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特許7376960新規マイクロペプチドHMMWとその適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】新規マイクロペプチドHMMWとその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231101BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20231101BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C07K14/00
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61K38/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022514793
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 CN2020126072
(87)【国際公開番号】W WO2021043341
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】522085563
【氏名又は名称】ナンチン アンチー バイオテクノロジー カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ハンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リー、モンウェイ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2020年03月16日,Vol.142,pp.6708-6716
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00-825
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍治療薬の調製における新規マイクロペプチドHMMWの適用であって、前記マイクロペプチドHMMWのアミノ酸配列、SEQ ID NO. 9のアミノ酸配列である、前記適用
【請求項2】
SEQ ID NO. 9のアミノ酸配列を含むマイクロペプチドHMMWをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
【請求項3】
求項に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする組換えベクター。
【請求項4】
瘍治療薬の調製における、請求項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項に記載の組換えベクターの適用。
【請求項5】
求項に記載のヌクレオチド配列のために設計された特異性プライマーペアを含むことを特徴とする腫瘍検出用試薬テストキット。
【請求項6】
特異性プライマーペアがSEQ ID NO. 19およびSEQ ID NO. 20の通りとなっていることを特徴とする請求項に記載の腫瘍検出用試薬テストキット。
【請求項7】
腫瘍が、ヒトの頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮癌、胃癌、乳癌、腎癌、および皮膚癌を含むことを特徴とする請求項に記載の腫瘍検出用試薬テストキット。
【請求項8】
SEQ ID NO. のアミノ酸配列を含むマイクロペプチドHMMW、または請求項に記載のポリヌクレオチド、または請求項に記載の組換えベクターを少なくとも含む腫瘍治療のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学研究開発の分野に関わり、より具体的には、腫瘍の検出および治療における新規マイクロペプチドHMMWの適用に関わる。
【背景技術】
【0002】
トランスクリプトミクス、プロテオミクス、およびバイオインフォマティック分析法の発展により、科学者は、過去に定義された非コーディングRNA分子(IncRNA、circRNA、miRNAなど)が実際にコーディング能力を備えた小さなオープンリーディングフレーム(sORF、small Open Reading Frame、ヌクレオチド配列は300bpを超えない)を含むことを発見し、sORFによってコードされるポリペプチド(sORF-encoded peptides,SEPs)はマイクロペプチド(micropeptides、長さは100アミノ酸を超えない)と呼ばれる。2015年のジャーナルCellでは、科学者がバイオインフォマティクス法によってポリペプチドMyoregulin(MLN)をコードする骨格筋特異性のlncRNAをスクリーニングし、そしてMLNが骨格筋生理学の重要な調節因子であると確認できたことを発表した。過去2年間、世界でマイクロペプチドをコードできるIncRNAに関する報告は多くなく、研究分野は主に筋肉の分化と骨格筋の発育に焦点を当てている。したがって、lncRNAによってコードされる新しいマイクロペプチドに対する発見と識別、及び新しい応用分野に対する探索は、非コーディングRNAのコーディングドアを開くことにとって非常に重要となっている。
【0003】
