(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】自転車サドル
(51)【国際特許分類】
B62J 1/00 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
B62J1/00 A
B62J1/00 C
(21)【出願番号】P 2022515856
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 US2020070496
(87)【国際公開番号】W WO2021067981
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-09
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522093362
【氏名又は名称】グラック,ルイス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グラック,ルイス
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/37528(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0181136(US,A1)
【文献】米国特許第4512608(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102016012076(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0017084(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0056519(US,A1)
【文献】国際公開第2014/130001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車で使用するための自転車サドルであって、
ポストと、
前記ポストに取り付けられた連結アームと、
前記連結アームに取り付けられたシート
であって、前記シートは、前記ポストよりも垂直方向に高い位置にあり、かつ、ノーズレスである、シートと、
前記連結アームに取り付けられ、
カップ形要素を備える前方支持部であって、前記カップ形要素は、前記シートの中心の直接前方であって且つ前記シートに対して離間された関係で
調整可能に位置づけられ、後方に向かって開いて垂直方向にのびる、前方支持部と
を含み、
前記カップ形要素は、乗り手が前記シート上に座り、及び前記自転車をこいでいる間、前記乗り手の性器の横
と前記乗り手の性器の上との両方で前記乗り手に押し付けられるように
構成される、自転車サドル。
【請求項2】
前記シートは、弾性パッドによって少なくとも部分的に覆われたシートパンを含む、請求項1に記載の自転車サドル。
【請求項3】
前記シートは、前記乗り手が前記シート上に座ることで前記乗り手の座骨を受けるように位置付けられた凹部の対を画定する、請求項1に記載の自転車サドル。
【請求項4】
前記前方支持部は、
前記カップ形要素から前方に突出する前方支持部ホーンと
を含む、請求項1に記載の自転車サドル。
【請求項5】
前記カップ形要素は、パッド入りの縁を含む、請求項4に記載の自転車サドル。
【請求項6】
前記カップ形要素は、通気を可能にするための複数の開口を画定する、請求項4に記載の自転車サドル。
【請求項7】
前記連結アームは、一次ロッドの対を含む、請求項1に記載の自転車サドル。
【請求項8】
少なくとも部分的に前記一次ロッドの対のそれぞれに固定することにより、前記一次ロッドの対を前記ポストに取り付けるために有効である調整可能シートポストブラケットをさらに含む、請求項7に記載の自転車サドル。
【請求項9】
前記一次ロッドの対は、その行程の大部分について互いに平行に延びる、請求項7に記載の自転車サドル。
【請求項10】
前記シートは、互いに平行に延在するシートロッドの対を画定する、請求項7に記載の自転車サドル。
【請求項11】
前記シートに取り付けられたシート支持部と、
前記シート支持部の1つの端部に位置付けられ、及び少なくとも部分的に前記一次ロッドの対のそれぞれに固定することにより、前記シート支持部を前記一次ロッドの対に取り付けるために有効である下部調整可能シートブラケットと、
前記シート支持部の他の端部に位置付けられ、及び少なくとも部分的に前記シートロッドの対のそれぞれに固定することにより、前記シート支持部を前記シートに取り付けるために有効である上部調整可能シートブラケットと
