(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】手毬寿司の成形器、及び手毬寿司の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20231101BHJP
【FI】
A23L7/10 G
(21)【出願番号】P 2020017389
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591030776
【氏名又は名称】株式会社丸善
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白神 雅夫
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002727(JP,A)
【文献】特開2009-040480(JP,A)
【文献】実開昭53-035991(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と上型との間に酢飯を挟んで手毬寿司を成形する成形器であり、成形器は、下型と、上型と、酢飯の計量カップとを有しており、上型及び下型の少なくともいずれか一方は、酢飯を投入する凹部を備えており、計量カップは、上型又は下型の凹部に供給される酢飯の量を計量し、上型又は下型の凹部に供給される酢飯がはみ出さないように、酢飯の形状を整えるものである手毬寿司の成形器。
【請求項2】
計量カップは、プラスチックフィルムで構成された請求項1の手毬寿司の成形器。
【請求項3】
上型又は下型は、プラスチックフィルムで構成された請求項1又は2に記載の手毬寿司の成形器。
【請求項4】
下型、上型、又は計量カップは、プラスチックフィルムで構成されており、
下型同士、上型同士、又は計量カップ同士を積み重ねることが可能な形状である請求項1ないし3のいずれかに記載の手毬寿司の成形器。
【請求項5】
下型又は上型と、計量カップとは、それぞれ位置決め部を備えており、
下型又は上型の位置決め部と、計量カップの位置決め部を接触させることにより、下型又は上型の凹部に対して、計量カップの凹部が対向するように案内される請求項1ないし4のいずれかに記載の手毬寿司の成形器。
【請求項6】
下型と上型とは、それぞれ位置決め部を備えており、
上型の位置決め部と、下型の位置決め部とを接触させることにより、下型の凹部と上型の凹部とが対向するように案内される請求項1ないし5のいずれかに記載の手毬寿司の成形器。
【請求項7】
上型又は下型は、寿司種に接触する面に貫通孔又は凹凸を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の手毬寿司の成形器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の手毬寿司の成形器を用いて手毬寿司を製造する方法であり、
計量カップを用いて、上型又は下型の凹部に供給する酢飯の量を計量すると共に、上型又は下型の凹部に供給する酢飯がはみ出さないように、酢飯の形状を予め整えて、下型又は上型の凹部に形状を整えた酢飯を供給し、下型及び上型で酢飯を挟むことで手毬寿司を成形する手毬寿司の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手毬寿司の成形器と手毬寿司の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手毬寿司は、酢飯と、酢飯の上に寿司種を乗せて、酢飯と寿司種とを球形に成形したものである。手毬寿司は、食品用ラップフィルム又は濡布巾に寿司種を乗せて、さらに寿司種の上に酢飯を乗せて、食品用ラップフィルム又は布巾の端部をひとまとめにしてひねって、酢飯と寿司種とを球形に成形する。
【0003】
特許文献1のように、厚みの薄い合成樹脂材で構成した手毬寿司の成形容器も提案されている。特許文献1の手毬寿司の成形容器は、半球形の凹部を有する上型と、半球形の凹部を有する下型との間に、寿司種と酢飯とを挟んで、球形に成形するものである。上型と下型とは、蝶番の部分で連結されており、下型に対して上型が接近又は離れるように回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような成形容器を使用して、手毬寿司を成形する場合は、型に投入する酢飯の量によって、仕上がりが変わる。酢飯の量が不足した場合は、球形に成形することができなかったり、型から外した後に酢飯が解れて形が崩れてしまう。酢飯の量が多い場合には、寿司種や酢飯が圧力で潰れて、手毬寿司の外観、食感、及び食味が損なわれてしまう。手毬寿司は、おにぎりとは異なり、球形である。上型と下型とが接触する部分は、湾曲しているため、酢飯に圧力が作用しやすく、酢飯の投入量が多いと、酢飯が潰れやすい。
