(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】流路アセンブリ、この流路アセンブリを用いたバルブ装置、流体制御装置、半導体製造装置および半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20231101BHJP
F16K 1/52 20060101ALI20231101BHJP
F16K 47/08 20060101ALI20231101BHJP
G01F 1/42 20060101ALI20231101BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20231101BHJP
F16K 7/17 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
F16K1/52 E
F16K47/08
G01F1/42 A
F16L55/00 H
F16K7/17 Z
(21)【出願番号】P 2020569535
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001955
(87)【国際公開番号】W WO2020158512
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019016228
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(72)【発明者】
【氏名】相川 献治
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/098087(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021277(WO,A1)
【文献】特開平11-118542(JP,A)
【文献】特開平10-085562(JP,A)
【文献】特開平03-033566(JP,A)
【文献】中国実用新案第207923206(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 - 27/12
F16K 39/00 - 51/02
F16K 1/52
G01F 1/42
F16L 55/00
F16K 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部により互いに接続される流体流路を画定する金属製の第1流路部材および第2流路部材と、
前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に設けられかつ前記流体流路を流通する流体に特定の作用を及ぼす作用部を有するプレート状部材と、を有する流路アセンブリであって、
第1流路部材および第2流路部材との間に設けられた樹脂製の環状シール部材を有し、
前記第1流路部材は、前記環状シール部材の一端面を支持する第1のシール面を有し、
前記第2流路部材は、前記プレート状部材の表面を支持する平坦面からなる第2のシール面と、前記環状シール部材の外周面を支持する第3のシール面と、を有し、
前記環状シール部材は、前記接続部により第1流路部材および第2流路部材の間に作用する力により圧し潰され、当該環状シール部材の他端面が第2のシール面に気密又は液密に押し付けられ、当該環状シール部材の一端面が前記第1流路部材の第1のシール面に気密又は液密に押し付けられ、当該環状シール部材の外周面が前記
第2流路部材の第3のシール面に気密又は液密に押し付けられ、
前記プレート状部材の外周縁部は、前記
第1流路部材又は前記
第2流路部材に気密又は液密に溶接されている、
流路アセンブリ。
【請求項2】
前記接続部は、加締めによる接続を含む、
請求項1に記載の流路アセンブリ。
【請求項3】
前記環状シール部材は、矩形状の断面形状を有する、
請求項1又は2に記載の流路アセンブリ。
【請求項4】
前記プレート状部材は、オリフィスを含む、
請求項1ないし3のいずれかに記載の流路アセンブリ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流路アセンブリをバルブボディに内蔵するバルブ装置。
【請求項6】
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、
請求項5に記載のバルブ装置を含む、流体制御装置。
【請求項7】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に
請求項5に記載のバルブ装置を用いた半導体製造装置。
【請求項8】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に
