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  • -感熱記録体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20231101BHJP
   B41M 5/323 20060101ALI20231101BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B41M5/42 221
B41M5/323 220
B41M5/44 220
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019184825
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021045949
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年2月27日にダイニック株式会社王子工場から出荷した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川合 穂
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 幸雄
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-103812(JP,A)
【文献】国際公開第02/020277(WO,A1)
【文献】特開2002-172863(JP,A)
【文献】特開2018-154099(JP,A)
【文献】特開平06-247049(JP,A)
【文献】特開平08-090916(JP,A)
【文献】特開平10-166734(JP,A)
【文献】特開平11-005365(JP,A)
【文献】特開平11-070742(JP,A)
【文献】特開2000-318318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0190644(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1917828(KR,B1)
【文献】特開2002-248861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と顕色剤とバインダー成分によって少なくとも構成される透明性を有した感熱層を設け、さらに感熱層を設けた面の最外層に少なくともアクリル系樹脂とポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂との架橋物からなるバインダー成分と、ステアリン酸亜鉛、レーザー回折・散乱法によって測定した体積基準のメジアン径D 50 (JIS Z8825)が1.0~6.0μmの範囲である柱状軽質炭酸カルシウム微粒子とによって少なくとも構成される透明性を有した保護層を少なくとも設けた感熱記録体であって、保護層中の前記柱状軽質炭酸カルシウム微粒子の含有量が保護層全体の10.00質量%以上25.00質量%以下の範囲で且つ保護層中のステアリン酸亜鉛の含有量が保護層全体の10.00質量%以上30.00質量%以下の範囲であり、感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度(JIS Z8741)が30.00以下で且つ感熱記録体のヘーズ(JIS K7136)が60.00%以上80.00%以下の範囲で且つ感熱記録体の全光線透過率(JIS K7361-1)が70.00%以上である感熱記録体。
【請求項2】
柱状軽質炭酸カルシウム微粒子の長径と短径の比からなるアスペクト比が5~50の範囲である請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項4】
透明フィルム基材の感熱層を設けた面とは反対側の面に、透明性を有した粘着層を設けた請求項1~のいずれかに記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム基材の一方の面に、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱エネルギーを受けて発色する透明性を有した感熱層と、さらに感熱層を設けた面の最外層に感熱層を保護するための透明性を有した保護層とを少なくとも設けた感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙基材上に主にロイコ染料と顕色剤とバインダー成分などからなる感熱層を塗布した感熱記録体は、取り扱いやすい・廃棄物の発生が少ない・コストパフォーマンスに優れる・プリンタの構造が簡便で且つ小型化が容易である等といった理由などから、レシート用紙やファックス用紙や各種チケットや商品表示ラベルや物流管理ラベルなどの用途ですでに幅広く用いられている。しかしながら、この様な紙基材の上に感熱層を設けただけの感熱記録体は、水に濡れてしまうと印字が薄くなったり、基材の紙が変形したり、感熱層自体が紙基材から剥離してしまうなどの問題が発生する事が知られており、屋外や水に濡れ易いような環境下で使用することは敬遠されてきた。
【0003】
このような問題を解決する為に、従来から各種の取り組みが行われており、基材に耐水性のある合成紙やフィルムを用い、さらに感熱層が直接水と接触しないように感熱層の上層に保護層や保護フィルムを設けたりするなど(特許文献1)の改良が行われてきた。この様な耐水性の改良が行われた感熱記録体のうち、透明なフィルム基材の上の一方の面に透明性を有した感熱層と、その上層に耐水性と透明性とを有する保護層等を積層して設けた感熱記録体は、透明である事を利用して背景のデザインや照明を活かした一時的な屋外掲示物、例えば木目調看板や白看板や照明看板の表面に貼付するなどして旅館などの歓迎看板や慶弔時の案内看板や店舗のメニュー表示といった用途や、包装されている食品が見えなくなる事を防ぎながらも内容物表示や生産日や消費期限が表示可能な食品包装印刷媒体、例えば透明な感熱層を有した食品の透明包装フィルムそのものや食品の透明包装に貼付する透明な感熱層を有した透明ラベルといった用途に使用されている。
【0004】
しかしながら、上述したような透明フィルム基材上に透明性を有した感熱層と透明性を有した保護層や保護フィルムを設けたような感熱記録体は、感熱記録体の保護層や保護フィルムを設けた側の光沢が非常に強い事などが原因で、従来の紙や木に墨汁を使って直接筆書きしたような屋外掲示物に比べて見た目の質感が大きく異なるだけでなく、印字を見る角度や印字に当たる光の角度によって印字の視認性が非常に悪くなるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-255469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、透明性と耐水性を有した感熱記録体であって、特に印字の視認性に優れた感熱記録体を提供する事が本発明の主たる課題である。
【課題を解決する為の手段】
【0007】
これらの課題を解決する為に、本発明者が検討を行った結果、透明フィルム基材の一方の面にロイコ染料と顕色剤とバインダー成分から少なくとも構成される透明性を有した感熱層を設け、さらに感熱層を設けた面の最外層に感熱層を保護し耐水性を付与する為に少なくともバインダー成分と滑剤と感熱記録体の保護層側の光沢を抑制させるための各種マット剤から構成される透明性を有した保護層を設け、前記各種マット剤について検討した結果、炭酸カルシウムを保護層に使用する事によって、感熱記録体の保護層側の光沢を効果的に抑制しつつも、印字品質やスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果といった感熱記録体の基本性能を低下させない事が可能である事を見出した。
【0008】