【0006】
秤を使って酢飯を計量し、予め定めた量の酢飯を型に投入する方法も考えられる。しかしながら、複数個の手毬寿司を成形する場合は、秤での計量は煩雑である。また、計量した酢飯を型に投入する際に型の凹部から酢飯がはみ出しやすい。酢飯が凹部からはみ出した状態で、上型と下型とを合わせると、上型と下型との間に酢飯が挟まれて、酢飯が潰れて、手毬寿司の外観、食感、及び食味が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、寿司を成形する際に、型の凹部から酢飯がはみ出しにくく、予め定められた量の酢飯を凹部に投入しやすい手毬寿司の成形器、及び手毬寿司の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
下型と上型との間に酢飯を挟んで手毬寿司を成形する成形器であり、成形器は、下型と、上型と、酢飯の計量カップとを有しており、上型及び下型の少なくともいずれか一方は、酢飯を投入する凹部を備えており、計量カップは、上型又は下型の凹部に供給される酢飯の量を計量し、上型又は下型の凹部に供給される酢飯がはみ出さないように、酢飯の形状を整えるものである手毬寿司の成形器により、上記の課題を解決する。
【0009】
上記の手毬寿司の成形器を用いて手毬寿司を製造する方法であり、計量カップを用いて、上型又は下型の凹部に供給する酢飯の量を計量すると共に、上型又は下型の凹部に供給する酢飯がはみ出さないように、酢飯の形状を予め整えて、下型又は上型の凹部に形状を整えた酢飯を供給し、下型及び上型で酢飯を挟むことで手毬寿司を成形する手毬寿司の製造方法により、上記の課題を解決する。
【0010】
上記の成形容器又は上記の製造方法では、計量カップを用いて酢飯の量を計量するため、予め定められた量の酢飯を型の凹部に投入することができる。また、酢飯は上型及び上型で挟んで成形する前に、計量カップによって、予め所定の形状となるように形が整えられているため、上型と下型とを合わせた際に、下型又は上型の凹部から酢飯がはみ出しにくく、酢飯を押し潰しにくい。
【0011】
上記の手毬寿司の成形器において、計量カップは、プラスチックフィルムで構成されたものとすることが好ましい。これにより、計量カップを変形させて、計量カップに投入された酢飯を、上型又は下型の凹部に投入しやすくすることができる。
【0012】
上記の手毬寿司の成形器において、上型又は下型は、プラスチックフィルムで構成されたものとすることが好ましい。これにより、上型又は下型を変形させて、上型又は下型で成形した手毬寿司を型から押し出しやすくすることができる。
【0013】
上記の手毬寿司の成形器において、下型、上型、又は計量カップは、プラスチックフィルムで構成されており、下型同士、上型同士、又は計量カップ同士を積み重ねることが可能な形状とすることが好ましい。
【0014】
上記の手毬寿司の成形器において、下型又は上型と、計量カップとは、それぞれ位置決め部を備えており、下型又は上型の位置決め部と、計量カップの位置決め部を接触させることにより、下型又は上型の凹部に対して、計量カップの凹部が対向するように案内されるようにすることが好ましい。これにより、計量カップに投入した酢飯を型の凹部に投入する作業が容易になる。
【0015】
上記の手毬寿司の成形器において、下型と上型とは、それぞれ位置決め部を備えており、上型の位置決め部と、下型の位置決め部とを接触させることにより、下型の凹部と上型の凹部とが対向するように案内されるようにすることが好ましい。これにより、下型と上型とを合わせる作業が容易になる。
【0016】
上記の手毬寿司の成形器において、上型又は下型は、寿司種に接触する面に貫通孔又は凹凸を有するものとすることが好ましい。これにより、寿司種が上型又は下型に密着して、寿司種と酢飯とが分離することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、寿司を成形する際に、型の凹部から酢飯がはみ出しにくく、予め定められた量の酢飯を凹部に投入しやすい手毬寿司の成形器、及び手毬寿司の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の手毬寿司の成形器を構成する下型の一実施形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の手毬寿司の成形器を構成する上型の一実施形態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の手毬寿司の成形器を構成する計量カップの一実施形態を示す斜視図である。
