(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】流体制御機器の選定システム、流体制御機器の選定方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
F16K37/00 D
(21)【出願番号】P 2020032886
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 航大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/013468(WO,A1)
【文献】特開2010-048265(JP,A)
【文献】特開2020-009342(JP,A)
【文献】特表2015-527553(JP,A)
【文献】特表2019-503444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも流体制御の制御態様を設定可能な調査用流体制御機器の動作情報に基づいて、流体制御機器を選定するシステムであって、
前記調査用流体制御機器が備える動作情報取得機構によって取得された前記動作情報を収集する動作情報収集装置と、
被選定候補となる前記流体制御機器の識別情報と、当該流体制御機器の仕様値と、を互いに対応付ける機器テーブルと、
前記機器テーブルを参照し、前記調査用流体制御機器の前記制御態様、および当該制御態様が設定されているときに収集される前記動作情報の内容に応じて、前記流体制御機器を選定する決定処理部と、
を備える、
流体制御機器の選定システム。
【請求項2】
前記機器テーブルは、前記調査用流体制御機器の識別情報と、当該調査用流体制御機器に対して互換性のある前記流体制御機器の識別情報と、が互いに対応付けられて記憶されていて、前記決定処理部は、前記動作情報が収集される前記調査用流体制御機器の識別情報を参照して、前記互換性のある流体制御機器の中から前記流体制御機器を選定する、
請求項1記載の流体制御機器の選定システム。
【請求項3】
前記決定処理部は、前記動作情報の収集が不足している場合に、当該不足している動作情報を補完するために必要な作業をユーザに通知する、
請求項1又は2記載の流体制御機器の選定システム。
【請求項4】
前記流体制御機器が、前記動作情報収集装置を備える、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の、流体制御機器の選定システム。
【請求項5】
前記流体制御機器と前記動作情報収集装置とが通信可能に構成されている、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の、流体制御機器の選定システム。
【請求項6】
少なくとも流体制御の制御態様を設定可能な調査用流体制御機器の動作情報に基づいて、流体制御機器を選定する方法であって、
前記調査用流体制御機器が備える動作情報取得機構によって取得された前記動作情報を収集するステップと、
被選定候補となる前記流体制御機器の識別情報と、当該流体制御機器の仕様値と、を互いに対応付ける機器テーブルを参照し、前記調査用流体制御機器の前記制御態様、および当該制御態様が設定されているときに収集される前記動作情報の内容に応じて、前記流体制御機器を選定するステップと、
を含む、
流体制御機器の選定方法。
【請求項7】
少なくとも流体制御の制御態様を設定可能な調査用流体制御機器の動作情報に基づいて、流体制御機器を選定するコンピュータプログラムであって、
前記調査用流体制御機器が備える動作情報取得機構によって取得された前記動作情報を収集する命令と、
被選定候補となる前記流体制御機器の識別情報と、当該流体制御機器の仕様値と、を互いに対応付ける機器テーブルを参照し、前記調査用流体制御機器の前記制御態様、および当該制御態様が設定されているときに収集される前記動作情報の内容に応じて、前記流体制御機器を選定する命令と、
をコンピュータに実行させる、
流体制御機器の選定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御機器の選定システム、流体制御機器の選定方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
薄膜の微細化に伴い流体制御機器の高精度化が求められている。形成する薄膜の種類や、同時に使用する周辺機器の種類および個体差に対応するため、多種多様な仕様の流体制御機器が製造されている。これに伴い、薄膜の形成システムにおいて、流体制御機器の適切な選定が必要とされている。
【0003】
この点、特許文献1では、流体制御機器に取り付けたセンサによって動作情報を取得し、当該動作情報に基づいて流体制御機器の動作を分析するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、流体制御機器から動作情報を取得することはできるが、動作情報の活用方法に関しては示されていない。
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成で流体制御機器の適切な選定を行うことを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る流体制御機器の選定システムは、少なくとも流体制御の制御態様を設定可能な調査用流体制御機器の動作情報に基づいて、流体制御機器を選定するシステムであって、前記調査用流体制御機器が備える動作情報取得機構によって取得された前記動作情報を収集する動作情報収集装置と、被選定候補となる前記流体制御機器の識別情報と、当該流体制御機器の仕様値と、を互いに対応付ける機器テーブルと、前記機器テーブルを参照し、前記調査用流体制御機器の前記制御態様、および当該制御態様が設定されているときに収集される前記動作情報の内容に応じて、前記流体制御機器を選定する決定処理部と、を備える。
