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特許7376668エチホキシンの重水素化類似体、それらの誘導体、およびそれらの使用
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  • 特許-エチホキシンの重水素化類似体、それらの誘導体、およびそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】エチホキシンの重水素化類似体、それらの誘導体、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/536 20060101AFI20231031BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231031BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231031BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231031BHJP
   C07D 265/18 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
A61K31/536
A61P25/00
A61P25/02
A61P29/00
A61P27/02
A61P21/00
A61P25/06
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P9/10
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/30
A61P25/08
A61P25/20
A61P19/02
A61P1/00
A61K9/20
A61K9/48
C07D265/18
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176234
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2020139537の分割
【原出願日】2016-03-18
(65)【公開番号】P2023009114
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】62/135,979
(32)【優先日】2015-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520284012
【氏名又は名称】ギャバ セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダッセ、オリヴィエ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0038331(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0039453(US,A1)
【文献】特表2013-535437(JP,A)
【文献】特開2011-1308(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005753(WO,A1)
【文献】FOSTER A. B.,Deuterium Isotope Effects in the Metabolism of Drugs and Xenobiotics: Implications for Drug Design,ADVANCES IN DRUG RESEARCH,1985年,Vol.14,Pages 1-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系障害、末梢神経系障害、及び炎症状態を治療するための薬学的組成物であって、
該薬学的組成物が、
治療有効量の6-クロロ-N-(エチル-d )-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、又はその薬学的に許容可能な塩
を含み、
但し、上記中枢神経系障害が不安障害を含まない、
上記薬学的組成物。
【請求項2】
前記中枢系障害は、多発性硬化症、網膜変性及び網膜に対する光誘発損傷、痙性脊髄麻痺における筋弛緩、脊髄性筋萎縮症、脳性麻痺、三叉神経痛、片頭痛、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、フリードライヒ病、せん妄、認知症、健忘障害、認知障害、脳卒中及び外傷性脳損傷(TBI)を含む虚血性又は出血性脳血管障害、母斑症、筋萎縮性側索硬化症、統合失調症、気分障害、うつ病、薬物離脱症状、吃音、自閉症スペクトラム障害、痙攣性障害、てんかん、睡眠障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、破壊的行動障害、及び薬物関連障害からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記中枢神経系障害は、認知障害、せん妄、認知症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、HIV疾患による認知症、頭部外傷による認知症、パーキンソン病による認知症、ハンチントン病による認知症、ピック病による認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病による認知症、及び健忘障害からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記中枢神経系障害は多発性硬化症である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記中枢神経系障害はてんかんである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記中枢神経系障害は、網膜変性及び網膜に対する光誘発損傷から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記中枢神経系障害は、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫神経障害、心的外傷後ストレス障害、及び急性ストレス障害からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記中枢神経系障害は筋萎縮性側索硬化症である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記中枢神経系障害は、気分障害、単一エピソード又は再発性の大うつ病性障害、気分変調性障害、うつ病性障害NOSを含むうつ病性障害、双極性I障害、双極性II障害、気分循環性障害、双極性障害NOSを含む双極性障害、一般的な医学的状態による気分障害、物質誘発気分障害、及び気分障害NOSからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記末梢神経系障害は、糖尿病性神経障害、薬物誘発神経障害、炎症性神経障害、酵素欠乏誘発神経障害、遺伝性運動感覚神経障害、末梢神経障害、HIV誘発神経痛、及びヘルペス後神経痛からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記炎症状態は関節リウマチである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記炎症状態は腸運動障害である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記腸運動障害は過敏性腸症候群である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
薬学的組成物が経口投与用に製剤化されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
薬学的組成物が経口の錠剤又はカプセル剤である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2015年3月20日に出願された米国仮出願第62/135,979号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薬物の吸着、分布、代謝、および排泄(ADME)特性は、任意の薬物の重要な特質であり、一方で安全で効果的な薬物と他方で臨床的および商業的な不具合との差を意味し得る。薬物製剤技術(および薬物複合体またはプロドラッグ)における最近の進歩は、限られた場合でADMEを改善するいくつかの能力を提供してきたが、基本的なADMEの問題は依然として臨床試験における薬物の不具合の主要な原因である。現在承認されている薬物および薬物候補に関する共通のADMEの課題は迅速な代謝である。インビトロおよび前臨床試験において非常に有効である薬物候補は、あまりにも急速に代謝されて体から排除され、薬理学的効果をほとんど与えないか全く与えない。早い代謝を克服するための「バンドエイド(Band Aid)」努力には、非常に高いレベルでの服用または非常に頻繁な服用が含まれる。迅速な代謝に対するこれらの解決策は両方とも、薬物の副作用の増加、毒性代謝物への曝露の増加、および頻繁であることよる患者の服用コンプライアンスの低下を含む問題を伴う。
【0003】
限られた場合では、特定の薬物の特質を改善するために代謝阻害剤が使用されてきた(Kempf,D.et al.Antimicrobial Agents and Chemotherapy、41(3)、p.654(1997)、Wang,L.et al.Clinical Pharmacology and Therapeutics、56(6Pt.1)、p.659(1994)を参照)。しかしながら、この策略は広く使用されておらず、重大な不要な副作用、および望ましくない薬物-薬物相互作用につながり得る。
【0004】
化学者による薬物構造の最適化は、通常、生物学的活性および/または代謝特性を改善するための構造改変の反復プロセスを含む。しかしながら、生物学的分解プロセスを停止または遅延させるのに必要とされる所望のファーマコフォア構造の著しい構造改変に起因して、生物学的効能および有効性を犠牲にしてより良好な代謝プロフィールがしばしば生じる。生物学的効能および有効性を実質的に変更することなく薬物の代謝プロフィールを改善するための潜在的な策略は、1つ以上の水素原子を重水素と交換(置換)し、これによりシトクロムP450が媒介する代謝を遅延させることである。重水素は、核内に追加的な中性子を含有し、安全で安定な非放射性の水素の同位体である。水素と比較して増加した重水素の質量に起因して、炭素と重水素との間の結合は、水素と炭素との間の結合と比較して高いエネルギー(より強い)を有し、代謝反応速度を低下させ得る。低下した代謝反応速度は、分子のADME特性に好都合に影響し、効能、有効性、安全性、および忍容性の改善をもたらし得る。重水素の他の物理的特質は、本質的に水素と同一であり、重水素置換で分子に生物学的影響を及ぼすことは期待されないであろう。
【0005】
およそ40年間で、代謝を改善するための重水素置換を採用する薬物は少数しか承認されていない(Blake,M et al.、J.Pharm.Sci.、64、p.367(1975)、Foster、A.Adv.Drug Res.、14、p.1(1985)、Kushner,D et al.、Can.J.Physiol.Pharmacol.、p.79(1999)、Fisher M et al.、Curr.Opin.Drug Discov.Devel.、9、p.101(2006)参照)。しかしながら、水素の重水素置換の代謝速度に対する結果を予測することはできず、変化しやすい結果をもたらしてきた。いくつかの場合では、重水素化された化合物はインビボで低下した代謝クリアランスを有していたが、他の場合ではクリアランス速度に変化はなく、更に他の場合では代謝クリアランス速度の増加を予想外に示した。この変動性により、ADMEの専門家は、代謝率を低下させるための策略的薬物設計の改変としての重水素置換を疑問に感じているかまたは否定することになった(Foster and Fisher参照)。
【0006】
代謝の部位および位置が知られている場合であっても、重水素置換は代謝速度に予測可能な影響を及ぼさない。それは、特定の重水素置換された薬物(候補)を調製し、代謝速度の変化の程度を決定することができる試験をすることによってのみ行われる。Fukuto,J et al.、J.Med.Chem.、34(9)、p.2871(1991)参照。ほとんどではないにしても、多くの薬物候補は代謝が可能な複数の部位を有するが、これは各薬物分子に特有であるため、重水素置換は、各候補に対するその効果について異なる研究となる。Harbeson,L.and Tung,R.Medchem News、2、p.8(2014)およびその中の参考文献を参照。水素の重水素置換が代謝速度および/または代謝切り替え(switching)の向上をもたらしてきたか、または代謝遅延の後であっても分子のプロフィールのインビボ変化がなかった薬物候補のいくつかの例がある。Harbesonらは、予測される代謝的に不安定な位置でのパロキセチンの選択的重水素化は、インビボでの代謝の増加を実証する類似体を実際に生成したことを明らかにしている(Scott L.Harbeson and Roger D.Tung、Deuterium in Drug Discovery and Development、46 annual report in medicinal chemistry、403-417(2011))。更に、Miwaは、代謝的に不安定な部位の重水素化は、代替的代謝経路の増強(または切り替え)を導き、その後不確定の結果をもたらす場合があると報告している(Miwa,G.、Lu,A.、Kinetic Isotope Effects and ‘Metabolic Switching’ in Cytochrome P450-Catalyzed Reactions、7 Bioessays、215-19(1987))。フェンテルミンはその代謝速度を低下させるために重水素化されているが、N,N-ジメチル水素を重水素で置換すると観察された変化はなかった(Allan B.Foster、“Deuterium Isotope Effects in the Metabolism of Drugs and Xenobiotics:Implications for Drug Design”、Advances in Drug Research、(14)、1-40(1985))。同様に、トラマドールの代謝的活性部位の重水素化は効果持続時間の増加をもたらさなかった(Shao et al.、“Derivatives of Tramadol for Increased Duration of Effect”、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters、(16)、691-94(2006))。
