(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】巻縮型複合繊維の不織布、及びその積層体、並びにその物品
(51)【国際特許分類】
D04H 3/007 20120101AFI20231031BHJP
D04H 3/018 20120101ALI20231031BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20231031BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20231031BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20231031BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20231031BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20231031BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
D04H3/007
D04H3/018
D04H3/16
D04H3/147
B32B5/26
A61F13/511 300
A61F13/514 100
D01F8/06
(21)【出願番号】P 2022501297
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2020008543
(87)【国際公開番号】W WO2021006527
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0083941
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジン・イル・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・チュル・ジュ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-003239(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153802(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/122277(WO,A1)
【文献】特表2021-518886(JP,A)
【文献】特開2007-308868(JP,A)
【文献】国際公開第2011/129211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04、
D01F8/06、B32B5/26、A61F13/511、A61F13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A側に第1プロピレン系重合体と
B側に第2プロピレン系重合体とを含む
サイドバイサイド型巻縮型複合繊維の不織布であり、
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定される前記第2プロピレン系重合体の融点が、前記第1プロピレン系重合体の融点より30℃以上高く、前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.7以上であり、前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した分子量分布(MWD)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.5以上であり、前記第1プロピレン系重合体/前記第2プロピレン系重合体(重量比)で表示される成分比が、50/50~10/90である、巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項2】
前記第1プロピレン系重合体は、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、1~5重量%の核剤をさらに含み、前記第1プロピレン系重合体の結晶化温度は、前記第2プロピレン系重合体の結晶化温度より19℃以上高い、請求項1に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項3】
前記第1プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体を含み、前記第2プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体70~90重量部及びプロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体10~30重量部を含み、前記プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体は、プロピレン90~95重量%、エチレン2.5~5.0重量%及びブテン1.5~5.0重量%を含む、請求項1に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項4】
前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.7以上であり、クリンプの個数が29ea/10mm以下である、請求項1に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項5】
前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体は、それぞれ互いに独立して、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、柔軟剤1~5重量%をさらに含み、silksoft性指数(coefficient of friction)が0.45以下である、請求項1に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項6】
