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特許7376690上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用のリスクを評価するための方法、その検出キット、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用のリスクを評価するための方法、その検出キット、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6881 20180101AFI20231031BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20231031BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C12Q1/6881 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
G01N33/50 Q
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022508561
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2019100908
(87)【国際公開番号】W WO2021030925
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516171001
【氏名又は名称】チャン グァン メモリアル ホスピタル,リンコウ
【氏名又は名称原語表記】Chang Gung Memorial Hospital,Linkou
【住所又は居所原語表記】No.5,Fusing St.,Guishan Dist.,Taoyuan City,33305,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ウェン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】フン,シュエン-イウ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュン-ビン
(72)【発明者】
【氏名】ル,チュン-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャン-ウェイ
【審査官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524736(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106755291(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/186265(US,A1)
【文献】High-throughput DNA typing of HLA-A, -B, -C, and -DRB1 loci by a PCR-SSOP-Luminex method in the Japanese population,Immunogenetics,2005年,Vol. 57,p. 717-729
【文献】注射用塩酸リトドリン製剤の先発医薬品と後発医薬品における品質比較,医療薬学,2006年,Vol. 32, No. 7,p. 667-672
【文献】後発医薬品切り替えにおける医薬品情報について,医療品情報学,2017年,Vol. 19, No.1,p. N1-N3
【文献】バイオ医薬品開発における早期リスク低減ツールとしての開発適合性評価,MEDCHEM NEWS,2014年,No. 3,p. 10-15
【文献】PLOS ONE,2018年12月07日,13(12),e0208080 P.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用の危険性を評価するための検出キットであって、患者の試験試料中の以下の対立遺伝子:
(a)HLA-B*5101、または
(b)HLA-B*5102
の少なくとも1つの存在を検出するための試薬を含み、
少なくとも1つのHLA対立遺伝子の存在は、対応するHLA対立遺伝子を持たない患者と比較して、患者が上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発症するより高いリスクを有することを示し、
前記上皮成長因子受容体阻害剤が、セツキシマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、アファチニブ、またはブリガチニブであり、
前記皮膚副作用が、斑状丘疹状皮疹(MPE)、多形紅斑(EM)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、または、好酸球増多および全身症状を伴う薬疹(DRESS)であり、
前記試薬が、配列番号1~配列番号8のいずれかのオリゴヌクレオチドを含む、検出キット。
【請求項2】
前記試薬が、配列番号1又は配列番号5を有するフォワードプライマー、配列番号2又は配列番号6を有するリバースプライマー、及び配列番号3、配列番号4、配列番号7又は配列番号8のプローブを含む、請求項1に記載の検出キット。
【請求項3】
前記HLA対立遺伝子が、HLA-B*5101対立遺伝子である、請求項1に記載の検出キット。
【請求項4】
前記HLA対立遺伝子が、HLA-B*5102対立遺伝子である、請求項1に記載の検出キット。
【請求項5】
前記HLA対立遺伝子が、HLA-B*5101対立遺伝子及びHLA-B*5102
対立遺伝子の組み合わせである、請求項1に記載の検出キット。
【請求項6】
前記上皮成長因子受容体阻害剤が、セツキシマブから選択される抗上皮成長因子受容体モノクローナル抗体である、請求項1に記載の検出キット。
【請求項7】
前記上皮成長因子受容体阻害剤が、エルロチニブ又はアファチニブから選択されるチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1に記載の検出キット。
【請求項8】
上皮成長因子受容体阻害剤によって誘発される皮膚副作用の発現リスクを評価するための検出キットの製造における、HLA-B*5101対立遺伝子、HLA-B*5102対立遺伝子又はHLA-B*5101対立遺伝子及びHLA-B*5102対立遺伝子を検出するための試薬の使用であって、
