IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユティリティ・グローバル・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-先進的な加熱方法およびシステム 図1
  • 特許-先進的な加熱方法およびシステム 図2
  • 特許-先進的な加熱方法およびシステム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】先進的な加熱方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20231031BHJP
   H01M 8/124 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/126 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/1246 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/1253 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/021 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20231031BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231031BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H01M4/88 T
H01M8/124
H01M8/126
H01M8/1246
H01M8/1253
H01M8/0202
H01M8/0206
H01M8/021
H01M8/0213
H01M8/0215
H01M8/12 101
H05B3/10 B
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022523853
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020056985
(87)【国際公開番号】W WO2021081281
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】62/925,210
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/927,627
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/941,358
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522162325
【氏名又は名称】ユティリティ・グローバル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Utility Global, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ファランドス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】マットソン,クリス
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-034272(JP,A)
【文献】特開2006-222047(JP,A)
【文献】国際公開第2003/076151(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208588(WO,A1)
【文献】特表2001-514441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
F26B 3/00
F26B 23/00
H01M 4/88
H01M 4/86
H01M 8/02
H01M 8/12
C25B 9/00
C25B 11/00
C25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する材料を加熱する方法であって、
第1の波長スペクトルを放射する電磁放射線源に前記表面を曝露すること、および
サンプリング周波数で検出器を用いて前記表面からの第2の波長スペクトルを受信すること、を含み、
前記電磁放射線源はキセノンランプを備え、
前記第1の波長スペクトルと前記第2の波長スペクトルとは、10%以下の重なりを有し、前記重なりは、波長に関する強度の積分値である、方法。
【請求項2】
前記検出器が前記第2の波長スペクトルを受信するときに、前記第1の波長スペクトルと前記第2の波長スペクトルとは10%以下の重なりを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の波長スペクトルと前記第2の波長スペクトルは、5%以下の重なり、3%以下の重なり、1%以下の重なり、または0.5%以下の重なりを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出器はパイロメータである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電磁放射線源に前記表面を曝露することにより、前記材料を少なくとも部分的に焼結させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の波長スペクトルを温度に変換することと、
焼結を、温度、曝露時間、曝露回数、放射線源の出力、またはそれらの組み合わせに関連付けることと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
焼結は、前記材料の微細構造画像、前記材料のスクラッチ接着試験、前記材料のスクラッチ硬度試験、前記材料の電気化学的性能試験、前記材料の膨張率測定、前記材料の導電率測定、またはそれらの組み合わせによって決定される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記材料はセラミック材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キセノンランプに供給される電圧を調整して、前記電磁放射線源の出力、前記第1の波長スペクトル、またはその両方を変化させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の波長スペクトルは、紫外線、近紫外線、近赤外線、赤外線、可視光線、レーザー、電子ビーム、マイクロ波、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の波長スペクトルを温度に変換することと、