前記巻縮型複合繊維の不織布は、エンボシング部及び非エンボシング部を含み、前記エンボシング部は、オープンエンボシングタイプであり、同一であるか、あるいは異なる間隔で連続して配列された複数個の単位エンボシングパターン部を含む、請求項1に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項7】
前記単位エンボシングパターン部に含まれたそれぞれのエンボシングパターンは、面積が0.2~0.7mm
2である、請求項
6に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項8】
前記巻縮型複合繊維の不織布は、ボンディング率が13%以下である、請求項
6に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項9】
前記巻縮型複合繊維不織布は、スパンボンド不織布である、請求項1に記載の巻縮型複合繊維の不織布。
【請求項10】
少なくとも2層以上の層構成を有する不織布積層体であり、そのうち少なくとも1層が、請求項1ないし
9のうちいずれか1項に記載の巻縮型複合繊維の不織布である、不織布積層体。
【請求項11】
前記巻縮型複合繊維の不織布は、スパンボンド不織布であり、前記不織布積層体は、両表層のうち片面だけに、前記スパンボンド不織布が露出されるように構成された、請求項
10に記載の不織布積層体。
【請求項12】
請求項
10または11に記載の不織布積層体を含む、物品。
【請求項13】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層またはトップシートである、請求項
12に記載の物品。
【請求項14】
前記物品がおむつである場合、前記不織布積層体は、親水剤含浸量(OPU)が0.7%以下であり、前記おむつのトップシート層に適用されたとき、水の吸収速度が3sec以下である、請求項
13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が解決しようとする課題は、巻縮型複合繊維の不織布、及びその積層体、並びにその物品に係り、さらに詳細には、ソフト性及びバルキー性が向上された巻縮型複合繊維の不織布、及びその積層体、並びにその物品に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、ウェブの形成方法及び結合方法により、最終物性が決定されることになる。
【0003】
既存のスパンボンド不織布の製造時、ウェブ形成は、単独紡糸または芯鞘型複合紡糸を介し、ウェブが形成されることになる。そのように形成されたウェブは、クリンプ(crimp)がない単純な構造を有することになり、加熱カレンダーによって結合され、薄い形態の不織布を形成することになる。
【0004】
薄い形態の不織布は、おむつの製造時、トップシート用及びバックシート用として使用されることになるが、カーディング(carding)でウェブを形成し、熱風で結合させた短繊維エアスルー不織布に比べ、バルキー性が顕著に低く、ソフト性が低下してしまうという問題点がある。
【0005】
また、ウェブの形成時、クリンプ付与がなされず、バルキー性が低下し、おむつの製造時、赤ちゃんの尻皮膚に直接当接する面積が大きく、不織布ラミネーティング時、ADL層(acquisition distribution layer)との間に余裕空間がなく、排尿時、尿が一部トップシートに残り、赤ちゃんの尻をただれさせたり、発疹を誘発させたりする問題点がある。また、おむつの外部に尿漏れ(leakage)するという問題点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、ソフト性及びバルキー性が向上された巻縮型複合繊維の不織布を提供する。
【0007】
本発明の他の具現例は、前記巻縮型複合繊維の不織布を2枚以上含む不織布積層体を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の具現例は、前記不織布積層体を含む物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、
第1プロピレン系重合体と第2プロピレン系重合体とを含む巻縮型複合繊維の不織布であり、
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定される前記第2プロピレン系重合体の融点が、前記第1プロピレン系重合体の融点より30℃以上高く、前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.7以上であり、前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した分子量分布(MWD)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.5以上であり、前記第1プロピレン系重合体/前記第2プロピレン系重合体(重量比)で表示される成分比が、50/50~10/90である巻縮型複合繊維不織布を提供する。
【0010】
前記第1プロピレン系重合体は、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、1~5重量%の核剤をさらに含み、前記第1プロピレン系重合体の結晶化温度は、前記第2プロピレン系重合体の結晶化温度より19℃以上高いものでもある。
【0011】
前記第1プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体を含み、前記第2プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体70~90重量部及びプロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体10~30重量部を含み、前記プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体は、プロピレン90~95重量%、エチレン2.5~5.0重量%及びブテン1.5~5.0重量%を含んでもよい。
【0012】
前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.7以上であり、クリンプの個数が29ea/10mm以下でもある。
【0013】