【0007】
エチホキシン[6-クロロ-2-(エチルアミノ)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン]は、Hoffmann、Iらによる米国特許第3,725,404号に最初に開示された。エチホキシンは、最小限の鎮静作用および運動失調副作用を有するヒトにおいて効果的な急性作用の抗不安薬として示されてきた。Stein,D.、Adv.Ther.32(1)、p.57(2015)、Nguyen,N.et al.、Hum.Psychopharm.21、p.139(2006)、Micallef,J.、Fundam、Clin、Pharmacol.、15(3)、p.209(2001)。
【0008】
エチホキシン[6-クロロ-2-(エチルアミノ)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン]の塩酸塩はStresam(商標)として知られており、不安(具体的には、身体的症状を伴う不安)の治療のために主にフランスおよび限られた数の他の市場で販売されている。ヒトにおけるエチホキシンの短い半減期(4~6時間)は、その使用における著しい制限である。エチホキシンの推奨服用スケジュールは、1日3回(またはそれより多い用量で1日2回)である。このスケジュールは患者にとってかなり不便であり、服用ノンコンプライアンスの一因となり得る。Santana,L.et al.、Patient Preference and Adherence、5、p.427(2011)参照。研究はまた、特に用量のCmaxの関係における薬物動態的パラメータの著しい個々の変動性を示している(エチホキシンのパッケージの挿入物の情報、Lundbeck Argentina SAを参照)。患者間および患者内の変動性は薬物代謝容量の差に主に基づいている。患者間および患者内の変動性は最適な治療を妨げるのでこれを低下させることが望ましい。不全代謝者(poor metabolizers)は、より高い薬物レベルに起因する目標を外れた副作用のリスクがより高い場合がある。過剰代謝者(excessive metabolizers)は、過度に減少した薬物レベルに起因する不十分な有効性から解放されない場合がある。(Wilkinson,G.The New England Journal of Medicine(352)、2211-21(2005)を参照。エチホキシンの代謝安定性を高めることにより、代謝容量が決定要因とならなくなるため、患者間および患者内の変動性が減少する。
【0009】
結果として、エチホキシンの望ましく有益な効果にもかかわらず、毎日の複数回服用の必要性および著しい薬物レベルの患者変動性は、その利点を制限する。それ故、上記の疾患および状態を治療するための新規な化合物が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡潔には、本発明は、一般に、エチホキシンの重水素化類似体、ならびにそれらの調製および使用方法、ならびにそれを含有する薬学的組成物に関する。より具体的には、本発明のエチホキシンの重水素化類似体は、一般構造によって表される化合物であって、
【化1】
【0011】
式中、各X、X、Xは独立して、水素および重水素からなる群から選択される、化合物であり、その化合物には、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグが含まれる。
【0012】
本発明はまた、式Iの化合物、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグ、ならびに1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤、担体、または希釈剤を含む薬学的製剤に関する。そのような製剤は、治療的に有効量の、式Iの化合物、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグ、ならびに1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤、担体、または希釈剤を含有する。
【0013】
本発明はまた、GABA受容体複合体の調節または内因性神経ステロイドおよび神経活性ステロイドのレベルの増加に適した状態、CNS障害、PNS障害、または炎症状態を治療するための薬学的組成物であって、その治療は、そのような治療を必要とする対象に治療的に有効量の式Iの化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグを投与することを含む、薬学的組成物に関する。
【0014】
本発明はまた、GABA受容体複合体の調節または内因性神経ステロイドおよび神経活性ステロイドのレベルの増加に適した状態、CNS障害、PNS障害、または炎症状態を治療するための式Iの化合物、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグの使用であって、以下により十分に記載されているように、そのような治療を必要とする対象において治療的に有効量のそのような化合物を投与することを含む使用に関する。
【0015】
別の態様では、本発明はまた、以下により十分に記載されているように、治療的に有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含むキット、ならびにGABA受容体複合体の調節もしくは内因性神経ステロイドおよび神経活性ステロイドのレベルの増加に適した状態、CNS障害、PNS障害、または炎症状態に苦しんでいるヒトの患者を治療するための指示を提供する。
【0016】
本発明の追加的な実施形態および利点は、以下の明細書に部分的に説明され、明細書の記載から部分的に明らかであるか、または本発明の実施によって知ることができる。本発明の実施形態および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素および組合せによって実現され、達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的で説明的なものに過ぎず、特許請求された本発明を限定しないことを理解されたい。本明細書に引用されている全ての文章および参考文献はその全体が参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】雄のSprague-Dawleyラットにおける50mg/kgの用量のPO後のエチホキシンおよび例1の化合物の平均血漿中濃度-時間プロフィールを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、エチホキシンの治療効果を有するが、驚くほど優れたADME特性を有するエチホキシンの重水素化類似体に関する。
【0019】
エチホキシンは、前臨床で広く研究されており、不安、疼痛、炎症性疼痛、神経損傷、多発性硬化症、アルコール離脱、てんかん、および網膜の光誘発病変などのCNSおよび精神障害の多くの動物モデルにおいて有効性を実証してきた。Verleye,M.et al.、Pharmacol.Biochem.Behav.、82(4)、p.712(2005)、Ugale,R.et al.、Brain Res.、12、p.193(2007)、Verleye,M.et al.、Alcohol、43(3)、p.197(2009)、Aouad,M.et al、Pain、147(1-3)、p.54(2009)、Girard,C.et al.、J.Neuroendocrinol.、24(1)、p.71(2012)、Zhou,X.et al.、Mol.Med.Rep.、8(1)、p.75(2013)、Aouad,M.et al.、Eur.J.Pain、18(2)、p.258(2014)、Aouad,M.et al.、Pain、155(2)、p.408(2014)、Zhou,X.et al.、Muscle Nerve、50(2)、p.235(2014)、Dai,T.et al.、J.Reconstr.Microsurg.、30(6)、p.381(2014)、Juif,P.et al.、Neuropharmacology、91、p.117(2015)、Verleye,M.et al.、WO2015113991。
【0020】
エチホキシンは、GABAイオンチャネル複合体のアロステリック調節ならびに内因性神経ステロイドおよび神経活性ステロイドのレベルの増加を介して作用することが科学文献に記載されている。Verleye,M.et al.、Neuroreport.、10(15)、p.3207(1999)、Verleye,M.et al.、Neurosci.Lett.、301(3)、p.191(2001)、Hamon,A.et al.、Neuropharmacology、45(3)、p.293(2003)、Ugale,R.et al.、Brain Res.、12、p.193(2007)、Verleye,M.et al.、Pharmacol.Biochem.Behav.、82(4)、p.712(2005)。
【0021】
神経ステロイドおよび神経活性ステロイドは、抗炎症活性を示しており、例えば、プロゲステロンおよびアロプレグナノロンは、TBIのモデルにおいてサイトカインIL-1βおよびTNF-αの両方を減少させる(He,J.et al.Experimental Neurology、189、p.404(2004)を参照)。更に、主に副腎内で合成されるデヒドロエピアンドステロン(DHEA)は、サイトカインIL-6およびTNFの合成を阻害する(Straub,R.Rheumatology、39、p.624(1999)を参照)。神経ステロイドおよび/または神経活性ステロイドのレベルを増加させることによって、エチホキシンが神経炎症、末梢炎症、および様々な炎症状態を治療するのに効果的であり得ると考えられている。
【0022】
神経ステロイドおよび神経活性ステロイドは、前臨床モデルにおいて神経再生性および神経保護性であることが示されている。Brinton,R.Nature Reviews Endocrinology 9、241-250(2013)およびBorowicz,K.et.al.Frontiers in Endocrinology 2(50)、P.1(2011)を参照。同様に、エチホキシンはまた、前臨床的に神経再生性および神経保護性効果を示した(Girard et.al.Journal of Neuroendocrinology 24、71-81(2011)、Girard et.al.Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology 36、655-661(2009)、Zhou et.al.Muscle Nerve.50(2)、235-43(2014)を参照)。
【0023】
本発明は、正確な作用機序に限定されないが、エチホキシンの重水素化類似体は、神経変性および神経再生を含む神経保護の必要性に関連する状態、および神経変性および神経機能障害に関連する状態、ならびに炎症状態の治療に使用することができる。
【0024】
一態様では、本発明は、式Iの化合物であって、
【化2】
【0025】
式中、X、X、およびXの各々は独立して、水素および重水素から選択される、化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグに関する。
【0026】
定義
本明細書で他に述べない限り、使用される用語の定義は、有機合成および薬学科学の技術で使用される標準的な定義である。
【0027】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つよりもむしろ1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、使用の文脈が他に明らかに示されない限り、「および/または」を含むという意味で一般に採用される。
【0029】
複数形が化合物、塩などのために使用される場合、これは単一の化合物、塩なども意味するものと受け取られる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」は、溶質(例えば、式(I)の化合物またはその塩、エステル、もしくはプロドラッグ)および溶媒によって形成される可変化学量論の複合体を指す。本発明の目的のためのそのような溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害しない場合がある。好適な溶媒の例には、水、メタノール、エタノール、および酢酸が含まれる。一般に、使用される溶媒は薬学的に許容可能な溶媒である。好適な薬学的に許容可能な溶媒の例には、水、エタノール、および酢酸が含まれる。一般に、使用される溶媒は水である。
【0031】
「異性体」は、同一の分子式を有するが空間における原子の結合または配列の性質または順序に差を有する任意の化合物を意味する。そのような異性体の例には、例えば、二重結合のE-およびZ-異性体、鏡像異性体、およびジアステレオマーが含まれる。直線で結合を図示している本発明の化合物は、他に具体的に述べない限り、単一の異性体および/または両方の異性体を包含することが意図されており、同一の分子式を有するが空間において原子の結合または配列の性質または順序に差を有する任意の化合物を意味する。
【0032】