【
図10】凹部に酢飯を投入した計量カップを上型と合わせる様子を示す斜視図である。
【
図11】凹部に酢飯を投入した計量カップを上型と合わせた状態を示す斜視図である。
【
図12】計量カップを外して、上型に対して下型を合わせた状態を示す斜視図である。
【
図13】上型が上になり、下型が下になるように、型の位置を逆転させた状態を示す斜視図である。
【
図14】上記の下型、上型、及び計量カップの使用方法を示す写真である。
【
図16】
図15の下型を使用して手毬寿司を作る様子を示す斜視図である。
【
図17】
図15の下型を使用して成形された手毬寿司を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、説明する。以下に示す各実施形態は、本発明のいくつかの例にすぎない。本発明の技術的範囲は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1ないし
図9に下型、上型、及び計量カップの一実施形態を示す。
図10ないし
図14に、下型、上型、及び計量カップの使用方法を示す。
図15ないし
図17に他の実施形態に係る下型、上型、及び計量カップと、それによって製造される手毬寿司を示す。
図18ないし
図20に他の実施形態に係る下型、上型、及び計量カップを示す。
【0020】
以下に示す各実施形態では、寿司種に接する側になる型を上型とし、その反対側の酢飯に接する側になる型を下型とする。
【0021】
本実施形態の手毬寿司の成形器(以下、単に成形器という。)は、
図1ないし
図3に示す下型1と、
図4ないし
図6に示す上型3と、
図7ないし
図9に示す計量カップ2とを有する。
【0022】
下型1、上型3、及び計量カップ2は、
図1ないし
図9に示したように、厚みが小さく、手指で加圧すると変形し、下型の内部に投入された酢飯を加圧し、酢飯を押し出したり、成形したりすることができる程度の厚みのプラスチックフィルムで構成されている。本実施形態の場合、プラスチックフィルムとして、厚み0.3mmから1.5mmのポリプロピレンフィルムの表面をシリコーン系の剥離剤で処理した高剥離性のものを使用している。プラスチックフィルムを構成する素材は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどのポリオレフィン系の熱可塑性樹脂等を使用することができる。プラスチックフィルムの厚みは、上記の例に限定されない。
【0023】
下型1は、
図1ないし
図3に示されているように、上方からの視点において円弧状に角取りがされた長方形状の基部11と、基部11の上に設けられ、上方からの視点において円弧状に角取りがされた長方形状の凸部12とを有する。凸部12は、上方からの視点において、基部11に比して、長手方向及び短手方向の径が小さい形状である。凸部12と基部11との間には、段部131が形成される形状となっている。凸部12の上面には、底面側に向かって窪む2つの半球形の凹部14が形成された形状となっている。基部11には、長手方向の中ほどに上型3と下型1との位置を合わせるための一対の第2凸部15が設けられる。一対の第2凸部15は、上述の段部131から上方に突出し、その先端が凸部12の上面よりも高い位置となる形状とされている。下型1においては、基部13は、段部131を構成する横板132と、周壁111とを有する。凸部12は、凹部14が設けられる面を構成する天板121と、段部1311を構成する周壁122とを有する。周壁111、段部1311、周壁122等によって、下型は、不用意に変形しないように補強されている。
【0024】
上型3は、
図4ないし