前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体は、それぞれ互いに独立して、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、柔軟剤1~5重量%をさらに含み、silksoft性指数(coefficient of friction)が0.45以下でもある。
【0014】
前記巻縮型複合繊維は、モノ型、芯鞘型、サイドバイサイド型またはサンドイッチ型の複合繊維でもある。
【0015】
前記巻縮型複合繊維不織布は、エンボシング部及び非エンボシング部を含み、前記エンボシング部は、オープンエンボシングタイプであり、同一であるか、あるいは異なる間隔で連続して配列された複数個の単位エンボシングパターン部を含んでもよい。
【0016】
前記単位エンボシングパターン部に含まれたそれぞれのエンボシングパターンは、面積が0.2~0.7mm2でもある。
【0017】
前記巻縮型複合繊維不織布は、ボンディング率が13%以下でもある。
【0018】
前記巻縮型複合繊維不織布は、スパンボンド不織布でもある。
【0019】
本発明の他の側面は、
少なくとも2層以上の層構成を有する不織布積層体であり、そのうち少なくとも1層が、前記巻縮型複合繊維の不織布である不織布積層体を提供する。
【0020】
前記巻縮型複合繊維の不織布は、スパンボンド不織布であり、前記不織布積層体は、両表層のうち片面だけに、前記スパンボンド不織布が露出されるようにも構成される。
【0021】
本発明のさらに他の側面は、
前記不織布積層体を含む物品を提供する。
【0022】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層(support layer)またはトップシート(top sheet)でもある。
【0023】
前記物品がおむつの場合、前記不織布積層体は、親水剤含浸量(OPU)が0.7%以下において、前記おむつのトップシート層に適用されたとき、水の吸収速度が3sec以下でもある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一具現例による巻縮型複合繊維の不織布は、クリンプの形態が鮮明であり、形態安全性が良好であり、すぐれたソフト性及びバルキー性が向上されうる。
【0025】
従って、前述の巻縮型複合繊維の不織布を含むおむつは、着用者の皮膚を傷つけたり、発疹を起こさせたりしないのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一具現例による巻縮型複合繊維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【
図2】本発明の他の具現例による巻縮型複合繊維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【
図3】実施例及び比較例で使用された巻縮型複合繊維の一断面図である。
【
図4】実施例4で製造された巻縮型複合繊維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一具現例による巻縮型複合繊維の不織布について詳細に説明する。
本発明の一具現例による巻縮型複合繊維(以下、簡単に「複合繊維」とする)の不織布は、第1プロピレン系重合体と第2プロピレン系重合体とを含む。
【0028】
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体は、(i)示差走査熱量計(DSC)で測定される前記第2プロピレン系重合体の融点が、前記第1プロピレン系重合体の融点より30℃以上高く、(ii)前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.7以上であり、(iii)前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した分子量分布(MWD)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.5以上であり、(iv)前記第1プロピレン系重合体/前記第2プロピレン系重合体(重量比)で表示される成分比が、50/50~10/90である。
【0029】
前記分子量分布(MWD:molecular weight distribution)は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を意味する。
【0030】
例えば、前記第1プロピレン系重合体の融点は、前記第2プロピレン系重合体の融点より30℃~60℃または30℃~100℃高いものでもある。
【0031】
例えば、前記溶融指数の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)は、1.7~2.0、1.7~3.0または1.7~4.0でもある。
【0032】
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体が、前記条件(i)~(iv)をいずれも充足することにより、前記複合繊維は、巻縮性を有することになり、該複合繊維で構成された不織布は、優秀なソフト性及びバルキー性を有することができる。
【0033】
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体は、前記複合繊維の断面内において、実質的にそれぞれの領域を占めるように配列され、長手方向に沿って連続して伸長され、前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体のうち少なくとも一成分は、前記複合繊維の長手方向に沿って連続し、周縁部表面の少なくとも一部を形成することができる。
【0034】
優秀なソフト性及びバルキー性を有する複合繊維の不織布を得ることができるという点において、前記第1プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体を含み、前記第2プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体70~90重量部及びプロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体10~30重量部を含み、前記プロピレン・エチレン・ブチレン三元重合体は、プロピレン90~95重量%、エチレン2.5~5.0重量%及びブテン1.5~5.0重量%を含んでもよい。