温度変化率に応じて前記サンプリング周波数を調整することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプリング周波数は、温度変化率を局所的な最高温度と局所的な最低温度との差で除した正規化温度変化率よりも高い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1回の曝露時間は、10ミリ秒以下、5ミリ秒以下、2ミリ秒以下、1ミリ秒以下、または0.1-1ミリ秒の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
全曝露時間は、10秒以下、5秒以下、または1秒以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプリング周波数は、100Hz以上、500Hz以上、1000Hz以上、10,000Hz以上、または50,000Hz以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記材料は、CuO、CuO、Cu-CGO、NiO、NiO-YSZ、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガドリニアドープセリア(CGO)、サマリアドープセリア(SDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)、セリアイットリア安定化ジルコニア(CYZ)、セリアスカンジア安定化ジルコニア(CSZ)、ジルコニア、ランタンクロマイト、ドープランタンクロマイト、ドープYSZ、着色ジルコニア、またはそれらの組合せから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
加熱は2段階で行われ、第2段階の加熱後の前記材料の気孔率は、第1段階の加熱後の気孔率よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記材料は、粒度分布を有する粒子であって、前記粒度分布が、以下の特性
a)前記粒度分布は、前記粒子の10%がD10以下の直径を有し、前記粒子の90%がD90以下の直径を有し、D90/D10が1.5から100までの範囲にある、D10およびD90を有する、
b)前記粒度分布は、第1のモードにおける平均粒子径が、第2のモードにおける平均粒子径の少なくとも5倍であるような二峰性である、または
c)前記粒度分布は、前記粒子の50%がD50以下の直径を有し、D50が400nm以下である、D50を有する、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
D10は5nmから50nmまで、5nmから100nmまで、もしくは5nmから200nmまでの範囲にあるか、
D90が50nmから500nmまで、もしくは50nmから1000nmまでの範囲にあるか、または、
D90/D10が2から100まで、4から100まで、2から20まで、2から10まで、4から20まで、もしくは4から10までの範囲にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記材料は粒子を含み、前記粒子の第1の10wt%以上がdの平均直径を有し、前記粒子の第2の10wt%以上が少なくとも5×dの平均直径を有し、前記粒子の第3の10wt%以上が少なくとも20×dの平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記dは、1nmから100nmまで、5nmから50nmまで、または10nmから30nmまでの範囲にある、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年10月23日に出願された米国仮特許出願第62/925,210号、2019年10月29日に出願された米国仮特許出願第62/927,627号および2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941,358号の、35U.S.C.119(e)に基づく利益を主張する。これらの各出願の全ての開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、概して、材料の加熱に関する。特に、本発明は、モニタリングを伴う先進的な加熱方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
セラミックは、その硬度、耐熱性、耐腐食性などの特性により、多くの用途を持つ材料の一種である。セラミックが使用される前には、セラミック材料を焼結させるための先進的な加熱プロセスが必要である。焼結とは、材料を液化するまで溶融させることなく、熱または圧力で固体塊(solid mass)を圧縮して形成するプロセスである。セラミックの焼結は、通常、炉の中でセラミックを焼成することによって行われる。セラミックの先進的な応用例としては、バイオセラミックス、ガスタービンエンジン、時計製造、電気化学デバイスなどがある。例えば、固体酸化物燃料電池(SOFC)は、セラミックが有用に用いられる電気化学デバイスの一種である。SOFCの電解質は、このデバイスに必須かつ重要なパーツであり、多くの場合、セラミック材料である。電解質(およびSOFCの様々なパーツ)の製造は、複雑で高価なプロセスであり、セラミック材料を焼結させるための加熱を必要とする。このため、従来は炉による焼結が行われていた。本明細書では、炉を使用せずに、モニタリングを伴う先進的な加熱方法およびシステムを開示する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、表面を有する材料を加熱する方法であって、第1の波長スペクトルを放射する電磁放射線源に前記表面を曝露することと、サンプリング周波数で検出器を用いて前記表面からの第2の波長スペクトルを受信することと、を含み、前記第1の波長スペクトルと前記第2の波長スペクトルとは、10%以下の重なりを有し、前記重なりは、波長に関する強度の積分値である、方法を説明する。一実施形態では、前記第1の波長スペクトルと前記第2の波長スペクトルとは、5%以下の重なり、3%以下の重なり、1%以下の重なり、または0.5%以下の重なりを有する。一実施形態では、前記検出器は、パイロメータである。
【0005】
一実施形態では、前記放射線源に前記表面を曝露することによって、前記材料を少なくとも部分的に焼結させる。一実施形態では、上記方法は、前記第2の波長スペクトルを温度に変換することと、焼結を、温度、曝露時間、曝露回数、放射線源の出力、またはそれらの組み合わせに関連付けることと、を含む。一実施形態では、焼結は、前記材料の微細構造画像、前記材料のスクラッチ接着試験、前記材料のスクラッチ硬度試験、前記材料の電気化学的性能試験、前記材料の膨張率(dilatometry)測定、前記材料の導電率測定、またはそれらの組み合わせによって決定される。
【0006】
