(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】シート剥離方法およびシート剥離装置、並びに、分割方法および分割装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231031BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231031BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 M
H01L21/304 601Z
(21)【出願番号】P 2022517597
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021014978
(87)【国際公開番号】W WO2021220768
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020080202
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 直史
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】奥田 卓也
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222308(JP,A)
【文献】特開2007-109869(JP,A)
【文献】特開2019-175927(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044588(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/017599(WO,A1)
【文献】特開2020-057744(JP,A)
【文献】特開2010-232428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼付された接着シートを当該被着体から剥離するシート剥離方法において、
前記接着シートを保持するシート保持工程と、
前記被着体を保持する被着体保持工程と、
前記シート保持工程で保持した前記接着シートに張力を付与し、前記被着体から前記接着シートを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程で前記被着体から前記接着シートを剥離する際に、当該接着シートに加わるシート張力を検出する張力検出工程とを実施し、
前記剥離工程では、前記張力検出工程での検出結果を基にして、前記シート張力が所望の張力となるように維持しながら、
前記被着体と前記接着シートとが接着している接着面の減少に応じて前記シート張力を減少させ、前記被着体から前記接着シートを剥離することを特徴とするシート剥離方法。
【請求項2】
請求項
1に記載のシート剥離方法において、
前記剥離工程では、前記接着面の外縁の長さに対する前記シート張力の大きさの比または、前記接着面の面積に対する前記シート張力の大きさの比を一定に維持しながら、前記被着体から前記接着シートを剥離することを特徴とするシート剥離方法。
【請求項3】
被着体に貼付された接着シートを当該被着体から剥離するシート剥離方法において、
前記接着シートを保持するシート保持工程と、
前記被着体を保持する被着体保持工程と、
前記シート保持工程で保持した前記接着シートに張力を付与し、前記被着体から前記接着シートを剥離する剥離工程と、
前記剥離工程で前記被着体から前記接着シートを剥離する際に、当該接着シートに加わるシート張力を検出する張力検出工程とを実施し、
前記剥離工程では、
前記張力検出工程での検出結果を基にして、前記シート張力が所望の張力となるように維持しながら、前記被着体から前記接着シートを剥離する工程と、前記被着体から剥離する前記接着シートの剥離状態を
当該接着シートに当接する当接部材の弾性変形によって制御する剥離状態制御工程
とを実施することを特徴とするシート剥離方法。
【請求項4】
被着体に貼付された接着シートを当該被着体から剥離するシート剥離装置において、
前記接着シートを保持するシート保持手段と、
前記被着体を保持する被着体保持手段と、
前記シート保持手段で保持した前記接着シートに張力を付与し、前記被着体から前記接着シートを剥離する剥離手段と、
前記剥離手段で前記被着体から前記接着シートを剥離する際に、当該接着シートに加わるシート張力を検出する張力検出手段とを備え、
前記剥離手段は、前記張力検出手段の検出結果を基にして、前記シート張力が所望の張力となるように維持しながら、
前記被着体と前記接着シートとが接着している接着面の減少に応じて前記シート張力を減少させ、前記被着体から前記接着シートを剥離することを特徴とするシート剥離装置。
【請求項5】
被着体に貼付された接着シートを当該被着体から剥離するシート剥離装置において、
前記接着シートを保持するシート保持手段と、
前記被着体を保持する被着体保持手段と、
前記シート保持手段で保持した前記接着シートに張力を付与し、前記被着体から前記接着シートを剥離する剥離手段と、
前記剥離手段で前記被着体から前記接着シートを剥離する際に、当該接着シートに加わるシート張力を検出する張力検出手段とを備え、