少なくとも1つのHLA対立遺伝子の存在は、対応するHLA対立遺伝子を持たない患者と比較して、患者が上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発症するより高いリスクを有することを示し、
前記皮膚副作用が、斑状丘疹状皮疹(MPE)、多形紅斑(EM)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、または、好酸球増多および全身症状を伴う薬疹(DRESS)であり、
前記上皮成長因子受容体阻害剤が、セツキシマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、アファチニブ、またはブリガチニブであり、
前記試薬が、HLA-B*5101対立遺伝子及びHLA-B*5102対立遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含み、
前記試薬が、配列番号1~配列番号8のいずれかのオリゴヌクレオチドを含む
【請求項9】
前記HLA対立遺伝子が、HLA-B*5101対立遺伝子である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記HLA対立遺伝子が、HLA-B*5102対立遺伝子である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記HLA対立遺伝子が、HLA-B*5101対立遺伝子及びHLA-B*5102対立遺伝子の組み合わせである、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記上皮成長因子受容体阻害剤が、セツキシマブから選択される抗上皮成長因子受容体モノクローナル抗体である、請求項8に記載の使用。
【請求項13】
前記上皮成長因子受容体阻害剤が、エルロチニブ、アファチニブ又はブリガチニブから選択されるチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上皮成長因子受容体阻害剤(EGFRI)によって誘導される皮膚副作用を発症するリスクを評価するための方法、特に、抗上皮成長因子受容体モノクローナル抗体(mAb)、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)などによって誘導される皮膚副作用を発症するリスクを評価するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
皮膚副作用(CADR)は常に大きな臨床的問題であり、軽度の斑状丘疹状皮疹(MPE)、多形紅斑(EM)から重度の皮膚副作用(SCAR)まで、非常に多様な症状があり、好酸球増加症と全身症状を伴う薬疹(DRESS), スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS), 中毒性表皮壊死症(TEN)などが含まれる。スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)の発症前の症状は、発熱、咽頭痛、口唇腫脹等のインフルエンザ様症状であることが多く、急速に全身の紅斑、水疱、眼・口腔・性器の粘膜の炎症・潰瘍に進行する。重症例では、症状は全身熱傷と類似している。2つの間の最大の差は表皮分離のパーセンテージであり、SJSでは分離が体表面積の10%未満であり、TENでは分離が体表面積の30%を超える。好酸球増多と全身症状を伴う薬疹(DRESS)の主な臨床的特徴は、発熱、皮膚発疹、血中の好酸球増加、リンパ節腫脹および内臓浸潤などである。最も一般的で重度に影響を受ける臓器は肝臓であり、これらの患者の最も一般的な死因である劇症肝炎に至ることがある。他の臓器病変は、腎炎、心筋炎、肺炎、甲状腺炎につながる。
【0003】
薬物有害反応はしばしば免疫反応を伴うが、免疫メカニズムは極めて複雑である。例えば、HLA-Aは約300のサブタイプを有し、HLA-Bは約600の遺伝子型を有する。したがって、薬物有害反応の根底にある免疫メカニズムを確かめることは困難である。
【0004】
上皮成長因子受容体(EGFR)は抗癌療法開発の有効な標的とされている。EGFR標的治療薬は15年以上にわたって市販されており、無数の癌患者のその寿命を延ばすのに役立っている。上皮成長因子受容体阻害剤には、抗上皮成長因子受容体モノクローナル抗体(mAb)や上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)などがある。中でも、抗上皮成長因子受容体モノクローナル抗体のメカニズムは上皮成長因子受容体に特異的に結合し、上皮成長因子の機能を競合的に阻害することで、がん細胞を増殖できなくすることである。実地臨床でよく用いられるモノクローナル抗体薬は、セツキシマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブおよびパニツムマブである。EGFR-TKIはチロシンキナーゼの活性を阻害する薬剤である。チロシンキナーゼは細胞内で多くのシグナル伝達のスイッチとして働くため、細胞の成長、増殖および分化に重要な役割を果たし、その変異はしばしば癌を引き起こす。したがって、チロシンキナーゼ阻害剤を抗癌剤として使用することができる。また、がん細胞の増殖を抑制するだけでなく、新たな血管新生を防ぎ、がん細胞への栄養や酸素の供給を遮断することもできる。現在、実地臨床でよく使用されているチロシンキナーゼ阻害薬には、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、アファチニブ、ブリガチニブなどがある。
【0005】