一実施形態では、前記放射線源はキセノンランプである。一実施形態では、上記方法は、前記キセノンランプに供給される電圧を調整して、前記放射線源の出力、前記第1の波長スペクトル、またはその両方を変化させることを含む。一実施形態では、前記第1の波長スペクトルは、紫外線、近紫外線、近赤外線、赤外線、可視光線、レーザー、電子ビーム、マイクロ波、またはそれらの組み合わせを含む。
【0007】
一実施形態では、上記方法は、前記第2の波長スペクトルを温度に変換することと、温度変化率に応じて前記サンプリング周波数を調整することと、を含む。一実施形態では、前記サンプリング周波数は、温度変化率を局所的な最高温度と局所的な最低温度との差で除した正規化温度変化率よりも高い。
【0008】
一実施形態では、1回の曝露時間は、10ミリ秒(ms)以下、5ミリ秒以下、2ミリ秒以下、1ミリ秒以下、または0.1―1ミリ秒の範囲内である。一実施形態では、全曝露時間は、10秒以下、5秒以下、または1秒以下である。一実施形態では、サンプリング周波数は、100Hz以上、500Hz以上、1000Hz以上、10,000Hz以上、または50,000Hz以上である。
【0009】
一実施形態では、前記材料は、Cu、CuO、CuO、Cu-CGO、Ni、NiO、NiO-YSZ、銀、フェライト鋼、ステンレス鋼、Crofer、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガドリニアドープセリア(CGO)、サマリアドープセリア(SDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)、セリアイットリア安定化ジルコニア(CYZ)、セリアスカンジア安定化ジルコニア(CSZ)、ジルコニア、ランタンクロマイト、ドープランタンクロマイト、ドープYSZ、着色ジルコニア、カーボン、黒鉛、グラフェン、またはそれらの組合せを含む。一実施形態では、加熱は2段階で行われ、第2段階の加熱後の前記材料の気孔率(porosity)は、第1段階の加熱後の気孔率よりも小さい。
【0010】
一実施形態では、前記材料は、粒度分布を有する粒子を含み、前記粒度分布は、以下の特性のうちの少なくとも1つを有する。前記粒度分布は、前記粒子の10%がD10以下の直径を有し、前記粒子の90%がD90以下の直径を有し、D90/D10が1.5から100までの範囲にある、D10およびD90を有する。前記粒度分布は、第1のモードにおける平均粒子径が、第2のモードにおける平均粒子径の少なくとも5倍であるような二峰性である。または、前記粒度分布は、前記粒子の50%がD50以下の直径を有し、D50が400nm以下である、D50を有する。
【0011】
一実施形態では、D10は5nmから50nmまで、5nmから100nmまで、もしくは5nmから200nmまでの範囲にあるか、D90が50nmから500nmまで、もしくは50nmから1000nmまでの範囲にあるか、または、D90/D10が2から100まで、4から100まで、2から20まで、2から10まで、4から20まで、もしくは4から10までの範囲にある。
【0012】
一実施形態では、前記材料は粒子を含み、前記粒子の第1の10wt%以上がdの平均直径を有し、前記粒子の第2の10wt%以上が少なくとも5×dの平均直径を有し、前記粒子の第3の10wt%以上が少なくとも20×dの平均直径を有する。一実施形態では、前記dは、1nmから100nmまで、5nmから50nmまで、または10nmから30nmまでの範囲にある。
【0013】
さらなる態様および実施形態は、図面、詳細な説明、および特許請求の範囲において本明細書の以下に提供される。特に明記されていない限り、本明細書で説明された特徴は組み合わせ可能であり、そのような組み合わせはすべて本開示の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面は、本明細書に記載されるいくつかの実施形態を説明するために提供される。図面は、単に例示であり、請求項に記載された発明の範囲を限定することを意図しておらず、請求項に記載された発明のすべての潜在的な特徴または実施形態を示すことを意図していない。図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、場合によっては、説明のために、図面のいくつかの要素は、図面の他の要素よりも拡大されていることがある。
【0015】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る、堆積と、電磁放射線(EMR)を用いた加熱とを統合した方法およびシステムを示す図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る、2つの繰り返しユニット(または2つの燃料電池)を有する燃料電池スタックを示す図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る、電極(NiO-YSZ)上に印刷され且つ焼結された電解質(YSZ)を示す走査電子顕微鏡画像(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は、本明細書に開示された発明の様々な態様および実施形態を示すものである。特定の実施形態が、本発明の範囲を規定することを意図していない。むしろ、実施形態は、請求項に記載された発明の範囲内に含まれる様々な組成物、および方法の非限定的な例を提供するものである。本明細書は、当業者の視点から読まれるものである。したがって、当業者にとって周知の情報は、必ずしも含まれていない。
【0017】
定義
以下の用語および句は、本明細書において別段の定めがない限り、以下に示される意味を有する。本開示は、本明細書で明示的に定義されていない他の用語および句を使用することができる。そのような他の用語および句は、当業者にとって本開示の文脈内でそれらが有するであろう意味を有するものとする。用語または句は、単数または複数で定義される場合がある。このような場合、単数形の用語は、反対のことが明示的に示されていない限り、その複数の対応物を含むことができ、その逆も可能であることが理解される。
【0018】
本明細書では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの置換基」に言及されている場合、単一の置換基だけでなく、2つ以上の置換基などを包含する。本明細書では、「例えば(for example」、「例として(for instance)」、「などの(such as)」または「を含む(including)」は、より一般的な対象物をさらに明確にする例を紹介することを意味する。別様に明確に示されない限り、そのような例は、本開示において示された実施形態を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる様式で限定するものではない。これらの句はまた、開示された実施形態に対するどんな種類の優先性も示さない。
