(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】センソ及びゴオウの医薬用途
(51)【国際特許分類】
A61K 35/65 20150101AFI20231101BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231101BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231101BHJP
A61K 31/585 20060101ALI20231101BHJP
A61K 35/413 20150101ALN20231101BHJP
【FI】
A61K35/65
A61P31/14
A61P1/16
A61K31/585
A61K35/413
(21)【出願番号】P 2019169549
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成31年2月1日 日本薬学会第139年会のウェブサイト(http://nenkai.pharm.or.jp/139/pc/ipdfview.asp?i=1164)にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)平成31年3月22日 日本薬学会第139年会にてポスター発表(22PO-am078)
(73)【特許権者】
【識別番号】591262779
【氏名又は名称】救心製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519338625
【氏名又は名称】学校法人甲南女子学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】堀田 博
(72)【発明者】
【氏名】渕野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】川原 信夫
(72)【発明者】
【氏名】増井 涼
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智潮
(72)【発明者】
【氏名】清水 康晴
(72)【発明者】
【氏名】須藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】堀 厚
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104940793(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177601(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1425389(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102038893(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102397430(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104997759(CN,A)
【文献】特開2005-082504(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103393799(CN,A)
【文献】特開平03-240732(JP,A)
【文献】国際公開第95/003056(WO,A1)
【文献】社団法人日本薬学会編,薬学生・薬剤師のための知っておきたい生薬100 -含 漢方処方- 第1版,株式会社東京化学同人,2004年,pp.63-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
A61K 31/00 -31/327
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センソを有効性成分として含有する、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項2】
シノブファギン、レシブフォゲニン、シノブフォタリン、ブファリン、テロシノブファギン、及びガマブフォタリンから選択されるブファジエノライドを1つ以上含有する、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項3】
ブファリン及び/又はガマブフォタリンを含有する、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【請求項4】
