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特許7376860通気性と防水性のある多層構造のレザー材料とそのレザー材料で形成された製品
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  • 特許-通気性と防水性のある多層構造のレザー材料とそのレザー材料で形成された製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】通気性と防水性のある多層構造のレザー材料とそのレザー材料で形成された製品
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/24 20060101AFI20231101BHJP
   B68F 1/00 20060101ALI20231101BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20231101BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20231101BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20231101BHJP
   A41D 31/102 20190101ALI20231101BHJP
【FI】
B32B3/24 Z
B68F1/00 A
B32B9/02
B32B27/12
A41D31/00 502Q
A41D31/00 502T
A41D31/102
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019114446
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2019217772
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-12
(31)【優先権主張番号】ES201830958U
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】519224306
【氏名又は名称】マット プロダクト アンド テクノジー,エスエル.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】マテウ コディナ,ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】ベル,コリン ラムゼイ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-197239(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0110436(KR,A)
【文献】特開2006-248052(JP,A)
【文献】特開2015-067790(JP,A)
【文献】特開2007-063510(JP,A)
【文献】特開2010-043142(JP,A)
【文献】特開2007-314919(JP,A)
【文献】特開平11-158709(JP,A)
【文献】特開平06-209804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0103046(US,A1)
【文献】特開2007-161342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B68F 1/00- 3/04
C14B 1/00-99/00
C14C 1/00-99/00
A41D 31/00-31/32
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
B29D 35/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性と防水性のある多層構造レザー材料において、
通気性を上げる為に小孔(11)を有する天然レザー製又はコラーゲン・レザー製の層(以下「レザー層(10))と称する。)と、
水分の通過を阻止する防水性と空気を通す通気性の両方を有する材料層(20)と、
前記レザー層(10)と材料層(20)との間に非積層構造状に配置され、両層を接着する加水分解耐性を有する接着剤と
を有し、
前記レザー層(10)内部には、疎水性剤が浸透又は含浸されて疎水性特性が付与され、その結果、前記小孔(11)を介した水の吸収を阻止する
ことを特徴とする通気性と防水性のある多層構造レザー材料。
【請求項2】
前記疎水性剤は、シリコン・エステルである
ことを特徴とする請求項1記載の多層構造レザー材料。
【請求項3】
前記レザー層(10)は、前記材料層(20)が接着されている面とは反対の面に、表面コーティング(12)を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の多層構造レザー材料。
