(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20231101BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20231101BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20231101BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20231101BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20231101BHJP
H04N 23/57 20230101ALI20231101BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20231101BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B15/00 V
G03B15/00 H
G02B7/04 E
G02B7/02 Z
G03B17/02
H04N23/57
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2019213219
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正吉
【審査官】小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120747(JP,A)
【文献】特開2016-045485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0109720(US,A1)
【文献】特開2017-122891(JP,A)
【文献】特開2014-160196(JP,A)
【文献】特開2017-227850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0204531(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109975942(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G03B 15/00
G02B 7/02
G03B 17/02
H04N 23/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向から見た平面視形状が
、第1の辺と、前記第1の辺に隣接する第2の辺と、前記第1の辺に対向する第3の辺と、前記第2の辺に対向する第4の辺とからなる矩
形であ
る第1固定部と、
前記第1固定部の
前記光軸方向に直交する径方向の内側に配置される第1可動部と、
前記第1固定部に対して前記第1可動部を支持する第1支持部と、
前記第1固定部に配置されるマグネット及び前記マグネットに対して前記径方向に対向するように前記第1可動部に配置されるコイルで構成され、前記第1固定部に対して前記第1可動部を前記光軸方向に移動させるZ方向駆動部と、
第2固定部と、
前記第1固定部、前記第1可動部、前記第1支持部及び前記Z方向駆動部を含み、前記第2固定部と前記光軸方向に離間して配置され
、前記第2固定部に対して前記光軸方向に直交する光軸直交面内において移動可能な第2可動部と、
前記第2固定部に対して前記第2可動部を支持する第2支持部と
、
前記第2可動部の前記光軸直交面内における移動に追従して変形可能に構成され、前記第1支持部を介して前記コイルに給電する給電部材と、を備え、
前記Z方向駆動部
の前記マグネットは、前
記第1の辺
及び前記第2の辺に沿って
前記第1固定部に配置され、
前記第1支持部は、
第1板バネ及び第2板バネからなる2つの板バネを含み、
前記第1板バネは、前記第3の辺に沿って延在し前記第1固定部の前記第3の辺と前記第1可動部を連結する第1アーム部を有し、
前記第2板バネは、前記第4の辺に沿って延在し前記第1固定部の前記第4の辺と前記第1可動部を連結する第2アーム部を有し、
前記コイルは、前記給電部材及び前記板バネを介して給電される、
レンズ駆動装置。
【請求項2】
2つの前記板バネは、前記第1固定部に対して前記第1可動部を光軸方向受光側で支持する、請求項
1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
2つの前記板バネと前記第1固定部との間に、ダンパー材が配置されている、請求項
2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
2つの前記Z方向駆動部の隣接箇所に配置される補助支持部を備え、
前記補助支持部と前記第1固定部との間に、ダンパー材が配置されている、
請求項
3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記マグネットは、直方体形状の多極マグネットで構成され、
前記コイルは、扁平コイルで構成され、コイル面が前記多極マグネットを向くように配置されている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記第2支持部は、エラストマーで形成された線状部材で構成され、前記矩形の四隅に配置されている、請求項1から
5のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、
前記第1可動部に装着されるレンズ部と、
前記レンズ部により結像された被写体像を撮像する撮像部と、
を備える、カメラモジュール。
【請求項8】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項
7に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える、カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス機能及び振れ補正機能を有するレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うオートフォーカス機能(以下、「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減する振れ補正機能(以下、「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有するレンズ駆動装置が適用される。
【0003】
