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特許7376916ワーク給除材システム、可搬型ロボット装置及び可搬型ワークストッカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ワーク給除材システム、可搬型ロボット装置及び可搬型ワークストッカ
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019226660
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021094634
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505227043
【氏名又は名称】野村ユニソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】上原 伸二
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058954(JP,A)
【文献】特開2018-058142(JP,A)
【文献】特開2018-126800(JP,A)
【文献】特開2019-093533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型ワークストッカと作業装置との間で可搬型ロボット装置によってワークの給材及び除材を行うワーク給除材システムであって、
前記可搬型ロボット装置は、可搬型台車に搭載されるマニピュレータ、前記マニピュレータに取り付けられた視覚センサ及び前記マニピュレータと前記視覚センサとを制御する制御手段を備え、
(1)床面に設けられた第1囲みフレームマークの内側の何処かに前記可搬型ロボット装置を配置した状態で、前記視覚センサが検出した前記作業装置に配置されている第1ターゲットマークの画像データと、前記制御手段が記憶している前記第1ターゲットマークの基準画像データとを比較し、前記作業装置と前記可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記マニピュレータの基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとし、
(2)前記床面に設けられた第2囲みフレームマークの内側の何処かに前記可搬型ワークストッカを配置した状態で、前記視覚センサが検出した前記可搬型ワークストッカに配置された第2ターゲットマークの画像データと、前記制御手段が記憶している前記第2ターゲットマークの基準画像データとを比較し、前記可搬型ワークストッカと前記可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとし、かつ、
(3)前記視覚センサが検出した前記可搬型ワークストッカ内に収容されたワークパレットに配置されている第3ターゲットマークの画像データと、前記制御手段が記憶している前記第3ターゲットマークの基準画像データとを比較し、前記ワークパレットと前記可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとし、
(4)前記マニピュレータは、補正された前記マニピュレータの姿勢データ及び動作位置データに基づき前記可搬型ワークストッカから前記ワークをピックアップし、前記作業装置へ給材し又は前記作業装置から除材する、
ことを特徴とするワーク給除材システム。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク給除材システムにおいて、
前記可搬型ロボット装置を前記第1囲みフレームマークの内側に配置し、前記可搬型ワークストッカを前記第2囲みフレームマークの内側に配置し、前記マニピュレータの初期設定において、
前記作業装置に係る前記基準画像データ及び前記基準動作位置データは、マニュアル動作によって前記マニピュレータを駆動し、前記視覚センサが前記第1ターゲットマークを検出可能な状態となった際に取り込んだ前記第1ターゲットマークの画像データ及びその状態における前記マニピュレータの動作位置データであり、
前記可搬型ワークストッカに係る前記基準画像データ及び前記基準動作位置データは、マニュアル動作によって前記マニピュレータを駆動し、前記視覚センサが前記第2ターゲットマークを検出可能な状態となった際に取り込んだ前記第2ターゲットマークの画像データ及びその状態における前記マニピュレータの動作位置データであり、
前記ワークパレットに係る前記基準画像データ及び前記基準動作位置データは、マニュアル動作によって前記マニピュレータを駆動し、前記視覚センサが前記第3ターゲットマークを検出可能な状態となった際に取り込んだ前記第3ターゲットマークの画像データ及びその状態における前記マニピュレータの動作位置データである、
ことを特徴とするワーク給除材システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワーク給除材システムにおいて、
前記可搬型ワークストッカは、ハウジングと当該ハウジングの内部に配置された前記ワークパレットとを有し、
前記ワークパレットのワーク載置面には、所定の位置に前記ワークが載置され、
前記第3ターゲットマークは、前記ワーク載置面上の前記視覚センサが検出可能な位置に配置されている、
ことを特徴とするワーク給除材システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のワーク給除材システムにおいて、
前記可搬型ワークストッカは、ハウジングと当該ハウジングの内部に配置された前記ワークパレットとを有し、
前記マニピュレータは、複数段に配置された前記ワークパレットを1段毎に前記ハウジングから水平方向に引き出したり、押し戻したりすることが可能であり、
前記第3ターゲットマークは、前記ワークパレットを前記ハウジングから引き出した状態で前記視覚センサが検出することが可能な位置に配置されている、
ことを特徴とするワーク除給材システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワーク除給材システムにおいて、
前記可搬型ロボット装置は、前記作業装置の状況情報を認識する情報手段を備え、
前記制御手段は、前記状況情報に基づき前記作業装置及び前記可搬型ワークストッカに対する前記マニピュレータの動作を制御する、
ことを特徴とするワーク給除材システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のワーク給除材システムを構成し、ワークの給材動作及び除材動作を担う可搬型ロボット装置であって、
下部に車輪を有する可搬型台車と、
前記可搬型台車に搭載される前記マニピュレータと、
前記マニピュレータに取り付けられる視覚センサと、
前記マニピュレータ及び前記視覚センサを制御する前記制御手段と、
を備え、
前記視覚センサが、前記第1ターゲットマーク、前記第2ターゲットマーク及び前記第3ターゲットマークを検出して取り込んだターゲットマークに対応する各画像データと、各前記基準画像データとを比較し、前記作業装置及び前記可搬型ワークストッカとの相対的な位置ずれ量を算出し、各当該位置ずれ量に基づき予め設定されている各前記基準姿勢データ及び各前記基準動作位置データを補正し前記マニピュレータを駆動する、
ことを特徴とする可搬型ロボット装置。
【請求項7】
請求項6に記載の可搬型ロボット装置において、
前記可搬型台車は、当該可搬型台車が静止した位置において前記可搬型台車の位置及び姿勢を固定するアウトリガーを備え、
前記アウトリガーは、前記可搬型台車から前記床面に沿う複数方向の任意位置に転回可能なアウトリガーアーム及び前記アウトリガーアームの先端部に螺合し、前記床面に当接する高さ位置又は前記床面から離間する高さ位置に調整可能なアウトリガーポストを備えている、
ことを特徴とする可搬型ロボット装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のワーク給除材システムを構成し、ワークの運搬を担う可搬型ワークストッカであって、
下部に車輪を有するハウジングの内部に前記ワークが載置される前記ワークパレットが複数段に配置され、
前記ワークパレットは、1段毎に前記ハウジングから水平方向に引き出したり、押し戻したりすることが可能であり、
前記ハウジングには前記第2ターゲットマークが設けられ、前記ワークパレットのワーク載置面には前記第3ターゲットマークが設けられており、前記可搬型ワークストッカを前記第2囲みフレームマークの内側に配置したときに、前記第2ターゲットマーク及び前記第3ターゲットマークは、前記第1囲みフレームマークの内側に設置された前記可搬型ロボット装置の前記視覚センサが検出可能な位置に配置されるよう構成された、