ブファリンを含有する、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センソ及びゴオウの医薬用途、すなわちC型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus:HCV)感染症及びデングウイルス(Dengue virus:DENV)感染症の予防及び治療のための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、フラビウイルス科ヘパシウイルス属に属するRNAウイルスで、ウイルス遺伝子の多様性に基づいて、genotype 1~genotype 7に細分される。C型肝炎ウイルスに感染すると、約20%~30%の症例で一過性感染(急性肝炎または不顕性感染)を引き起こし、数ヶ月以内に治癒する。一方、残りの約70%~80%の症例では長期間にわたる持続感染を引き起こし、慢性肝炎を経て肝硬変や原発性肝細胞癌を引き起こす。C型肝炎ウイルス感染者は我が国に約100万人、世界中では約1億7000万人と推定されている。
【0003】
デングウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属するウイルスである。ウイルス抗原性の違いに基づいて4種類の血清型に分けられる(デングウイルス1型~4型)。デングウイルスに感染すると、突然の高熱で発症し、頭痛、眼(か)痛、顔面紅潮、結膜充血を伴い、発熱は2~7日間持続する(二峰性であることが多い)。初期症状に続き、全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈す。発症後3~4日後、胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面に広がる。症状は1週間程度で回復する。しかし、一部の患者において、発熱2~7日後、血小板減少に伴う出血傾向と血漿漏出に伴う血圧低下(ショック)を主な症状とする致死的病態が出現することがある。これらは、デング出血熱あるいはデングショック症候群と呼ばれる。デングウイルス感染者(発症者)は世界中で毎年5000万~1億人、デング出血熱患者は年間25万~50万人と推定され、年間1万~2万人が死亡している。
【0004】
センソ(蟾酥)は、アジアヒキガエル(Bufo gargarizans)やヘリグロヒキガエル(Bufo melanostictus)の耳腺分泌物を乾燥させたものであり、第17改正日本薬局方品ではブファリン(bufalin)、シノブファギン(cinobufagin)、及びレシブフォゲニン(resibufogenin)の合計が5.8%以上含有することが規定されている。このセンソに含有される成分の抗ウイルス作用に関する報告は、ブファリンのコロナウイルス亜科に対するもの(非特許文献1)及びブファジエノライド(bufadienolides)のライノウイルスに対するもの(非特許文献2)があるが、C型肝炎ウイルスやデングウイルス、又はそれらの同科ウイルスに対する作用の報告はなかった。
【0005】
ゴオウ(牛黄)は、ウシ〔Bos taurus Linne var. domesticus Gmelin (Bovidae)〕の胆のうまたは胆管中にまれに生じるビリルビン結石であり、第17改正日本薬局方品ではビリルビン(bilirubin)が10%以上含有することが規定されている。ゴオウは古くより抗ウイルス作用があるとされてきたが、その抗ウイルス活性については、実際には、日本脳炎ウイルス(非特許文献3)及びチクングニアウイルス(非特許文献4)に対するものしか報告がなく、C型肝炎ウイルスやデングウイルスに対する作用の報告はなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J Virology: 89(8), 4434-4448 (2015)
【文献】Chem Pharm Bull: 36(1), 326-332 (1988)
【文献】Pharm Medica: 新春増刊号121-124 (1986)
【文献】和漢医薬学会誌: 4, 402-403 (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、C型肝炎治療薬は、Direct acting antivirals (DAAs)と呼ばれ、DAAs治療ではウイルス血症の消失(SVR)が90%以上といわれている。しかし、その一方で、薬剤耐性ウイルス株の存在や薬剤の副作用、治療費用の高額化といった問題も抱え、新たなC型肝炎治療薬の開発が望まれている。