腫瘍(Tumor)は、人間の生命と健康を深刻に危険にさらす悪性疾患の一種で、無制限の成長、浸潤および転移は腫瘍の悪性徴候であり、治療の失敗や死亡の主な原因でもある。現在、癌患者に対する主な臨床治療法には手術と化学療法(化学療法/薬物療法)がある。ほとんどの腫瘍にとっては、手術療法は初期、中期、限局性腫瘍の根治的治療、および進行腫瘍の緩和治療に適しており、手術療法には化学療法抵抗性や放射線抵抗性はないが、外傷性が大きく、ある部分での手術が困難であり、無症候性転移には効果がないという問題がある。ほとんどの腫瘍にとっては、化学療法は中期および進行腫瘍に適し、全身療法として、化学療法は原発腫瘍、転移腫瘍、および無症候性転移腫瘍に対して治療効果があるが、化学療法薬の選択性は低く、治療効果を達成しながら、さまざまな程度の毒性と副作用がしばしば発生する。また、化学療法を長期間受けている癌患者は、免疫抑制と直接的な発癌により、新たな悪性腫瘍を発症する可能性がある。
【0004】
ポリペプチド薬は、特異性が高く、毒性や副作用が少なく、作用機序が明確で、正常な細胞や組織、臓器に害を及ぼさないという利点を持っているため、癌、心血管疾患、免疫関連疾患、代謝性疾患、感染症の治療において徐々に開発されてきた。現在、世界では80種類以上のポリペプチド薬が発売されており、年間総売上高は200億米ドルを超え、中国のポリペプチド薬の市場売上高は急速な成長の勢いを続けているが、そのほとんどが模倣類ポリペプチド薬となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮癌などの悪性腫瘍の検出と治療におけるマイクロペプチドの研究はまだ空白で、本特許は、バイオインフォマティクス分析と実験的検証によって腫瘍内の新しいマイクロペプチドを発見し、腫瘍の検出と治療におけるその応用について検討して、腫瘍の検出と治療のための新しいソリューションを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の目的は、新規マイクロペプチドHMMWおよびそのアミノ酸配列を提供するためで、マイクロペプチドHMMWは、初めて発見された新しいヒト内因性ポリペプチドとなっている。
【0007】
本発明の第2の目的は、ヌクレオチドを提供するためで、前記ヌクレオチド配列は前記マイクロペプチドHMMWをコードすることで取得できる。
【0008】
本発明の第3の目的は、マイクロペプチドHMMWをコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターを提供するためとなっている。
【0009】
本発明の第4の目的は、マイクロペプチドHMMWまたは前記マイクロペプチドHMMWをコードするヌクレオチドを腫瘍検出用試薬および腫瘍治療薬の調製に適用するためで、具体的には、ヒトの頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮細胞、胃癌、乳癌、腎癌、皮膚癌における検出と治療効果を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】添付図1は、マイクロペプチドHMMWを過剰発現しているpcDNA3.1プラスミドマップとなっている。
図2】添付図2は、western blotで検出されたターゲットバンドの発現状況となっている。
図3】添付図3は、ヒトの頭頸部癌SCC4細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図4】添付図4は、ヒト甲状腺癌SW579細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図5】添付図5は、ヒト肺癌A549細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図6】添付図6は、ヒト食道扁平上皮癌TE13細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図7】添付図7は、ヒト胃癌MGC803細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図8】添付図8は、ヒト乳癌MDA-MB-231細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図9】添付図9は、ヒト腎癌UOK262細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図10】添付図10は、ヒト皮膚癌A431細胞の増殖に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図11】添付図11は、インビボでのヒト頭頸部癌SCC4細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図12】添付図12は、インビボでのヒト甲状腺癌SW579細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図13】添付図13は、インビボでのヒト肺癌A549細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図14】添付図14は、インビボでのヒト食道扁平上皮癌TE13細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図15】添付図15は、インビボでのヒト胃癌MGC803細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図16】添付図16は、インビボでのヒト乳癌MDA-MB-231細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図17】添付図17は、インビボでのヒト腎癌UOK262細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図18】添付図18は、インビボでのヒト皮膚癌A431細胞の腫瘍成長に対するマイクロペプチドHMMWの抑制効果となっている。