請求項5に記載のバルブ装置を用いた半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路アセンブリ、この流路アセンブリを用いたバルブ装置、このバルブ装置を用いた、流体制御装置、半導体製造方法および半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス等の各種製造プロセスにおいては、正確に計量したプロセスガスをプロセスチャンバに供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化した流体制御装置が一般的に用いられている。
上記のような流体制御装置では、管継手の代わりに、流路を形成した設置ブロック(以下、ベースブロックと呼ぶ)をベースプレートの長手方向に沿って配置し、このベースブロック上に複数の流体機器や管継手が接続される継手ブロック等を含む各種流体機器を設置することで、集積化を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-3013号公報
【文献】特許4137267号
【文献】特開2010-190430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種製造プロセスにおけるプロセスガスの供給制御には、より高い応答性が求められており、流体制御装置をできるだけ小型化、集積化して、流体の供給先であるプロセスチャンバのより近くに流体制御装置を設置する必要がある。
半導体ウエハの大口径化等の処理対象物の大型化が進んでおり、これに合わせて流体制御装置からプロセスチャンバ内へ供給する流体の供給流量も増加させる必要がある。
また、プロセスガスの供給制御の応答性を高めるためには、流路の短縮化が必要不可欠であり、オリフィスやフィルター等の機能部品をバルブ装置のバルブボディに集約する技術も提案されている(特許文献2,3等を参照)。
【0005】
このように、オリフィスやフィルター等の機能部品をバルブ装置のバルブボディの流路等に集約した際には、流路を画定する部材とオリフィスやフィルター等の機能部品との間を長期間確実にシールする技術が必要である。
【0006】
本発明の一の目的は、オリフィスやフィルター等の機能部品が組み込まれた流路アセンブリであって、機能部品と流路を画定する流路部品との間が長期間確実に密封された流路アセンブリを提供することにある。
本発明の他の目的は、流路の一部を形成するために上記の流路アセンブリをバルブボディに内蔵するバルブ装置を提供することにある。
本発明のまたさらに他の目的は、上記のバルブ装置を用いた流体制御装置、半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流路アセンブリは、接続部により互いに接続される流体流路を画定する金属製の第1流路部材および第2流路部材と、
前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に設けられかつ前記流体流路を流通する流体に特定の作用を及ぼす作用部を有するプレート状部材と、を有する流路アセンブリであって、
第1流路部材および第2流路部材との間に設けられた樹脂製の環状シール部材を有し、
前記第1流路部材は、前記環状シール部材の一端面を支持する第1のシール面を有し、
前記第2流路部材は、前記プレート状部材の表面を支持する平坦面からなる第2のシール面と、前記環状シール部材の外周面を支持する第3のシール面と、を有し、
前記環状シール部材は、前記接続部により第1流路部材および第2流路部材の間に作用する力により圧し潰され、当該環状シール部材の他端面が前記プレート状部材の裏面に気密又は液密に押し付けられ、当該環状シール部材の一端面が前記第1流路部材の第1のシール面に気密又は液密に押し付けられ、当該環状シール部材の外周面が前記第2の流路部材の第3のシール面に気密又は液密に押し付けられ、
前記プレート状部材は前記環状シール部材の他端面により押圧されて当該プレート状部材の表面が前記第2流路部材の第2シール面に気密又は液密に押し付けられる。
【0008】
本発明の流体制御機器は、複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、上記構成のバルブ装置を含む。
【0009】
本発明の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記構成のバルブ装置を用いている。
【0010】
本発明の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記構成のバルブ装置を用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シール部材を圧し潰すことで、第1、第2および第3のシール面およびプレート状部材の裏面がシールされるので、長期間確実なシールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施の形態1に係るバルブ装置の一部に縦断面を含む正面図であって、バルブ要素が閉鎖された状態を示す図。