をさらに含む、請求項10に記載の自転車サドル。
【請求項12】
少なくとも部分的に前記一次ロッドの対のそれぞれに固定することにより、前記前方支持部を前記一次ロッドの対に取り付けるために有効である調整可能前方支持部ブラケットをさらに含む、請求項7に記載の自転車サドル。
【請求項13】
前記前方支持部は、湾曲スロット及び2つの湾曲ガイドを画定し、及び
前記調整可能前方支持部ブラケットは、前記湾曲スロットを通過し、及び前記2つの湾曲ガイドに係合する、請求項12に記載の自転車サドル。
【請求項14】
自転車であって、
前記自転車によって支持されたポストと、
前記ポストに取り付けられた連結アームと、
前記連結アームに取り付けられたシート
であって、前記シートは、前記ポストよりも垂直方向に高い位置にあり、かつ、ノーズレスである、シートと、
前記連結アームに取り付けられ、
カップ形要素を備える前方支持部であって、前記カップ形要素は、前記シートの中心の直接前方であって且つ前記シートに対して離間された関係で
調整可能に位置づけられ、後方に向かって開いて垂直方向にのびる、前方支持部と
を含み、
前記カップ形要素は、乗り手が前記シート上に座り、及び前記自転車をこいでいる間、前記乗り手の性器の横
と前記乗り手の性器の上との両方で前記乗り手に押し付けられるように
構成される、自転車。
【請求項15】
自転車で使用するための自転車サドルであって、
ポストと、
前記ポストに取り付けられた一次連結アームと、
前記一次連結アームにヒンジ式に取り付けられた二次連結アームと、
前記一次連結アームに取り付けられたシート
であって、前記シートは、前記ポストよりも垂直方向に高い位置にあり、かつ、ノーズレスである、シートと、
前記二次連結アームに取り付けられ、
カップ形要素を備える前方支持部であって、前記カップ形要素は、前記シートの中心の直接前方であって且つ前記シートに対して離間された関係で
調整可能に位置づけられ、後方に向かって開いて垂直方向にのびる、前方支持部と
を含み、
前記カップ形要素は、乗り手が前記シート上に座り、及び前記自転車をこいでいる間、前記乗り手の性器の横
と前記乗り手の性器の上との両方で前記乗り手に押し付けられるように
構成される、自転車サドル。
【請求項16】
前記二次連結アームに取り付けられた受け部と、
前記一次連結アームに取り付けられたスライドラッチと
をさらに含み、前記二次連結アーム、前記一次連結アーム、前記受け部及び前記スライドラッチは、前記二次連結アームを前記一次連結アームに対して所定の位置に保持するために、前記スライドラッチが前記受け部に係合するように位置決め可能である、請求項15に記載の自転車サドル。
【請求項17】
前記スライドラッチに取り付けられ、及び前記スライドラッチを摺動させるために有効であるケーブルをさらに含む、請求項16に記載の自転車サドル。
【請求項18】
前記受け部は、u字形である、請求項
16に記載の自転車サドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、移動のための陸上車両に関し、より詳細には、自転車のためのサドル又は他のシートに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
典型的な現代の自転車サドル(すなわち自転車シート)は、乗り手が自らの臀部を置く主部と、乗り手がサドルをまたいだときに乗り手の鼠径部の下にあるように主部から前方に突出する狭いノーズ又はホーンとを含む。
図1は、典型的な自転車サドル110を有する自転車105に乗る乗り手100の斜視図を示す。このようなサドルでは、通常、乗り手の体重のおよそ25%以上は、鼠径部がサドルノーズに接触するところで支持される。乗り手が空力的姿勢を実現するために前方に傾くと、この割合は、増加することがある。
【0003】
それらは、広範に使用されているにもかかわらず、ノーズを含む自転車サドルは、性器のしびれ感、勃起不全、さらにインポテンスなど、性及び生殖に関する健康問題を引き起こすことがある。
図2は、人間の男性の会陰200(肛門205と性器210との間の領域)に位置する動脈及び神経の一部の平面図を示す一方、
図3は、同じ解剖学的領域の側面図を示す。典型的な自転車サドルノーズは、(会陰神経220を含む)陰部神経215及び下直腸神経225に圧力を加え、それらを圧縮することがある。同時に、サドルノーズは、(会陰動脈235を含む)外陰動脈230及び下直腸動脈240を圧迫することがある。感覚の消失及び血液供給の減少が起こることがある。
