(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】摘出組織処理装置、および摘出組織処理方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/08 20060101AFI20231101BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12M3/08
C12M1/42
(21)【出願番号】P 2022036604
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522094808
【氏名又は名称】小島 成浩
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】小島 成浩
(72)【発明者】
【氏名】坪子 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄高
(72)【発明者】
【氏名】小口 真一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特許第6324730(JP,B2)
【文献】特開2018-050550(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077964(WO,A1)
【文献】特表2015-529687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0241872(US,A1)
【文献】特開昭61-202684(JP,A)
【文献】特開2020-112464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得対象成分を含む組織片から、該取得対象成分を取り出して取得する摘出組織処理装置であって、
前記組織片中の前記取得対象成分以外の成分を溶解する溶解処理液を貯留する溶解槽と、
前記溶解槽内で前記組織片に隣接配置され、該溶解槽内において少なくとも一つの方向
に往復動可能である撹拌体と、
前記撹拌体を往復動させる駆動装置と、
を備え
、
前記撹拌体は、前記往復動する方向を向く撹拌面を有し、
前記撹拌面は、前記撹拌体の往復動の際に前記往復動する方向から前記組織片を受け止める領域を有する摘出組織処理装置。
【請求項2】
前記溶解槽の槽内壁面における上下方向に直交する断面が正円形状をなし
、
前記撹拌面の外縁が、非正円形状をなしている請求項1に記載の摘出組織処理装置。
【請求項3】
前記溶解槽の槽内壁面における上下方向に直交する断面が正円形状をなし
、
前記撹拌面の外縁が正円形状をなしている請求項1に記載の摘出組織処理装置。
【請求項4】
前記撹拌面は、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状となったメッシュ領域を少なくとも一部に有する請求項1から3のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項5】
前記撹拌面は、前記溶解処理液が通過不能な非メッシュ領域をさらに有する請求項4に記載の摘出組織処理装置。
【請求項6】
前記撹拌面では、前記非メッシュ領域の周囲に前記メッシュ領域が配置される請求項5に記載の摘出組織処理装置。
【請求項7】
前記撹拌面の前記非メッシュ領域が、非正円形状をなしている請求項5または6に記載の摘出組織処理装置。
【請求項8】
前記非メッシュ領域は楕円形状、長円形状、または長方形状をなし、
前記メッシュ領域は、前記非メッシュ領域の短軸方向または短辺方向の外側に配置されている請求項7に記載の摘出組織処理装置。
【請求項9】
前記メッシュ領域は、前記撹拌面における全部の領域である請求項4に記載の摘出組織処理装置。
【請求項10】
取得対象成分を含む組織片から、該取得対象成分を取り出して取得する摘出組織処理装置であって、
前記組織片中の前記取得対象成分以外の成分を溶解する溶解処理液を貯留する溶解槽と、
前記溶解槽内で前記組織片に隣接配置され、該溶解槽内において少なくとも一つの方向に往復動可能である撹拌体と、
前記撹拌体を往復動させる駆動装置と、
を備え、
前記撹拌体は、前記往復動する方向を向く撹拌面を有し、
前記撹拌面は、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状となったメッシュ領域を少なくとも一部に有し、
前記撹拌面の外縁から前記組織片の側に向かって前記往復動する方向に立ち上がるように前記撹拌体に接続された側壁体をさらに備え
る摘出組織処理装置。
【請求項11】
前記側壁体の少なくとも一部は、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状をなしている請求項10に記載の摘出組織処理装置。
【請求項12】
取得対象成分を含む組織片から、該取得対象成分を取り出して取得する摘出組織処理装置であって、
前記組織片中の前記取得対象成分以外の成分を溶解する溶解処理液を貯留する溶解槽と、
前記溶解槽内で前記組織片に隣接配置され、該溶解槽内において少なくとも一つの方向に往復動可能である撹拌体と、
