキャッチング動作を行ったり、またこれら3つのECデバイスがアイキャッチング動作を行ったりする。また他のランダム動作として、動作させる設定が行われているECデバイスの動作タイミング(動作時期)や動作期間を不規則に変更してアイキャッチング動作を行うように構成してもよい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態のクールダウンパッド10では、MPU22、メモリ23、液晶ディスプレィ26、タッチパネル27、LED42を備える。MPU22は、タッチパネル27に伝えたい情報に対応した所定情報が入力されると、(1)LED42を点灯させた後または点灯させるとともに、(2)所定情報に基づいてメモリ23から読み出した動画等を、液晶ディスプレィ26に繰り返し表示させる。これにより、タッチパネル27に所定情報が入力されると、LED42が点灯した後、動画等が液晶ディスプレィ26に繰り返し表示されるので、例えば、パニック状態の対象者(発達障害者や幼児等)に対しても、LED42の点灯によって注意を促して液晶ディスプレィ26に注目させることが可能になり、対象者に伝えたい情報を、絵等で表した動画等として何回も繰り返して見せることができる。したがって、伝えたい情報を容易に伝達することができる。
【0096】
また、対象者のいる周囲環境が突然変化した場合には、その変化に対応して当該対象者自身がとるべき行動を絵等により表した動画等を、選択し得る所定情報がタッチパネル27に入力されることによって、その動画等が液晶ディスプレィ26に繰り返し表示される。そのため、対象者がその動画等を何回も繰り返して見ることで精神的に落ち着くことができ、またそのような突然の変化に対して自分がとるべき対応がパターン化されて、見通しをつけ易くすることが可能になる。したがって、対応パターンの学習を容易に行うことができる。
【0097】
また、本実施形態のクールダウンパッド10では、対象者の聴覚、嗅覚または触覚を刺激し得る媒体を出力する出力部として、スピーカユニット31、バイブレータユニット34、フィルタ43,44、ファン45,46、ペルチェユニット47を備える。MPU22は、動画等を液晶ディスプレィ26に表示させる期間中にスピーカユニット31等の出力部から、対象者の聴覚等を刺激し得る媒体を出力させる。これにより、動画等が液晶ディスプレィ26に表示される前にLED42が点灯することに加えて、動画等が液晶ディスプレィ26に表示されている期間中は対象者の聴覚等を刺激し得る媒体がスピーカユニット31等の出力部から出力されるので、対象者の注意を動画等が表示される液晶ディスプレィ26に容易に引き付けることが可能になる。したがって、伝えたい情報をさらに容易に伝達することができる。また、対応パターンの学習をより容易に行うことができる。
【0098】
さらに、本実施形態のクールダウンパッド10では、(a)対象者の聴覚を刺激し得る空気の振動を出力するスピーカユニット31と、(b)対象者の嗅覚を刺激し得る芳香を有する風を出力するフィルタ43,44およびファン45,46と、(c)対象者の触覚を刺激し得る振動を出力するバイブレータユニット34や冷風や熱風を出力するファン45,46およびペルチェユニット47と、を備える。MPU22は、(a)スピーカユニット31、(b)ファン45,46、(c)ファン45,46およびペルチェユニット47の中から、2種以上の出力部の中から1種以上の出力部をランダムに選択して媒体を出力させたり、2種以上の出力部について媒体を出力する時期および期間をランダムに選択して媒体を出力させたりする。これにより、対象者の聴覚、嗅覚または触覚が、選択的や時間的に不規則に刺激されるので、当該対象者が同じ動画等を見ることに慣れたり飽きたりするのを抑制することが可能になる。
【0099】
なお、上述した本実施形態では、発光部としてLED42を、クールダウンパッド10の本体ケース11に形成されるLEDホルダ16により保持する構成を例示して説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、タブレットパソコン20の液晶ディスプレィ26に対象者の注意を引き付けることが可能であれば、例えば、本体ケース11と別体に構成したホルダでLED42を保持してもよいし、また別体に構成されて本体ケース11に取り付けられたホルダでLED42を保持してもよい。
【0100】
また、上述した本実施形態では、発光部として、LED42を発光させる構成を例示して説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、例えば、LED42を廃止してその代わりにタブレットパソコン20の液晶ディスプレィ26を全面白色や全面赤色等の寒色を除く有彩色に発光させてもよい。これにより、LED42が不要になるため、部品コストを低減させることが可能になる。
【0101】