【
図1B】本発明の実施の形態1に係るバルブ装置の一部に縦断面を含む正面図であって、バルブ要素が開放された状態を示す図。
【
図1C】本発明の実施の形態1に係るバルブ装置の上面図。
【
図1D】本発明の実施の形態1に係るバルブ装置の底面図。
【
図1E】本発明の実施の形態1に係るバルブ装置の側面図。
【
図4A】本発明の実施の形態1に係るバルブ装置の要部拡大断面図。
【
図5】本発明の実施の形態2に係るバルブ装置の一部に縦断面を含む正面図。
【
図6】本発明の実施の形態2に係るバルブ装置の要部拡大断面図。
【
図7】本発明の実施の形態に係る半導体製造装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書および図面においては、機能が実質的に同様の構成要素には、同じ符号を使用することにより重複した説明を省略する。
なお、図中に示す矢印A1,A2は上下方向を示すものであって、矢印A1が上方向、矢印A2が下方向を示すものとする。図中に示す矢印B1,B2は、バルブ装置1のバルブボディ20の長手方向を示すものであって、矢印B1が一端側、矢印B2が他端側を示すものとする。図中に示す矢印C1,C2は、バルブボディ20の長手方向B1,B2に直交する幅方向を示すものであって、矢印C1が前面側、矢印C2が背面側を示すものとする。
【0014】
実施の形態1
図1A~
図1Eは、本発明の実施の形態1に係るバルブ装置1の構造の一例を示している。
図2は、バルブ装置1のインナーディスクの断面構造の一例を示している。
図3は、バルブ装置1のバルブシートの断面構造の一例を示している。
図4Aは、バルブ装置1の要部の拡大断面を示している。また、
図1Aおよび
図1Bは、バルブ装置1の動作を示している。
図1Aはバルブ要素が閉鎖された状態を示し、
図1Bはバルブ要素が開放された状態を示している。
【0015】
バルブボディ20は、上面視で長方形状を有するブロック状の部材である。バルブボディ20は、上面20f1、底面20f2、および、上面20f1と底面20f2との間で延びる4つの側面20f3~20f6で画定されている。加えて、上面20f1で開口する収容凹部22を画定している。収容凹部22には、後述するバルブ要素2が内蔵されている。
【0016】
図4A等から分かるように、収容凹部22は、直径の異なる内周面22a,22b,22cと、底面22dと、で構成されている。内周面22a,22b,22cは、この順に直径が小さくなっている。
【0017】
バルブボディ20は、収容凹部22に接続された、一次側流路21と二次側流路24A,24Bとを画定している。一次側流路21は、ガス等の流体が外部から供給される側の流路である。二次側流路24A,24Bは、一次側流路21からバルブ要素2を通じて流入するガス等の流体を外部へ流出させる流路である。
【0018】
一次側流路21は、バルブボディ20の底面20f2に対して傾斜して形成され、一端が収容凹部22の底面22dで接続され、他端が底面20f2で開口している。
一次側流路21の底面20f2側の開口の周囲には、シール保持部21aが形成されている。シール保持部21aには、シール部材としてガスケットが配置される。バルブボディ20は図示しない他の流路ブロックとねじ穴20h1に締結ボルトをねじ込むことで連結される。この際に、シール保持部21aに保持されたガスケットは、図示しない他の流路ブロックとの間で締結ボルトの締結力で圧し潰されるので、一次側流路21の底面20f2側の開口の周囲はシールされる。
【0019】
ガスケットとしては、たとえば金属製又は樹脂製などのガスケットを挙げることが出来る。ガスケットしては、軟質ガスケット、セミメタルガスケット、メタルガスケットなどが挙げられる。具体的には、以下のものが好適に使用される。
(1)軟質ガスケット
・ゴムOリング
・ゴムシート(全面座用)
・ジョイントシート
・膨張黒鉛シート
・PTFEシート
・PTFEジャケット形
(2)セミメタルガスケット
・うず巻形ガスケット(Spiral-wound gaskets)
・メタルジャケットガスケット
(3)メタルガスケット
・金属平形ガスケット
・メタル中空Oリング
・リングジョイント
なお、後述する分岐流路25,26の開口の周囲に設けられたシール保持部25a,26bも同様であり詳細説明は省略する
【0020】
二次側流路24は、バルブボディ20の長手方向B1,B2において収容凹部22に対して互いに反対側に形成された2つの二次側流路24A,24Bを含む。二次側流路24A,24Bは、バルブボディ20の長手方向B1,B2に延びる共通の軸線J1上に形成されている。
【0021】
二次側流路24Aは、一端が収容凹部22の内周面22bで開口し、他端24a1はバルブボディ20の内部で閉塞している。
二次側流路24Bは、一端が収容凹部22の内周面22bで開口し、他端24b1は側面20f6側で開口している。