また、デングウイルスに対する治療薬はなく、対症療法のみとなるので、デングウイルス治療薬の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、様々な生薬から抗C型肝炎ウイルス活性(抗HCV活性)や抗デングウイルス活性(抗DENV活性)を有する物質を鋭意探索した結果、センソ及びゴオウから抗HCV活性や抗DENV活性を有する物質を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、センソ及び/又はゴオウを有効性成分として含有する、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための医薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センソ及びゴオウの新たな医薬用途、すなわちC型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ゴオウから熱メタノール抽出物、熱水抽出物、及びクロロホルム/酢酸混液抽出物を得るための工程の模式図、ならびに得られた各種抽出物の抗HCV活性値(IC
50)及び細胞毒性値(CC
50)を示す図である。図中の丸数字1、丸数字2、及び丸数字3は、それぞれ、オーストラリア産1ロット、メキシコ産1ロット、及びブラジル産1ロットを表す。
【
図2】センソから熱水抽出物及び熱メタノール抽出物を得、次いで、これら得られた抽出物を分配して酢酸エチル層、ブタノール層、及び水層を得るための工程の模式図、ならびに得られた各層の抗HCV活性値(IC
50)及び細胞毒性値(CC
50)を示す図である。図中の丸数字1、丸数字2、及び丸数字3は、それぞれ、中国産3ロットを表す。
【
図3-1】各種ブファジエノライドの化学構造式、ならびにそれらの抗HCV活性値(IC
50)、抗DENV活性値(IC
50)、及び細胞毒性値(CC
50)を示す図である。
【
図3-2】各種ブファジエノライドの化学構造式、ならびにそれらの抗HCV活性値(IC
50)、抗DENV活性値(IC
50)、及び細胞毒性値(CC
50)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用されるセンソ(蟾酥)は、ヒキガエル、例えば、アジアヒキガエルBufo gargarizans Cantor又はシナヒキガエルBufo bufo gargarizans Cantor若しくはBufo melanostictus Schneider (Bufonidae)、あるいはその他の同科動物の耳腺(耳下腺、皮脂腺)の分泌物を集めたものであれば、特に制限されない。
【0012】
本発明で使用されるゴオウ(牛黄)は、ウシBos taurus Linne var. domesticus Gmelin(Bovidae)、又はその他の同属動物(Bovidae)の胆のう中に生じた結石であれば、特に制限されない。
【0013】
本発明のセンソ及びゴオウとして、それぞれセンソ及びゴオウをそのまま使用してもよいが、これらを粉砕して得られた粉末を使用してもよく、あるいは、センソ又はゴオウから、本発明の効果を損なわない限り、水、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸、酢酸エチル、及びクロロホルム、ならびにこれらの混液などの医薬品や食品に一般的に利用される溶媒にて抽出されたエキスなどを使用してもよい。優れた抗HCV活性又は抗DENV活性を示す抽出物が得られる点で、加熱した溶媒を使用するのが好ましい。また、抽出操作は同一又は異なる溶媒によって複数回を行ってもよい。
優れた抗HCV活性又は抗DENV活性を示す点で、センソの抽出物、特に熱水抽出物及び熱メタノール抽出物、とりわけ、これら熱水抽出物又は熱メタノール抽出物からさらに酢酸エチルで抽出させて得た抽出物が好ましい。
また、優れた抗HCV活性を示す点で、ゴオウの抽出物、特に熱水抽出物、とりわけ、この熱水抽出物からさらにクロロホルム/酢酸混液(好ましくはクロロホルムと酢酸の4:1の混液)で抽出させて得た抽出物が好ましい。
【0014】
また、本発明では、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療のための有効成分として、センソの代わりに、それから単離されたシノブファギン(cinobufagin)、レシブフォゲニン(resibufogenin)、シノブフォタリン(cinobufotalin)、デスアセチルシノブファギン(desacetylcinobufagin)、ブファリン(bufalin)、テロシノブファギン(telocinobufagin)、及びガマブフォタリン(gamabufotalin)などのブファジエノライド(bufadienolides)を使用してもよい。優れた抗HCV活性又は抗DENV活性を示す点で、ブファリン及びガマブフォタリン、特にブファリンが好ましい。また、ブファリンは、アジアヒキガエルBufo gargarizans Cantor又はシナヒキガエルBufo bufo gargarizans Cantor若しくはBufo melanostictus Schneider (Bufonidae)に限らず、これらと異なる多種のヒキガエルの耳腺にも含まれており、世界資源の活用にもつながるという利点も有している。
もっとも、上述のブファジエノライドは人工で合成されたものを使用してもよい。