「GABA受容体」という用語は、GABAに検出可能に結合し、かつ塩化物コンダクタンスおよび膜分極における用量依存的変化を媒介するタンパク質複合体を指す。任意の改変がGABAに結合する受容体の能力を実質的に阻害しない(すなわち、GABAのための受容体の結合親和性の少なくとも50%が保持される)限りサブユニットは改変され得るが、天然に発生する哺乳動物(特にヒトまたはラット)のGABA受容体サブユニットを含む受容体が一般に好ましい。GABAのための候補GABA受容体の結合親和性は、その技術で知られている標準的なリガンド結合アッセイを使用して評価され得る。「GABA受容体」の範囲に入る様々なGABA受容体サブユニットがある。これらのサブタイプには、α1-6、β1-3、γ1-3、π、θ、ε、δ、およびσ1-3が含まれるがこれらに限定されない。GABA受容体は、ラットの大脳皮質の調製物、またはクローン化されたヒトGABA受容体を発現する細胞などの様々な供給源から得られ得る。特定のサブタイプは、標準的な技術を使用して(例えば、所望のサブユニットをコードするmRNAを宿主細胞に導入することにより)容易に調製され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「CNS障害」は、本明細書で提供される化合物または組成物で治療、予防、管理、または改善することができる中枢神経系の疾患または状態である。所定のCNS障害は、対象におけるGABA受容体調節に応答し、いくつかのCNS障害は、内在性神経ステロイドおよび神経活性ステロイドの増加に応答する。いくつかのCNS障害には、末梢神経系(「PNS」)も損なわれる構成要素が含まれる。例示的なCNS障害には、多発性硬化症、脊髄性筋萎縮症(脊髄の前角における神経細胞の機能の喪失によると考えられている)、痙性脊髄麻痺における筋弛緩、脳性麻痺、三叉神経痛、片頭痛、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、フリードライヒ病、網膜変性および網膜に対する光誘発損傷(光網膜炎、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、および黄斑変性症を含む)、せん妄、認知症、および健忘、および他の認知障害(せん妄、認知症、例えばアルツハイマー型認知症、血管性認知症、HIV疾患による認知症、頭部外傷による認知症、パーキンソン病による認知症、ハンチントン病による認知症、ピック病による認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病による認知症、一般的な医学的状態による認知症、物質誘発認知症、複数の病因による認知症、認知症NOS(以下、「特に特定されない(not otherwise specified)」をNOSと略す)、健忘障害(一般的な医学的状態による健忘障害、物質誘発健忘障害、健忘障害NOS、認知障害NOSなど)、脳卒中および外傷性脳損傷(TBI)を含む虚血性または出血性脳血管事態、母斑症(特に神経線維腫症)、筋萎縮性側索硬化症、統合失調症、気分障害(大うつ病性障害-単一エピソードまたは再発性、気分変調性障害、うつ病性障害NOSを含むうつ病性障害、双極性I障害、双極性II障害、気分循環性障害、双極性障害NOSを含む双極性障害、一般的な医学的状態による気分障害、物質誘発気分障害、気分障害NOSなど)、薬物離脱症状、吃音、自閉症、自閉症スペクトラム障害、ならびにてんかんなどの痙攣性疾患が含まれる。CNS障害にはまた、American Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、5th edition(DSM-V)に記載されている精神障害が含まれ、不安障害(広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫神経障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、医学的状態による不安障害、物質誘発不安障害、特に特定されない(NOS)不安障害)、気分障害、睡眠障害(原発性睡眠障害、例えば、原発性不眠症、原発性過眠症、ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠障害、睡眠異常症NOS、睡眠時随伴症(悪夢障害、夜驚症、夢遊病障害、睡眠時随伴症NOSを含む)、別の精神障害に続発する睡眠障害、例えば、不安、気分障害、および/または他の精神障害に続発する睡眠障害、一般的な医学的状態による睡眠障害、および物質誘発睡眠障害)、注意欠陥/注意欠陥多動性、および破壊的行動障害(注意欠陥/多動性障害混合型、不注意有意型および多動・衝動性有意型、注意欠陥/多動性障害NOS、行為障害、反抗的行為障害、および破壊的行動障害NOS)、ならびに物質関連障害が含まれる。精神障害には食欲不振および過食症などの摂食障害も含まれる。更なる精神障害およびそれらの障害の基準は、American Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、5th edition(DSM-V)に記載されており、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「PNS障害」は、本明細書で提供される化合物または組成物で治療、予防、管理、または改善することができる中枢神経系の疾患または状態である。所定のPNS障害は内因性神経活性ステロイドの増加に応答する。いくつかのPNS障害は運動神経および/または感覚神経の機能障害を伴い、脊髄および/または脳も損なわれる構成要素を含み得る。例示的なPNS疾患には、神経障害(神経障害には、糖尿病性神経障害などの代謝障害に関連する神経障害、アルコール誘発神経障害およびビンクリスチン誘発神経障害などの薬物誘発神経障害、ギラン・バレー症候群にあるような炎症プロセスに関連する神経障害、ファブリー病およびクラッベ病にあるような酵素欠損に関連する神経障害、抹消神経障害、ヘルペス後およびHIV誘発神経痛などの感染性神経障害状態、シャルコー・マリー・トゥース病などの遺伝性運動および感覚神経障害が含まれる)、および神経根神経障害疾患が含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「神経変性プロセス」は、脳(CNS)、脊髄、およびPNSによって媒介される神経機能の喪失につながるニューロンの機能障害および死により特徴付けられる。それらは、とりわけ、神経変性疾患または疾病(affection)、外傷(traumatism)、または毒素への曝露という用語で集合的に知られている病理学的状況から生じ得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「神経保護特性」は、神経変性プロセスを治療する本発明の化合物の能力である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、「神経ステロイド」および「神経活性ステロイド」という用語は、対象において天然に生成されるステロイドを指し、リガンド依存性イオンチャネルおよび他の細胞表面受容体との相互作用を介してニューロンの興奮性を変化させる。神経ステロイドは脳内で生成される。神経活性ステロイドは、末梢由来の副腎ステロイドまたは性腺ステロイドの変換によって生成される。神経ステロイドおよび神経活性ステロイドの例は、プレグネノロン、プレグナノロン、アロプレグナノロン、テトラヒドロデオキシコルチコステロン、デヒドロエピアンドロステロン、およびプロゲステロンである。神経活性ステロイドはCNSにおよび末梢に影響を及ぼし得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、疾患(本明細書に記述された疾患または障害を含む)の発症または進行を減少、逆転、抑制、減弱、軽減、停止、または安定化するか、疾患の重篤度を低下させるか、または疾患に関連する症状を改善することを意味する。一態様では、治療は予防を含まない。
【0039】
「疾患」とは、細胞、組織、または器官の正常な機能を損ねるまたは妨害する任意の状態または障害を意味する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、動物、典型的には患者などのヒトを含む哺乳動物である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、他に特定されない限り、化合物の「治療的有効量」および「有効量」という用語は、治療される疾患または障害に関連する1つ以上の症状を遅らせるかまたは最小限に抑えるために疾患の治療、予防、および/または管理において治療的利益を提供するのに十分な量を指す。「治療的に有効量」および「有効量」という用語は、治療全体を改善し、症状、または疾患または障害の原因を減少させるかもしくは回避し、または別の治療薬剤の治療有効性を向上させる量を包含し得る。
【0042】
「同時投与」および「組み合わせて」という用語は、2種の治療薬剤(例えば、本発明の化合物およびロラゼパム)を、同時に、共に、または特定の時間制限なしに連続して投与することを含む。一実施形態では、両方の薬剤は、同時に対象に存在するか、またはそれらの生物学的または治療的効果を同時に発揮する。一実施形態では、2種の治療薬剤は同じ組成物または単位剤形中にある。別の実施形態では、2種の治療薬剤は別の組成物または単位剤形中にある。
【0043】
合成に使用される化学物質の起源に依存して、天然の同位体存在度の多少の変動が合成化合物に発生することが認識される。それ故、エチホキシンの調製物は、少量の重水素化同位体置換体(isotopologues)アイソトポログを本質的に含有するであろう。天然に豊富な安定な水素および炭素同位体の濃度は、この変動にもかかわらず、本発明の化合物の安定同位体の置換の程度と比較して小さく、重要ではない。Wada,E et al.、Seikagaku、1994,66:15、Gannes、L Z et al.、Comp Biochem Physiol Mol lntegr Physiol、1998、119:725を参照。
【0044】
本発明の化合物において、特定の同位体として特に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すことを意味する。他に述べない限り、ある位置が「H」または「水素」として具体的に指定されている場合、その位置はその天然の存在度の同位体組成で水素を有すると理解される。また、他に述べない限り、ある位置が「D」または「重水素」と具体的に指定されている場合、その位置は、重水素の天然存在度である0.015%よりも少なくとも3340倍多い存在度(すなわち、少なくとも50.1%の重水素の組み込み)で重水素を有すると理解される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「同位体濃縮係数」という用語は、特定の同位体の同位体存在度と天然存在度との間の比を意味する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、少なくとも3500(各指定重水素原子で52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取り込み)、少なくとも6533(98%の重水素取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素取り込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素取り込み)の各指定重水素原子についての同位体濃縮係数を有する。
【0046】
「同位体置換体」という用語は、本発明の特定の化合物とはその同位体組成においてのみ異なる種を指す。
【0047】
本発明の化合物に言及する場合、「化合物」という用語は、分子の構成原子間に同位体の変動が存在し得ることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集合をいう。それ故、示された重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物は、その構造中の指定された重水素位置の1つ以上で水素原子を有するより少ない量の同位体置換体も含有することは当業者に明らかである。本発明の化合物におけるそのような同位体置換体の相対量は、化合物を作製するために使用される重水素化試薬の同位体純度、および化合物を調製するために使用される様々な合成工程における重水素の取り込み効率を含む多くの要因に依存する。しかしながら、上記で説明したように、そのような同位体置換体の相対量は合計で、その化合物の49.9%未満である。他の実施形態では、そのような同位体置換体の相対量は合計で、その化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という用語は、正当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して使用するのに好適であり、かつ合理的な利益/リスク比に見合った構成要素を指す。「薬学的に許容可能な塩」は、服用者に投与した際に、本発明の化合物を直接的または間接的に提供することができる任意の非毒性塩を意味する。「薬学的に許容可能な対イオン」は、服用者に投与した際に塩から放出された場合に毒性ではない塩のイオン部分である。薬学的に許容可能な塩を形成するために一般に採用される酸には、無機酸、例えば二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸、ならびに有機酸、例えばパラ-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸、ならびに関連する無機および有機酸が含まれる。それ故、そのような薬学的に許容可能な塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチレン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、および他の塩が含まれる。一実施形態では、薬学的に許容可能な酸付加塩には、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されたもの、特にマレイン酸などの有機酸で形成されるものが含まれる。薬学的に許容可能な塩およびそれらの製剤の調製のための標準的な方法は、その技術で良く知られており、例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」A.Gennaro、ed.、20th edition、Lippincott、Williams&Wilkins、Philadelphia、PA」を含む様々な参考文献に開示されている。