図19】添付図19は、qPCR法による癌組織/正常組織におけるマイクロペプチドHMMWの発現レベルの検出となっている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で採用された技術的な解決策は以下の通りとなっている。
【0012】
腫瘍検出用試薬および/または腫瘍治療薬の調製における新規マイクロペプチドHMMWの適用で、前記マイクロペプチドHMMWのアミノ酸配列にはSEQ ID NO. 2の通りの配列を含む。
【0013】
腫瘍検出用試薬または腫瘍治療薬の調製における新規マイクロペプチドHMMWの適用で、前記マイクロペプチドHMMWのアミノ酸配列はSEQ ID NO. 1(マイクロペプチドHMMW I)の通りのアミノ酸配列と少なくとも85%以上の相同性を有する(SEQ ID NO. 2およびSEQ ID NO. 3の通り、対応するマイクロペプチドはHMMW IIおよびHMMW IIIと名付けられている)、または90%の相同性を有する(SEQ ID NO. 4およびSEQ ID NO. 5の通り、対応するマイクロペプチドはHMMW IVおよびHMMW Vと名付けられている)、または95%の相同性を有する(SEQ ID NO. 6およびSEQ ID NO. 7の通り、対応するマイクロペプチドはHMMW VIおよびHMMW VIIと名付けられている)、または98%の相同性を有する(SEQ ID NO. 8およびSEQ ID NO. 9の通り、対応するマイクロペプチドはHMMW VIIIおよびHMMW IXと名付けられている)、そして、SEQ ID NO. 1と相同性を有するこれらの配列は腫瘍細胞の成長、増殖、浸潤または遊走を抑制する同様の機能を保持し、腫瘍検出用試薬または腫瘍治療薬の調製に使用できる。
【0014】
本特許に記載されている「相同性」とは、2つ以上のアミノ酸配列の比較における同一または類似の配列のパーセンテージを指す。相同性パーセントは、MEGALIGNプログラム(Lasergene software package,DNASTAR,Inc.,Madison Wis.)などの電子的方法によって測定でき、MEGALIGNプログラムは、Cluster法などのさまざまな方法に従って2つ以上の配列(Higgins,D.G.およびP.M.Sharp(1988)Gene 73:237-244)を比較できる。Cluster法は、すべてのペア間の距離を調べることにより、各グループの配列をクラスターに配置する。そして、各クラスターをペアまたはグループで割り当てる。配列Aと配列Bなどの2つのアミノ酸配列間の相同性パーセントは、次の式によって計算される。
【0015】
(配列Aと配列B の間で一致する残基の数×100)/(配列Aの残基の数-配列Aのスペーサー残基の数-配列Bのスペーサー残基の数)。
【0016】
腫瘍検出用試薬または腫瘍治療薬の調製における新規マイクロペプチドHMMWの適用、前記新規マイクロペプチドHMMWは、SEQ ID NO. 1の通りのアミノ酸配列となっている。
【0017】
ヌクレオチドはaまたはbまたはcのいずれかである前記ヌクレオチド:
【0018】
(a) SEQ ID NO. 1の通りのアミノ酸配列を含むマイクロペプチドHMMWをコードするヌクレオチド。
【0019】
(b) SEQ ID NO. 1の通りのアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するマイクロペプチドHMMWをコードするヌクレオチド。
【0020】
(c) 後述の態様<3>に記載のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列、具体的には、SEQ ID NO. 10-NO. 18の通りのヌクレオチド配列(Nは、A/T/G/Cのいずれかとなっている)。
【0021】
組換えベクターに前記ヌクレオチドのいずれかを含む前記組換えベクター。
【0022】
腫瘍検出用試薬および/または腫瘍治療薬の調製における前記ヌクレオチドのいずれかの適用。
【0023】
試薬テストキットには前記ヌクレオチド配列のいずれかに対する特異性プライマーペアを含む前記腫瘍検出用試薬テストキット。
【0024】
好ましくは、前記特異性プライマーペアの配列は、SEQ ID NO. 19およびSEQ ID NO. 20の通りとなっている。
【0025】
薬剤は、少なくとも前記マイクロペプチドHMMWのいずれかまたは前記ヌクレオチドのいずれかまたは前記組換えベクター、および薬学的に許容されるベクターを含む前記腫瘍治療用薬剤。
【0026】
好ましくは、前記薬物は、(a1)~(a4)などの機能を有する薬物であり、その中では:
(a1)腫瘍成長を抑制するため。
(a2)腫瘍細胞の増殖を抑制するため。
(a3)腫瘍細胞の浸潤を抑制するため。
(a4)腫瘍細胞の遊走を抑制するため。
【0027】
好ましくは、前記腫瘍は、ヒトの頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮癌、胃癌、乳癌、腎癌、または皮膚癌を含む。
【0028】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は次のとおりとなっている。
【0029】
