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特許7376817流体搬送装置、液体冷却装置及び冷凍装置、並びに流体搬送装置の状態検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】流体搬送装置、液体冷却装置及び冷凍装置、並びに流体搬送装置の状態検出方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20231101BHJP
   F04D 27/02 20060101ALI20231101BHJP
   F24F 11/39 20180101ALI20231101BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F04D27/00 H
F04D27/00 D
F04D27/00 101B
F04D27/02 B
F24F11/39
B01D46/42 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022057307
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148997
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進平
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】荒木 剛
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓郎
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-285348(JP,A)
【文献】特開平06-080019(JP,A)
【文献】特開平05-076713(JP,A)
【文献】特開平05-332590(JP,A)
【文献】特開2004-325017(JP,A)
【文献】特開2010-091230(JP,A)
【文献】特開平05-223312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
F25B 49/02
F24F 11/39
F04D 27/02
B01D 46/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、
前記流路に沿って前記ファンにより搬送される前記流体の擾乱により前記ファンの羽根が前記流体から受ける力の変動に相関する現象であって前記擾乱により起こっている現象を監視し、前記現象の推移に基づいて前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する検出部と、を備える、流体搬送装置。
【請求項2】
前記検出部により検出される前記流体の状態は、前記流路内に発生する圧力損失の大きさに相関する量を含む、請求項1に記載の流体搬送装置。
【請求項3】
前記検出部により検出される前記構造物の状態は、前記構造物の目詰まりを含む、請求項1又は2に記載の流体搬送装置。
【請求項4】
前記現象は、前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の変化である、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体搬送装置。
【請求項5】
前記現象は、前記ファンの回転数の変化である、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体搬送装置。
【請求項6】
前記現象は、前記ファンの回転運動により発生する音又は振動の変化である、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体搬送装置。
【請求項7】
前記現象は、前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の周波数スペクトルの変化である、請求項4に記載の流体搬送装置。
【請求項8】
前記周波数スペクトルの変化は、スペクトル強度が最も大きい周波数の変動に伴う変化である、請求項7に記載の流体搬送装置。
【請求項9】
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化である、請求項7又は8に記載の流体搬送装置。
【請求項10】
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量である、請求項9に記載の流体搬送装置。
【請求項11】
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量であり、
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×前記ファンの羽根の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化である、請求項7又は8に記載の流体搬送装置。
【請求項12】
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、
前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の周波数スペクトルの変化であって、スペクトル強度が最も大きい周波数の変動に伴う当該周波数スペクトルの変化を監視して、前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する検出部と、を備える、流体搬送装置。
【請求項13】
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化である、請求項12に記載の流体搬送装置。
【請求項14】
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量である、請求項13に記載の流体搬送装置。
【請求項15】
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量であり、
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×前記ファンの羽根の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化である、請求項12に記載の流体搬送装置。
【請求項16】
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、