前記撹拌体を往復動させる駆動装置と、
前記撹拌体に対して前記往復動する方向に間隔を空けて対向配置されて前記撹拌体との間に前記組織片を収容する収容空間を画成し、前記撹拌体ととも前記往復動する挟持体
と、
を備え
る摘出組織処理装置。
【請求項13】
前記撹拌体の少なくとも一部、前記側壁体の少なくとも一部、および前記挟持体の少なくとも一部が、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状をなしている請求項12に記載の摘出組織処理装置。
【請求項14】
前記撹拌体を、前記往復動する方向に間隔をあけて複数有する請求項1から13のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項15】
前記撹拌体は、前記溶解槽内において前記組織片の下方に配置可能であり、
前記駆動装置は、前記撹拌体を前記溶解槽における上下方向に往復動させる請求項1から14のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項16】
前記撹拌体が往復動する速度、および該撹拌体が往復動する際のストローク長のうちの少なくとも一方を変更するように、前記駆動装置を制御する駆動制御装置をさらに備える請求項1から15のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項17】
前記駆動制御装置は、前記溶解槽内の前記溶解処理液および前記組織片のうちの少なくとも一方の状態に応じて前記駆動装置を制御する請求項16に記載の摘出組織処理装置。
【請求項18】
前記溶解槽内の前記溶解処理液のpH値を計測するpHセンサと、
前記pHセンサの計測値が所定値となるように、前
記溶解処理液のpH値を調整するpH制御装置と、
をさらに備える請求項1から17のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項19】
前記溶解槽内における前記溶解処理液の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサの計測値が所定値となるように、前
記溶解処理液の温度を調整する温度制御装置と、
をさらに備える請求項1から18のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項20】
前記溶解槽内に向けて超音波を照射する超音波照射装置をさらに備える請求項1から19のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項21】
前記取得対象成分となるリンパ節を含む前記組織片から、前記リンパ節以外の成分を溶解して該リンパ節を取得する請求項1から20のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項22】
前記組織片は、外科的な方法によって人体から摘出されるものである請求項1から21のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項23】
前記撹拌体は、上方を向く前記撹拌面を有し、
前記撹拌面は、前記撹拌体の往復動の際に下方から前記組織片を受け止める領域を有する請求項1から22に記載の摘出組織処理装置。
【請求項24】
前記メッシュ領域のメッシュは、溶解した前記組織片が通過可能であり、かつ前記取得対象成分が通過不能なサイズとなっている請求項4から11のいずれか一項に記載の摘出組織処理装置。
【請求項25】
取得対象成分を含む組織片から、該取得対象成分を取り出して取得する摘出組織処理方
法であって、
溶解処理液を貯留する溶解槽内において前記組織片中の前記取得対象成分以外の成分を
溶解する工程と、
前記溶解槽内で前記組織片に隣接配置された撹拌体を往復動させる工程と、
を含
み、
前記撹拌体において前記往復動する方向を向く撹拌面は、前記撹拌体の往復動の際に前記往復動する方向から前記組織片を受け止める摘出組織処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摘出組織処理装置、および摘出組織処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科的な方法によって人体から摘出した組織片を処理し、検査対象となる成分(以下、取得対象成分)を取り出して病気の検査等に用いることが行われている。具体的には、例えばリンパ節を含む組織片を人体から摘出し、組織片からリンパ節以外の成分である脂肪等を除去してリンパ節を取り出し、取り出されたリンパ節によってがん細胞のリンパ節転移の検査が行われている。
【0003】
このように取得対象成分を組織片から取り出す方法として、例えば酵素を含む処理剤を組織片に接触させ、取得対象成分以外の成分を分解して除去する処理方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記処理剤を組織片に接触させるのみでは、組織片から取得対象成分を取り出すまでに時間を要してしまい、検査効率の向上が難しいといった問題がある。さらには、取得対象成分を取り出すために組織片に大きな外力を加えると取得対象成分が損傷してしまい、取得対象成分を検査対象として使用することが難しくなる。