【0019】
本明細書では、組成物および材料は、特に指定されない限り、互換的に使用される。各組成物/材料は、複数の要素、相、および成分を有していてもよい。本明細書で使用される加熱は、組成物または材料にエネルギーを積極的に加えることを意味する。
【0020】
本開示において、焼結とは、材料を液化する程度に溶かすことなく、熱もしくは圧力またはそれらの組み合わせによって、材料の固体塊を形成するプロセスをいう。例えば、材料粒子は加熱されることによって集まって固体または多孔質の塊になることであって、材料粒子中の原子が粒子の境界を越えて拡散し、粒子同士が融合して1つの固体片を形成することである。本開示において、Tsinterは、上記現象が起こり始める温度を指す。
【0021】
先進的な加熱
本開示による先進的な加熱方法は、第1の波長スペクトルを放射する電磁放射線(EMR)源に表面を曝露することによって、表面を有する材料を加熱することと、サンプリング周波数で検出器を用いて上記表面からの第2の波長スペクトルを受信することと、を含む。第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルとは、10%以下の重なりを有している。ここで、重なりは、波長に関する強度の積分値である。様々な場合において、第1の波長スペクトルおよび第2の波長スペクトルは、5%以下の重なり、3%以下の重なり、1%以下の重なり、または0.5%以下の重なりを有する。一実施形態では、検出器は、パイロメータである。
【0022】
一実施形態では、放射線源に上記表面を曝露することによって、材料を少なくとも部分的に焼結させる。様々な場合、上記方法は、第2の波長スペクトルを温度に変換することと、焼結を、温度、曝露時間、曝露回数、放射線源の出力、またはそれらの組み合わせに関連付けることと、を含む。いくつかの実施形態では、焼結は、材料の微細構造画像(例えば、走査電子顕微鏡画像)、材料のスクラッチ接着試験、材料のスクラッチ硬度試験、材料の電気化学的性能試験、材料の膨張率測定、材料の導電率測定、またはそれらの組み合わせによって決定される。
【0023】
一実施形態では、放射線源はキセノンランプである。一実施形態では、上記方法は、キセノンランプに供給される電圧を調整して、放射線源の出力、第1の波長スペクトルまたはその両方を変化させることを含む。多様な実施形態では、第1の波長スペクトルは、紫外線、近紫外線、近赤外線、赤外線、可視光線、レーザー、電子ビーム、マイクロ波、またはそれらの組み合わせを含む。
【0024】
一実施形態では、第2の波長スペクトルを温度に変換することと、温度変化率に応じてサンプリング周波数を調整することと、を含む。例えば、サンプリング周波数は、正規化温度変化率よりも高い。正規化温度変化率とは、温度変化率を局所的な最高温度と局所的な最低温度との差で除したものである。
【0025】
一実施形態では、1回の曝露時間は、10ミリ秒以下、5ミリ秒以下、2ミリ秒以下、1ミリ秒以下、または0.1-1ミリ秒の範囲内である。一実施形態では、全曝露時間は、10秒以下、5秒以下、または1秒以下である。一実施形態では、サンプリング周波数は、100Hz以上、500Hz以上、1000Hz以上、10,000Hz以上、または50,000Hz以上である。例えば、サンプリング周波数が100,000Hzのパイロメータが検出器として使用される。
【0026】
一実施形態では、加熱は2段階で行われ、第2段階の加熱後の材料の気孔率は、第1段階の加熱後の気孔率よりも小さい。場合によっては、第1段階の加熱によって、材料中の特定の成分を燃焼させる。場合によっては、第2段階の加熱によって、材料を部分的に焼結させる、実質的に焼結させる、または完全に焼結させる。場合によっては、第2段階の加熱によって、材料は完全に圧縮される(例えば、1%以下または0.1%以下の気孔率を有する)。
【0027】
一実施形態では、EMR源は、キセノンランプを備える。一実施形態では、EMRは、1回の曝露、10回以下の曝露、100回以下の曝露、1000回以下の曝露、または10,000回以下の曝露から構成されている。一実施形態では、EMRは、10-4~1000Hz、1~1000Hz、または10~1000Hzの曝露周波数を有する。一実施形態では、EMRは、50mm以下の曝露距離を有する。一実施形態では、EMRは、0.1ms以上または1ms以上の曝露時間を有する。一実施形態では、EMRには、100V以上のコンデンサ電圧が印加される。
【0028】
さらなる実施形態では、EMRは10から1500nmまでの範囲のピーク周波数を有し、EMRは、0.1ジュール/cmの最小エネルギー密度を有する。このEMRに材料を曝露することにより、加熱、乾燥、硬化、焼結、焼鈍し(annealing)、封止、合金化、蒸発、再構築、発泡のうちの1つ以上の効果が得られる。
【0029】
一実施形態では、EMRは、1ジュール/cmの最小エネルギー密度を有する。一実施形態では、EMRは10ジュール/cmの最小エネルギー密度を有する。一実施形態では、EMRは、1ワット以上の出力を有する。一実施形態では、EMRは、10ワット以上の出力を有する。一実施形態では、EMRは、100ワット以上の出力を有する。一実施形態では、EMRは、1000ワット以上の出力を有する。一実施形態では、EMRのピーク周波数は、10と1500nmとの間、50と550nmとの間、または100と300nmとの間である。一実施形態では、材料は、EMR源から50cm未満、10cm未満、1cm未満、または1mm未満離される。
【0030】
一実施形態では、上記方法は、EMRから基材までの距離、EMRの強度、EMRのスペクトル、曝露時間、曝露回数、曝露の繰り返し回数、またはそれらの組み合わせを制御することを含む。一実施形態では、EMRの曝露は、1mm以上、1cm以上、10cm以上、または100cm以上の表面積を有する。
【0031】
一実施形態では、材料は、Cu、CuO、CuO、Cu-CGO、Ni、NiO、NiO-YSZ、銀、フェライト鋼、ステンレス鋼、Crofer、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガドリニアドープセリア(CGO)、サマリアドープセリア(SDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)、セリアイットリア安定化ジルコニア(CYZ)、セリアスカンジア安定化ジルコニア(CSZ)、ジルコニア、ランタンクロマイト、ドープランタンクロマイト、ドープYSZ、着色ジルコニア、カーボン、黒鉛、グラフェン、またはそれらの組合せを含む。
【0032】