さらに発明者が感熱層や保護層を構成する各種原料の配合等を検討しながら、感熱記録体の透明性や印字の視認性や保護層側表面のマット感に関して検討した結果、感熱層を設けた面の最外層に少なくともアクリル系樹脂とポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂との架橋物からなるバインダー成分と、ステアリン酸亜鉛と、レーザー回折・散乱法によって測定した体積基準のメジアン径D 50 (JIS Z8825)が1.0~6.0μmの範囲である柱状軽質炭酸カルシウム微粒子とによって少なくとも構成される透明性を有した保護層を少なくとも設け、さらに保護層中の前記柱状軽質炭酸カルシウム微粒子の含有量を保護層全体の10.00質量%以上25.00質量%以下の範囲で且つ保護層中のステアリン酸亜鉛の含有量を保護層全体の10.00質量%以上30.00質量%以下の範囲に限定した上で、感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度(JIS Z8741)を30.00以下に調整し且つ感熱記録体のヘーズ(JIS K7136)を60.00%以上80.00%以下の範囲に調整し且つ感熱記録体の全光線透過率(JIS K7361-1)を70.00%以上に調整する事によって、感熱記録体が適度な透明性を維持しつつも、感熱記録体の保護層側の光沢を抑制する事が可能である為に印字の視認性に優れた感熱記録体を提供する事が可能である事を見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱記録体を用いれば、耐水性を有しているので屋外や水に接する用途に使用可能で、さらに適度な透明性を有している為に光を透過させたり感熱記録体の背面のデザインを利用したり感熱記録体の背面の物を視認させたりする事も可能で、さらにマット感のある質感を有していて印字の視認性に優れた印字物を作製する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の感熱記録体の実施形態の一例を示す模式的断面図。
図2】本発明の感熱記録体の実施形態の一例を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における感熱記録体4は、基本的に図1に示されるように、透明フィルム基材1の一方の面に透明性を有した感熱層2を設け、さらに感熱層2を設けた面の最外層に透明性を有した保護層3を少なくとも設けた構造を特徴としている。なお本発明の課題を解決するのに支障のない範囲で、透明フィルム基材1と感熱層2の間や感熱層2と保護層3の間に印字適性や塗工性や各種耐薬品性や耐候性や密着性等を改善する為の各種機能性付与層(アンダー層、クッション層、プライマー層、バリヤー層、中間層など)等を別途設けても構わない。また本発明の感熱記録体4を看板や食品包装材料などに簡便に貼付する為に、図2に示されるように透明フィルム基材1の感熱層2を設けた面と反対側の面に透明性を有した粘着層5をあらかじめ設けてラベルとして使用しても構わない。また、図1に示すような粘着層5を設けない感熱記録体4に関しては、感熱記録体4に対して印字を行った後に、図2の粘着層5に相当する位置に透明性を有した接着剤を後加工で設けた上で看板などに貼付して使用するなどしても構わない。
【0012】
<<感熱記録体に関して>>
本発明における感熱記録体は、透明フィルム基材の一方の面に透明性を有した感熱層を設け、さらに感熱層を設けた面の最外層に透明性を有した保護層を少なくとも設けた構造を特徴としている。
【0013】
本発明の感熱記録体の厚みは特に限定はされないが、20~300μmの範囲である事が好ましく、30~120μmがより好ましい。感熱記録体の厚みが前記範囲内であれば、印字の際に印字の不具合やプリンタ内での搬送不良などの不具合が発生しにくく取り扱い易い。
【0014】
本発明の感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度(JIS Z8741)は、40以下である事が好ましく、30以下である事がより好ましい。60度鏡面光沢度は低ければ低いほど印字の視認性が向上するので特に下限値は限定されないが、60度鏡面光沢度が1以上であれば本発明の課題を解決する事に支障は発生しない。本発明者は印字の視認性について検討を行った結果、基本的に感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度が低ければ低いほど、印字を見る角度や印字に当たる光の角度によって視認性が悪化する現象が抑制され、少なくとも60度鏡面光沢度が40以下になれば印字の視認性がほぼ良好になることを見出した。なお本発明の感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度とは、特に記載がない限り、未印字部分の感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度の事である。
【0015】
本発明の感熱記録体のヘーズ(JIS K7136)は、85%以下である事が好ましく、80%以下である事がより好ましい。ヘーズが85%よりも高くなると、本発明の感熱記録体の透明性が極端に低下してしまい、感熱記録体の背面にある物やデザインの視認性が大幅に低下する。例えば木目調看板にヘーズが85%を超える感熱記録体を用いた印字物を貼付した際に、本来活かさなければならない木目調のデザインがぼやけて見えてはっきりと認識できない。逆にヘーズは低ければ低いほど感熱記録体の背面にある物やデザインの視認性が向上する傾向がある為に特に下限値は限定されないが、本発明の感熱記録体においてヘーズは前述した60度鏡面光沢度とほぼ逆相関の関係にあり、感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度を40以下に抑制しようとするとヘーズは少なくとも60%以上になってしまうのでそれをヘーズの下限としてもよい。なお本発明の感熱記録体のヘーズとは、特に記載がない限り、未印字部分の感熱記録体のヘーズの事である。
【0016】
本発明の感熱記録体の全光線透過率(JIS K7361-1)は、少なくとも70%以上である事が好ましく、80%以上である事がより好ましい。全光線透過率が70%以上であれば少なくとも感熱記録体自体の透明性が最低限担保され、感熱記録体の背面からの光を充分に透過し、さらには感熱記録体の背面にある物やデザインの視認性が良好となる。全光線透過率は高ければ高いほど感熱記録体の前記性能が向上する傾向があるので、全光線透過率の上限は特になく100%でも問題はないが、現実的には透明フィルム基材自体の全光線透過率の上限が95%をほとんど超える事はほとんどないのでそれをもって上限としてもよい。なお本発明の感熱記録体の全光線透過率とは、特に記載がない限り、未印字部分の感熱記録体の全光線透過率の事である。
【0017】
本発明の感熱記録体の保護層側の反射濃度(ISO 5-4)は特に限定はされないが、0.01~0.20の範囲である事が好ましく、0.01~0.15の範囲である事がより好ましい。本発明における反射濃度は、X-Rite社製の分光測色/濃度計「X-Rite eXact」を用いて測定した。感熱記録体の保護層側の反射濃度が前記範囲の上限値を超えると、感熱記録体の背面側にある物やデザインが薄く青味がかったように見える不具合が発生する。これは感熱層のロイコ染料と顕色剤が製造過程の例えば乾燥工程における熱によって反応して発色してしまう所謂「カブリ」と呼ばれる現象であり、本来このように印字を行う前に発色してしまうというのは好ましくない。また本発明に用いる感熱記録体は屋外掲示用途等に使用する為にある程度の耐熱性が必要であり、感熱記録体を40℃に設定したドライヤー内に24時間静置しても感熱記録体の保護層側の反射濃度が前述した範囲内である事が好ましい。なお本発明の感熱記録体の保護層側の反射濃度とは、特に記載がない限り、未印字部分の感熱記録体の保護層側の反射濃度の事である。
【0018】
本発明の感熱記録体において印字部分の反射濃度の最大値は少なくとも1.50以上ある事が好ましく、1.60以上ある事がより好ましい。印字部分の反射濃度が1.50よりも小さい時は、感熱層の発色が不十分である為に青味がかったような印字になったり、感熱層の発色は充分であるが保護層の影響で白濁したような外観の印字になったりしている事が多く、そのような場合には印字の視認性が悪化する傾向がある。
【0019】