【請求項4】
前記表面コーティング(12)は、ポリウレタン・ワニスを有する
ことを特徴とする請求項3記載の多層構造レザー材料。
【請求項5】
前記レザー層(10)は、グラフェン-ベースのドーピング剤と赤外線反射剤の少なくとも一方でコーティングされている
ことを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の多層構造レザー材料。
【請求項6】
強化層(30)を更に有し、前記強化層(30)は、加水分解耐性を有する手段で、非積層構造となるよう接着された防水性と通気性のある材料製であり、
前記材料層(20)は、前記レザー層(10)と前記強化層(30)との間にある
ことを特徴とする請求項1-5のいずれかに記載の多層構造レザー材料。
【請求項7】
3Dファブリック層を更に有し、前記3Dファブリック層は、加水分解耐性を有する手段で、非積層構造となるよう接着された水は吸収しないが通気性のある材料製であり、
前記材料層(20)は、前記レザー層(10)と前記3Dファブリック層との間にある
ことを特徴とする請求項1-5のいずれかに記載の多層構造レザー材料。
【請求項8】
加熱用抵抗体(40)が、前記複数の層の間のいずれかに挿入されており、電源に接続されている
ことを特徴とする請求項1-7記載の多層構造レザー材料。
【請求項9】
前記接着剤は、水分又は湿分に接触しても劣化しない
ことを特徴とする請求項7-8のいずれかに記載の多層構造レザー材料。
【請求項10】
前記レザー層(10)は赤外線反射剤でコーティングされている
ことを特徴とする請求項1-9のいずれかに記載の多層構造レザー材料。
【請求項11】
(a)前記レザー層(10)の吸収性能は、前記疎水性剤で浸透又は含浸されていない同等のレザー層のそれに比較し10%以下であること、
(b)前記レザー層(10)の毛細管吸収性能は、前記疎水性剤で浸透又は含浸されていない同等のレザー層のそれに比較し1cm/h以下であること、
(c)前記材料層(20)は、475g/m 以上の蒸気透過率性能を有すること、
(d)前記材料層(20)は、少なくとも2分間は、700g/cm 以上の水圧耐性を有すること、の内の少なくとも1つの性能を有する
ことを特徴とする請求項1-10のいずれかに記載の多層構造レザー材料。
【請求項12】
請求項1-11のいずれかに記載の多層構造レザー材料を含むバッグ、財布、スーツケース、室内装飾品、衣服、衣服のいずれかである多層構造レザー製品。
【請求項13】
前記レザー製品はシームを有し、前記シームは、前記シームの上部に接着された防水性の接着テープでシールされている
ことを特徴とする請求項12に記載の多層構造レザー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性(breathable)と防水性(waterproof)がある多層構造(multi-layered)のレザー材料に関する。このレザー材料は空気と湿分(蒸気)は通すが水分は通さない。この多層構造のレザー材料は、あらゆる種類の衣服、リックサック、ブリーフ・ケース、室内装飾品等の製造に用いられる。
【背景技術】
【0002】
なめし皮(tanned leather)は、衣服、リックサック、室内装飾品等の製造に使用されることは知られている。レザーに表面保護処理が施こされていないものは、フル・グレイン・レザー(full grain leather)と呼ばれる。このフル・グレイン・レザーは、部分的に通気性があり、高い水吸収率を示す。このため、このレザーが水に触れると、濡れて水は通過できるようになる。
【0003】
レザーに表面保護処理例えばポリウレタン・ワニス(polyurethane vanish)で表面処理がなされている場合は、防水性となるが通気性機能を失い、そのため気密(airtight)となる。
【0004】
通気性を改善するために、小孔又は微細な穴(「小孔」と総称する)を、レザーに特に表面保護処理がされているレザーに形成することは公知である。しかしこの場合水はこの小孔を通過しレザーは防水機能を失う。
【0005】
ES2142620T3は、通気性と防水性のあるソール(靴の足裏)を具備した靴を開示する。このソールは、小孔の開いたソールと、防水性と通気性のある層と、通気性のある材料あるいは小孔の開いた材料からなるインソール(靴の中底)を有する。レザーはオプションである。
【0006】
EP0619959A1は、上記に類似した通気性と防水性のある靴のソールを開示する。
【0007】
これら2つの解決方法(引例)においてはレザー層は水を吸収する。その結果膨張し変形し、吸収性のあるフル・グレイン・レザーを用いた場合と表面保護処理を施したレザーを用いた場合の両方の場合は、好ましくない外観を呈する。小孔は、保護コーティング層を貫通し、小孔により形成されるダクト(通路)の内側の側面で、コーティングされていないレザーが露出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