AF機能及びOIS機能を有するレンズ駆動装置は、レンズ部を光軸方向に移動させるためのオートフォーカス駆動部(以下、「AF駆動部」と称する)と、レンズ部を光軸方向に直交する平面内で揺動させるための振れ補正駆動部(以下、「OIS駆動部」と称する)を備える。特許文献1では、AF駆動部及びOIS駆動部に、ボイスコイルモーター(VCM)が適用されている。
【0004】
オートフォーカス時に光軸方向に移動可能なオートフォーカス可動部(以下、「AF可動部」と称する)は、例えば、オートフォーカス固定部(以下、「AF固定部」と称する)に対して径方向に離間して配置される。振れ補正時に光軸直交面内で揺動する振れ補正可動部(以下、「OIS可動部」と称する)は、AF可動部、AF固定部及びAF駆動部を含むAFユニットで構成され、例えば、振れ補正固定部(以下、「OIS固定部」と称する)に対して光軸方向に離間して配置される。
【0005】
近年では、デュアルカメラやトリプルカメラなど複数のレンズ駆動装置を並置するカメラモジュールの実用化が進められている。複数のレンズ駆動装置を並置するカメラモジュールは、焦点距離の異なる複数枚の画像を同時に撮像できたり、静止画像と動画像を同時に撮像できたりするなど、利用シーンに応じて様々な可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数のレンズ駆動装置を並置したカメラモジュールにおいては、各レンズ駆動装置が隣接して配置される。そのため、上記したAF機能やOIS機能を実現するためのマグネットやコイルを設けた場合、各レンズ駆動装置のマグネットからの磁気干渉によって、各々のレンズ駆動装置の動作が不安定になる虞がある。例えば、特許文献1のレンズ駆動装置では、当該レンズ駆動装置の外周部分にマグネットが配置されており、当該マグネットが発生する磁界によって、他のレンズ駆動装置のAF時やOIS時の動作が不安定になる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、複数のレンズ駆動装置を並置する場合の装置間の磁気干渉を抑制できるとともに、駆動性能の安定化を図ることができるレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズ駆動装置は、
光軸方向から見た平面視形状が、第1の辺と、前記第1の辺に隣接する第2の辺と、前記第1の辺に対向する第3の辺と、前記第2の辺に対向する第4の辺とからなる矩形である第1固定部と、
前記第1固定部の前記光軸方向に直交する径方向の内側に配置される第1可動部と、
前記第1固定部に対して前記第1可動部を支持する第1支持部と、
前記第1固定部に配置されるマグネット及び前記マグネットに対して前記径方向に対向するように前記第1可動部に配置されるコイルで構成され、前記第1固定部に対して前記第1可動部を前記光軸方向に移動させるZ方向駆動部と、
第2固定部と、
前記第1固定部、前記第1可動部、前記第1支持部及び前記Z方向駆動部を含み、前記第2固定部と前記光軸方向に離間して配置され、前記第2固定部に対して前記光軸方向に直交する光軸直交面内において移動可能な第2可動部と、
前記第2固定部に対して前記第2可動部を支持する第2支持部と、
前記第2可動部の前記光軸直交面内における移動に追従して変形可能に構成され、前記第1支持部を介して前記コイルに給電する給電部材と、を備え、
前記Z方向駆動部の前記マグネットは、前記第1の辺及び前記第2の辺に沿って前記第1固定部に配置され、
前記第1支持部は、第1板バネ及び第2板バネからなる2つの板バネを含み、
前記第1板バネは、前記第3の辺に沿って延在し前記第1固定部の前記第3の辺と前記第1可動部を連結する第1アーム部を有し、
前記第2板バネは、前記第4の辺に沿って延在し前記第1固定部の前記第4の辺と前記第1可動部を連結する第2アーム部を有し、
前記コイルは、前記給電部材及び前記板バネを介して給電される。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは、
上記のレンズ駆動装置と、
前記第1可動部に装着されるレンズ部と、
前記レンズ部により結像された被写体像を撮像する撮像部と、
を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のレンズ駆動装置を並置する場合の装置間の磁気干渉を抑制できるとともに、駆動性能の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A、
図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す図である。
【
図2】
図2は、カメラモジュールの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、カメラモジュールの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、レンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、レンズ駆動装置の配置態様の一例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、レンズ駆動装置の配置態様の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1A、
図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。
図1AはスマートフォンMの正面図であり、
図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0016】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュールAが適用されている。
カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うとともに、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0017】
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。
図3は、カメラモジュールの分解斜視図である。
図2、
図3に示すように、実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。カメラモジュールAは、スマートフォンMで実際に撮影が行われる場合に、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光軸方向であり、図中上側が光軸方向受光側(「マクロ位置側)ともいう)、下側が光軸方向結像側(「無限遠位置側」ともいう)となる。また、Z軸に直交するX方向及びY方向を「光軸直交方向」と称する。
