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特許7376788ゴムの離型性評価方法およびこれに用いる評価用治具とベース台並びに評価用治具
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  • 特許-ゴムの離型性評価方法およびこれに用いる評価用治具とベース台並びに評価用治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ゴムの離型性評価方法およびこれに用いる評価用治具とベース台並びに評価用治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20231101BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G01N19/04 D
G01N3/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020004571
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110706
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】松田 健太
(72)【発明者】
【氏名】光真坊 誠
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152496(JP,A)
【文献】特開2019-049442(JP,A)
【文献】特開昭60-181632(JP,A)
【文献】特開昭60-253515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/04
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体とこの筒状体に挿入される加圧部材とを有する評価用治具を用いたゴムの離型性評価方法であって、
未加硫ゴムを前記筒状体に収容するとともに、前記筒状体の一方開口側にベース台の平坦な対象表面を配置し他方開口側から前記加圧部材を前記筒状体に挿入して、前記対象表面と前記加圧部材の前記対象表面に対向する対向表面との間に前記未加硫ゴムを挟んで、前記ベース台と前記加圧部材との少なくとも一方を互いが近接する方向に移動させて前記対象表面の所定エリアに前記未加硫ゴムを押圧した状態で加熱することにより、前記対象表面に接着せずに密着していて、かつ、前記対象表面よりも前記評価用治具に強く密着している加硫ゴムまたは半加硫ゴムからなる小片の試験体を形成した後に、前記ベース台と前記評価用治具の少なくとも一方を互いが離反する方向に移動させることにより、前記試験体の前記対象表面との接触面全体に対して一度に垂直方向の引張力を付与して前記試験体を前記所定エリアから剥離させる引張工程を行い、前記試験体の形成から前記引張工程の完了までの一連の過程を、前記所定エリアの位置を変えずに同じエリアに設定して繰り返し行って多数の前記試験体を形成し、それぞれの前記試験体に対する前記引張工程後の前記所定エリアの表面状態を把握することを特徴とするゴムの離型性評価方法。
【請求項2】
それぞれの前記試験体に対する前記引張工程時に、前記試験体と前記対象表面との界面の破壊強度を測定する請求項1に記載のゴムの離型性評価方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴムの離型性評価方法に使用される前記評価用治具および前記ベース台であって、
前記対向表面の前記未加硫ゴムに対する接触面積が、前記対象表面の前記未加硫ゴムに対する接触面積よりも大きく設定されていることを特徴とするゴムの離型性評価用治具およびベース台
【請求項4】
前記対向表面に、前記未加硫ゴムが入り込んで加硫されることで前記試験体を把持する把持部を有している請求項3に記載のゴムの離型性評価用治具およびベース台
【請求項5】
前記筒状体の内周面に、前記未加硫ゴムが入り込んで加硫されることで前記試験体を把持する把持部を有している請求項3または4に記載のゴムの離型性評価用治具およびベース台
【請求項6】
請求項1または2に記載のゴムの離型性評価方法に使用される前記評価用治具であって、
前記筒状体の内周面に、前記未加硫ゴムが入り込んで加硫されることで前記試験体を把持する把持部を有していることを特徴とするゴムの離型性評価用治具。
【請求項7】
請求項1または2に記載のゴムの離型性評価方法に使用される前記評価用治具であって、