さらに、上述した本実施形態では、出力部として、典型的なタブレットパソコン20が備えているスピーカユニット31、バイブレータユニット34に加えて、フィルタ43,44、ファン45,46やペルチェユニット47を用いる構成を例示して説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、タブレットパソコン20のスピーカユニット31の音響出力やバイブレータユニット34の振動出力が第3の引付け動作として機能して対象者の注意を液晶ディスプレィ26に引き付けることが可能であれば、これら以外のフィルタ43,44、ファン45,46やペルチェユニット47を廃止してもよい。これにより、フィルタ43,44、ファン45,46やペルチェユニット47が不要になるため、さらに部品コストを低減させることが可能になる。また、LED42の代わりに液晶ディスプレィ26を全面白色や全面赤色等に発光させることによって、LED42も廃止できる場合には、必要なハードウェアは典型的なタブレットパソコン20で足りる。つまり、典型的なタブレットパソコン20と本アプリだけで、本実施形態のクールダウンパッド10の主要機能(第1~第3の引付け動作による機能)を実現し得るものを構成することが可能になる。
【0102】
また、上述した本実施形態では、対象者に伝えたい情報を表した動画または静止画として、線画で表したイラスト(絵)や文字で構成されるアニメーションを例示して説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、対象者に伝えたい情報を、例えば、記号や図形または写真によって表してもよい。また可能であれば、対象者に伝えたい情報を1つの静止画で表してもよい。
【0103】
また、上述した本実施形態では、発光部としてのLED42を発光(点灯)させた後、動画または静止画としてのコンテンツ50,60やコンテンツ50,70を液晶ディスプレィ26に繰り返して表示するようにアルゴリズムを構成したが(S113~S123)、例えば、LED42の発光を含めてコンテンツ50,60やコンテンツ50,70を液晶ディスプレィ26に繰り返して表示するようにアルゴリズムを構成してもよい。この場合には、
図3に示すフローチャートにおいては、表示終了判定処理(S123)の判定が「No」である場合の飛び先が画像データ読出し処理(S109)とLED点灯処理(S111)との間になる。これにより、コンテンツを液晶ディスプレィ26に繰り返し表示するごとに毎回LED42が発光(点灯)するので、対象者の特性によっては注意を引きやすい場合もあり得る。
【0104】
また、上述した本実施形態では、出力部として、スピーカユニット31、バイブレータユニット34、ファン45,46、ペルチェユニット47やミストジェネレータを用いる構成を例示して説明したが、本発明ではこれに限られることはなく、対象者の注意を引き得るアイキャッチング動作が可能であれば、例えば、アロマディフューザ(香り拡散器)やスモークジェネレータ(煙発生器)等のデバイスを出力部として用いてクールダウンパッド10を構成してもよい。
【0105】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0106】
10…クールダウンパッド(情報伝達装置)
11…本体ケース
11a…上方収容室
11b…バッテリ収容室
12…タブレット収容部
13,14…排気スリット
15…吸気スリット
16…LEDホルダ
19…カバー
20…タブレットパソコン
21…ハウジング
22…MPU(制御部)
23…メモリ(記憶部)
26…液晶ディスプレィ(表示部、発光部)
27…タッチパネル(入力部)
31…スピーカユニット(出力部、第1出力部)
34…バイブレータユニット(出力部、第3出力部)
41…ドライバユニット
42…LED(発光部)
43,44…フィルタ(出力部、第2出力部)
45,46…ファン(出力部、第2出力部、第3出力部)
47…ペルチェユニット(出力部、第3出力部)
49…バッテリ
50,60,70…コンテンツ(動画)
50a~50d,60a~60d,70a~70d…コンテンツ断片(静止画)
51~54,61~68,71~74…パーツ
【要約】
【課題】発達障害者や幼児等の対象者に対して、伝えたい情報を容易に伝達し得る情報伝達装置を提供する。
【解決手段】クールダウンパッド10では、MPU、メモリ、液晶ディスプレィ26、タッチパネル27、LED42を備える。タブレットパソコン20のMPUは、タッチパネル27に所定情報が入力されると、(1)LED42を点灯させた後、(2)所定情報に基づいてメモリから読み出した動画等を液晶ディスプレィ26に繰り返し表示させる。これにより、タッチパネル27に所定情報が入力されると、LED42が点灯した後、動画等が液晶ディスプレィ26に繰り返し表示されるので、例えば、パニック状態の対象者に対してもLED42の点灯により注意を促して液晶ディスプレィ26に注目させることが可能になり、対象者に伝えたい情報を、絵等で表した動画等として何回も繰り返し見せることができる。したがって、伝えたい情報を容易に伝達することができる。
【選択図】
図1