【0006】
そこで本発明は、取得対象成分へのダメージを抑えつつ、効率的に組織片から取得対象成分を取り出すことのできる摘出組織処理装置、および摘出組織処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る摘出組織処理装置は、取得対象成分を含む組織片から、該取得対象成分を取り出して取得する摘出組織処理装置であって、前記組織片中の前記取得対象成分以外の成分を溶解する溶解処理液を貯留する溶解槽と、前記溶解槽内で前記組織片に隣接配置され、該溶解槽内において少なくとも一つの方向に往復動可能である撹拌体と、前記撹拌体を往復動させる駆動装置と、を備える。
【0008】
上記摘出組織処理装置では、前記溶解槽の槽内壁面における上下方向に直交する断面が正円形状をなし、前記撹拌体は、前記往復動する方向を向く撹拌面を有し、前記撹拌面の外縁が、非正円形状をなしていてもよい。
【0009】
上記摘出組織処理装置では、前記溶解槽の槽内壁面における上下方向に直交する断面が正円形状をなし、前記撹拌体は、前記往復動する方向を向く撹拌面を有し、前記撹拌面の外縁が正円形状をなしていてもよい。
【0010】
上記摘出組織処理装置では、前記撹拌体は、前記往復動する方向を向く撹拌面を有し、前記撹拌面は、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状となったメッシュ領域を少なくとも一部に有していてもよい。
【0011】
上記摘出組織処理装置では、前記撹拌面は、前記溶解処理液が通過不能な非メッシュ領域をさらに有していてもよい。
【0012】
上記摘出組織処理装置における前記撹拌面では、前記非メッシュ領域の周囲に前記メッシュ領域が配置されてもよい。
【0013】
上記摘出組織処理装置では、前記撹拌面の前記非メッシュ領域が、非正円形状をなしていてもよい。
【0014】
上記摘出組織処理装置では、前記非メッシュ領域は楕円形状、長円形状、または長方形状をなし、前記メッシュ領域は、前記非メッシュ領域の短軸方向または短辺方向の外側に配置されていてもよい。
【0015】
上記摘出組織処理装置では、前記メッシュ領域は、前記撹拌面における全部の領域であってもよい。
【0016】
上記摘出組織処理装置は、前記撹拌面の外縁から前記組織片の側に向かって前記往復動する方向に立ち上がるように前記撹拌体に接続された側壁体をさらに備えてもよい。
【0017】
上記摘出組織処理装置では、前記側壁体の少なくとも一部は、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状をなしていてもよい。
【0018】
上記摘出組織処理装置は、前記撹拌体に対して前記往復動する方向に間隔を空けて対向配置されて前記撹拌体との間に前記組織片を収容する収容空間を画成し、前記撹拌体ととも前記往復動する挟持体をさらに備えていてもよい。
【0019】
上記摘出組織処理装置では、前記撹拌体の少なくとも一部、前記側壁体の少なくとも一部、および前記挟持体の少なくとも一部が、前記溶解処理液が通過可能となるようにメッシュ状をなしていてもよい。
【0020】
上記摘出組織処理装置では、前記撹拌体を、前記往復動する方向に間隔をあけて複数有していてもよい。
【0021】
上記摘出組織処理装置では、前記撹拌体は、前記溶解槽内において前記組織片の下方に配置可能であり、前記駆動装置は、前記撹拌体を前記溶解槽における上下方向に往復動させてもよい。
【0022】
上記摘出組織処理装置は、前記撹拌体が往復動する速度、および該撹拌体が往復動する際のストローク長のうちの少なくとも一方を変更するように、前記駆動装置を制御する駆動制御装置をさらに備えていてもよい。
【0023】
上記摘出組織処理装置では、前記駆動制御装置は、前記溶解槽内の前記溶解処理液および前記組織片のうちの少なくとも一方の状態に応じて前記駆動装置を制御してもよい。
【0024】
上記摘出組織処理装置は、前記溶解槽内の前記溶解処理液のpH値を計測するpHセンサと、前記pHセンサの計測値が所定値となるように、前記溶解処理液のpH値を調整するpH制御装置と、をさらに備えていてもよい。
【0025】
上記摘出組織処理装置は、前記溶解槽内における前記溶解処理液の温度を計測する温度センサと、前記温度センサの計測値が所定値となるように、前記溶解処理液の温度を調整する温度制御装置と、をさらに備えていてもよい。
【0026】
上記摘出組織処理装置は、前記溶解槽内に向けて超音波を照射する超音波照射装置をさらに備えていてもよい。
【0027】
本発明の一態様に係る摘出組織処理方法は、取得対象成分を含む組織片から、該取得対象成分を取り出して取得する摘出組織処理方法であって、溶解処理液を貯留する溶解槽内において前記組織片中の前記取得対象成分以外の成分を溶解する工程と、前記溶解槽内で前記組織片に隣接配置された撹拌体を往復動させる工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0028】
上記の摘出組織処理装置等によれば、取得対象成分へのダメージを抑えつつ、効率的に組織片から取得対象成分を取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る摘出組織処理装置の全体を示す正面図である。