前記ファンの回転数脈動しているのを監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する検出部と、を備える、流体搬送装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の流体搬送装置を備える冷凍装置。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の流体搬送装置を備える液体冷却装置。
【請求項19】
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、を備える流体搬送装置の状態を検出する方法であって、
前記流路に沿って前記ファンにより搬送される前記流体の擾乱により前記ファンの羽根が前記流体から受ける力の変動に相関する現象であって前記擾乱により起こっている現象を監視し、前記現象の推移に基づいて前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する、流体搬送装置の状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体搬送装置、液体冷却装置及び冷凍装置、並びに流体搬送装置の状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンを駆動するモータの回転数を記憶し、n回の回転数の平均値Naveが基準回転数Nを超えた場合、フィルタの目詰まりと判定する目詰まり検出装置が知られている。n回の回転数の平均値Naveを求めることで、雰囲気の温度変動や電源電圧変動の影響を少なくすることが図られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-290630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一定時間内の回転数の平均値を求めると、雰囲気の温度変動や電源電圧変動の影響を除いた、目詰まりが発生すること自体による回転数変動も平均化してしまい、状態検出の精度が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、流路に沿ってファンにより搬送される流体の状態又は前記流体が通り抜ける構造物の状態を高精度に検出可能な流体搬送装置、液体冷却装置、冷凍装置及び流体搬送装置の状態検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様として、
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、
前記流路に沿って前記ファンにより搬送される前記流体の擾乱により前記ファンの羽根が前記流体から受ける力の変動に相関する現象を監視して、前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する検出部と、を備える、流体搬送装置が提供される。
【0007】
これによれば、前記流体の状態又は前記構造物の状態を雰囲気の温度変動や電源電圧変動の影響を低減しつつ、高精度に検出できる。
【0008】
第1態様の流体搬送装置において、
前記検出部により検出される前記流体の状態は、前記流路内に発生する圧力損失の大きさに相関する量を含んでもよい。
【0009】
これによれば、前記流路内に発生する圧力損失の大きさに相関する量を高精度に検出できる。
【0010】
第1態様の流体搬送装置において、
前記検出部により検出される前記構造物の状態は、前記構造物の目詰まりを含んでもよい。
【0011】
これによれば、前記構造物の目詰まりを高精度に検出できる。
【0012】
第1態様の流体搬送装置において、
前記現象は、前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の変化でもよい。
【0013】
前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象なので、前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0014】
第1態様の流体搬送装置において、
前記現象は、前記ファンの回転数の変化でもよい。
【0015】
前記ファンの回転数の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象なので、前記ファンの回転数の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0016】
第1態様の流体搬送装置において、
前記現象は、前記ファンの回転運動により発生する音又は振動の変化でもよい。
【0017】
前記ファンの回転運動により発生する音又は振動の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象なので、前記ファンの回転運動により発生する音又は振動の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0018】
第1態様の流体搬送装置において、
前記現象は、前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の周波数スペクトルの変化でもよい。
【0019】
前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の周波数スペクトルの変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象なので、前記周波数スペクトルの変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0020】
第1態様の流体搬送装置において、
前記周波数スペクトルの変化は、スペクトル強度が最も大きい周波数の変動に伴う変化でもよい。
【0021】
スペクトル強度が最も大きい周波数が変動する現象が起こっているときの周波数スペクトルの変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象である。よって、スペクトル強度が最も大きい周波数が変動する現象が起こっているときの周波数スペクトルの変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0022】
第1態様の流体搬送装置において、
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化でもよい。
