(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ストーブおよびストーブを制御するための制御システム
(51)【国際特許分類】
F23N 3/00 20060101AFI20231101BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20231101BHJP
F23B 60/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F23N3/00
F23N1/02 J
F23B60/00
(21)【出願番号】P 2022524120
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 GB2020052506
(87)【国際公開番号】W WO2021079086
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522164123
【氏名又は名称】エー.ジェイ. ウェルズ アンド サンズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】A.J. Wells & Sons Limited
【住所又は居所原語表記】Bishops Way, Newport, Isle of Wight PO30 5WS, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ, ポール
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/145854(WO,A1)
【文献】特開2014-234991(JP,A)
【文献】特開2006-207865(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03236154(EP,A1)
【文献】特開平06-034127(JP,A)
【文献】特開2005-257121(JP,A)
【文献】実開平07-012704(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0068174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 3/00
F23N 1/02
F23B 60/00
F23N 5/08
F23N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の空気供給経路によって空気が供給される燃焼室を有するストーブであって、
前記1つ以上の空気供給経路を通る空気流を制御するための1つ以上のバルブと、
前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調整するための前記1つ以上のバルブを制御するためのコントローラーと、
前記燃焼室に関連する空気温度を判別するための温度センサーと、
前記燃焼室内の燃料の燃焼強度を判別するための火炎センサーと、を備え、
前記コントローラーは、
燃焼のために最適な範囲内で化学量論的均衡を維持するために、センシングされた前記燃焼強度および前記燃焼室に関連する前記空気温度と、ストーブドアの開閉イベントによって燃焼段階が始まっていると判別されたことと、に基づいて、前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調節するように構成されていることを特徴とするストーブ。
【請求項2】
前記火炎センサーは、赤外線センサーである請求項1に記載のストーブ。
【請求項3】
前記火炎センサーは、前記燃焼室の内部から前記燃焼室の外部の電子センサー部品に放射を伝達するための伝達部材を含む請求項1または2に記載のストーブ。
【請求項4】
前記伝達部材は、ガラスロッドを含む請求項3に記載のストーブ。
【請求項5】
前記ガラスロッドは、前記燃焼室の内部に位置する耐火レンガに取り付けられている請求項4に記載のストーブ。
【請求項6】
前記温度センサーは、熱電温度計である請求項1ないし5のいずれかに記載のストーブ。
【請求項7】
前記1つ以上のバルブは、前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調整するよう動作可能な1つ以上のモーターを備えている請求項1ないし6のいずれかに記載のストーブ。
【請求項8】
前記1つ以上の空気供給経路のそれぞれは、前記1つ以上の空気供給経路のそれぞれを通る前記空気流を調節するためのバルブを備えている請求項1ないし7のいずれかに記載のストーブ。