図6に示されているように、上方からの視点において、円弧状に角取りがされた長方形状の基部31と、基部31の上面の縁部分に設けられる突条32と、長手方向の中ほどに設けられており、下型1の一対の第2凸部15を受け入れ可能な形状を有しており、上型の底面側に窪んだ第2凹部35とを有する形状である。基部31は、突条32から下方に延びる周壁312を有する。上型3は、周壁312、突条32等によって、不用意に変形しないように補強されている。基部31の上面には、2つの半球状の凹部34が形成された形状となっている。突条32と天板311により、上型3には窪み33が設けられた形状となっている。上型3において、凹部14が寿司種に接触する部分には、寿司種が凹部14に密着することを防止する手段として、貫通孔341が設けられている。貫通孔341の直径は、型の変形を防ぎ、寿司種の密着を防止するために、0.5~4mmとすることが好ましい。貫通孔341により、下型1と上型3との間に酢飯と寿司種を挟んで球形に成形する際に、上型3に対して寿司種が密着し、酢飯と寿司種とが分離してしまうことを防止することができる。寿司種が凹部14に密着することを防止する手段としては、複数の貫通孔を凹部に設けてもよいし、凹凸を凹部に設けてもよい。凹凸を手毬の形状又は模様を模したパターンとすれば、成形された手毬寿司にその形状又は模様を転写することができる。
【0025】
図12に示したように、下型1の凹部14と、上型3の凹部34とが対向するようにして、下型1と上型3とを合わせると、上型3の窪み33に対して、下型1の凸部12が嵌る。また、下型1の第2凹部35に対して、上型3の第2凸部15が嵌る。これにより、下型1において酢飯を収容する凹部14の縁部と、上型3において酢飯を収容する凹部34の縁部とで、球形の空間を形成するように、下型1と上型3とが案内される。下型1と上型3とをこのように合わせることにより、下型1と上型3は、球形の空間によって酢飯と寿司種を球形に成形する。
【0026】
図12に示したように、上型3と下型1と合わせた状態において、第2凸部15の先端と第2凹部35との間には、指を入れることができるポケット351が形成される。このポケット351に手指を入れて第2凸部15の先端部又は第2凹部35に指を掛けて、上型3と下型1とを分離させることができる。
【0027】
計量カップ2は、
図7ないし
図9に示されているように、上方からの視点において円弧状に角取りがされた長方形状の基部21と、基部21の上面を構成する天板211に設けられる2つの凹部24とを有する形状である。計量カップ2の凹部24は、円錐台形状であり、円錐台の上端部が面取りされた形状である。基部21は、突条32により形成された上型3の窪み33に対して内嵌めできる形状とされており、
図10及び
図11に示したように、上型3の凹部34と計量カップ2の凹部24とを対向させて上型3と計量カップ2とを合わせると、上型3の凹部34の縁部と、計量カップ2の縁部とが連続し、上型3の凹部34と計量カップ2の凹部24とが連結された空間を形成するように、上型3と計量カップ2とが案内される。
【0028】
計量カップの基部21には、下方に延びる周壁22が設けられている。周壁22によって、計量カップ2の基部21の上面部分が不用意に変形しないように補強されている。周壁22の外面は、上型3と計量カップ2とを合わせた際に、上型3の突条32の内面に対して接面する。これによって、計量カップ2を、上型3に合わせた際に、計量カップ2の位置が安定する。計量カップ2から酢飯を供給する際に、計量カップ2の位置が安定すると、酢飯を上型3の凹部34に供給する作業が行いやすくなるので好ましい。
【0029】
図11に示したように、上型3と計量カップ2と合わせた状態において、計量カップ2の基部21と第2凹部35との間には、指を入れることができるポケット35が形成される。このポケット35に手指を入れて、計量カップ2の基部21又は第2凹部35に手指を掛けることにより、上型3と計量カップ2とを分離させることができる。
【0030】
図14の4番の写真に示したように、上型3と下型1との間に酢飯と寿司ネタを挟んで成形する前に、酢飯は所定の量となるように計量され、計量カップ2の凹部24の内形状に沿って予め成形される。計量と成形は、単に計量カップ2の凹部24に酢飯を投入して、凹部24に酢飯を充填するように酢飯を押さえればよい。
図14の4番の例では、計量カップ2の凹部24から上型3の凹部34に押し出された酢飯は、その下端部が上型3の凹部34に収まっている。酢飯の上端部は、下端部に比して、径が小さい形状となっている。このため、酢飯の上端部に下型1の凹部14を被せる際に、下型1の凹部14の中に酢飯が収まりやすい形状に予め成形されている。
【0031】
本実施形態の成形器では、計量カップ2の凹部24の開口縁の形状及び内径と、上型3の凹部34の開口縁の形状及び内径とは、同一である。
図11及び