【0008】
前記機器テーブルは、前記調査用流体制御機器の識別情報と、当該調査用流体制御機器に対して互換性のある前記流体制御機器の識別情報と、が互いに対応付けられて記憶されていて、前記決定処理部は、前記動作情報が収集される前記調査用流体制御機器の識別情報を参照して、前記互換性のある流体制御機器の中から前記流体制御機器を選定するものとしてもよい。
【0009】
前記決定処理部は、前記動作情報の収集が不足している場合に、当該不足している動作情報を補完するために必要な作業をユーザに通知するものとしてもよい。
【0010】
前記流体制御機器が、前記動作情報収集装置を備えるものとしてもよい。
【0011】
前記流体制御機器と前記動作情報収集装置とが通信可能に構成されているものとしてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る流体制御機器の選定方法は、少なくとも流体制御の制御態様を設定可能な調査用流体制御機器の動作情報に基づいて、流体制御機器を選定する方法であって、前記調査用流体制御機器が備える動作情報取得機構によって取得された前記動作情報を収集するステップと、被選定候補となる前記流体制御機器の識別情報と、当該流体制御機器の仕様値と、を互いに対応付ける機器テーブルを参照し、前記調査用流体制御機器の前記制御態様、および当該制御態様が設定されているときに収集される前記動作情報の内容に応じて、前記流体制御機器を選定するステップと、を含む。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る流体制御機器の選定プログラムは、少なくとも流体制御の制御態様を設定可能な調査用流体制御機器の動作情報に基づいて、流体制御機器を選定するコンピュータプログラムであって、前記調査用流体制御機器が備える動作情報取得機構によって取得された前記動作情報を収集する命令と、被選定候補となる前記流体制御機器の識別情報と、当該流体制御機器の仕様値と、を互いに対応付ける機器テーブルを参照し、前記調査用流体制御機器の前記制御態様、および当該制御態様が設定されているときに収集される前記動作情報の内容に応じて、前記流体制御機器を選定する命令と、をコンピュータに実行させる。
【0014】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、コンピュータ読み取り可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成で流体制御機器の適切な選定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムにおいて、動作情報を収集する流体制御機器を示した(a)外観斜視図、(b)平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムにおいて、動作情報を収集する流体制御機器の内部構造を示したA-A断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムにおいて、動作情報を収集する流体制御機器の内部構造を示したB-B断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムにおいて、動作情報を収集する流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムにおいて、動作情報を収集する流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムにおいて、動作情報を収集する流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムの構成を示した機能ブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムが有する、本導入可能な流体制御機器の識別情報と、流体制御機器の仕様とが対応付けられる機器テーブルの1例である。
【
図9】本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システムが機器を選定する処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図10】本発明の実施形態に流体制御機器の選定システムの構成の他の例を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る流体制御機器の選定システム100(以下、「本システム100」ともいう。)について、図を参照して説明する。本システムは、ガスユニットに導入する流体制御機器を適切に選定するためのシステムである。本システムでは、流体制御の制御態様を設定可能な調査用の流体制御機器(以下、「調査用機器」ともいう。)をガスユニットに仮導入させ、調査用機器の動作情報に基づいて、本導入する流体制御機器を選定する。
【0018】
まず、動作情報の収集が可能な調査用機器の一例について図を参照して説明する。
なお、調査用機器に関する以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
【0019】
●流体制御機器V
図1に示される流体制御機器Vは、エア作動式のダイレクトダイヤフラムバルブであり、他の流体制御機器や流量制御装置等とガスユニットを構成して、プロセス流体を制御し、被処理体を処理する。この流体制御機器Vは、
図1~
図3に示されるように、バルブボディ1、ボンネット部2、カバー部3、アクチュエータ部4を備える。
【0020】
バルブボディ1は
図2及び