【0049】
本発明の化合物(式Iの化合物を含む)は、例えば、重水素置換または別の方法の結果として、不斉炭素原子を含有し得る。そのようなものとして、本発明の化合物は、個々の鏡像異性体または2種の鏡像異性体の混合物として存在し得る。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物もしくはスカレミック(scalemic)混合物として、または別の可能な立体異性体を実質的に含まない個々のそれぞれの立体異性体として存在し得る。本明細書で使用される場合、「他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、および最も好ましくは2%未満の他の立体異性体、または「X」%未満(Xは0~100を含めた数である)の他の立体異性体が存在することを意味する。所与の化合物の個々の鏡像異性体を得るまたは合成する方法は、その技術で知られており、最終化合物または出発物質または中間体に対して実施可能なように適用され得る。
【0050】
他に示されない限り、開示された化合物が立体化学を特定せずに構造によって命名または図示され、1つ以上のキラル中心を有する場合、化合物の全ての可能な立体異性体を表すものと理解される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「安定な化合物」という用語は、それらの製造を可能にするのに十分な安定性を有し、かつ本明細書に詳述された目的(治療製品への製剤化、治療化合物の生成に使用するための中間体、単離可能または保存可能な中間体化合物、治療薬剤に応答する疾患または状態の治療を含む)に有用であるのに十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0052】
「D」および「d」は両方とも重水素を指す。他に示されない限り、「立体異性体」は鏡像異性体およびジアステレオマーの両方を指す。
【0053】
「重水素で任意に置換された」という用語は、参照部分における1つ以上の水素原子が、対応する数の重水素原子で置換され得ることを意味する。
【0054】
本発明は、上記式Iの化合物のプロドラッグを含む。一般に、そのようなプロドラッグは、要求される式Iの化合物にインビボで容易に変換可能である式Iの化合物の機能的誘導体である。好適なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs、ed.H.Bundgaard、Elsevier、1985に記載されている。そのようなプロドラッグには、アルコールおよび酸からのエステルプロドラッグおよびアルコールのホスフェートプロドラッグが含まれるがこれらに限定されない。プロドラッグは、改善された化学的安定性、改善された患者受容性およびコンプライアンス、改善されたバイオアベイラビリティ、持続性作用期間、改善された臓器選択性、改善された製剤(増加した水溶性を含む)、および/または減少した副作用(毒性を含む)の目標を達成するための製剤であり得る。
【0055】
本発明の化合物が少なくとも1つの不斉中心を有する場合、それらは鏡像異性体として存在してよい。化合物が2つ以上の不斉中心を有する場合、それらは追加的にジアステレオ異性体として存在してよい。具体的には、エチホキシンはラセミ混合物として存在し、R-エチホキシンおよびS-エチホキシンが調製されてきた。米国特許第8,110,569号。本発明は、R-エチホキシンの重水素化類似体およびS-エチホキシンの重水素化類似体を含む。任意の割合の全てのそのような立体異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。化合物が幾何異性体を有する場合、任意の割合の全てのそのような異性体およびそれらの混合物は本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物の互変異性体は本出願に包含される。それ故、例えば、カルボニルはそのエノール互変異性体を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、「純粋なS-エチホキシン」は、重水素化R-エチホキシン類似体を実質的に含まない(すなわち、鏡像異性体過剰である)重水素化類似体である。言い換えれば、重水素化エチホキシンの「S」形態は、化合物の「R」形態を実質的に含まず、それ故、「R」形態の鏡像異性体過剰である。
【0057】
「鏡像異性的に純粋な」または「純粋な鏡像異性体」という用語は、化合物が、75重量%を超え、80重量%を超え、85重量%を超え、90重量%を超え、91重量%を超え、92重量%を超え、93重量%を超え、94重量%を超え、95重量%を超え、96重量%を超え、97重量%を超え、98重量%を超え、98.5重量%を超え、99重量%を超え、99.2重量%を超え、99.5重量%を超え、99.6重量を超え、99.7重量%を超え、99.8重量%を超え、または99.9重量%を超える鏡像異性体を含むことを表す。所定の実施形態では、重量は、重水素化エチホキシン類似体の全重量を基準とする。
【0058】
本明細書で使用される場合、他に示されない限り、「鏡像異性的に純粋なR-エチホキシン」という用語は、少なくとも約80重量%の重水素化R-エチホキシンおよび多くとも約20重量%の重水素化S-エチホキシン、少なくとも約90重量%の重水素化R-エチホキシンおよび多くとも約10重量%の重水素化S-エチホキシン、少なくとも約95重量%の重水素化R-エチホキシンおよび多くとも約5重量%の重水素化S-エチホキシン、少なくとも約99重量%の重水素化R-エチホキシンおよび多くとも約1重量%の重水素化S-エチホキシン、少なくとも約99.9重量%の重水素化R-エチホキシンおよび多くとも約0.1重量%の重水素化S-エチホキシンの重水素化類似体のことを指す。所定の実施形態では、重量は、重水素化エチホキシン類似体の全重量を基準とする。
【0059】
本明細書で使用される場合、他に示されない限り、「鏡像異性的に純粋なS-エチホキシン」という用語は、少なくとも約80重量%の重水素化S-エチホキシンおよび多くとも約20重量%の重水素化R-エチホキシン、少なくとも約90重量%の重水素化S-エチホキシンおよび多くとも約10重量%の重水素化R-エチホキシン、少なくとも約95重量%の重水素化S-エチホキシンおよび多くとも約5重量%の重水素化R-エチホキシン、少なくとも約99重量%の重水素化S-エチホキシンおよび多くとも約1重量%の重水素化R-エチホキシン、少なくとも約99.9重量%の重水素化S-エチホキシンおよび多くとも約0.1重量%の重水素化R-エチホキシンのことを指す。所定の実施形態では、重量は、重水素化エチホキシン類似体の全重量を基準とする。
【0060】
治療化合物
一態様では、本発明は、式IAの化合物であって、
【化3】
【0061】
式中、各X、X、X、X、X、およびXは独立して、水素および重水素から選択される、化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグに関する。一実施形態では、そのような化合物において、各Xは重水素である。
【0062】
本発明の一実施形態では、X、X、X、X、およびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式IIA
【化4】
【0063】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0064】
一実施形態では、式IAの化合物は各Xを水素として有する。本発明の一つのそのような実施形態では、X、X、X、X、X、およびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式IIIA
【化5】
【0065】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0066】
一実施形態では、式IAの化合物は各Xおよび各Xを重水素として有する。本発明の一つのそのような実施形態では、X、X、X、およびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式IVA
【化6】
【0067】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0068】
一実施形態では、式IAの化合物は、各Xおよび各Xを重水素として有する。一つのそのような実施形態では、X、X、X、およびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式VA
【化7】
【0069】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0070】
一実施形態では、式IAの化合物は、各X、X、X、X、およびXを重水素として有する。本発明の一つのそのような実施形態では、XおよびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式VIA
【化8】
【0071】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0072】
本発明の一実施形態では、式IAの化合物は各X、X、およびXを重水素として有する。本発明の一つのそのような実施形態では、X、X、およびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式VIIA
【化9】
【0073】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0074】
一態様では、本発明は、式Iの化合物であって、
【化10】
【0075】
式中、X、X、およびXの各々は独立して、水素および重水素から選択される、化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグに関する。一実施形態では、そのような化合物において、各Xは重水素である。
【0076】
本発明の一実施形態では、各XおよびXは、エチホキシンの重水素化類似体が式II
【化11】
【0077】
の構造を有する化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグとなるように水素である。
【0078】
本発明の一実施形態では、エチホキシンの重水素化類似体は、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグである。
【0079】
本発明の別の実施形態では、エチホキシンの重水素化類似体は、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグである。
【0080】
本発明の更に別の実施形態では、エチホキシンの重水素化類似体は、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグである。
【0081】
本発明の更に別の実施形態では、エチホキシンの重水素化類似体は、6-クロロ-N-(エチル-1,1-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグである。
【0082】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物である6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン、または6-クロロ-N-(エチル-1,1-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンは、少なくとも3500(各指定重水素原子で52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取り込み)、少なくとも6533(98%の重水素取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素取り込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素取り込み)の各指定重水素原子についての同位体濃縮係数を有する。
【0083】
一態様では、式I~IIの化合物は、鏡像異性的に純粋な重水素化S-エチホキシン異性体である。本明細書で提供される組成物において、鏡像異性的に純粋な重水素化S-エチホキシン類似体、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、他の活性または不活性成分と共に存在し得る。例えば、鏡像異性的に純粋な重水素化S-エチホキシン類似体を含む薬学的組成物は、例えば、約90%の賦形剤および約10%の鏡像異性的に純粋な重水素化S-エチホキシン類似体を含み得る。所定の実施形態では、そのような組成物における鏡像異性的に純粋なS-エチホキシン重水素化類似体は、例えば、少なくとも約99.9重量%のS-エチホキシン重水素化類似体および多くとも約0.1重量%のR-エチホキシン重水素化類似体を含み得る。所定の実施形態では、活性成分は、賦形剤または担体をほとんど伴わずにまたは全く伴わずに製剤化され得る。
【0084】
一態様では、式I~IIの化合物は、鏡像異性的に純粋な重水素化R-エチホキシン異性体である。本明細書で提供される組成物において、鏡像異性的に純粋な重水素化R-エチホキシン類似体、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、他の活性または不活性成分と共に存在し得る。例えば、鏡像異性的に純粋な重水素化R-エチホキシン類似体を含む薬学的組成物は、例えば、約90%の賦形剤および約10%の鏡像異性的に純粋な重水素化R-エチホキシン類似体を含み得る。所定の実施形態では、そのような組成物における鏡像異性的に純粋なR-エチホキシン重水素化類似体は、例えば、少なくとも約99.9重量%のR-エチホキシン重水素化類似体および多くとも約0.1重量%のR-エチホキシン重水素化類似体を含み得る。所定の実施形態では、活性成分は、賦形剤または担体をほとんど伴わずにまたは全く伴わずに製剤化され得る。