【0023】
前記モータの機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象である。よって、前記特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0024】
第1態様の流体搬送装置において、
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量でもよい。
【0025】
これによれば、前記特定周波数における前記直流量のスペクトル強度の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0026】
第1態様の流体搬送装置において、
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量であり、
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×前記ファンの羽根の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化でもよい。
【0027】
前記モータの機械角周波数×前記ファンの羽根の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象である。よって、前記特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0028】
本開示の第2態様として、
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、
前記ファンを駆動するモータの電流、電圧又は電力の周波数スペクトルの変化であって、スペクトル強度が最も大きい周波数の変動に伴う当該周波数スペクトルの変化を監視して、前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する検出部と、を備える、流体搬送装置が提供される。
【0029】
これによれば、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0030】
第2態様の流体搬送装置において、
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化でもよい。
【0031】
前記モータの機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象である。よって、前記特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0032】
第2態様の流体搬送装置において、
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量でもよい。
【0033】
これによれば、前記特定周波数における前記直流量のスペクトル強度の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0034】
第2態様の流体搬送装置において、
前記電流は、前記モータのトルクに相関する直流量であり、
前記周波数スペクトルの変化は、前記モータの機械角周波数×前記ファンの羽根の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化でもよい。
【0035】
前記モータの機械角周波数×前記ファンの羽根の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内の特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化は、前記擾乱による前記力の変動と相関が高い現象である。よって、前記特定周波数における前記電流のスペクトル強度の変化を監視することで、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0036】
本開示の第3態様として、
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、
前記ファンの回転数の脈動の大きさに基づいて、前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する検出部と、を備える、流体搬送装置が提供される。
【0037】
これによれば、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【0038】
本開示の第4態様として、
上記の流体搬送装置を備える冷凍装置が提供される。
【0039】
これによれば、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる流体搬送装置を備える冷凍装置を提供できる。
【0040】
本開示の第5態様として、
上記の流体搬送装置を備える液体冷却装置が提供される。
【0041】
これによれば、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる流体搬送装置を備える液体冷却装置を提供できる。
【0042】
本開示の第6態様として、
流路に沿って流体を回転運動により搬送するファンと、
前記流路に設けられた構造物であって、前記流体が前記構造物を通り抜けることで前記流路内に圧力損失を発生させる構造物と、を備える流体搬送装置の状態を検出する方法であって、
前記流路に沿って前記ファンにより搬送される前記流体の擾乱によって前記ファンの羽根が前記流体から受ける力の変動に相関する現象を監視して、前記流体の状態又は前記構造物の状態を検出する、流体搬送装置の状態検出方法が提供される。
【0043】
これによれば、前記流体の状態又は前記構造物の状態を高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】第1実施形態の油冷却装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態の油冷却装置の斜視図である。
図3】第1実施形態の油冷却装置の正面図である。
図4】第1実施形態の油冷却装置の凝縮器の構成を示す斜視図である。
図5図3の縦断面B-Bを模式的に示す部分断面図である。
図6】目詰まり等の状態の発生による影響を示す相関ブロック図である。
図7】目詰まり等の状態の第1検出方法を説明するための図である。
図8】スペクトル強度が最も大きくなる周波数の時間的変化を示す図である
図9】特定周波数におけるスペクトル強度の時間的変化を示す図である。