前記対向表面または前記筒状体の内周面の前記未加硫ゴムとの接触範囲に、接着層または摩擦増加処理層を有していることを特徴とするゴムの離型性評価用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの離型性評価方法およびこれに用いる評価用治具とベース台並びに評価用治具に関し、さらに詳しくは、ゴムを対象表面からより確実に剥離させる引張工程を繰り返し行うことで、ゴムを繰り返し加硫用モールド等から離型させる際の離型性の経時変化を、簡便で効率的に把握できるゴムの離型性評価方法およびこれに用いる評価用治具とベース台並びに評価用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ等のゴム製品は、未加硫ゴムを加硫用モールドの中で加硫して製造される。加硫後に製造されたゴム製品を加硫用モールドから取り出す際に、ゴム製品(加硫ゴム)が加硫用モールドから離型し難いと、ゴムの欠け等の不具合が発生する。このような不具合は、ゴム製品の外観不良につながる。或いは、ゴムが欠けて加硫用モールドのベントホールに詰まった状態になると、この詰まりを解消する作業が必要となるので生産性の低下につながる。
【0003】
加硫用モールドは繰り返し使用されることで、成形面に汚れが堆積するため、これに伴って離型性も変化する。汚れた成形面で加硫を行うと、ゴム製品の品質に影響が生じるため、成形面は所定期間または所定回数の加硫を行った後に洗浄される。それ故、この離型性の経時変化を把握することは、ゴム製品の品質確保や加硫用モールドの適切な洗浄タイミングを決定するために有益である。また、加硫用モールド以外にも例えば加硫用ブラダなどに対する加硫ゴムの離型性(剥離性)の経時変化を把握することも有益である。
【0004】
加硫ゴムの離型性を評価する技術ではないが、例えば、ゴムと金属の複合体の製造に適した金型汚染性の低い加硫接着剤を選別する評価方法が提案されている(特許文献1参照)。この評価方法では、所定の接着処理をした金属基板の表面に未加硫ゴムを加硫接着させた後、加硫したゴムを金属基板の表面に対して90°の角度でピーリングさせて剥離強度を測定する。即ち、この評価方法は、加硫ゴムと金属との接着性を評価するものであり、接着せずに密着しているゴムと金属との離型性を評価する方法ではなく、離型性の経時変化を評価する方法でもない。加硫ゴムの接着性を評価するには、このように加硫ゴムを金属表面から90°の角度でピーリングさせる際の剥離強度を測定することが多い。
【0005】
実際の加硫用モールドで加硫した加硫ゴムを、その加硫用モールドから離型させる試験を繰り返し行って、離型性の変化を把握する場合は、多大な時間およびコストを要する。それ故、加硫用モールド等に接着せずに密着しているゴムを離型させる際の離型性(剥離性)の経時変化を把握するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-243629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ゴムを対象表面からより確実に剥離させる引張工程を繰り返し行うことで、加硫ゴムを繰り返し加硫用モールド等から離型させる際の離型性の経時変化を、簡便で効率的に把握できるゴムの離型性評価方法およびこれに用いる評価用治具とベース台並びに評価用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のゴムの離型性評価方法は、筒状体とこの筒状体に挿入される加圧部材とを有する評価用治具を用いたゴムの離型性評価方法であって、
未加硫ゴムを前記筒状体に収容するとともに、前記筒状体の一方開口側にベース台の平坦な対象表面を配置し他方開口側から前記加圧部材を前記筒状体に挿入して、前記対象表面と前記加圧部材の前記対象表面に対向する対向表面との間に前記未加硫ゴムを挟んで、前記ベース台と前記加圧部材との少なくとも一方を互いが近接する方向に移動させて前記対象表面の所定エリアに前記未加硫ゴムを押圧した状態で加熱することにより、前記対象表面に接着せずに密着していて、かつ、前記対象表面よりも前記評価用治具に強く密着している加硫ゴムまたは半加硫ゴムからなる小片の試験体を形成した後に、前記ベース台と前記評価用治具の少なくとも一方を互いが離反する方向に移動させることにより、前記試験体の前記対象表面との接触面全体に対して一度に垂直方向の引張力を付与して前記試験体を前記所定エリアから剥離させる引張工程を行い、前記試験体の形成から前記引張工程の完了までの一連の過程を、前記所定エリアの位置を変えずに同じエリアに設定して繰り返し行って多数の前記試験体を形成し、それぞれの前記試験体に対する前記引張工程後の前記所定エリアの表面状態を把握することを特徴とする。
【0009】