(1)本発明は、真新しいアミノ酸配列を有するマイクロペプチドHMMWを提供し、データベース(BLAST、UniProt)および文献を検索した結果、マイクロペプチドHMMWと配列相同性を有するタンパク質またはポリペプチドフラグメントは見出されなかった。
【0030】
前記マイクロペプチドHMMWは51のアミノ酸で構成されており、腫瘍の検出と治療に重要な役割を果たし、ヒトの頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮癌、胃癌、乳癌、腎癌、および皮膚癌を含む腫瘍の腫瘍マーカーとして使用でき、すなわち、前記腫瘍におけるHMMWマイクロペプチドは低い発現となっている。
【0031】
(2)本発明は、真新しいアミノ酸配列を有するマイクロペプチドHMMWを提供し、前記マイクロペプチドHMMWは、インビボでヒトの頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞の増殖、遊走および浸潤を有意に抑制することができる。
【0032】
前記マイクロペプチドHMMWは、インビボでヒトの頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞の主要成長を有意に抑制することができる。
【0033】
また、マイクロペプチドHMMWは、悪性腫瘍の検出および治療薬として使用でき、そのマイクロペプチドの治療スペクトルを大幅に拡大し、悪性腫瘍薬の開発に新しいアイデアを提供した。
【実施例
【0034】
具体的な実施形態
次は、本発明について特定の実施例を参照して詳しく説明する。
【0035】
実施例1
本実施例では、HMMWマイクロペプチドのコーディング能力を検出する。
【0036】
インビトロで構築されたFlagタグ付き、cDNA(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO. 10の通りとなっている)を含む過剰発現ベクターはpcDNA-HMMWであり、そのブランクプラスミドpcDNA3.1のマップは図1の通りとなっている。前記プラスミドをlipo3000リポソームトランスフェクション試薬によって293T細胞に導入し、トランスフェクションの48時間後に細胞を収集し、遠心分離後、上清を捨ててペレット細胞を収集して、ペレット細胞をPBSで2回リンスし、遠心分離によって上清を捨ててペレット細胞を収集する。収集されたペレット細胞にRIPA溶解液を加え、氷上で20分間溶解した後、12,000gで10分間遠心分離して上清を収集する。次に、1XSDSローディングバッファーを加え、ピペッティングにより均一に混合させてから、変性のために5分間煮沸する。全タンパク質を10%SDS-PAGEゲルで分離した後、PVDFメンブレンに転写し、5%脱脂粉乳で室温下に2時間ブロックし、Flag一次抗体(abeam)と4℃で一晩インキュベートし、TBSTで3回洗浄する。二次抗体を室温下に1時間インキュベートし、TBSTで3回洗浄する。ECL超高感度化学発光溶液によって現像させ、Tannonイメージングシステムによってターゲットバンドの有無を検出する。
【0037】
結果は図2に示し、Western blot(イムノブロッティング)により、組換えプラスミドのトランスフェクション後にマイクロペプチドHMMWのターゲットバンドが出現したことが検出され、マイクロペプチドHMMWタンパク質がコードする能力を持っていることをさらに示している。
【0038】
実施例2
本実施例では、マイクロペプチドHMMW I-IXが固相合成法によって得られ、得られたマイクロペプチドHMMWI-IXをチェックする。
【0039】
マイクロペプチドHMMWI-IX(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO. 1-9の通りとなっている)をポリペプチド固相合成法により合成し、合成されたマイクロペプチドHMMWを分取HPLCにより分離精製し、マイクロペプチドHMMWの純度を分析用RP-HPLCにより測定する。ポリペプチド固相合成法は、Fmoc-wang-resinまたはFmoc-CTC-resinを出発原料として、保護アミノ酸によりジペプチドから51ペプチドまでを順次結合させ、ペプチド結合が完了後に十分洗浄してから、ペプチドを切断、後処理して血管新生抑制剤の粗生成物を得るものとなっている。粗生成物を溶解し、分取高性能液相により2回精製し、濃縮および凍結乾燥して純粋な生成物を得て、最後に3回目の精製によりマイクロペプチドの精製された製品を得る。この方法は、合成の効率を保証できるだけでなく、製品の純度を向上させることもできる。 詳細は次のとおりとなっている。
【0040】
1. ペプチドの結合(ジペプチドから51ペプチドまでの結合を含む):
適量のFmoc-wang-resinまたはFmoc-CTC-resinを量り、ガラスサンドコア反応カラムに注ぎ、適量のCH2Cl2を加えて樹脂を完全に膨張させる。
【0041】
a. デキャップ:適量のヘキサヒドロピリジン/N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)デキャップ溶液を加え、一定期間反応させた後、デキャップ溶液を完全に吸出し、中間はDMFで1回洗浄してから、再度適量のデキャップ溶液を加えて反応させ、Fmoc保護基を除去する。
【0042】
b. 洗浄:デキャップ溶液を完全に吸出し、DMFで樹脂を洗浄して、副産物を完全に洗い流す。
【0043】
c. 凝縮:ペプチド結合用の保護アミノ酸と活性剤をDMFと凝縮剤に溶解して、よく振とうし、温度を約34℃に制御して、反応器内で完全に反応させる。