図10】圧力損失が小さいときの、特定周波数における電流スペクトル強度の時間的変化を示す図である。
図11】圧力損失が大きいときの、特定周波数における電流スペクトル強度の時間的変化を示す図である。
図12】ファンが小型のときの、目詰まり等の状態の第2検出方法を説明するための図である。
図13】ファンが大型のときの、目詰まり等の状態の第2検出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施形態を説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分又は相当部分を表す。長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更され、実際の相対寸法を表していない場合がある。
【0046】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の油冷却装置の概略構成図である。図1に示す油冷却装置10は、流体を冷却する流体冷却装置の一例であり、この例では、油を冷却する。図1に示す油冷却装置10は、工作機械100の作動油、潤滑油又は冷却油(以下、単に「油」ともいう)を、油タンクTを介して循環させながら冷却する。工作機械100の具体例として、マシニングセンタ、NC(Numerical Control)旋盤、研削盤、NC専用機、NC放電加工機などが挙げられる。油冷却装置10は、工作機械とは種類が異なる機械(成形機、プレス機など)の油を冷却する装置でもよい。
【0047】
油冷却装置10は、圧縮機1と凝縮器3と電子膨張弁EVと蒸発器4が環状に接続された冷媒回路RCと、冷媒回路RCの冷媒循環方向を正サイクルから逆サイクルに切り換える四路切換弁2と、凝縮器3に空気を供給するファン6と、冷媒回路RC及び四路切換弁2を制御する制御装置50とを備える。制御装置50は、ファン6を制御し、より具体的には、ファン6を回転させるモータ7を制御する。電子膨張弁EVは、減圧機構の一例である。冷媒回路RCは、ホットガスバイパス配管L10と、そのホットガスバイパス配管L10に配設されたホットガスパイパス弁HGBを有する。
【0048】
なお、ここで示す実施例は、正サイクルと逆サイクルを四路切換弁により切り換えできる油冷却装置であるが、油冷却装置の冷却サイクルは、四路切換弁のないサイクルでもよい。
【0049】
冷媒回路RC、四路切換弁2、ファン6及び制御装置50は、筐体11内に収容されている。
【0050】
圧縮機1の吐出側は、四路切換弁2の第1ポート2aに接続されている。四路切換弁2の第2ポート2bは、閉鎖弁V1を介して凝縮器3の一端に接続されている。凝縮器3の他端は、閉鎖弁V2を介して電子膨張弁EVの一端に接続されている。
【0051】
電子膨張弁EVの他端は、蒸発器4の一端4aに接続されている。蒸発器4の他端4bは、四路切換弁2の第3ポート2cに接続されている。四路切換弁2の第4ポート2dは、アキュムレータ5を介して圧縮機1の吸入側に接続されている。蒸発器4の一端4a側は、ホットガスバイパス配管L10の一端に接続されている。ホットガスバイパス配管L10の他端は、四路切換弁2の第2ポート2b側に接続されている。
【0052】
油タンクT内の油に一端が浸漬された配管L1の他端は、循環ポンプPの吸込ポートに接続されている。循環ポンプPの吐出ポートは、配管L2を介して蒸発器4の流入ポート4cに接続されている。
【0053】
蒸発器4の流出ポート4dは、配管L3の一端に接続され、配管L3の他端は、工作機械100の流入ポート101に接続されている。工作機械100の流出ポート102と油タンクTとは、配管L4を介して接続されている。
【0054】
油タンクT、蒸発器4、工作機械100及び配管L1~L4は、油が循環する循環経路に含まれている。
【0055】
油冷却システムは、油冷却装置10及び循環経路を備える。なお、第1実施形態では、油冷却装置10は、循環ポンプPを備えるが、油冷却システムは、油冷却装置の外部に循環ポンプを備えるシステムでもよい。
【0056】
油冷却装置10の油の冷却運転において、圧縮機1から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁2を介して凝縮器3に流入し、凝縮器3で外気と熱交換されて凝縮することにより液冷媒となる。次に、電子膨張弁EVにおいて減圧された液冷媒は、蒸発器4に流入して油と熱交換されて蒸発することにより低圧のガス冷媒となり、アキュムレータ5を介して圧縮機1の吸入側に戻る。これにより、蒸発器4において、油が冷却される。この油の冷却運転では、制御装置50は、油の温度や室内温度などに基づいて、圧縮機1の回転周波数や電子膨張弁EVの開度を制御する。なお、ホットガスバイパス配管L10に配設されたホットガスパイパス弁HGBは、蒸発器4に供給する高温・高圧ガス量を調整することで、低負荷時の冷却能力をコントロールする。
【0057】
図2は、油冷却装置10の斜視図であり、図3は、油冷却装置10の正面図である。油冷却装置10は、図2及び図3に示す例では、縦長の直方体形状の筐体11を備える。この例では、凝縮器3の上流側に位置する吸込口12は、筐体11の一方の側面(正面)に設けられ、凝縮器3の下流側に位置する吹出口14は、筐体11の天面側に設けられている。吸込口12及び吹出口14の位置は、これに限られない。
【0058】
吸込口12には、フィルタ13が取り付けられている。フィルタ13は、取付枠20によって筐体11に固定されている。
【0059】
フィルタ13は、例えば、不織布を用いて形成されたろ材を有する。ろ材の形状は、平面状、蛇腹状、網状又はロール状でもよく、これらに限られない。
【0060】
図4は、凝縮器3を筐体11から取り外した状態を示す。凝縮器3は、互いに平行にかつ上下方向に沿って配置された板状の複数のフィン3aを有する。
【0061】
図5は、図3の縦断面B-Bを模式的に示す部分断面図である。フィルタ13、凝縮器3及びファン6は、吸込口12側から、フィルタ13、凝縮器3及びファン6の順に、筐体11内に配置されている。フィルタ13は、凝縮器3に対して間隔D(例えば、10mm)をあけて筐体11の吸込口12に取り付けられてもよいし、凝縮器3に一部又は全部が接触してもよい(間隔D=0mm)。
【0062】
油冷却装置10では、ファン6の回転により外気が吸込口12からフィルタ13を介して吸い込まれて、凝縮器3に供給された後、吹出口14から排出される。
【0063】