前記剥離手段は、前記張力検出手段の検出結果を基にして、前記シート張力が所望の張力となるように維持しながら、前記被着体から前記接着シートを剥離するとともに、前記被着体から剥離する前記接着シートの剥離状態を当該接着シートに当接する当接部材の弾性変形によって制御することを特徴とするシート剥離装置。
【請求項6】
第1改質部が形成され、接着シートに貼付された被着体を当該第1改質部を境にして、前記接着シート側に位置する第1薄化被着体と、前記第1改質部越しに前記第1薄化被着体の反対側に位置する第2薄化被着体とに分割する分割方法において、
前記接着シートを保持するシート保持工程と、
前記第2薄化被着体となる側から前記被着体を保持する被着体保持工程と、
前記シート保持工程で保持した前記接着シートに張力を付与し、前記被着体を前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割する分割工程と、
前記分割工程で前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割する際に、前記接着シートに加わるシート張力を検出する張力検出工程とを実施し、
前記分割工程では、前記張力検出工程での検出結果を基にして、前記シート張力が所望の張力となるように維持しながら、前記被着体を前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割することを特徴とする分割方法。
【請求項7】
請求項6に記載の分割方法において、
前記被着体は、前記第1改質部が設けられた第1分割面に交差する第2分割面と平行な方向に複数の第2改質部が設けられ、
前記分割工程では、前記被着体を前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割する際に、前記第1薄化被着体を前記第2分割面に沿って分割し、当該第1薄化被着体を複数の片状体に分割することを特徴とする分割方法。
【請求項8】
第1改質部が形成され、接着シートに貼付された被着体を当該第1改質部を境にして、前記接着シート側に位置する第1薄化被着体と、前記第1改質部越しに前記第1薄化被着体の反対側に位置する第2薄化被着体とに分割する分割装置において、
前記接着シートを保持するシート保持手段と、
前記第2薄化被着体となる側から前記被着体を保持する被着体保持手段と、
前記シート保持手段で保持した前記接着シートに張力を付与し、前記被着体を前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割する分割手段と、
前記分割手段で前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割する際に、前記接着シートに加わるシート張力を検出する張力検出手段とを備え、
前記分割手段は、前記張力検出手段の検出結果を基にして、前記シート張力が所望の張力となるように維持しながら、前記被着体を前記第1薄化被着体と前記第2薄化被着体とに分割することを特徴とする分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート剥離方法およびシート剥離装置、並びに、分割方法および分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被着体に貼付された接着シートを当該被着体から剥離するシート剥離方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシート剥離方法では、半導体ウエハW(被着体)から接着シートS1(接着シート)を剥離する際に、接着シートに付与する張力が適切でない場合、接着シートに予期せぬ過剰な張力が付与され、その影響で被着体が破損するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、被着体に貼付された接着シートを当該被着体から剥離する際に、被着体が破損することを防止することができるシート剥離方法およびシート剥離装置を提供することである。
また、本発明の別の目的は、接着シートに貼付された被着体を複数の薄化被着体に分割する際に、当該薄化被着体が破損することを防止することができる分割方法および分割装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、請求項に記載した構成を採用した。
【0007】
本発明の一態様に係るシート剥離方法およびシート剥離装置によれば、接着シートに加わるシート張力が所望の張力となるように維持しながら、被着体から接着シートを剥離するので、接着シートに予期せぬ過剰な張力が付与されることがなくなり、被着体に貼付された接着シートを剥離する際に、当該被着体が破損することを防止することができる。
また、剥離工程において、被着体と接着シートとの接着面の減少に応じてシート張力を減少させれば、被着体の破損を防止し易くなる。
また、剥離工程において、接着面の外縁の長さや、接着面の面積に対するシート張力の大きさの比を一定に維持しながら被着体から接着シートを剥離すれば、接着シートと被着体との接着状態に応じたシート張力を制御でき、被着体の破損を防止し易くなる。
また、剥離工程において剥離状態制御工程を実施すれば、接着シートの急激な剥離を防止でき、接着シートの変形や被着体への糊残り抑制につながる。
【0008】