上皮成長因子受容体阻害剤はさまざまな癌の治療に使用できるが、消化管毒性、肺毒性、肝毒性、皮膚副作用(CADR)などの副作用が依然として臨床現場でよくみられる。上皮基底膜におけるEGFRの高発現レベルのため、上皮成長因子受容体阻害剤の使用は、しばしば皮膚副作用を引き起こす。したがって、上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用の発現リスクを評価する必要性は依然として存在する。本発明は、この必要性および他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は患者における上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用の発症リスクを評価する方法を提供し、ここで、皮膚副作用としては、以下:斑状丘疹状皮疹(MPE)、多形紅斑(EM)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、または、好酸球増加症および全身症状を伴う薬疹(DRESS)が挙げられる。HLA-B*5101対立遺伝子および/またはHLA-B*5102対立遺伝子は、上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用と関連する。
【0007】
具体的に、本発明は、HLA-B*5101対立遺伝子および/またはHLA-B*5102対立遺伝子の存在を検出する工程を含む、患者における上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発現するリスクを評価するための方法を提供し、ここで、HLA-B*5101対立遺伝子および/またはHLA-B*5102対立遺伝子の存在が上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用のリスクを示す。具体的な実施形態において、上皮成長因子受容体阻害剤としては、セツキシマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、アファチニブ、またはブリガチニブが挙げられる(しかし、これらに限定されない)。皮膚副作用としては、斑状丘疹状皮疹、多形紅斑、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、または、好酸球増加症および全身症状を伴う薬疹のうち、少なくとも1つの副作用が挙げられる。一実施形態では、患者がHLA-B*5101対立遺伝子を保有する。一実施形態では、患者がHLA-B*5102対立遺伝子を保有する。一実施形態では、患者がHLA-B*5101対立遺伝子およびHLA-B*5102対立遺伝子を保有する。
【0008】
本発明は、上皮成長因子受容体阻害剤によって誘発される皮膚副作用を発症するリスクを評価するための検出キットの製造における、HLA-B*5101対立遺伝子および/またはHLA-B*5102対立遺伝子を検出するための試薬を提供する。このキットは、HLA-B*5101またはHLA-B*5102から選択される少なくとも1つの対立遺伝子を検出するための試薬を含む。
【0009】
患者にHLA-B*5101対立遺伝子、HLA-B*5102対立遺伝子、またはHLA-B*5101対立遺伝子とHLA-B*5102対立遺伝子との組み合わせがある場合、HLA-B*5101対立遺伝子、HLA-B*5102対立遺伝子、またはHLA-B*5101対立遺伝子とHLA-B*5102対立遺伝子との組み合わせのない患者と比較して、患者が1倍より高い、2倍より高い、3倍より高い、4倍より高い、5倍より高い、6倍より高い、7倍より高い、8倍より高い、9倍より高い、10倍より高い、20倍より高い、30倍より高い、40倍より高い、50倍より高い、60倍より高い、70倍より高い、80倍より高い、90倍より高い、100倍より高い、110倍より高い、120倍より高い、130倍より高い、140倍より高い、150倍より高い、160倍より高い、1~30倍より高い薬物アレルギー反応の発症リスクがある。
【0010】
対立遺伝子を検出するための当該分野で公知の任意の方法、例えば、対立遺伝子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、対立遺伝子のcDNA、RNAまたはタンパク質産物を決定するための血清型決定または微小細胞毒性方法が使用され得る(しかし、これらに限定されない)。[Kenneth D. McClatchey. Clinical Laboratory Medicine. 2002].一実施形態では、オリゴヌクレオチドが患者の末梢血のDNAに特異的にハイブリダイズする。オリゴヌクレオチドは、HLA-B*5101対立遺伝子および/またはHLA-B*5102対立遺伝子の最も可変な配列のために設計される。特定の実施形態において、HLA-B*5101またはHLA-B*5102の存在を検出するために使用されるフォワードプライマー1のオリゴヌクレオチド配列は5’-CGCTTCATTGCAGTGGGC-3’(配列番号1);リバースプライマー1が5’-TGGTCTTGAAGATCTGTGTGTTCC-3’(配列番号2);プローブ1配列が5’-AGAGAGGAGCCGCG-3’(配列番号3);プローブ2配列が5’-GACGGAGCCCCGG-3’(配列番号4);フォワードプライマー2のオリゴヌクレオチド配列が5’-ACACTTGGCAGACGATGTATGG-3’(配列番号5)であり、リバースプライマー2は5’-GGTCCAGGAGCTCAGGTCC-3‘(配列番号6)であり、プローブ3配列は5’-CGGCAAGGATTACAT-3’(配列番号7)であり、プローブ4配列は5’-ACGGCAAAGATTACAT-3’(配列番号8)である。
【0011】
本発明は、上皮成長因子受容体阻害剤によって誘発される皮膚副作用を発症するリスクを評価するための検出キットを提供する。検出キットはHLA-B*5101またはHLA-B*5102から選択される少なくとも1つの対立遺伝子を検出することができる試薬を含み、少なくとも1つの対立遺伝子の存在は、対応する対立遺伝子を有さない患者と比較して、上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用を発症するより高いリスクを示す。具体的な実施形態では、皮膚副作用が以下の副作用:斑状丘疹状皮疹、多形紅斑、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死、または、好酸球増加症および全身症状を伴う薬疹のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明は、上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用の発生抑制または治療のための方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされる皮膚副作用を発症するリスクを評価し、前記皮膚副作用を治療するための方法を提供し、以下の工程を含む:(a) 患者の試料中の以下の対立遺伝子:HLA-B*5101またはHLA-B*5102から選択される少なくとも1つの対立遺伝子の存在を検出する工程;(b)試料中の少なくとも1つの対立遺伝子:HLA-B*5101またはHLA-B*5102の存在によって、患者が上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発症するリスクが増加していることを示す工程;および(c)皮膚副作用を治療するための薬物の投与。