油冷却装置10が使用される環境によっては、工作機械100により発生する油煙(オイルミスト)や粉塵などの異物を含む空気Aが、フィルタ13又は凝縮器3に供給される場合がある。異物を含む空気Aがフィルタ13又は凝縮器3に供給されると、フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりが発生する。目詰まりが発生すると、油冷却装置10の油の冷却能力が低下するため、例えば、工作機械100の突発的な停止や加工精度の低下を引き起こすおそれがある。凝縮器3の目詰まりが発生すると、凝縮器3を筐体11から取り外して洗浄や交換などの措置が必要となるので、長時間のダウンタイムが発生し、大きな機会損失を招く。
【0064】
本開示の第1実施形態の油冷却装置10は、フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりを検知する機能を備えた流体搬送装置70を備える。流体搬送装置70は、流体の一例である空気Aを吸込口12から吹出口14に搬送する装置である。流体搬送装置70は、ファン6、モータ7、フィルタ13、凝縮器3、制御装置50及び出力装置60を備える。
【0065】
ファン6は、筐体11内部の流路71に沿って空気Aをモータ7による回転駆動により搬送する回転体の一例である。この例では、ファン6は、流路71の途中に配置されているが、流路71の端部(例えば、吹出口14)に配置されてもよい。流路71に流れる空気Aは、ファン6の回転により、吸込口12から吹出口14に移送される。ファン6は、空気Aが吸込口12からフィルタ13を経由して吸い込まれるように回転し、フィルタ13の通過によりろ過された空気Aは、凝縮器3に供給される。ファン6の回転によって、凝縮器3を通過した空気Aは、吹出口14から排出される。ファン6は、モータ7の駆動により回転する複数の羽根8を有する。ファン6は、例えば、プロペラファンなどの軸流ファンである。
【0066】
流路71は、空気Aが流れる通路である。流路71の少なくとも一部は、筐体11内に配置されたダクト等の構造体により形成されてもよいし、筐体11内の内壁72により形成されてもよいし、筐体11により形成されてもよい。図1に示す例では、流路71は、筐体11内の内壁72と、筐体11の内面11aと、油溜め部33とにより囲まれた内部空間である。
【0067】
筐体11は、例えば、筐体11の下側を覆う底フレーム30を有する。底フレーム30は、凝縮器3及びフィルタ13の下方に設けられた油溜め部33を有する。油溜め部33は、凝縮器3及びフィルタ13からの油滴を受けて溜める。油溜め部33は、オイルパンとも称される。油溜め部33は、底フレーム30に一体に形成されてもよいし、底フレーム30とは別に設けられてもよい。
【0068】
モータ7は、ファン6を回転させる電動機である。モータ7の回転軸は、ファン6の回転中心部に直接又はギアを介して接続される。モータ7は、制御装置50により制御される。モータ7は、流路71内に配置されても流路71外に配置されてもよい。モータ7が流路71内に配置されることで、空気Aによりモータ7を冷却できる。
【0069】
フィルタ13は、流路71に設けられ、空気Aが通過する経路を有する構造物の一例である。フィルタ13は、空気Aが通り抜ける構造体であり、空気Aをろ過する。フィルタ13は、流路71の端部(例えば、流路71の開口端、より詳しくは、吸込口12)に設けられてもよいし、流路71の途中(例えば、流路71を形成するダクトの内部)に設けられてもよい。例えば、フィルタ13が不織布で形成されている場合、不織布の繊維の隙間は、空気Aが通過する通路に相当する。
【0070】
凝縮器3は、流路71に設けられ、空気Aが通過する経路を有する構造物の一例である。凝縮器3は、空気Aが通り抜ける構造体であり、流路71の途中に設けられている。凝縮器3は、高圧・高温のガス冷媒を空気Aと熱交換することで液化する熱交換器である。図示の例では、凝縮器3は、フィルタ13とファン6との間に配置されている。図4のように配列された複数のフィン3a間の隙間は、空気Aが通過する通路に相当する。
【0071】
図5において、制御装置50は、モータ7を複数の半導体スイッチング素子のスイッチングにより駆動する駆動回路51を有する。駆動回路51は、モータ7に駆動電流を供給し、モータ7は、駆動回路51から駆動電流が供給されることで、ファン6を回転させる。駆動回路51は、例えば、直流源からの直流をモータ7に供給する交流に変換するインバータ回路である。
【0072】
駆動回路51の熱は、ヒートシンク52に伝達する。ヒートシンク52が流路71内に配置されていることで、ヒートシンク52は空気Aにより冷却され、ヒートシンク52による駆動回路51の放熱効果が向上する。図示の例では、制御装置50は、内壁72によって流路71から隔てられているが、制御装置50が流路71内に配置されてもよい。駆動回路51は、制御装置50とは別の箇所に配置されてもよい。
【0073】
フィルタ13は、空気Aがフィルタ13を通り抜けることで流路71内に圧力損失を発生させる構造物である。同様に、凝縮器3は、空気Aが凝縮器3を通り抜けることで流路71内に圧力損失を発生させる構造物である。
【0074】
制御装置50がファン6又はモータ7の回転数を一定に制御している場合、ファン6の回転数は僅かに変動するものの、ファン6の平均的な回転数は一定になる。一方、フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりが進行すると、流路71内の圧力損失が大きくなる。流路71内の圧力損失が大きくなると、流路71に沿ってファン6により搬送される空気Aの擾乱の度合いが大きくなる。擾乱とは、流体の流れる向き、流体の流れる速度、又は流体の圧力が、不規則に変動している状態をいう。流体の流れる向き、及び流体の流れる速度は、例えば、流速センサ(電磁式、超音波式、カルマン渦式、熱式等)等を用いて測定でき、粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry, PIV)により測定できる。また、流体の圧力は、例えばひずみ式ゲージセンサ等を用いて測定できる。空気Aの擾乱が発生している状態において、制御装置50がファン6又はモータ7の回転数を一定に制御している場合、ファン6の平均的な回転数はほとんど変化しない。しかしながら、目詰まりによる圧力損失の増大によって度合いが大きくなる擾乱により、ファン6への負荷変動が変化するので、ファン6の回転数の変動度合いが大きくなる。
【0075】