更にレザーのような水吸収性材料に小孔を開けると水滴(water droplet)が形成される。水滴は、表面にできると、毛細管現象により小孔の内部方向に吸引される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、通気性と防水性がある多層構造のレザー材料を提供する。本発明のレザー材料は、公知の構造に従って、以下に記載のA層とB層を重ね合わせ、加水分解に対し耐性を有する接着剤(hydrolysis-resistant adhesive)で非積層構造(non-laminar arrangement)になるよう接着して通気性を維持しながら構成した。
A層:通気性を上げる為に小孔を有する天然レザー層又はコラーゲン・レザー層
B層:水の通過/透過を阻止するが空気は通す通気性と防水性がある材料層
【0010】
「加水分解に対し耐性を有する接着剤」とは、水分又は湿分に接触しても劣化しない接着剤のことである。「非積層構造」とは、接着すべき複数の層の間に、接着剤の連続するシートが形成されない構成のことである。この連続するシートは、出来上がった材料の通気性を阻止する。
【0011】
通気性を維持する為に、前記接着剤は、接着すべき層の上に、ドット(点)又はライン(線)の形態で配置する或いは粉末、粒状、ドロップの形態で分散させ、加熱、加圧、活性材で、後続の活性化に進み、接着を形成する
【0012】
「天然レザー(natural leather)」とは、動物の皮をねかす(curing)ことにより得られたレザーのことである。「コラーゲン・レザー(collagen leather)」とは、動物由来或いは別の生物に由来するコラーゲンを処理することにより得られたレザーのことであり、天然レザーに類似する特性と外観を有する
【0013】
「コラーゲン・レザー」は、「天然レザー」のリサイクルから得られる、或いはコラーゲンを生成するよう遺伝子的に改変された細胞を培養することにより生成されたコラーゲンから得られる。
【0014】
「通気性と防水性のある材料の層」とは、液状の水の通過は阻止するが、空気と水蒸気の通過は阻止しない層のことである。これは、小孔(pore)を有する層で実現できる。この小孔のサイズは、水滴の大きさの数千分の一のオーダーであり、水蒸気の分子(water vapor molecule)の数百倍のオーダーである。
【0015】
通気性と防水性のある材料の水蒸気透過性は、475g/m2以上である。この値は、現在有効な標準規格BS 7209:1990のガイドラインに沿って測定できる。
【0016】
前記防水材料の層は、少なくとも2分間、10psi(700g/cm 以上の水圧耐性を有する。この値は、現在有効な標準規格ISO 811:2018のガイドラインに沿って測定できる。
【0017】
通気性と防水性のある材料層と小孔を有するレザー層との組み合わせは、通気性のある材料を提供する。その理由は、これらの構成要素の全てが通気性と防水性とを提供するからである。防水性の層は、得られた多層構造のレザー材料を介した水の通過を阻止する。
【0018】
本発明は従来技術には知られていない特徴を提供する。小孔を介した水又は流体の吸収を阻止する為に、またこれらの小孔を通して毛細管現象による水の吸収を回避する為に、レザー層を疎水性剤(hydrophobic agent)でコーティングする。
【0019】
この疎水性剤を皮のなめし工程の間或いはその後レザー内部に浸透/含浸させる。即ちその製造過程の間疎水性剤をコラーゲン・レザー内含ませる。
【0020】
疎水性剤をコーティングすることにより、レザーの水分吸収を大幅に減らす或いは完全に無くす。しかし小孔を通した水分の透過性(permeability)と通気性は維持される。疎水性剤はシリコン・エステル(silicone esters)である。
【0021】
レザー層は疎水性剤で処理しているのでレザー層は疎水性特性を有する。フル・グレイン・レザーは表面コーティングせずに採用できる。これにより、この種の皮が有する吸収の不都合を有さずに、フル・グレイン・レザーの特徴である外観を維持できる。
【0022】
レザー層に疎水性添加剤を加えると、疎水性剤をコーティングしていない無垢のレザー層に比較し、10%未満の吸収率、1cm/h未満の毛細管現象吸収率を有することができる。この値は現在有効な標準規格ENISO2417のガイドラインに沿って測定できる。
【0023】
本発明の他の実施例によれば、レザー層は更に防水材料層が接着される側の反対側に表面コーティングを有してもよい。この表面コーティングを用いてレザーを防水性にし、耐性(表皮剥離と破断に対する)又は美観(resistance or aesthetics)を改善する。しかしこの場合レザーは既に防水性となっている。小孔の存在により表面コーティングの防水効果が無くなってしまう。それ故に表面コーティングは、外観と耐性のためだけで防水機能は有さない。
【0024】
表面コーティングは例えばポリウレタン・ワニス(polyurethane varnish)である。
【0025】