図3に示されるように、流路が形成された基台部11と、基台部11上に設けられた略円筒形状の円筒部12とからなる。
基台部11は平面視矩形状からなり、複数の流体制御機器Vによってガスユニットを構成する場合には、基板あるいはマニホールドブロック上に設置される部分となる。
【0021】
円筒部12は
図4に示されるように、ボンネット部2が配設される側の端面が開口した中空形状からなり、中空の内部はボンネット部2が収容される凹部12aを構成する。
この円筒部12には、軸心方向に長さを有し、ボンネット部2が配設される側であって基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。このスリット12bを介して、ボンネットウォール25から延び出したフレキシブルケーブル26が内側から外側へ導出される。
【0022】
凹部12aの下方及び基台部11内には、流体が流入する流入路111と流体が流出する流出路113、及び当該流入路111と流出路113に連通する弁室112が形成されている。流入路111、流出路113、及び弁室112は、流体が流通する流路を一体的に構成している。
【0023】
環状のシート21は、弁室112における流入路111の開口部周縁に設けられている。シート21にダイヤフラム22を当接離反させることによって流入路111から流出路113へ流体を流通させたり、流通を遮断させたりすることができる。
【0024】
ダイヤフラム22は、ステンレス、Ni-Co系合金等の金属からなると共に、中心部が凸状に膨出した球殻状の部材であり、流路とアクチュエータ部4が動作する空間とを隔離している。このダイヤフラム22は、ダイヤフラム押え23により押圧されていない状態では、
図2(b)及び
図3(b)に示されるように、シート21から離反しており、流入路111と流出路113とが連通した状態となる。一方、ダイヤフラム押え23により押圧された状態では、
図2(a)及び
図3(a)に示されるように、ダイヤフラム22の中央部が変形してシート21に当接しており、流入路111と流出路113が遮断された状態となる。
【0025】
ダイヤフラム押え23は、ダイヤフラム22の上側に設けられ、ピストン43の上下動に連動してダイヤフラム22の中央部を押圧する。
このダイヤフラム押え23は、
図5に示されるように、略円柱状の基体部231と、ダイヤフラム22に当接する側の一端側において拡径した拡径部232からなる。
【0026】
基体部231には、軸心方向に長さを有し、拡径部232とは反対側の一端が開口した有底の条溝231aが形成されている。この条溝231aには、ボンネットウォール25のネジ孔25cにねじ込まれたネジ25dの軸棒部分が摺動可能に嵌合する。条溝231aとネジ25dは、ダイヤフラム押え23の周方向の回動を規制する回動規制手段を構成し、これによりダイヤフラム押え23は、ピストン43に連動して上下動しつつも、周方向の回動を規制される。
【0027】
また、基体部231には、磁石M1が取り付けられている。この磁石M1は、本実施例では、基体部231の条溝231aの反対側に取り付けられているが、位置センサM2が磁石M1の磁力を検出するのに支障がなく、また、流体制御機器Vの動作に支障がない限り、基体部231上の他の位置に取り付けることもできる。
【0028】
ボンネット24は、略円筒状からなり、バルブボディ1の凹部12a内に収容される。
ダイヤフラム22の周縁はボンネット24の下端部とバルブボディ1との間に挟持されており、この部分でダイヤフラム22とバルブボディ1との間のシールが形成される。
ボンネット24の内部には、ダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔241aが中心部に形成された略円盤状の仕切部241が設けられている。
仕切部241の上方ないしは、アクチュエータ部4が配設される側に形成される凹部24aには、ボンネットウォール25が収容される。仕切部241とボンネットウォール25にはそれぞれ、互いに対応する位置にネジ穴241bと貫通孔25eが設けられており、ボンネット24にボンネットウォール25がボルト25fによって螺設される。
【0029】
ボンネット24の仕切部241は、一定の厚みを有しており、仕切部241に形成されている貫挿孔241aの内周面とダイヤフラム押え23の間にはOリングO1が介装されている。これにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定される閉空間S2の気密性が確保されている。
また、ボンネット24の仕切部241には、ボンネットウォール25に取り付けられている圧力センサPに連通する連通孔241dが設けられている。連通孔241dを介して圧力センサPが設けられていることにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を測定することができる。
【0030】
また、ボンネット24の側面には、内側に収容したボンネットウォール25から導出されたフレキシブルケーブル26を外側へ導出させるための貫通孔241cが設けられている。
【0031】
ボンネットウォール25は、ボンネット24内に配設される部材である。このボンネットウォール25は肉厚の略円盤状の部材を平面視略C字状に刳り貫いた形状からなる。このボンネットウォール25の中心には、ダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させる貫挿孔25aが設けられている。また、貫挿孔25aをボンネットウォール25の半径方向外側に向かって開口させる開口部25bが設けられている。
【0032】