【0004】
従来のノーズをベースとした自転車サドルの欠点に対処するためにいくつかの解決策が開発されてきた。第1の解決策は、例えば、乗り手の会陰の中心への圧力を試し及び下げるために、サドルの中心に沿って縦方向に凹状チャネル、溝又は窪みを配置することを含む。それにもかかわらず、通常、重要な動脈及び神経が乗り手の縦方向に集中していない場合、この解決策は、効果的ではなく、シートは、その分割設計にもかかわらず、これらの動脈及び神経を圧縮し続ける。事実、そのような分割サドルは、乗り手への圧力をより限定的に集中させる傾向があるため、実際に事態を悪化させることがある。第2の解決策は、「ノーズレス」、すなわち「ノーズのない」サドルを作るためにサドルのノーズを取り除くことである。しかしながら、この場合にも欠点が残る。ノーズがない場合、乗り手は、シートから前方に滑っているという印象を受ける傾向があり、さらに、ノーズがある場合ほど、乗り手は、サドルと物理的に係合されないため、自転車の安定性、運動性及び操縦性を損なう。したがって、多くの真剣な自転車の乗り手は、ノーズレスな自転車サドルを現実的な選択肢と考えず、これらのシートは、特に人気があるわけではないか、又は不本意に受け入れられているのみである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の理由のため、上記の多くの欠点に対処する代替的な自転車シート設計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の実施形態は、ノーズレスであるが、ノーズレスサドル設計のいくつかの欠点に直面しない新しい自転車サドル設計を提供することにより、上記の必要性に対処する。
【0007】
本発明の態様は、自転車で使用するための自転車サドルであって、ポストと、連結アームと、シートと、前方支持部とを含む自転車サドルに関する。連結アームは、ポストに取り付けられ、及びシートは、連結アームに取り付けられる。前方支持部は、連結アームに取り付けられ、及びシートの前方に且つシートに対して離間された関係で位置決め可能である。前方支持部は、乗り手がシート上に座り、及び自転車をこいでいる間、乗り手の性器の横及び上で乗り手に押し付けられるように位置決め可能でもある。
【0008】
本発明の追加の態様は、ポストと、連結アームと、シートと、前方支持部とを含む自転車に関する。ポストは、自転車によって支持される。連結アームは、ポストに取り付けられ、及びシートは、連結アームに取り付けられる。前方支持部は、連結アームに取り付けられ、及びシートの前方に且つシートに対して離間された関係で位置決め可能である。前方支持部は、乗り手がシート上に座り、及び自転車をこいでいる間、乗り手の性器の横及び上で乗り手に押し付けられるように位置決め可能でもある。
【0009】
本発明のさらに追加の態様は、自転車で使用するための自転車サドルであって、ポストと、一次連結アームと、二次連結アームと、シートと、前方支持部とを含む自転車サドルに関する。一次連結アームは、ポストに取り付けられ、及びシートは、一次連結アームに取り付けられる。二次連結アームは、一次連結アームにヒンジ式に取り付けられ、及び前方支持部は、二次連結アームに取り付けられ、及びシートの前方に且つシートに対して離間された関係で位置決め可能である。前方支持部は、乗り手がシート上に座り、及び自転車をこいでいる間、乗り手の性器の横及び上で乗り手に押し付けられるように位置決め可能でもある。
【0010】
有利には、本発明の態様に従う実施形態は、乗り手がシートから前方に滑ることを防ぎ、同時に自転車を安定させ、操作し、及び操縦する乗り手の能力も高めるノーズレス自転車サドルを提供する。本発明の実施形態は、先行技術の設計と比較して、乗り手がより大きいペダリング力を生み出し、より有効なペダリング効果を実現することも可能にする。
【0011】
図面の簡単な説明
本発明のこれらの特徴、態様及び利点並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付図面に関してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】典型的な自転車サドルを有する自転車に乗っている乗り手の斜視図を示す。
【
図2】人間の男性の会陰に位置する動脈及び神経の一部の平面図を示す。
【
図3】人間の男性の会陰に位置する動脈及び神経の一部の側面図を示す。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による、自転車に関連する自転車サドルの斜視図を示す。