【0015】
本発明の医薬組成物は、センソ及び/又はゴオウそのものであってもよいが、本発明の効果を損なわない限り、センソやゴオウ以外の有効成分を含有又は併用してもよい。そのような有効成分として、例えば、C型肝炎ウイルス感染症又はデングウイルス感染症の予防又は治療効果を有する物質などを含有又は併用してもよい。
【0016】
本発明の医薬組成物は、センソ及び/又はゴオウそのものであってもよいが、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、乳化剤及びその他に医薬品で一般に利用されている素材を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができる。これら医薬品又は医薬部外品は、例えば、丸剤、顆粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、カプセル剤(例えば、硬又は軟ゼラチンカプセル剤)、液剤、乳濁剤、又は懸濁剤の形態で経口的に投与できるが、例えば、坐剤の形態で直腸的に;例えば、注射剤又は輸液の形態で;例えば、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤の形態で局部的又は経皮的に;例えば、点眼液及び洗眼液の形態で眼局所的に;非経口的に投与することもできる。好ましくは経口投与である。
【0018】
本発明の医薬組成物の投与量は、特に制限されないが、剤型及び投与経路、ならびに患者の年齢、体重、及び症状に応じて、適宜選択することができる。
また、投与期間は、患者の年齢や症状などに応じて任意に定めることができる。
【実施例】
【0019】
これより本発明を以下の実施例で詳しく説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
(実施例1)試料の調製
(1) ゴオウの抽出物の調製
ゴオウはオーストラリア産1ロット、メキシコ産1ロット、及びブラジル産1ロットを購入して、それぞれ、めのう乳鉢で粉末にし、以下の溶媒抽出に供し抽出物を得た。
・熱メタノール抽出物:メタノール20mLにゴオウ500mgを添加し、18時間程度冷蔵庫で静置した。静置後マントルヒーターで穏やかに沸騰させながら2時間還流抽出し、ろ過して、得られたろ液を濃縮・乾固して熱メタノール抽出物を得た。
・熱水抽出物:イオン交換水20mLにゴオウ500mgを添加し、18時間程度冷蔵庫で静置した。静置後マントルヒーターで穏やかに沸騰させながら2時間還流抽出し、ろ過して、得られたろ液を濃縮・乾固して熱水抽出物を得た。
・クロロホルム/酢酸混液抽出物:ゴオウの上記熱水抽出の残渣を48時間程度減圧乾燥させ、クロロホルム/酢酸=4/1の混液20mLを加えて8時間程度冷蔵庫で静置した。静置後マントルヒーターで穏やかに沸騰させながら2時間還流抽出し、ろ過して、得られたろ液を濃縮・乾固してクロロホルム/酢酸混液抽出物を得た。
得られた各抽出物を、試料として以下の試験に供した。
【0021】
(2) センソの抽出物の調製
センソは中国産3ロットを購入して、各ロットを、それぞれ、めのう乳鉢で粉末にし、以下の溶媒抽出に供し抽出物を得た。
・熱メタノール抽出物:メタノール20mLにセンソ500mgを添加し、18時間程度冷蔵庫で静置した。静置後マントルヒーターで穏やかに沸騰させながら2時間還流抽出し、ろ過して、得られたろ液を濃縮・乾固して熱メタノール抽出物を得た。
・熱メタノール抽出物からの酢酸エチル可溶性画分、ブタノール可溶性画分、及び水可溶性画分:上記方法にて得られた熱メタノール抽出物にイオン交換水50mLを加えて振とう、超音波により懸濁後、酢酸エチル20mLを加えて分液ロートにて振り混ぜて分配した。その後、酢酸エチル層を取り出し、濃縮・乾固して、酢酸エチル可溶性画分を得た。次いで、残された水層に、ブタノール20mLを加えて分液ロートにて振り混ぜて分配した。その後、ブタノール層を取り出し、濃縮・乾固して、ブタノール可溶性画分を得た。最後に、残された水層を、濃縮・乾固して、水可溶性画分を得た。
・熱水抽出物:イオン交換水20mLにセンソ500mgを添加し、18時間程度冷蔵庫で静置した。静置後マントルヒーターで穏やかに沸騰させながら2時間還流抽出し、ろ過して、得られたろ液を濃縮・乾固して熱水抽出物を得た。
・熱水抽出物からの酢酸エチル可溶性画分、ブタノール可溶性画分、及び水可溶性画分:上記方法にて得られた熱水抽出物にイオン交換水50mLを加えて振とう、超音波により懸濁後、酢酸エチル20mLを加えて分液ロートにて振り混ぜて分配した。その後酢酸エチル層を濃縮・乾固して酢酸エチル可溶性画分を得た。次いで、残された水層に、ブタノール20mLを加えて分液ロートにて振り混ぜて分配した。その後、ブタノール層を取り出し、濃縮・乾固して、ブタノール可溶性画分を得た。最後に、残された水層を、濃縮・乾固して、水可溶性画分を得た。