【0035】
前記第1プロピレン系重合体は、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、1~5重量%の核剤(nucleating agent)をさらに含み、それにより、前記第1プロピレン系重合体の結晶化温度は、前記第2プロピレン系重合体の結晶化温度より19℃以上高いものでもある。
【0036】
前記第1プロピレン系重合体の融点は、120~175℃の範囲でもあり、前記第2プロピレン系重合体の融点は、110~155℃の範囲でもある。また、前記2つの成分の融点差は、前述のように、30℃以上、30℃~60℃または30℃~100℃の範囲でもある。
【0037】
前記不織布は、前記第1プロピレン系重合体の紡糸によって形成された繊維70~90重量部、及び前記第1プロピレン系重合体の紡糸によって形成された繊維10~30重量部を含んでもよい。
【0038】
前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体との、ASTM D1238によって測定される溶融指数(MFR:測定温度230℃、荷重2.16kg)の比(前記第2プロピレン系重合体/前記第1プロピレン系重合体)が1.7以上であり、それにより、前記巻縮型複合繊維不織布において、クリンプの個数が29ea/10mm以下でもある。
【0039】
前記第1プロピレン系重合体と前記第2プロピレン系重合体は、それぞれ互いに独立して、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、柔軟剤1~5重量%をさらに含み、silksoft性指数(coefficient of friction)が0.45以下でもある。
【0040】
また、前記不織布は、柔軟剤1~5重量%をさらに含んでもよい。
【0041】
前記柔軟剤は、炭素数5~25の脂肪酸アミドを含んでもよい。
【0042】
前記脂肪酸アミドは、オレイン酸アミド、エルカアミド、ステアリン酸アミド、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体は、高立体規則性重合触媒を使用して製造することができる。
【0044】
前記高立体規則性重合触媒は、ジエステル成分の触媒、スクシネート成分の触媒、メタロセン触媒、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0045】
また、前記第1プロピレン系重合体が、主成分であるプロピレン系重合体成分以外に、前記核剤をさらに含むことにより、前記第1プロピレン系重合体の結晶化温度を上昇させ、前記第2プロピレン系重合体の再結晶化温度と差別化させることにより、クリンプ発現による不織布の厚みを改善させ、前記不織布のソフト性及びバルキー性をさらに向上させることができる。
【0046】
前記核剤は、粒状添加剤、自家組み立て核剤、反応性核剤、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記粒状添加剤は、ベンゾ酸ナトリウム、二酸化チタン、シリカ、ナノクレイ、ナトリウム塩、チタン酸カルシウム、金属酸化物、金属水酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記自家組み立て核剤は、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、ジベンジリデンソルビトール、モノベンジリデンソルビトール(MBS)、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記反応性核剤は、金属塩、4-ビフェニルカルボキシル酸、4-ビフェニルメタノール、アジピン酸、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0047】
前記複合繊維を含む不織布は、特別な装置を使用せずに、通常の複合溶融紡糸法で得ることができるが、例えば、生産性にすぐれるスパンボンディング法によって製造されたスパンボンド不織布でもある。
【0048】
以下、スパンボンド不織布の製造方法について詳細に説明する。
【0049】
まず、複合繊維の一方領域を形成する前記第1プロピレン系重合体と、他方領域を形成する前記第2プロピレン系重合体とをそれぞれ別個に、押出機などで溶融し、所望する繊維構造を形成して吐出するように構成された複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から各溶融物を吐出させ、複合張繊維を放出させる。
【0050】
その後、前述の放出された長繊維を冷却用空気によって冷却し、また延伸用空気によって張力を加え、所定の纎度を有させ、そのまま捕集ベルト上で捕集し、所定厚に堆積させる。
【0051】
その後、交絡処理として、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波のような手段を利用する方法、加熱エンボシングロールを利用するエンボシング加工する方法、または高温通気により、熱融着する方法によって後加工が進められる。
【0052】
本発明の一具現例においては、前記巻縮型複合繊維不織布は、エンボシング加工によって熱融着されて形成されたものでもある。
【0053】
前記エンボシング加工は、ボンディング率(すなわち、エンボシング面積率)が13%以下であり、非エンボシング単位面積が0.2mm2以上、例えば、0.2~0.7mm2の条件においても遂行される。ここで、非エンボシング単位面積とは、四方がエンボシング部で取り囲まれた最小単位の非エンボシング部において、エンボシングに内接する四角形の最大面積を意味する。その範囲の条件でもってエンボシング加工を行えば、必要な不織布強度を維持したまま、さらにバルキー性が高い不織布を得ることができる。
【0054】
ボンディング率及び非エンボシング単位面積は、エンボシングパターンを変更することによっても調節される。
【0055】
前記エンボシング加工の結果、前記巻縮型複合繊維不織布は、エンボシング部及び非エンボシング部を含み、前記エンボシング部は、オープンエンボシングタイプであり、同一であるか、あるいは異なる間隔で連続して配列された複数個の単位エンボシングパターン部を含んでもよい。