二次側流路24Bの側面20f6の開口には、溶接等の手段により、閉塞部材30が設けられ、二次側流路24Bの開口は閉塞されている。
二次側流路24は、ドリル等の工具を用いて容易に加工できる。
本実施形態に係るバルブ装置1では、一次側流路21に流入するガス等の流体を、二次側流路24の分岐流路25,26により4つに分流することができる。
【0022】
バルブ要素2は、それぞれ、ダイヤフラム14と、インナーディスク15と、バルブシート16と、後述する流路アセンブリで構成されたバルブシートサポート50とを有する。以下において、バルブシートサポート50を流路アセンブリ50と称する場合もあるものとする。
【0023】
バルブシートサポート50は、
図4に示すように、外周面50b1が収容凹部22の内周面22cに嵌合挿入されている。なお、バルブシートサポート50を構成する流路アセンブリについては後で詳述する。バルブシートサポート50は、中心部に迂回流路50aが形成され、上端面に迂回流路50aを中心とする環状の支持面50f1が形成されている。バルブシートサポート50の支持面50f1は、平坦面からなり、その外周部には、段差が形成されている。バルブシートサポート50の外周面50b1は、収容凹部22の内周面22cに嵌る直径を有し、下端側の小径化された外周面50b2との間には段差が存在する。この段差により、円環状の端面50b3が形成されている。外周面50b2には、
図4等に示すように、PTFE等の樹脂製の第2シール部材55が嵌め込まれる。
【0024】
第2シール部材55は、断面形状が矩形状に形成され、収容凹部22の底面22dとバルブシートサポート50の端面50b3との間で圧し潰される寸法を有する。第2シール部材55が収容凹部22の底面22dとバルブシートサポート50の端面50b3との間で圧し潰されると、バルブシートサポート50の外周面50b2と収容凹部22の内周面22cおよび底面22dとの間に樹脂が入り込み、バルブシートサポート50と収容凹部22との間が確実にシールされる。すなわち、シール面としての外周面50b2および端面50b3は、収容凹部22の内周面22cおよび底面22dと協働して、一次側流路21と二次側流路24との連通を遮断する。
【0025】
バルブシートサポート50の迂回流路50aは、収容凹部22の底面22dで開口する一次側流路21と接続される。
バルブシートサポート50の支持面50f1上には、バルブシート16が設けられている。
バルブシート16は、PFA、PTFE等の樹脂で弾性変形可能に形成され
図3に示すように、円環状に形成され、一端面に円環状の座面16sが形成され、他端面に円環状のシール面16fが形成されている。座面16sおよびシール面16fの内側には、貫通孔からなる流通流路16aが形成されている。バルブシート16は、その外周側に小径部16b1と大径部16b2とを有し、小径部16b1と大径部16b2との間には段差部が形成されている。
【0026】
バルブシート16は、位置決め押圧部材としてのインナーディスク15により、バルブシートサポート50の支持面50f1に対して位置決めされ、かつバルブシートサポート50の支持面50f1に向けて所定の押圧力で押圧されている。具体的には、インナーディスク15の中心部に形成された大径部15a1と小径部15a2とが形成され、大径部15a1と小径部15a2との間には段差面15a3が形成されている。インナーディスク15の一端面側には、円環状の平坦面15f1が形成されている。インナーディスク15の他端面側には、外側に円環状の平坦面15f2が形成され、内側に円環状の平坦面15f3が形成されている。平坦面15f2と平坦面15f3とは高さが異なり、平坦面15f3が平坦面15f1寄りに位置している。
【0027】
インナーディスク15の外周側には、収容凹部22の内周面22aに嵌合する外周面15bが形成されている。さらに、一端面および他端面を貫通する流路15hが円周方向に等間隔に複数形成されている。インナーディスク15の大径部15a1と小径部15a2とに、バルブシート16の大径部16b2と小径部16b1とが嵌ることにより、バルブシート16は、バルブシートサポート50の支持面50f1に対して位置決めされる。
【0028】
インナーディスク15の平坦面15f2は、収容凹部22の内周面22aと内周面22bとの間に形成された平坦な段差面上に設置される。インナーディスク15の平坦面15f1上には、ダイヤフラム14が設置され、ダイヤフラム14上には、押えリング13が設置される。
【0029】
アクチュエータ10は、空圧等の駆動源により駆動され、上下方向A1,A2に移動可能に保持されたダイヤフラム押え12を駆動する。アクチュエータ10のケーシング11の先端部は、