一実施形態では、材料は粒子を含む。粒子は、以下の特性の少なくとも1つを有する粒度分布を有する。粒度分布は、粒子の10%がD10以下の直径を有し、粒子の90%がD90以下の直径を有し、D90/D10が1.5から100までの範囲にある、D10およびD90を有する。粒度分布は、第1のモードにおける平均粒子径が、第2のモードにおける平均粒子径の少なくとも5倍であるような二峰性である。または、粒度分布は、粒子の50%がD50以下の直径を有し、D50が400nm以下である、D50を有する。一実施形態では、D50は100nm以下である。一実施形態では、D10は、5nmから50nmまで、5nmから100nmまで、もしくは5nmから200nmまでの範囲にあるか、D90は、50nmから500nmまで、もしくは50nmから1000nmまでの範囲にあるか、または、D90/D10は、2から100まで、4から100まで、2から20まで、2から10まで、4から20まで、もしくは4から10までの範囲にある。
【0033】
一実施形態では、D50は、50nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、または5nm以下である。一実施形態では、第1のモードにおける平均粒子径は、第2のモードにおける平均粒子径の少なくとも10倍、15倍、または20倍である。一実施形態では、粒子は、1nmから1000nmまでの範囲にある直径を有し、D10は、1nmから10nmまでの範囲にあり、D90は、50nmから500nmまでの範囲にある。
【0034】
一実施形態では、上記粒子の第1の10wt%以上はdの平均直径を有し、上記粒子の第2の10wt%以上は少なくとも5×dの平均直径を有し、上記粒子の第3の10wt%以上は少なくとも20×dの平均直径を有する。一実施形態では、dは1nmから100nmまで、5nmから50nmまで、または10nmから30nmまでの範囲にある。一実施形態では、上記粒子の第3の10wt%以上は、少なくとも36×d、少なくとも50×d、または少なくとも100×dの平均直径を有する。一実施形態では、上記粒子の第2の10wt%以上は、少なくとも6×d、少なくとも7×d、少なくとも8×d、または少なくとも10×dの平均直径を有する。
【0035】
一実施形態では、上記粒子の第1の20wt%以上は、dの平均直径を有し、上記粒子の第2の20wt%以上は、少なくとも5×dの平均直径を有し、上記粒子の第3の20wt%以上は、少なくとも20×dの平均直径を有している。一実施形態では、上記粒子の第1の30wt%以上は、dの平均直径を有し、上記粒子の第2の30wt%以上は、少なくとも5×dの平均直径を有し、上記粒子の第3の30wt%以上は、少なくとも20×dの平均直径を有している。
【0036】
一実施形態では、上記粒子の第2の10wt%以上は、少なくとも6×dの平均直径を有し、上記粒子の第3の10wt%以上は、少なくとも36×dの平均直径を有している。一実施形態では、上記粒子の第2の10wt%以上は、少なくとも7×dまたは8×dの平均直径を有し、上記粒子の第3の10wt%以上は、少なくとも50×dの平均直径を有している。一実施形態では、上記粒子の第2の10wt%以上は、少なくとも10×dの平均直径を有し、上記粒子の第3の10wt%以上は、少なくとも100×dの平均直径を有している。
【0037】
本明細書に開示される方法は、材料を焼結させる方法であって、第1段階において電磁放射線(EMR)、伝導またはその両方を用いて材料を加熱すること、材料に接触することなく、最後のEMR曝露後、5秒以下である時間t以内に材料の温度Tを測定すること、および、TをTsinterと比較することを含む。一実施形態では、材料が非金属である場合、Tsinterは材料の融点の45%以上であり、材料が金属である場合、Tsinterは材料の融点の60%以上である。一実施形態では、Tsinterは、測定された温度を、材料の微細構造画像、材料のスクラッチ接着試験、材料のスクラッチ硬度試験、材料の電気化学的性能試験、材料の膨張率測定、材料の導電率測定、またはそれらの組み合わせに関連付けることによって予め決定されている。
【0038】
一実施形態では、tは4秒以下、3秒以下、2秒以下、または1秒以下である。一実施形態では、材料温度Tの測定は、赤外線センサ、赤外線カメラ、パイロメータ、ボロメータ、またはそれらの組み合わせを使用することを含む。
【0039】
一実施形態では、上記方法は、TがTsinterの90%未満である場合、第2段階においてEMR、伝導またはその両方を用いて材料を加熱することを含む。一実施形態では、第1段階または第2段階におけるEMRは、1回の曝露、10回以下の曝露、100回以下の曝露、1000回以下の曝露、または10,000回以下の曝露で与えられる。一実施形態では、第2段階のEMRは、第1段階と同じ電圧、曝露回数、曝露時間、バースト周波数、EMRスペクトル、曝露距離、EMRエネルギー密度、またはそれらの組み合わせで用いられる。一実施形態では、第2段階の焼結後の材料の気孔率は、第1段階の焼結後の気孔率より小さい。一実施形態では、材料は、第1段階の焼結の後よりも第2段階の焼結の後の方がより高密度化されている。
【0040】
一実施形態では、材料は、LSCF、LSM、YSZ、CGO、サマリアドープセリア(SDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、LSGM、Cu、CuO、CuO、Cu-CGO、Ni、NiO、NiO-YSZ、銀、フェライト鋼、ステンレススチール、ランタンクロマイト、ドープランタンクロマイト、croferまたはその組み合わせのいずれかを含む。一実施形態では、材料は粒度分布を有する粒子であって、その粒度分布が、粒子の10%はD10以下の直径を有し、粒子の90%はD90以下の直径を有し、D90/D10は1.5から100までの範囲にあるようなD10およびD90を含む、粒子を含む。一実施形態では、粒度分布は、動的光散乱またはTEMによって決定される数分布である。一実施形態では、D10は、5nmから50nmまで、5nmから100nmまで、もしくは5nmから200nmまでの範囲にあるか、D90は、50nmから500nmまで、もしくは50nmから1000nmまでの範囲にあるか、または、D90/D10は、2から100まで、4から100まで、2から20まで、2から10まで、4から20までもしくは4から10までの範囲にある。一実施形態では、粒子は、1nmから1000nmの範囲の直径を有し、D10は、1nmから10nmの範囲にあり、D90は、50nmから500nmの範囲にある。一実施形態では、材料は、1mm以下、500ミクロン以下、300ミクロン以下、100ミクロン以下、50ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、または0.5ミクロン以下の厚さを有する。
【0041】