【0056】
図1を参照すれば、本発明の一具現例による巻縮型複合繊維の不織布10のエンボシングパターンを示す部分図である。
図1を参照すれば、本発明の一具現例による巻縮型複合繊維の不織布10は、エンボシング部11及び非エンボシング部12を含む。
【0057】
図2は、本発明の他の具現例による巻縮型複合繊維の不織布20のエンボシングパターンを示す部分図である。
図2を参照すれば、本発明の他の具現例による巻縮型複合繊維の不織布20は、エンボシング部21及び非エンボシング部22を含む。
【0058】
前記巻縮型複合繊維不織布の繊度及び基本重量は、用途によっても適切に選択されるが、通常纎度は、1.0~2.5デニール、例えば、0.7~2.0デニールであり、基本重量は、15~100g/m2、例えば、7~30g/m2でもある。
【0059】
また、前記単位エンボシングパターン部に含まれたそれぞれのエンボシングパターンは、面積が0.2~0.7mm2でもある。
【0060】
前記複合繊維は、前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体以外に、本発明の目的を損傷させない範囲において、必要により、その他成分を含んでもよい。前記その他成分は、公知された耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤(anticlouding agent)、充填剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
前記安定剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)のような老化防止剤;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’-オキサミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートのようなフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムのような脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレートのような多価アルコール脂肪酸エステル;またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0062】
前記充填剤は、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、白雲石、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、滑石、クレイ、雲母、石綿、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0063】
前述のプロピレン系重合体、及び必要によって使用される前述のその他成分は、公知された方法を利用して混合することができる。
【0064】
前記複合繊維は、モノ型(mono)、芯鞘型(core/sheath)、サイドバイサイド型(side-by-side)またはサンドイッチ型(sandwitch)の複合繊維でもある。
【0065】
例えば、前記複合繊維は、厚み方向断面が、前記第1プロピレン系重合体によってなる第1断面、及び前記第2プロピレン系重合体によってなる第2断面を含むサイドバイサイド型複合繊維であり、前記第1断面は、前記第2断面よりも狭い。
【0066】
以下、本発明の一具現例による不織布積層体について詳細に説明する。
【0067】
本発明の一具現例による不織布積層体は、少なくとも2層以上の層構成を有する積層体であり、そのうち少なくとも1層が、前述の不織布でもある。
【0068】
前記不織布積層体は、前述の不織布のうち、スパンボンド不織布を含んでもよい。
【0069】
例えば、前記巻縮型複合繊維の不織布は、スパンボンド不織布であり、前記不織布積層体は、両表層(surface layer)のうち片面だけに、前記スパンボンド不織布が露出されるようにも構成される。
【0070】
また、前記不織布積層体は、前記スパンボンド不織布4枚が積層されてなるものでもあり、その場合、前記不織布積層体は、均一度(CV%)が3%以下でもある。本明細書において「均一度(CV%)」とは、不織布積層体を1m2の大きさに切断し、30個の試験片を作った後、前記30個の試験片の重量偏差を、前記複数個の試験片の平均重量で割った値の百分率を意味する。
【0071】
前記スパンボンド不織布4枚が積層されてなる前記不織布積層体は、厚みが0.02mm以上であり、クリンプ数が10個/10mm以上であり、ボンディング率が13%以下であり、前記不織布積層体のソフト性を示すMD剛軟度(MD stiffness)が40mm以下でもある。本明細書において「MD剛軟度」とは、不織布積層体の機械方向屈曲変形(すなわち、不織布積層体が反った程度)を意味する。
【0072】
以下、本発明の一具現例による物品について詳細に説明する。
【0073】
本発明の一具現例による物品は、前述の不織布積層体を含む。
【0074】
前記物品は、おむつ、吸収用品、排便用品、支持層(support layer)またはトップシート(top sheet)でもある。
【0075】
前記物品がおむつである場合、前記不織布積層体は、親水剤含浸量(OPU:oil pick-up)が0.7%以下であり、前記おむつのトップシート層に適用されたとき、水の吸収速度が3sec以下でもある。
【0076】
前記親水剤含浸量(OPU)は、下記数式1によっても計算される。
[数式1]
OPU(%)=(W1-W0)/W0X100
【0077】
数式1で、W0は、親水剤を含まない不織布積層体の重さであり、W1は、親水剤を含む不織布積層体(固形分のみ)の重さである。また、前記数式1で、W1は、親水剤を含まない不織布積層体の重さと、前記親水剤において、固体成分だけの重さとを合算した数値である。前記親水剤としては、2.0~5.0重量%の濃度を有するエマルジョン形態の親水剤(Zschimmer、Lertisan HD 20/3、ドクサートナトリウム(docusate sodium)含有物質)が使用されうる。