ボンネットウォール25の厚み部分の所定の箇所には、貫挿孔25aから半径方向外側に向かってねじ切られたネジ孔25cが形成されている。このネジ孔25cには外側からネジ25dが螺合し、螺合したネジ25dの軸心部分は、貫挿孔25a側へ抜け出して、貫挿孔25aに貫挿されたダイヤフラム押え23の条溝231aに摺動可能に嵌合する。
【0033】
ボンネットウォール25には、ボンネット24のネジ穴241bに対応する位置に貫通孔25eが設けられている。ネジ穴241bと貫通孔25eには、ボンネット24の仕切部241上にボンネットウォール25が配設された状態でボルト25fが螺合し、これによりボンネット24にボンネットウォール25が固定される。
【0034】
ボンネットウォール25の外周面のうち、開口部25b近傍には、開口部25bを塞ぐように掛け渡して固定された平板状の位置センサM2が取り付けられている。この位置センサM2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1との間の距離変化をセンシングする磁気センサであり、センシングにより、流体制御機器Vの開閉状態のみならず、開度を計測することができる。なお、ボンネットウォール25に取り付けられた位置センサM2は、流体制御機器Vの開閉操作に伴うピストン43やダイヤフラム押え23の上下動にかかわらず、所定の位置に固定されている。
【0035】
カバー部3は
図6に示されるように、アクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧して一体的に保持すると共に、回路基板27及び回路基板27に設けられたコネクタ28を流体制御機器Vに固定する固定手段を構成する。
このカバー部3は、カバー31と平板状のプレート32、33を備える。
【0036】
カバー31は、略U字状からなり、その内側にはアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部が嵌め込まれる。
カバー31の両側面には、アクチュエータボディ41が嵌め込まれる位置に対応してネジ孔31aが設けられている。これにより、バルブボディ1が内側にはめ込まれた状態でネジ孔31aにネジ31bを螺入させ、ネジ31bの先端をバルブボディ1に圧接させると、バルブボディ1をカバー31の内側に挟持することができる。
【0037】
また、カバー31の厚み部分には、ネジ穴31cが設けられている。このネジ穴31cに、ネジ31dがプレート32、33の貫通孔32b、33bを介して螺合することで、カバー31にプレート32、33が取り付けられる。
【0038】
プレート32、33は、カバー31の内側にアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部を嵌めた状態でカバー31とネジ止め固定され、固定された状態においては、カバー31との間にアクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧保持する。
このプレート32の下方には、舌片状に切り欠いた切欠部32aが形成されており、フレキシブルケーブル26はこの切欠部32aを介して、コネクタ28が設けられた回路基板27へ導出される。
【0039】
プレート33は、プレート32との間に回路基板27を介装させた状態でプレート32及びカバー31にネジ止め固定され、プレート32との間に回路基板27を挟圧保持する。
このプレート33には、中央部に略矩形状の貫通孔33aが設けられており、回路基板27に設けられたコネクタ28はこの貫通孔33aから外側へ抜け出る。
【0040】
ここで、基台部11が平面視矩形状からなるところ、カバー部3は
図1(b)に示されるように、コネクタ28を矩形状の基台部11の対角線方向に向けて流体制御機器Vに固定している。このような向きにコネクタ28を固定するのは以下の理由による。即ち、複数の流体制御機器Vによってガスユニットを構成する場合には、集積化の要請から、隣り合う矩形状の基台部11の向きを揃えてできる限り隙間をなくし、基盤あるいはマニホールドブロック上に流体制御機器Vを配設するのが好適である。他方、このように配設して集積させた場合には、コネクタ28に端子等を接続しにくくなる。そのため、コネクタ28を基台部11の対角線方向に向けることで、真横に配設されている流体制御機器Vの方に向ける場合と比べ、接続するスペースを広く取ることができる。その結果、コネクタ28に端子等を接続するのが容易であるし、端子等の折れや撚れによる断線等の不具合を防いだり、端子等が流体制御機器Vに当たって流体制御機器Vの動作に異常をもたらすといった不具合を防ぐこともできる。
【0041】
アクチュエータ部4は、ボンネット部2上に配設される。
このアクチュエータ部4は
図4に示されるように、アクチュエータボディ41、アクチュエータキャップ42、ピストン43、バネ44を備える。なお、
図4においては、アクチュエータ部4の内部構造を省略しているが、内部構造は
図2及び
図3に示されるとおりである。
【0042】
アクチュエータボディ41は、ピストン43とボンネット24の間に介装される。
このアクチュエータボディ41は
図4に示されるように略円柱形状からなり、中心部には、ピストン43とダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔41aが長さ方向に沿って設けられている。
図2及び
図3に示されるように、貫挿孔41a内ではピストン43とダイヤフラム押え23が当接しており、ダイヤフラム押え23はピストン43の上下動に連動して上下動する。
【0043】
ピストン43が配設される側の上端面には、環状の突条からなる周壁411が形成されており、周壁411の内側の平坦な水平面とピストン43の拡径部431の下端面との間には、駆動圧が導入される駆動圧導入室S1が形成される。
【0044】