さらに本明細書では、材料を焼結するためのシステムであって、電磁放射線(EMR)源と、レシーバであって、材料を収容し、当該材料が電磁放射線を受けることができるように構成され、かつ、当該材料に伝導熱を与えるように構成されたレシーバと、材料の温度を測定するように構成された非接触式温度センサと、を備えるシステムを開示する。一実施形態では、EMR源はキセノンランプである。一実施形態では、非接触式温度センサは、赤外線センサ、赤外線カメラ、パイロメータ、ボロメータ、またはそれらの組み合わせを備える。一実施形態では、非接触式温度センサは、最後のEMR曝露後、時間t以内に材料温度を測定するよう構成されており、tは5秒以下である。
【0042】
一実施形態では、上記システムは、コンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、測定された材料温度TをTsinterと比較させる命令を含む。一実施形態では、Tsinterは、測定された温度を、材料の微細構造画像、材料のスクラッチ接着試験、材料のスクラッチ硬度試験、材料の電気化学的性能試験、材料の膨張率測定、材料の導電率測定、またはそれらの組み合わせに関連付けることによって予め決定されている。一実施形態では、材料が非金属である場合、Tsinterは材料の融点の45%以上であり、材料が金属である場合、Tsinterは材料の融点の60%以上である。一実施形態では、上記命令によって、TがTsinterの90%未満である場合、プロセッサは、第2段階において、EMR源に材料を加熱するように指示するか、レシーバに材料を伝導加熱するように指示するか、またはその両方を指示する。一実施形態では、上記命令によって、プロセッサは、最後のEMR曝露後時間t以内に材料の温度を測定するように温度センサに指示する。
【0043】
一実施形態では、tは4秒以下、3秒以下、2秒以下、または1秒以下である。一実施形態では、上記システムは、レシーバ上に材料を堆積させるように構成された少なくとも1つの堆積ノズルを備える。一実施形態では、上記システムは、材料が電磁放射線を受ける前にレシーバ上の材料を乾燥させるように構成された非接触式乾燥機を備える。一実施形態では、非接触式乾燥機は、赤外線ヒーター、熱風送風機、紫外線(UV)光源、またはそれらの組み合わせを備える。場合によっては、UV光源は、発熱または吸熱の反応(例えば、重合反応)を開始させる。発熱反応または吸熱反応は、次に材料を乾燥させる効果を引き起こす。一実施形態では、乾燥機は、1ミリ秒から1分、1秒から30秒、または3秒から10秒の範囲にある期間、材料を乾燥させるように構成されている。
【0044】
一実施形態では、上記命令によって、プロセッサは、少なくとも1つの堆積ノズルに材料をレシーバ上に堆積するように指示するか、非接触式乾燥機に材料を乾燥させるように指示するか、EMR源に材料を加熱するように指示、レシーバに材料を伝導加熱するように指示、もしくはその両方を行うように指示するか、または、温度センサに最後のEMR曝露後時間t以内に材料の温度を測定するように指示する。一実施形態では、上記命令により、プロセッサは、測定された材料温度TをTsinterと比較する。
【0045】
堆積および加熱の統合
さらに本明細書では、a)基材上に組成物を堆積させて薄片(slice)を形成すること、b)薄片を1分以下乾燥させること、c)電磁放射線(EMR)、伝導またはその両方を用いて薄片を加熱すること、および、d)薄片に接触せずに、最後のEMR曝露後、5秒以下である時間t以内に薄片温度Tを測定すること、を含む製造方法を説明する。前述したような全ての態様の先進的な加熱方法は、成膜と加熱とが統合された方法およびシステムに適用可能である。
【0046】
一実施形態では、上記方法は、上記工程a)-d)を繰り返して、薄片ごとに物体を製造することを含む。一実施形態では、上記物体は、触媒、触媒担体、触媒複合体、アノード、カソード、電解質、電極、インターコネクト、シール、燃料電池、電気化学ガス生成器、電気分解器、電気化学圧縮機、反応器、熱交換器、容器、またはそれらの組み合わせを含む。
【0047】
一実施形態では、上記方法は、e)TをTsinterと比較して、薄片の少なくとも一部が焼結されているかどうかを決定することを含む。一実施形態では、TがTsinterの90%以上である場合、薄片の少なくとも一部は焼結している。一実施形態では、Tsinterは、測定された温度を薄片の微細構造画像、薄片のスクラッチ試験、薄片の電気化学的性能試験、薄片の膨張率測定、薄片の導電率測定、またはそれらの組み合わせに関連付けることによって予め決定される。一実施形態では、組成物が非金属である場合、Tsinterは当該組成物の融点の45%以上であり、または、組成物が金属である場合、Tsinterは当該組成物の融点の60%以上である。一実施形態では、上記方法は、TがTsinterの90%未満である場合、第2段階において、EMR、伝導またはその両方を用いて薄片を加熱することを含む。一実施形態では、tは4秒以下、3秒以下、2秒以下、または1秒以下である。
【0048】
一実施形態では、組成物は、LSCF、LSM、YSZ、CGO、サマリアドープセリア(SDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、LSGM、Cu、CuO、CuO、Cu-CGO、Ni、NiO、NiO-YSZ、銀、フェライト鋼、ステンレス鋼、ランタンクロマイト、ドープランタンクロマイト、croferまたはそれらの組合せのいずれかを含む。一実施形態では、組成物は、粒度分布を有する粒子であって、その粒度分布が、粒子の10%はD10以下の直径を有し、粒子の90%はD90以下の直径を有し、D90/D10は1.5から100までの範囲にあるようなD10およびD90を含む、粒子を含む。一実施形態では、薄片は、1mm以下、500ミクロン以下、300ミクロン以下、100ミクロン以下、50ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、または0.5ミクロン以下の厚さを有する。
【0049】
一実施形態では、乾燥は、1秒から30秒まで、または3秒から10秒までの範囲にある期間行われる。一実施形態では、乾燥は非接触式乾燥機によって行われる。一実施形態では、非接触式乾燥機は、赤外線ヒーター、熱風送風機、紫外線光源、またはそれらの組み合わせを備える。場合によっては、紫外線光源は、発熱または吸熱する反応(例えば、重合反応)を開始させる。発熱反応または吸熱反応は、次に材料を乾燥させる効果を引き起こす。
【0050】
本明細書では、また、少なくとも1つの堆積ノズルと、電磁放射線(EMR)源と、堆積レシーバとを含むシステムであって、堆積レシーバが、EMR曝露と堆積とを同じ位置で受けるように構成されたシステムが開示される。場合によっては、レシーバは、第1の期間の堆積を受け、システム内の異なる位置に移動して第2の期間のEMR曝露を受けるように構成されている。
【0051】