本発明の感熱記録体において印字部分の60度鏡面光沢度は少なくとも50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。印字部分の60度鏡面光沢度が50以下になれば、印字の視認性が向上する傾向があり、逆に印字部分の60度鏡面光沢度が50を超えると、印字を見る角度や印字に当たる光の角度によって印字の視認性が悪化する傾向がある。感熱記録体の印字部分の60度鏡面光沢度は小さければ小さいほど印字の視認性が向上するので、その下限については特に限定はされないが、印字部分の60度鏡面光沢度が1以上であれば本発明の課題を解決する事に支障は発生しない。印字部分の60度鏡面光沢度の測定は、印字部分の反射濃度がほぼ最大、より具体的には印字部分の反射濃度が印字部分の反射濃度の最大値の95%以上になった時の感熱記録体の印字部分を測定する事によって行う事が好ましい。なお印字部分の60度鏡面光沢度は、感熱記録体の未印字部分の保護層側の60度鏡面光沢度とほぼ相関関係があり、感熱記録体の未印字部分の保護層側の60度鏡面光沢度が40以下であれば印字部分の60度鏡面光沢度もおおむね50以下になる傾向がある。
【0020】
<<感熱記録体の各構成体について>>
次に本発明の感熱記録体の各構成体についての詳細説明を下記に示す。
【0021】
<透明フィルム基材>
本発明の感熱記録体に使用する透明フィルム基材は特に限定はされず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン-メタクリル酸共重合体フィルム等の各種公知の合成樹脂を原料とした透明なフィルムを使用することが可能であるが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを使用する事がより好ましい。本発明に使用する透明フィルム基材の全光線透過率は少なくとも75%以上ある事が好ましく、80%以上である事がより好ましく、さらに本発明に使用する透明フィルム基材のヘーズは60%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。また本発明に使用する透明フィルム基材は、単層フィルムでも複数のフィルムを積層させた多層フィルムでも構わない。
【0022】
本発明の透明フィルム基材の厚みは特に限定はされないが、6~250μmの範囲である事が好ましく、20~100μmの範囲である事がより好ましく、30~80μmの範囲である事が最も好ましい。透明フィルム基材の厚みが前記範囲内であれば、プリンタでの印刷適性や搬送性に問題がなく、さらに感熱記録体の背面側にある物やデザインの視認性に関しても問題なく使用可能である。
【0023】
<感熱層>
本発明の感熱記録体に使用される感熱層は、少なくともロイコ染料と顕色剤とバインダー成分によって構成されており、さらに必要に応じてその他の各種原料を配合してもよい。本発明の感熱層は、透明性を有している必要があり、少なくとも淡色半透明である事が好ましく、無色透明である事がより好ましい。感熱層はサーマルプリンタのサーマルヘッドによる熱が加えられた部分においてのみロイコ染料と顕色剤が反応して発色する機能を有している。
【0024】
本発明の感熱記録体の感熱層に使用されるロイコ染料としては、感熱記録体に一般的に用いられているものの中から目的に応じて適宜選択することができ、具体的には、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系などが挙げられる。より具体的には、例えば、2-アニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジペンチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-[エチル(4-メチルフェニル)アミノ]フルオラン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジエチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-クロロフタリド、3,3-ビス(p-ジブチルアミノフェニル)フタリド、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジメチルアミノ-5,7-ジメチルフルオラン、3-(N-メチル-N-イソブチル)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミル)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ベンズフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-{N-(3′-トリフルオルメチルフェニル)アミノ}-6-ジエチルアミノフルオラン、2-{3,6-ビス(ジエチルアミノ)-9-(o-クロロアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-メチル-N-アミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2′,4′-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6′-クロロ-8′-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、6′-ブロモ-3′-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、3-(2′-ヒドロキシ-4′-ジメチルアミノフェニル)-3-(2′-メトキシ-5′-クロロフェニル)フタリド、3-(2′-ヒドロキシ-4′-ジメチルアミノフェニル)-3-(2′-メトキシ-5′-ニトロフェニル)フタリド、3-(2′-ヒドロキシ-4′-ジエチルアミノフェニル)-3-(2′-メトキシ-5′-メチルフェニル)フタリド、3-(2′-メトキシ-4′-ジメチルアミノフェニル)-3-(2′-ヒドロキシ-4′-クロロ-5′-メチルフェニル)フタリド、3-モルホリノ-7-(N-プロピル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロロ-7-(N-ベンジル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-(ジ-p-クロロフェニル)メチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロロ-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-5-メチル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ピペリジノフルオラン、2-クロロ-3-(N-メチルトルイジノ)-7-(p-n-ブチルアニリノ)フルオラン、3-(N-メチル-N-イソプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3′)-6′-ジメチルアミノフタリド、3-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)-5,6-ベンゾ-7-α-ナフチルアミノ-4′-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-{N-エチル-N-(2-エトキシプロピル)アミノ}-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-{N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ}-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-メシチジノ-4′,5′-ベンゾフルオラン、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-{1,1-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル}フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-{1,1-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル}-6-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-p-ジメチルアミノフェニル-1-フェニルエチレン-2-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-p-ジメチルアミノフェニル-1-p-クロロフェニルエチレン-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4′-ジメチルアミノ-2′-メトキシ)-3-(1″-p-ジメチルアミノフェニル-1″-p-クロロフェニル-1″,3″-ブタジエン-4″-イル)ベンゾフタリド、3-(4′-ジメチルアミノ-2′-ベンジルオキシ)-3-(1″-p-ジメチルアミノフェニル-1″-フェニル-1″,3″-ブタジエン-4″-イル)ベンゾフタリド、3-ジメチルアミノ-6-ジメチルアミノ-フルオレン-9-スピロ-3′(6′-ジメチルアミノ)フタリド、3,3-ビス{2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル}-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-ビス{1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル}-5,6-ジクロロ-4,7-ジブロモフタリド、ビス(p-ジメチルアミノスチリル)-1-ナフタレンスルホニルメタン、ビス(p-ジメチルアミノスチリル)-1-p-トリルスルホニルメタンなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0025】