【0018】
カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現するレンズ駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2、及びレンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部(図示略)等を備える。
【0019】
撮像部(図示略)は、レンズ駆動装置1の光軸方向結像側に配置される。撮像部(図示略)は、例えば、イメージセンサー基板及びイメージセンサー基板に実装される撮像素子を有する。撮像素子は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成される。撮像素子は、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。レンズ駆動装置1は、イメージセンサー基板(図示略)に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。レンズ駆動装置1の駆動制御を行う制御部は、イメージセンサー基板に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0020】
レンズ駆動装置1は、外側をカバー24で覆われている。カバー24は、光軸方向から見た平面視で矩形形状の有蓋四角筒体であり、上面に開口241を有する。この開口241からレンズ部2が外部に臨む。カバー24は、レンズ駆動装置1のOIS固定部20のベース21(
図4参照)に、例えば、接着により固定される。
【0021】
図4、
図5は、レンズ駆動装置1の分解斜視図である。
図4は上方斜視図であり、
図5は
図4をZ軸を中心に180°回転させた下方斜視図である。
図6A、
図6Bは、レンズ駆動装置1を光軸方向受光側から見た平面図である。
図7A、
図7Bは、レンズ駆動装置1の斜視図である。
図8は、レンズ駆動装置1の
図6AにおけるA-A矢視断面図である。
図6B及び
図7Bでは、マグネットホルダー12を省略して示している。
【0022】
図4等に示すように、レンズ駆動装置1は、OIS可動部10、OIS固定部20、OIS駆動部30、及びOIS支持部41等を備える。
【0023】
OIS可動部10は、振れ補正時に光軸直交面内で揺動する部分である。OIS可動部10は、AF可動部11、AF固定部12、AF駆動部13及びAF支持部14、15を有するAFユニットである(
図9、
図10参照)。
OIS固定部20は、OIS支持部41を介してOIS可動部10が接続される部分である。
OIS駆動部30は、OIS固定部20に配置されるOIS用コイル31A、31Bと、OIS可動部10に配置される駆動用マグネット32A、32B(OIS用マグネット)とで構成される。すなわち、OIS駆動部30には、ムービングマグネット方式のボイルコイルモーターが適用されている。
なお、OIS駆動部30には、ボイスコイルモーター以外の駆動方式(例えば、超音波モーター)を適用することもできる。
【0024】
OIS可動部10は、OIS固定部20に対して光軸方向受光側に離間して配置され、OIS支持部41によってOIS固定部20と連結される。本実施の形態では、OIS支持部41は、光軸方向に沿って延在するエラストマーからなる線状部材で構成され、レンズ駆動装置1の平面視の外形である矩形の四隅に配置されている。OIS支持部41は、例えば、エラストマーの押出成形により形成される。OIS支持部41は、所定の引張強度を有し、OIS可動部10の移動に追従して弾性変形可能であればよく、エラストマーの材質や線径等は適宜に選定される。
【0025】
OIS支持部41の一端(上端)は、OIS可動部10を構成するマグネットホルダー12に固定される。また、OIS支持部41の他端(下端)は、OIS固定部20を構成するベース21に固定される。OIS可動部10は、OIS支持部41によって、光軸直交面内で揺動可能に支持される。OIS支持部41をエラストマーで形成することにより、耐衝撃性が向上し、レンズ駆動装置1の信頼性を向上することができる。
【0026】
本実施の形態では、OIS支持部41とは別に、OIS固定部20を構成するセンサー基板22からAF用コイル131A、131Bに給電するための給電ワイヤー42(給電部材)が、光軸方向に沿って設けられている。給電ワイヤー42は、マグネットホルダー12に設けられた貫通孔127(
図9参照)に挿通される。給電ワイヤー42の一端(上端)は、AF支持部14に、例えば、半田付けにより接続される。また、給電ワイヤー42の他端(下端)は、OIS固定部20を構成するセンサー基板22の電源ラインに接続される。給電ワイヤー42は、OIS可動部10の移動に追従可能な可撓性を有していればよく、例えば、エナメル線材をコイル状に成形した部材を用いることができる。
【0027】
OIS固定部20は、ベース21及びセンサー基板22を有する。センサー基板22には、OIS用コイル31A、31B及び位置検出用の磁気センサー51X、51Y、51Zが実装されている。
【0028】
ベース21は、平面視で矩形形状を有し、中央に円形の開口211が形成されている。カメラモジュールAにおいて、ベース21の光軸方向結像側に、撮像素子(図示略)が実装されたイメージセンサー基板(図示略)が配置される。また、ベース21は、矩形の四隅に、OIS支持部41の他端が固定される支持固定部212を有する。
【0029】
センサー基板22は、ベース21と同様の形状を有し、ベース21の内面に、例えば、接着により固定されている。センサー基板22は、AF用コイル131A、131B(
図9等参照)、OIS用コイル31A、31B、及び磁気センサー51X、51Y、51Zに給電するための電源ライン(図示略)、並びに磁気センサー51X、51Y、51Zから出力される検出信号用の信号ライン(図示略)を含む配線パターンを有する。なお、センサー基板22の配線パターンの一部又は全部は、例えば、端子金具をインサート成形することによりベース21の内部に形成されてもよい。
【0030】
センサー基板22において、Y方向及びX方向に沿う隣接する1組の辺に、OIS用コイル31A、31Bが配置されている。以下において、OIS用コイル31Aが配置されている辺を「第1の辺」、OIS用コイル31Bが配置されている辺を「第2の辺」、OISコイル31A、31Bが配置されていない辺を「第3の辺」、「第4の辺」と称する。