・熱メタノール抽出物からの酢酸エチル可溶性画分に存在するブファジエノライド7化合物:シノブファギン、レシブフォゲニン、シノブフォタリン、デスアセチルシノブファギン、ブファリン、テロシノブファギン、及びガマブフォタリンも、上記方法にて得られた熱メタノール抽出物からの酢酸エチル可溶性画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画し、さらにODSカラム(ジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS-3)を用いた分取高速液体クロマトグラフィーにより、各ブファジエノライド化合物を単離した。
得られた各抽出物、各可溶性画分、及び各ブファジエノライド化合物を、試料として以下の試験に供した。
【0022】
(実施例2)抗HCV活性測定試験
24穴プレートにHuh7it-1細胞を1×10
5 cells/wellの濃度でまき、一定濃度のHCV(J6/JFH1-P47strain)を、種々の濃度に希釈した前記実施例1で調製された試料と混合し、その混合液を各ウェルに加えた。2時間後、細胞をメディウムで洗浄し、さらに上記で混合したものと同濃度の同じ試料を含むメディウムを加えて、46時間培養を続けた。培養上清中のウイルス感染価を測定し、コントロールとの比較で50%阻害濃度(IC
50値)を算出した。結果を
図1、2、3-1、及び3-2に示した。
【0023】
(実施例3)抗DENV活性測定試験
24穴プレートにHuh7it-1細胞を1×10
5 cells/wellの濃度でまき、培養した。翌日、一定濃度のDENV(Trinidad 1751 strain)を各ウェルに加えて1時間インキュベートし、細胞に感染させた。その後、細胞をメディウムで洗浄して余剰のウイルスを除き、種々の濃度に希釈した前記実施例1で調製された試料を含むメディウムを各ウェルに加えて、46時間培養を続けた。培養上清中のウイルス感染価を測定し、コントロールとの比較で50%阻害濃度(IC
50値)を算出した。結果を
図3-1及び3-2に示した。
【0024】
(実施例4)細胞毒性試験
96穴プレートにまいたHuh7it-1細胞を、前記実施例1で調製された試料の希釈液またはコントロール(0.1%DMSO)で48時間処理した。処理後、10μlのWST-1試薬を各ウェルに添加し、4時間培養した。マイクロプレートリーダーで450nmと630nmの波長における吸光度を測定した。0.1%DMSO処理コントロールを100%として、各濃度の前記実施例1で調製された試料で処理したウェルの細胞生存率を算出し、最終的に50%細胞毒性濃度(CC
50値)を決定した。結果を
図1、2、3-1、及び3-2に示した。
【0025】
試験の結果、ゴオウのクロロホルム/酢酸混液(4:1)抽出画分に良好な抗HCV活性が認められた(
図1)。
また、センソの熱水抽出物の酢酸エチル可溶性画分、熱メタノール抽出物、及び熱メタノール抽出物の酢酸エチル可溶性画分に良好な抗HCV活性が認められた(
図2)。
さらに、ブファリンをはじめとするブファジエノライドに良好な抗HCV活性及び抗DENV活性が認められた(
図3-1及び3-2)。
【0026】
(実施例5)センソ及び/又はゴオウを含有する医薬製剤の調製
(1) 製剤例1
大人(15才以上)1日量(6粒)中に以下の表に示す成分を含む丸剤を調製した。
【表1】
【0027】
(2) 製造例2
大人(15才以上)1日量(4カプセル)中に以下の表に示す成分を含むカプセル剤を調製した。
【表2】
【0028】
(3) 製剤例3
大人(15才以上)1日量(12丸)中に以下の表に示す成分を含む丸剤を調製した。
【表3】
【0029】
(4) 製剤例4
大人(15才以上)1日量(9粒)中に以下の表に示す成分を含む丸剤を調製した。
【表4】
【0030】
(5) 製剤例5
大人(15才以上)1日量(3カプセル)中に以下の表に示す成分を含むカプセル剤を調製した。
【表5】
【0031】
(6) 製剤例6
大人(15才以上)1日量(3錠)中に以下の表に示す成分を含む錠剤を調製した。
【表6】
【0032】
(7) 製剤例7
大人(15才以上)1日量(2丸)中に以下の表に示す成分を含む丸剤を調製した。
【表7】
【0033】
(8) 製剤例8
大人(15才以上)1日量(6丸)中に以下の表に示す成分を含む丸剤を調製した。
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の医薬組成物は、C型肝炎ウイルス感染症及び/又はデングウイルス感染症の予防及び/又は治療に使用することができる。このような目的に、本発明の医薬組成物は、医薬品などとして利用することができる。
また、既知の医薬品として使用されているセンソやゴオウ中の成分から抗HCV活性又は抗DENV活性が認められたことから、これら既存製品の新たな医薬用途への活用にもつながる。