【0014】
特定の実施形態では、皮膚副作用を治療する方法が、液体、ステロイド、免疫グロブリン、シクロスポリン、抗TNF-α剤、または血漿交換を含む(しかし、これらに限定されない)薬物を投与することである。
【0015】
本発明はまた、上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発症するリスクを評価し、前記皮膚副作用の発症を減少させるための方法に関し、以下の工程を含む:(a)患者の試料中の以下の対立遺伝子:HLA-B*5101またはHLA-B*5102から選択される少なくとも1つの対立遺伝子の存在を検出する工程;(b)試料中の以下の少なくとも1つの対立遺伝子:HLA-B*5101またはHLA-B*5102の存在によって、被験体が上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発症するリスクが増加していることを示す工程;および(c)患者に上皮成長因子受容体阻害剤を与えない工程。
【0016】
本発明はさらに、上皮成長因子受容体阻害剤によって治療可能な疾患を治療する方法を提供し、以下の工程を含む:(a)試料中に以下の少なくとも1つの対立遺伝子HLA-B*5101またはHLA-B*5102の存在を検出すること、(b)試料中の以下の少なくとも1つの対立遺伝子:HLA-B*5101またはHLA-B*5102の存在によって、患者が上皮成長因子受容体阻害剤によって誘導される皮膚副作用を発症するリスクが増加していることを示す工程、および(c)この疾患を治療するために、上皮成長因子受容体阻害剤を使用することを回避することによって、皮膚副作用のリスクを軽減する。
【0017】
本発明で使用される「発明」および「本発明」という用語は、特許請求の範囲の適用を広く指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本出願の範囲または特許請求の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。本発明の実施例は、本出願によって定義され、本発明の内容によって定義されるものではない。この概要は本発明の様々な態様の高レベルの概要であり、以下のセクションでさらに説明されるいくつかの概念の説明である。この「発明の概要」は、本出願の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、また特許請求の範囲を決定するためにのみ使用されることを意図するものではない。出願の目的は、図の一部又は全部及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【実施例
【0018】
以下の実施例では、上皮成長因子受容体阻害剤によりCADR(MPE、EM、SJS/TEN、およびDRESSを含む)が誘発された患者11例を対象に、核酸配列決定に基づくタイピングによるHLAタイピングを実施し、HLAタイピングの結果を正常な健常対照2038例と比較した。結果はHLA-B*5101対立遺伝子、HLA-B*5102対立遺伝子、またはHLA-B *5101対立遺伝子とHLA-B*5102対立遺伝子との組み合わせが、上皮成長因子受容体阻害剤により誘導されるCADRと関連することを示す(表1参照)。
【0019】
HLA-B*5101対立遺伝子に関して、上皮成長因子受容体阻害剤が誘導するCADRを有する患者11人中5人(45.45%)がこの遺伝子型を持っていたが、対照群の正常な健常被験者2038人中170人(8.34%)のみしかこの遺伝子型を持っていなかった。これは、HLA-B*5101が、上皮成長因子受容体阻害剤が誘導するCADRと関連することを示す(CADR対健常対照群:P=1.30x10-3、オッズ比(すなわちOR)=9.16(2.77~30.32)、感度:45.45%、特異性:91.66%)。
【0020】
HLA-B*5102対立遺伝子に関して、上皮成長因子受容体阻害剤が誘導するCADRを有する11名中4名(36.36%)がこの遺伝子型を持っていたが、対照群の正常な健常者2038名中64名(3.14%)のみしかこの遺伝子型を持っていなかった。これは、HLA-B*5102が、上皮成長因子受容体阻害剤が誘導するCADRと関連することを示す(CADR対健常対照群:P=3.07x10-4、オッズ比(すなわちOR)=17.63(5.03~61.73)、感度:36.36%、特異性:96.86%)。
【0021】
HLA-B*5101対立遺伝子およびHLA-B*5102対立遺伝子の組み合わせのさらなる分析は、このような組み合わせが、上皮成長因子受容体阻害剤が誘導するCADRを発症する危険性との相関と予測感度を有意に増加させることを示す(CADR対健常対照群:P=1.80x10-7、オッズ比(すなわちOR)=34.69(7.45~161.54)、感度:81.81%、特異性:88.52%)。
【0022】
上記の結果に基づき、HLA-B*5101対立遺伝子および/またはHLA-B*5102対立遺伝子の存在は、上皮成長因子受容体阻害剤によって引き起こされるCADRの発症リスクを評価するために使用することができる。
【0023】
【表1】
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について記述したが、本発明は詳細に記述され、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本発明の主題を変更および修正することができる。変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【配列表】
0007376690000001.app