【請求項9】
前記1つ以上の空気供給経路に前記空気を供給するための1つ以上の空気流入口をさらに備えている請求項1ないし8のいずれかに記載のストーブ。
【請求項10】
前記ストーブは、ストーブドアがいつ開閉されたかを検出するためのドアスイッチをさらに備え、
前記コントローラーは、前記ドアスイッチからの入力に基づいて、前記1つ以上のバルブを制御する請求項1ないし
9のいずれかに記載のストーブ。
【請求項11】
前記ストーブは、まきストーブまたは多種燃料ストーブである請求項1ないし
10のいずれかに記載のストーブ。
【請求項12】
燃焼室を有するストーブのためのコントローラーであって、
前記燃焼室に空気を供給する1つ以上の空気供給経路を通る空気流を調整するための1つ以上のバルブを制御するための1つ以上の出力部と、
前記燃焼室に関連する空気温度を示す信号を受信するための温度センサー入力部と、
前記燃焼室内の燃料の燃焼強度を示す信号を受信するための火炎センサー入力部と、を備え、
前記コントローラーは、
燃焼のために最適な範囲内で化学量論的均衡を維持するために、センシングされた前記燃焼強度および前記燃焼室に関連する前記空気温度と、ストーブドアの開閉イベントによって燃焼段階が始まっていると判別されたことと、に基づいて、前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調節するように構成されていることを特徴とするコントローラー。
【請求項13】
燃焼室を有するストーブを制御する方法であって、
前記燃焼室内の空気温度を示す温度センサー入力を受信する工程と、
前記燃焼室内の燃料の燃焼強度を示す火炎センサー入力を受信する工程と、
燃焼のために最適な範囲内で化学量論的均衡を維持するように前記空気流を調整するために、センシングされた前記燃焼強度および前記燃料室内の前記空気温度
と、ストーブドアの開閉イベントによって燃焼段階が始まっていると判別されたことと、に基づいて、前記燃焼室に空気を供給する1つ以上の空気供給経路に設けられた1つ以上のバルブを制御する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーブおよびストーブを制御するための制御システムに関する。特に、本発明は、まきストーブまたは多種燃料家庭用ストーブ(wood burning or multi-fuel domestic stoves)および該ストーブ中に組み込まれた、または、該ストーブに組み込まれる制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
まきストーブおよび多種燃料ストーブは、住宅の暖房方法として、依然として人気がある。しかしながら、木材燃料(まき)および天然燃料の燃焼は、一酸化炭素、煙粒子、NO、NO2、および有機ガス化合物のような、いくつかの望ましくない副生成物の生成をもたらす。このような理由によって、燃焼効率を最大化し、このような望ましくない副生成物の生成を減少させるよう、長年にわたって、ストーブ設計が改良されてきた。
【0003】
燃焼効率を改善するための多くの戦略は、ストーブの燃焼室の複数の異なる領域への酸素の配送を制御することに焦点を当ててきた。これに関連して、ストーブの一次空気流(primary airflow)が、燃焼室の基部に位置する複数の流入口を通して、配送される。これにより、火床(firebed)を通して空気が供給され、激しい主燃焼段階(intense main combustion stage)を可能にする。それにもかかわらず、ある割合の未燃焼粒子は、煙として、加熱された燃焼ガス中に浮遊したままとなる。これに対処するための1つの方法は、ストーブからの排気がなされる前にあらゆる未燃焼粒子を点火するために、暖められた空気流として、二次空気流(secondary airflow)を配送することである。この二次空気流は、ストーブのガラス窓をきれいに保つための空気洗浄として、ストーブのドアの内面上に向けることもできる。いくつかのストーブ設計では、燃焼室の後部から火床の上側の上部領域に三次空気流(tertiary airflow)を配送するために、さらなる空気供給が提供される。これは、一般に、燃焼室の後部の耐火レンガに、複数の開口を形成することによって達成される。これによって追加的に搬送される酸素は、燃焼室の頂部に集められた加熱された燃焼ガス中の煙粒子の燃焼を促進する。
【0004】