本発明の感熱記録体の感熱層に使用される顕色剤としては、公知の電子受容性の化合物の中から目的に応じて適宜選択することができ、具体的には、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸又はその金属塩等が挙げられる。より具体的には、例えば、4,4′-イソプロピリデンビスフェノール、3,4′-イソプロピリデンビスフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(o-メチルフェノール)、4,4′-セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(o-ターシャリーブチルフェノール)、4,4′-シクロヘキシリデンジフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(2-クロロフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス(6-ターシャリーブチル-2-メチル)フェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4′-チオビス(6-ターシャリーブチル-2-メチル)フェノール、4,4′-ジフェノールスルホン、4,2′-ジフェノールスルホン、4-イソプロポキシ-4′-ヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4′-アリルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジロキシ-4′-ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジフェノールスルホキシド、P-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、P-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、1,7-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3,5-ジオキサヘプタン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3-オキサヘプタン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-プロパン、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2-ヒドロキシプロパン、N,N′-ジフェニルチオ尿素、N,N′-ジ(m-クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、5-クロロ-サリチルアニリド、サリチル-o-クロロアニリド、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、2-アセチルオキシ-3-ナフトエ酸の亜鉛塩、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸の亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属塩、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、4-{β-(p-メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4′-ジフェノールスルホン、3,3′-ジアリル-4,4′-ジフェノールスルホン、α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-α-メチルトルエンチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4′-チオビス(2-メチルフェノール)、3,4-ヒドロキシ-4′-メチル-ジフェニルスルホン、4,4′-チオビス(2-クロロフェノール)、N-p-トリルスルホニル-N’-フェニルウレア、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、ジフェニルスルホン誘導体、ウレアウレタン化合物誘導体等が挙げられるがこれらに限定されない。前述した顕色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0026】
本発明の感熱記録体の感熱層に使用されるバインダー成分としては、感熱記録体に一般的に用いられている物の中から無色透明もしくは淡色半透明の透明性を有したバインダー成分を目的に応じて適宜選択して使用する事ができ、具体的には、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、澱粉又はその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ソーダ、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリブチルメタクリレート、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体等の(メタ)アクリル酸誘導体を主構成体とするアクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体などが挙げられるがこれらに限定されない。前述したバインダー成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお感熱層のバインダー成分は、ロイコ染料や顕色剤がアルコールやその他の有機溶剤によって溶解して反応してしまう事などから、水に溶解または水に分散またはエマルジョン化したものを使用する事が好ましい。
【0027】
本発明の感熱層には、必要に応じて印字感度を向上させる為に感度向上剤を添加しても構わない。たとえば、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p-ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β-ベンジルオキシナフタレン、β-ナフトエ酸フェニルエステル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニルエステルなどを使用することができる。
【0028】
本発明の感熱層には必要に応じて、さらに感熱層の基本的性能を阻害しない程度に、界面活性剤や、植物性ワックス、鉱物性ワックス、石油系ワックス、合成ワックス等のワックス類や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、シリカなどの無機フィラーの微粉末の他、ポリエチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの有機フィラーの微粉末等の補助添加成分を適宜使用することができる。
【0029】