図6は、目詰まり等の状態による影響を示す相関ブロック図である。フィルタ13又は凝縮器3に目詰まり等の状態が発生すると、流路71内の空気Aの乱流(擾乱)の度合いが大きくなる。ファン6の羽根8が空気Aの擾乱を受けることで、羽根8が受ける力Fの変動(ファン6にかかる負荷の変動)に乱れが生じる。ファン6の負荷変動の乱れによって、ファン6の平均的な回転数(回転速度)は一定であるが、ファン6の回転数(回転速度)の変動が大きくなる。ファン6の回転数の変動が大きくなると、ファン6を駆動するモータ7に流れる相電流の変動も大きくなる。
【0076】
このように、流路71に沿ってファン6により搬送される空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態が有意に変化すると、流路71に沿ってファン6により搬送される空気Aの擾乱の度合いが大きくなる。空気Aの擾乱によって、ファン6の羽根8が空気Aから受ける力Fが変動する。
【0077】
このような相関関係に着目し、図5に示す制御装置50は、空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象を監視して、例えば、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出する検出部として機能する。空気Aの擾乱による力Fの変動とは、空気Aの擾乱により力Fの変動が大きくなる状態を意味する。制御装置50は、このような検出部としての機能を有するので、空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象を監視することで、空気Aの擾乱等の流体の状態、又は、フィルタ13もしくは凝縮器3の目詰まり等の構造物の状態を高精度に検出できる。
【0078】
空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象として、ファン6を駆動するモータ7の電流、電圧又は電力の変化がある。制御装置50は、例えば、モータ7に流れる相電流の変化を電流センサにより監視することで、空気Aの擾乱等の流体の状態、又は、フィルタ13もしくは凝縮器3の目詰まり等の構造物の状態を検出してもよい。制御装置50は、例えば、モータ7に生じる電圧の変化を電圧センサにより監視することで、空気Aの擾乱等の流体の状態、又は、フィルタ13もしくは凝縮器3の目詰まり等の構造物の状態を検出してもよい。制御装置50は、例えば、モータ7に入出力される電力の変化を電流センサ及び電圧センサにより監視することで、空気Aの擾乱等の流体の状態、又は、フィルタ13もしくは凝縮器3の目詰まり等の構造物の状態を検出してもよい。モータ7の電流や電圧や電力を検出する為の電流センサや電圧センサは、ファン制御用として既に備えられているため、空気Aの擾乱を検出する為に、先述の流速センサなどを別途備える必要がなく、追加コストなしで実現できる。
【0079】
空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象として、ファン6の回転数の変化がある。制御装置50は、例えば、ファン6の回転数の変化(より詳しくは、ファン6の回転数の脈動の大きさ)をセンサにより監視することで、空気Aの擾乱等の流体の状態、又は、フィルタ13もしくは凝縮器3の目詰まり等の構造物の状態を検出してもよい。
【0080】
空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象として、ファン6の回転運動により発生する音又は振動の変化がある。制御装置50は、例えば、ファン6の回転運動により発生する音又は振動の変化をセンサにより監視することで、空気Aの擾乱等の流体の状態、又は、フィルタ13もしくは凝縮器3の目詰まり等の構造物の状態を検出してもよい。
【0081】
また、上述の通り、流路71内に発生する圧力損失の大きさが変化すると、空気Aの擾乱の度合いが大きくなり、力Fの変動が大きくなる。この特徴に着目し、制御装置50は、空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象を監視することで、流路71内に発生する圧力損失の大きさに相関する量を検出してもよい。
【0082】
制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びメモリを備える制御部である。制御装置50の機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、プロセッサが動作することにより実現される。制御装置50の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0083】
出力装置60は、制御装置50により検出された空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を表す検出情報を出力する出力部の一例である。出力装置60は、例えば、音、光、表示、通信又はそれらのいずれかの組み合わせによって、流体搬送装置70の外部に向けて検出情報を出力する。出力装置60の具体例として、スピーカ、ランプ、ディスプレイ、通信装置又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0084】
このように、流体搬送装置70によれば、出力装置60は、制御装置50により検出された空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態が所定の条件を満たすと、その検出情報を出力する。流体搬送装置70がこのような状態検出方法を実行することにより、検出情報が出力されるので、例えば、フィルタ13又は凝縮器3に目詰まりが発生したことを検知可能となる。
【0085】
フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりが検知可能となるので、例えば、フィルタ13又は凝縮器3のメンテナンス作業が容易になり、管理、整備などの工数及びコストの増加を抑制できる。また、フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりが検知可能となるので、油冷却装置10の油の冷却能力の低下などの不具合が生じる前に、フィルタ13又は凝縮器3の洗浄や交換などの事前措置を講ずることができる。
【0086】
出力装置60は、検出情報をユーザ又は外部機器に報知してもよい。これにより、ユーザ又は外部機器は、フィルタ13又は凝縮器3の目詰まりを認知できる。
【0087】
図7は、目詰まりの第1検出方法を説明するための図である。図7の上段における電流波形は、所定の回転数指令でファン6を回転駆動するモータ7に流れる3秒間の相電流の推移を表している。制御装置50は、電流センサにより検出された相電流を、所定の期間ごとに(この例では、1秒間ごとに)、高速フーリエ変換(FFT)する。図7の下段における3つの周波数スペクトルは、相電流を所定の期間ごとにFFTした結果を示す。凡例において、圧力損失大、圧力損失小は、流路71内の圧力損失を表す。流路71内の圧力損失が大きいほど、目詰まりが進行した状態を表す。