しかしながら、上述の設計にもかかわらず、燃焼効率を向上させ、発生する一酸化炭素、煙粒子、NO、NO2、および有機ガス化合物の量を減少させるための、さらなる改良が依然として必要とされている。したがって、本発明は、この課題に対する解決策を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、1つ以上の空気供給経路によって空気が供給される燃焼室を有するストーブであって、前記1つ以上の空気供給経路を通る空気流を制御するための1つ以上のバルブと、前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調整するための前記1つ以上のバルブを制御するためのコントローラーと、前記燃焼室に関連する空気温度を判別するための温度センサーと、前記燃焼室内の燃料の燃焼強度を判別するための火炎センサーと、を備え、前記コントローラーは、前記火炎センサーおよび前記温度センサーからの入力に基づいて、前記1つ以上のバルブを制御することを特徴とするストーブが提供される。
【0006】
このような構成により、本発明は、燃焼プロセスで供給される空気流を制御し、燃焼プロセス全体にわたって燃焼効率を最大にし、さらに、CO、NO、NO2、OGC、および煙粒子の排出を最小にするために、化学量論的均衡(stoichiometric balance:化学反応における量的関係についての均衡)を最適化することができる。重要なことに、火炎センサーおよび温度センサーからのフィードバックを使用することにより、コントローラーは、燃焼プロセスの複数の異なる段階における空気流の要求(必要量)を把握し、考慮することができる。これは、ピーク段階における燃焼速度を制限するために空気供給を調節する一方、燃焼サイクル全体における、空気供給全体、または、複数の異なる空気供給のバランスを最適化することができない従来の制御システムと対照的である。
【0007】
好ましくは、前記火炎センサーは、赤外線センサーである。
【0008】
好ましくは、前記火炎センサーは、前記燃焼室の内部から前記燃焼室の外部の電子センサー部品に放射(radiation)を伝達するための伝達部材を含む。このような構成により、伝達部材は、火炎センサーを燃焼室から分離することを可能にし、これによって、火炎センサーを損傷する可能性のある燃焼熱から、火炎センサーを保護する。
【0009】
好ましくは、前記伝達部材は、ガラスロッドを含む。このようにして、伝達部材は、比較的安価でありながら、高い耐熱性を達成することができる。
【0010】
好ましくは、前記ガラスロッドは、前記燃焼室の内部に位置する耐火レンガに取り付けられている。このような構成により、ガラスロッドは、赤外放射(赤外線)を受けるための燃焼室内に容易に固定され得る。
【0011】
好ましくは、前記温度センサーは、熱電温度計(thermocouple)である。このような構成により、燃焼室内の温度を示す信号を、安価に得ることができる。
【0012】
好ましくは、前記1つ以上のバルブは、前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調整するよう動作可能な1つ以上のモーターを備えている。
【0013】
好ましくは、前記1つ以上の空気供給経路のそれぞれは、前記1つ以上の空気供給経路のそれぞれを通る前記空気流を調節するためのバルブを備えている。このような構成により、空気供給経路のそれぞれを、独立して調整することができる。
【0014】
好ましくは、前記ストーブは、前記1つ以上の空気供給経路に前記空気を供給するための1つ以上の空気流入口をさらに備えている。
【0015】
好ましくは、前記コントローラーは、燃焼のために最適な範囲内で化学量論的均衡を維持するために、センシングされた前記燃焼強度および前記燃焼室に関連する前記空気温度に基づいて、前記1つ以上の空気供給経路を通る前記空気流を調節するためのロジックを含んでいる。
【0016】