【0085】
別の態様では、重水素として指定されていない任意の原子がその天然同位体存在度で存在する本発明の化合物。
【0086】
別の態様では、薬学的に許容可能な賦形剤ならびに式I~IIの化合物、およびその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグを含む薬学的組成物が提供される。
【0087】
治療方法
一実施形態では、式I~IIの本発明の化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグは、GABA受容体を調節するのに有効な量で対象に投与される。
【0088】
一実施形態では、式I~IIの本発明の化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグは、神経ステロイドおよび/または神経活性ステロイドを増加させるのに有効な量で対象に投与される。
【0089】
一実施形態では、本発明の化合物または組成物は、GABA受容体複合体の調節因子として作用し、内在性神経活性ステロイドを増加させ、抗不安、および/または抗痙攣、および/または鎮静薬/催眠、および/または麻酔特性、および/または神経保護特性を有する。
【0090】
所定の実施形態では、エチホキシン応答性状態の治療または予防を必要とする対象に治療的有効量の式I~IIの化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグを投与することを含む治療または予防方法が本明細書で提供される。
【0091】
一実施形態では、式I~IIの化合物、ならびにその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、およびプロドラッグは、CNS障害、PNS障害、および/または炎症状態の治療を、それを必要とする対象に治療的有効量を投与することによって行うために使用される。
【0092】
一実施形態では、式I~IIの化合物、およびその薬学的に許容可能な塩は、CNS障害を治療するために使用される。そのような実施形態では、CNS障害には、多発性硬化症、痙性脊髄麻痺における筋弛緩、網膜変性および網膜に対する光誘発損傷(光網膜炎、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、および黄斑変性症を含む)、脳性麻痺、三叉神経痛、片頭痛、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、腫瘍随伴多発性神経炎、フリードライヒ病、せん妄、認知症、および健忘、および他の認知障害(せん妄、認知症、例えばアルツハイマー型認知症、血管性認知症、HIV疾患による認知症、頭部外傷による認知症、パーキンソン病による認知症、ハンチントン病による認知症、ピック病による認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病による認知症、一般的な医学的状態による認知症、物質誘発認知症、複数の病因による認知症、認知症NOS(以下、「特に特定されない(not otherwise specified)」をNOSと略す)、健忘障害(一般的な医学的状態による健忘障害、物質誘発健忘障害、健忘障害NOS、認知障害NOSなど)、脳卒中および外傷性脳損傷(TBI)を含む虚血性または出血性脳血管事態、母斑症(特に神経線維腫症)、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、統合失調症、気分障害(大うつ病性障害-単一エピソードまたは再発性、気分変調性障害、うつ病性障害NOSを含むうつ病性障害、双極性I障害、双極性II障害、気分循環性障害、双極性障害NOSを含む双極性障害、一般的な医学的状態による気分障害、物質誘発気分障害、気分障害NOSなど)、薬物離脱症状、吃音、自閉症、自閉症スペクトラム障害、てんかんなどの痙攣性疾患、不安障害(広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫神経障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、医学的状態による不安障害、物質誘発不安障害、特に特定されない(NOS)不安障害)、気分障害、睡眠障害(原発性睡眠障害(原発性不眠症、原発性過眠症、ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠障害、睡眠異常症NOSを含む)、睡眠時随伴症(悪夢障害、夜驚症、夢遊病障害、睡眠時随伴症NOSを含む)、別の精神障害に続発する睡眠障害(不安、気分障害、および/または他の精神障害に続発する睡眠障害を含む)、一般的な医学的状態による睡眠障害、および物質誘発睡眠障害)、注意欠陥、注意欠陥多動性、および破壊的行動障害(注意欠陥/多動性障害混合型、不注意有意型および多動・衝動性有意型、注意欠陥/多動性障害NOS、行為障害、反抗的行為障害、および破壊的行動障害NOS)、ならびに物質関連障害、食欲不振および過食症などの摂食障害が含まれる。
【0093】
所定の実施形態では、式I~IIの化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、中枢神経系の障害、例えば、てんかん、虚血性または出血性脳性アクシデント、神経変性疾患、例えば、シャルコー・マリー・トゥース病またはフリードライヒ病、母斑症、特に神経線維腫症、神経障害性疾患、例えば、欠損性神経障害、特に、アルコール種、毒性または薬物誘発神経障害のもの、特にビンクリスチンによるもの、糖尿病などの代謝障害に関連する神経障害、炎症プロセスに関連する神経障害、特にギラン・バレー症候群、感染性神経障害疾患、特に帯状疱疹、および神経根神経障害疾患、腫瘍随伴多発性神経炎、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、統合失調症、うつ病、脳腫瘍、パーキンソン病、および認知症、例えば、アルツハイマー病、ピック病、または血管性認知症、多発性硬化症、神経再生、神経変性疾患、痙性脊髄麻痺における筋弛緩、脳性麻痺、三叉神経痛、片頭痛、アルツハイマー病、疼痛、薬物離脱症状、ならびに痙攣性障害、例えば、てんかんを含む疾患または障害の治療、予防、改善または管理に有用である。
【0094】
所定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、精神障害、例えば、不安、うつ病、てんかん、強迫神経障害、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、睡眠障害、摂食障害、例えば、食欲不振および過食症、パニック発作、および他の精神障害の治療に有用である。
【0095】
いくつかの実施形態では、中枢系障害は、多発性硬化症、痙性脊髄麻痺における筋弛緩、脳性麻痺、三叉神経痛、片頭痛、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、神経変性疾患、せん妄、認知症、健忘障害、認知障害、脳卒中および外傷性脳損傷(TBI)を含む虚血性または出血性脳血管事態、母斑症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、統合失調症、気分障害、うつ病、薬物離脱症状、吃音、自閉症、自閉症スペクトラム障害、痙攣性障害、てんかん、不安障害、睡眠障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、破壊的行動障害、および物質関連障害から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は、糖尿病性神経障害、薬物誘発神経障害、炎症性神経障害、末梢神経障害、HIV誘発神経痛、およびヘルペス後神経痛、ファブリー病およびクラッベ病にあるような酵素欠損に関連する神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病などの遺伝性運動および感覚神経障害から選択される神経障害を治療するために使用される。
【0097】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は、認知障害、せん妄、認知症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、HIV疾患による認知症、頭部外傷による認知症、パーキンソン病による認知症、ハンチントン病による認知症、ピック病による認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病による認知症、および健忘障害から選択される中枢神経系障害を治療するために使用される。
【0098】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は多発性硬化症を治療するために使用される。
【0099】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物はてんかんを治療するために使用される。
【0100】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は、不安障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫神経障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、医学的状態による不安障害、物質誘発不安障害、および特に特定されない不安障害(NOS)から選択される中枢神経系障害を治療するために使用される。
【0101】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は筋萎縮性側索硬化症を治療するために使用される。
【0102】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は脊髄性筋萎縮症を治療するために使用される。
【0103】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は、気分障害、大うつ病性障害-単一エピソードまたは再発性、気分変調性障害、うつ病性障害NOSを含むうつ病性障害、双極性I障害、双極性II障害、気分循環性障害、双極性障害NOSを含む双極性障害、一般的な医学的状態による気分障害、物質誘発気分障害、および気分障害NOSから選択される中枢神経系障害を治療するために使用される。
【0104】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は炎症性疾患を治療するために使用される。一態様では、炎症性疾患は関節リウマチである。
【0105】
いくつかの実施形態では、式I~IIの化合物は腸運動障害を治療するために使用される。一態様では、腸運動障害は過敏性腸症候群である。
【0106】
所定の実施形態では、式I~IIの化合物は、高血圧などの心臓血管障害を含むがこれに限定されない疾患または障害の治療に有用である。
【0107】
所定の実施形態では、式I~IIの化合物は鎮痛剤または抗うつ剤として有用である。
【0108】
所定の実施形態では、式I~IIの化合物は、網膜変性および網膜に対する光誘発損傷(光網膜炎、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、および黄斑変性症を含む)の治療または予防に有用である。
【0109】
併用治療
所定の実施形態では、本明細書で提供される式I~IIの化合物は、CNS障害または精神障害に有効な他の薬剤などの1つ以上の他の活性成分と組み合わせて投与される。そのような薬剤には、セロトニン受容体(5-HT1Aを含む)アゴニストおよびアンタゴニスト、ニューロキニン受容体アンタゴニスト、またはコルチコトロピン放出因子受容体(CRF1)アンタゴニスト、メラトニン受容体アゴニスト、およびニコチンアゴニスト、ムスカリン性薬剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、およびドパミン受容体アゴニストが含まれるがこれらに限定されない。
【0110】
所定の実施形態では、他の活性薬剤は、アリールピペラジン、例えば、ブスピロン、ゲピロン、イプサピロン、およびトンドスピロン、ベンゾジアゼピン誘導体、例えばアルプラゾラム、ブロマゼパム、カマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロラゼプ酸、チョチアゼパム、クロキサゾラム、ジアゼパム、ロフラゼプ酸エチル、エチゾラム、フルイダゼパム、フルタゾラム、フルトプラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ロキサピン、メダゼパム、メタクラゼパム、メキサゾラム、ノルダゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、ピナゼパム、プラゼパム、およびトフィソパム、カルバメート、例えばシクラルバメート、エミルカメート、ヒドロキシフェナメート、メプロバメート、フェンプロバメート、およびチバメート、および他のもの、例えばアルピデム、ベンゾクタミン、カプトジアミン、クロルメザノン、フレシノキサン、フルオレソン、グルタミン酸、ヒドロキシジン、レソピトロン、メクロラルウレア、メフェノキサロン、ミルタゼピン、オキサナミド、フェナグリコドール、スリクロン、およびザトセトロンである。
【0111】
所定の実施形態では、他の活性薬剤は、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、オルフルボキサミン、ベンラファクシン、ミルタザピン、ネファゾドン、トラゾドン、ブプロピオン、リチウム、バルプロ酸カルバマゼピン、ニューロンチン、ラミクタール、ジプラシドン、リスペリドン、クエチアピン、フェネルジン、トラニルシプロミン、アミトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トリミプラミン、ペルフェナジン、マプロチリン、ミルタザピン、メチルフェニデート、またはデキストロアンフェタミンである。