ことを特徴とする可搬型ワークストッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク給除材システム、可搬型ロボット装置及び可搬型ワークストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業効率を向上させるために、作業装置(工作機械など)にロボットを据え付け、ロボットにワークの給材及び除材を行わせることが一般化してきている。しかしながら、このような装置は、大型化し高価な装置になること、広い設置スペースが必要になること、或いは、作業装置が作業を停止している間はロボットも停止していることなどから効率的な装置であるとはいえない。そこで、ロボットを台車に搭載したうえで、これらを作業装置の近傍に移送してワークの給材及び除材を行う可搬型ロボット装置が登場した。しかし、可搬型ロボット装置においては、据え置き設置される作業装置と可搬型ロボット装置との相対的な位置管理を厳密に行う必要がある。
【0003】
そのような可搬型ロボット装置の1例としては、作業装置である工作機械の前壁にマーク(ターゲットマークということがある)を設け、工作機械の近傍に移送設置した可搬型ロボット装置の台車に搭載された視覚センサでターゲットマークを撮像し、撮像したターゲットマークの画像を相手情報として画像処理し、基準画像情報と比較して可搬型ロボット装置の位置を所定位置に設置するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、工作機械に設けられたターゲットマークを、走行台車に搭載されたロボット装置が有する視覚センサで撮像し、可搬型ロボット装置が基準位置に設置されたときと基準位置に設置されていないときの間のずれ量に基づきロボット装置の動作位置を補正し、その後に動作を開始させる可搬型ロボット装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-126800号公報
【文献】特開2019-93533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の可搬型ロボット装置においては、工作機械に対する可搬型ロボット装置の相対的な位置を厳密に管理するため、相手情報として受け付けた図の中央部と、処理画像中のターゲットマークの中央部とを一致させるようにロボット装置の位置を作業者が微調整しながら走行台車を移動しなければならず、効率的であるとはいえない。また、工作機械と可搬型ロボット装置との間で情報のやり取りをすることによって稼働する装置であることから、通信装置及び通信に関わる制御システムを装備しなければならず、既存の工作機械に何らかの改造をしなくてはこの可搬型ロボット装置を適用することはできないという課題がある。
【0007】
特許文献2のロボット装置においては、工作機械に対して可搬型ロボット装置の相対的な位置を厳密に規定しなくてもワークを給材することが可能である。但し、可搬型ロボット装置が所定位置の範囲外に設置された場合には、視覚センサの視野内にターゲットマークが入るまで可搬型ロボット装置を移動しなければならないという課題がある。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2の可搬型ロボット装置は、作業装置である工作機械とロボット装置との相対的な位置管理に関して対策を講じている。しかしながら、例えば、ワークを給材するためのワークストッカが可搬型の場合において、ワークストッカと可搬型ロボット装置との相対的な位置に関しては何ら考慮されていない。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題の少なくとも一つを解決するためになされたもので、既存の作業装置を改造することなく、可搬型ロボット装置と可搬型ワークストッカとの相対的な位置、及び、作業装置と可搬型ロボット装置との相対的な位置を厳密に規定しなくても、作業装置に対してワークの給材及び作業装置からワークを除材することが可能なワーク給除材システム、可搬型ロボット装置及び可搬型ワークストッカを実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のワーク給除材システムは、可搬型ワークストッカと作業装置との間で可搬型ロボット装置によってワークの給材及び除材を行うワーク給除材システムであって、前記可搬型ロボット装置は、可搬型台車に搭載されるマニピュレータ、前記マニピュレータに取り付けられた視覚センサ及び前記マニピュレータと前記視覚センサとを制御する制御手段を備え、(1)床面に設けられた第1囲みフレームマークの内側の何処かに前記可搬型ロボット装置を配置した状態で、前記視覚センサが検出した前記作業装置に配置されている第1ターゲットマークの画像データと、前記制御手段が記憶している前記第1ターゲットマークの基準画像データとを比較し、前記作業装置と前記可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記マニピュレータの基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとし、(2)前記床面に設けられた第2囲みフレームマークの内側の何処かに前記可搬型ワークストッカを配置した状態で、前記視覚センサが検出した前記ワークストッカに配置された第2ターゲットマークの画像データと、前記制御手段が記憶している前記第2ターゲットマークの基準画像データとを比較し、前記ワークストッカと前記可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとし、かつ、(3)前記視覚センサが検出した前記可搬型ワークストッカ内に収容されたワークパレットに配置されている第3ターゲットマークの画像データと、前記制御手段が記憶している前記第3ターゲットマークの基準画像データとを比較し、前記ワークパレットと前記可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとし、(4)前記マニピュレータは、補正された前記マニピュレータの姿勢データ及び動作位置データに基づき前記可搬型ワークストッカから前記ワークをピックアップし、前記作業装置へ給材し又は前記作業装置から除材することを特徴とする。
【0011】
[2]本発明のワーク給除材システムにおいては、前記可搬型ロボット装置を前記第1囲みフレームマークの内側に配置し、前記可搬型ワークストッカを前記第2囲みフレームマークの内側に配置し、前記マニピュレータの初期設定において、前記作業装置に係る前記基準画像データ及び前記基準動作位置データは、マニュアル動作によって前記マニピュレータを駆動し、前記視覚センサが前記第1ターゲットマークを検出可能な状態となった際に取り込んだ前記第1ターゲットマークの画像データ及びその状態における前記マニピュレータの動作位置データであり、前記可搬型ワークストッカに係る前記基準画像データ及び前記基準動作位置データは、マニュアル動作によって前記マニピュレータを駆動し、前記視覚センサが前記第2ターゲットマークを検出可能な状態となった際に取り込んだ前記第2ターゲットマークの画像データ及びその状態における前記マニピュレータの動作位置データであり、前記ワークパレットに係る前記基準画像データ及び前記基準動作位置データは、マニュアル動作によって前記マニピュレータを駆動し、前記視覚センサが前記第3ターゲットマークを検出可能な状態となった際に取り込んだ前記第3ターゲットマークの画像データ及びその状態における前記マニピュレータの動作位置データであることが好ましい。
【0012】
[3]本発明のワーク給除材システムにおいては、前記可搬型ワークストッカは、ハウジングと当該ハウジングの内部に配置されたワークパレットとを有し、前記ワークパレットのワーク載置面には、所定の位置に前記ワークが載置され、前記第3ターゲットマークは、前記ワーク載置面上の前記視覚センサが検出可能な位置に配置されていることが好ましい。
【0013】
[4]本発明のワーク給除材システムにおいては、前記マニピュレータは、複数段に配置された前記ワークパレットを1段毎に前記ハウジングから水平方向に引き出したり、押し戻したりすることが可能であり、前記第3ターゲットマークは、前記ワークパレットを前記ハウジングから引き出した状態で前記視覚センサが検出することが可能な位置に配置されていることが好ましい。
【0014】
[5]本発明のワーク給除材システムにおいては、前記可搬型ロボット装置は、前記作業装置の状況情報を認識する情報手段を備え、前記制御手段は、前記状況情報に基づき前記作業装置及び前記ワークストッカに対する前記マニピュレータの動作を制御することが好ましい。
【0015】