本発明の感熱層用塗料は、ロイコ染料や顕色剤がアルコールやその他有機溶剤に溶解して反応してしまう事などから、水を溶媒や分散媒として上記各種感熱層用原料を各種公知の方法で撹拌混合及び必要に応じて分散するなどして水性塗料として作製される。
【0030】
本発明の感熱記録体の感熱層は各種公知の塗装方法によって感熱層用塗料を透明フィルム基材上に塗布した後に熱風乾燥機などによって乾燥することによって設けられる。乾燥後の感熱層の厚みは特に限定はされないが、3.0~15.0μmの範囲である事が好ましく、4.0~10.0μmの範囲である事がより好ましい。感熱層の厚みが前記範囲内であれば、印字部分の反射濃度が充分であり且つ印字感度にも優れた感熱記録体を得ることが可能である。
【0031】
<保護層>
本発明の感熱記録体の保護層は、透明フィルム基材の透明性を有した感熱層を設けた面の最外層として設けられ、バインダー成分と滑剤と炭酸カルシウムによって少なくとも構成されていて透明性を有している事を特徴としている。保護層は、水や油や可塑剤等の感熱層の発色を喪失させる原因物質と感熱層とを直接接触させない事によって印字の耐久性を向上させる役割を有しているだけでなく、印字の際のスティッキング現象を抑制する効果やサーマルヘッドにおける保護層成分に由来する付着物や堆積物を清掃する効果を基本的に有していなければならない。本発明の感熱記録体の保護層の場合は、上記の基本的な役割に加えて、感熱記録体の保護層側の光沢を抑制する事によって感熱記録体の印字の視認性を向上させる事にも優れている事を特徴としている。なお、本発明の保護層は、感熱層の上に直接設けられる事も想定される為、その場合には感熱層に含まれるロイコ染料や顕色剤が保護層用塗料に含まれるアルコールやその他の有機溶剤によって溶解して反応してしまうといった懸念がある事などから、本発明の保護層用塗料は基本的に水性塗料である事が好ましい。
【0032】
本発明の保護層に使用されるバインダー成分としては、特に限定はされないが透明性と耐熱性を有した各種公知の原料を適宜選択して使用すればよく、具体的には、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの樹脂のシリコーン変性樹脂等を好適に使用する事が可能である。前述したバインダー成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0033】
前述した保護層のバインダー成分として好適に使用可能な樹脂の中でも、透明性と耐熱性と耐水性と取り扱いに優れたアクリル系樹脂をバインダー成分として用いる事がより好ましい。本発明におけるアクリル系樹脂とは、アクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体を主構成体とした重合体からなる樹脂の事をいい、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、各種アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル等)、各種メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t‐ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル等)、各種アクリル酸アミド(N-メチルアクリル酸アミド、N-エチルアクリル酸アミド、N-プロピルアクリル酸アミド、N-イソプロピルアクリル酸アミド、N-n-ブチルアクリル酸アミド、N-t-ブチルアクリル酸アミド、N-イソブチルアクリル酸アミド、N,N-ジメチルアクリル酸アミド、N,N-ジエチルアクリル酸アミド、N,N-ジプロピルアクリル酸アミド、N,N-ジブチルアクリル酸アミド等)、各種メタクリル酸アミド(N-メチルメタクリル酸アミド、N-エチルメタクリル酸アミド、N-プロピルメタクリル酸アミド、N-イソプロピルメタクリル酸アミド、N-n-ブチルメタクリル酸アミド、N-t-ブチルメタクリル酸アミド、N-イソブチルメタクリル酸アミド、N,N-ジメチルメタクリル酸アミド、N,N-ジエチルメタクリル酸アミド、N,N-ジプロピルメタクリル酸アミド、N,N-ジブチルメタクリル酸アミド等)、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の各種アクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体の1種が重合してなる樹脂でもよいし、2種以上を共重合してなる樹脂でもよい、さらには前述した各種アクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体を主構成体とし、さらにそれらと共重合が可能な不飽和単量体であるアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等と共重合してなる樹脂でもよい。前述したアクリル系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお前述した保護層のバインダー成分として好適に使用可能な樹脂は、保護層用塗料が基本的に水性塗料である事が好ましい事などから、基本的には水に溶解または水に分散またはエマルジョン化したものを用いることが好ましい。
【0034】
本発明の保護層には、その他のバインダー成分として、保護層の各種性能を向上させる為に、前述した保護層のバインダー成分として好適に使用可能な樹脂とは別に、感熱層のバインダー成分として使用可能と例示した原料等を保護層の基本的な性能を損なわない範囲で必要に応じて少量添加しても構わない。
【0035】
本発明の保護層におけるバインダー成分の含有量は、保護層全体の40~80質量%の範囲である事が好ましく、保護層全体の50~75質量%の範囲である事がより好ましい。保護層におけるバインダー成分の含有量が前記範囲の下限値を下回ると保護層の成膜性の悪化が原因で耐水性が低下する傾向があり、逆に前記範囲の上限値を超えると滑剤や炭酸カルシウムの添加量不足によりスティッキング現象が発生し易くなったり、感熱記録体の保護層側の光沢を抑制する効果が損なわれたりする傾向がある。
【0036】
本発明の保護層用塗料にさらに架橋剤を添加する事によって、保護層のバインダー成分の一部が少なくともアクリル系樹脂と架橋剤との架橋物によって構成される事によって、保護層の耐熱性を向上させてスティッキング現象の抑制性能を向上させたり、耐水性をさらに向上させたりする事が可能である。本発明の保護層用塗料に使用可能な架橋剤は特に限定はされず、各種公知の架橋剤が使用可能であり、例えば、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が使用できるが、アジリジン系架橋剤を使用する事が好ましく、アジリジン系架橋剤の中でもアクリル系樹脂との反応性に優れていて且つ自己架橋性にも優れるという理由でポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂を使用する事が最も好ましい。前述した架橋剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお保護層に使用する前記架橋剤は、保護層用塗料が基本的に水性塗料である事が好ましい事などから、水に溶解または水に分散可能な架橋剤樹脂を使用する事が好ましい。
【0037】
本発明の保護層用塗料に添加される架橋剤の添加量は特に限定はされないが、バインダー成分と架橋剤との固形分の質量比で100:5~100:30の範囲で添加する事が好ましく、より好ましくは100:10~100:20の範囲で添加する事が好ましい。架橋剤の添加量が前記範囲内であれば、架橋剤の添加による耐熱性や耐水性などの性能の向上を充分に得る事が可能である。
【0038】
本発明の感熱記録体の保護層には、印字の際のサーマルヘッドと保護層間の滑性を向上させたり、サーマルヘッドに対する保護層成分からなる付着物の堆積や焼付を防止する為にサーマルヘッドの清掃性を向上させたりする事によって、印字の際のスティッキング現象の発生を抑制して印字品質を安定化させる為に滑剤を添加する事が必要である。
【0039】