本発明のゴムの離型性評価用治具およびベース台は、上記のゴムの離型性評価方法に使用される前記評価用治具および前記ベース台であって、前記対向表面の前記未加硫ゴムに対する接触面積が、前記対象表面の前記未加硫ゴムに対する接触面積よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の別のゴムの離型性評価用治具は、上記のゴムの離型性評価方法に使用される前記評価用治具であって、前記筒状体の内周面に、前記未加硫ゴムが入り込んで加硫されることで前記試験体を把持する把持部を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに別のゴムの離型性評価用治具は、上記のゴムの離型性評価方法に使用される前記評価用治具であって、前記対向表面または前記筒状体の内周面の前記未加硫ゴムとの接触範囲に、接着層または摩擦増加処理層を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴムの離型性評価方法によれば、前記対象表面と前記対向表面との間に前記未加硫ゴムを挟んで、前記筒状体の中で前記未加硫ゴムを加熱することで安定して前記試験体を形成できる。成形した前記試験体の前記対象表面との接触面全体に対して一度に垂直方向の引張力を付与して前記試験体を前記所定エリアから剥離させる引張工程を行うことで、実際のゴム製品の製造工程においてゴムが加硫用モールドから最も離型し難い条件に近似させている。前記試験体は、前記対象表面よりも前記評価用治具に強く密着しているので、前記引張工程では前記試験体を前記所定エリアからより確実に剥離させることができる。
【0013】
そして、前記試験体の形成から前記引張工程の完了までの一連の過程を、前記所定エリアの位置を変えずに同じエリアに設定して繰り返し行って多数の前記試験体を形成することで、ゴムを繰り返し加硫用モールドから離型させる実際の製造工程を簡便に再現できる。多数の前記試験体に対するそれぞれの前記引張工程後に、前記所定エリアの表面状態を把握することで、効率的にゴムの離型性の経時変化を把握できる。
【0014】
本発明のゴムの離型性評価用治具およびベース台によれば、前記対向表面の前記未加硫ゴムに対する接触面積を、前記対象表面の前記未加硫ゴムに対する接触面積よりも大きく設定することで、前記試験体を前記所定エリアから確実に剥離させ易くなる。また、本発明のゴムの離型性評価用治具によれば、前記筒状体の内周面に、前記未加硫ゴムが入り込んで加硫されることで前記試験体を把持する把持部を有すると、前記試験体を前記所定エリアから確実に剥離させ易くなる。或いは、前記対向表面または前記筒状体の内周面の前記未加硫ゴムとの接触範囲に、接着層または摩擦増加処理層を有すると、前記試験体を前記所定エリアから確実に剥離させ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ゴムの離型性評価装置を正面視で例示する説明図である。
図2図1の評価装置の一部を平面視で例示する説明図である。
図3】準備位置のホルダに保持されている評価用治具を拡大して縦断面視で例示する説明図である。
図4】未加硫ゴムを評価用治具とともに準備位置のホルダから加熱を行うベース台に移動させる工程を正面視で例示する説明図である。
図5】未加硫ゴムを加熱して試験体を形成している工程を縦断面視で例示する説明図である。
図6】形成された試験体に引張力を付与する引張工程を縦断面視で例示する説明図である。
図7】別の評価用治具を用いて形成された試験体の下端部を縦断面視で例示する説明図である。
図8】さらに別の評価用治具を用いて形成された試験体の下端部を縦断面視で例示する説明図である。
図9】さらに別の評価用治具を用いて形成された試験体の下端部を縦断面視で例示する説明図である。
図10】引張工程後の対象表面の所定エリアの表面状態を把握する工程と、試験体を評価用治具とともに保存位置のホルダに移動させる工程を正面視で例示する説明図である。
図11】保持アームを準備位置のホルダに移動させる工程を正面視で例示する説明図である。
図12】対象表面の所定エリアの表面状態の経時変化を模式的に例示する説明図である。
図13】対象表面の所定エリアの表面の汚れの堆積量の経時変化を例示するグラフ図である。
図14】引張工程におけるゴムと対象表面との界面の破壊強度の経時変化を例示するグラフ図である。
図15】別の離型性評価装置の一部を縦断面視で例示する説明図である。
図16図15の未加硫ゴムを加熱して試験体を形成している工程を縦断面視で例示する説明図である。
図17図16の試験体に引張力を付与する引張工程を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のゴムの離型性評価方法およびこの評価方法に用いる離型性評価用治具とベース台並びに離型性評価用治具を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0017】
本発明のゴムの離型性評価方法には、図1図2に例示するゴムの離型性評価装置1(以下、評価装置1という)が使用される。この評価装置1は、本発明の離型性評価用治具7(以下、評価用治具7という)を備えている。そして、評価用治具7を用いて、ベース台10の平坦な対象表面10aの所定エリアで、この所定エリアの位置を変えることなく、未加硫ゴム11Aを繰り返し加熱して、加硫ゴムからなる多数の小片の試験体11を形成する。また、評価用治具7を用いて、それぞれの試験体11を対象表面10aの所定エリアから剥離させる引張工程を行う。そして、それぞれの試験体11の引張工程後に対象表面10aの所定エリアに付着した汚れXの範囲や量などを表面把握手段15によって取得して表面状態を把握する。本発明では、試験体11は完全に加硫されているものに限らず、完全に加硫されていない状態(いわゆる半加硫の状態)のゴムを含む。即ち、試験体11は、後述する引張工程で引張力を付与した際に、過大に塑性変形する流動性が高い状態ではなく弾性変形が支配的になる状態のゴムであればよい。尚、図2にはアクチュエータ3、13、測定器6、表面把握手段15などを省略して図示していない。