【
図2】上記第一実施形態に係る摘出組織処理装置の撹拌体の上方における溶解槽の上下方向に直交する断面図であって、撹拌面を示す図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る摘出組織処理装置の全体を示す正面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態の変形例に係る摘出組織処理装置の全体を示す正面図である。
【
図5】本発明の第三実施形態に係る摘出組織処理装置の全体を示す正面図である。
【
図6】本発明の第四実施形態に係る摘出組織処理装置の全体を示す正面図である。
【
図7】上記摘出組織処理装置における撹拌体の第一変形例の撹拌面を示す図である。
【
図8】上記摘出組織処理装置における撹拌体の第二変形例の撹拌面を示す図である。
【
図9】上記摘出組織処理装置における撹拌体の第三変形例の撹拌面を示す図である。
【
図10】上記摘出組織処理装置における撹拌装置の第四変形例を示す図であって、(a)は撹拌体を上方から見た図であり、(b)は撹拌体を側方から見た図である。
【
図11】上記摘出組織処理装置における撹拌装置の第五変形例を示す図であって、(a)は撹拌体を上方から見た図であり、(b)は撹拌体を側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第一実施形態〕
(全体構成)
以下、本発明の第一実施形態に係る摘出組織処理装置100について説明する。
摘出組織処理装置100は、人体から摘出した組織片Hから、取得対象成分となるリンパ節Lを取り出して取得する装置である。
図1に示すように摘出組織処理装置100は、内側に溶解処理液Dを貯留する溶解槽1と、溶解処理液Dを撹拌する撹拌装置2と、撹拌装置2を動作させる駆動装置3とを備えている。
(溶解槽)
【0031】
溶解槽1は、槽内壁面1aの上下方向に直交する断面が正円形状をなす有底筒状をなしている。溶解槽1の内側に貯留される溶解処理液Dは、組織片H中のリンパ節L以外の成分を溶解する液体であり、例えばタンパク質や脂肪を分解する酵素を含んでいる。溶解槽1の上部には着脱可能に蓋体4が設けられている。この蓋体4を取り外して、溶解槽1内に組織片Hを配置するようになっている。
【0032】
(撹拌装置)
撹拌装置2は、溶解槽1内に配置され、溶解槽1内において少なくとも一つの方向(本実施形態では上下方向)に往復動可能である撹拌体10と、撹拌体10から上方に延びて蓋体4を貫通する軸体11とを有している。
【0033】
撹拌体10は溶解槽1内において組織片Hに隣接配置される。本実施形態では撹拌体10は組織片Hの下方に配置される。
図2に示すように撹拌体10は、往復動する方向となる上下方向を向く撹拌面10aを有している。撹拌体10は上下方向から視て楕円形状(非正円形状)の板状をなしている。よって撹拌面10aの外縁(輪郭)は楕円形状をなし、撹拌体10の上面および下面を構成している。撹拌面10aには、溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが撹拌体10を通過できる程度の孔は形成されておらず、すなわち撹拌面10aの全部の領域はメッシュ状ではない非メッシュ状をなす非メッシュ領域となっている。
【0034】
軸体11はちょうど溶解槽1の中心に配置される。これにより撹拌面10aの短軸方向において、溶解槽1の槽内壁面1aと撹拌体10との間の短軸方向両側の隙間d1は同一に保たれ、撹拌面10aの長軸方向において、槽内壁面1aと撹拌体10との間の長軸方向両側の隙間d2も同一に保たれるようになっている。軸体11と蓋体4との間にはスリーブ等のガイド部材(不図示)が設けられている。
【0035】
図1に戻って駆動装置3は、例えば電動モータや電動アクチュエータである。駆動装置3は軸体11に接続され、軸体11を介して撹拌体10を上下方向に往復動させる。
【0036】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の摘出組織処理装置100では、組織片Hを溶解処理液Dに浸漬させることで組織片H中のリンパ節L以外の成分が溶解されるようになっている。この際、溶解槽1内において撹拌体10が上下方向に往復動することによって溶解処理液Dが撹拌され、溶解処理液Dおよび組織片Hを溶解槽1内で流動させることができる。この結果、単に組織片Hを溶解処理液Dに浸漬させるのみの場合と比較し、組織片Hの溶解を促進でき、効率的に組織片Hからリンパ節Lを取り出すことが可能となる。
【0037】
またこの際、撹拌体10の往復動によって溶解処理液Dを撹拌、流動させることで組織片Hを溶解するため、組織片Hを溶解槽1内で緩やかに流動させることができ、リンパ節Lへのダメージも抑えることができる。
【0038】
さらには、撹拌体10における撹拌面10aの外縁が楕円形状をなしているため、撹拌面10aの短軸方向において溶解槽1の槽内壁面1aと撹拌面10aとの間の隙間d1を、長軸方向の隙間d2よりも大きく形成することができる。よってこの短軸方向の隙間d1を通じて溶解して小さな塊となった組織片Hの一部を、撹拌体10の上方と下方との間で移動させることができ、溶解槽1内で組織片Hを大きく流動させることが可能となり、組織片の溶解をさらに促進できる。