【
図6】
図4の自転車サドルの前方支持部及び調整可能前方支持部ブラケットの分解図を示す。
【
図7】乗り手が自転車をこいでいる間に使用中の
図4の自転車サドルの前方斜視図を示す。
【
図8】乗り手が自転車をこいでいる間に使用中の
図4の自転車サドルの側方斜視図を示す。
【
図9】
図4の自転車サドルのシートパンに対する、乗り手の骨盤帯の図表現を示す。
【
図10】本発明の第2の例示的な実施形態による代替的な自転車サドルの側方斜視図を示す。
【
図11】
図10に示される代替的な自転車サドルの領域の一部破断側面図を示す。
【
図12】本発明の第3の例示的な実施形態による代替的な自転車サドルの前部の分解斜視図を示す。
【
図13】本発明の第4の例示的な実施形態による代替的な自転車サドルの前部の分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、例示的な実施形態に関して説明される。この理由のため、これらの実施形態に対して多数の修正形態がなされ得、その結果は、依然として本発明の範囲内となる。本明細書で説明される特定の実施形態に関するいずれの限定も意図されていないか又は推論されるべきでない。
【0014】
図4及び5は、本発明の例示的な実施形態による自転車サドル400の態様を示す。
図4は、自転車405に関連する自転車サドル400の斜視図を示す一方、
図5は、自転車サドル400単独の分解斜視図を示す。
【0015】
例示的な自転車サドル400は、ポスト410と、一次ロッド415の対と、シート420と、シート支持部425と、前方支持部430と、4つの調整可能ブラケットとを含む。4つの調整可能ブラケットは、調整可能シートポストブラケット435と、下部調整可能シートブラケット440と、上部調整可能シートブラケット445と、調整可能前方支持部ブラケット450とを含む。
【0016】
ポスト410の下部分は、自転車405の管455に挿入可能である。ポスト410の頂部は、調整可能シートポストブラケット435を介して一次ロッド415の対に取り付けられる。一次ロッド415の対は、シート420の下で互いに平行に延在し、次いで前方支持部430の下を通過した後、上向きに曲がる。一次ロッド415の対は、その行程の大部分について平行に延在した後、それらの頂部の近くでループ460によって接合される。
【0017】
シート420は、弾性パッド470に覆われたシートパン465を含む。2つの平行なシートロッド475は、弾性パッド470の反対側のシートパン465の底部に取り付けられる。シート420は、シート支持部425と、下部調整可能シートブラケット440と、2つの平行なシートロッド475に取り付けられる上部調整可能シートブラケット445とを介して一次ロッド415の対に結合される。非限定的な本実施形態のシート支持部425は、s字形であり、一方の終端に下部調整可能シートブラケット440を、及び他方の終端に上部調整可能シートブラケット445を有する。
【0018】
前方支持部430は、カップ480の前面から出る前方支持部ホーン485に取り付けられている、運動競技用カップに類似するカップ480を含む。カップ480は、通気のための複数の穴490と、保護された縁495とを含む。調整可能前方支持部ブラケット450は、前方支持部430を一次ロッド415の対に取り付ける。自転車シート400の対又は一次ロッド415は、それにより、シート420と前方支持部430との間の連結アームの役割を果たす。
【0019】
4つの調整可能ブラケット、すなわち調整可能シートポストブラケット435、下部調整可能シートブラケット440、上部調整可能シートブラケット445及び調整可能前方支持部ブラケット450は、すべて大部分が同一であり、同じ原理で機能する。
図6は、前方支持部430及び調整可能前方支持部ブラケット450の分解斜視図を示し、4つの調整可能ブラケット435、440、445、450のすべてを理解するための例を提供する。調整可能前方支持部ブラケット450は、ボルト500と、右端ブラケット部分505と、中間右ブラケット部分510と、中間左ブラケット部分515と、左端ブラケット部分520とを含む。調整可能前方支持部ブラケット450は、湾曲スロット525と、右湾曲ガイド530と、左湾曲ガイド535とを画定する前方支持部ホーン485に結合するように設計される。