また、アクチュエータボディ41のピストン43が配設される側の外周面上には、雄ネジが切られており、アクチュエータキャップ42の内周面に切られた雌ネジと螺合することにより、アクチュエータボディ41はアクチュエータキャップ42の一端に取り付けられる。
【0045】
アクチュエータボディ41の長さ方向の中心部は、断面視略六角形状に形成されており、当該断面視六角形状の部分とバルブボディ1の上端部分は、カバー31によって一体的に挟圧される。
【0046】
アクチュエータキャップ42は、下端部が開口したキャップ状の部材であり、内部にピストン43とバネ44を収容している。
アクチュエータキャップ42の上端面には、ピストン43の駆動圧導入路432に連通する開口部42aが設けられている。
アクチュエータキャップ42の下端部は、アクチュエータボディ41の上部が螺合して閉止されている。
【0047】
ピストン43は、駆動圧の供給と停止に応じて上下動し、ダイヤフラム押え23を介してダイヤフラム22をシート21に当接離反させる。
このピストン43の軸心方向略中央は円盤状に拡径しており、当該箇所は拡径部431を構成している。ピストン43は、拡径部431の上面側においてバネ44の付勢力を受ける。また、拡径部431の下端側には、駆動圧が供給される駆動圧導入室S1が形成される。
【0048】
また、ピストン43の内部には、上端面に形成された開口部43aと、拡径部431の下端側に形成される駆動圧導入室S1とを連通させるための駆動圧導入路432が設けられている。ピストン43の開口部43aはアクチュエータキャップ42の開口部42aまで連通しており、外部から駆動圧を導入するための導入管が開口部42aに接続され、これにより駆動圧導入室S1に駆動圧が供給される。
【0049】
ピストン43の拡径部431の外周面上には、OリングO21が取り付けられており、このOリングO21はピストン43の拡径部431の外周面とアクチュエータボディ41の周壁411の間をシールしている。また、ピストン43の下端側にもOリングO22が取り付けられており、このOリングO22はピストン43の外周面とアクチュエータボディ41の貫挿孔41aの内周面の間をシールしている。これらのOリングO21、O22により、ピストン43内の駆動圧導入路432に連通する駆動圧導入室S1が形成されると共に、この駆動圧導入室S1の気密性が確保されている。
【0050】
バネ44は、ピストン43の外周面上に巻回されており、ピストン43の拡径部431の上面に当接してピストン43を下方、即ちダイヤフラム22を押下する方向に付勢している。
【0051】
ここで、駆動圧の供給と停止に伴う弁の開閉動作について言及する。開口部42aに接続された導入管(図示省略)からエアが供給されると、エアはピストン43内の駆動圧導入路432を介して駆動圧導入室S1に導入される。これに応じて、ピストン43はバネ44の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室S1にエアが導入されなくなると、ピストン43がバネ44の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0052】
流体制御機器Vは、機器内の動作情報を取得する動作情報取得機構として、圧力センサPと、位置センサM2を備えている。
圧力センサPは
図3に示されるように、ボンネットウォール25の下面、ないしは流路側に取り付けられており、連通孔241dを介して、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2に連通している。この圧力センサPは、圧力変化を検出する感圧素子や、感圧素子によって検出された圧力の検出値を電気信号に変換する変換素子等によって構成される。これにより圧力センサPは、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を検出することができる。
なお、圧力センサPが連通孔241dに通じる箇所にはパッキン29が介装されており、気密状態が担保されている。
なお、圧力センサPは、ゲージ圧あるいは大気圧のいずれを検出するものでもよい。
【0053】
位置センサM2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1との間の距離変化をセンシングすることにより、流体制御機器Vの開閉状態を把握するのみならず、リフト量を計測することができる。
この位置センサM2によって以下の通り、弁の開閉動作検知することができる。即ち、磁石M1がダイヤフラム押え23の上下動に応じて上下動するのに対し、位置センサM2はボンネットウォール25及びボンネット24と共にバルブボディ1内に固定されている。この結果、ダイヤフラム押え23の上下動に従って上下動する磁石M1と、位置が固定されている位置センサM2との間に発生する磁界の変化に基づき、ダイヤフラム押え23の動作、ひいては弁の開閉動作を検知したり、リフト量を計測したりすることができる。
【0054】
なお、位置センサM2には各種のものを用いることができるが、その一例に係る位置センサM2は平面コイル、発振回路、及び積算回路を有しており、対向する位置にある磁石M1との距離変化に応じて発振周波数が変化する。そして、この周波数を積算回路で変換して積算値を求めることにより、流体制御機器Vの開閉状態と共に、リフト量を計測することができる。
【0055】
なお、本実施形態では磁気センサからなる位置センサM2を用いたが、これに限らず、上述した位置センサM2と同様、ダイヤフラム押え23とボンネット24の位置関係、あるいはこれらの部材の所定の箇所同士の距離を測定することができる位置センサであれば、光学式の位置センサ等、他の種類のセンサを用いることもできる。