【0039】
また撹拌体10は上下方向に往復動し、かつ、組織片Hの下方に配置されている。撹拌体10を上方に動作させると撹拌面10aに載置された組織片Hが撹拌体10とともに上方に移動する。その後、撹拌体10を下方に動作させると、組織片Hが自身の浮力で撹拌体10から遅れて自重で下方に移動し、撹拌面10aの上に再び載置されることになる。そして撹拌体10を上方に再度動作させると、組織片Hは撹拌体10とともに再び上方に移動する。このように組織片Hを繰り返し撹拌面10aによって持ち上げるように動作させることができ、組織片Hの流動を促進し、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0040】
ところで、例えばアメリカ臨床腫瘍学会および欧州臨床腫瘍学会のガイドラインでは、stag2の患者において術後のリンパ節の検索個数が12個以下の場合はhigh risk stage2と判断される。そしてこの場合、術後補助化学療法が検討される。この判断基準においては、stage2であって12個以上のリンパ節郭清が手術的になされていたとしても、検索個数が不足してしまうと術後補助化学療法が行われる可能性が生じる。この点、本実施形態の摘出組織処理装置100によれば、高精度なリンパ節検索が実現可能となり、不要な術後補助化学療法の低減にも寄与できる。
【0041】
また本実施形態の摘出組織処理装置100を使用することにより、外科医師数の減少と外科医の過重労働・超過勤務が問題となる昨今において、脂肪処理の効率化とリンパ節検索の工程の最適化を達成でき、医師の作業を省略・補助できる。この結果、見落としや事故の改善が期待できる。さらに摘出組織処理装置100によってリンパ節検索の機械化・自動化を促進でき、外科医のみでなく病理医や臨床検査技師といった医療従事者の負担軽減までも実現し得る。また、現状の組織処理作業は外科医あるいは病理医の手作業となっているため、処理作業中にグローブの破れによる暴露や、組織・血液の皮膚・眼球への飛散が発生する可能性も否定できない。この点、摘出組織処理装置100を用いれば、ウイルス感染をはじめ様々な感染の可能性を伴う組織処理において、その作業工程を削減することができ、感染リスクの低減にもつながる。
【0042】
〔第二実施形態〕
(全体構成)
次に本発明の第二実施形態に係る摘出組織処理装置200について説明する。
本実施形態の摘出組織処理装置200は、第一実施形態の摘出組織処理装置100に加えて、溶解槽1内に向けて超音波Uを照射する超音波照射装置5をさらに備えている。
【0043】
(超音波照射装置)
図3に示すように超音波照射装置5は、溶解槽1を囲うように設けられた超音波槽6と、超音波槽6内に設置された超音波発生器(超音波発振機および超音波振動子等を含む)7とを有している。超音波照射装置5は、撹拌体10が往復動する方向(上下方向)に交差する溶解槽1の幅方向に溶解槽1へ向けて超音波Uを照射可能となっている。
【0044】
(作用効果)
本実施形態では、超音波照射装置5を用いることで組織片Hを超音波Uによって振動させつつ撹拌体10によって溶解処理液Dおよび組織片Hを流動させることができ、組織片Hの溶解をさらに促進することができる。
【0045】
なお超音波照射装置5の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば
図4に示すように、超音波照射装置5Aは溶解槽1内に挿入可能な超音波発生器7Aを有するものであってもよい。
【0046】
〔第三実施形態〕
(全体構成)
次に本発明の第三実施形態に係る摘出組織処理装置300について説明する。
本実施形態の摘出組織処理装置300は、第一実施形態の摘出組織処理装置100に加えて、駆動装置3の動作を制御する駆動制御装置8と、溶解槽1内の溶解処理液DのpH値を計測するpHセンサ20と、溶解処理液DのpH値を調整するpH制御装置21とをさらに備えている。
【0047】
(駆動制御装置)
駆動制御装置8は、CPU等を含む計算機(PCを用いてもよい)であり、撹拌体10が往復動する速度、および撹拌体10が往復動する際のストローク長のうちの少なくとも一方を変更するように駆動装置3を制御する。これら、往復動の速度およびストローク長は、予め駆動制御装置8に設定可能となっている。
【0048】
(pHセンサ)
pHセンサ20は、溶解槽1内の溶解処理液D中に挿入され、組織片Hの溶解の度合に応じて変化する溶解処理液DのpH値を計測する。
【0049】
(pH制御装置)
pH制御装置21は、CPU等を含む計算機(PCを用いてもよい)であり、pHセンサ20で計測したpH値があらかじめ定めた所定値になるように、溶解槽1内にCO2ガスやpH調整用の薬液を投入する。CO2ガスや薬液は溶解槽1内に挿入されたノズル22を介して投入されるようになっている。なお駆動制御装置8がpH制御装置21の機能を有していてもよく、例えばpH制御装置21および駆動制御装置8の両者の機能を有する制御BOXを用いてもよい。
【0050】
(作用効果)