本発明の一態様に係る分割方法および分割装置によれば、被着体が貼付された接着シートに加わるシート張力が所望の張力となるように維持しながら、当該被着体を複数の薄化被着体に分割するので、接着シートに予期せぬ過剰な張力が付与されることがなくなり、接着シートに貼付された被着体を複数の薄化被着体に分割する際に、第2薄化被着体が破損することを防止することができる。
また、被着体を第1薄化被着体と第2薄化被着体とに分割する際に、第1薄化被着体を複数の片状体に分割すれば、ダイシング工程や切断工程等の細分化工程を実施しなくとも、第1薄化被着体を複数の片状体に分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るシート剥離装置の説明図。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る分割装置の動作説明図。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る分割装置の動作説明図。
【
図3C】本発明の一実施形態に係る分割装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な
図1Aまたは
図3Aの手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸の矢印方向で「後」がその逆方向とする。
【0011】
〔第1実施形態〕
シート剥離装置EA1は、
図1Aに示すように、被着体WK1に貼付された接着シートとしての第1接着シートAS1を当該被着体WK1から剥離する装置であって、第1接着シートAS1を保持するシート保持手段10と、被着体WK1を保持する被着体保持手段20と、シート保持手段10で保持した第1接着シートAS1に張力を付与し、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離する剥離手段30Aと、剥離手段30Aで被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離する際に、当該第1接着シートAS1に加わるシート張力を検出する張力検出手段40とを備えている。
なお、第1接着シートAS1は、一方の面に積層された接着剤層AD1を介して被着体WK1とフレーム部材としての第1リングフレームRF1とに接着されている。
【0012】
シート保持手段10は、ベースプレート11に支持された駆動機器としての直動モータ12と、直動モータ12の出力軸13に支持された保持部材14とを備え、第1リングフレームRF1を左右から支持できるように、2体設けられている。
【0013】
被着体保持手段20は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によって吸着保持が可能な支持面21Aを有するテーブル21を備えている。なお、本実施形態の被着体保持手段20は、フレーム部材としての第2リングフレームRF2が接着剤層AD2に貼付された第2接着シートAS2を介して、被着体WK1を保持する構成となっている。
【0014】
剥離手段30Aは、シート保持手段10を昇降させる複数の移動手段31と、被着体WK1から剥離する第1接着シートAS1の剥離状態を制御する剥離状態制御手段32と、シート保持手段10、移動手段31および剥離状態制御手段32を回転させる回転手段33とを備え、張力検出手段40の検出結果を基にして、シート張力が所望の張力となるように維持しながら、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離する構成となっている。
移動手段31は、出力軸31Bでシート保持手段10を支持する駆動機器としての直動モータ31Aを備えている。
剥離状態制御手段32は、駆動機器としての直動モータ32Aと、直動モータ32Aの出力軸32Bに支持された押圧手段としての当接手段32Cとを備えている。当接手段32Cは、平面形状が被着体WK1の平面形状よりやや大きくかつ弾性を有する弾性部材32Eが支持部材32Dに支持された構成となっている。
回転手段33は、駆動機器としての回動モータ33Aと、回動モータ33Aの出力軸33Bに支持され、直動モータ31A、32Aを支持する支持板33Cとを備えている。
【0015】
張力検出手段40は、第1リングフレームRF1と被着体WK1との間のシート張力を検出可能な接触型や非接触型等のテンションセンサ41と、シート剥離装置EA1全体の動作制御が可能なシーケンサやパーソナルコンピュータ等の制御手段42と、
図1B、
図1Cに示す第1接着シートAS1が被着体WK1に接着している左右方向の長さである貼付長さDT1を測長可能なカメラや投影機等の撮像手段43とを備えている。
【0016】
以上のシート剥離装置EA1の動作を説明する。
先ず、