[6]本発明の可搬型ロボット装置は、上記[1]から[5]のいずれかに記載のワーク給除材システムを構成し、ワークの給材及び除材を担う可搬型ロボット装置であって、下部に車輪を有する可搬型台車と、前記可搬型台車に搭載される前記マニピュレータと、前記マニピュレータのいずれかに取り付けられる視覚センサと、前記マニピュレータ及び前記視覚センサを制御する前記制御手段と、を備え、前記視覚センサが、前記第1ターゲットマーク、前記第2ターゲットマーク及び前記第3ターゲットマークを検出して取り込んだターゲットマークに対応する各画像データと、各前記基準画像データとを比較し、前記作業装置及び前記可搬型ワークストッカとの相対的な位置ずれ量を算出し、各当該位置ずれ量に基づき予め設定されている各前記基準姿勢データ及び各前記基準動作位置データを補正し前記マニピュレータを駆動することを特徴とする。
【0016】
[7]本発明の可搬型ロボット装置においては、前記可搬型台車は、当該可搬型台車が静止した位置において前記可搬型台車の位置及び姿勢を固定するアウトリガーを備え、前記アウトリガーは、前記可搬型台車から前記床面に沿う複数の方向の任意位置に転回可能なアウトリガーアーム及び前記アウトリガーアームの先端部に螺合し、前記床面に当接する高さ位置又は前記床面から離間する高さ位置に調整可能なアウトリガーポストを備えていることが好ましい。
【0017】
[8]本発明のワークストッカは、上記[1]から[5]のいずれかに記載のワーク給材システムを構成し、ワークの運搬を担う可搬型ワークストッカであって、下部に車輪を有する前記ハウジングの内部に前記ワークが載置される前記ワークパレットが複数段に配置され、前記ワークパレットは、1段毎に前記ハウジングから水平方向に引き出したり、押し戻したりすることが可能な構成であり、前記ハウジングには前記第2ターゲットマークが設けられ、前記ワークパレットのワーク載置面には前記第3ターゲットマークが設けられており、前記可搬型ワークストッカを前記第2囲みフレームマークの内側に配置したときに、前記第2ターゲットマーク及び前記第3ターゲットマークは、前記第1囲みフレームマークの内側に設置された前記可搬型ロボット装置の前記視覚センサが検出可能な位置に配置されるよう構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既存の作業装置を改造することなく、可搬型ロボット装置と可搬型ワークストッカとの相対的な位置、及び、作業装置と可搬型ロボット装置との相対的な位置を厳密に規定しなくても、作業装置に対してワークの給材及び作業装置からワークを除材することが可能なワーク給除材システム、可搬型ロボット装置及び可搬型ワークストッカを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ワーク給除材システム1の全体構成を示す斜視図である。
図2】可搬型ロボット装置2の第1囲みフレームマーク6に対する設置位置及び可搬型ワークストッカ3の第2囲みフレームマーク7に対する設置位置の考え方を説明する説明図である。
図3】アウトリガー24の構成及び作用を示す説明図である。
図4】視覚センサ36が第1ターゲットマーク10を検出する状況を示す斜視図である。
図5】視覚センサ36が第2ターゲットマーク54を検出する状況を示す斜視図である。
図6】マニピュレータ23がワークパレット58をハウジング50から引き出す状況を示す斜視図である。
図7】視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出する状況を示す斜視図である。
図8】マニピュレータ23がワークWをピックアップする状況を示す斜視図である。
図9】マニピュレータ23がワークWをピックアップする状況を示す部分正面図である。
図10】ワークWの給材及び除材方法の主要工程を示す工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るワーク除給材システム1、可搬型ロボット装置2及び可搬型ワークストッカ3について、図1図10を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図面は、実際の構造、寸法、縦横の縮尺等を厳密に反映したものではない模式図である。
【0021】
[ワーク給除材システム1の構成]
図1は、ワーク給除材システム1の全体構成を示す斜視図である。ワーク給除材システム1は、可搬型ロボット装置2の近傍にワークWを運搬することが可能な可搬型ワークストッカ3と、可搬型ワークストッカ3に搭載されているワークWをピックアップして作業装置4まで搬送し、作業装置4の所定位置に給材する可搬型ロボット装置2とから構成されている。
【0022】
ワーク除給材システム1の稼働時において、可搬型ロボット装置2は、床面5に配置された第1囲みフレームマーク6の内側に配設される。同様に、可搬型ワークストッカ3は、床面5に配置された第2囲みフレームマーク7の内側に配設される。なお、可搬型ロボット装置2は、第1囲みフレームマーク6の内側の領域に入っていれば厳密に配置位置を規定しなくてもよい。一方、可搬型ワークストッカにおいても第2囲みフレームマーク7の内側の領域に入っていれば厳密に配置位置を規定しなくてもよい。第1囲みフレームマーク6及び第2囲みフレームマーク7は共に、通称「トラテープ」のような目立つ色彩のテープなどを床面5に貼着することによって容易に配置することが可能である。第1囲みフレームマーク6及び第2囲みフレームマーク7と、可搬型ロボット装置2及び可搬型ワークストッカ3と、の位置関係については、図2を参照して後述する。
【0023】
作業装置4は、例えば、ワークWを機械加工する工作機械、ワークWの表面に何らかの処理を施す処理装置、組み立て装置、検査装置などであって特にこれらに限定されない。作業装置4の装置本体8内には上記の作業を行う加工装置などが格納されており、可搬型ロボット装置2に対面する壁面9に第1ターゲットマーク10が配置されている。壁面9には、操作パネル11及び表示パネル12が配置されている。操作パネル11には、作業装置4の運転に関わる操作を行うためのキーボード、ON/OFFスイッチ、稼働状況を知らせるためのランプなどが配設されている。表示パネル12には、操作パネル11から入力される各種データや作業装置4の稼働状況などを表す数字や表、グラフなどが表示される。
【0024】
また、作業装置4の可搬型ロボット装置2側の壁面9には、開閉扉13が設けられている。開閉扉13は、ワークWを給材又は除材する際に開放し、ワークWの加工や処理などの作業をする際には閉鎖する。開閉扉13には、開閉扉13の開閉操作をするための取手14が取り付けられている。作業装置4は、開閉扉13が解放されているときに加工などの作業を停止し、閉鎖されているときに作業できるように設定されることがある。
【0025】
[可搬型ロボット装置2の構成]
続いて、可搬型ロボット装置2の構成について図1を参照して説明する。可搬型ロボット装置2は、主として下部に車輪20を有する可搬型台車21及び可搬型台車21にベース部22が固定されるマニピュレータ23から構成されている。可搬型台車21には、可搬型ロボット装置2の静止位置を安定して維持するためのアウトリガー24が取り付けられている。アウトリガー24の構成及び作用については図3を参照して後述する。可搬型台車21の上部には、作業者が可搬型ロボット装置2を移送するための取手25が取り付けられている。このように構成された可搬型ロボット装置2は、アウトリガー24を閉じた状態で床面5上を自在に移送することが可能であり、アウトリガー24を転回することによって可搬型ロボット装置2の静止位置及び姿勢を維持することが可能となっている。
【0026】
なお、以降に説明するロボット本体であるマニピュレータ23は、複数のアームと関節を備える、いわゆる垂直多関節ロボットの1例である。マニピュレータ23は、マニピュレータ23全体を垂直軸周りに旋回する第1軸26、アーム27を可搬型ロボット装置2の移送方向に対して前後に揺動する第2軸28、アーム29を上下に揺動する第3軸30、アーム29の先端部に配設される手首31をアーム29に対して上下に揺動する第4軸32、手首31をアーム29に対して回転する第5軸33及び手首31を第5軸33に対して直交方向に回転する第6軸34とから構成される。上記各軸は各アームを所定方向に揺動し又は回転する関節に相当する。但し、ワーク給除材システム1に使用可能なマニピュレータとしては、このような垂直多関節ロボットに限られない。
【0027】
手首31の先端には、ワークWを把持する把持部35が取り付けられている。図1に示す把持部35は爪状の把手であるが、吸着チャックなどで構成することが可能である。把持部35は、ワークWの形態や材質によって把持方式や形状を任意に選択することが可能である。手首31には、第6軸34の延長方向に沿って視覚センサ36が取り付けられている。第1軸26、第2軸28、第3軸30、第4軸32、第5軸33及び第6軸34は、それぞれサーボモータ(図示は省略)を備えている。視覚センサ36と把持部35の相対的な位置は、高精度に管理されており、視覚センサ36の位置から把持部35の位置を規定することができる。