また、本実施形態に係る流体制御機器Vにおいても、位置センサM2を含む位置センサには、位置検出精度が±0.01mmから±0.001mmに収まるものを選定することが望ましい。当該半導体製造プロセス向けのバルブとしては微細な流体制御を実現するために±0.01mm程度の微細な開度制御が必要になる半面、±0.001mmを超える検出精度を用いるとバルブ近傍の真空ポンプ等が発生させる振動を検出しノイズを生じてしまうためである。
【0056】
本例では、圧力センサPと位置センサM2にそれぞれ、可撓性を有する通信用のフレキシブルケーブル26の一端が接続しており、フレキシブルケーブル26の他端は、流体制御機器Vの外側に設けられた回路基板27に接続している。回路基板27には、情報の送受信を実行する処理モジュールが構成されており、これにより、コネクタ28に接続された外部端末に対し、圧力センサPや位置センサM2から検出した情報を送信することができる。
【0057】
なお、流体制御機器Vにおいて、フレキシブルケーブル26と回路基板27にはフレキシブル基板(FPC)が用いられ、フレキシブルケーブル26、回路基板27、及びコネクタ28は一体的に構成されている。フレキシブルケーブル26と回路基板27にフレキシブル基板を用いることにより、配線経路として部材間の隙間を利用することが可能になり、その結果、被覆線を用いる場合に比べて流体制御機器V自体を小型化することができる。
また、処理モジュールは回路基板27とは別に、流体制御機器V内に格納されていてもよいし、圧力センサP又は位置センサM2の一部として構成されていてもよい。
また、コネクタ28の種類や形状は、各種の規格に応じて適宜に設計し得る。
【0058】
また、上述した圧力センサPや位置センサM2によって実現される動作情報取得機構としては他に、駆動圧を検出する駆動圧センサ、流路内の温度を測定する温度センサ、ピストン43あるいはダイヤフラム押え23の挙動を検知するリミットスイッチなどを設けることもできる。
【0059】
以上の流体制御機器Vでは、ピストン43とダイヤフラム押え23が別体で構成されているが、磁石M1はダイヤフラム押え23に取り付けられている。これにより、ダイヤフラム押え23の動作不良を判別することができる。即ち、通常であれば、弁開操作によってダイヤフラム押え23はピストン43に追随して上昇するが、弁閉時に弁室112が真空付近まで減圧されることでダイヤフラム22がシート21に吸着されることで、ピストン43が上昇したにもかかわらず、ダイヤフラム押え23がピストン43に追随せずにダイヤフラム22に当接したままとなる場合がある。この結果、ダイヤフラム22が流路を遮断したままになってしまう場合がある。しかし、このような場合でも、流体制御機器Vでは磁石M1がダイヤフラム押え23と連動しているため、位置センサM2による検出値から、ダイヤフラム押え23の動作を判別し、動作不良を判別することができる。
【0060】
なお、このようなダイヤフラム押え23の動作不良の判別は、位置センサM2が、流体制御機器Vの開閉動作に応じてピストン43やダイヤフラム押え23のように上下動しないダイヤフラム押え23に取り付けられていることで、ダイヤフラム押え23の相対的な動作を識別できるために可能となっている。したがって、ダイヤフラム押え23の動作を識別し、動作不良を判別可能とする点において、位置センサM2が取り付けられるべき部材は、流体制御機器Vの開閉動作にかかわらず所定の位置に固定されているものであればよい。
【0061】
なお、流体制御機器Vには、動作情報などを表示するための液晶パネル等の情報表示手段を設けてもよい。また、内蔵するソフトウェアによる処理結果等に応じて、報知音を出力したり、発光したりする報知手段を設けてもよい。
【0062】
以上の構成からなる流体制御機器Vは通常、複数、集積して、流量制御装置等と共に流体制御装置(ガスユニット)を構成する。
このように、複数の流体制御機器Vによって流体制御装置を構成する場合、流体制御機器Vは密集して配設される。そのため、各流体制御機器Vにおけるデータを表示するためのパネルを設ける場合には、容易に視認できるよう、アクチュエータ部4の上面、少なくとも上方に設けられるのが好適である。
【0063】
●動作情報収集装置6の機能構成
図7は、動作情報を収集する動作情報収集装置6が組み込まれた、調査用機器V1と、動作情報の提供を受けると共に、当該調査用機器V1の動作情報に応じて、当該調査用の流体制御機器が設置されている箇所に適した製品を選定して提示する機器選定装置7の機能構成を示している。
【0064】
調査用機器V1の構成は、本導入される流体制御機器Vと略同等である。ただし、本導入される流体制御機器Vにおいては後述する調整機構50を有さなくてもよい。この構成によれば、本導入される流体制御機器Vを調査用機器V1よりも安価に構成でき、調整代によるずれ等が発生しないため、長期間の使用においても安定して使用できる。
【0065】
調査用機器V1は、動作情報取得機構5と、調整機構50と、動作情報収集装置6と、を備える。調査用機器V1は、動作情報取得機構5として、開閉動作を検出可能な機器動作や状態変化を検出する圧力センサPと位置センサM2を備えている。
【0066】
調整機構50は、調査用機器V1において、流体制御機器の制御態様を調整する機構である。制御態様とは、流体制御機器Vを選定する上で要求仕様となる項目を含む概念であり、例えばダイヤフラム押え23のリフト量、調査用機器V1の開度、ピストン43の推力、平均移動速度等の開閉時の特性等である。調整機構50は、各制御態様を、ハード的又はソフト的に変更可能である。調整機構50により調整される制御態様は、当該制御態様を設定しているときに収集される動作情報とともに機器選定装置7に送信される。
【0067】
動作情報収集装置6は、圧力センサPと位置センサM2によって検出された検出値を動作情報として収集する。動作情報収集装置6は、収集処理部61、通信処理部63、及び動作情報記憶部65からなる機能ブロックを構成している。