【0112】
所定の実施形態では、他の活性薬剤は、抗うつ薬、例えば、三環系抗うつ薬(「TCA」)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(「SSRI」)、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害薬(「SNRI」)、ドパミン再取り込み阻害薬(「DRI」)、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(「NRI」)、ドパミンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害薬(「DNRI」)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、アルファ-2-受容体ブロッカー、または別の抗うつ薬である。
【0113】
例示的なTCAには、アミトリプチリン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、およびトリミプラミンが含まれるがこれらに限定されない。
【0114】
例示的なSSRIには、セルトラリン、セルトラリン代謝物デメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンデスメチル代謝物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝物デスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,1-フェンフルラミン、フェモキセチン、イフォキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、セリクラミン、およびダポキセチンが含まれるがこれらに限定されない。
【0115】
例示的なNRIには、レボキセチンおよびレボキセチンの全ての異性体、すなわち、(R/R、S/S、R/S、S/R)、デシプラミン、マプロチリン、ロフェプラミン、オキサプロチリン、フェゾラミン、アトモキセチン、ノミフェンシン、ビロキサジン、またはミアンセリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0116】
例示的なSNRIには、ベンラファキシン、ベンラファキシン代謝物O-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝物デスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプラン、イミプラミン、およびネファザオドンが含まれるがこれらに限定されない。
【0117】
例示的なMAOIには、フェネルジン、トラニルシプロミン、イソカルボキサジド、およびセレギリンが含まれるがこれらに限定されない。
【0118】
例示的なアルファ-2-受容体ブロッカーにはミルタザピンが含まれるがこれに限定されない。
【0119】
他の有用な抗うつ薬には、ブプロプリオン、ブプロプリオン代謝物ヒドロキシブプロプリオン、およびトラゾドンが含まれる。
【0120】
一実施形態では、本明細書で提供される方法において、「本発明の化合物または組成物は非溶媒和または遊離化合物として使用される。
【0121】
別の実施形態では、本明細書で提供される方法において、本発明の化合物または組成物は塩酸塩などの塩として使用される。
【0122】
別の実施形態では、本明細書で提供される方法において、本発明の化合物または組成物は溶媒和物として使用される。
【0123】
製剤
本発明の化合物は、約0.01mg/kg/用量~約100mg/kg/用量、あるいは約0.1mg/kg/用量~約10mg/kg/用量の合計1日用量で経口投与される。活性成分の放出速度を制御するための徐放性調製物の使用を採用してよい。その用量は都合のよい多くの分割用量で投与してよい。他の方法(静脈内投与を含む)が使用される場合、化合物は、0.05~10mg/kg/時間、あるいは0.1~1mg/kg/時間の速度で患部組織に投与される。そのような速度は、以下で論じるようにこれらの化合物を静脈内投与する場合には容易に維持される。
【0124】
本発明の目的のため、化合物は、薬学的に許容可能な担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する製剤で、経口、非経口、吸入スプレー、局所、または直腸を含む様々な手段によって投与してよい。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語には、様々な注入技術を用いた皮下、静脈内、筋肉内、および動脈内注射が含まれる。本明細書で使用される場合、動脈内および静脈内注射には、カテーテルを介する投与が含まれる。経口投与が一般に採用される。
【0125】
活性成分を含有する薬学的組成物は、意図される投与方法に好適な任意の形態であってよい。経口使用で使用する場合、例えば、錠剤、トローチ、薬用飴、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルション、硬または軟カプセル、シロップ、またはエリキシルを調製してよい。経口使用に意図される組成物は、薬学的組成物の製造のための技術で知られている任意の方法に従って調製することができ、口当たりの良い調製物を提供するために、そのような組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤を含む1種以上の薬剤を含有してよい。錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合して活性成分を含有する錠剤が許容可能である。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウムまたはナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはナトリウム、顆粒化および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸、結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシアゴム、および潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってよい。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または胃腸管における崩壊および吸着を遅延させることによってより長い期間にわたって持続作用を提供するためにマイクロカプセル化を含む、知られている技術によってコーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独でまたはワックスと共に採用してよい。
【0126】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えばリン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬質ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水または油媒体、例えばピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合されている軟質ゼラチンカプセルとして提供してもよい。
【0127】
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合して活性材料を含有する。そのような賦形剤には、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴム、ならびに分散または湿潤剤、例えば天然に発生するリン脂質(レシチンを含む)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(ポリオキシエチレンステアレートを含む)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含む)が含まれる。水性懸濁液はまた、1種以上の保存剤、例えばエチル-またはn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾエート、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、および1種以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含有してよい。
【0128】
油性懸濁液は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油、または鉱物油、例えば液体パラフィンに活性成分を懸濁させることによって製剤化してよい。経口懸濁液は、増粘剤、例えば蜜ろう、硬質パラフィン、またはセチルアルコールを含有してよい。甘味剤、例えば上記で説明したもの、および香味剤を添加して、口当たりの良い経口調製物を提供してよい。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸の添加によって保存することができる。
【0129】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な本発明の分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁化剤、および1種以上の保存剤と混合して活性成分を提供する。好適な分散または湿潤剤および懸濁化剤は、上記で開示されたものによって例示される。追加的な賦形剤、例えば、甘味剤、香味剤、および着色剤も存在してよい。
【0130】
本発明の薬学的組成物は水中油型エマルションの形態でもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、鉱物油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。好適な乳化剤には、天然に発生するゴム、例えばアカシアゴムおよびトラガカントゴム、天然に発生するリン脂質、例えば大豆レシチン、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、およびこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが含まれる。エマルションはまた甘味剤および香味剤を含有してよい。
【0131】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトール、またはスクロースを用いて製剤化してよい。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、香味剤、または着色剤を含有してよい。
【0132】
本発明の薬学的組成物は、無菌注射調製物、例えば無菌注射水性または油性懸濁液の形態であってよい。この懸濁液は、上記の好適な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して知られている技術に従って製剤化してよい。無菌注射調製物はまた、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール溶液の無菌注射溶液または懸濁液であってよく、または凍結乾燥粉末として調製してよい。採用してよい許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、および等張食塩水がある。また、無菌固定油を慣例的に溶媒または懸濁媒体として採用してよい。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の滅菌固定油を採用してよい。また、脂肪酸、例えばオレイン酸も同様に注射剤の調製に使用してよい。
【0133】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせてよい活性成分の量は、治療される受給者および特定の投与様式に依存して変動する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した徐放性製剤は、全組成物の約5~約95%で変動し得る適切かつ好都合な量の担体材料と混ぜ合わされたおよそ1~1000mgの活性材料を含有してよい。薬学的組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製され得る。例えば、静脈内注入を意図した水溶液は、約30mL/時間の速度で好適な容量の注入が発生し得るように、溶液1ミリリットル当たり約3~330μgの活性成分を含有すべきである。
【0134】
上記で述べたように、経口投与に好適な本発明の製剤は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ剤、または錠剤などの別個の単位として、粉末または顆粒として、水性または非水性液体の溶液または懸濁液として、または水中油型液体エマルションまたは油中水型液体エマルションとして提供され得る。活性成分は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与してもよい。
【0135】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮または成形によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む)、表面活性剤、または分散剤と任意に混合された粉末または顆粒などの自由流動形態で活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製され得る。錠剤は、任意にコーティングまたは印付け(scored)されてよく、例えば、所望の放出プロフィールを提供するためにヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で使用して活性成分の遅延または制御放出を提供するように製剤化してよい。胃以外の腸の一部における放出を提供するために、腸溶コーティングを錠剤に任意に提供してよい。これは式Iの化合物について、そのような化合物が酸加水分解を受けやすい場合に特に有利である。