レザー層はグラフェン-ベースのドーピング剤(graphene-based doping agent)でコーティングされている。従来は、レザーの表皮剥離と破断に対する耐性は、皮のなめしプロセスの間クロムを塗布することにより改善される。しかしこの添加剤はその高い毒性故に除去しなければならない。グラフェン-ベースのドーピング剤をレザーに塗布することは、天然レザーのなめしの間/その後又はコラーゲン・レザーの製造ステップの間、表皮剥離と破断に対する耐性を大幅に改善する。グラフェン-ベースの添加剤は、レザーより吸収される添加剤であり、グラフェン・フラグメントを有し、これが処理されたレザーの内側に埋設して残り、それを強化する。
【0026】
これによりこの多層構造材料の使用が、表皮剥離と破断による強い摩耗に晒されるような応用分野で可能となる。例えば重量物を搬送する自転車/オートバイの防護服、スキー等のジャケット、ズボン、グローブ、リュックサック、スーツケース、財布等の製造に向いている。
【0027】
レザー層は赤外線反射剤(infrared-reflecting agent)でコーティングしてもよい。これにより太陽光に晒されたときの材料の温度の上昇を抑え、このような環境下での過熱を減らす。
【0028】
更に水を吸収せず(non-water-absorbing)通気性のある材料製の強化層を、加水分解耐性のある接着剤で非積層構造になるよう接着することにより、通気性を維持できる。この通気性と防水性のある材料層はレザー層と強化層の間に配置される。
【0029】
強化層は、組立体/製品の通気性と防水性の特性を変えないが、通気性と防水性の層を、防水性を損なう摩耗、すりむき、引き裂き等から保護する。
【0030】
別の構成として更にはそれに加えて、水を吸収しない通気性のある材料からなる3Dファブリック層(3D fabric layer)を、加水分解耐性のある接着剤を積層しない形態(これにより通気性を維持する)で接着配置することもできる。この通気性と防水性のある材料層は3Dファブリック層とレザー層の間に配置される
【0031】
3Dファブリック層は、得られた多層構造材料に追加的な詰め物(padding)を提供する。この詰め物が、防水性と通気性のある層を保護し、その内部で空気の循環を可能とする。これにより、得られた多層構造材料の通気性の機能を改善する。
【0032】
3Dファブリックとは、糸が三次元のパターンに従って織られた繊維である。3Dファブリックは、各スティッチ内で、各スティッチ内で使用されるファイバの厚さ和よりも厚いファブリックを得る。そしてギャップがファブリック内に残り、これにより、より大きなボリュームを得る。
【0033】
本発明の他の実施例によれば、加熱用抵抗体を多層構造材料の間に含めてもよい。この加熱用抵抗体は電源に接続される。この構成により加熱された又は加熱する多層構造材料が得られる。
【0034】
本発明の多層構造材料は、バッグ、リックサック、スーツケース、財布等の少なくとも一部、室内装飾品の一部、衣装の一部に使用される。
【0035】
多層構造のレザー材料を、衣服(例、ジャケット、コート、ズボン、靴、グローブ)に使用することより、雨水が外から内に入り込むのを阻止しながら、体熱の発散と発汗が可能となる。グラフェンを含めることにより、衣服により提供される物理的保護を改善できる。3Dファブリックを含めることにより、通気性を改善し衣服を冷却する。加熱用抵抗体を含めることにより、寒冷地において暖かさを改善する。
【0036】
多層構造のレザー材料を、リックサック、バッグ、財布、スーツケース等に使用することにより、外の水あるいは雨水がその内容物を濡らすことなく、かつ内部の湿度はその中で結露することがなく外に放出される。
【0037】
多層構造材料はシームを有する。このシームは、シームの上部に接着された防水性のある接着剤によりシールされ、これによりシームの完全な防水性を達成する。
【0038】
バッグ又はスーツケース内の空気を冷却することにより、内部空気の湿分が結露することになる。本発明の多層構造のレザー材料の通気性の機能により、湿分は放出され結露を回避できる。
【0039】
加熱用抵抗体を含めることにより、バッグ又はスーツケースの内部温度を常に外部温度よりも若干高くすることができ、内部で結露が発生しないようにすることができる。これは特に電子部品を運ぶバッグの場合重要である。さもないと電子部品は内部の結露で損傷が起きることになる。
【0040】
多層構造のレザー材料を室内装飾品(家具)に使うことにより、その室内装飾品に接触するユーザの通気性の機能が上がることになる。通常シートに座るユーザの足と背中の通気性を改善することになる。本発明の材料の防水性の特性により、室内装飾品は洗濯可能となり、屋外での使用に適するようになる。
【0041】
室内装飾品で用いられる材料にグラフェンを含めることにより、室内装飾品の寿命を改善できる。3Dファブリックを含めることにより、通気性を改善し、温暖地域でも熱的快適性が改善され、柔らかくかつより気持ちよい材料になる。
【0042】