【0044】
d. 洗浄:反応溶液を完全に吸出し、DMFで樹脂を完全に洗浄して、副産物を洗い流す。
【0045】
2. ペプチドの切断:
完全に吸出された樹脂を丸底フラスコに入れ、切断溶液で完全に溶解された36ペプチド中間体を加え、サンドコアファンネルにより樹脂をポリペプチドと分離させ、前記切断溶液の成分と各成分の体積組成は、トリフルオロ酢酸:フェノール:水:チオアニソール:EDT = 90:3:3:2:2となっている。
【0046】
3. 後処理:
最初に無水エーテルを切断溶液に加えてポリペプチドを分離させた後、遠心分離により、上清を捨てて、またポリペプチドを無水エーテルで洗浄し、完全に吸出してからポリペプチドの粗生成物を得る。
【0047】
4. 精製:
a. 溶解:粗生成物を量って5~20g/Lの溶液を調製し、孔径0.45μmの混合フィルターメンブレンでろ過する。
【0048】
調製:セミ分取高速液体クロマトグラフィーにより1回精製、2回精製、および3回精製を行い、精製されたポリペプチドの適格な製品を得る、移動相:Aはアセトニトリル、Bは0.1%TFA水溶液となっている。
【0049】
1回精製:平衡化分取カラムを10%~90%のアセトニトリルと20%~80%の緩衝液により、50mL/min~100mL/minの流速で、10分間すすぐ。溶解しろ過した粗生成物は輸液ポンプでサンプルをロードする。
【0050】
【表1】

【0051】
UV波長220nmの吸収値が200mVを超える溶液を収集し、95%を超える純度の分を検出して合わせてピークトップとし、二次分離および精製に用意する。
【0052】
2回精製:1回精製で得られたピークトップを回転蒸発させて有機溶媒を除去した後、5~95%のアセトニトリルと15~85%の緩衝液により、50~100 mL/minの流速で、輸液ポンプでサンプルをロードする。
【0053】
【表2】

【0054】
UV波長220nmの吸収値が200mVを超える溶液を収集し、98%を超える純度の分を検出して適格品とする。
【0055】
b. 濃縮、ろ過、凍結乾燥:37℃のロータリーエバポレーターで適格な溶液を減圧濃縮し、残留した溶剤と注射用の水を除去する。最後に、0.22μmのフィルターメンブレンで濾過し、濾液を凍結乾燥トレイに入れ、凍結乾燥機で凍結乾燥することにより純粋な製品を得る。
【0056】
3回精製:2回精製で得られた98%を超える純度の適格サンプルは3回精製を行い、5~95%のアセトニトリルと10~90%の緩衝液により、50~100mL/minの流速で、ポリペプチドの精製された製品を調製する。
【0057】
【表3】

【0058】
UV波長220nmの吸収値が200mVを超える溶液を収集し、検出により組み合わせる99.5%を超えるサンプルが、精製された適格な製品となる。
【0059】
5. 純度検出
凍結乾燥後の精製された製品を収集し、ポリペプチドの純度を分析用RP-HPLCにより検出する。分析条件は、移動相:ACN(+0.1%TFA)、H2O(+0.1%TFA);アセトニトリル線形勾配:10%-100%;流速:1mL/min;運転時間:20 min;サンプルローディングボリューム: 20μL;検出波長:220nmとなっている。
【0060】
【表4】

【0061】
合成されたマイクロペプチドが逆相液体クロマトグラフィー分析によって純度を鑑定した結果、調製された9つのマイクロペプチドHMMWの純度はすべて95%を超えており、設計要件を満たしていることが分かった。
【0062】
本実験では、マイクロペプチドHMMW I-IXが固相合成法により成功に合成され、この方法は、再現性が高く、操作性が高く、汚染が少ない方法となっている。実験では2種類の樹脂(wang resin或いはCTC resin)によりポリペプチドを合成することができる。実験用のwang resinは、他の樹脂に比べて比較的安定しており、副反応が少なく、粗生成物のピーク形状が良く、精製の相対収率が高いため、コストが比較的低くなっている。実験用のCTC resinの反応は温度の影響を受けにくく、反応速度が速い。また、逆相高速液体クロマトグラフィによりポリペプチドを精製する。アイソクラティック溶出と比較して、勾配溶出の方は分離効果が高く、分離中の保持時間は適切で、生産効率は高く、純度は高い。
【0063】
実施例3
本実施例では、ヒト腫瘍細胞の増殖能力に対するマイクロペプチドHMMWI-IXの影響を検出する。
【0064】
ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞を37℃、5%CO2のインキュベート内で90%の密度まで培養した際にトリプシンによって消化収集し、細胞を培地に再懸濁させ、顕微鏡でカウントし、細胞濃度を3.0×104細胞/mLに調整し、細胞懸濁液を96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ接種してから、37℃、5%CO2のインキュベーターで一晩中培養し続ける。細胞が壁に完全に貼り付けた後、異なる用量を投与したマイクロペプチドHMMW I-IXを投与群とし、タキソール(Taxol)を陽性対照群とし、薬物を含まない培地をブランク対照群として、培地によりそれぞれ所定の濃度に希釈する。各希釈液をそれぞれ96ウェルプレートに加え、ウェルあたり100μL、37℃、5%CO2のインキュベーター内で48時間培養する。20μLの5mg/mL MTTを96ウェルプレートの各ウェルに加え、4時間培養し続ける。培地を吸引し、100μLのDMSOを各ウェルに加えて溶解する。マイクロプレートリーダーにより検出波長570nm、参照波長630nmでの吸光度を測定し、成長抑制率(proliferation inhibition, PI)を算出し、式はPI(%)= 1‐投与群/陰性群となっている。実験は独立して3回繰り返され、実験によって得られた結果はmean±SDで示され、統計的T検定を実行する、*P<0.05は有意差、**P<0.01は非常に有意差となっている。