使用時、一次ロッド415の対の一方は、右端ブラケット部分505と中間右ブラケット部分510との間に置かれ、一次ロッド415の対の残りの1つは、左端ブラケット部分520と中間左ブラケット部分515との間に置かれる。このようにして、一次ロッド415の対のそれぞれは、調整可能前方支持部ブラケット450によって別々に固定され得る。同時に、右端及び左端ブラケット部分510、520は、前方支持部ホーン485の湾曲スロット525の両側で整列し、それらは、同時に前方支持部ホーン485上の右湾曲ガイド530に対して中間右ブラケット部分510を押し付け、前方支持部ホーン485上の左湾曲ガイド535に対して中間左ブラケット部分515を押し付ける。次に、ボルト500は、右端ブラケット部分505及び湾曲スロット525を通過して左端ブラケット部分520に螺合し、このとき、十分に締め付けると、すべてのこれらの要素を圧縮保持する。
【0020】
ボルト500が多少ゆるんでいると、前方支持部430を一次ロッド415の対上で上下に摺動させることができ、前方支持部ホーン485上の左右の湾曲ガイド530、535に沿って移動させることもできる。それにより、調整可能前方支持部ブラケット450は、上下方向並びに前方及び後方ピッチ方向を含む数度の調整性を前方支持部430に提供する。逆に、ボルト500を例えば六角キーで締め付けると、選択された構成が所定の位置に確実に固定される。残りの3つの調整可能ブラケット435、440、445が自転車サドル400の他の要素に同程度の調整性を提供する場合、自転車サドル400をほとんどの乗り手の解剖学的構造及び好みに対応するように調整することができることは、容易に認識され得る。
【0021】
図7及び8は、それぞれ乗り手540が自転車405をこいでいる間に使用中の例示的な自転車サドル400の前方斜視図及び側方斜視図を示す。
図8において、自転車サドル400及び自転車サドル400と乗り手540との関係をより簡単に理解することを可能にするために、乗り手の脚は、想像線で示されている。使用中、乗り手540は、前方支持部430に前方に押されながらシート420上に座っている。次に、前方支持部430は、乗り手の性器545の横及び上において乗り手540に対して位置付けられる。本明細書で使用される場合、単語「性器」は、乗り手の外生殖器を意味し、男性及び女性両方の乗り手に関するものである。
【0022】
図4及び5を参照すると、本実施形態のシートパン465は、乗り手540がシート上に座っている間の乗り手の座骨(すなわち座骨結節)の位置に対応する凹部550の対を含むことを示している。この構成は、座骨555の対がシートパン465の凹部550の対と位置合わせされた乗り手の骨盤帯の図表現を示す
図9によって補強される。この位置合わせの結果として、例示的な自転車サドル400を使用している間、乗り手の骨盤部位の圧力が減少する。したがって、乗り手540は、これらの特徴により、より長く及びより快適に乗ることができると予想される。
【0023】
それにより、例示的な自転車サドル400、より一般的には本発明の態様による自転車サドルは、ノーズレスサドルを乗り手に提供し、同時にシートから前方に滑ることを防ぐ前方支持部も乗り手に提供する。したがって、乗り手は、シートと完全に関わり合っている感覚を有し、自転車を安定させ、操作し、及び操縦する乗り手の能力は、「ノーズ」がないにもかかわらず妨げられない。重要なことに、ノーズがないことで乗り手の会陰の神経及び動脈への圧力及びそれらの圧縮が実質的に排除される。前方支持部は、理想的には、乗り手が自転車をこぐとき、乗り手の脚の動きに干渉しないようにも位置付けられる。このようにして、本発明の実施形態は、先行技術の設計と比較して、乗り手がより大きいペダリング力を生み出し、より有効なペダリング効果を実現することも可能にする。自転車サドルの詳細な調整性は、男性及び女性両方の乗り手のほとんどの乗り手の解剖学的構造及び好みに対応する。
【0024】
本明細書で提供される説明を理解すると、例示的な自転車サドル400の製造は、関連する製造技術における当業者の技術の範囲内である。シートパン465は、例えば、従来の材料形成技術を使用して、鋼、アルミニウム又は強化樹脂炭素繊維から形成され得る。同時に、構成要素のいくつかは、既製の部品を改良することによって形成され得る。例えば、シート支持部425及び前方支持部ホーン485は、SPECIALIZED(登録商標)Bicycle Components, Inc.(Morgan Hill, CA, USA、ここで、SPECIALIZEDは、登録された米国の商標である)から入手可能な従来のシートポストを改良(例えば、切断、結合)することによって形成され得る。関連する調整可能ブラケット435、440、445、450も同じ企業から購入され得る。カップ480は、従来の運動競技用カップとして購入され得、次いで前方支持部ホーン485に取り付けるために改良される。例えば、1つ又は複数の実施形態において、前方支持部ホーン485は、カップ480と前方支持部ホーン485との間の取付けに関わるために、カップ480の内部に置かれて、カップ480を通過する4本のボルト565を受けるプレート560で終了するように改良され得る(