本実施形態では、駆動制御装置8によって撹拌体10が往復動する速度、および撹拌体10が往復動する際のストローク長のうちの少なくとも一方を変更するように駆動装置3を制御することができるため、組織片Hの大きさ・質や溶解状況に応じて駆動装置3を制御し、組織片Hの溶解時間をコントロールすることができる。
【0051】
さらには、pH制御装置21によって組織片Hの溶解に適したpH値となるように、溶解処理液DのpH値を調整でき、組織片Hを効率的に溶解させることができる。
【0052】
ここで駆動制御装置8は、溶解槽1内の溶解処理液Dおよび組織片Hのうちの少なくとも一方の状態に応じてフィードバック制御を行ってもよい。例えば、溶解処理液DのpH値が上記所定値から外れている場合や、組織片Hの溶解速度が所定時間よりも遅い場合等に、撹拌体10が往復動する速度、および撹拌体10が往復動する際のストローク長のうちの少なくとも一方を変更することで組織片Hの溶解速度を調整してもよい。
【0053】
〔第四実施形態〕
(全体構成)
次に本発明の第四実施形態に係る摘出組織処理装置400について説明する。
本実施形態の摘出組織処理装置400は、第一実施形態の摘出組織処理装置100に加えて、上記駆動制御装置8と、溶解槽1内における溶解処理液Dの温度を計測する温度センサ30と、溶解処理液Dの温度を調整する温度制御装置31とをさらに備えている。
【0054】
(温度センサ)
温度センサ30は、溶解槽1内の溶解処理液D中に挿入され、組織片Hの溶解の度合や環境温度に応じて変化する溶解処理液Dの温度を計測する。
【0055】
(温度制御装置)
温度制御装置31は、CPU等を含む計算機(PCを用いてもよい)であり、温度センサ30で計測した温度があらかじめ定めた所定値になるように、溶解槽1に設けられたヒータ32を動作させたり、加温または冷却された溶解処理液Dや薬液を溶解槽1内に挿入されたノズル33を介して投入させたりするようになっている。なお駆動制御装置8が温度制御装置31の機能を有していてもよく、例えば温度制御装置31および駆動制御装置8の両者の機能を有する制御BOXを用いてもよい。
【0056】
(作用効果)
本実施形態では、温度制御装置31によって組織片Hの溶解に適した温度となるように、溶解処理液Dの温度を調整でき、組織片Hを効率的に溶解させることができる。なお本実施形態では温度センサ30および温度制御装置31に代えて、溶解槽1の温調を行うヒータ32等の温調装置のみを設けてもよい。
【0057】
また駆動制御装置8は、溶解処理液Dの温度が上記所定値から外れている場合等に、撹拌体10が往復動する速度、および撹拌体10が往復動する際のストローク長のうちの少なくとも一方を変更することで組織片Hの溶解速度を調整してもよい。
【0058】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば撹拌面10aの外縁は楕円形状である場合に限定されず、例えば長円形状や長方形状等をなしていてもよい。撹拌面10aが長方形状をなす場合には、撹拌面10aの短辺方向における溶解槽1の槽内壁面1aと撹拌面10aとの間の隙間の方が、撹拌面10aの長辺方向における槽内壁面1aと撹拌面10aとの間の隙間よりも大きくなる。
【0059】
また撹拌面10aの外縁は正円形状をなしていてもよい。この場合、撹拌面10aの周方向に、溶解槽1の槽内壁面1aと撹拌面10aとの間の隙間を均一にすることができ、溶解槽1内の広い範囲で溶解処理液Dを撹拌することができるとともに、撹拌面10aが組織片Hに対向して組織片Hを受け止める領域を大きくすることができる。よって溶解処理液Dの流動に加え、組織片Hの流動も促進することができ、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0060】
また
図7に示すように撹拌体10Aの撹拌面10Aaは、溶解処理液Dが通過可能となるようにメッシュ状の領域を少なくとも一部に有していてもよい。具体的に撹拌面10Aaは、溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが通過可能なメッシュ状のメッシュ領域A1と、溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが通過不能な非メッシュ領域A2とを有している。非メッシュ領域A2の外縁は楕円形状をなしている。またメッシュ領域A1は非メッシュ領域A2の周囲に配置されている。そしてメッシュ領域A1は非メッシュ領域A2の短軸方向の外側に配置され、メッシュ領域A1の外縁は真円形状をなしている。なお撹拌体10Aにおけるメッシュ領域A1が設けられた部分は、可撓性を有する繊維等の材料からなっていてもよいし、可撓性が低くある程度の剛性を持った樹脂等の材料に対して複数の貫通孔を形成したものであってもよい。
【0061】
このような撹拌面10Aaでは、メッシュ領域A1と非メッシュ領域A2とを含んだ撹拌面10Aaの全部の領域の外縁が円形状をなるため、溶解槽1内の広い範囲で溶解処理液Dを撹拌することができるとともに、撹拌面10Aaにおいて組織片Hに対向して受け止める領域を大きくすることができる。よって溶解処理液Dの流動に加え、組織片Hの流動も促進することができ、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0062】