【0031】
OIS用コイル31A、31Bは、それぞれ、光軸方向において、駆動用マグネット32A、32Bと対向する位置に配置される。OIS用コイル31Aは、OIS可動部10をX方向に移動させるためのコイルであり、OIS用コイル31Bは、OIS可動部10をY方向に移動させるためのコイルである。OIS用コイル31A、31Bの端部は、例えば、半田付けにより、センサー基板22の電源ライン(図示略)と接続される。
【0032】
OIS用コイル31A、31Bは、振れ補正時に通電される空芯コイルである。OIS用コイル31A、31Bは、コイル面から見た平面視で長円形状を呈するように、扁平形に巻線される(いわゆる扁平コイル)。本実施の形態では、OIS用コイル31A、31Bは、それぞれ、長手方向に分割された2つの扁平コイルで構成されている。OIS用コイル31A、31Bにおいて、2つの扁平コイルは、一方の端部同士が結線され、他方の端部がセンサー基板22の電源ラインに接続される。
【0033】
OIS用コイル31A、31Bは、それぞれの長辺部分を、駆動用マグネット32A、32Bの底面から放射される磁界が光軸方向に横切るように、OIS用コイル31A、31B及び駆動用マグネット32A、32Bの大きさや配置が設定される(
図8参照)。OIS用コイル31A、31Bの通電電流は、駆動制御部(図示略)によって制御される。なお、OIS用コイル31A、31Bは、センサー基板22の内部に、配線パターンとして形成されてもよい。
【0034】
磁気センサー51X、51Y、51Zは、例えば、ホール素子又はTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサー等で構成され、それぞれ、光軸方向において駆動用マグネット32A、32B、Z位置検出用マグネット52Zと対向する位置に配置される。本実施の形態では、磁気センサー51X、51Yは、それぞれ、OIS用コイル31A、31Bを構成する2つの扁平コイルの離間部分に配置されている。
【0035】
駆動用マグネット32A、32Bによって形成される磁界を、磁気センサー51X、51Yで検出することにより、光軸直交面内におけるOIS可動部10の位置を特定することができる。すなわち、本実施の形態では、磁気センサー51X、51Y及び駆動用マグネット32A、32Bにより、XY位置検出部が構成されている。なお、駆動用マグネット32A、32Bとは別に、OIS可動部10のXY位置検出用のマグネットをOIS可動部10に配置するようにしてもよい。つまり、本実施の形態では、駆動用マグネット32A、32Bが、XY位置検出用のマグネットを兼用している。
【0036】
また、Z位置検出用マグネット52Zによって形成される磁界を、磁気センサー51Zで検出することにより、光軸方向におけるAF可動部11の位置を特定することができる。すなわち、本実施の形態では、磁気センサー51Z及びZ位置検出用マグネット52Zにより、Z位置検出部が構成されている。
【0037】
図9、
図10は、OIS可動部10(AFユニット)の分解斜視図である。
図9はOIS可動部10の上方斜視図であり、
図10は下方斜視図である。
図9、
図10に示すように、OIS可動部10は、AF可動部11、AF固定部12、AF支持部14、15、及び補助支持部16等を備える。
【0038】
AF可動部11は、ピント合わせ時に光軸方向に移動する部分である。AF固定部12は、AF支持部14、15を介してAF可動部11が接続される部分である。AF駆動部13は、AF可動部11に配置されるAF用コイル131A、131Bと、AF固定部12に配置される駆動用マグネット32A、32B(AF用マグネット)とで構成される。すなわち、AF駆動部13には、ムービングコイル方式のボイスコイルモーターが適用されている。
【0039】
AF可動部11は、AF固定部12に対して径方向内側離間して配置され、AF支持部14、15によってAF固定部12と連結される。AF支持部14は、AF固定部12に対してAF可動部11を光軸方向受光側(上側)で支持する上側弾性支持部材である。本実施の形態では、AF支持部14は、2つの板バネ14A、14Bで構成されている(以下、「上バネ14A、14B」と称する)。AF支持部15は、AF固定部12に対してAF可動部11を光軸方向結像側(下側)で支持する下側弾性支持部材である。本実施の形態では、AF支持部15は、2つの板バネ15A、15Bで構成されている(以下、「下バネ15A、15B」と称する)。
【0040】
AF可動部11は、レンズ部2を保持するレンズホルダーで構成される(以下、「レンズホルダー11」と称する)。レンズホルダー11は、中央に筒状のレンズ収容部111を有する。レンズ収容部111には、レンズ部2(
図2参照)が接着又は螺合により固定される。本実施の形態では、レンズホルダー11は、光軸方向から見た平面視で矩形形状の外形を有している。
【0041】
レンズホルダー11は、上面に、上バネ14A、14Bが固定される上バネ固定部1112を有する。本実施の形態では、レンズホルダー11の上面において、矩形の四隅のうち対角に位置する2つの角部に、上バネ固定部112が設けられている。上バネ固定部112には、例えば、光軸方向受光側に突出する位置決めボス(符号略)が設けられ、この位置決めボスによって、上バネ14A、14Bが位置決めされるようになっている。
【0042】
また、レンズホルダー11は、上面に、補助支持部16が固定される補助部材固定部113を有する。本実施の形態では、レンズホルダー11の上面において、矩形の四隅のうちの一つの角部(第1の辺と第2の辺の隣接部分)に、補助部材固定部113が設けられている。
【0043】
レンズホルダー11は、下面に、下バネ15A、15Bが固定される下バネ固定部1114を有する。本実施の形態では、レンズホルダー11の下面において、矩形の四隅のうち対角に位置する2つの角部に、下バネ固定部114が設けられている。下バネ固定部114には、例えば、光軸方向結像側に突出する位置決めボス(符号略)が設けられ、この位置決めボスによって、下バネ15A、15Bが位置決めされるようになっている。
【0044】
レンズホルダー11は、AF用コイル131A、131Bが取り付けられるコイル取付部115を有する。本実施の形態では、コイル取付部115は、レンズホルダー11の隣接する2つの側壁(第1の辺及び第2の辺に沿う側壁)の外面に、径方向に突出して長円形状(角丸長方形状)に設けられている。
【0045】
レンズホルダー11は、上面において、上バネ固定部112の近傍に、AF用コイル1131A、131Bの端部が接続される絡げ部116を有する。また、レンズホルダー11は、矩形の四隅の外面に、マグネットホルダー12の規制片126が係合される段部117を有する。