図6を参照されたい)。
【0025】
本発明の上記の実施形態は、例示のみ意図したものであることが再び強調されなければならない。他の実施形態は、記載された機能を実装するために、異なる種類及び配置の要素を使用することができる。添付の特許請求の範囲内のこれらの多数の代替的な実施形態は、当業者にとって明らかであろう。添付の請求項の趣旨及び範囲は、本明細書に含まれる好ましい実施形態の説明のみに限定されるべきではない。
【0026】
図10及び11は、例えば、本発明の第2の例示的な実施形態による代替的な自転車サドル1000の態様を示す。
図10は、代替的な自転車サドル1000の側面斜視図を示し、
図11は、
図10に示された代替的な自転車サドル1000の領域の一部破断図を示す。
【0027】
代替的な自転車サドル1000は、ポスト1005と、シート1010と、シート支持部1015と、前方支持部1020と、4つの調整可能ブラケット1025とを含み、そのすべては、
図4~6に関して示されているものと類似している。しかしながら、代替的な自転車サドル1000では、一次ロッドの対は、その間にヒンジ機構を有する2つの部分に分けられる。より詳細には、一次ロッド1030の対は、ポスト1005に取り付けられ、二次ロッド1035の対は、ヒンジ1040を介して一次ロッド1030の対にヒンジ式に取り付けられる。これにより、自転車に乗るとき、前方支持部1020を脇に回転させることができ、次いで乗り手がシート1010上に位置すると、直立位置の所定の場所に戻して固定することができる。自転車から降りるとき、乗り手は、再び前方支持部1020を脇に回転させることができる。
【0028】
上記の機能を可能にする前方支持部1020のロック及びアンロックは、自転車のハンドルバーに延在するケーブル1045によって作動するロック機構を介して行われる。二次ロッド1035の対は、スライドラッチ1055と係合するu字形の受け部1050に取り付けられる。ケーブル1045が作動すると、スライドラッチ1055は、u字形の受け部から引き抜かれ、前方支持部1020をロック解除し、前方支持部1020を脇に回転させることを可能にする。その後、乗り手が前方支持部1020を直立位置にロックすることを望むと、乗り手は、前方支持部1020を直立位置に置き、スライドラッチ1055をu字形の受け部1050に挿入するために、ケーブル1045を再び作動させて、前方支持部1020を所定の位置にロックする。他の実施形態において、スライドラッチ1055のそのロック位置への作動を支援するために、スライドラッチ1055を前方向に付勢するロック機構にばねを追加し得る。カバー1060は、スライドラッチ1055及びその関連する機構を覆う。
【0029】
一次ロッド415の対は、自転車サドル400のシート420と前方支持部430との間の連結アームを形成するが、本発明の態様による代替の実施形態は、異なる設計を利用し得る。
図12は、本発明の第3の例示的な実施形態による代替的な自転車サドル1200の前部の分解斜視図を示す。自転車サドル400と同様に、代替的な自転車サドル1200は、連結アームを介して代替的な自転車サドル1200の残りの部分に取り付けられるカップ1210を有する前方支持部1205を含む。しかしながら、代替的な自転車サドル1200では、連結アームは、自転車サドル400の方法のロッドの対ではなく、前方支持部1205の前方の舌部1215を画定する。
【0030】