図14の3番のように、上型3と計量カップ2とを合わせることにより、上型3の凹部34に対して計量カップ2の中の酢飯を投入した際に、上型3の凹部34から酢飯がはみ出しにくくなっている。計量カップの凹部の形状又は内径を、上型又は下型の凹部の内径と同一の形状又は内径とするだけでなく、計量カップの凹部の内径を、上型又は下型の凹部の内径以下の大きさとなる形状とすることによっても、上型3の凹部34から酢飯がはみ出しにくくすることもできる。また、計量カップの凹部の内径(直径)は、上型又は下型の凹部の内径(直径)よりも多少大きくてもよい。例えば、計量カップの凹部の内径(直径)が、上型又は下型の凹部の内径(直径)に比して、4.0mm大きくても、上型3の凹部34から酢飯がはみ出しにくくすることができる。計量カップの凹部の大きさは特に限定されないが、例えば、計量カップの凹部の内径(直径)の値から、上型又は下型の凹部の内径(直径)の値を差し引いた値が4.0mm以下となるようにすることが好ましい。ただし、計量カップの凹部の内径の大きさは、0mmより当然に大きいものとする。
【0032】
次に、上記の実施形態の成形器を使用して、手毬寿司を製造する方法について、
図10ないし
図14を参照して説明する。本実施形態の製造方法では、
図10に示したように、寿司種に接する側となる上型3を、作業台などの上に置き、上型3の凹部34が上を向くようにする。この状態で、上型3の凹部34に寿司種を投入する。寿司種は、魚介類の切り身、錦糸卵、いくら、キュウリ、納豆などを適宜使用する。
【0033】
上型3の凹部34に対して、酢飯を投入した計量カップ2の凹部24が対向するにようにして、
図11に示したように、上型3と計量カップ2とを合わせる。計量カップ2を上型3から分離して、上型3の凹部34に酢飯が供給された状態とする。計量カップ2の凹部24に酢飯が残る場合は、計量カップ2を構成するプラスチックフィルムを押して酢飯に外圧をかけて押し出す。酢飯は、計量カップ2により所定の量となるように計量され、かつ上型3の凹部34及び下型1の凹部14に収まりやすい形状に計量カップ2によって成形されている。
【0034】
図12に示したように、上型3の凹部34に供給された酢飯に対向するように下型1の凹部14を接近させて、上型3と下型1との間に酢飯と寿司種とを挟む。下型1と上型3との間に酢飯と寿司種とを挟んだ状態で、上型3又は下型1を構成するプラスチックフィルムを手指等で押して酢飯に外圧をかけて、酢飯を球状に成形する。上述の通り、上型3の凹部34には、予め寿司種が投入されており、寿司種の上に計量カップで成形された酢飯が供給されている。この手順では、寿司種の上に酢飯が積層されるので、上型3と下型1とで酢飯と寿司種を挟んで球状に成形する場合に、寿司種の位置がずれにくくなる効果がある。この目的で、上型と下型の位置を逆転させた状態で製造を開始している。
【0035】
図13に示したように、下型1の位置と上型3の位置とを上下反転させて、下型1から上型3を離反させて、型から成形された手毬寿司を取り出す。型から手毬寿司を取り出しにくい場合は、下型1を構成するプラスチックフィルム又は上型3を構成するプラスチックフィルムに外圧をかけて、手毬寿司を押し出すようにしてもよい。
【0036】
上記の方法によれば、型に供給される酢飯は、計量カップ2で予備的に成形されている。このため、上型3又は下型1の凹部14、34に酢飯を供給し、上型3と下型1との間に酢飯を挟んで成形する際に、凹部14、34の外に酢飯がはみ出しにくい。このため、酢飯を潰しにくく、きれいに手毬寿司を成形することができる。
【0037】
例えば、上型3又は下型1の凹部14、34に酢飯を板状にして供給し、板状の酢飯を球状に成形する場合、板状の酢飯の端部においては型が球状に湾曲しているため、板の端部においては飯粒の圧縮率が高くなる。このため、手毬寿司の縁部分においては飯粒の潰れが発生し、食味や見栄えが悪くなることがある。上記の方法によれば、型に供給する前に酢飯を予め整形しているため、そのような問題の発生を防ぐことができる。
【0038】
上記の方法で使用する上型、下型、及び計量カップは、いずれもプラスチックフィルムで構成されているため、型に酢飯を押し出したり、球状に成形する際に、プラスチックフィルム越しに酢飯に外圧を加えて、押し出したり、成形の加減を調節することができる。
【0039】
次に、成形器の他の実施形態について、説明する。上記の実施形態に係る成形器では、上型3及び下型1のいずれにも、半球状の凹部が設けられる。凹部は、上型及び下型のうちいずれか一方に設ければよい。
【0040】
図15に示す下型3bは、半球状の凹部を備えておらず、基部31bは平坦な面として構成されている点以外は、
図4ないし
図6に示した上型3と同様の構成を有する。下型3bにおいて、
図4ないし