好ましくは、前記ストーブは、ストーブドアがいつ開閉されたかを検出するためのドアスイッチをさらに備え、さらに、前記コントローラーは、前記ドアスイッチからの入力に基づいて、前記1つ以上のバルブを制御する。このような構成により、新たな燃料が充填されたことを示すトリガーとして、ドアの開閉を使用することができる。好ましい実施形態では、ストーブドアの状態が閉状態から開状態に変化すると、コントローラーは、キャリブレーションチェックを実行して、1つ以上のバルブが適切に作動し、1つ以上のバルブの開状態または閉状態が、コントローラーのロジックによって特定される状態に対応していることを確実にすることができる。その後、ストーブドアが閉状態にされると、コントローラーは、「点火」段階に進み、そこで、燃料の点火を促進するように1つ以上のバルブが制御される。その後、コントローラーは、「早期燃焼」段階、続いて「定常状態」および「炭化(Char)」段階において、必要な炎強度および温度に到達したことを確認することができる。実施形態において、「閉ドア(door closed)」トリガー信号が受信されると、コントローラーは、「点火」ステージを開始することができ、これにより、その後に、プログラムサイクルを再び開始することができる。コントローラーは、炎強度および温度入力によって点火が成功しないと判別された場合、他の段階に切り替えることができる。重要なのは、定常状態および炭化段階においては、(特に炭化段階では)空気の要求(必要量)が低くなるため、効率を上げるために1つ以上のバルブが、より多く閉じられ得ることである。しかしながら、新たな燃料が充填されたときには、ドアスイッチ入力を提供することにより、コントローラーが、1つ以上のバルブを作動させて、炭化段階から炎を復活(revive)させることが可能となる。そのため、燃料を迅速に点火し、新たな燃料が煙を発生させないようにするために、1つ以上のバルブを開状態として、十分な空気を配送することができる。
【0017】
好ましくは、さらに、前記ロジックは、センシングされた前記ストーブドアの開閉イベントによって燃焼段階が始まっていると判別されると、燃焼のために最適な範囲内で前記化学量論的均衡を維持する。
【0018】
好ましくは、前記ストーブは、まきストーブまたは多種燃料ストーブである。
【0019】
実施形態では、必要とされる加熱レベルを判別するために、室温またはボイラー温度を判別するための温度センサーがあってもよい。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、燃焼室を有するストーブのためのコントローラーであって、前記燃焼室に空気を供給する1つ以上の空気供給経路を通る空気流を調整するための1つ以上のバルブを制御するための1つ以上の出力部と、前記燃焼室に関連する空気温度を示す信号を受信するための温度センサー入力部と、前記燃焼室内の燃料の燃焼強度を示す信号を受信するための火炎センサー入力部と、を備え、前記コントローラーは、前記火炎センサーおよび前記温度センサーからの入力に基づいて、前記1つ以上のバルブを制御することを特徴とするコントローラーが提供される。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、燃焼室を有するストーブを制御する方法であって、前記燃焼室内の空気温度を示す温度センサー入力を受信する工程と、前記燃焼室内の燃料の燃焼強度を示す火炎センサー入力を受信する工程と、燃焼のために最適な範囲内で化学量論的均衡を維持するように前記空気流を調整するために、センシングされた前記燃焼強度および前記燃料室内の前記空気温度に基づいて、前記燃焼室に空気を供給する1つ以上の空気供給経路に設けられた1つ以上のバルブを制御する工程と、を含むことを特徴とする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
次に、本発明の例示的な実施形態を、以下の添付の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るストーブの正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および
図2は、本発明の実施形態に係るストーブ1の正面図および斜視図を示している。ストーブ1は、ドア8によって囲まれ、燃料貯蔵部19の上方において支持された燃焼室2を含んでいる。使用時には、ユーザーは、燃料貯蔵部19から木材(まき)のような燃料を取り出し、燃料を燃焼させ熱を発生させるための燃焼室2内へ、取り出した燃料を入れる。
【0024】
燃焼室2は、ストーブ1の後部に配置された耐火レンガ6を含んでいる。耐火レンガ6の前部は、燃焼室2に対向しており、燃焼室2の頂部側において、耐火レンガ6をその幅方向に横切るよう直線状に配列して設けられた複数の三次空気流入口7を有している。
【0025】