【0136】
口内での局所投与に好適な製剤には、香味基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含む薬用飴、不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に活性成分を含む芳香錠(pastilles)、および好適な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤が含まれる。
【0137】
直腸投与のための製剤は、例えば、ココアバターまたはサリチル酸塩を含む好適な基剤を有する坐剤として提供され得る。
【0138】
膣内投与に好適な製剤は、活性成分に加えて、その技術において適切であることが知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として提供され得る。
【0139】
非経口投与に好適な製剤には、製剤を意図される服用者の血液と等張にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および溶質を含有し得る水性および非水性の等張滅菌注射溶液、および懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量または複数用量の密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルで提供されてよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結して乾燥させた(凍結乾燥)状態で保存されてよい。注射溶液および懸濁液は、前述の種類の無菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0140】
好適な単位投与製剤は、式Iの化合物の1日の用量または単位、1日の準用量(sub-dose)、またはその適切な画分を含有するものである。
【0141】
本発明の製剤は、唯一の薬学的活性薬剤として、式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグのうちのいずれかを含み得る。あるいは、製剤は、セクション「併用療法」で記載されているものを含む1種以上の更なる活性薬剤を含み得る。
【0142】
しかしながら、任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、当業者に良く理解されるように、採用される特定の化合物の活性、治療される個人の年齢、体重、全体的健康、性別、および食事、投与の時間および経路、排出速度、先行して投与された他の薬物、および治療を受けている特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存する。
【0143】
本発明はまた、上述したように、治療的に有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含むキット、ならびにGABA受容体複合体の調節もしくは内因性神経ステロイドおよび神経活性ステロイドのレベルの増加に適した状態、CNS障害、PNS障害、または炎症状態に苦しんでいるヒトの患者を治療するための指示を提供する。キットはまた、セクション「併用療法」で記載されているものを含む1種以上の更なる活性薬剤を含み得る。
【0144】
合成化学例
標準的な手順および化学的変換および関連する方法は、当業者に良く知られており、そのような方法および手順は、例えば、Fiesers’Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons、New York、NY、2002、Organic Reactions、vols.1-83、John Wiley and Sons、New York、NY、2006、March J.and Smith M.:Advanced Organic Chemistry、6th ed.、John Wiley and Sons、New York、NY、およびLarock R.C.Comprehensive Organic Transformations、Wiley-VCH Publishers、New York、1999などの標準的参考文献に記載されている。
【0145】
官能基を有する化合物を使用する反応は、保護されてよい官能基を有する化合物に対して実施することができる。「保護された」化合物または誘導体とは、1つ以上の反応部位または官能基が保護基でブロックされている化合物の誘導体を意味する。保護された誘導体は、本発明の化合物の調製において、またはそれ自体で有用である。保護された誘導体は生物学的に活性な薬剤であってよい。好適な保護基を列挙している包括的な文章の例は、T.W.Greene、Protecting Groups in Organic Synthesis、3rd edition、John Wiley&Sons、Inc.1999で見つけることができる。
【0146】
式I~IIの化合物はスキーム1に図示されているように合成され得る。
【化12】
【0147】
その技術で知られている手段によるp-クロロアニリン1のアミノ基の保護は、アミン1をジ-t-ブチルジカーボネートで処理することによって達成される。E.AzimらによってJ.Label.Compds.Radiopharm.XXXIX:907,1997に記載されているように、2のオルトリチオ化に続いてベンズアルデヒドの添加により、第3級アルコール3が生じる。3の更なるベンジル酸化に続いてアミノ保護基の加水分解により化合物4が提供される。ジエチルエーテル中でメチルグリニャールを添加すると第3級アルコール5が生じる。Garratt,P.JらによってTetrahedron、45(3)、829、1989に記載されているように、アルコール5をジフェニルシアノカルボンイミデートと反応させて化合物6を得る。還流しているイソプロピルアルコールにおける重水素化エチルアミンとの更なる反応により式Iの化合物が生じる。
【0148】
式I~IIの化合物はスキーム2に図示されているように中間体5から合成され得る。
【化13】
【0149】
E.Azim et al.によってJ.Label.Compds.Radiopharm.XXXIX:907,1997に記載されているように、中間体5をトルエン中で60℃で重水素化エチルイソチオシアネートと反応させることによりチオウレア7が生じる。S-W You et al.によってBull.Korean Chem.Soc.2001、(22)、11、1270に記載されているように、チオウレア7を還流しているアセトニトリル中でジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させて式Iの化合物を生じさせる。
【0150】
化合物番号は以下の表1に提供される例番号に対応する。
【表1】
【0151】
例1
6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成
1-(2-アミノ-5-クロロフェニル)-1-フェニエタン-1-オールの合成:0℃で窒素雰囲気下でジエチルエーテル(10mL)中の2-アミノ-5-クロロベンゾフェノン(2.34mmol、541mg)にヨウ化メチルマグネシウム(3.12mL、ジエチルエーテル中3.0M)を滴下して添加した。反応混合物を撹拌し、放置して室温まで温めた。5時間後、混合物を0℃に冷却し、氷片を注意深く添加し、続いて冷水を添加した。ブラインを添加して相を分離させた。エーテル層を分離させた。水層を等量のエーテルで抽出した。組み合わせたエーテル層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、第3級アルコール(2.14mmol、530mg)を生じさせた。MS:(M+H)248。
【0152】
N-(6-クロロ-4-メチル-4-フェニル-1,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2-イリデン)シアナミドの合成:ジフェニルシアノカルボンイミデート(10.3mmol、2.53g)および1-(2-アミノ-5-クロロフェニル)-1-フェニエタン-1-オール(9.36mmol、2.32g)をイソプロパノール(40mL)に添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で24時間還流した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル)(溶出液2%MeOH/CHCl)によって精製して、N-(6-クロロ-4-メチル-4-フェニル-1,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2-イリデン)シアナミドを白色固体(2.7mmol、800mg)として生じさせた。MS:(M-)296。
【0153】
6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:d-エチルアミン塩酸塩(0.69mmol、59mg)(99%の重水素取り込み)を、イソプロパノール(1mL)中にN-(6-クロロ-4-メチル-4-フェニル-1,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2-イリデン)シアナミド(100mg、0.35mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.7mmol、0.12mL)を含有するフラスコに添加した。混合物を還流下で12時間撹拌した。追加的なd-エチルアミン塩酸塩(0.69mmol、59mg)およびヒューニッヒ塩基(0.7mmol、0.12mL)を添加し、反応混合物を還流下で更に12時間撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、残留物を逆相(Agilent C18 eclipse plus column)HPLCによって精製して、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミン(0.11mmol、33mg)をワックス状固体として生じさせた。MS:(M+H)306。
【0154】
例2
6-クロロ-N-(エチル-d)-4-メチル-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成
tert-ブチル(4-クロロ-2-(ヒドロキシ(フェニル-d5)メチル)フェニル)カルバメートの合成:52mLの-78℃の乾燥THFに溶解したtert-ブチル(4-クロロフェニル)カルバメート(2.03g、8.92mmol)の溶液を、シクロヘキサン中1.4Mのsec-ブチルリチウムの溶液16mL(22.4mmol、2.5当量)でシリンジを介して25分間かけて処理した。反応混合物を-25℃に温め、d-ベンズアルデヒド(900μL)(98%の重水素取り込み)で処理した。添加の際に反応混合物を室温に温めた。次いで、反応混合物を0℃に冷却し、26mLの飽和NHCl水溶液および50mLの水で急冷した。水層をEtOAc(50mL)で洗浄した。プールした有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して3.4gの黄色油を得た。残留油をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィ(4:1ヘキサン/EtOAc)によって精製して、tert-ブチル(4-クロロ-2-(ヒドロキシ(フェニル-d)メチル)フェニル)カルバメートを黄色油(2.45g、7.24mmol)として生じさせた。MS:(M+H)339。
【0155】
tert-ブチル(2-(ベンゾイル-2,3,4,5,6-d5)-4-クロロフェニル)カルバメートの合成:tert-ブチル(4-クロロ-2-(ヒドロキシ(フェニル-d5)メチル)フェニル)カルバメート(1.5g、4.41mmol)の溶液を、40mLのCHClに溶解し、NaOAc(1.14g)、セライト(1.82g)、およびPCC(1.48g)を少しずつ添加して処理した。得られた混合物を室温で90分間撹拌した。更に500mgのPCCを添加し、更に1時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルカラムに装填し、CHClで溶出した。集めた画分を蒸発させてtert-ブチル(2-(ベンゾイル-2,3,4,5,6-d5)-4-クロロフェニル)カルバメート(1.12g、3.33mmol)を得た。MS:(M+H)337。
【0156】
(2-アミノ-5-クロロフェニル)(フェニル-d5)メタノンの合成:EtOH(17mL)中tert-ブチル(2-(ベンゾイル-2,3,4,5,6-d5)-4-クロロフェニル)カルバメート(1.05g、3.12mmol)の溶液を、10%のNaOH(2.5M、3.4mL)の水溶液を滴下して添加して処理した。次いで混合物を24時間還流した。更に3mLの2.5NのNaOHを添加し、反応混合物を更に7時間還流した。室温に冷却した後、有機溶媒を真空中で除去した。残留物を氷水で希釈した。それを75mLのEtOAcで抽出した。相を分離させた。水層をEtOAc(2×40mL)で抽出した。組み合わせた有機層を水(50mL、分離相に添加したブライン)およびブラインで洗浄した。乾燥(MgSO)した後、混合物を濾過し、真空中で濃縮した。放置すると固化した赤橙色の油が生じた(730mg)。粗反応混合物を100%のCHClで溶出するフラッシュシリカゲルクロマトグラフィによって精製した。生成物を黄橙色の固体として得た(610mg、2.58mmol)。MS:(M+H)237。
【0157】