【0065】
【表5-1】
【0066】
【表5-2】

【0067】
結果は図3-10に示し、陰性対照群と比較して、1~32μMの用量で、マイクロペプチドHMMW-Iはヒト頭頸部癌SCC4細胞(図3)、甲状腺癌SW579細胞(図4)、肺癌A549細胞(図5)、食道扁平上皮癌TE13細胞(図6)、胃癌MGC803細胞(図7)、乳癌MDA-MB-231細胞(図8)、腎癌UOK262細胞(図9)、皮膚癌A431(図10)の増殖を異なる程度で有意に抑制でき、用量依存的な関係が示されている。また、結果は表5に示し、陰性対照群と比較して、1~32μMの用量で、マイクロペプチドHMMW I-IXとも、ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞の増殖を有意に抑制でき、用量依存的な関係が示されている。元の配列HMMW Iと85%以上の相同性を持つポリペプチドがすべて腫瘍細胞の増殖を抑制する効果があることを示しており、マイクロペプチドHMMWI-IXを抗腫瘍薬の候補と見なすことができる。
【0068】
実施例4
ヒト腫瘍細胞の遊走能力に対するマイクロペプチドHMMW I-IXの影響
ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞をtranswellチャンバーに接種し、ウェルあたり100μL、また異なる用量のマイクロペプチドHMMWI-IXを各チャンバーに加える。次に、10%FBSを含む0.6 mLの完全培地をtranswellの下部チャンバーに加えて細胞の遊走を刺激し、5%CO2、37℃で24時間培養する。ウェル内の培地を捨て、90%アルコールで室温下に30分間固定させ、0.1%クリスタルバイオレットで室温下に10分間染色し、きれいな水ですすぎ、上層の遊走していない細胞を綿棒でそっと拭き取り、顕微鏡で観察し、4つの視野を選択して写真を撮りカウントする。次の式に従って、細胞の遊走抑制率(migration inhibition rate,MIR)を算出する。
【0069】
【化1】
【0070】
ここで、Ntestは試験群(表の1、4、および14μMの用量の各群)の細胞遊走数であり、Ncontrolはブランク対照群(表の0μMの用量の各群)の細胞遊走数となっている。
【0071】
実験は独立して3回繰り返され、実験によって得られた結果はmean±SDで計算され、統計的t検定が実行される、ここで実験は独立して3回繰り返されるというのは、表内の任意種類の細胞の各用量が実験を3回繰り返した後、前記計算式によって細胞遊走数(Mean±SD)を算出し得られることを指す。P値で統計的に有意な差を表し、結果の統計的有意性は結果の真の程度(全体が代表できる)の推定方法となる、*P<0.05は有意差、**P<0.01は非常に有意差となっている。
【0072】
【表6】

【0073】
結果は表6に示し、陰性対照群と比較して、1~16μMの用量で、マイクロペプチドHMMW I-IXとも、ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431の遊走を異なる程度で有意に抑制でき、用量依存的な関係が示されている。元の配列HMMW Iと85%以上の相同性を持つポリペプチドがすべて腫瘍細胞の遊走を抑制する効果があり、悪性腫瘍細胞の遊走能力を抑制するための治療薬として使用できることを示している。
【0074】
実施例5
ヒト腫瘍細胞の浸潤能力に対するマイクロペプチドHMMW I-IXの影響。
10 mg/mL Matrigelを培地で1:3に希釈し、transwellチャンバーメンブレンに塗布し、室温下に風乾させる。対数成長期まで培養されたヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞をトリプシンにより消化、収集し、PBSで2回洗浄してから、ブランク培地で再懸濁させる。細胞濃度を1×105細胞/ mLに調整する。細胞をtranswellチャンバーに1ウェルあたり100μLで接種しながら、異なる用量のマイクロペプチドHMMW I-IXを各チャンバーに加える。transwellの下部チャンバーに、10%FBSを含む0.6 mLの完全培地を加えて細胞の浸潤を刺激し、5%CO2、37℃で24時間培養する。ウェル内の培地を捨て、90%アルコールで室温下に30分間固定させ、0.1%クリスタルバイオレットで室温下に10分間染色し、きれいな水ですすぎ、上層の浸潤していない細胞を綿棒でそっと拭き取り、顕微鏡で観察し、4つの視野を選択して写真を撮りカウントする。次の式に従って、浸潤抑制率(Invasion inhibition rate,IIR)を算出する。
【0075】
【化2】
【0076】
ここで、Ntestは試験群(表の1、4、および16μMの用量の各群)の細胞浸潤数であり、Ncontrolはブランク対照群(表の0μMの用量の各群)の細胞浸潤数となっている。実験は独立して3回繰り返され、実験によって得られた結果はmean±SDで計算され、統計的t検定が実行される。P値で統計的に有意な差を表し、結果の統計的有意性は結果の真の程度(全体が代表できる)の推定方法となる、*P<0.05は有意差、**P<0.01は非常に有意差となっている。
【0077】
【表7】