図1A中実線で示す初期位置に各部材が配置されたシート剥離装置EA1に対し、当該シート剥離装置EA1の使用者(以下、単に「使用者」という)が、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の操作手段を介して自動運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、第2リングフレームRF2に貼付された第2接着シートAS2をテーブル21上に載置すると、被着体保持手段20が、図示しない減圧手段を駆動し、支持面21Aでの第2接着シートAS2の吸着保持を開始する。その後、使用者または図示しない搬送手段が、第1接着シートAS1を介して被着体WK1を支持する第1リングフレームRF1を保持部材14上に載置すると、シート保持手段10が直動モータ12を駆動し、保持部材14を上昇させ、保持部材14とベースプレート11とで第1リングフレームRF1を挟み込み、第1接着シートAS1を保持する(シート保持工程)。
【0017】
次に、剥離手段30Aが直動モータ31A、32Aを駆動し、
図2Aに示すように、ベースプレート11を下降させて保持部材14を第2リングフレームRF2に接近させるとともに、当接手段32Cを下降させて被着体WK1を第2接着シートAS2に押圧して貼付する(被着体保持工程)。そして、剥離手段30Aが直動モータ31Aを駆動し、
図2B、
図2Cに示すように、シート保持手段10を上昇させ、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離する(剥離工程)。なお、本実施形態の剥離工程では、被着体WK1と第1接着シートAS1とが接着している接着面の減少に応じてシート張力を減少させ、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離するようになっている。すなわち、この剥離工程では、張力検出手段40がテンションセンサ41、制御手段42および撮像手段43を駆動し、テンションセンサ41でシート張力を検出するとともに、撮像手段43で貼付長さDT1を測長し、それら各データを制御手段42に送信する(張力検出工程)。各データが送信された制御手段42は、貼付長さDT1から接着面の外縁AEの長さや、接着面の面積を算出し、接着面の外縁AEの長さに対するシート張力の大きさの比(以下、「張力/長さ比」という)または、接着面の面積に対するシート張力の大きさの比(以下、「張力/面積比」という)を一定に維持しながら、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離するように、直動モータ31Aを駆動する。
【0018】
また、この剥離工程では、第1接着シートAS1の被着体WK1からの剥離が進行すると、
図2B、
図2Cに示すように、弾性部材32Eが第1接着シートAS1に押されて弾性変形し、当該第1接着シートAS1が被着体WK1から急激に剥離されることが防止され、第1接着シートAS1の変形や被着体WK1への糊残りも抑制される(剥離状態制御工程)。この際、剥離手段30Aが直動モータ32Aを駆動し、張力/長さ比や張力/面積比が一定になるように当接手段32Cを昇降させてもよい。さらに、剥離手段30Aが回動モータ33Aを駆動し、Z軸を回転中心として支持板33Cを所定角度だけ往復回転させてもよい。これにより、第1接着シートAS1の面方向に所定の張力が付与され、第1接着シートAS1に対して上方向への剥離力だけでなく面方向の張力が加わり、被着体WK1からの第1接着シートAS1の剥離を促進させることができる。
【0019】
次いで、シート保持手段10の上昇が続行され、第1接着シートAS1全体が被着体WK1から剥離されると、シート保持手段10および剥離手段30Aが直動モータ12、31A、32Aを駆動し、保持部材14、ベースプレート11および当接手段32Cを初期位置に復帰させる。その後、被着体保持手段20が図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面21Aでの第2接着シートAS2の吸着保持を解除する。次に、使用者または図示しない搬送手段が、第2接着シートAS2を介して第2リングフレームRF2に支持された被着体WK1を次工程に搬送した後、使用者または搬送手段が、被着体WK1が剥離された第1リングフレームRF1付きの第1接着シートAS1を保持部材14上から撤去し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0020】
以上のような本実施形態によれば、第1接着シートAS1に加わるシート張力が所望の張力となるように維持しながら、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離するので、第1接着シートAS1に予期せぬ過剰な張力が付与されることがなくなり、被着体WK1に貼付された第1接着シートAS1を剥離する際に、当該被着体WK1が破損することを防止することができる。
【0021】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係る分割装置EA2は、第1実施形態に係るシート剥離装置EA1と同等のものを使用できるため、第1実施形態との相違に係る部分を主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
すなわち、分割装置EA2は、