【0028】
視覚センサ36は、第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55を画像として高精細に検出できるものである。具体的にはCCDイメージセンサ(CCDカメラ)やCMOSイメージセンサ(CMOSカメラ)などが挙げられるが、特にこれらには限定されるものではない。マニピュレータ23の下方側(可搬型台車21の中)には、マニピュレータ23の動作及び視覚センサ36の検出動作などマニピュレータ23全般の制御を担う制御手段としてのコントローラ37が配設されている。次に、可搬型ロボット装置2の1囲みフレームマーク6に対する設置位置の考え方について図2を参照して説明する。
【0029】
図2は、可搬型ロボット装置2の第1囲みフレームマーク6に対する設置位置及び可搬型ワークストッカ3の第2囲みフレームマーク7に対する設置位置の考え方を説明する説明図である。まず、可搬型ロボット装置2の設置位置の考え方について説明する。なお、図2は、可搬型ロボット装置2の設置位置を2通りとした例を表し、マニピュレータ23の図示を省略している。便宜的に一方を可搬型台車21A、他方を可搬型台車21Bと記載する。可搬型台車21Aは、作業装置4の壁面9に対して傾斜し、第1囲みフレームマーク6の内郭線6aの内側に配置されている。可搬型台車21Bは、作業装置4に対してほぼ平行に配置された例であり、同様に第1囲みフレームマーク6の内郭線6aの内側に設置されている。
【0030】
図2は、可搬型台車20を移送し、第1囲みフレームマーク6の内郭線6aの内側の何処かに設置すれば、視覚センサ36が第1ターゲットマーク10を検出することが可能となり、マニピュレータ23によってワークWの作業装置4に対する給材動作及び除材動作を行うことが可能であることを表している。このことについては、図4を参照して後述する。
【0031】
可搬型台車21の平面寸法は、可搬型ロボット装置2を安定して移送することが可能な範囲で小さくすることが好ましい。このようにすることによって、アウトリガー24を閉じれば狭い通路においても可搬型ロボット装置2を移送することが可能となる。なお、可搬型ロボット装置2を設置し駆動する際には、アウトリガー24を転回し、床面5に接地させる。
【0032】
図3は、アウトリガー24の構成及び作用を示す説明図であり、図3(a)は平面図、図3(b)はアウトリガー24を転回した状態を表している。アウトリガー24は、可搬型台車21の対向する2壁面に2セットずつ配設されている。
【0033】
アウトリガー24は、可搬型台車21から支持軸39を回転軸として転回可能なアウトリガーアーム40及びアウトリガーアーム40の先端から床面5に対し垂直方向の任意高さに調整可能なアウトリガーポスト41を備えている。図示は省略するが、アウトリガーポスト41はアウトリガーアーム40に螺合されており、上端部の掴み部43を回転することによって床面5との高さ位置関係を調整できる。アウトリガーポスト41にはハンドルを有する固定ナット42が螺合され、アウトリガーポスト41の高さ位置を固定する。或いは、図示は省略するが、アウトリガーアーム40とアウトリガーポスト41との螺合部で横方向から固定ねじでアウトリガーポスト41を固定するようにしてもよい。可搬型ロボット装置2を移送する際には、図1及び図3(a)に示すように、壁面側にアウトリガーアーム40が閉じられている。可搬型ロボット装置2が第1囲みフレームマーク6の内側に移送されたところで、アウトリガー24を床面5に沿って可搬型台車21の外側方向の任意位置に転回させる。図3(a)は、アウトリガー24を転回した1状態を二点鎖線で示している。
【0034】
アウトリガー24は、平面方向の任意位置にアウトリガーアーム40を転回することができることから、可搬型ロボット装置2を設置する床面5に障害物があっても、その障害物を避けた位置に転回することが可能である。さらに、アウトリガーポスト41は、任意高さに調整可能であることから、床面5が傾斜していても、或いは、多少の段差があっても可搬型ロボット装置2を床面5に姿勢を安定させて設置することができる。なお、アウトリガー24は、2セット又は3セット構成とすることが可能である。また、車輪20にブレーキを設け可搬型ロボット装置2の自重で設置位置及び姿勢が維持可能であればアウトリガー24の配設を省略することが可能である。なお、可搬型ロボット装置2は厳密に水平に設置しなくてもワークWの給材及び除材は可能である。
【0035】
[可搬型ワークストッカ3の構成]
続いて、可搬型ワークストッカ3の構成について図1を参照して説明する。可搬型ワークストッカ3は、貯留場所であるストックエリアと可搬型ロボット装置2の間でワークWの運搬を担う。可搬型ワークストッカ3は、主としてハウジング50と、ハウジング50の内部に配設されるワークパレット51とから構成される。ハウジング50の下部には車輪52が取り付けられている。ワークパレット51は、ハウジング50内に複数段に配設されており、ハウジング50からワークパレット51を1段毎水平方向に引き出したり、押し戻したりするための取手49が取り付けられている。但し、ワークパレット51は、1段のみが引き出し可能であり、引き出したワークパレット51の位置を維持する制動手段(図示は省略)が設けられている。1段のワークパレット51が引き出されているときには、他の段のワークパレット51は引き出すことはできない構成となっている。ハウジング50の上方側には、作業者が可搬型ワークストッカ3を移送するための取手53が取り付けられている。
【0036】
ハウジング50の可搬型ロボット装置2に向く面には、第2ターゲットマーク54が配置されている。可搬型ワークストッカ3は床面5に配置された第2囲みフレームマーク7の内側の領域に設置される。第2囲みフレームマーク7は、第1囲みフレームマーク6と同様に、通称「トラテープ」のような目立つ色彩のテープなどを床面5に貼着することによって容易に配置することが可能である。また、ワークパレット51のワークWを載置する面には、第3ターゲットマーク55が配置されている。第3ターゲットマーク55の配置については、図6及び図7を参照して後述する。
【0037】
続いて、図2を参照して可搬型ワークストッカ3の第2囲みフレームマーク7に対する設置位置の考え方について説明する。なお、図2は、可搬型ワークストッカ3の設置場所を2通りとした例を表している。便宜的に一方を可搬型ワークストッカ3A、他方を可搬型ワークストッカ3Bとする。なお、図2は、可搬型ワークストッカ3のハウジング50の外形を表している。可搬型ワークストッカ3Aは第2囲みフレームマーク7に対して傾斜し、第2囲みフレームマーク7の内郭線7aの内側に配置されている。一方、可搬型ワークストッカ3Bも同様に、第2囲みフレームマーク7の内郭線7aの内側に設置されている。
【0038】
可搬型ワークストッカ3を移送し、第2囲みフレームマーク7の内側、つまり内郭線7aの内側の領域内に設置すれば、視覚センサ36が第2ターゲットマーク54を検出することが可能となり、マニピュレータ23によってワークWをワークパレット51からピックアップすることが可能となる。
【0039】
[基準画像データ、基準姿勢データ及び基準動作位置データ]
まず、マニピュレータ23の動作プログラムが参照するデータの基準となる基準画像データ、基準姿勢データ及び基準動作位置データの取得について図4図5図7を参照して説明する。
【0040】
図4は、視覚センサ36が第1ターゲットマーク10を検出する状況を示す斜視図であり、図5は、視覚センサ36が第2ターゲットマーク54を検出する状況を示す斜視図であり、図7は、視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出する状況を示す斜視図である。上記した基準となる各データを取得するため、ワーク除給材システム1の調整者は、まず、可搬型ロボット装置2を移送し第1囲みフレームマーク6の内側に設置し、可搬型ワークストッカ3を移送し第2囲みフレームマーク7の内側に設置する。そして、第1ターゲットマーク10が視覚センサ36の視野56内に入る位置までマニュアル操作でマニピュレータ23を動かす。視覚センサ36が第1ターゲットマーク10を検出したところで、第1ターゲットマーク10の画像データ及びこの画像データを取り込んだ時のマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データを、それぞれ「基準姿勢データ」及び「基準動作位置データ」としてコントローラ37に取り込む。なお、この時に取り込んだ画像データが第1ターゲットマーク10に対する基準画像データである。
【0041】