【0068】
収集処理部61は、動作情報取得機構5による検出値を動作情報として収集し、収集した動作情報を動作情報記憶部65に登録する。本実施形態では例えば、圧力センサPや位置センサM2により、閉空間S2の圧力やダイヤフラム押え23のリフト量、調査用機器V1の開度といった動作情報を収集できる。
なお、これらの動作情報は一例であって、温度センサなど、圧力センサPや位置センサM2以外の動作情報取得機構を調査用機器V1に備えさせることにより、他の種類の動作情報を取得することができる。
【0069】
なお、収集処理部61による動作情報の登録は、収集処理部61によって取得された検出値をそのまま動作情報として登録するものであってもよいし、適宜に加工したデータとして登録するものであってもよい。ここにいう加工は例えば、検出値を時系列による変化割合に変換したり、ピストン43の推力や平均移動速度といった値を求めるべく検出値に基づいた所定の計算を実行したり、所定の閾値との比較によって適宜に取捨したりするものである。
また、収集処理部61によって登録される動作情報には、動作情報取得機構5による検出値、あるいは当該検出値に基づく加工データのほか、調査用機器V1を識別可能な識別情報、検出値を取得した時間や調査用機器V1の使用期間といったログ情報、使用した流体の種類やユーザによって適宜に変更される設定等の設定情報、調査用機器V1に接続されている周辺機器から得られる駆動電圧や駆動圧といった周辺機器情報、あるいは外部環境の温度や湿度といった使用環境情報などが含まれる。
【0070】
通信処理部63は、所定の通信プロトコルに基づいたデータ通信を可能とする機能部であり、インターネット等の公衆回線や専用回線等の所定の通信網を介して機器選定装置7に動作情報を送信することができる。
【0071】
また、通信処理部63は、調査用機器V1の識別情報を機器選定装置7に送信する。この構成によれば、機器選定装置7において、当該調査用機器V1と互換性のある流体制御機器Vを抽出し、抽出されるラインナップの中から、本導入に適した機器を選定することができる。なお、通信処理部63は、調査用機器V1の識別情報に代えて、調査用機器V1の仕様に関する情報、又は調査用機器V1と互換可能な流体制御機器Vに関する情報を送信してもよい。
【0072】
さらに、通信処理部63は、調査用機器V1の制御態様を、動作情報と対応付けて機器選定装置7に送信する。
【0073】
動作情報記憶部65は、調査用機器V1の動作情報を記憶する記憶部である。
この動作情報記憶部65に記憶される動作情報は、収集処理部61によって収集されたものであり、機器選定装置7に提供される。また、動作情報記憶部65は、当該動作情報を記録したときの制御態様を合わせて記憶する。
【0074】
●機器選定装置7の機能構成
機器選定装置7は、出力部70、決定処理部71、通信処理部73、動作情報記憶部74、および機器テーブル76からなる機能ブロックを構成している。
【0075】
出力部70は、調査用機器V1の動作情報および制御態様の内容に基づいて決定される、本導入する機器の選定結果を出力する機能部である。出力部70の出力先装置は、例えばディスプレイや投影装置である。また、出力部70の出力先装置は、調査用機器V1に配設される表示部であってもよい。
【0076】
決定処理部71は、動作情報収集装置6から提供された制御態様および動作情報の内容に応じて、本導入する機器を選定する。
【0077】
また、決定処理部71は、複数の調査用機器V1の動作情報を取得し、当該複数の調査用機器V1の動作情報に基づいて、本導入する流体制御機器Vを決定してもよい。また、決定処理部71は、動作情報を取得した調査用機器V1の個数に基づいて、本導入する流体制御機器Vを決定してもよい。
【0078】
通信処理部73は、所定の通信プロトコルに基づいたデータ通信を可能とする機能部であり、インターネット等の公衆回線や専用回線等の所定の通信網を介して動作情報収集装置6から各動作条件および動作情報を受信することができる。
【0079】
動作情報記憶部74は、動作情報収集装置6から提供を受けた動作情報を記憶する記憶部である。
【0080】
図8に示されるように、機器テーブル76は、被選定候補となる流体制御機器Vの識別情報と、当該流体制御機器Vの仕様値と、が互いに対応付けられるテーブルである。流体制御機器Vの仕様値は、調査用機器V1において調整される制御態様に対応している。したがって、機器テーブル76によれば、調整された調査用機器V1と同様の制御態様を実現する流体制御機器Vを抽出することができる。
【0081】
また、機器テーブル76は、調査用機器V1の識別情報と、当該調査用流体制御機器V1に対して互換性のある流体制御機器Vの識別情報と、が互いに対応付けられて記憶されている。決定処理部71は、動作情報が収集される調査用機器V1の識別情報を参照して、当該調査用機器V1の仮導入箇所に本導入可能な流体制御機器Vを抽出することができる。
【0082】
なお、決定処理部71は、要求仕様に合致する流体制御機器Vを複数選定し、出力部70を介してユーザに提示してもよい。この構成によれば、ユーザが機器選定の最終判断を行うことができる。また、価格、耐久年数等、機器選定における優先順位を予め記憶し、優先順位に応じて流体制御機器Vを選定してもよい。当該優先順位は、ユーザにより入力されるものであってよい。さらに、本システムを使用する別のユーザの購入結果を参照し、別のユーザに多く購入されている機器を選定してもよい。
【0083】