図3Aに示すように、第1改質部DP1が形成され、接着シートとしての第1接着シートAS1に貼付された被着体WK2を当該第1改質部DP1を境にして、第1接着シートAS1側に位置する第1薄化被着体WT1と、第1改質部DP1越しに第1薄化被着体WT1の反対側に位置する第2薄化被着体WT2とに分割する装置であって、第1接着シートAS1を保持するシート保持手段10と、第2薄化被着体WT2となる側から被着体WK2を保持する被着体保持手段20と、シート保持手段10で保持した第1接着シートAS1に張力を付与し、被着体WK2を第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割する分割手段30Bと、分割手段30Bで第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割する際に、第1接着シートAS1に加わる張力を検出する張力検出手段40とを備えている。
【0022】
被着体WK2には、第1改質部DP1が設けられた第1分割面(
図3Aの状態において第1改質部DP1が位置するXY平面と平行な面)に交差する第2分割面(
図3Aの状態におけるYZ平面およびXZ平面)と平行な方向に複数の第2改質部DP2が設けられている。第1、第2改質部DP1、DP2は、被着体WK2の性質や強度を変化させて脆弱化または軟化した部位である。第1改質部DP1は、被着体WK2を第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2に分割することができ、第2改質部DP2は、第1薄化被着体WT1を複数の片状体CPに分割することができる層である。
【0023】
分割手段30Bは、第1実施形態の剥離手段30Aと同等の構成であり、張力検出手段40の検出結果を基にして、第1接着シートAS1に加わるシート張力が所望の張力となるように維持しながら、被着体WK2を第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割するようになっている。本実施形態では、分割手段30Bは、被着体WK2を第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割する際に、第1薄化被着体WT1を第2改質部DP2に沿って分割し、当該第1薄化被着体WT1を複数の片状体CPに分割する構成となっている。
【0024】
張力検出手段40は、第1実施形態と同等の構成であるが、第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割される前の第1改質部DP1の左右方向の長さである改質部長さDT2を撮像手段43が測長する点で異なっている。
【0025】
以上の分割装置EA2の動作は、第1実施形態のシート剥離装置EA1の剥離工程が分割工程となる点と、張力検出工程の内容が異なっている。
すなわち、分割手段30Bが直動モータ31A、32Aを駆動し、
図3Aに示すように、被着体WK2を第2接着シートAS2に押圧して貼付した後、
図3B、
図3Cに示すように、シート保持手段10を上昇させる。すると、被着体WK2が第1改質部DP1を境にして第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割されるとともに、第1薄化被着体WT1が第2改質部DP2を境にして複数の片状体CPに分割される(分割工程)。この分割工程では、第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割される前の第1改質部DP1である第1改質面の減少に応じてシート張力を減少させ、被着体WK2を分割する。すなわち、張力検出手段40がテンションセンサ41、制御手段42およびを撮像手段43駆動し、テンションセンサ41でシート張力を検出するとともに、撮像手段43で改質部長さDT2を測長し、それら各データを制御手段42に送信する(張力検出工程)。なお、本実施形態では、制御手段42は、第1実施形態で例示した動作における「貼付長さDT1」および「接着面」を、「改質部長さDT2」および「第1改質面」に読み替えて直動モータ31Aを駆動するようになっている。
【0026】
以上のような本実施形態によれば、被着体WK2が貼付された第1接着シートAS1に加わるシート張力が所望の張力となるように維持しながら、当該被着体WK2を第1、第2薄化被着体WT1、WT2に分割するので、第1接着シートAS1に予期せぬ過剰な張力が付与されることがなくなり、第1接着シートAS1に貼付された被着体WK2を第1、第2薄化被着体WT1、WT2に分割する際に、第2薄化被着体WT2が破損することを防止することができる。
また、細分化工程を実施しなくとも、第1薄化被着体WT1を複数の片状体CPに分割することができる。
【0027】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0028】
シート保持手段10は、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤、粘着剤、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で第1接着シートAS1を保持する構成でもよいし、その数が1体でもよいし3体以上でもよいし、移動手段31と同じ数でもよいし異なる数でもよく、例えば、連結部材で連結された複数のシート保持手段10を1体の移動手段31で移動させてもよいし、第1リングフレームRF1を介さずに第1接着シートAS1を直接保持してもよい。
【0029】