次いで、図5に示すように、調整者は第2ターゲットマーク54が視覚センサ36の視野56内に入る位置までマニュアル操作でマニピュレータ23を動かす。視覚センサ36が第2ターゲットマーク54を検出したところで、第2ターゲットマーク54の画像データ及びこの画像データを取り込んだ時のマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データをコントローラ37に取り込む。なお、この時に取り込んだ画像データが第2ターゲットマーク54に対する基準画像データであり、姿勢データが基準姿勢データであり、動作位置データが基準動作位置データとなる。
【0042】
次いで、図7に示すように、第3ターゲットマーク55が視覚センサ36の視野56内に入る位置までマニュアル操作でマニピュレータ23を動かす。視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出したところで、第3ターゲットマーク55の画像データ及びこの画像データを取り込んだ時のマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データをコントローラ37に取り込む。この時に取り込んだ画像データが第3ターゲットマーク55に対する基準画像データである。
【0043】
なお、姿勢データとは、視覚センサ36が第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55を検出したときのマニピュレータ23の姿勢に対応したデータであり、マニピュレータ23を構成する各関節及び各アームがどのような相関関係にあるかを示すパラメータである。また、動作位置データとは、マニピュレータ23(把持部35)が、ワークWをピックアップする位置、作業装置4に給材する位置(作業装置4から除材する位置を含む)の各位置に対する把持部35の動作軌跡、及び、視覚センサ36が上記各ターゲットマークを検出する位置及び動作軌跡のそれぞれに対応したデータである。このように、各ターゲットマークを取り込んだときの各基準画像データ、基準姿勢データ及び基準動作位置データに基づいて基準となる動作が規定される。動作プログラムがこれらの各基準データを参照しながらマニピュレータ23を駆動すれば、視覚センサ36が第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55を検出可能な位置まで移動させることが可能となる。
【0044】
[マニピュレータ23の動作補正]
可搬型ロボット装置2を第1囲みフレームワーク6の内側に配置し、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームワーク7の内側に配置すれば、視覚センサ36が第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55を検出することによって、それらの画像データから姿勢データ及び動作位置データを補正し、マニピュレータ23を動作することが可能となる。そのことについて図4図5及び図7を参照して説明する。
【0045】
第1囲みフレームマーク6の内側に上記基準画像データ取得位置とは異なる位置に可搬型ロボット装置2を設置したとして説明する。まず、図4に示すように、動作プログラムを実行することによってマニピュレータ23を駆動し、第1ターゲットマーク10を検出可能な位置まで視覚センサ36を移動させる。そのときの視覚センサ36と第1ターゲットマーク10との相対的な位置関係は、基準画像データを取り込んだときとは異なる。視覚センサ36が第1ターゲットマーク10を検出すると、コントロータ37はこれに基づき第1ターゲットマーク10の画像データを取り込み、当該画像データと基準画像データとを比較し、可搬型ロボット装置2と作業装置4との相対的な位置ずれ量を画像処理によって算出する。そして、この位置ずれ量に基づき予め設定されている基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセット(補正)をかけて動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データ(データ群A)とする。なお、第1ターゲットマーク10の画像データを取り込むことによって、作業装置4と可搬型ロボット装置2との相対的な位置が規定されることから、可搬型ロボット装置2に対する加工ステージ57の位置が規定される。なお、位置ずれ量には、距離及び方向が含まれる。
【0046】
続いて、図5に示すように、動作プログラムを実行することによってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36が第2ターゲットマーク54を検出することが可能な位置まで移動させる。このときの視覚センサ36と第2ターゲットマーク54との相対的な位置関係は、基準画像データを取り込んだときとは異なる。視覚センサ36が、第2ターゲットマーク54を検出すると、コントローラ37は第2ターゲットマーク54の画像データを取り込み、当該画像データと基準画像データとを比較し、可搬型ロボット装置2と可搬型ワークストッカ3との相対的な位置ずれ量を画像処理によって算出する。そして、この位置ずれ量に基づき予め設定されている基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセット(補正)をかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとする(データ群B)。次に、第3ターゲットマーク55を検出する。
【0047】
視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出する動作の前に、マニピュレータ23を駆動し把持部35で取手49を把持し、視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出することが可能な位置までワークパレット51をハウジング50から引き出す。
【0048】
図6は、マニピュレータ23がワークパレット51をハウジング50から引き出す状況を示す斜視図である。可搬型ワークストッカ3は、第2囲みフレームマーク7の内側に配設されており、可搬型ロボット装置2との相対的な位置が規定された関係にある。ワークパレット51のワーク載置面58には、第3ターゲットマーク55が配置されている。第3ターゲットマークは、複数段に配置されたワークパレット51のそれぞれに配置されている。ハウジング50と取手49との相対的な位置関係が分かっていることから、取手49と可搬型ロボット装置2との相対的な位置関係も逆算して規定することができる。従って、動作プログラムがこれらを加味した姿勢データ及び動作位置データを参照して実行することにより、マニピュレータ23を駆動すれば、ワークパレット51を引き出したり、押し戻したりすることが可能となる。
【0049】
図7に示すように、ワークパレット51を引き出した後に、動作プログラムを実行することによってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出することが可能な位置まで移動させる。このときの視覚センサ36と第3ターゲットマーク55との相対的な位置は、基準画像データを取り込んだときとは異なる。視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出すると、コントローラ37はこれに基づき、第3ターゲットマーク55の画像データを取り込み、当該画像データと基準画像データとを比較し、可搬型ロボット装置2とワークパレット51との相対的な位置ずれ量を画像処理によって算出する。そして、この位置ずれ量に基づき予め設定されている基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作データとする(データ群C)。
【0050】
なお、ワークWは、ワーク載置面58の所定位置に載置されている。従って、可搬型ロボット装置2とワークパレット51との相対的な位置が分かっていれば、可搬型ロボット装置2に対する各ワークWの位置を規定することができる。従って、動作プログラムがこれらの加味した姿勢データ及び動作位置データを参照して実行することにより、プログラムされた順番でワークWをピックアップすることができる。また、図に示す例においては、ワークストッカ51は、ハウジング50内の複数段に配設されているが、各段において、第3ターゲットマーク55を検出すること、基準画像データとのずれ量を算出し、オフセットをかけることの動作を繰り返すことによって、ワークパレット1段毎にワークWをピックアップすることが可能となる。
【0051】
上記データ群A、データ群B及びデータ群Cをコントローラ37で合成し、ワークWを可搬型ワークストッカ3からピックアップし、作業装置4の加工ステージ57へ給材し、加工後のワークWを作業装置4から除材するという一連の動作プログラムを実行することによって、マニピュレータ23を駆動する。
【0052】