【0018】
この評価装置1は、評価用治具7の他に、平坦な対象表面10aを有するベース台10と、未加硫ゴム11Aを加熱して試験体11を形成する加熱機構12と、試験体11に対して引張工程を行う引張機構2と、対象表面10aの所定エリアの表面状態を把握する表面把握手段15と、搬送機構4とを備えている。この実施形態では対象表面10aを金属表面にしている。さらに評価装置1は、引張工程時に、試験体11と対象表面10a(所定エリア)との界面の破壊強度Fを測定する測定器6と制御部16と演算部17とを有している。制御部16および演算部17としてはコンピュータが用いられる。
【0019】
この実施形態では、ベース台10の上に着脱自在に連結される保持ブロック10bを備えている。保持ブロック10bは上下に延在する貫通穴10cを有している。このベース台10と保持ブロック10bが加硫用モールドとして機能する。
【0020】
ベース台10が設置された位置から離間した所定の準備位置と所定の保存位置にはそれぞれホルダ5A、5Bが設置されている。ホルダ5A、5Bには多数の保持穴5hが形成されていて、一方のホルダ5Aには未加硫ゴム11Aが保持され、他方のホルダ5Bには引張工程後の試験体11が保持される。
【0021】
この実施形態では図3に例示する評価用治具7が使用されている。評価用治具7は、筒状体9と、筒状体9に挿入される加圧部材8とを有している。未加硫ゴム11Aは円筒状の筒状体9に収容されている。筒状体9の下端開口9b側に未加硫ゴム11Aが配置され、上端開口9a側からは円柱状の加圧部材8が挿入されている。筒状体9の上端部には周壁を貫通する係合部9cが形成されている。係合部9cは筒状体9の周壁を貫通せずに溝や窪みでもよい。加圧部材8の外周面は筒状体9の内周面に密着するように形成されている。
【0022】
筒状体9は円筒形状に限らず角筒形状など他の形状にすることもできる。加圧部材8は円柱状に限らず、筒状体9の形状に合わせた他の形状にすることもできる。加圧部材8の下端面が未加硫ゴム11Aに対向する対向表面8aになっている。対向表面8aは多数の凹凸を有することにより、対向する対象表面10aよりも表面積が大きくなっている。即ち、対向表面8aは、未加硫ゴム11Aとの接触面積が意図的に大きく設定されている。
【0023】
未加硫ゴム11Aの大きさは例えば、外径、高さがそれぞれ数cm(縦、横、高さの寸法が数cm)程度である。尚、未加硫ゴム11Aを加熱して形成される試験体11も未加硫ゴム11Aと概ね同じ大きさである。筒状体9の下端開口9bから未加硫ゴム11Aを挿入し、上端開口9aから加圧部材8を挿入することで図3の状態になる。未加硫ゴム11Aはその粘着性によって筒状体9の内周面および対向表面8aに付着する。
【0024】
未加硫ゴム11Aが収容された図3に例示する評価用治具7は、ホルダ5Aの保持穴5hに筒状体9が挿入されて立設された状態になる。ホルダ5Aにはこの評価用治具7が多数本、保持される。尚、保持穴5hの底面には、未加硫ゴム11Aの付着を防止する材料やコーティングを採用するとよい。
【0025】
引張工程後の試験体11が収容されている評価用治具7は、ホルダ5Bの保持穴5hに筒状体9が挿入されて立設された状態になる。ホルダ5Bにはこの評価用治具7が多数本、保持される。加硫ゴム(試験体11)の場合は粘着性がないので、ホルダ5Bの保持穴5hの底面には、特別な材料やコーティングを採用する必要はない。
【0026】
搬送機構4は、未加硫ゴム11Aが収容された評価用治具7を所定の準備位置(ホルダ5A)から対象表面10aの所定エリアに相対移動させ、試験体11が収容された評価用治具7をこの所定エリアから所定の保存位置(ホルダ5B)に相対移動させる。搬送機構4は、直交して水平方向に延在するガイドレール4a、4bと移動体4cとを有している。移動体4cは、一方のガイドレール4aに沿って移動し、他方のガイドレール4bは移動体4cに対してガイドレール4bの延在方向に移動し、これらの移動はサーボモータ等によって駆動される。
【0027】
この実施形態では、後述するアクチュエータ3が他方のガイドレール4bに連結されて吊持されている。搬送機構4によってアクチュエータ3を任意の平面位置に移動させることができる。搬送機構4の動作は制御部16により制御される。搬送機構4はこの実施形態に例示する構成に限らず、種々の構成を採用することができる。例えば、ロボットアームなどを搬送機構4として用いることができる。
【0028】