被着体保持手段20は、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤、粘着剤、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で第2接着シートAS2を保持する構成でもよいし、第2リングフレームRF2に貼付されていない第2接着シートAS2を保持してもよいし、第2接着シートAS2や第2リングフレームRF2を介さずに被着体WK1、WK2を直接保持してもよいし、図示しない減圧手段を備えることなく、例えば、L字状や鍵状のフック部材で被着体WK1、WK2、第2接着シートAS2または第2リングフレームRF2を引っ掛けて、被着体WK1からの第1接着シートAS1の剥離に抗する構成としたり、第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2との分割に抗する構成としたりしてもよい。
【0030】
剥離手段30Aおよび分割手段30Bは、シート保持手段10を移動させることなくまたは移動させつつ、被着体保持手段20を移動させて、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離したり、被着体WK2を第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割したりしてもよいし、移動手段31の数が1体でもよいし、3体以上でもよいし、シート保持手段10を左右のどちらか一方向に移動させ、かつ、被着体保持手段20を反対方向に移動させてもよく、これら相対移動は、弾性部材32Eを第1接着シートAS1に当接させながら実施してもよいし、弾性部材32Eが第1接着シートAS1および被着体WK1、WK2を押圧した状態を連続的に維持していなくてもよく、当接手段32Cを第1接着シートAS1から離間させて押圧状態を一時的に解除した後に、シート保持手段10を上昇させて押圧状態に戻してもよいし、当接手段32Cおよびシート保持手段10を同時に上昇させて、押圧状態を連続的に維持してもよい。
剥離手段30Aは、接着面の外縁AEの一端側から他端側に向かってシート保持手段10を移動させ、被着体WK1から第1接着シートAS1を剥離してもよい。
分割手段30Bは、第1改質面の外縁AEの一端側から他端側に向かってシート保持手段10を移動させ、被着体WK2を第1薄化被着体WT1と第2薄化被着体WT2とに分割してもよいし、第2改質部DP2が設けられていない被着体WK2を採用し、第1薄化被着体WT1を複数の片状体CPに分割しない構成としてもよい。
剥離状態制御手段32は、第1接着シートAS1上を転動するローラや、伸縮するアンテナのように段階的に変位する部材が採用されてもよいし、例えば、ゴム、スポンジ、樹脂、ばね等の弾性部材32Eが採用されてもよいし、本発明のシート剥離装置EA1や分割装置EA2に備わっていてもよいし、備わっていなくてもよい。
当接手段32Cは、平面形状が円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状の支持部材32Dや弾性部材32Eが採用されてもよいし、支持部材32Dと弾性部材32Eとの間に気体や液体を閉じ込めたものが採用されてもよく、これら気体や液体の圧力を制御して弾性部材32Eの形状や硬さなどを任意に変更できる部材でもよいし、第1接着シートAS1から離れた位置に停止され、当接手段32C内への気体や液体の充填量を調整して、押圧領域を制御してもよいし、被着体WK1、WK2を第2接着シートAS2へ接着させる際や、第1接着シートAS1を被着体WK1から剥離する際に、弾性部材32Eの弾性状態を連続変化(制御)させてもよい。
回転手段33は、シート保持手段10、移動手段31および剥離状態制御手段32を回転させることなくまたは回転させつつ、被着体保持手段20を回転させてもよいし、剥離状態制御手段32を回転させなくてもよいし、本発明のシート剥離装置EA1や分割装置EA2に備わっていてもよいし、備わっていなくてもよい。
【0031】
張力検出手段40は、撮像手段43を備えていなくてもよく、この場合、接着面の面積や接着面の外縁AEの長さに関係なく、第1接着シートAS1に所望の張力を付与すればよい。なお、所望の張力は、シート剥離装置EA1や分割装置EA2に予め設定または記憶されていてもよいし、使用者等によって任意に設定されてもよく、当該所望の張力の値は、特定の数値等によって限定または特定されるものではない。
張力検出手段40は、第1接着シートAS1に加わるシート張力を検出する位置として、例えば、第1リングフレームRF1に貼付されていない位置、シート保持手段10によって保持されることのない位置、被着体WK1、第1薄化被着体WT1または片状体CPに貼付されていない位置であればどこでもよく、1箇所だけでシート張力を検出してもよいし、2箇所以上でシート張力を検出してもよい。シート張力を検出する位置が2箇所以上の場合、シート張力を維持する所望の張力は、検出した複数の張力値のうち、例えば、一番小さい張力値、一番大きい張力値、複数の張力値の平均値または複数の張力値の相対値(例えば対向する2つの位置の張力値の差または比)を基に決定すればよい。
制御手段42は、接着面もしくは第1改質面の面積の算出や、接着面もしくは第1改質面の外縁AEの長さの算出を行わなくてもよく、ディスプレイ等の表示手段に表示された張力検出結果やプリンター等の印字手段で印字出力された張力検出結果を基にして、作業者が剥離手段30Aや分割手段30Bの駆動機器の駆動力が所定の値となるように任意に設定したり決定したりしてもよい。