図8は、マニピュレータ23がワークWをピックアップする状況を示す斜視図である。マニピュレータ23は、基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけた姿勢データ及び動作位置データに従い所定位置に載置されているワークWを把持部35によってピックアップする。把持部35を有する手首31は、ワークWの配置位置及び姿勢に対応して回転しワークWをピックアップする。なお、ワークパレット51は、ハウジング50から引き出した際に、ワークパレット51の自重及びワークWの重量によって傾斜することがある。ワークパレット51が傾斜している場合、つまり、ワークWが傾斜している場合においてもマニピュレータ23は、ワークWをピックアップすることが可能である。このことについて、図9を参照して説明する。
【0053】
図9は、マニピュレータ23がワークWをピックアップする状況を示す部分正面図である。図9(a)は、ワークパレット51がハウジング50から水平に引き出された状況を示し、図9(b)は、引き出されたワークパレット51が水平面に対して角度θ分傾斜している状況を表している。ワークパレット51が水平に引き出された状況においては、手首31を鉛直方向に向け、把持部35を下方に移動してワークWを把持し、上方に移動してワークWをピックアップする。
【0054】
引き出されたワークパレット51が水平面に対して角度θだけ傾斜している状況においては、視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出して取得した画像データと基準画像データとを比較し、画像処理によって傾斜角度θを算出する。そこで、手首31を鉛直軸に対して傾斜角度θ分傾けることによって、ワーク載置面58に対して垂直方向に手首31を移動すれば、ワークWを確実にピックアップすることが可能となる。すなわち、ワークパレット51をハウジング50から引き出した状態で、第3ターゲットマーク55の画像データを取得すれば、ワークWを確実にピックアップすることが可能となる。
【0055】
なお、ワークパレット51は、ハウジング50から引き出された際、図9(b)に示したように、ワークパレット51の長さ方向に傾斜することも、幅方向に傾斜することもある。このように様々な方向にワークパレット51が傾斜する場合において、第3ターゲットマーク55を検出し、その傾斜角度及び傾き方向を補正することによって、どのような傾斜があっても、ワークWをワークパレット51のワーク載置面58に対し垂直方向に手首31を向けて移動することによってワークWピックアップすることが可能となる。続いて、ワーク給除材システム1を使用するワークWの給材及び除材方法について図10を参照して説明する。
【0056】
[ワークWの給材及び除材方法]
図10は、ワークWの給材及び除材方法の主要工程を示す工程フロー図である。まず、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側に移送し(ステップS1)、可搬型ロボット装置2を第1囲みフレームマーク6の内側に移送する(ステップS2)。なお、可搬型ワークストッカ3及び可搬型ロボット装置2の移送順番は、どちらを先にしてもよい。
【0057】
可搬型ロボット装置2を第1囲みフレームマーク6の内側に移送したところで、アウトリガー24を転回し(ステップS3)、可搬型ロボット装置2の位置及び姿勢を固定する。次いで、マニピュレータ23を起動し、視覚センサ36で第1ターゲットマーク10を検出し(ステップS4)、第1ターゲットマーク10の画像データと基準画像データとを比較して作業装置4と可搬型ロボット装置2との相対的な位置ずれ量を算出する(ステップS5)。この相対的な位置ずれ量に基づきマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データを補正する(ステップS6)。ここで補正するとは、予め設定されている基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとすることである。
【0058】
続いて、マニピュレータ23を駆動し、把持部35によって取手14を掴み作業装置4の開閉扉13を開ける(ステップS7)。この動作は、ワークWの給材を可能にするための作業であり、動作プログラムによって実行される。なお、開閉扉13の開閉は作業者が行うようにしてもよい。開閉扉13を開けた後、さらに、マニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36で第2ターゲットマーク54を検出し(ステップS8)、第2ターゲットマーク54の画像データと基準画像データとを比較して可搬型ワークストッカ3と可搬型ロボット装置2との相対的な位置ずれ量を算出する(ステップS9)。この相対的な位置ずれ量に基づき可搬型ワークストッカ3に対するマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データを補正する(ステップS10)。ここで補正するとは、予め設定されている基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとすることである。
【0059】
次いで、マニピュレータ23によって指定のワークパレット51(給材対象のワークWが載置されているワークパレット51)を引き出す(ステップS11)。さらにマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36で第3ターゲットマーク55を検出し(ステップS12)、第3ターゲットマーク55の画像データと基準画像データと比較してワークパレット51とマニピュレータ23との相対的な位置ずれ量を算出する(ステップS13)。この相対的な位置ずれ量に基づきワークパレット51に対するマニピュレータ23の動作位置を補正する(ステップS14)。ここで補正するとは、予め設定されている基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとすることである。続いて、指定のワークW(給材対象のワークW)をマニピュレータ23(把持部35)でピックアップし(ステップS15)、ワークWを加工ステージ57に移載し(ステップS16)、開閉扉13を閉める(ステップS17)。
【0060】
開閉扉13が閉められたことを認識した作業装置4は、ワークWの加工作業(又は処理作業など)を開始する。ワークWの加工が終了したところで、マニピュレータ23を駆動して開閉扉13を開け(ステップS19)、加工ステージ57からワークWをピックアップし(ステップS20)、ワークパレット51の所定位置、例えば、除材対象のワークWをピックアップした元の位置に除材する(ステップS21)。ワークパレット51上に複数のワークWが載置されている場合には、所定数のワークWのピックアップが終了するまでステップS15~ステップS21の工程を繰り返す。なお、ワークWを除材する位置は、ワークストッカ3内の所定位置ではなく、他の除材パレットや他の除材用ワークストッカなどでもよい。
【0061】
ピックアップ及び除材が所定数に達したところで、マニピュレータ23をさらに駆動してワークパレット51をハウジング50内に押し込む(ステップS22)。ワークパレット51が複数段ある場合には、ステップS11からステップS22の工程を繰り返し、可搬型ワークストッカ3に搭載されているワークWの給材又は除材が終了したところで、開閉扉13を閉める(ステップS23)。さらにワークWの補給が必要な場合には、可搬型ワークストッカ3を交換する(ステップS24)。すなわち、ワークWが搭載された可搬型ワークストッカ3をストックエリアから第2囲みフレームマーク7の内側に移送し、ステップS8~ステップS22までの工程を繰り返す。
【0062】
なお、以上説明したステップS4からステップ23までの工程は、動作プログラムによって連続的、かつ、自動的に人手を介さずに実行される。
【0063】
なお、図示は省略するが、可搬型ロボット装置2は、作業装置4との間で相互の状況情報を交換する情報手段を備えている。情報手段としては、例えば、無線通信、有線通信などの通信手段を通じた情報交換手段、ネットワークを通じた情報交換手段、作業装置が備える表示パネル、ランプ、操作パネル及びスイッチ類などを視覚センサ36で読み取り判断する画像認識手段などが含まれる。例えば、作業装置4が、通信手段を備えている場合には、作業装置4にワークWを給材したときに、通信手段を介して作業装置4に「給材終了信号」を送信し、「給材終了信号」を受信した作業装置4は作業を開始する。或いは、視覚センサ36によって作業装置4の表示パネル12に表示される「給材終了表示」を検出することや、給材終了時ランプの点灯などを検出すること、作業装置に備えられるON/OFFスイッチをマニピュレータ23によって操作し、作業装置4の起動操作又は停止操作をすることによって情報手段を構成することが可能である。また、作業装置4へのワークWの給材が終了したこと、又は所定の加工や処理などの作業が終了したとことを通信手段を介して作業装置4から可搬型ロボット装置2に送信し、可搬型ロボット装置2は、マニピュレータ23を駆動して開閉扉13を開けたり、閉めたりする情報手段を構成することも可能である。なお、作業装置4がブザーなどを備えている場合には、可搬型ロボット装置2によってブザー音を検出して上記各操作をマニピュレータ23に実行させるといったことで情報手段を構成することも可能である。