さらには、非メッシュ領域A2の周囲に配置されたメッシュ領域A1を通じて溶解処理液Dおよび溶解した組織片H、すなわち流体が撹拌体10Aを上下方向に通過可能となる。よって溶解処理液Dとともに溶解した組織片Hが、撹拌体10Aの上方、すなわち溶解槽1の上部で滞留してしまうことがなくなり、溶解槽1内の広い範囲で溶解処理液Dおよび組織片Hを流動させ、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0063】
また
図8に示すように、撹拌面10Baはメッシュ領域B1と、フレームによって形成された非メッシュ領域B2とを有していてもよい。すなわち撹拌体10Bは、上記フレームとして上面視で軸体11を中心として放射状に延びる内フレームF1、および撹拌面10Baの外縁を形成するとともに内フレームF1を支持する外フレームF2とを有している。そして外フレームF2の径方向内側で、かつ周方向に内フレームF1同士によって挟まれる領域がメッシュ領域B1となっている。この場合、
図7の撹拌体10Aと同様にメッシュ領域B1によって溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが撹拌体10Bを通過可能となる。よって溶解槽1内の広い範囲で溶解処理液Dおよび組織片Hを流動させ、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0064】
また
図9に示すように、撹拌面10Caにおける全部の領域がメッシュ領域C1であってもよい。この場合、撹拌体10Cにおけるメッシュ領域C1が設けられた部分は、ある程度の剛性のある材料、例えば樹脂等に複数の貫通孔を形成したものを用いるとよい。またこの場合、
図7および
図8の撹拌体10A、10Bと同様にメッシュ領域C1によって溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが撹拌体10Cを通過可能となる。よって溶解槽1内の広い範囲で溶解処理液Dおよび組織片Hを流動させ、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0065】
また
図10(a)および
図10(b)に示すように撹拌装置2Dは、撹拌面10Daの外縁から組織片Hの側となる上方に向かって往復動する方向(上下方向)に立ち上がるように撹拌体10Dに接続された側壁体12をさらに有していてもよい。この場合、撹拌体10Dおよび側壁体12が有底筒状の部材を形成することになり、組織片Hを確実に撹拌面10Da上に保持することができ、撹拌体10Dとともに組織片Hを上下方向に動作させることで組織片Hを流動させ、組織片Hの溶解を促進することができる。そして
図10の例では側壁体12の全体がメッシュ状をなしている。このため側壁体12を溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが通過可能となり、溶解槽1内の広い範囲で溶解処理液Dおよび組織片Hを流動させ、組織片Hの溶解を促進することができる。
【0066】
なお側壁体12の一部がメッシュ状をなしていてもよく、また、側壁体12の全体が非メッシュ状となっていてもよい。また撹拌体10Dでは全体が非メッシュ状となっているが、全体がメッシュ状となっていてもよいし、一部がメッシュ状となっていてもよい。
【0067】
また
図11(a)および
図11(b)に示すように、撹拌装置2Eは、撹拌体10Eに対して往復動する方向(上下方向)に間隔を空けて対向配置された挟持体13をさらに有していてもよい。挟持体13は側壁体12を介して撹拌体10Eと一体になって、撹拌体10Eおよび側壁体12との間に組織片Hを収容する収容空間Sを画成し、撹拌体10Eとともに往復動するようになっている。この場合、組織片Hを収容空間Sに収容した状態で撹拌体10Eを往復動させることができ、組織片Hを確実に上下に流動させることができ、組織片Hの溶解を促進することができる。なお
図11の例では、撹拌体10Eおよび挟持体13の全体が非メッシュ状をなし、側壁体12の全体がメッシュ状をなしている。しかし撹拌体10Eおよび挟持体13のそれぞれにおいても、少なくとも一部が溶解処理液Dおよび溶解した組織片Hが通過可能となるようにメッシュ状をなしているとよい。また側壁体12は必ずしも設けられなくともよく、撹拌体10Eと挟持体13とが間隔をあけて軸体11に支持されていてもよい。
【0068】
また溶解槽1内の溶解処理液Dを連続的に交換、循環できるような処理液交換装置を設けてもよい。
【0069】
また撹拌体が往復動する方向は上下方向に限定されず、例えば上下方向に直交する溶解槽1の幅方向であってもよいし、撹拌体を周方向へ往復動、すなわち軸体11回りに回転往復動させてもよいし、上下方向(幅方向)の往復動に加えて回転往復動をさせてもよい。
【0070】
また撹拌体を、自身が往復動する方向(上下方向や溶解槽1の幅方向)に間隔をあけて複数設けてもよい。
【0071】
また摘出組織処理装置100、200、300、400の用途は上述の場合に限定されない。すなわち摘出組織処理装置100、200、300、400は、リンパ節Lを組織片Hから取り出す際に使用されるものに限定されず、例えば腫瘍細胞、神経、血管の採取等に用いられてもよい。