加熱機構12は、評価用治具7に収容されている未加硫ゴム11Aを対象表面10aの所定エリアに押圧した状態で加熱して試験体11を形成する。加熱機構12は、アクチュエータ13と加熱機14とを有している。アクチュエータ13のロッド13aは上下に進退し、下方に進出したロッド13aは加圧部材8の上端面を押圧する。アクチュエータ13としては、油圧シリンダ、エアシリンダ、モータにより作動するロッド等など、種々の手段を用いることができる。アクチュエータ13の動作は制御部16により制御される。
【0029】
加熱機14は、ベース台10および保持ブロック10bを加熱する。加熱機14による加熱には、電気やスチームなど種々の手段を用いることができる。加熱機14により、未加硫ゴム11Aが接触するベース台10の対象表面10a、加圧部材8の対向表面8aおよび筒状体9の内周面は、未加硫ゴム11Aを加硫または半加硫にするための所定の加熱温度に加熱される。加熱機14は制御部16により制御される。
【0030】
引張機構2は、評価用治具7に収容されている試験体11を対象表面10aから引き剥がそうとする引張力を試験体11に付与する。具体的には引張機構2は、試験体11の対象表面10aとの接触面全体に対して、一度に垂直方向の引張力を付与する。本発明での垂直方向とは対象表面10aに対して法線方向であるが、実質的には対象表面10aに対して90°±2°の方向であり、より好ましくは90°±1°の方向であればよい。
【0031】
引張機構2は、アクチュエータ3と、このアクチュエータ3のロッド3aによって上下移動する保持アーム3cとを有している。この実施形態では、ロッド3aの下方に上下間隔をあけてプレート3bが配置されていて、上側のプレート3bにロッド3aの下端が接続されている。下側のプレート3bには保持アーム3cが取り付けられている。上側のプレート3bと下側のプレート3bの間には測定器6とアクチュエータ13が挟持されている。したがって、保持アーム3cは上側のプレート3bと下側のプレート3bに挟まれた測定器6とアクチュエータ13を介して、ロッド3aに接続されている。アクチュエータ13のロッド13aは下側のプレート3bを貫通して上下に進退可能になっている。
【0032】
2本の保持アーム3cが対向位置に配置されていて、それぞれの保持アーム3cは互いが近接および離反する方向に移動可能になっている。保持アーム3cは2本に限らず複数本であればよく、3本、4本などにすることもできる。それぞれの保持アーム3cは、アクチュエータ3の軸芯を中心とした円の周方向に等間隔に配置するとよい。アクチュエータ3および保持アーム3cの動作は制御部16により制御される。
【0033】
測定器6は、引張機構2によって引張力が付与された試験体11の対象表面10aとの界面の破壊強度Fを測定する。測定器6としては、例えばロードセルを用いることができる。試験体11の対象表面10aとの界面の破壊強度Fとは、基本的には、対象表面10aに密着している試験体11が対象表面10aから剥がれる時の引張強度(=引張力/試験体11と対象表面10aの接触面積)である。試験体11が対象表面10aから剥がれる前に試験体11が破損した場合は、この破壊強度Fは、試験体11が破損した時の引張強度よりも大きいと評価する、或いは、試験体11が破損した時の引張強度と同じであると評価することもできる。
【0034】
測定器6により測定されたデータは演算部17に入力されて、演算部17により上述の破壊強度Fが算出される。この実施形態では、測定器6は、上側のプレート3bとアクチュエータ13とに接続されているが、上述した破壊強度Fを測定できれば他の位置に設置することもできる。
【0035】
表面把握手段15としてこの実施形態では、画像データを取得するデジタルカメラが使用されている。表面把握手段15としては、その他に例えば対象表面10aに付着した汚れXの厚さを検知する高さセンサなどを用いることができる。表面把握手段15によって取得されたデータは演算部17に入力される。
【0036】
尚、制御部16と制御部16に制御される機器とは有線または無線によって通信可能に接続され、演算部17と演算部17にデータを入力する機器とは有線または無線によって通信可能に接続されている。
【0037】
対象表面10a(ベース台10)の材質は、実際の加硫用モールドと同じ(同等)にすることもできるが、例えば、予め評価指標とする基準材質を設定して、その基準材質を使用すればよい。対向表面8a(加圧部材8)および筒状体9の材質は、対象表面10aと同じにすることも異ならせることもできる。対象表面10aとしてはその他に、加硫用モールドの成形面を被覆する様々なコーティング剤を用いることもできる。或いは、加硫用ブラダに用いられるような様々な加硫ゴムを対象表面10aとして用いることもできる。
【0038】
以下、本発明の加硫ゴムの離型性評価方法の手順の一例を説明する。尚、試験体9が半加硫ゴムの場合も評価する方法の手順は同様である。
【0039】
図1図2に例示するように、未加硫ゴム11Aが収容された評価用治具7を準備してホルダ5Aに立設させる。多数の試験体11を形成するので、未加硫ゴム11Aが収容された評価用治具7を多数本、予めホルダ5Aに保持させておくとよい。