【0064】
以上説明したワーク除給材システム1は、可搬型ワークストッカ3と作業装置4との間で可搬型ロボット装置2によってワークWの給材及び除材を行うワーク給除材システムである。可搬型ロボット装置2は、可搬型台車21に搭載されるマニピュレータ23、マニピュレータ23に取り付けられた視覚センサ36及びマニピュレータ23と視覚センサ36とを制御する制御手段としてのコントローラ37を備えている。
【0065】
可搬型ロボット装置2は、床面5に設けられた第1囲みフレームマーク6の内側の何処かに配置した状態で、視覚センサ36が検出した作業装置4に配置されている第1ターゲットマーク10の画像データと、コントローラ37が記憶している第1ターゲットマーク10の基準画像データとを比較し、作業装置4と可搬型ロボット装置2との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されているマニピュレータ23の基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとする。
【0066】
また、床面5に設けられた第2囲みフレームマーク7の内側の何処かに可搬型ワークストッカ3を配置した状態で、視覚センサ36が検出したワークストッカ3に配置された第2ターゲットマーク55の画像データと、コントローラ37が記憶している第2ターゲットマーク54の基準画像データとを比較し、可搬型ワークストッカ3と可搬型ロボット装置2との相対的な位置ずれ量を算出し、マニピュレータ23の基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとする。
【0067】
さらに、視覚センサ36が検出した可搬型ワークストッカ3内に収容されたワークパレット51に配置されている第3ターゲットマーク55の画像データと、コントローラ37が記憶している第3ターゲットマーク55の基準画像データとを比較し、ワークパレット51と可搬型ロボット装置2との相対的な位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき予め設定されているマニピュレータ23の基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとする。
【0068】
マニピュレータ23は、マニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データに基づき可搬型ワークストッカ3からワークWをピックアップし、作業装置4へ給材し又は作業装置4から除材する。
【0069】
ワーク除給材システム1は、可搬型ロボット装置2を第1囲みフレームマーク6の内側に配置した状態で動作プログラムを実行することによってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36で作業装置4に配置された第1ターゲットマーク10の画像データを取り込み、当該画像データと基準画像データとを比較することによって位置ずれ量を算出する。そして、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとしてマニピュレータ23を駆動する。
【0070】
また、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側に配置した状態で動作プログラムを実行することによってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36で可搬型ワークストッカ3に配置された第2ターゲットマーク54の画像データを取り込み、当該画像データと基準画像データとを比較することによって位置ずれ量を算出する。そして、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている前記基準姿勢データ及び前記基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとしてマニピュレータ23を駆動する。
【0071】
さらに、ワークパレット51をハウジング50から引き出した状態で、動作プログラムを実行することによってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36でワークパレット51に配置された第3ターゲットマーク55の画像データを取り込み、基準画像データと比較することによって位置ずれ量を算出する。そして、当該位置ずれ量に基づき予め設定されている基準姿勢データ及び基準動作位置データにオフセットをかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとしてマニピュレータ23を駆動する。
【0072】
以上説明したーク給除材システム1によれば、既存の作業装置4を改造することなく、可搬型ロボット装置2と可搬型ワークストッカ3との相対的な位置、及び、作業装置4と可搬型ロボット装置2との相対的な位置を厳密に規定しなくても、作業装置4に対してワークWの給材及び作業装置4からワークWを除材することが可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態にて説明する第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55は、共通のものを採用することが可能であり、例えば、円、多角形若しくは両者の組み合わせ、又は、交差する複数の直線若しくは円及び多角形と直線との組み合わせを線描したシールなどを使用することが可能である。或いは、駒状の立体物であってもよい。作業装置4、可搬型ワークストッカ3及びワークパレット51の視覚センサ36が検出することが可能な位置であれば、任意の位置に配置することが可能である。
【0074】
また、ワーク除給材システム1において、可搬型ロボット装置2を第1囲みフレームマーク6の内側に配置し、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側に配置し、マニピュレータ23の初期設定において、作業装置4に係る基準画像データ及び基準動作位置データは、マニュアル動作によってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36が第1ターゲットマーク10を検出可能な状態となった際に取り込んだ第1ターゲットマーク10の画像データ及びその状態におけるマニピュレータ23の動作位置データである。
【0075】
また、可搬型ワークストッカ3に係る基準画像データ及び基準動作位置データは、マニュアル動作によってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36が第2ターゲットマーク54を検出可能な状態となった際に取り込んだ第2ターゲットマーク54の画像データ及びその状態におけるマニピュレータ23の動作位置データである。
【0076】
また、ワークパレット51に係る基準画像データ及び基準動作位置データは、マニュアル動作によってマニピュレータ23を駆動し、視覚センサ36が第3ターゲットマーク55を検出可能な状態となった際に取り込んだ第3ターゲットマーク55の画像データ及びその状態におけるマニピュレータ23の動作位置データである。
【0077】
以上説明したように、マニピュレータ23の初期設定時において、可搬型ロボット装置2を第1囲みフレークマーク6の内側の領域に配置し、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側の領域に配置した状態で、マニピュレータ23をマニュアルで動作し、第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55の画像データを取り込む。この各画像データを基準画像データとし、各基準画像データを取り込む時のマニピュレータ23の姿勢データを基準姿勢データとし、動作位置データを基準動作位置データとする。この基準姿勢データ及び基準動作位置データによってマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データが規定される。
【0078】