ストーブ1の外部の右側には、マイクロコントローラー5が存在している。以下の説明においてさらに詳述されるように、この実施形態では、マイクロコントローラー5は、ストーブ1の動作を制御するためのディスプレイおよび複数の入力ボタンを含んでいる。簡略化された実施形態では、マイクロコントローラー5は、ユーザー入力のない基本論理回路(basic logic circuit)として提供されていてもよい。他の実施形態では、マイクロコントローラー5は、例えば、ユーザーのスマートフォンまたは遠隔制御によって、遠隔制御可能なプログラム可能ロジックを有するプロセッサーとして提供されていてもよい。他の実施形態では、マイクロコントローラー5は、構造体内において燃焼室2の下方に存在する低温領域に配置されていてもよい。
【0026】
マイクロコントローラー5は、燃焼室2内に接続された伝達ロッド(transmission rod)3および熱電温度計(thermocouple)4から、センサー入力を受信する。
【0027】
熱電温度計4は、マイクロコントローラー5が、燃焼室2に関連する空気温度を判別できるようにするための温度センサーを提供する。このような構成により、温度センサーは、燃焼室2内または燃焼室2付近の空気温度を示すフィードバック信号を提供する。
【0028】
伝達ロッド3は、ガラスで形成され、燃焼室2内から放射される赤外放射(赤外線)を、伝達ロッド3の先端に接続されており、さらに、マイクロコントローラー5と共に収容されている赤外放射センサー部品(infrared radiation sensor component)に伝達するよう機能する。このような構成により、伝達ロッド3は、センサーの損傷を防止するのに十分なだけ、赤外放射センサー(赤外線センサー)を低温に保つことができる。
【0029】
伝達ロッド5および赤外放射センサー(赤外線センサー)は、マイクロコントローラー5のための火炎センサー入力(flame sensor input)を提供する。すなわち、検出される赤外放射のレベルは、燃焼室2内の燃料の燃焼強度(burn intensity)を示す。その結果、赤外放射センサー(赤外線センサー)からの出力は、粒子状物質の放出率を示す測定基準(metric)も提供する。
【0030】
ストーブドア8は、ストーブドア8がいつ開閉されたかを特定する信号を生成するために、マイクロコントローラー5に接続されたドアスイッチ(図示せず)をさらに含んでいる。
【0031】
図1および
図2に示されるストーブは、
図3および
図4を参照してさらに詳述される。
図3は、部分切欠正面図を示している。
図4は、断面側面図を示している。
【0032】
図4に最もよく示されているように、燃焼室2は、ストーブ1の内側の空洞として設けられている。燃焼室2は、後部に設けられた後部耐火レンガ6と、前部に設けられたストーブドア8とを有している。燃焼室2の基部(ベース部)は、木材(まき)のような市販の燃料が、燃焼のために載置されるプラットフォームを提供する。燃焼室2は、一次空気供給経路9、二次空気供給経路14、および三次空気供給経路16によって空気供給される。
【0033】
一次空気供給経路9は、主吸気口20から、燃焼室2の基部内の複数の一次流入口10およびマニホールド(manifold:多岐管)18を通って、空気を上方に供給する。複数の一次流入口10の開口の大きさは、マイクロコントローラー5の制御下のアクチュエータによって駆動される複数のバルブ11を用いて調整可能である。この実施形態では、アクチュエータは、ステッパーモーター(stepper motor)である。
【0034】
二次空気供給経路14は、ストーブ1の前面上側の二次流入口13から空気を供給する。バルブ15は、二次流入口13を通る空気流を、アクチュエータを用いたマイクロコントローラー5によって制御することを可能にする。二次空気流14は、ストーブ1の排気より前に未燃焼粒子を点火するために、最初にドア8の面に沿って下り、次いで、燃焼室2の中央内に流入し、暖められた空気の流れとして配送される。
【0035】
三次空気供給経路16は、主吸気口20に接続されたマニホールド18から、空気を供給する。三次空気供給経路16は、耐火レンガ6の後部まで、ストーブ1の後部内の流路を通過する。三次空気供給経路16は、ストーブ1の後部内の流路において、複数の三次開口7の水平アレイを通って、燃焼室2内に繋がる。三次バルブ17は、複数の三次開口7を通って配送される空気の流量を制御するために、三次空気供給経路16内に設けられている。三次バルブ17は、マイクロコントローラー5の制御下にあるアクチュエータによって駆動される。複数の三次開口7を通って配送される空気流は、燃焼室2の頂部に集められた加熱された燃焼ガス中の煙粒子(smoke particles)の燃焼を強めるよう作用する。
【0036】