【0040】
次いで、移動機構4により保持アーム3cをホルダ5Aに立設されている評価用治具7の上に移動させた後、アクチュエータ3のロッド3aを下方に進出させて保持アーム3cを筒状体9の位置まで下方移動させる。次いで、保持アーム3cを互いに近接させる方向に移動させて、それぞれの保持アーム3cを筒状体9の係合部9cに係合させる。
【0041】
次いで、図4に例示するように、アクチュエータ3のロッド3aを上方に後退させて保持アーム3cを係合させた評価用治具7をホルダ5Aから抜き取る。また、移動機構4によりアクチュエータ3をこの評価用治具7とともにベース台10に向かって移動させる。移動させた評価用治具7を保持ブロック10bの貫通穴10cの上に位置決めした後、アクチュエータ3のロッド3aを下方に進出させて評価用治具7を貫通穴10cに挿入して、未加硫ゴム11Aを対象表面10aの所定エリアに載置する。ベース台10および保持ブロック10bは加熱機14によって所定の加熱温度に加熱しておく。加熱温度は任意に設定できるが例えば40℃以上に設定され、タイヤの加硫条件を想定する場合は150℃~200℃程度に設定される。
【0042】
次いで、図5に例示するように、アクチュエータ13のロッド13aを下方に進出させて加圧部材8の上端面を押圧する。これにより、未加硫ゴム11Aをベース台10と加圧部材8との間で挟んでベース台10と加圧部材8とを相対的に近接させることで未加硫ゴム11Aを押圧した状態で加熱する。未加硫ゴム11Aの大きさによって異なるが、未加硫ゴム11Aの加熱時間は例えば10分以内である。
【0043】
所定の加熱時間が経過した後は、アクチュエータ13のロッド13aを上方に後退させて加圧部材8の上端面に対する押圧を解除する。未加硫ゴム11Aの加熱中は、保持アーム3cと筒状体9の係合部9cとを係合させた状態にしておく。これにより、未加硫ゴム11Aをより安定して加熱することができる。
【0044】
未加硫ゴム11Aを加熱することで、対象表面10aに接着せずに密着している加硫ゴムからなる小片の試験体11が形成される。この試験体11は、加圧部材8の対向表面8aおよび筒状体9の内周面と接着せずに密着している。この実施形態では、対向表面8aが対象表面10aに比して表面積が大きく設定されているので、試験体11は対象表面10aよりも対向表面8aに強く密着している。また、試験体11と筒状体9の内周面との接触面積が試験体11と対象表面10aとの接触面積よりも大きいので、試験体11は対象表面10aよりも筒状体9に強く密着している。
【0045】
次いで、図6に例示するように、アクチュエータ3のロッド3aを上方に後退させて保持アーム3cを上方移動させる。これにより、評価用治具7とともに試験体11を上方に引っ張る引張工程を行う。
【0046】
試験体11に付与する引張力が徐々に大きくなると、対象表面10aと試験体11との界面が破壊する(分離する)ので、この時の引張力を測定器6により測定する。この引張力を対象表面10aと試験体11との接触面積で除す演算処理を演算部17によって行うことにより算出した値を、試験体11と対象表面10aとの界面の破壊強度Fとする。
【0047】
即ち、試験体11とベース台10の少なくとも一方を互いが離反する方向に移動させることにより、試験体11の対象表面10aとの接触面全体に対して一度に垂直方向の引張力を付与し、試験体11を対象表面10aの所定エリアから剥離させる。加硫ゴムからなる試験体11は、対象表面10aよりも評価用治具7(対向表面8aや筒状体9の内周面)に強く密着しているので、基本的に試験体11は対象表面10aで剥離される。
【0048】
この実施形態では保持アーム3cを係合部9cに係合させて筒状体9を上方移動させることで試験体11に引張力を付与している。或いは、加圧部材8の上端部に係合部を設けておき、加圧部材8の係合部および筒状体9の係合部9cに保持アーム3cを係合させて加圧部材8を直接、上方移動させて試験体11に引張力を付与することもできる。
【0049】
試験体11の対象表面10aとの接触面全体に対して一度に垂直方向の引張力を付与することで、実際のゴム製品の製造工程において加硫ゴムが加硫用モールドから最も離型し難い条件に近似させている。加硫ゴムをピーリングさせて接着力を測定する試験では、加硫ゴムと対象表面との剥離角度が不安定になり易いため、ばらつきを抑えて接着力を測定することが困難になる。一方、本発明では、試験体11(加硫ゴム)をピーリングするのではなく、上述したように試験体11に引張力を付与する。そのため、試験体11と対象表面10aとの界面の破壊強度を、ばらつきを抑えて安定して測定することが可能になっている。
【0050】
そして、この評価用治具7では、対向表面8aの未加硫ゴム11Aに対する接触面積が、対象表面10aの未加硫ゴム11Aに対する接触面積よりも大きく設定されている。そのため、引張工程では、試験体11を評価用治具7から剥離させることなく、対象表面10aの所定エリアから確実に剥離させ易くなる。また、筒状体9を用いることで、試験体11を安定して形成することができ、引張工程も安定して行うことができる。保持ブロック10bは任意で設けることができるが、保持ブロック10bを用いると、評価用治具7が安定して保持されるので、試験体11をより安定して形成することができ、引張工程もより安定して行うことができる。