図1Aに示すように、バルブボディ20にねじ込まれて固定されている。そしてこの先端部が、押えリング13を下方向A2に向けて押圧し、ダイヤフラム14は、収容凹部22内で固定される。ダイヤフラム14は、収容凹部22を開口側で密閉している。また、インナーディスク15も下方向A2に向けて押圧される。インナーディスク15の平坦面15f2が収容凹部22の段差面に押し付けられた状態において、段差面15a3がバルブシート16をバルブシートサポート50の支持面50f1に向けて押圧するように、段差面15a3の高さは設定されている。また、インナーディスク15の平坦面15f3は、バルブシートサポート50の上端面に当接しないようになっている。
【0030】
ダイヤフラム14は、バルブシート16よりも大きな直径を有し、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。ダイヤフラム14は、バルブシート16の座面16sに対して当接離隔可能にバルブボディ20に支持されている。
【0031】
図4Aにおいて、ダイヤフラム14はダイヤフラム押え12により押圧されて弾性変形し、バルブシート16の座面16sに押し付けられている。バルブ要素2は閉鎖状態にある。
ダイヤフラム14がバルブシート16の座面16sに押し付けられている状態では、一次側流路21と二次側流路24との間の流路は閉鎖された状態にある。バルブ要素2のダイヤフラム14をダイヤフラム押え12による押圧から開放すると、
図1Bに示すように、球殻状に復元する。ダイヤフラム押え12が上方向A1に移動されると、
図1Bに示すように、ダイヤフラム14がバルブシート16の座面16sから離れる。そして、一次側流路21から供給されるプロセスガス等の流体は、ダイヤフラム14とバルブシート16の座面16sとの間隙を通じて、二次側流路24に流入する。流体は、最終的には、分岐流路25,26を通じてバルブボディ20の外部に流出する。すなわち、流体は4つに分流される。
【0032】
図4Aは、バルブ装置1の要部であるバルブシートサポート50を構成する流路アセンブリの構成の一例を拡大して示している。
図4Aを用いて、流路アセンブリ50について説明する。
【0033】
流路アセンブリ50は、流路部材51,52と、流路部材51,52の間に設けられるプレート状部材としてのオリフィスプレート53と、オリフィスプレート53の両端下側に設けられる樹脂製の環状シール部材としての環状の第1シール部材54とを有する。
【0034】
オリフィスプレート53は、金属製の円板状部材からなり、中心部にオリフィス53aが形成されている。オリフィス53aは、流体流路51a,52aを流通する流体を通過させるために設けられている。オリフィス53aは流体の流れに対して抵抗として作用し、流体流路51a側と流体流路52a側とで圧力差を生じさせる。
流路部材51,52およびオリフィスプレート53は、ステンレス合金等の同種の金属材料で形成してもよいし、異なる金属材料で形成することもできる。また、本実施形態では、オリフィスプレート53を用いたが、これに限定されることなく、例えば、フィルタープレートを用いることも可能である。
【0035】
流路部材51の上端側の外周面51eと流路部材52の円筒状部52eに配置された内周面52e1とが嵌合するように形成されており、これにより、流体流路51a,52aの中心軸線Ctが合うようになっている。
流路部材51と流路部材52は、互いに対向する環状の対向面が形成されている。対向面は、流体流路51a,52aの開口の周囲に形成され、かつ、流体流路51a,52aの中心軸線Ctと同軸状に配置されている。
【0036】
ここで、
図4Bに
図4Aの円A内の拡大断面図を示す。
図4Aおよび
図4Bに示すように、流路部材51は、第1シール部材54の中心軸線Ct方向の一端面54f1を支持する第1のシール面51fを有する。
流路部材52は、オリフィスプレート53の表面53Aを支持する平坦面からなる第2のシール面52fと、第1シール部材54の外周面54f3を支持する第3のシール面52f2とを画定している。第2のシール面52fと第3のシール面52f2とは直交関係にあり、第1のシール面51fと第3のシール面52f2とは直交関係にある。
第1シール部材54は、カシメ部52e_cが塑性変形を受ける前の状態において、第1のシール面51fとオリフィスプレート53の裏面53Bとの距離よりも長い寸法を有している。カシメ部52e_cが塑性変形を受けると、第1シール部材54は、流路部材51および流路部材52の間に作用する力により圧し潰される。
【0037】
第1シール部材54が圧し潰されると、第1シール部材54の他端面54f2がオリフィスプレート53の裏面53Bに気密又は液密に押し付けられる。
同時に、第1シール部材54の一端面54f1が流路部材51の第1のシール面51fに気密又は液密に押し付けられ、第1シール部材54の外周面54f3が流路部材52の第3のシール面52f2に気密又は液密に押し付けられる。
さらに、オリフィスプレート53は、第1シール部材54の他端面54f2により押圧されてオリフィスプレート53の表面53aが流路部材52の第2シール面52fに気密又は液密に押し付けられる。