決定処理部71は、複数種類の調査用機器V1の動作情報に基づいて1つの流体制御機器Vを選定してもよい。複数種類の調査用機器V1は、いずれも選定する流体制御機器Vと互換可能であり、互いに異なる調整範囲を有する。この構成によれば、1つの調査用機器V1が有する調整範囲よりも広範囲における動作情報に基づいて流体制御機器Vの選定ができる。なお、複数の調査用機器V1が直列又は並列になるよう接続され、流路となる調査用機器V1がハードウェア的に又はソフトウェア的に切替可能になっていてもよい。この構成によれば、調査用機器V1の取り換え作業を行わなくても、簡易な構成で複数種類の調査用機器V1における動作情報を収集することができる。
【0084】
決定処理部71は、調査用機器V1の動作情報に基づいて、ガスユニット内又はその周辺で使用される、流体制御機器以外の周辺機器を選定し、提案してもよい。
【0085】
決定処理部71は、ガスユニットが複数の使用条件下で使用されることを想定して、当該複数の条件のいずれにおいても要求仕様に合致する流体制御機器Vを選定可能であってもよい。例えば、各制御態様および動作情報を記憶した上で、本導入すべき流体制御機器Vを選定してもよい。このとき、ユーザインターフェース装置を介して、使用条件が複数ある旨を受け付けてもよい。
【0086】
決定処理部71は、所定以上の時間又は所定以上のデータ量の動作情報の収集が行われたときに、流体制御機器Vの決定を行ってよい。また、例えば温湿度等の外部環境など異なる稼働条件における動作情報の収集が不足している場合には、流体制御機器Vの決定を行わなくてもよい。動作情報の収集が十分でない場合、ユーザインターフェース装置を介してその旨を通知してもよい。さらに、収集が不十分な動作情報を補完するために必要な作業をユーザに通知し、動作情報の適切な収集を促してもよい。当該必要な作業とは、例えば所定時間稼働を継続することであってもよいし、稼働条件を変更することであってもよい。
【0087】
なお、以上の本実施形態では、動作情報の提供は、動作情報収集装置6が備える通信処理部63と機器選定装置7が備える通信処理部73により、所定の通信網を介して実行されるが、これに限らず、他の態様によることができる。
例えば、調査用機器V1が備えるコネクタ28に接続した外部メモリを介して、あるいは当該コネクタ28に本実施形態に係る機器選定装置7を直接、接続して提供することができる。
【0088】
また、通信処理部63により、インターネット等の公衆回線や専用回線等の所定の通信網を介して機器選定装置7に動作情報を送信する場合についても、調査用機器V1と機器選定装置7の間に中継装置を介在させ、調査用機器V1と中継装置の間の通信は、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)といった短距離無線通信によって構成し、中継装置と機器選定装置7の間は、インターネット等の公衆回線で構成することもできる。
【0089】
なお、動作情報の提供は、1時間や1日等の任意に設定された所定の周期で行われるものであってもよいし、収集処理部61によって動作情報収集装置6に動作情報が登録されたタイミングで行われるものであってもよい。
【0090】
また、調査用機器V1の動作情報の収集と提供は、調査用機器V1自身による例に限らず、
図10に示されるように、一又は複数の調査用機器V1の動作を制御、管理等するコントローラCに備えさせた動作情報収集装置6によって実行させることもできる。
この例では、コントローラCは、一又は複数の調査用機器V1とネットワークNWを介して通信可能に構成され、当該一又は複数の調査用機器V1を管理、制御等する機能部に加えて、動作情報収集装置6を備える。
【0091】
この場合、調査用機器V1とコントローラCとの間のネットワークNW2は、データの送受信を可能とするためのものであれば特に限定されず、赤外線通信、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、LAN(Local Area Network)、所定の専用回線や通信ケーブルなどによって構成され、有線又は無線のいずれであるかを問われることもない。
【0092】
このようなコントローラCから機器選定装置7に対する動作情報の提供は、インターネット等の公衆回線や専用回線等の通信網NW1を介して行うことができる。なお、これにかかわらず、外部メモリを媒介して行うこともできる。
【0093】
●処理フロー
本システムによる処理の流れについて、
図9を参照して説明する。
調査用機器V1では、動作情報取得機構5を構成する圧力センサPや位置センサM2により、閉空間S2の圧力やダイヤフラム押え23のリフト量、調査用機器V1の開度といった検出値が動作情報として得られる(S101)。
【0094】
動作情報収集装置6は、収集処理部61により当該動作情報を収集し(S102)、動作情報記憶部65に記憶する(S103)。
【0095】
動作情報収集装置6は所定のタイミングで、動作情報および制御態様を機器選定装置7に対して送信する(S104)。
また、動作情報を抽出し、機器選定装置7に送信するタイミングは、任意に設定された所定の周期でもよいし、動作情報が収集される都度であってもよい。
【0096】
機器選定装置7は、動作情報収集装置6から受信した動作情報を動作情報記憶部74に記憶する(S105)。
これにより、動作情報が機器選定装置7に蓄積される。決定処理部71が動作情報記憶部74を参照し、動作情報収集装置6から提供された動作情報および各制御態様の内容に応じて、本導入する流体制御機器Vを決定する(S106)。
【0097】
このような構成によれば、ユーザの使用条件に合致した流体制御機器Vを適切に選定することができる。すなわち、ユーザは、オーバースペックで高価な機器を導入する必要がなくなるため、ガスユニットを安価に構成できる。また、ユーザおよび導入業者にとって、選定にかかる時間が短縮できる。
【符号の説明】
【0098】
5 動作情報取得機構
6 動作情報収集装置
61 収集処理部
65 動作情報記憶部