代替的な自転車サドル1200の舌部1215への前方支持部1205の取付けは、いくつかの連結要素、すなわち高さ調整ボルト1220、高さ調整プレート1225、前部ピッチ調整要素1230、後部ピッチ調整要素1235、ピッチ調整ボルト1240、後部プレート1245及び4つの固定ボルト1250を介して行われる。高さ調整プレートの一部は、舌部1215のスロット1255に係合して前部ピッチ調整要素1230に当接し、高さ調整プレート1225及び前部ピッチ調整要素1230の一部は、舌部1215の両側を占める。高さ調整ボルト1220は、高さ調整プレート1225のねじ付き開口を通過して、前部ピッチ調整要素1230のねじ付き開口に入り、それによりこれらの2つの特徴物を保持する役割を果たす。同時に、前部ピッチ調整要素1230上の別個の横方向円弧状プレート1260は、後部ピッチ調整要素1235上の中央円弧状プレート1265の両側にかぶさる。ピッチ調整ボルト1240は、横方向円弧状プレート1260のそれぞれのねじ付き開口及び中央円弧状プレート1265のねじなし開口をそれぞれ通過する。最後に、後部ピッチ調整要素1235は、後部プレート1245及び4つの固定ボルト1250によってカップ1210に取り付けられる。
【0031】
使用中、高さ調整ボルト1220は、所望の垂直位置に到達するまで、前方支持部1205が舌部1215のスロット1255内で上下に摺動することを可能にするためにゆるめられ得、その後、高さ調整ボルト1220は、その位置で前方支持部1205をロックするために締め付けられ得る。同様に、ピッチ調整ボルト1240も、前方支持部1205のピッチを調整可能とするためにゆるめられ得、その点においてその位置でロックするために締め付けることもできる。それにより、代替的な自転車サドル1200の前方支持部1205は、高さ及びピッチの両方の調整能力を有する。
【0032】
図13は、本発明の第4の例示的な実施形態による代替的な自転車サドル1300の分解斜視図を示す。ここで再び、代替的な自転車サドル1300は、
図12と同様に、前方支持部1305の前方に位置付けられた舌部1315を介して代替的な自転車サドル1300の残りの部分に取り付けられるカップ1310を有する前方支持部1305を含む。しかしながら、舌部1315に前方支持部1305を連結するために利用される連結要素は、
図12に示されたものと異なる。
【0033】
代替的な自転車サドル1300の連結要素は、調整ボルト1320、高さ調整プレート1325、前部ピッチ調整要素1330、後部ピッチ調整要素1335、バレルナット1340、2つのバレルナット保持ボルト1345、後部プレート1350及び4つの固定ボルト1355を含む。高さ調整プレートの一部は、舌部1315のスロット1360に係合して前部ピッチ調整要素1330に当接する。同時に、前部ピッチ調整要素1330上の2つの歯付き円弧状プレート1365は、後部ピッチ調整要素1335上の2つの相補的な歯付き円弧状プレート1370に係合する。バレルナット1340は、相補的な歯付き円弧状プレート1370間に配設され、後部ピッチ調整要素1335の湾曲スロットとともにバレルナット保持ボルト1345で固定され、バレルナット1340は、円弧状経路を描くことができる。最後に、後部ピッチ調整要素1335は、後部プレート1350及び4つの固定ボルト1355によってカップ1310に取り付けられる。
【0034】
使用中、調整ボルト1320は、高さ調整プレート1325及び前部ピッチ調整要素1330を通過し、次いでバレルナット1340に螺合可能に係合する。ゆるめられると、それにより、前方支持部1305は、スロット1360内で上下に摺動され得、前部ピッチ調整要素1330と後部ピッチ調整要素1335との関係は、前方支持部1305のピッチに影響を及ぼすように変化し得る。最終的に所望の位置決めが実現されると、調整ボルト1320は、所望の位置を保持するために締め付けられ得る。前の代替的な自転車サドル1200は、2つのボルト(すなわち高さ調整ボルト1220及びピッチ調整ボルト1240)に基づくが、代替的な自転車サドル1300は、所望の位置でロックするために単一のボルト(すなわち調整ボルト1320)に基づくことを除いて、代替的な自転車サドル1300の前方支持部1305も同様に高さ及びピッチの両方の調整能力を有する。
【0035】
本明細書に開示されるすべての特徴は、特に記載されない限り、同一の、均等な又は同様の目的を提供する代替的な特徴に置き換えられ得る。すなわち、特に記載されない限り、開示されているそれぞれの特徴は、一般的な一連の均等な又は同様の特徴の単なる一例である。
【0036】
指定された機能を実行する「~するための手段」又は指定された機能を実行する「~するためのステップ」を明示的に述べない請求項中の任意の要素は、AIA 35 U.S.C.§112(f)で指定されるような「~するための手段」又は「~するためのステップ」の条項として解釈されるべきではない。特に、本明細書の特許請求の範囲における「~のステップ」の使用は、AIA 35 U.S.C.§112(f)の規定を行使するように意図されていない。