図6に示した上型3と同様の構成には、
図4ないし
図6で使用した符号と同様の符号を付す。この下型3bは、次のようにして使用する。下型3bの窪み33bに対して、
図7ないし
図9に示した、酢飯を投入した計量カップ2を合わせて、
図15に示したように平坦面から構成される基部31bに、計量カップ2で計量し、所定の形状に成形した酢飯を乗せる。次いで、酢飯81の上に、寿司種82を乗せる。
【0041】
図16に示したように、酢飯81と寿司種82とを乗せた下型3bに対して上型1bを合わせて、下型3bと上型1bとで酢飯と酢飯とを挟んで、手毬寿司を成形する。このようにして、
図17に示したように、底部に平坦部を有する手毬寿司を製造する。なお、上型1bは、貫通孔341bを設けた点以外は、上述の下型1と同様の構成を有する。
【0042】
図16に示した例では、酢飯は、計量カップ2により、所定の量に計量され、かつ上型1bの凹部14bに収まりやすい形状に予め整形されている。このため、上型1bと下型3bとの間に酢飯と寿司種とを挟んで成形する際に、凹部14bから酢飯がはみ出しにくく、手毬寿司をきれいに成形することが可能になっている。
【0043】
図18ないし
図20に成形器の他の実施形態を示す。本実施形態の成形器は、ハート形の凹部14cを備える下型1cと、ハート形の凹部24cを備える計量カップ2cと、ハート形の凹部34cを備える上型3cとで構成される。この成形器によれば、ハート形の手毬寿司を製造することができる。なお、下型1cと、上型3cと、計量カップ2cの構成は、凹部を除けば、上記の下型1、上型3、及び計量カップ2と同様である。
【0044】
このように、上型又は下型の凹部は、球状の手毬寿司を成形するものに限られず、ハート形やその他の立体形状の手毬寿司を製造することができるものにすることができる。
【0045】
上述の上型、下型、及び計量カップは、いずれも厚みの小さいプラスチックフィルムから構成される。上型、下型、及び計量カップは、破損等に備えて複数枚を用意しておくことが好ましい。この場合、上型同士、下型同士、計量カップ同士は、互いに同じ形状にすることが好ましい。そのようにすれば、複数の上型のグループと、複数の下型グループと、複数の計量カップのグループとに分けて、それぞれをグループ積み重ねて保管したり、運搬したりすることができる。
【0046】
なお、
図1ないし
図13に示した成形器では、上記の凸部12及び窪み33の組み合わせ、又は第2凸部15及び第2凹部35の組み合わせが、上型3と下型1の位置決め部を構成する。位置決め部は、凸部12及び窪み33、及び第2凸部15及び第2凹部15のうち一方のみから構成してもよいし、省略してもよい。
【0047】
なお、
図1ないし
図13に示した成形器では、下型1が凸部12と第2凸部15を有しており、上型3が窪み33を形成する突条32と第2凹部35とを有する。この構成の位置関係を変更して、下型が窪み33を形成する突条32と第2凹部35とを有し、上型が凸部12と第2凸部15とを有するように構成してもよい。
【0048】
図1ないし
図13に示した成形器では、上型3が窪み33を形成する突条32と第2凹部35とを有しており、計量カップ2の基部21が窪み33に嵌合する形状とされている。この構成では、計量カップ2の基部21と、上型3の窪み33とが、計量カップ2の位置決め部を構成する。この位置決め部は、省略してもよい。
【0049】
図1ないし
図13に示した成形器では、下型の基部、上型の基部、計量カップの基部は、円弧状に角取りがされた長方形状である。下型の基部、上型の基部、又は計量カップの基部、それぞれの形状は、長方形状に限定されない。前記形状は、例えば、角取りがされた正方形、円形、又は楕円形などにすることができる。
【0050】
図1ないし
図13に示した成形器では、手毬寿司を成形するための凹部の数が2個である。凹部の数は、特に限定されない。例えば、凹部の数は1個でもよいし、複数個でもよい。複数の凹部を複数列、複数行にわたって配置して、一度の成形作業で、複数個の手毬寿司を製造できるようにしてもよい。
【0051】
酢飯の構成は、特に限定されず、典型的には、食酢、砂糖、又は塩を含有する米飯が挙げられるが、食酢、砂糖、及び塩を含有しないいわゆる米飯、又は食酢、砂糖、及び塩のうち少なくとも1種を含有するものなども含まれるものとする。
【符号の説明】
【0052】
1 下型
2 計量カップ
3 上型
14 下型の凹部
24 計量カップの凹部
34 上型の凹部
341 貫通孔
3b 下型
1b 上型
1c 下型
3c 上型
2c 計量カップ