【0072】
また上記実施形態、および変形例は適宜組み合わせることが可能である。
【実施例】
【0073】
次に、溶解処理液を用いて組織片を溶解処理する実験を行った結果について説明する。
〈実験装置〉
・上下動撹拌装置(VMF-500またはVMF-3000(佐竹マルチミクス株式会社製))
・超音波照射装置(投込式超音波洗浄機FX-500(株式会社サンテック製))
・溶解槽:ガラスビーカー500〔ml〕
・溶解処理液:酵素(リパーゼ+コラゲナーゼ+平衡塩溶液(HBSS(+)))
・リパーゼ(富士フィルム和光純薬株式会社製):リパーゼAYSまたはリパーゼAS、濃度は2000〔U/g〕
・コラゲナーゼ(NB 4G Proved Grade(Nordmark Biochemicals製)、濃度は0.27〔PZU/ml〕
・HBSS(+)(フェノールレッド不含(富士フィルム和光純薬株式会社製))
・組織片:凍結したヒト腸間膜組織を流水で解凍後、コンパウンドを洗い流し水気を切ったもの
【0074】
〈実験条件〉
・超音波照射装置内に撹拌装置を設置した溶解槽、および撹拌装置を設置しない溶解槽をそれぞれ準備する。
・組織片を溶解槽に入れ、組織片を酵素に浸漬する。
・往復動のストローク長が20〔mm〕、往復動のスピードが200〔mm/sec〕となるように撹拌装置を設定する。
・超音波の周波数が100〔kHz〕、超音波の出力が500〔W〕となるように超音波照射装置を設定する。
・温水・冷水の入れ替えにより、超音波槽内(超音波照射装置内)が37℃台を維持するようにする。
・組織片への撹拌および/または超音波照射を開始し、撹拌および/または超音波照射の開始後5分、10分、15分の時点での組織片の重量を計測する。
【0075】
以上の条件のもとで組織片の溶解処理の実験を行った結果を、下記の表1に示す。
【表1】
【0076】
実験結果によれば、酵素にリパーゼAYSを用いた実験パターンのうち、実施例1-1(撹拌有り+超音波照射有り)で最も組織片の重量減少が大きく、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して23.6%となった。この実施例1-1では、膜状組織に微小なリンパ節が付着している状態まで脂肪の溶解効果が得られ、微小なものでありながら遺残したリンパ節の同定・採取が容易な状態となった。
【0077】
また実施例1-2(撹拌有り+超音波照射無し)では、実験開始後15分の時点での組織片の重量が実験開始時に対して40.9%となった。一方、比較例1-1(撹拌無し+超音波照射有り)では、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して93.4%となり、比較例1-2(撹拌無し+超音波照射無し)では、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して112.1%となった。よって撹拌を行わない比較例1-1、比較例1-2に対して、撹拌を行う実施例1-1、実施例1-2の方が、脂肪の溶解効果が非常に高いことが確認できた。すなわち脂肪の溶解効果の向上に撹拌が大きく寄与することが確認できた。
【0078】
また酵素にリパーゼASを用いた実験パターンにおいては、実施例2-2(撹拌有り+超音波照射無し)で最も組織片の重量減少が大きく、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して31.4%となった。また実施例2-1(撹拌有り+超音波照射有り)では、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して54.6%となった。
【0079】
一方、比較例2-1(撹拌無し+超音波照射有り)では、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して85.0%となり、比較例2-2(撹拌無し+超音波照射無し)では、実験開始後15分の時点での組織片の重量が、実験開始時に対して92.6%となった。よって撹拌を行わない比較例2-1、比較例2-2に対して、撹拌を行う実施例2-1、実施例2-2の方が、脂肪の溶解効果が非常に高いことが確認でき、脂肪の溶解効果の向上に撹拌が大きく寄与することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の摘出組織処理装置等によれば、取得対象成分へのダメージを抑えつつ、効率的に組織片から取得対象成分を取り出すことが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…溶解槽
1a…槽内壁面
3…駆動装置
5、5A…超音波照射装置
8…駆動制御装置
10a、10Aa、10Ba、10Ca、10Da…撹拌面
10、10A、10B、10C、10D、10E…撹拌体
12…側壁体
13…挟持体
20…pHセンサ
21…pH制御装置
30…温度センサ
31…温度制御装置
100、200、300、400…摘出組織処理装置
A1、B1、C1…メッシュ領域
A2、B2…非メッシュ領域
D…溶解処理液
H…組織片
L…リンパ節(取得対象成分)
S…収容空間
U…超音波