図1を参照すると、601は堆積ノズルまたは材料噴出ノズルを表し、602はEMR源、例えばキセノンランプを表し、603は形成される物体を表し、604は付加製造(additive manufacturing)機械(AMM)の一部としてのレシーバを表す。605は、堆積された薄片に関する情報(例えば、表面特性)を提供する測定手段を表す。例えば、605は、カメラ、顕微鏡またはレーザースキャナである。606は、非接触式乾燥機、例えば、赤外線ランプまたは赤外線ヒーターを表す。607は、検出器または非接触式温度センサ、例えば、パイロメータを表す。
【0052】
図1に示されるように、レシーバ604は、ノズルからの堆積物とEMR源からの放射線との両方を受けるように構成されている。様々な実施形態において、堆積ノズル601は移動可能である。様々な実施形態において、レシーバ604は可動である。様々な実施形態において、EMR源602は、可動である。様々な実施形態において、物体は、触媒、触媒担体、触媒複合体、アノード、カソード、電解質、電極、インターコネクト、シール、燃料電池、電気化学ガス生成器、電気分解器、電気化学圧縮機、反応器、熱交換器、容器、またはそれらの組み合わせを含む。
【0053】
燃料電池
燃料電池は、燃料の化学エネルギーを電気化学反応によって電気に変換する電気化学装置である。燃料電池には、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、固体酸化物燃料電池(SOFC)など、さまざまな種類がある。燃料電池は、典型的には、アノード、カソード、電解質、インターコネクト、任意にバリア層および/または任意に触媒を備える。SOFCの様々な層は、SOFCが機能するようになる前に、先進的な加熱を必要とする。そのため、本開示では、SOFCを適用例として用いる。本開示の方法およびシステムは、加熱/焼結された材料が利用される他の分野にも適用可能である。
【0054】
アノードおよびカソードはどちらも電極である。燃料電池における電極、電解質、およびインターコネクトについての材料のリストは、ガス生成器または圧縮機などの他の電気化学デバイスにも適用可能である。また、これらのリストは例示に過ぎず、限定的なものではない。さらに、アノード材料およびカソード材料という呼称も、動作中の材料の機能(例えば、酸化性か還元性か)によって、材料がアノードとして使用されるかカソードとして使用されるかが決まるため、限定的なものではない。
【0055】
図2は,燃料電池スタックの中の2つの燃料電池を示したものである。図示された実施形態では、アノード、カソード、電解質、およびインターコネクトは、直方体または長方形の角柱である。項目501はアノードを模式的に表し、502はカソードを表し、503は電解質を表し、504はバリア層を表し、505は触媒を表し、506はインターコネクトを表している。2つの燃料電池繰り返しユニットまたは2つの燃料電池は、図示されているようにスタックを形成する。図から分かるように、一方の側で、インターコネクトは上部燃料電池(または燃料電池繰り返しユニット)のカソードの最大表面と接触し、反対側で、インターコネクトは下部燃料電池(または燃料電池繰り返しユニット)の触媒(任意的な)またはアノードの最大表面と接触している。これらの繰り返しユニットまたは燃料電池は、互いに積み重ねられ、その間で電気配線ではなくインターコネクトとの直接接触によってインターコネクトを共有することによって並列に接続される。このような構成は、横縞型(Segmented-In-Series)(SIS)型燃料電池とは対照的である。
【0056】
カソード
一実施形態では、カソードは、LSC、LSCF、LSMなどのペロブスカイトを含む。一実施形態では、カソードは、ランタン、コバルト、ストロンチウム、マンガナイトを含む。一実施形態では、カソードは、多孔質である。一実施形態では、カソードは、YSZ、窒素、窒素ホウ素ドープグラフェン、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3、SrCo0.5Sc0.5O3、BaFe0.75Ta0.25O3、BaFe0.875Re0.125O3、Ba0.5La0.125Zn0.375NiO3、Ba0.75Sr0.25Fe0.875Ga0.125O3、BaFe0.125Co0.125、Zr0.75O3を含む。一実施形態では、カソードは、LSCo、LCo、LSF、LSCoFを含む。一実施形態では、カソードは、ペロブスカイトのLaCoO3、LaFeO3、LaMnO3、(La,Sr)MnO3、LSM-GDC、LSCF-GDC、LSC-GDCを含む。LSCFを含むカソードは、中間温度での燃料電池の動作に適している。
【0057】
一実施形態では、カソードは、ランタンストロンチウムマンガナイト、ランタンストロンチウムフェライト、およびランタンストロンチウムコバルトフェライトからなる群から選択される材料を含む。一実施形態では、カソードは、ランタンストロンチウムマンガナイトを含む。
【0058】
アノード
一実施形態では、アノードは、銅、酸化ニッケル、酸化ニッケル-YSZ、NiO-GDC、NiO-SDC、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化モリブデン、ランタン、ストロンチウム、クロマイト、セリア、ペロブスカイト(例えば、LSCF[La{l-x}Sr{x}Co{l-y}Fe{y}O3]、または、LSM[La{l-x}Sr{x}MnO3]、ここで、xは通常、0.15-0.2であり、yは0.7~0.8である)を含む。一実施形態では、アノードは、コーキングおよび硫黄被毒を低減するために、SDC、BZCYYbコーティングまたはバリア層を含む。一実施形態では、アノードは多孔質である。一実施形態では、アノードは、電解質材料と電気化学的活性材料との組み合わせ、電解質材料と導電性材料との組み合わせを含む。
【0059】
一実施形態では、アノードは、ニッケルおよびイットリア安定化ジルコニアを含む。一実施形態では、アノードは、酸化ニッケルおよびイットリア安定化ジルコニアを含む材料の還元によって形成される。一実施形態では、アノードは、ニッケルおよびガドリニウム安定化セリアを含む。一実施形態では、アノードは、酸化ニッケルおよびガドリニウム安定化セリアを含む材料の還元によって形成される。
【0060】
電解質
一実施形態では、燃料電池の電解質は、安定化ジルコニア、例えば、YSZ、YSZ-8、Y0.16Zr0.84O2を含む。一実施形態では、電解質は、ドープLaGaO3、例えば、LSGM、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3を含む。一実施形態では、電解質は、ドープセリア、例えば、GDC、Gd0.2Ce0.8O2を含む。一実施形態では、電解質は、安定化酸化ビスマス、例えば、BVCO、Bi2V0.9Cu0.1O5.35を含む。
【0061】