【0046】
AF用コイル131A、131Bは、ピント合わせ時に通電される空芯コイルである。AF用コイル131A、131Bは、例えば、銅線材の周囲をウレタン系樹脂のワニスで被覆したポリウレタン銅線等のエナメル線で形成される。
【0047】
本実施の形態では、AF用コイル131A、131Bは、コイル取付部115に沿って、扁平形に巻線されている。すなわち、AF用コイル131A、131Bは、長円形状を有し、それぞれ、2つの直線部分(第1の直線部及び第2の直線部)を有している。AF用コイル131A、131Bは、それぞれ、コイル面が光軸と平行になるように配置される。すなわち、AF用コイル131A、131Bは、第1の直線部が光軸方向受光側(上側)、第2の直線部が光軸方向結像側(下側)となるように配置される。
AF用コイル131A、131Bの一方の端部同士は結線され、他方の端部はレンズホルダー11の絡げ部116に巻き付けられ、上バネ14A、14Bと電気的に接続される。AF用コイル131A、131Bの通電電流は、駆動制御部(図示略)によって制御される。
【0048】
AF用コイル131A、131Bのように、扁平コイルを採用することにより、駆動用マグネット32A、32Bによって形成される磁気回路の部分のみにAF用コイル131A、131Bが配置されることとなる。したがって、レンズホルダー11の全周に巻線してAF用コイルを形成する場合に比較して駆動効率が向上するので、軽量化及び省電力化を図ることができる。
【0049】
また、レンズホルダー11には、Z位置検出用マグネット52Zが配置される。Z位置検出用マグネット52Zは、AF可動部11の光軸方向の位置を検出するための磁界を発生する。Z位置検出用マグネット52Zは、例えば、一方向に着磁された円柱状の単極形のマグネットで構成され、着磁方向が光軸方向と一致するように、レンズホルダー11に配置されている。この場合、Z位置検出用マグネット113と磁気センサー52Zが光軸方向において対向しているので、光軸方向の位置と磁界の強度の関係は高い相関を示す。
これにより、Z位置検出用マグネット52Zにより形成される磁界が磁気センサー51Zを効率よく交差するので、磁気センサー51Zによる検出精度が向上する。また、磁気センサー51Zの出力は、Z位置検出用マグネット52Zの基準位置(振れ補正が行われていないときのXY平面における位置)に対する変位(基準位置を原点とする半径に相当)に依存する。すなわち、OIS可動部10のXY平面における位置(以下、「XY位置」と称する)が異なっていても、基準位置に対する変位が同じであれば、磁気センサー51Zの出力はほぼ同じになる。したがって、OIS可動部10のXY位置を半径換算して変位で表すことにより、振れ補正による影響を相殺するための補正値を容易に算出することができる。このように、振れ補正によりOIS可動部10がXY平面内で揺動して磁気センサー52Zと交差する磁界が変化しても、容易に補正することができる。
【0050】
また、Z位置検出用マグネット113は、駆動用マグネット32A、32Bと干渉しない位置に配置されている。具体的には、駆動用マグネット32A、32Bは、矩形を規定する4辺のうちの隣接する第1の辺及び第2の辺に沿って配置されており、Z位置検出用マグネット52Zは、駆動用マグネット32A、32Bが配置されていない第3の辺と第4の辺の隣接部分に配置されている。これにより、Z位置検出用マグネット52Zにより形成される磁界に対する駆動用マグネット32A、32Bの影響を最小限に抑えることができるので、磁気センサー51Zによる検出精度が向上する。
【0051】
AF固定部12は、駆動用マグネット32A、32Bを保持するマグネットホルダー12で構成される(以下、「マグネットホルダー12」と称する)。マグネットホルダー12は、レンズホルダー11(AF可動部)に対して径方向に離間して配置され、駆動用マグネット32A、32Bを保持する。本実施の形態では、マグネットホルダー12は、平面視で矩形形状の外形を有する四角筒体で構成されている。マグネットホルダー12の内周面は、レンズホルダー11の外形に合わせて形成されている。
【0052】
マグネットホルダー12は、AF用及びOIS用の駆動用マグネット32A、32Bを保持するマグネット保持部121を有する。マグネット保持部121には、例えば、外部に連通する開口(符号略)が設けられ、マグネット保持部121と駆動用マグネット32A、32Bとの接触面に接着剤を注入できるようになっている。
【0053】
マグネットホルダー12は、上面に、上バネ14A、14Bが固定される上バネ固定部122を有する。本実施の形態では、マグネットホルダー12の上面において、矩形を規定する4辺のうちの隣接する2辺(第3の辺及び第4の辺)に沿う領域が、上バネ固定部122となっている。上バネ固定部122は、例えば、光軸方向受光側に突出する位置決めボス(符号略)を有し、この位置決めボスによって、上バネ14A、14Bが位置決めされるようになっている。
【0054】
マグネットホルダー12は、下面に、下バネ15A、15Bが固定される下バネ固定部124を有する。本実施の形態では、マグネットホルダー12の下面において、矩形を規定する4辺のうちの隣接する2辺(第3の辺及び第4の辺)に沿う領域、すなわち、上バネ固定部122が設けられている側壁の下面が、下バネ固定部124となっている。下バネ固定部124は、例えば、光軸方向結像側に突出する位置決めボス(符号略)を有し、この位置決めボスによって、下バネ15A、15Bが位置決めされるようになっている。
【0055】
また、マグネットホルダー12は、矩形の四隅に、OIS支持部41の一端が接続される支持固定部125を有している。支持固定部125の下部は、径方向内側に円弧状に凹んで形成されている。これにより、OIS可動部10が揺動する際に、OIS支持部41とマグネットホルダー12が干渉するのを回避することができる。
【0056】
マグネットホルダー12において、上バネ固定部122及び下バネ固定部124が設けられている側壁、すなわち第3の辺及び第4の辺に沿う側壁には、給電ワイヤー42を挿通するための貫通孔127が設けられている。貫通孔127の径は、OIS可動部10が光軸直交面内で移動したときに、給電ワイヤー42とマグネットホルダー12とが干渉しない程度に設定される。
【0057】
また、マグネットホルダー12において、第3の辺及び第4の辺に沿う側壁の上面、及び四隅のうちの一つの角部(第1の辺及び第2の辺の隣接部分)には、ダンパー配置部128が設けられている。ダンパー配置部128は、光軸方向に凹んで形成されており、ダンパー材を配置可能となっている。