1-(2-アミノ-5-クロロフェニル)-1-(フェニル-d5)エタン-1-オールの合成:0℃で窒素雰囲気下でジエチルエーテル(10mL)中の2-アミノ-5-クロロベンゾフェノン(1.7mmol、402mg)にヨウ化メチルマグネシウム(6.8mL、ジエチルエーテル中3.0M)を滴下して添加した。反応混合物を撹拌し、放置して室温まで温めた。1.5時間後、混合物を0℃に冷却し、氷片を注意深く添加し、続いて冷水を添加した。ブラインを添加して相を分離させた。エーテル層を分離させた。水層を等量のエーテルで抽出した。組み合わせたエーテル層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、第3級アルコール(1.33mmol、335mg)を生じさせた。MS:(M+H)253。
【0158】
1-(4-クロロ-2-(1-ヒドロキシ-1-(フェニル-d5)エチル)フェニル)-3-(エチル-d5)チオウレアの合成:トルエン(3mL)中1-(2-アミノ-5-クロロフェニル)-1-(フェニル-d5)エタン-1-オール(167mg、0.67mmol)にd5-エチルイソチオシアネート(0.99mmol、88μL)を添加した。混合物を60℃で24時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物を3/1ヘキサン/EtOAcで溶出させるフラッシュシリカゲルクロマトグラフィによって精製して、生成物(0.6mmol、204mg)を生じさせた。MS:(M+H)340。
【0159】
-エチルイソチオシアネートの合成:
【0160】
エチルd-エチルジチオカルバメート:d-エチルアミン塩酸塩(1.27g、14.7mmol)(99%の重水素取り込み)をEtOHを含まないCHCl(8mL)に懸濁し、氷水浴中で冷却し、シリンジを介して滴下して添加した純粋なEtN(4.1mL、29.4mmol)で処理した。純粋なCS(969μL、16.2mmol)をシリンジを介して滴下し、冷浴を除去した。粘性のある混合物を室温で3時間撹拌し、氷-塩浴内で-10℃に冷却した。純粋なヨードエタン(1.2mL、15.0mmol)を冷たい反応混合物にシリンジを介して滴下して添加した。反応混合物を室温に温め、一晩撹拌した。得られた溶液を真空中で濃縮し、残留物をそれぞれ60mLのEtOAcおよび1MのHCl溶液で処理した。有機層を水(40mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空中で濃縮して、2.07gの茶色油を得た。
【0161】
-エチルイソチオシアネート:エチルd-エチルジチオカルバメートを含有する蒸留ヘッドを備えたフラスコを150℃で砂浴に入れ、230℃に加熱した。淡黄色液体を蒸留して集めた。この液体を80℃で加熱してエタンチオールを除去し、淡黄色液体としてd-エチルイソチオシアネートを得た。
【0162】
(6-クロロ-N-(エチル-d5)-4-メチル-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:アセトニトリル(2mL)中の1-(4-クロロ-2-(1-ヒドロキシ-1-(フェニル-d5)エチル)フェニル)-3-(エチル-d5)チオウレア(100mg、0.29mmol)の撹拌した溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(0.45mmol、91mg)を添加した。反応混合物を加熱して3時間還流した。溶媒を蒸発させ、残留物を85/15ヘキサン/EtOAcで溶出するフラッシュシリカゲルクロマトグラフィによって精製して、(6-クロロ-N-(エチル-d5)-4-メチル-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを生じさせた。MS:(M+H)311。
【0163】
例3
6-クロロ-N-(エチル-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成例2に記載したものと同じ工程に従い、ヨウ化メチルマグネシウムをd-ヨウ化メチルマグネシウム(d-ヨードメタンから調製、99.5%の重水素組み込み)と置き換えて、6-クロロ-N-(エチル-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。MS:(M+H)314。
【0164】
例4
6-クロロ-N-(エチル-1,1-d2)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成例1に記載したものと同じ工程に従い、d-エチルアミン塩酸塩を1,1-d-エチルアミン塩酸塩(98%の重水素組み込み)と置き換えて、6-クロロ-N-(エチル-1,1-d2)-4-メチル-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。MS:(M+H)303。
【0165】
例5
6-クロロ-N-エチル-4-(メチル-d3)-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:例2に記載されたものと同じ工程に従い、d-エチルイソチオシアネートをエチルイソチオシアネートに置き換え、ヨウ化メチルマグネシウムをd-ヨウ化メチルマグネシウムで置き換えて、6-クロロ-N-エチル-4-(メチル-d3)-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。MS:(M+H)309。
【0166】
例6
6-クロロ-N-エチル-4-メチル-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:例2に記載されたものと同じ工程に従い、d-エチルイソチオシアネートをエチルイソチオシアネートに置き換えて、6-クロロ-N-エチル-4-メチル-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。MS:(M+H)306。
【0167】
例7
6-クロロ-N-エチル-4-(メチル-d3)-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:例2に記載されたものと同じ工程に従い、d-エチルイソチオシアネートをエチルイソチオシアネートに置き換え、ヨウ化メチルマグネシウムをd-ヨウ化メチルマグネシウムで置き換え、d-ベンズアルデヒドをベンズアルデヒドに置き換えて、6-クロロ-N-エチル-4-(メチル-d3)-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。MS:(M+H)304。
【0168】
例8
6-クロロ-N-(エチル-d5)-4-(メチル-d3)-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:例1に記載されたものと同じ工程に従い、ヨウ化メチルマグネシウムをd-ヨウ化メチルマグネシウムで置き換えて、6-クロロ-N-(エチル-d5)-4-(メチル-d3)-4-フェニル-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。
【0169】
例9
6-クロロ-N-(エチル-1,1-d2)-4-メチル-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:例2に記載されたものと同じ工程に従い、d-エチルイソチオシアネートを1,1-d-エチルイソチオシアネート(1,1-d-エチルアミン塩酸塩から調製(98%の重水素組み込み))に置き換えて、6-クロロ-N-(エチル-1,1-d2)-4-メチル-4-(フェニル-d5)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。
【0170】
例10
6-クロロ-N-(エチル-1,1-d2)-4-(メチル-d3)-4-(フェニル-2-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成:例1に記載されたものと同じ工程に従い、ヨウ化メチルマグネシウムをd-ヨウ化メチルマグネシウムに置き換え、d-エチルアミン塩酸塩を1,1-d-エチルアミン塩酸塩(1,1-d-ヨードエタン(98%の重水素組み込み))に置き換えて、6-クロロ-N-(エチル-1,1-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。
【0171】
例11
6-クロロ-N-(エチル-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンの合成例3に記載したものと同じ工程に従い、d-エチル-イソチオシアネートを1,1-d-エチルイソチオシアネートに置き換えて、6-クロロ-N-(エチル-1,1-d)-4-(メチル-d)-4-(フェニル-d)-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2-アミンを提供する。
【0172】
生物学的例
A.代謝安定性の評価
Eurofins/Cerep(St.Charles、MO)で肝ミクロソームの代謝安定性について化合物を評価した。Obach et al.によってJ.Pharmacol、Exp、Ther、283、46、1997に記載されているようにCerep肝ミクロソーム安定性アッセイについての標準的条件を使用した。試験化合物を0.1μMの濃度で最大で60分間繰り返してインキュベートした。ミクロソームタンパク質濃度は0.1mg/mLであった。親化合物をHPLC-MS/MS分析によって検出した。残りのパーセント化合物は、各時点での親化合物のピーク面積を時間ゼロと比較することによって計算した。半減期は、一次動力学を仮定して、時間に対する親化合物の対数曲線の初期線形範囲の傾きから推定した。見かけの内因性クリアランスは、ミクロソームを用いたアッセイの半減期値から更に計算した。
【0173】
肝ヒトミクロソーム安定性研究の結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0174】
ヒト肝ミクロソームのロットが異なること以外は、例6および7として記載された化合物を同じ条件で試験した。いずれとも18分の平均半減期を示した。
【0175】
ラット肝ミクロソーム安定性研究の結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0176】
肝ヒトミクロソーム安定性研究の結果は、例1の半減期がエチホキシンのそれより約86%長いことを明らかにしている。
【0177】
ラット肝ミクロソーム安定性研究の結果は、例1の半減期がエチホキシンのそれより約75%長いことを明らかにしている。
【0178】
B.化合物例1のラットにおける薬物動態の評価
Shanghai Chempartner、Shanghai、Chinaの雄Sprague-Dawleyラットにおける薬物動態プロフィールについて化合物を評価した。エチホキシン塩酸塩および例1に記載された化合物の塩酸塩を、経口強制投与(PO)によってSprague-Dawleyラットに投与した。各化合物を50mg/kgの用量で3匹のラットに投与した(N=3匹のラット/化合物、研究では合計で6匹のラット)。5mg/mL(10mL/kgの注射容量/ラット)の濃度で70/30生理食塩水/PEG400に各化合物を製剤化した。各ラットから、投与後10、20、30、45分、ならびに1、2、4、および12時間後に血液サンプルを集めた。血液サンプル氷上に置き、遠心分離して血漿を得た。AB-Sciex API-400質量分析計を使用して、LC-MS/MSによって各時点での投与された化合物の濃度について血漿サンプルを分析した。各化合物の定量の下限は1ng/mLであった。薬物動態パラメータは、WinNonlin6.2ソフトウェアを使用して非コンパートメント分析によって決定した。
【0179】
図1は、投与されたエチホキシン塩酸塩および例1に記載の化合物の塩酸塩の平均データを示している。以下の表4は、エチホキシン塩酸塩および例1に記載の化合物の塩酸塩についての観察された平均AUC0-12およびCmaxを示している。
【表4】
【0180】
表4から分かるように、例1に記載の化合物の塩酸塩のAUC0-12およびCmaxは、エチホキシン塩酸塩の2.5倍および1.7倍高い。これらの結果は、前全身性(pre-systemic)代謝の減少により未代謝薬物のより高いバイオアベイラビリティがもたらされることを示している。前全身性代謝の減少は、間および内(inter and intra)変動性がより少なくなり得る。薬物曝露の増加は、最小の薬物治療レベルがより長い期間達成され得るので、服用頻度の低下をもたらし得る。また、薬物曝露を増加させることにより、同様の薬物血漿レベルがより低い用量で達成され得るので、潜在的な有害事象がより少なくなる用量減少が可能になる。時間に対する平均血漿濃度のデータを図1に示す。
【0181】
上記の個々のセクションで言及された本発明の様々な特徴および実施形態は、必要に応じて、変更すべきところは変更して他のセクションに適用される。結果として、1つのセクションで特定された特徴は、必要に応じて、他のセクションで特定された特徴と組み合わせてよい。
【0182】
本明細書に列挙された特許および刊行物は、その技術における一般的な技能を記載しており、全ての目的のためおよび同じ程度に、各々があたかも具体的におよび個別的に参照によって組み込まれることを示されているかのように、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。引用された参考文献と本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が支配するものとする。本出願の実施形態を記載する際に、明確性のために特定の技術用語が採用されている。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の技術用語に限定されることを意図するものではない。本明細書中のいかなるものも、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。提示された全ての例は代表的であり、非限定的である。更なる説明を伴わずに、当業者は、先行する説明および例示的な例を使用して、本発明の化合物を作製および利用し、特許請求された方法を実施することができると考えられる。そのため、特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載されたもの以外で実施され得ることを理解されたい。
図1