本発明の保護層に使用される滑剤は特に限定はされず、例えば、カルナウバワックスの様な各種植物系ワックス、モンタン酸ワックスの様な各種鉱物系ワックス、パラフィンワックスの様な各種石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスやポリエチレンワックスの様な各種合成ワックス及びその変性物、ステアリン酸エステルの様な各種高級脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛の様な各種高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の各種公知の滑剤を適宜選択して使用する事が可能であるが、これらの中でも特に印字の際のサーマルヘッドと保護層間の滑性付与効果に優れていて、さらにサーマルヘッドの清掃効果にも優れているステアリン酸亜鉛を使用する事がより好ましい。
【0040】
前述した保護層に使用される滑剤は、保護層用塗料が水性塗料である事が好ましい事などから、水に微粒子化して分散した状態の物を使用する事が好ましい。この時の微粒子化された滑剤のレーザー回折・散乱法によって測定した体積基準のメジアン径D50(JISZ8825)は0.05~1.50μmの範囲である事が好ましく、0.10~1.00μmの範囲である事がより好ましい。滑剤の体積基準のメジアン径D50が前記範囲内であれば、サーマルヘッドと保護層間の滑性付与効果に優れていて且つサーマルヘッドの清掃効果にも優れているので結果的にスティッキング現象の抑制効果にも優れている。滑剤の体積基準のメジアン径D50が前記範囲の下限を下回ると、サーマルヘッドと保護層間の滑性が悪化していく傾向があり、逆に滑剤の体積基準のメジアン径D50が前記範囲の上限を上回るとサーマルヘッドの清掃効果が低下する傾向がある。
【0041】
本発明の保護層における滑剤の含有量は、保護層全体の10~30質量%である事が好ましく、保護層全体の15~25質量%である事がより好ましい。保護層における滑剤の含有量が前記範囲内であれば、スティッキング現象の抑制効果に優れていて印字品質も良好である。保護層における滑剤の含有量が前記範囲の下限を下回ると、滑剤による滑性付与効果やサーマルヘッドの清掃効果が得られずスティッキング現象が発生し易くなる傾向があり、逆に保護層における滑剤の含有量が前記範囲の上限を上回ると、次第に保護層の成膜性が阻害されていく為に耐水性が低下していく傾向がある。その他に、保護層における滑剤の含有量は、感熱記録体の保護層側の光沢に影響を与える事が判明しており、保護層における滑剤の含有量が少なくなると、感熱記録体の保護層側の光沢が強くなり、逆に保護層における滑剤の含有量が多くなると、感熱記録体の保護層側の光沢は抑制される傾向がある。
【0042】
本発明の保護層には、感熱記録体の保護層側の光沢を抑制する事によって、感熱記録体の印字の視認性を向上させる性能を付与する必要性があり、その為には保護層の光沢感を抑制する為の所謂マット剤を少なくとも保護層に添加する事が必要であると考えられる。そこで本発明者が保護層に添加するマット剤について検討した結果、保護層に炭酸カルシウムを添加すれば、感熱記録体の印字品質を低下させずに感熱記録体の保護層側の光沢を効果的に抑制する事が可能で、さらにスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果も若干有していて、さらにサーマルヘッドの摩耗に関しても他のマット剤と比較して少ない事を見出した。
【0043】
本発明の保護層に使用する炭酸カルシウムの種類は特に限定はされず、製造方法別の観点で見ると天然の石灰石鉱石を粉砕加工し微粉末化した重質炭酸カルシウムと炭酸ガス反応法や可溶性塩反応法等で化学的に合成した軽質炭酸カルシウムがあるがどちらも本発明の保護層に使用可能であり、また軽質炭酸カルシウムの粒子形状別の観点でみると立方体状、紡錘状、柱状、針状の軽質炭酸カルシウムなどがあるがそれらいずれも本発明の保護層に使用可能である。
【0044】
しかしながら本発明者が検討を重ねた結果、天然の石灰石を粉砕加工して作製された重質炭酸カルシウムに関しては、粒子形状が不定形であったり硬度の高い不純物の混入があったりする事などが原因でサーマルヘッドの摩耗がやや多くなる傾向があり、立方体状及び紡錘状の軽質炭酸カルシウムにおいては、水性塗料である保護層塗料中での分散性がやや劣っていたり、感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果がやや不足したりする傾向がある事などが見いだされ、本発明の保護層に使用する炭酸カルシウムとしては、保護層塗料中での分散性に優れ、サーマルヘッドの摩耗が少なく、感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果に優れた柱状または針状の軽質炭酸カルシウムを使用する事がより好ましい事が判明した。
【0045】
本発明で用いられる柱状の軽質炭酸カルシウム及び針状の軽質炭酸カルシウムとは、粒子形状が柱状及び針状(繊維状という場合もある)であって且つ結晶構造が主にアラゴナイト構造で構成される軽質炭酸カルシウムの微粒子の事であって、さらにその微粒子の長径と短径の比からなるアスペクト比が5~50、より好ましくは8~20の範囲であるような軽質炭酸カルシウムの事をいう。使用する柱状及び針状の軽質炭酸カルシウム微粒子のアスペクト比が前記範囲内であれば、保護層塗料中での分散性に優れ且つ感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果に優れた性能を発揮する。
【0046】
本発明の保護層が含有する炭酸カルシウムの粒子径は、感熱記録体の保護層側の光沢や感熱記録体の全光線透過率及びヘーズといった各種光学特性だけでなく、印字の際の印字品質やスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果にも影響を与える。本発明の保護層が含有する炭酸カルシウムのレーザー回折・散乱法によって測定した体積基準のメジアン径D50(JIS Z8825)は1.0~6.0μmの範囲である事が好ましく、1.0~4.0μmの範囲である事がより好ましい。保護層が含有している炭酸カルシウムの粒子径が前記範囲内であれば感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果に優れ、印字の際の印字品質が良好で、さらにスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果に優れている。炭酸カルシウムの粒子径が前記範囲の下限を下回ると、感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果が低下していく傾向があり、さらに保護層から露出する炭酸カルシウムの微粒子の量が減少していく事が原因となって印字の際のスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果も低下していく傾向がある。逆に炭酸カルシウムの粒子径が前記範囲の上限を上回ると印字の際に炭酸カルシウムの微粒子がサーマルヘッドの熱の伝達を阻害したりする事などが原因となり印字に濃淡ムラやスジムラが発生したり印字感度が悪化するなどの印字品質の問題が発生し易くなる傾向がある。
【0047】
本発明の保護層における炭酸カルシウムの含有量は、保護層全体の10~25質量%である事が好ましく、保護層全体の10~20質量%である事がより好ましい。保護層における炭酸カルシウムの含有量が前記範囲内であれば、感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果に優れ、印字の際の印字品質が良好で、さらにスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果に優れている。保護層における炭酸カルシウムの含有量が前記範囲の下限を下回ると、感熱記録体の保護層側の光沢が急激に上昇し、さらにはスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果もやや低下していく傾向があり、逆に前記範囲の上限を上回ると印字に濃淡ムラやスジムラが発生したり炭酸カルシウムの発色が強すぎて印字が白く濁って見えたりするなどの印字品質の問題が発生し易くなるだけでなく、サーマルヘッドに炭酸カルシウム自体が堆積し易くなるなどサーマルヘッドの清掃効果が低下したり、保護層の成膜性が阻害される事などが原因で耐水性が低下したり、サーマルヘッドの摩耗量が多くなったりする傾向がある。
【0048】