【0051】
図7に例示するように、加圧部材8の対向表面8aに、未加硫ゴム11Aが入り込んで加硫されることで試験体11を把持する把持部8bを有する仕様にすることもできる。図7(A)では縦断面視で矢印状の把持部8b、図7(B)では縦断面視でL字状の把持部8bが形成されている。引張工程では、把持部8bで加硫されたゴムが把持部8bに引っ掛かった状態になる。即ち、試験体11が物理的に対向表面8aに係合して把持されるので、試験体11を評価用治具7から剥離させることなく、対象表面10aの所定エリアから確実に剥離させ易くなる。把持部8bは、試験体11に引張力を付与した際に、試験体11が対向表面8aに引っ掛かった状態になる形状であればよい。
【0052】
図8に例示するように、筒状体9の内周面に、未加硫ゴム11Aが入り込んで加硫されることで試験体11を把持する把持部9dを有する仕様にすることもできる。図8(A)では縦断面視で円弧状の把持部9d、図8(B)では山谷状(ジグザグ状)の把持部9d、図8(C)では縦断面視でL字状の把持部9dが形成されている。把持部9dで加硫されたゴムが把持部9dに引っ掛かった状態になる。即ち、試験体11が物理的に筒状体9の内周面に係合して把持されるので、試験体11を評価用治具7から剥離させることなく、対象表面10aの所定エリアから確実に剥離させ易くなっている。把持部9dは、試験体11に引張力を付与した際に、試験体11が筒状体9の内周面に引っ掛かった状態になる形状であればよい。
【0053】
図9(A)に例示するように、加圧部材8の対向表面8aに接着層8cまたは摩擦増加処理層8dを有する仕様にすることもできる。接着層8cには対向表面8aと試験体11(加硫ゴム)とを接合できる接着剤を使用する。摩擦増加処理層8dは、対向表面8aと試験体11(加硫ゴム)との間の摩擦係数を増加させる。摩擦増加処理層8dとして例えば、酸化アルミニウム粉末が含有された表面処理剤を塗布する。接着層8cによって、対向表面8aと試験体11が強固に接合される。また、摩擦増加処理層8dによって、対向表面8aと試験体11とがより剥離し難くなる。これに伴い、試験体11を評価用治具7から剥離させることなく、対象表面10aの所定エリアから確実に剥離させ易くなる。
【0054】
図9(B)に例示するように、筒状体8の内周面の未加硫ゴム11Aとの接触範囲に接着層9eまたは摩擦増加処理層9fを有する仕様にすることもできる。接着層9eには筒状体9の内周面と試験体11(加硫ゴム)とを接合できる接着剤を使用する。摩擦増加処理層9fは、筒状体9の内周面と試験体11(加硫ゴム)との間の摩擦係数を増加させる。摩擦増加処理層9fとして例えば、酸化アルミニウム粉末などが含有された表面処理剤を塗布する。接着層9eによって、筒状体9の内周面と試験体11が強固に接合される。また、摩擦増加処理層9fによって、筒状体9の内周面と試験体11とがより剥離し難くなる。これに伴い、試験体11を評価用治具7から剥離させることなく、対象表面10aの所定エリアから確実に剥離させ易くなる。
【0055】
引張工程の完了後は図10に例示するように、評価用治具7とともに上方移動させて貫通穴10cから引き抜いた試験体11を、移動機構4によってホルダ5Bに向かって移動させる。評価用治具7をホルダ5Bの保持穴5hの上に位置決めした後、アクチュエータ3のロッド3aを下方に進出させて評価用治具7を保持穴5hに挿入させる。これにより、評価用治具7を保持穴5hに立設させて、試験体11をホルダ5Bによって保持する。
【0056】
また、この試験体11を貫通穴10cから上方に引き抜いた後に、表面把握手段15を適宜の手段で貫通穴10cの上方位置に位置決めする。その後、対象表面10aの所定エリアの表面の状態を表面把握手段15により把握する。
【0057】
試験体11を保存位置のホルダ5Bに移動させた移動機構4は、図11に例示するように、保持アーム3cを準備位置のホルダ5Aに向かって移動させる。その後、新たに加熱する未加硫ゴム11Aが収容されている評価用治具7の筒状体9と保持アーム3cとを係合させて、上述した試験体11の形成および形成した試験体11に対する上述した引張工程を繰り返し行う。
【0058】
即ち、上述した試験体11の形成から引張工程の完了までの一連の過程を、所定エリアの位置を変えずに同じエリアに設定して繰り返し行って多数の試験体11を形成する。この一連の過程を連続的に繰り返し行うことで、加硫ゴムを繰り返し加硫用モールドから離型させる実際の製造工程を簡便に再現できる。
【0059】
多数の試験体11を形成することにより、その対象表面10aにはゴム成分やゴムに含まれている配合剤の成分などが徐々に付着して汚れXとして堆積する。したがって、それぞれの試験体11に対する引張工程後の対象表面10aの所定エリアの表面状態を表面把握手段15によって把握すると、図12に例示するようにその表面状態は図12(A)、(B)、(C)の順に変化する。即ち、汚れXの範囲が徐々に広くなる(汚れXの堆積量Vが徐々に多くなる)。