第1シール部材54が圧し潰されることで、漏れの生じうる経路の全てがシールされる、第1シール部材54はこれら漏れの生じうる経路の全てのシールに直接的又は間接的に関与している。
【0038】
第1シール部材54は、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成されるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
二つの流路部材およびオリフィスプレートが金属であるとき、環状の突起を設け、これを二つの流路部材の接続力を用いて圧し潰すことでシールすることが一般的に行われているが、このシール部分に漏れが発生し、流体が外部に流出してしまうことがある。
それに対し、本実施形態の構造では、第1シール部材54が全てのシールに直接的又は間接的に関与していることで、より確実なシールが提供される。
また、第1シール部材54により確実なシールが提供されるため、流路部材51,52のオリフィスプレート53を支持する面を平坦面にでき、他の機能を有するプレート状部材にも容易に対応できる。
さらに、オリフィスプレート53を圧し潰す必要がないため、オリフィス53aへの変形等の影響がなく所望の流量を提供することができる。
【0040】
実施の形態2
図5は、本発明の実施の形態2に係るバルブ装置1Aの構造の一例を示している。
図6は、バルブ装置1Aの要部の拡大断面を示している。具体的には、
図6では、バルブ装置1Aの要部であるバルブシートサポート50Aを構成する流路アセンブリの構成の一例を拡大して示している。
なお、バルブ装置1Aの基本的な構成は、実施の形態1に係るバルブ装置1と同じである。また、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明するものとする。さらに、実施の形態1と同様部分について適用される変形例は、実施の形態2についても同様に適用される。
【0041】
流路アセンブリ50Aは、流路部材51,52と、流路部材51,52の間に設けられるプレート状部材としてのオリフィスプレート53と、流路部材51,52の間に介在する環状の第1シール部材54とを有する。
【0042】
オリフィスプレート53の外周縁部は、流路部材52の平坦面からなる第2のシール面52fに溶接されている。溶接した部分を溶接部60として
図6に示している。平坦面からなる第2シール面は、単一の平面だけでなく複数の平坦面から構成される平坦面を含む。第1シール部材54の他端面54f2は流路部材52の第2のシール面52fに気密又は液密に押し付けられる。
流路アセンブリ50Aでは、第1シール部材54によるシールおよび溶接部60のおかげで、流体が外部に流出するのを確実に防ぐことができる。
【0043】
なお、本発明の実施の形態を2つに分けて説明したが、本発明は、上述したそれぞれの実施の形態に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0044】
上記実施の形態では、二次側流路24は、バルブボディ20内で複数に分岐し、分岐流路25,26がバルブボディ20の上面20f1で開口する場合を例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、底面20f2や側面20f3~20f6のいずれかで開口する構成も採用できる。
上記実施の形態では、インナーディスク15とバルブシート16とを別部材としたが、インナーディスク15とバルブシート16とを一体化することも可能である。
【0045】
上記実施の形態では、流路21を一次側、流路24A,24Bを二次側としたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、流路21を二次側、流路24A,24Bを一次側とすることも可能である。
上記実施形態では、流路アセンブリをバルブシートサポートとして用いた場合を例示したが、これに限定されるわけではなく、バルブ装置以外の流路にも適用可能である。
また、上記実施形態では、プレート状部材としてオリフィスプレートを例示したが、これに限定されるわけではなく、例えば、プレート状部材としてフィルターを作用部にもつフィルタープレートを採用することも可能である。
また、上記実施形態では、オリフィスプレート53を流路部材52に溶接したが、流路部材51に溶接することも可能である。
【0046】
次に、
図7を参照して、上記したバルブ装置1又はバルブ装置1Aの適用例について説明する。上記したバルブ装置1又はバルブ装置1Aは、以下に説明する半導体製造装置や流体制御装置に適用されて利用される。
【0047】
図7に示す半導体製造装置1000は、密閉されたチャンバ(処理チャンバ800)内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、プロセスガスの流量制御にバルブ装置1を用いたものである。たとえば、