【0088】
図7の下段における3つの周波数スペクトルが示すように、流路71に沿ってファン6により搬送される空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態が有意に変化すると、その変化に応じた態様で周波数スペクトルは変化する。したがって、制御装置50は、ファン6を駆動しているときのモータ7の電流、電圧又は電力の周波数スペクトルの変化を監視することで、流路71に沿ってファン6により搬送される空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を高精度に検出できる。
【0089】
制御装置50は、例えば、スペクトル強度が最も大きい周波数が変動しているときのスペクトル変化を監視することで、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出してもよい。スペクトル強度が最も大きい周波数は、全周波数内におけるスペクトル強度が最も大きい周波数ではなく、モータ7の機械角周波数×N±a(a<前記機械角周波数/20)内の周波数における、スペクトル強度が最も大きい周波数であってもよい。例えば構造物の目詰まりにより圧力損失が大きい状態では、第1期間の周波数スペクトルでは、周波数f1のスペクトル強度が最も大きくなり、第1期間とは異なる第2期間の周波数スペクトルでは、周波数(f1+a1)のスペクトル強度が最も大きくなり、第1期間及び第2期間とは異なる第3期間の周波数スペクトルでは、周波数(f1-a2)のスペクトル強度が最も大きくなる現象Pが起こる。a1,a2は、周波数変化分を表す。現象Pは、スペクトル強度が最も大きい周波数が変動する現象の一例である。
【0090】
図8は、スペクトル強度が最も大きくなる周波数(最大強度周波数)の時間的変化を示した図である。目詰まりが起こり、圧力損失が大きくなり、現象Pが起こると、スペクトル強度が最も大きくなる周波数が変動する幅(範囲R)が大きくなる。
【0091】
制御装置50は、例えば、現象Pが起こっているときの範囲Rの違いを監視することで、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出できる。制御装置50は、範囲Rが所定の閾値以上の場合、目詰まり等の状態が発生していると検出する。一方、制御装置50は、範囲Rが所定の閾値未満の場合、目詰まり等の状態が発生していないと検出する。
【0092】
制御装置50は、例えば、現象Pが起こっているときの最大強度周波数の極値の違いを監視することで、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出できる。制御装置50は、現象Pが起こっているときの最大強度周波数の極大値が所定の第1周波数fa以上、又は、現象Pが起こっているときの最大強度周波数の極小値が所定の第2周波数fb以下の場合(fb<fa)、目詰まり等の状態が発生していると検出する。一方、制御装置50は、現象Pが起こっているときの最大強度周波数の極大値が所定の第1周波数fa未満、且つ、現象Pが起こっているときの最大強度周波数の極小値が所定の第2周波数fbを超える場合、目詰まり等の状態が発生していないと検出する。
【0093】
また、現象Pが起こっているとき、例えば、所定の周波数(f1+a1)におけるスペクトル強度は、上記の第1乃至第3の3つの期間ごとに変化する。したがって、制御装置50は、現象Pが起こっているときの所定の周波数(f1+a1)におけるスペクトル強度の変化(違い)を監視することで、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出できる。
【0094】
制御装置50は、特定周波数Fにおける、相電流のスペクトル強度の変化を監視してもよい。特定周波数Fは、例えば、モータ7の機械角周波数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内に設定される。図7に示す例では、モータ7の機械角周波数はf1である。図7の下段に示す3つの周波数スペクトルに示されるように、流路71内の圧力損失が大きい周波数スペクトルほど、特定周波数Fにおける、相電流のスペクトル強度の変化が大きい。制御装置50は、特定周波数Fにおける、相電流のスペクトル強度の変化を監視し、特定周波数Fにおける、相電流のスペクトル強度の違いに応じて、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出できる。
【0095】
制御装置50は、特定周波数Fにおける、電流ベクトル振幅(すなわち、モータ7のトルクに相関する直流量D)のスペクトル強度の変化を監視してもよい。電流ベクトル振幅は、モータ7に流れる全ての相の相電流のそれぞれの2乗値の総和の平方根で表される。この場合、特定周波数Fは、例えば、モータ7の機械角周波数×羽根8の枚数×N(Nは自然数)±a(a<前記機械角周波数/20)内に設定される。制御装置50は、モータ7のトルクに相関する直流量Dを所定の期間ごとに高速フーリエ変換(FFT)することで、電流ベクトルの周波数スペクトルを所定の期間ごとに取得する。電流ベクトルの周波数スペクトルの場合、電流ベクトルのスペクトル強度のピークは、(モータ7の機械角周波数×羽根8の枚数×N)の周波数成分に現れる。流路71内の圧力損失が大きい周波数スペクトルほど、特定周波数Fにおける、電流ベクトルのスペクトル強度の変化が大きい。制御装置50は、特定周波数Fにおける、電流スペクトルの変化を監視し、特定周波数Fにおける、電流ベクトルのスペクトル強度の違いに応じて、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出できる。
【0096】
また、モータ7のトルクに相関する直流量Dは、電流ベクトル振幅以外に、電流ベクトル振幅の2乗値、モータ7に流れる相電流の振幅もしくは実効値、または、モータ7に流れる相電流を3相2相変換したα軸電流およびβ軸電流をモータ7の回転子の一次磁束もしくは磁極の向きに基づく角度で回転座標変換した電流であってもよい。
【0097】