【0058】
マグネットホルダー12は、レンズホルダー11の移動を規制する規制片126を有する。本実施の形態では、マグネットホルダー12の四隅の内面に、径方向に突出するように規制片126が設けられている。レンズホルダー11は、マグネットホルダー12の規制片126が段部117に重なるように取り付けられる。例えば、AF用コイル131A、131Bに通電が行われていない基準状態では、規制片126の下面(光軸方向結像側の面)と、段部117の上面(光軸方向受光側の面)とが離間する。レンズホルダー11が光軸方向受光側に移動するときに、レンズホルダー11の段部117の上面にマグネットホルダー12の規制片126の下面が当接することにより、レンズホルダー11の光軸方向受光側への移動が規制される。
【0059】
駆動用マグネット32A、32Bは、AF用のボイスコイルモーターを構成するマグネット(AF用マグネット)と、OIS用のボイスコイルモーターを構成するマグネット(OIS用マグネット)を兼用する。駆動用マグネット32A、32Bは、マグネットホルダー12のマグネット保持部121に取り付けられ、例えば、接着により固定される。すなわち、駆動用マグネット32A、32Bは、AF用コイル131A、131Bに対して径方向に離間し、OIS用コイル31A、31Bに対して光軸方向に離間して配置される。
【0060】
駆動用マグネット32A、32Bは、AF用コイル131A、131Bを径方向に横切るとともに、OIS用コイル31A、31Bを光軸方向に横切る磁界が形成されるように着磁される(
図8参照)。本実施の形態では、駆動用マグネット32A、32Bは、直方体形状を有し、短手方向(X方向)に着磁された両面4極形のマグネット(例えば、永久磁石)で構成されている。具体的には、駆動用マグネット32A、32Bは、それぞれ、径方向に互いに逆向きに着磁された第1のマグネット321及び第2のマグネット322が、光軸方向に並んで配置された構成を有する。
【0061】
駆動用マグネット32A、32Bにおいて、第1のマグネット321が光軸方向受光側に位置し、第2のマグネット322が光軸方向結像側に位置する。すなわち、駆動用マグネット32A、32Bは、第1のマグネット321がAF用コイル131A、131Bの第1の直線部に対向し、第2のマグネット322がAF用コイル131A、131Bの第2の直線部に対向するように配置されている。
【0062】
主として、第1のマグネット321による磁界がAF用コイル131A、131Bの第1の直線部を横切り、第2のマグネット322による磁界がAF用コイル131A、131Bの第2の直線部を横切る。第1のマグネット321による磁界の向きと第2のマグネット322による磁界の向きは逆向きなので、AF用コイル131A、131Bに通電が行われたとき、第1の直線部と第2の直線部には、Z方向に同じ向きのローレンツ力が発生する。なお、通電時に、AF用コイル131A、131Bに生じるローレンツ力が同じ方向となるように、駆動用マグネット32A、32Bにおける着磁方向及びAF用コイル131A、131Bにおける通電方向が設定される。
【0063】
駆動用マグネット32A、32Bにおいて、第1のマグネット321と第2のマグネット322の間には、非磁性層が介在してもよい。非磁性層の高さを調整することにより、駆動用マグネット32A、32Bの全体の高さを保持しつつ、第1のマグネット321と第2のマグネット322の占める領域(AF用コイル131A、131Bの第1の直線部及び第2の直線部に対向する対向面の面積)を容易に調整することができる。
【0064】
上バネ14A、14Bは、マグネットホルダー12(AF固定部)に対して、レンズホルダー11(AF可動部)を弾性的に支持する。上バネ14A、14Bは、例えばベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等で形成される。上バネ14A、14Bは、例えば、一枚の板金を打ち抜いて成形される。本実施の形態では、上バネ14A、14Bは、全体として、L字形状を呈しており、第3の辺及び第4の辺に沿って配置される。上バネ14A、14Bは、AF用コイル131A、131Bから離れた領域に配置されることとなり、AF用コイル131A、131Bに通電する際の磁気的な影響が抑制される。
【0065】
上バネ14A、14Bは、それぞれ、レンズホルダー11に固定されるレンズホルダー固定部141、マグネットホルダー12に固定されるマグネットホルダー固定部142、及びレンズホルダー11の移動に伴い弾性変形するアーム部143を有する。上バネ14A、14Bは、レンズホルダー11及びマグネットホルダー12に対して位置決めされ、例えば、接着により固定される。
【0066】
レンズホルダー固定部141は、レンズホルダー11の上バネ固定部112に対応する形状を有している。レンズホルダー固定部141は、レンズホルダー11が光軸方向に移動するときに、レンズホルダー11とともに変位する。マグネットホルダー固定部142は、マグネットホルダー12の上バネ固定部122に対応する形状を有する。アーム部143は、レンズホルダー固定部141とマグネットホルダー固定部142を連結する。アーム部143は、湾曲部(符号略)を有し、レンズホルダー11が移動するときに弾性変形しやすいようになっている。
【0067】
また、レンズホルダー固定部141は、レンズホルダー11の絡げ部116に接続されたAF用コイル131A、131Bの端部と、例えば、半田付けにより接続される。マグネットホルダー固定部142の端部は、給電ワイヤー42と接続される(ワイヤー接続部144)。すなわち、上バネ14A、14Bは、給電ワイヤー42とともに、センサー基板22からAF用コイル131A、131Bへの給電経路を形成する。
【0068】
また、アーム部143には、径方向外側に向けて、ダンパー接続部145が設けられている。ダンパー接続部145は、マグネットホルダー12のダンパー配置部128に配置され、ダンパー材(図示略)を介して、マグネットホルダー12と接続される。上バネ14A、14Bとマグネットホルダー12との間にダンパー材(図示略)を介在させることにより、不要共振(高次の共振モード)の発生が抑制されるので、動作の安定性を確保することができる。ダンパー材は、例えば、ディスペンサーを使用して容易に塗布することができる。ダンパー材としては、例えば、紫外線硬化性のシリコーンゲルを適用できる。
【0069】