一実施形態では、電解質は、酸化ジルコニウム、イットリア安定化酸化ジルコニウム(YSZ、YSZ8(8モル%YSZ)としても知られている)、セリア、ガドリニア、スカンジア、マグネシア、カルシアを含む。一実施形態では、電解質は十分な不透過性を有するので、著しいガス輸送を防止し、著しい電気伝導を防止し、またイオン伝導を可能にすることができる。一実施形態では、電解質は、ドープされた酸化物、例えば、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化ランタンを含む。一実施形態では、電解質は、ペロブスカイト、例えばLaCoFeO3、LaCoO3、Ce0.9Gd0.1O2(GDC)、Ce0.9Sm0.1O2(SDCもしくはサマリアドープセリア)、またはスカンジウム安定化ジルコニアを含む。
【0062】
一実施形態では、電解質は、ジルコニア、セリア、およびガリアからなる群から選択される材料を含む。実施形態において、材料は、スカンジウム、サマリウム、ガドリニウム、およびイットリウムからなる群より選択される安定化材料で安定化されている。実施形態において、材料は、イットリア安定化ジルコニアを含む。
【0063】
インターコネクト
一実施形態では、インターコネクトは、銀、金、白金、AISI441、フェライト系ステンレス鋼、ステンレス鋼、ランタン、クロム、酸化クロム、クロマイト、コバルト、セシウム、Cr2O3を含む。一実施形態では、アノードは、Cr2O3上のLaCrO3コーティング、またはNiCo2O4もしくはMnCo2O4コーティングを含む。一実施形態では、インターコネクトの表面は、コバルトおよび/またはセシウムでコーティングされている。一実施形態では、インターコネクトは、セラミックを含む。一実施形態では、インターコネクトは、ランタンクロマイトまたはドープランタンクロマイトを含む。一実施形態では、インターコネクトは、金属、ステンレス鋼、フェライト鋼、crofer、ランタンクロマイト、銀、金属合金、ニッケル、酸化ニッケル、セラミック、またはグラフェンを含む材料で作られている。
【0064】
触媒
様々な実施形態において、燃料電池は、触媒、例えば、白金、パラジウム、スカンジア、クロム、コバルト、セシウム、CeO2、ニッケル、酸化ニッケル、亜鉛(zine)、銅、チタニア(titantia)、ルテニウム、ロジウム、MoS2、モリブデン、レニウム、バナジウム、マンガン、マグネシウム、鉄を含む。様々な実施形態において、触媒は、メタン改質反応を促進して、燃料電池において酸化される水素および一酸化炭素を生じる。非常に多くの場合、触媒はアノードの一部であり、特にニッケルアノードは固有のメタン改質特性を有する。一実施形態では、触媒は、質量比でl%―5%、または0.1%~10%である。一実施形態では、触媒は、アノード表面上またはアノード内で使用される。様々な実施形態において、このようなアノード触媒は、有害なコーキング反応および炭素堆積物を低減する。様々な実施形態において、単純な酸化物バージョンの触媒が使用されるか、またはペロブスカイトが使用される。例えば、2質量%のCeO2触媒が、メタン式燃料電池に使用される。様々な実施形態において、触媒は、アノード上に浸漬されるか、またはコーティングされる。様々な実施形態において、触媒は、付加製造(additive manufacturing)により製造される。
【0065】
実施例
下記実施例は、本発明の様々な実施形態の開示の一部として提供される。このため、下で提供される情報はいずれも発明の範囲を限定するものではない。
【0066】
実施例1.燃料電池スタックの製造
この方法では、Ceradrop社製のAMMモデルNo.0012323、Xenon社製のEMRモデルNo.092309423を使用する。インターコネクト基材を置き、印刷を開始する。
【0067】
第1の工程として、AMMによってアノード層が製造される。この層は、下記表に示される組成を有するスラリーAとして、AMMにより堆積される。この層は、赤外線ランプで熱を加えることによって乾燥される。このアノード層は、キセノンフラッシュ管からの電磁放射線に1秒間曝露することによって焼結される。
【0068】
電解質層は、下記表に示される組成を有するスラリーBを堆積させるAMMにより、アノード層の上面に形成される。この層は、赤外線ランプで熱を加えることによって乾燥させる。この電解質層は、キセノンフラッシュ管からの電磁放射線に60秒間曝露することによって焼結される。
【0069】
次に、カソード層は、下記表に示される組成を有するスラリーCを堆積させるAMMにより、電解質層の上に形成される。この層は、赤外線ランプで熱を加えることによって乾燥される。このカソード層は、キセノンフラッシュ管からの電磁放射線に1/2秒間曝露することによって焼結される。
【0070】
インターコネクト層は、下記表に示される組成を有するスラリーDを堆積させるAMMにより、カソード層の上に形成される。この層は、赤外線ランプで熱を加えることによって乾燥される。このインターコネクト層は、キセノンフラッシュ管からの電磁放射線に30秒間曝露することによって焼結される。
【0071】
次いで、インターコネクトの上にアノード層が形成されながら、これらの工程が60回繰り返される。この結果、61個の燃料電池を有する燃料電池スタックが完成する。
【表1】
【0072】
実施例2.焼結結果
図3を参照する。電解質1201(YSZ)は、電極1202上で印刷され、焼結される(NiO-YSZ)。この走査電子顕微鏡画像は、焼結構造の側面図を示す。この図は、電解質と電極との間が気密接触していること、電解質が完全に高密度化されていること、および焼結された多孔質電極の微細構造を示している。
【0073】
本開示は、発明の異なる特徴、構造、または機能を実施するための例示的な実施形態を説明するものであることが理解されるべきである。構成要素、配置、および構造の例示的な実施形態は本開示を簡略化するために記載されているが、これらの例示的な実施形態は、単に例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書で提示される実施形態は、特に指定しない限り、組み合わせることができる。そのような組み合わせは本開示の範囲から逸脱しない。
【0074】
さらに、ある一定の用語が、特定の構成要素または工程を示すために、説明および特許請求の範囲を通して使用される。当業者が認識するように、様々な機関(entities)は、同じ構成要素または工程を異なる名称で呼ぶことができ、そのため、本明細書で記載された要素の命名規則は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。さらに、本明細書で使用される用語および命名規則は、名称は異なるが機能は異ならない構成要素、特徴、および/または工程を区別することを意図していない。
【0075】
本開示は、様々な改変および代替形態が可能であるが、その特定の実施形態は、図面および説明において例として示される。しかしながら、図面および詳細な説明は、本開示を開示される特定の形態に限定することを意図しておらず、逆に、本開示の精神および範囲内にある全ての改変、等価物および代替物を包含することを意図していることが理解されるべきである。
図1
図2
図3