【0078】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明する。本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
実施例1~6及び比較例1~10
エルカアミド柔軟剤または/及び核剤(MBT、NB3010C、安息香酸ナトリウム含有物質)が添加された第1プロピレン系重合体(A)(第1成分)、及びエルカアミド柔軟剤が添加された第2プロピレン系重合体(B)(第2成分)を使用し、スパンボンディング法によって複合溶融紡糸を実施し、
図3の構成を有するサイドバイサイド型複合繊維1を捕集面上に堆積させ、
図1に図示されたエンボシングパターンにより、上部温度155℃であり、下部温度が150℃に加熱されたカレンダーロールを使用してエンボシング加工し、巻縮型複合繊維を含む不織布を製造した。ここで、前記第1プロピレン系重合体(A)に核剤(MBT、NB3010C、安息香酸ナトリウム含有物質)を添加したのは、前記第1プロピレン系重合体(A)の結晶化温度を、前記第2プロピレン系重合体(B)より19℃高く付与するためのものである。ここで、前記第1プロピレン系重合体(A)及び前記第2プロピレン系重合体(B)に、それぞれエルカアミド柔軟剤を添加したのは、不織布のsilksoft性を向上させるためのものである。前記第1プロピレン系重合体及び前記第2プロピレン系重合体(B)の種類、物性及び含量比、核剤の含量、エルカアミド柔軟剤の含量、並びにエンボシングパターンの特性を、下記表1に示した。下記表1において、MFRは、ASTM D1238により、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定された溶融指数を意味する。
【0080】
【0081】
前記表1で、PA1~PA7及びPBは、それぞれ下記のところを意味する。
【0082】
(1)PA1:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)70重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%との混合物
(2)PA2:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)60重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(EXXON、VISTAMAXX 7020)40重量%との混合物
(3)PA3:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)40重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(DOW、VERSIFY 4200)60重量%との混合物
(4)PA4:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)70重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%との混合物
(5)PA5:プロピレン単独重合体(LG化学、MH7700)70重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%との混合物
(6)PA6:プロピレン単独重合体(LG化学、MH7700)60重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)40重量%との混合物
(7)PA7:プロピレン単独重合体(LG化学、H7700)70重量%と、ポリプロピレンにエチレンが共重合されたエラストマー系ランダム共重合体(LG化学、T-7700)30重量%との混合物
(8)PB:プロピレン単独重合体(PMC、H562T)
【0083】
評価例:スパンボンド不織布の物性評価
前記実施例1~6及び比較例1~10で製造されたそれぞれのスパンボンド不織布の物性を、下記のような方法で評価し、その結果を下記表2に示した。
【0084】
(1) 単位面積当たり重さ(重量:g/m2):ASTM D3776-1985によって測定した。
(2)引っ張り強度:引っ張り強伸度機(Instron)測定設備を利用し、KSK 0520法により、試験片の幅5cm、間隔10cm、引っ張り速度500mm/minの条件で引っ張り試験を行い、最大引っ張り荷重を求めた。
(3)引っ張り伸度:前記(2)の方法で測定した最大伸長時の伸度を求めた。
(4)silksoft性指数(C.O.F:coefficient of friction):静止している物体に力を加えれば、摩擦力は、物体の垂直方向の分力に比例するが、このとき、比例定数を静止摩擦係数と言い、該静止摩擦係数は、接触する物体状態と、接触面の状態とによって決定される。KSM 3009によって静止摩擦係数を測定した。
(5)厚み(mm):KSK 0506の方法によって測定した。
(6)クリンプ数:顕微鏡を利用し、10mm範囲内のフィラメントクリンプの個数を直接測定した。
(7)紡糸性:溶融紡糸時、フィラメント揺れを肉眼で観察し、ポリマードリップ(drip)は、欠点検出器で検出した。
【0085】
【0086】
前記表2を参照すれば、実施例1~6で製造された巻縮型複合繊維の不織布は、比較例1~10で製造された巻縮型複合繊維の不織布対比で、厚みが厚く、silksoft性指数(C.O.F)が小さく、クリンプ数が多く、引っ張り強度(MD:machine direction)、引っ張り強度(CD:cross direction)、引っ張り伸度(MD:machine direction)、引っ張り伸度(CD:cross direction)及び紡糸性のようなその他物性は、すぐれているか、あるいは互いに類似していると分かった。
【0087】
図4は、実施例4で製造された巻縮型複合繊維の不織布のエンボシングパターンを示す部分図である。
【0088】
図4を参照すれば、実施例4で製造された巻縮型複合繊維の不織布は、約20個/10mmのクリンプ数を有するということが分かった。
【0089】
本発明は、図面及び実施例を参照して説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求範囲の技術的思想によって定められるものである。