【0078】
結果は表7に示し、マイクロペプチドHMMW I-IXとも、ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞の遊走を異なる程度で有意に抑制でき、用量依存的な関係が示されている。元の配列HMMW Iと85%以上の相同性を持つポリペプチドがすべて腫瘍細胞の浸潤を抑制する効果があり、悪性腫瘍細胞の浸潤能力を抑制するための治療薬として使用できるることを示している。
【0079】
実施例6
インビボでのヒト腫瘍細胞の成長に対するマイクロペプチドHMMWの影響。
(1) ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎臓癌UOK262細胞を大量に培養し、0.25%トリプシン溶液によって消化し、消化終了後に、細胞懸濁液を1000rpmで5分間遠心分離し、細胞を無血清DMEM培地に再懸濁させてからカウントし、細胞濃度を5×107細胞/mlに調整する。
【0080】
(2) 各ヌードマウス(4~6週齢、体重14~16 gの雌ネズミを購入し、SPFクラスの動物飼育室で1週間適応飼育する)の左脇の下に対応する群別の細胞懸濁液を100μl接種し、細胞の注射量は5×106細胞となっている。
【0081】
(3) 接種後、ヌードマウスの接種部位での腫瘍成長を注意深く観察し、接種後の7日目に、接種部位に白い結節が現れ、触ると皮下を移動し、腫瘍組織とともに成長でき、接種部位に徐々に硬い腫瘍塊が形成され、約14日間で腫瘍組織の平均体積が100 mm3に達し、BALB/cヌードマウスをランダムに3群(生理食塩水群はブランク対照群、10 mg/kgのマイクロペプチドHMMW投与量は低用量群、15 mg/kgのマイクロペプチドHMMW投与量は高用量群とする)に分け、各群には6匹で、投与開始時の動物の体重は16~18gとなっている。
【0082】
(4) 移植された腫瘍の体積は、2日ごとに測定および記録し、腫瘍体積(Tumor volume,TV)の計算式は次のとおりとなっている。
腫瘍体積= 0.5×a×b ^ 2
ここで、aは移植腫瘍の長さ(mm)、bは移植腫瘍の幅(mm)となっている。
【0083】
結果は表11~18に示し、生理食塩水対照群と比較して、マイクロペプチドHMMWは、ヒト頭頸部癌SCC4細胞(図11)、甲状腺癌SW579細胞(図12)、肺癌A549細胞(図13)、食道扁平上皮癌TE13細胞(図14)、胃癌MGC803細胞(図15)、乳癌MDA-MB-231細胞(図16)、腎癌UOK262細胞(図17) 、皮膚癌A431(図18)細胞のインビボでの腫瘍形成能力を異なる程度で有意に抑制でき、用量依存的な関係が示され、マイクロペプチドHMMWは新規の抗腫瘍ポリペプチドと見なすことができる。
【0084】
実施例7
インビボでのヒト腫瘍細胞の成長に対するマイクロペプチドHMMW I-IXの影響。
(1) ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎臓癌UOK262細胞を大量に培養し、0.25%トリプシン溶液によって消化し、消化終了後に、細胞懸濁液を1000rpmで5分間遠心分離し、細胞を無血清DMEM培地に再懸濁させてからカウントし、細胞濃度を5×107細胞/mlに調整する。
【0085】
(2) 各ヌードマウス(4~6週齢、体重14~16 gの雌ネズミを購入し、SPFクラスの動物飼育室で1週間適応飼育する)の左脇の下に対応する群別の細胞懸濁液を100μl接種し、細胞の注射量は5×106細胞となっている。
【0086】
(3) 接種後、ヌードマウスの接種部位での腫瘍成長を注意深く観察し、接種後の7日目に、接種部位に白い結節が現れ、触ると皮下を移動し、腫瘍組織とともに成長でき、接種部位に徐々に硬い腫瘍塊が形成され、約14日間で腫瘍組織の平均体積が100 mm3に達し、BALB/cヌードマウスをランダムに10群(生理食塩水群はブランク対照群、マイクロペプチドHMMW I-IXはそれぞれ1群、投与量はいずれも15 mg/kgとなる)に分け、各群には6匹で、投与開始時の動物の体重は16~18gとなっている。
【0087】
(4) 移植された腫瘍の体積は、2日ごとに測定および記録し、腫瘍体積(Tumor volume,TV)の計算式は次のとおりとなっている。
腫瘍体積= 0.5×a×b ^ 2
ここで、aは移植腫瘍の長さ(mm)、bは移植腫瘍の幅(mm)となっている。
【0088】
【表8】

【0089】
結果は表8に示し、生理食塩水対照群と比較して、マイクロペプチドHMMW I-IXは、ヒト頭頸部癌SCC4細胞、甲状腺癌SW579細胞、肺癌A549細胞、食道扁平上皮癌TE13細胞、胃癌MGC803細胞、乳癌MDA-MB-231細胞、腎癌UOK262細胞、皮膚癌A431細胞のインビボでの腫瘍形成能力を有意に抑制でき、用量依存的な関係が示されている。元の配列HMMW Iと85%以上の相同性を持つポリペプチドがすべて腫瘍細胞の成長を抑制する効果があるため、マイクロペプチドHMMW I-IXを新規の抗腫瘍ポリペプチドと見なすことができる。
【0090】
実施例8
腫瘍患者および正常な傍癌性組織におけるHMMWの発現。
TCGA標準法により頭頸部癌、脳神経膠腫、甲状腺癌、食道扁平上皮癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、腎癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、結腸直腸癌、膵臓癌、骨肉腫、皮膚癌を含む16種類の腫瘍の癌組織と正常組織のRNA-seqシーケンスファイルと臨床情報をダウンロードし、マイクロペプチドHMMWの差次的発現(判断基準:(1) |癌/傍癌の発現量|>2、(2) P<0.05)を分析する。