図9は、特定周波数Fにおけるスペクトル強度の時間的変化を示す図である。特定周波数Fにおける電流スペクトル強度の時間的変化を見ると、圧力損失が大きいほど、電流スペクトル強度の変化幅が大きくなる。制御装置50は、特定周波数Fにおけるスペクトル強度が所定の変動幅よりも大きく変動する場合、目詰まり等の状態が発生していると検出する。一方、制御装置50は、特定周波数Fにおけるスペクトル強度が所定の変動幅よりも小さく変動する場合、目詰まり等の状態が発生していないと検出する。
【0098】
なお、目詰まり等の状態判定に使用する特定周波数Fの数は、一つに限らず、複数でもよい。また、制御装置50が目詰まり等の状態判定に使用する周波数スペクトルは、モータ7の電流の周波数スペクトルに限られず、モータ7の電圧又は電力の周波数スペクトルでもよい。
【0099】
図10は、流路71の圧力損失が小さいときの、特定周波数Fが99Hzにおける電流スペクトル強度の時間的変化を示す図である。図11は、流路71の圧力損失が大きいときの、特定周波数Fが99Hzにおける電流スペクトル強度の時間的変化を示す図である。
【0100】
制御装置50は、特定周波数Fが99Hzにおける電流スペクトル強度の時間的変化を評価する。目詰まり等の状態が進行するにつれて、所定の期間における電流スペクトル強度の変動幅は、広がる。制御装置50は、所定の期間における電流スペクトル強度の変動幅が所定の変動幅(所定の閾値)よりも小さい場合(図10)、目詰まり等の状態が発生していないと判定する。一方、制御装置50は、所定の期間における電流スペクトル強度の変動幅が所定の変動幅(所定の閾値)よりも大きい場合(図11)、目詰まり等の状態が発生していると判定する。
【0101】
なお、電流スペクトル強度の変動幅の検出誤差を小さくするため、一又は複数の上位の電流スペクトルと一又は複数の下位の電流スペクトルは、電流スペクトル強度の変動幅から取り除かれてもよい。また、電流スペクトル強度の変動幅の検出誤差を小さくするため、電流スペクトル強度の実効値から、電流スペクトル強度の変動幅を見てもよい。
【0102】
図12は、ファン6が小型のときの、目詰まり等の状態の第2検出方法を説明するための図である。図13は、ファン6が大型のときの、目詰まり等の状態の第2検出方法を説明するための図である。ファン6の回転数が一定のとき(具体的には、ファン6が一定の指令回転数で回転しているとき)、ファン6の回転周波数(図12の場合、101Hz。図13の場合、126Hz)のみの電流スペクトル強度が大きくなるはずである。しかし、流路71内の圧力損失の変化による流体の擾乱によってファン6の回転数が変動しているとき、ファン6の回転周波数とは異なる特定の周波数(図12の場合、99Hz。図13の場合、125Hz)における電流スペクトル強度に差異が生じる。制御装置50は、ファン6の回転周波数とは異なる特定の周波数における電流スペクトル強度が所定の状態判定規定値を超えた場合、目詰まり等の状態が発生したと判定する。一方、制御装置50は、ファン6の回転周波数とは異なる特定の周波数における電流スペクトル強度が所定の状態判定規定値よりも低い場合、目詰まり等の状態が発生していないと判定する。
【0103】
〔第2実施形態〕
流体搬送装置は、油とは異なる液体を冷却する液体冷却装置に適用されてもよい。第2実施形態の液体冷却装置は、第1実施形態の油冷却装置10と同様の構成及び効果を有してよい。第1実施形態の油冷却装置10と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。第2実施形態の液体冷却装置は、例えば、工作機械100の切削液を冷却する装置である。液体冷却装置は、流体を冷却する冷凍装置の一種である。
【0104】
〔第3実施形態〕
流体搬送装置は、気体を冷却する気体冷却装置に適用されてもよい。第3実施形態の気体冷却装置は、第1実施形態の油冷却装置10と同様の構成及び効果を有してよい。第1実施形態の油冷却装置10と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。第3実施形態の気体冷却装置は、例えば、冷房又は暖房の少なくとも一方の空調運転を行う空気調和機である。この場合、流体が供給される熱交換器は、凝縮器として機能する熱交換器であってもよいし、蒸発器として機能する熱交換器であってもよい。第3実施形態における構造物の状態判定は、熱交換器の目詰まり判定であってもよく、熱交換の目詰まりを抑制する為のフィルタの目詰まり判定であってもよい。熱交換器の目詰まり判定は、蒸発器への着霜が進行した場合であってもよい。気体冷却装置は、流体を冷却する冷凍装置の一種である。
【0105】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0106】
例えば、流体が流れる流路は、仕切りにより仕切られた流路であれば、筐体内部の流路に限られず、筐体とは異なる部材の内部の流路でもよく、例えば、ダクト等の管の内部の流路(中空部分)でもよい。
【0107】
流路に沿って搬送される流体は、空気以外の気体でもよいし、例えば水や油などの液体でもよい。つまり、流体搬送装置は、流路に沿って流体をファンの回転駆動により搬送する装置であれば、空気以外の気体を搬送する装置でも、例えば水や油などの液体を搬送する装置でもよい。
【0108】
流路に設けられる構造物は、フィルタ又は凝縮器に限られず、蒸発器などの他の構造物でもよい。
【0109】
制御装置50等の検出部は、空気Aの擾乱による力Fの変動に相関する現象を監視して、空気Aの状態又は空気Aが通り抜ける構造物の状態を検出する。検出部は、当該現象を監視して検出する空気Aの状態として、流路内に発生する圧力損失の大きさに相関する量を検出し、当該量に基づき、羽根8の破損等のファン6の故障を検出してもよい。検出部は、流路内に発生する圧力損失の大きさに相関する量を検出し、当該量に基づき、風量センサや圧力センサを用いることなく、ファンのPQ特性(P:静圧Q:流量)に基づく風量制御や圧力制御や回転数制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…圧縮機
2…四路切換弁
3…凝縮器
4…蒸発器
5…アキュムレータ
6…ファン
7…モータ
8…羽根
10…油冷却装置
11…筐体
12…吸込口
13…フィルタ
14…吹出口
20…取付枠
30…底フレーム
33…油溜め部
50…制御装置
51…駆動回路
52…ヒートシンク
60…出力装置
70…流体搬送装置
71…流路
72…内壁
100…工作機械
EV…電子膨張弁
HGB…ホットガスパイパス弁
L1,L2,L3,L4…配管
L10…ホットガスパイパス配管
P…循環ポンプ
RC…冷媒回路
T…油タンク
V1,V2…閉鎖弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13