図7に示す半導体製造装置1000は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)による半導体製造プロセスを実行するためのシステムであり、600はプロセスガス供給源、700はガスボックス、710はタンク、800は処理チャンバ、900は排気ポンプを示している。
【0048】
基板に膜を堆積させる処理プロセスにおいては、処理ガスを安定的に供給するためにガスボックス700から供給される処理ガスをバッファとしてのタンク710に一時的に貯留し、処理チャンバ800の直近に設けられたバルブ720を高頻度で開閉させてタンクからの処理ガスを真空雰囲気の処理チャンバへ供給する。
【0049】
ALD法は、化学気相成長法の1つであり、温度や時間等の成膜条件の下で、2種類以上の処理ガスを1種類ずつ基板表面上に交互に流し、基板表面上原子と反応させて単層ずつ膜を堆積させる方法であり、単原子層ずつ制御が可能である為、均一な膜厚を形成させることができ、膜質としても非常に緻密に膜を成長させることができる。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガス(プロセスガス)の流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化等により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
【0050】
ガスボックス700は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ800に供給するために、各種の流体機器を集積化した流体制御装置をボックスに収容したものである。流体制御装置は、複数の流体機器が配列されたものである。
【0051】
タンク710は、ガスボックス700から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
処理チャンバ800は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ900は、処理チャンバ800内を真空引きする。
【0052】
図8を参照して、本発明のバルブ装置が適用される流体制御装置の一例を説明する。
図8に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0053】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、マスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0054】
本発明は、上記した開閉弁991A、991D、レギュレータ991B等の種々のバルブ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,1A :バルブ装置
2 :バルブ要素
10 :アクチュエータ
11 :ケーシング
12 :ダイヤフラム押え
13 :押えリング
14 :ダイヤフラム
15 :インナーディスク
15a1 :大径部
15a2 :小径部
15a3 :段差面
15b :外周面
15f1,15f2,15f3 :平坦面
15h :流路
16 :バルブシート
16a :流通流路
16b1 :小径部
16b2 :大径部
16f :シール面
16s :座面
20 :バルブボディ
20f1 :上面
20f2 :底面
20f3-20f6 :側面
20h1 :ねじ穴
21 :一次側流路
21a :シール保持部
22 :収容凹部
22a,22b,22c :内周面
22d :底面
24,24A,24B :二次側流路
24a1,24b1 :他端
25,26 :分岐流路
25a,26b :シール保持部
30 :閉塞部材
50,50A :流路アセンブリ(バルブシートサポート)
50a :迂回流路
50b1,50b2 :外周面
50b3 :端面
50f1 :支持面
51 :流路部材
51a :流体流路
51e :外周面
51f :第1のシール面
52 :流路部材
52a :流体流路
52e :円筒状部
52e1 :内周面
52e_c :カシメ部
52f :第2のシール面
52f2 :第3のシール面
53 :オリフィスプレート
53A :表面
53B :裏面
53a :オリフィス
54 :第1シール部材
54f1 :一端面
54f2 :他端面
54f3 :外周面
55 :第2シール部材
60 :溶接部
700 :ガスボックス
710 :タンク
720 :バルブ
800 :処理チャンバ
900 :排気ポンプ
991A-991E :流体機器
992 :流路ブロック
993 :導入管
1000 :半導体製造装置
A :円
A1 :上方向
A2 :下方向
B1,B2 :長手方向
BS :ベースプレート
C1 :前面側
C2 :背面側
Ct :中心軸線
G1 :長手方向(上流側)
G2 :長手方向(下流側)
J1 :軸線
W1,W2 :幅方向