補助支持部16は、レンズホルダー11の回転及び傾斜を抑制するための補助部材である。補助支持部16は、例えば、略T字形状を呈し、上バネ14A、14Bとともに、一枚の板金を打ち抜いて成形される。補助支持部16は、一端がレンズホルダー11の補助部材固定部113に固定され、マグネットホルダー12のダンパー配置部128との間に懸架される。補助支持部16は、ダンパー材(図示略)を介して、マグネットホルダー12と接続される。なお、補助支持部16は、上バネ14A、14Bのようにレンズホルダー11を弾性的に支持しているわけではなく、レンズホルダー11を基準状態に復元させる機能は有していない。
【0070】
本実施の形態では、マグネットホルダー12に対してレンズホルダー11が全周にわたって支持されておらず、半周にわたっていわゆる片持ちの状態で支持されている。そのため、レンズホルダー11が光軸方向に移動する際に、傾きや回転が生じやすくなる。補助支持部16を設けることにより、レンズホルダー11が光軸方向に移動する際の傾きや回転が抑制されるので、動作の安定性が向上する。
【0071】
下バネ15A、15Bは、上バネ14A、14Bと同様の構成を有する。下バネ15A、15Bは、マグネットホルダー12(AF固定部)に対して、レンズホルダー11(AF可動部)を弾性的に支持する。下バネ15A、15Bは、例えばベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等で形成される。下バネ15A、15Bは、例えば、一枚の板金を打ち抜いて成形される。本実施の形態では、下バネ15A、15Bは、全体として、L字形状を呈しており、第3の辺及び第4の辺に沿って配置される。
【0072】
下バネ15A、15Bは、それぞれ、レンズホルダー11に固定されるレンズホルダー固定部151、マグネットホルダー12に固定されるマグネットホルダー固定部152、及びレンズホルダー11の移動に伴い弾性変形するアーム部153を有する。下バネ15A、15Bは、レンズホルダー11及びマグネットホルダー12に対して位置決めされ、例えば、接着により固定される。
【0073】
レンズホルダー固定部151は、レンズホルダー11の下バネ固定部114に対応する形状を有している。レンズホルダー固定部151は、レンズホルダー11が光軸方向に移動するときに、レンズホルダー11とともに変位する。
マグネットホルダー固定部152は、マグネットホルダー12の下バネ固定部124に対応する形状を有する。
アーム部153は、レンズホルダー固定部151とマグネットホルダー固定部152を連結する。アーム部153は、湾曲部(符号略)を有し、レンズホルダー11が移動するときに弾性変形しやすいようになっている。
【0074】
レンズ駆動装置1において振れ補正を行う場合には、OIS用コイル31A、31Bへの通電が行われる。具体的には、OIS用駆動部30では、カメラモジュールAの振れが相殺されるように、振れ検出部(図示略、例えばジャイロセンサー)からの検出信号に基づいて、OIS用コイル31A、31Bの通電電流が制御される。このとき、磁気センサー51X、51Yの検出結果をフィードバックすることで、OIS可動部10の揺動を正確に制御することができる。
【0075】
OIS用コイル31A、31Bに通電すると、駆動用マグネット32A、32Bの磁界とOIS用コイル31A、31Bに流れる電流との相互作用により、OIS用コイル31A、31Bにローレンツ力が生じる(フレミング左手の法則)。ローレンツ力の方向は、OIS用コイル31A、31Bの長辺部分における磁界の方向(Z方向)と電流の方向に直交する方向である。OIS用コイル31A、31Bは固定されているので、駆動用マグネット32A、32Bに反力が働く。この反力がOIS用ボイスコイルモーターの駆動力となり、駆動用マグネット32A、32Bが配置されているOIS可動部10がXY平面内で揺動し、振れ補正が行われる。
【0076】
レンズ駆動装置1において自動ピント合わせを行う場合には、AF用コイル131A、131Bに通電が行われる。AF用コイル131A、131Bへの給電は、センサー基板22から給電ワイヤー42及び上バネ14A、14Bを介して行われる。AF用コイル131A、131Bに通電すると、駆動用マグネット32A、32Bの磁界とAF用コイル131A、131Bに流れる電流との相互作用により、AF用コイル131A、131Bにローレンツ力が生じる。ローレンツ力の方向は、駆動用マグネット32A、32Bによる磁界の方向とAF用コイル131A、131Bに流れる電流の方向に直交する方向(Z方向)である。駆動用マグネット32A、32Bは固定されているので、AF用コイル131A、131Bに反力が働く。この反力がAF用ボイスコイルモーターの駆動力となり、AF用コイル131A、131Bが配置されているレンズホルダー11(AF可動部)が光軸方向に移動し、ピント合わせが行われる。
なお、AF駆動部13の駆動力はレンズホルダー11に対して均等に作用しないが、AF支持部14、15の形状やバネ定数を適宜調整することにより、レンズホルダー11を光軸方向に安定した姿勢で移動させることができる。
【0077】
ピント合わせを行わない無通電時には、レンズホルダー11(AF可動部)は、例えばAF支持部14、15によって、無限遠位置とマクロ位置との間に吊られた状態(以下「基準状態」と称する)で保持される。すなわち、レンズホルダー11が、AF支持部14、15によって、マグネットホルダー12(AF固定部)に対して位置決めされた状態で、Z方向両側に変位可能に弾性支持される。ピント合わせを行うときには、レンズホルダー11を基準状態からマクロ位置側へ移動させるか、無限遠位置側に移動させるかに応じて、電流の向きが制御される。また、レンズホルダー11の基準状態からの移動距離(ストローク)に応じて、電流の大きさが制御される。
【0078】
このように、実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、光軸方向から見た平面視形状が矩形形状であり、AF固定部12(第1固定部)と、AF固定部12の径方向内側に配置されるAF可動部11(第1可動部)と、AF固定部12に対してAF可動部11を支持するAF支持部14、15と、AF固定部12に配置される駆動用マグネット31A、31B及び駆動用マグネット31A、31Bに対して径方向に対向するようにAF可動部11に配置されるAF用コイル131A、131Bで構成され、AF固定部12に対してAF可動部11を光軸方向に移動させるAF駆動部13(Z方向駆動部)と、OIS固定部20(第2固定部)と、AF固定部12、AF可動部11、AF支持部14、15及びAF駆動部13を含み、OIS固定部20と光軸方向に離間して配置されるOIS可動部10(第2可動部)と、OIS固定部20に対してOIS可動部10を支持するOIS支持部41(第2支持部)と、OIS固定部20に対してOIS可動部10を光軸方向に直交する光軸直交面内において移動させるOIS駆動部30(XY方向駆動部)と、OIS可動部10の光軸直交面内における移動に追従して変形可能に構成され、OIS固定部20から光軸方向に延在してAF支持部14と接続される給電ワイヤー42(給電部材)と、を備える。