加熱用抵抗体を多層構造材料に含めることにより、温められた室内装飾品は寒冷地でもより大きな快適さを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施例による多層構造レザー材料の一部を示す展開図。
図2】本発明の他の実施例による加熱用抵抗体と3層からなる多層構造レザー材料の一部を示す展開図。この加熱用抵抗体は、フレキシブルなフィラメント製の巻回状態の形態で通気性と防水性のある層と強化層の間に配置される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の一実施例によれば、以下に述べる層を具備する通気性と防水性のある多層構造レザーが提供される。
【0045】
天然のレザー層10は、硬化処理(curing treatment)の間、シリコン・エステル(silicone esters)でコーティングされ、疎水性特性(hydrophobic property)を付与し、その後、微細な(厚み方向に)貫通する貫通小孔11が形成される。
【0046】
選択的事項として、天然のレザー層10の一方の側は、貫通小孔を形成する前に、ポリウレタン・ワニス(polyurethane varnish)の表面コーティング12を形成してもよい。別の方法として、天然のレザー層10をグラフェン・ベースのドーピング剤(graphene-based doping agent)で処理し、破裂・はく離に対する耐性を向上させてもよい、
【0047】
かくして得られたレザー層10は、貫通小孔11の存在により通気性あるが、水は貫通小孔11を通過しない為、防水性ではないが疎水性処理により水は吸収しない。処理済みのレザーの疎水性の特性により、毛細管現象による小孔を通過する水の吸収を減らす或いは阻止する。
【0048】
多層構造のレザー材料を形成する別の層は、通気性と防水性のある材料層20である。これにより、空気と湿分は通過させるが液状の水の通過は阻止する。
【0049】
材料層20は複数の小孔を有する層である。この小孔のサイズは、水滴の大きさの数千分の一より小さく、水蒸気の分子(water vapor molecule)の数百分倍大きい。この範囲のサイズの小孔は、水滴の通過は阻止するが、水蒸気の通過は阻止しない。
【0050】
選択的事項として、第3層を、多層構造材料に含めることができ、材料層20をカバーし、それを保護する、この追加の層は、非吸収性で通気性のある材料製の強化層30または非吸収性で通気性のある3Dの繊維層でもよい。
【0051】
選択的事項として、図2に示すように、加熱用抵抗体40を、柔軟性のあるケーブルの形態で、多層構造の複数の層の間に埋設してもよい。加熱用抵抗体40が電源例えばバッテリーに接続されている時は、分散して発熱する。加熱用抵抗体40の一例は、巻きケーブルの形態で示されている。
【0052】
多層構造レザー材料の全て層を重ね合わせ、加水分解耐性のある接着剤(即ち水あるいは水蒸気に接触しても劣化しない接着剤)で、非積層構造(即ち層の間にシート(通気性バリアとして機能する)を形成しない構造)となるよう互いに接着する。
【0053】
接着剤は、スプレーの形態で分散させる。その結果、接着剤は接着すべき表面全体で互いに分離した飛沫あるいは微飛沫の形態で滞留する。その直後に層を組み立てる。
【0054】
本発明の他の実施例は、接着すべき側の一方の表面全体に粉末形態で接着剤を分散させ、その後層を重ねて、その接着剤の粉末粒子を加熱することにより格子(grille)を通過させ、接着剤の粉末粒子を活性化して接着する。
【0055】
本発明の他の実施例は、接着剤を接着すべき表面全体に飛沫の形態あるいは離れたラインの形態で制御しながら配置する。
【0056】
上記した解決法のいずれも表面全体に接着を形成するが、接着剤が本発明の多層構造材料の通気性に対し障害とならないようにする。
【0057】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。「少なくとも1つ或いは複数」、「と/又は」は、それらの内の1つに限定されない。例えば「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は「A」、「B」、「C」単独のみならず「A,B或いはB,C更には又A,B,C」のように複数のものを含んでもよい。「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は、A,B,C単独のみならずA,Bの組合せA,B,Cの組合せでもよい。「A,Bと/又はC」は、A,B,C単独のみならず、A,Bの2つ、或いはA,B,Cの全部を含んでもよい。本明細書において「Aを含む」「Aを有する」は、A以外のものを含んでもよい。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0058】
10:レザー層
11:細小孔(小孔)
12:表面コーティング
20:通気性と防水性のある材料層
30:強化層
40:加熱用抵抗体




図1
図2