これらの各基準画像データと、実際に稼働する際に取り込んだ各画像データとを比較することによって、作業装置4と可搬型ロボット装置2、及び、可搬型ワークストッカ3と可搬型ロボット装置との相対的な位置ずれ量を算出し、この位置ずれ量から実際の画像データを取り込むときの動作位置データにオフセット(データ補正)をかけて、これを動作プログラムが参照する姿勢データ及び動作位置データとする。このことによって、可搬型ワークストッカ3及びワークパレット51に対してマニピュレータ23を駆動することが可能となる。
【0079】
また、可搬型ワークストッカ3は、ハウジング50とハウジング50の内部に配置されたワークパレット51とを有し、ワークパレット51のワーク載置面58には、所定の位置にワークWが載置され、第3ターゲットマーク55は、ワーク載置面58上の視覚センサ36が検出することが可能な位置に配置される。
【0080】
ワークパレット51は複数段に配置され、1段毎に第3ターゲットマーク55が配置される。ワークパレット51毎に配置される第3ターゲットマークの位置及び傾きは同じとは限らない。そこで、ワークパレット51毎に第3ターゲットマークを視覚センサ36で検出し画像データを取得して基準画像データと比較し、ワークパレット51毎に、ワークパレット51と可搬型ロボット装置2との相対的な位置ずれ量を算出してマニピュレータ23の動作位置データを補正する。このようにすることによって、複数段に配設されるワークパレット51の全てにおいて、ワークWのピックアップを確実に行うことが可能となる。
【0081】
マニピュレータ23は、複数段に配置されるワークパレット51を1段毎にハウジング50から水平方向に引き出したり、押し戻したりすることが可能である。そして、第3ターゲットマーク55は、ワークパレット51をハウジング50から引き出した状態で視覚センサ36が検出することが可能な位置に配置される。
【0082】
マニピュレータ23は、ハウジング50からワークパレット51を引き出してワークWをピックアップする。その際、視覚センサ36はワークWをピックアップする対象のワークパレット51に配置されている第3ターゲットマーク55を検出し、検出した画像データからワークパレット51の平面方向及び高さ方向の位置及び傾き状況を認識し、複数の段毎にマニピュレータ23の姿勢データ及び動作位置データを補正してからワークWをピックアップすることが可能となる。このような構成にすることによって、ワークトレイWに倣って傾くワークWを確実にピックアップすることが可能となる。
【0083】
また、可搬型ロボット装置2は、作業装置2の状況情報を認識する情報手段をさらに備え、制御手段であるコントローラ37は、状況情報に基づき作業装置4及び可搬型ワークストッカ3に対するマニピュレータ23の動作を制御する。情報手段としては、例えば、無線通信、有線通信などの通信手段を通じた情報交換手段、ネットワークを通じた情報交換手段、作業装置4が備える表示パネル12、ランプ、操作パネル11及びスイッチ類などを視覚センサ36で読み取り判断する画像認識手段などが含まれる。
【0084】
このように可搬型ロボット装置2が情報手段を備えることによって、作業装置4と可搬型ロボット装置2との間で、ワークWの給材状況、加工状況などの情報を交換し、マニピュレータ23によって、開閉扉13の開閉操作、作業装置4の起動操作及び停止操作を人手を介さずに行うことが可能となる。
【0085】
また、可搬型ロボット装置2は、下部に車輪20を有する可搬型台車21と、可搬型台車21に搭載されるマニピュレータ23と、マニピュレータ23に取り付けられる視覚センサ36と、マニピュレータ23及び視覚センサ36を制御する制御手段であるコントローラ37とを備えている。視覚センサ36が、第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55を検出して取り込んだターゲットマークに対応する各画像データと、各基準画像データとを比較し、可搬型ロボット装置2と、作業装置4及び可搬型ワークストッカ3との相対的な位置ずれ量を算出し、各位置ずれ量に基づき予め設定されている基準姿勢データ及び基準動作位置データを補正しマニピュレータ23を駆動する。
【0086】
可搬型ロボット装置2を、第1囲みフレームマーク6の内側の任意位置に配置し、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側の任意位置に配置した状態で、第1ターゲットマーク10、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55を視覚センサ36で検出し、取得した画像データと基準画像データとを比較し、作業装置4と可搬型ロボット装置2、可搬型ワークストッカ51及びワークパレット51と可搬型ロボット装置2との各相対的な位置ずれ量を算出する。そして、各相対的な位置ずれ量を補正してマニピュレータ23を制御する。このように構成することによって、可搬型ロボット装置2を第1囲みフレームマーク6の内側に移送し、可搬型ワークストッカ3が第2囲みフレームマーク7の内側に配置されていれば、既存の作業装置4を改造せずに、作業装置4又は可搬型ワークストッカ3との相対的な位置を厳密に規定しなくても、可搬型ストッカ3から作業装置4にワークWの給材すること及び作業装置4から可搬型ワークストッカ3に除材することが可能となる。
【0087】
また、可搬型台車21は、静止した位置において可搬型台車21の位置及び姿勢を固定するアウトリガー24を備え、アウトリガー24は、可搬型台車21から床面5に沿う複数方向の任意位置に転回可能なアウトリガーアーム40及びアウトリガーアーム40の先端部に螺合し、床面5に当接する又は床面5から離間する高さ位置に調整可能な高さに伸縮可能なアウトリガーポスト41を備えている。
【0088】
アウトリガー24を備えることによって、可搬型台車21を小型化しても稼働時の位置及び姿勢を安定して設置することが可能となる。アウトリガー24を閉じれば狭いスペースにおいても可搬型ロボット装置2を容易に移送することが可能となる。また、アウトリガー24は、平面方向の任意位置にアウトリガーアーム40を転回することができることから、可搬型ロボット装置2を設置する床面5に障害物があっても、その障害物を避けた位置に設置することが可能である。さらに、アウトリガーポスト41は、任高さに伸縮可能であることから、床面5が傾斜していても可搬型ロボット装置2を安定した姿勢で設置することが可能となる。
【0089】
また、可搬型ワークストッカ3は、下部に車輪52を有するハウジング50の内部にワークWが載置されるワークパレット51が複数段に配置されている。ワークパレット51は、1段毎にハウジング50から水平方向に引き出したり、押し戻したりすることが可能な構成である。ハウジング50には第2ターゲットマーク54が設けられ、ワークパレット51のワーク載置面58には第3ターゲットマーク55が設けられている。可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側に配置したときに、第2ターゲットマーク54及び第3ターゲットマーク55は、第1囲みフレームマーク6の内側に設置された可搬型ロボット装置2の視覚センサ36が検出することが可能な位置に配置される。
【0090】
このような構成にすることによって、可搬型ワークストッカ3を第2囲みフレームマーク7の内側の任意位置に設置すれば、ワークパレット51の位置及び傾斜を含む姿勢を検出することが可能となる。そのことによって、可搬型ロボット装置2は、ワークパレット51をハウジング50から引き出したり、押し戻したりすることが可能となり、人手を介さずにワークWの給材及び除材を所定数量に達するまで継続することが可能となる。以上のことから、可搬型ワークストッカ3を可搬型ロボット装置2に対して相対的な位置を厳密に規定しなくてもワークWのピックアップ及び除材を行うことが可能となる。なお、ワークパレット51を1段のみをワーク載置面とすることが可能である。また、ハウジング50の天板をワーク載置面とすることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…ワーク給除材システム、2…可搬型ロボット装置、3…可搬型ワークストッカ、4…作業装置、5…床面、6…第1囲みフレームマーク、10…第1ターゲットマーク、12…表示パネル、13…開閉扉、20,52…車輪、21…可搬型台車、23…マニピュレータ、24…アウトリガー、26…第1軸、27,29…アーム、28…第2軸、30…第3軸、31…手首、32…第4軸、33…第5軸、34…第6軸、35…把持部、36…視覚センサ、37…コントローラ(制御手段)、40…アウトリガーアーム、41…アウトリガーポスト、50…ハウジング、51…ワークパレット、54…第2ターゲットマーク、55…第3ターゲットマーク、57…加工ステージ、58…ワーク載置面、W…ワーク、θ…傾斜角度
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