レンズ駆動装置1において、AF駆動部13は、矩形の少なくとも第1の辺に沿って配置され、AF支持部14は、第1の辺とは異なる2辺に沿って配置される2つの上バネ14A、14B(板バネ)を含み、AF用コイル131A、131Bは、給電ワイヤー42及び上バネ14A、14Bを介して給電される。
【0079】
レンズ駆動装置1によれば、矩形を規定する四辺のうちの二辺には駆動用マグネット32A、32Bが配置されていないので、この辺に、他方のレンズ駆動装置1を隣接させることにより、駆動用マグネット32A、32Bの干渉を抑制することができる(
図11参照)。また、4個のレンズ駆動装置1を並置する場合、駆動用マグネット32A、32Bが配置されていない二辺同士を各々隣接させることにより、各駆動用マグネット32A、32Bの干渉を抑制することができる(
図12参照)。また、AF用コイル131A、131Bが配置されている辺とは異なる辺に、給電経路となる上バネ14A、14Bが配置され、AF用コイル131A、131Bと上バネ14A、14Bとが離隔されているので、AF用コイル131A、131Bへの通電時に、上バネ14A、14Bに流れる電流又は上バネ14A、14Bに生じる磁界による、AF駆動部13への悪影響が最小限に抑制される。したがって、複数のレンズ駆動装置1を並置する場合の装置間の磁気干渉を抑制できるとともに、駆動性能の安定化を図ることができる。
【0080】
また、レンズ駆動装置1において、AF駆動部13(Z方向駆動部)は、第1の辺及び第1の辺に隣接する第2の辺に沿って配置され、2つの上バネ14A、14B(板バネ)は、第1の辺及び第2の辺とは異なる2辺に沿って配置される。
これにより、駆動用マグネット32A、32Bを、AF用マグネット及びOIS用マグネットとして兼用することができるとともに、AF駆動部13の駆動力が増大し、駆動性能がさらに安定する。
【0081】
また、レンズ駆動装置1において、2つの上バネ14A、14B(板バネ)は、AF固定部12(第1固定部)に対してAF可動部11(第1可動部)を光軸方向受光側で支持する。これにより、OIS可動部10の移動を妨げることなく、給電ワイヤー42の長さを容易に確保することができる。また、下バネ15A、15Bを利用してAF用コイル131A、131Bに給電する場合に比較して、OIS駆動部30(OIS用コイル31A、32A)に与える磁気的な影響を低減することができる。
【0082】
また、レンズ駆動装置1において、2つの上バネ14A、14B(板バネ)とAF固定部12(第1固定部)との間に、ダンパー材が配置されている。これにより、不要共振(高次の共振モード)の発生が抑制されるので、駆動性能がさらに安定する。
【0083】
また、レンズ駆動装置1は、AF駆動部13(Z方向駆動部)の隣接箇所に配置される補助支持部16を有し、補助支持部16とAF固定部12(第1固定部)との間に、ダンパー材が配置されている。これにより、AF可動部11が光軸方向に移動する際の傾斜及び回転を抑制することができ、駆動性能がさらに安定する。
【0084】
また、レンズ駆動装置1において、駆動用マグネット32A、32Bは、直方体形状の多極マグネットで構成され、AF用コイル131A、131Bは、扁平コイルで構成され、コイル面が駆動用マグネットを向くように配置されている。これにより、駆動用マグネット32A、32Bによって形成される磁気回路の部分のみにAF用コイル131A、131Bが配置されることとなるので、レンズホルダー11の全周に巻線してAF用コイルを形成する場合に比較して駆動効率が向上し、軽量化及び省電力化を図ることができる。
【0085】
また、レンズ駆動装置1において、OIS支持部41(第2支持部)は、エラストマーで形成された線状部材で構成され、矩形の四隅に配置されている。これにより、耐衝撃性が向上し、レンズ駆動装置1の信頼性を向上することができる。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0087】
例えば、実施の形態では、カメラモジュールAを備えるカメラ搭載装置の一例として、カメラ付き携帯端末であるスマートフォンを挙げて説明したが、本発明は、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部を有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器は、例えば自動車を含む。
【0088】
図13A、
図13Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。
図13Aは自動車Vの正面図であり、
図13Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。
図13A、
図13Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0089】
また例えば、AF駆動部13は、第1の辺及び第2の辺に沿って配置されているが、一辺だけに配置されてもよい。
また、実施の形態では、AF支持部14を利用してAF用コイル131A、131Bへの給電を行っているが、AF支持部15を利用して、又はAF支持部14、15を組み合わせてAF用コイル131A、131Bへの給電を行うようにしてもよい。
【0090】
本発明は、レンズ駆動装置1のように、OIS可動部10(AFユニット)とOIS固定部20が光軸方向に離れており、AF用コイル131A、131Bへの給電経路の構成が制限される場合に、極めて有用である。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 レンズ駆動装置
2 レンズ部
10 OIS可動部(第2可動部)
11 AF可動部、レンズホルダー(第1可動部)
12 AF固定部、マグネットホルダー(第1固定部)
13 AF駆動部
131A、131B AF用コイル
14、15 AF支持部
14A、14B 上バネ
15A、15B 下バネ
16 補助支持部
20 OIS固定部(第2固定部)
21 ベース
22 センサー基板
30 OIS駆動部
31A、31B OIS用コイル
32A、32B 駆動用マグネット
41 OIS支持部(第2支持部)
42 給電ワイヤー(給電部材)
M スマートフォン
A カメラモジュール