【0032】
シート剥離装置EA1または分割装置EA2は、被着体WK1、WK2または第1、第2薄化被着体WT1、WT2を研削する研削手段を備えていてもよいし、ダイシングテープ、エキスパンドテープ、バックグラインドテープ等の他の接着シートを介して被着体WK1、WK2または第1、第2薄化被着体WT1、WT2とフレーム部材とを一体化する一体化手段を備えていてもよい。
シート剥離装置EA1は、第1、第2薄化被着体WT1、WT2から第1、第2接着シートAS1、AS2を剥離してもよい。
第1接着シートAS1は、第1リングフレームRF1に貼付されていなくてもよい。
フレーム部材は、環状のものや、環状でない(外周が繋がっていない)もの、円形、楕円形、三角形以上の多角形、その他の形状であってもよい。
【0033】
第1接着シートAS1の接着力が第2接着シートAS2の接着力よりも小さければ、被着体WK1から第1接着シートAS1をより効率よく剥離できるが、必ずしもそのような接着力を備えた第1、第2接着シートAS1、AS2でなくてもよい。
第1、第2接着シートAS1、AS2は、紫外線やX線等のエネルギー線を照射することによって接着力が低下するものでもよいし、ダイシングテープ、エキスパンドテープまたはバックグラインドテープ等の機能を兼ね備えていてもよい。
第1、第2改質部DP1、DP2は、例えば、国際公開第2019/044588号に記載されている形成方法によって形成されてもよいし、レーザ光の他、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等の付与によって、被着体WK2の特性、特質、性質、材質、組成、構成、寸法等を変更することで、当該被着体WK2を脆弱化、粉砕化、液化または空洞化して形成されてもよい。
【0034】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、シート保持工程は、接着シートを保持する工程であればどのような工程でもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0035】
第1、第2接着シートAS1、AS2、被着体WK1、WK2、第1、第2薄化被着体WT1、WT2および片状体CPの材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、第1、第2接着シートAS1、AS2、被着体WK1、WK2、第1、第2薄化被着体WT1、WT2および片状体CPの形状は、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、第1、第2接着シートAS1、AS2は、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよい。また、このような第1、第2接着シートAS1、AS2は、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材と接着剤層との間に中間層を有するもの、基材の上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材を接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層または複層の芯材層を有するものや、中間層のない単層または複層のものであってよい。また、被着体WK1、WK2、第1、第2薄化被着体WT1、WT2および片状体CPとしては、板状部材に限定されず、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、第1、第2接着シートAS1、AS2は、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護テープ、加工用テープ、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0036】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的または間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、ローラの代わりに回転するまたは回転しないシャフトやブレード等の他の部材を採用してもよいし、押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等の部材を採用したり、大気やガス等の気体の吹き付けにより押圧する構成を採用したりしてもよいし、押圧するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材(被保持部材)を支持(保持)するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
EA1…シート剥離装置
EA2…分割装置
10…シート保持手段
20…被着体保持手段
30A…剥離手段
30B…分割手段
40…張力検出手段
AS1…第1接着シート(接着シート)
AE…外縁
CP…片状体
DP1…第1改質部
DP2…第2改質部
WK1…被着体
WK2…被着体
WT1…第1薄化被着体
WT2…第2薄化被着体