本発明の保護層には必要に応じて、保護層用塗料の顔料分散性や塗料粘度や濡れ性の改良の為に各種界面活性剤や分散剤等を保護層の基本的性能を阻害しない程度に適宜添加しても構わない。また感熱記録体の耐光性などを向上させる為に、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を保護層の基本的性能を阻害しない程度に適宜添加しても構わない。
【0049】
本発明の保護層用塗料は、感熱層の上に直接塗布される事が想定される為、その際に感熱層のロイコ染料や顕色剤がアルコールやその他の有機溶剤に溶解して反応してしまう事などから、水を溶媒や分散媒として上記各種保護層用原料を各種公知の方法で撹拌混合及び分散するなどして作製される水性塗料である事が好ましい。
【0050】
本発明の感熱記録体の保護層は各種公知の塗装方法によって、感熱層の上もしくは感熱層より上層の何れかの層の上に保護層用塗料を塗布した後に熱風乾燥器などによって乾燥する事によって設けられる。乾燥後の保護層の厚みは特に限定はされないが、0.5~5.0μmの範囲である事が好ましく、1.0~4.0μmの範囲である事がより好ましい。保護層の厚みが前記範囲内であれば、印字の際の印字感度と印字品質とスティッキング現象の抑制効果に優れていて、さらに耐水性にも優れた感熱記録体を得る事が可能である。
【0051】
<粘着層>
本発明の感熱記録体は図2に示すように、感熱記録体を看板などに貼付し易いように、透明フィルム基材1の感熱層2を設けた面の反対側の面に、透明性を有した粘着層5を予め設けてもよい。実際に使用する場合において、本発明の感熱記録体はロール状もしくはシート状で用いられる事が多く、その場合に粘着層5と保護層3が直接接触した場合には、粘着層5と保護層3がブロッキングを起こしたり、粘着層5に含まれる成分が保護層3に移行して悪影響を与えたり、粘着層5に含まれる成分が保護層3に移行した後さらに保護層3を浸透して感熱層2に含まれるロイコ染料や顕色剤までに悪影響を与えたりする可能性がある為に、一般的には粘着層5の透明フィルム基材1からみて外側に剥離紙などのセパレーターを貼り合せて積層するなどして使用する事が多い。
【0052】
本発明の感熱記録体の粘着層に使用する粘着剤は特に限定はされず、各種公知の粘着剤、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を要求品質に応じて適宜選択して使用すれば良いが、本発明の性質上、前述した各種粘着剤の中でも可能な限り無色透明な粘着剤を使用する事が好ましい。
【0053】
本発明の粘着層の形成方法は特に限定はされず粘着剤の種類によって各種公知の形成方法を適宜選択する事によって粘着層が設けられる。本発明の粘着層の厚さは特に限定はされないが、5.0~50.0μmの範囲である事が好ましく、10.0~30.0μmの範囲である事が好ましい。
【実施例
【0054】
次に実施例及び比較例及び参考例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0055】
<<感熱記録体の作製方法>>
実施例及び比較例及び参考例に使用する感熱記録体の作製方法について下記に詳細を説明する。
【0056】
表1に実施例及び比較例及び参考例に使用する感熱記録体の保護層に用いられる各原料の詳細と各実施例及び比較例及び参考例用の保護層用塗料の配合比率の詳細を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
<実施例1の感熱記録体の作製>
厚み38μm、全光線透過率89%、ヘーズ5.5%の透明なPETフィルムを基材1とし、その上層に日本化薬株式会社製の透明グレード感熱発色塗料をバーコーターで塗布乾燥して乾燥後の厚みが6.0μmの感熱層を設けた。次に表1に記載の配合1の保護層用塗料配合比率に従って、容器に各種原料を計量後投入して全てが均一に混合されるまで撹拌機で充分に撹拌混合を行う事によって保護層用塗料(配合1)を作製し、前述した感熱層の上に保護層用塗料(配合1)をバーコーターで塗布乾燥して乾燥後の厚みが2.0μmの保護層を設けて実施例1で使用する感熱記録体を作製した。
【0059】
参考例1の感熱記録体の作製>
実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)のバインダー成分から架橋剤を除いた配合である保護層用塗料(配合2)を作製し、それを実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである参考例1で使用する感熱記録体を作製した。
【0060】
参考例2の感熱記録体の作製>
実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)に添加されている柱状軽質炭酸カルシウムを、紡錘状軽質炭酸カルシウムに置き換えた保護層用塗料(配合3)を作製し、それを実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである参考例2で使用する感熱記録体を作製した。
【0061】
<比較例1~3の感熱記録体の作製>
実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)に添加されている柱状軽質炭酸カルシウムをそれぞれ、合成シリカ、タルク、マイカに置き換えて保護層用塗料(配合4~6)を作製し、それらを実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである比較例1~3で使用する感熱記録体をそれぞれ作製した。
【0062】
<比較例4の感熱記録体の作製>
実施例1の基材1を、厚み200μm、全光線透過率70%、ヘーズ85%のPPフィルムである基材2と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである比較例4で使用する感熱記録体をそれぞれ作製した。
【0063】
<比較例5の感熱記録体の作製>
保護層用塗料配合に炭酸カルシウムを全く添加しない保護層用塗料(配合7)を作製し、それを実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである比較例5で使用する感熱記録体を作製した。
【0064】
<比較例6の感熱記録体の作製>
保護層用塗料配合に滑剤(ステアリン酸亜鉛)を全く添加しない保護層用塗料(配合8)を作製し、それを実施例1で使用した保護層用塗料(配合1)と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである比較例6で使用する感熱記録体を作製した。
【0065】
参考例3~8の感熱記録体の作製>
保護層用塗料に添加している柱状軽質炭酸カルシウムとステアリン酸亜鉛の添加量を変えた保護層用塗料(配合9~14)を作製し、それらを実施例1で使用した保護層塗料(配合1)と置き換えた事以外は実施例1の感熱記録体と同じである参考例3~8で使用する感熱記録体をそれぞれ作製した。
【0066】
<<感熱記録体の評価>>
実施例及び比較例及び参考例用に作製した各感熱記録体に関して、下記に示す方法によって各種評価を行った。なお比較例3に関しては、印字品質が非常に良くなかったために一部評価を行わなかった。
【0067】
<印字品質の評価>
感熱記録体の印字品質に関して下記の条件で試験を行い、その結果について下記の評価基準によって感熱記録体の印字品質の評価を行った。
(試験条件)
ゼブラ社製プリンタ「Zebra140XiII」を用いて、印字速度76.2mm/秒、印字濃度15/30の条件で感熱記録体に巾5cm×長さ2cm(サーマルヘッドと平行方向に5cm、印字の流れ方向に2cm)の黒ベタの印字を行い、印字を目視で観察して評価を行った。
(評価基準)
A・・・印字の発色が良好で、濃淡ムラ、スジムラ、ボイド等が全く見られなかった。
B・・・印字の発色が僅かに悪い又は印字が僅かに白濁しており、濃淡ムラ、スジムラ、ボイド等が僅かながら見られる。
C・・・印字の発色が明確に悪い又は印字が明確に白濁しており、濃淡ムラ、スジムラ、ボイド等が明確に見られる。
D・・・印字の発色が非常に悪い又は印字が非常に白濁しており、濃淡ムラ、スジムラ、ボイド等が酷く見られる。
【0068】
<印字の視認性の評価>
感熱記録体の印字の視認性に関して下記の条件で試験を行い、その結果について下記の評価基準によって感熱記録体の印字の視認性に関しての評価を行った。
(試験条件)