【0091】
【表9】

【0092】
表9に示すように、正常組織と比較して、ヒト頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮癌、胃癌、乳癌、腎癌、皮膚癌の8つの腫瘍組織におけるマイクロペプチドHMMWの発現レベルは有意に減少されている。マイクロペプチドHMMWの発現が様々な腫瘍の発生と有意に負の相関関係にあることを示した。
【0093】
実施例9
頭頸部癌の臨床患者および正常な傍癌性組織におけるHMMWの発現。
(1) 標本の収集
患者のインフォームドコンセントを得て、手術中に頭頸部癌および傍癌性組織の標本を収集し、生理食塩水で洗浄した後、将来の使用のために液体窒素または-80℃の冷蔵庫に保管する。
【0094】
(2) プライマー設計
【0095】
マイクロペプチドHMMWに対応するヌクレオチド配列に従ってPrimer Premier5.0でプライマーを設計し、配列は次のとおりとなっている。
上流プライマー(SEQ ID NO. 3に示される配列)
下流プライマー(SEQ ID NO. 4に示される配列)
【0096】
(3) 頭頸部癌患者および正常な傍癌性組織におけるHMMWの発現をリアルタイム定量PCRによって検出する。
【0097】
life社のTrizol説明書に従って、収集されたサンプルのトータルRNAを抽出してから、NanoDrop ND-1000核酸定量装置によって抽出されたRNAの純度と濃度を定量化し、アガロースの品質チェックにより抽出されたRNAの完全性を保証する。TaKaRa試薬テストキットPrimeScriptTM RT reagent Kit with gDNA Eraser(Perfect Real Time)によって、抽出されたトータルRNAを逆転写してcDNAを合成する。TaKaRa試薬テストキットSYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM II(TliRNaseH Plus)によってqPCR反応を行う。反応系は下表の通りとなっている。
【0098】
【表10】

【0099】
上記成分を均一に混合した後、次の手順に従って実行する:95℃で30s前変性、40サイクル、95℃で5s、60℃で30s。反応の特異性は融解曲線に従って判断され、HMMWの相対的発現量は2-△△Ct法により計算する。結果は図19に示し、約75%の頭頸部癌サンプルでは、HMMWの発現レベルは正常な傍癌性組織よりも有意に減少されている。
本発明は以下の態様を含む。
<1>
マイクロペプチドHMMWのアミノ酸配列は、SEQ ID NO. 1の通りのアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列となっていることを特徴とする腫瘍検出試薬または腫瘍治療薬の調製における前記新規マイクロペプチドHMMWの適用。
<2>
マイクロペプチドHMMWのアミノ酸配列がSEQ ID NO. 1の通りのアミノ酸配列を含むことを特徴とする<1>に記載の腫瘍検出試薬または腫瘍治療薬の調製における前記新規マイクロペプチドHMMWの適用。
<3>
新規マイクロペプチドHMMWがSEQ ID NO. 1~NO. 9の通りのアミノ酸配列のいずれか1つとなっていることを特徴とする<1>に記載の腫瘍検出試薬または腫瘍治療薬の調製における前記新規マイクロペプチドHMMWの適用。
<4>
ヌクレオチドは(a)または(b)または(c)のいずれか1つとなっていることを特徴とする前記ヌクレオチド。
(a) SEQ ID NO. 2を含む前記アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
(b) <2>に記載のマイクロペプチドHMMWをコードするヌクレオチド。
(c) <3>に記載のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列、具体的にはSEQ ID NO.10~NO. 18の通りのヌクレオチド配列で、NはA/T/G/Cのいずれかとなっている。
<5>
組換えベクターは<4>に記載のヌクレオチドを含むことを特徴とする前記組換えベクター。
<6>
腫瘍検出試薬または腫瘍治療薬の調製における、<4>に記載のヌクレオチドまたは<5>に記載の組換えベクターの適用。
<7>
試薬テストキットは、<4>に記載のヌクレオチド配列によって設計された特異性プライマーペアを含むことを特徴とする前記腫瘍検出用試薬テストキット。
<8>
特異性プライマーペアがSEQ ID NO. 19およびSEQ ID NO. 20の通りとなっていることを特徴とする<7>に記載の前記腫瘍検出用試薬テストキット。
<9>
腫瘍が、ヒト頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、食道扁平上皮癌、胃癌、乳癌、腎癌、および皮膚癌を含むことを特徴とする<7>に記載の前記腫瘍検出用試薬テストキット。
<10>
医薬組成物は、少なくともSEQ ID NO. 1のアミノ酸配列を含むマイクロペプチドHMMW、または<4>に記載のヌクレオチド、または<5>に記載の組換えベクターを含むことを特徴とする腫瘍治療のための前記医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図19
【配列表】
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