【0060】
この汚れXの堆積量Vの経時変化を演算部17により演算することで、図13に例示する結果を把握することができる。汚れXの堆積を短時間で促進させるので、試験体11を形成しているゴムの離型性の経時変化を効率的に把握できる。汚れXの堆積量Vの経時変化の特性は、ゴム種(配合成分)や加硫条件などによって異なるので、これらの要因との相関関係を把握することで、ゴム製品の加硫故障の発生防止や加硫用モールドの適切な洗浄タイミングを決定するには有利になる。また、離型性を改善したゴム組成物の開発業務などの迅速化に大きく寄与する。
【0061】
また、上述した破壊強度Fの経時変化を演算部17により演算することで、図14に例示する結果を把握することができる。この破壊強度Fは、汚れXの堆積量Vが増加するに連れて大きくなる傾向があるので、この破壊強度Fの大きさの経時変化に基づいて、試験体11の離型性の経時変化を評価することもできる。
【0062】
加硫回数が少ない初期では、破壊強度Fが大きい程、試験体11の離型性が悪く、破壊強度Fが小さい程、離型性が良好であると判断できる。一方、加硫回数が増加しても破壊強度Fの変化(増加)が少ない場合は、汚れXの堆積量Vの経時変化が少なく、離型性の変化が少ないと評価できる。加硫回数が増加すると破壊強度Fの変化(増加)が過大になる場合は、汚れXの堆積量Vの経時変化が大きく、離型性の変化が大きいと評価できる。
【0063】
試験体11に引張力を付与する速度は、実際に加硫したゴム製品から加硫用モールドを離型させる際の実速度と同じ(同等)にすることもできるが、例えば、この実速度以下の範囲で評価指標とする基準速度を設定すればよい。
【0064】
図15に例示する評価装置1は、上述した評価装置1とは異なり、ベース台10と保持アーム3cとを係合させて、ホルダ5Aに保持されている未加硫ゴム11Aに対してベース台10を移動させる。即ち、未加硫ゴム11Aは移動させずに、ベース台10をそれぞれの未加硫ゴム11Aの位置まで移動させて、試験体11の形成および形成した試験体11のそれぞれに対して引張工程を行う。その他の手順は概ね、先の実施形態と同じである。
【0065】
ホルダ5Aに立設されている評価用治具7の筒状体9の下端開口9b側から加圧部材8が挿入されていて、上端開口9a側に未加硫ゴム11Aが収容されている。未加硫ゴム11Aは上端開口9aから上方に突出しない状態で筒状体9に収容されている。筒状体9および加圧部材8はホルダ5Aに螺合させる等によって着脱自在に固定する。ベース台10は加熱機14によって所定の加熱温度に加熱される。
【0066】
試験体11を形成するには、図16に例示するように、アクチュエータ13のロッド13aを下方に進出させて、ベース台10を下方に押圧する。これに伴い、ベース台10の対象表面10aによって未加硫ゴム11Aを押圧する。これにより、未加硫ゴム11Aをベース台10と加圧部材8との間で挟んで未加硫ゴム11Aを押圧した状態で加熱する。
【0067】
試験体11が形成された後は、図17に例示するように、ロッド13aを上方に後退させて、ベース台10に対する押圧を解除する。そして、アクチュエータ3のロッド3aを上方に後退させて、保持アーム3cによってベース台10を上方に移動させる。このベース台10の上方移動に伴って、試験体11の対象表面10aとの接触面全体に対して一度に垂直方向の引張力を付与し、試験体11を対象表面10aの所定エリアから剥離させる。このようにして引張工程を行う。試験体11の形成から引張工程の完了までの一連の過程を、所定エリアの位置を変えずに同じエリアに設定して繰り返し行って多数の試験体11を形成する。
【0068】
そして、それぞれの試験体11に対する引張工程後の対象表面10aの所定エリアの表面状態を表面把握手段15により把握する。また、それぞれの試験体11に対する引張工程時に、試験体11と対象表面10aとの界面の破壊強度Fを測定器6により測定する。
【符号の説明】
【0069】
1 評価装置
2 引張機構
3 アクチュエータ
3a ロッド
3b プレート
3c 保持アーム
4 搬送機構
4a、4b ガイドレール
4c 移動体
5A、5B ホルダ
5h 保持穴
6 測定器(ロードセル)
7 評価用治具
8 加圧部材
8a 対向表面
8b 把持部
8c 接着層
8d 摩擦増加処理層
9 筒状体
9a 上端開口
9b 下端開口
9c 係合部
9d 把持部
9e 接着層
9f 摩擦係数増加処理層
10 ベース台
10a 平坦な対象表面
10b 保持ブロック
10c 貫通穴
11 試験体
11A 未加硫ゴム
12 加熱機構
13 アクチュエータ
13a ロッド
14 加熱機
15 表面把握手段
16 制御部
17 演算部
X 汚れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17