ゼブラ社製プリンタ「Zebra140XiII」を用いて、印字速度76.2mm/秒、印字濃度15/30の条件で感熱記録体に1dot文字の印字を行い、印字部分に入射角60度で10cm離れた位置から約1000ルーメンのLED懐中電灯を当てた時の反射角60度の位置で印字を目視で観察して評価を行った。
(評価基準)
A・・・光の鏡面反射は弱く1dot文字を認識するのに全く問題がなかった。
B・・・光の鏡面反射は気になったが、1dot文字を認識するのにあまり問題がなかった。
C・・・光の鏡面反射が強く1dot文字を認識するのがやや困難であった。
D・・・光の鏡面反射が強すぎて1dot文字の認識が全く出来なかった。
【0069】
<透明性の評価>
感熱記録体の透明性に関して評価する為に、より具体的には感熱記録体の背面にあるデザインがよく見えるかどうかという評価を行う為に下記の条件で試験を行い、その結果について下記の評価基準によって感熱記録体の透明性に関しての評価を行った。
(試験条件)
木目調看板に本発明の感熱記録体を透明な接着剤を用いて貼付し、それを感熱記録体側から目視で観察して評価を行った。
(評価基準)
A・・・木目調看板の木目がはっきり見える。
B・・・木目調看板の木目がよく見えるが、全体が僅かに白くぼやけて見える。
C・・・木目調看板の木目があまり良く見えず、全体が明らかに白くぼやけて見える。
D・・・木目調看板の木目が見えない
【0070】
<スティッキング現象の抑制効果の評価>
感熱記録体のスティッキング現象の抑制効果に関して下記の条件で試験を行い、その結果について下記の評価基準によって感熱記録体のスティッキング現象の抑制効果の評価を行った。
(試験条件)
ゼブラ社製プリンタ「Zebra140XiII」を用いて、印字速度76.2mm/秒、印字濃度20/30の条件で感熱記録体に巾5cm×長さ2cmの黒ベタの印字を行い、黒ベタ印字部分を目視で観察して評価を行った。
(評価基準)
A・・・黒ベタ印字部分に濃淡ムラ、保護層の溶融ムラなどが全くない。
B・・・黒ベタ印字部分に濃淡ムラ、保護層の溶融ムラなどが僅かながら見られる。
C・・・黒ベタ印字部分に濃淡ムラ、保護層の溶融ムラなどがはっきり見える。
D・・・黒ベタ印字部分に濃淡ムラ、保護層の溶融ムラなどが酷く、感熱層の発色異常や保護層の剥離なども見られる。
【0071】
<サーマルヘッドの清掃効果の評価>
感熱記録体のサーマルヘッドの清掃効果に関して下記の条件で試験を行い、その結果について下記の評価基準によって感熱記録体のサーマルヘッドの清掃効果の評価を行った。
(試験条件)
ゼブラ社製プリンタ「Zebra140XiII」を用いて、印字速度76.2mm/秒、印字濃度20/30の条件で感熱記録体に巾5cm×長さ2cmの黒ベタの印字を100回連続で行い、印字後サーマルヘッドが充分に冷却された後にサーマルヘッドの電熱素子部分にセロハンテープを貼付した後に剥離し、セロハンテープに付着した付着物を目視で観察して評価を行った。
(評価基準)
A・・・セロハンテープにサーマルヘッドの付着物・堆積物が全く付着していない。
B・・・セロハンテープにサーマルヘッドの付着物・堆積物が僅かに付着している。
C・・・セロハンテープにサーマルヘッドの付着物・堆積物が明確に付着している。
D・・・セロハンテープにサーマルヘッドの付着物・堆積物が多量に付着している。
【0072】
<耐水性の評価>
感熱記録体の耐水性に関して下記の条件で試験を行い、その結果について下記の評価基準によって感熱記録体の耐水性の評価を行った。
(試験条件)
ゼブラ社製プリンタ「Zebra140XiII」を用いて、印字速度76.2mm/秒、印字濃度15/30の条件で感熱記録体に巾5cm×長さ2cm(サーマルヘッドと平行方向に5cm、印字の流れ方向に2cm)の黒ベタの印字を行い、印字後の感熱記録体を精製水の中に完全に浸漬させた状態で室温中において24時間静置した後の感熱記録体の黒ベタ印字部分を目視で観察して評価を行った。
(評価基準)
A・・・耐水性試験の前後で黒ベタ印字部分の発色変化又は異常が全くない。
B・・・耐水性試験の前後で黒ベタ印字部分の発色変化又は異常が僅かに見られる。
C・・・耐水性試験の前後で黒ベタ印字部分の発色変化又は異常が明確に見られる。
D・・・耐水性試験の前後で黒ベタ印字部分の発色変化又は異常が顕著に見られる。
【0073】
本発明の実施例1及び比較例1~4及び参考例1と参考例2の感熱記録体の各種評価結果について表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
本発明の比較例5と比較例6及び参考例3~8の感熱記録体の各種評価結果について表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例1に示すように、透明フィルム基材の一方の面に、ロイコ染料と顕色剤とバインダー成分によって少なくとも構成される透明性を有した感熱層を設け、さらに感熱層を設けた面の最外層に少なくともアクリル系樹脂とポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂との架橋物からなるバインダー成分と、ステアリン酸亜鉛と、レーザー回折・散乱法によって測定した体積基準のメジアン径D 50 (JIS Z8825)が1.0~6.0μmの範囲である柱状軽質炭酸カルシウム微粒子とによって少なくとも構成される透明性を有した保護層を少なくとも設け、さらに保護層中の前記柱状軽質炭酸カルシウム微粒子の含有量が保護層全体の10.00質量%以上25.00質量%以下の範囲で且つ保護層中のステア リン酸亜鉛の含有量が保護層全体の10.00質量%以上30.00質量%以下の範囲である感熱記録体であって、前記感熱記録体の保護層側の60度鏡面光沢度が30.00以下で且つ感熱記録体のヘーズが60.00%以上80.00%以下の範囲で且つ感熱記録体の全光線透過率が70.00%以上である感熱記録体であれば、印字品質やスティッキング現象の抑制効果やサーマルヘッドの清掃効果といった感熱記録体の基本性能に優れていて、さらに透明性と耐水性を有していながらも、印字の視認性にも優れている事が分かる。
【0078】
比較例1の様に、保護層を構成するマット剤として炭酸カルシウムの代わりにシリカを用いたところ、感熱記録体の保護層側の光沢を大きく抑制出来たが、印字の見た目が白っぽくなったり印字部分の反射濃度が1.50を下回ったりするなど印字品質が悪化した。
【0079】
比較例2の様に、保護層を構成するマット剤として炭酸カルシウムの代わりにタルクを用いたところ、印字品質等には問題が無かったが、感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果が乏しく、印字の視認性が悪化した。
【0080】
比較例3の様に、保護層を構成するマット剤として炭酸カルシウムの代わりにマイカを用いたところ、ベタ印字をした際などに多数のボイドが発生するなど、印字品質が大きく損なわれる傾向があった。
【0081】
比較例4の様に、感熱記録体の基材として全光線透過率が低く且つヘーズが高いようなフィルム基材を用いたところ、感熱記録体の透明性が悪化し、感熱記録体の背面にあるデザインや物などが満足に視認出来なくなった。
【0082】
比較例5の様に、保護層にマット剤である炭酸カルシウムを全く添加しないと、感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果が乏しく、印字の視認性が非常に悪化した。
【0083】
比較例6の様に、保護層に滑剤を全く添加しないと、印字の際にスティッキング現象が激しく発生し、その結果として保護層表面が溶融したりするなどして荒れる事などによって保護層の透明性や保護層の感熱層の保護機能などが損なわれ、印字が白く濁って見えるようになるだけでなく、印字にボイドが発生し、印字部分の反射濃度も1.50を下回るなど印字品質の大幅悪化が見られ、さらに感熱記録体の保護層側の光沢の抑制効果も損なわれる事によって印字の視認性も非常に悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明における感熱記録体は、ホテルの歓送迎看板や慶弔時の案内看板などの一時的な屋外及び屋内掲示物や、食品用ラベル及び食品用包装材、各種一般物流管理用ラベル、各種名札用ラベル、各種宛名用ラベルなどの用途に使用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1;透明フィルム基材
2;感熱層
3;保護層
4;感熱記録体
5;粘着層
図1
図2