使用時には、ユーザーは、ドア8を開け、さらに、燃焼室2の基部にある程度の量の燃料を投入する。次に、ユーザーは、燃料を点火し、ドア8を閉じる。マイクロコントローラー5は、ドアスイッチによって生成された信号を検出することにより、ストーブドア8の開閉を検出する。ストーブドア8の開閉の検出は、マイクロコントローラー5を起動させ、マイクロコントローラー5は、燃焼プロセスの間の燃料の移動に伴って、一次空気供給経路9、二次空気供給経路14、および三次空気供給経路16を通る空気流を制御するための制御シーケンスを開始する。また、いくつかの実施形態において、マイクロコントローラー5は、ユーザーが所望の加熱温度を入力することを許可する。さらに、マイクロコントローラー5は、それに応じて、一次バルブ11、二次バルブ15、および三次バルブ17を用いて、空気流を調節することになる。
【0037】
マイクロコントローラー5による制御操作は、燃焼温度および燃焼強度を示す熱電温度計4および伝達ロッド/赤外線センサー3から提供されるフィードバック情報に基づいて行われる。
【0038】
これに関連して、ある程度の量の燃料が点火されると、制御操作は、燃焼プロセスを経て進行する。最初に、燃焼室2および燃料は低温であり、したがって、点火された火炎は、燃料が存在する領域を加熱するように作用し、これによって、水分蒸発を促進し、可燃性ガスを放出させる。これらの放出されたガスが点火されると、燃焼プロセスは、点火された燃料が燃焼し、さらに、放出されたガスも点火される燃焼段階(flaming stage)に入る。最後に、燃焼段階は、火炎が消えることで特徴づけられる「炭化(Char)」段階に移行する。炭化段階では、燃料は、火炎や煙なしでゆっくりと燃焼する。一次バルブ11、二次バルブ15、および三次バルブ17は、燃焼の複数の異なる段階における効率を最適化し、排出を最小化するために、異なる度合(量)で開かれてもよい。このように、複数の空気供給経路は、燃焼室2内の加熱を強化するように調節される。
【0039】
燃焼室2および燃料が十分に高い温度に達すると、燃料は、より完全な燃焼を受けることができる。この状態において、熱は、燃料からより均一に可燃性ガスが放出されるように作用する。放出されたガスは、その後、より完全な燃焼を受ける。この段階では、一次バルブ11、二次バルブ15および三次バルブ17は、均一な燃焼を促進するように、開き度合を変化させてもよい。代替的に、これらバルブは、完全に開放されていなくてもよく、その代わりに、所望の最大温度を達成するために、空気流経路を調節するようマイクロコントローラー5によって制御されてもよい。すなわち、燃焼室2への空気流は、より低い加熱レベルを提供するよう、部分的に制限されてもよい。
【0040】
燃焼プロセスの最終段階において、燃焼室2内の残留熱は、高いままである。しかしながら、燃料は、ほぼ完全に消費され、火炎は、沈静化し始める。マイクロコントローラー5は、伝達ロッド3を介して伝達される赤外放射から、この段階が始まったことを判別することができる。これに応答して、マイクロコントローラー5は、最小の排出量で、最も効率的な燃焼を促進するために、空気流経路を通る空気流量を変化させることを開始してもよい。
【0041】
さらに、燃焼プロセス中に新たな燃料が充填されると、マイクロコントローラー5は、ドアスイッチ8の動作を介して、新たな燃料の充填を検出することができる。これに応じて、マイクロコントローラー5は、複数のバルブをさらに開くように操作することができる。これによって、空気の要求(必要量)がより低い定常状態(Steady State)または炭化段階からの火災の回復(revival)を容易に実行することができる。したがって、新たな燃料を迅速に点火し、新たな燃料が煙を生成することを防止するために十分な量の空気を、配送することができる。
【0042】
このように、本発明は、燃焼プロセスに供給する空気流を、火炎センサーおよび温度センサーからのフィードバックに基づいて制御することを可能にし、それによって、燃焼プロセス全体にわたる化学量論的均衡を最適化することができる。これは、燃焼効率を最大にし、生成される未燃焼微粒子、CO、NO、NO2およびOGCの量を最小にするのに役立つ。
【0043】
上述の実施形態は、例示の目的のみのために、本発明の適用例を示していることが理解されるであろう。実際には、本発明は、多くの異なる構成に適用することができ、そのための詳細な実施形態は、当業者であれば、実施できるであろう。
【0044】
例えば、空気供給経路を制御するための複数のバルブを駆動させるために使用される複数のアクチュエータは、メインストーブ本体の外部に存在する外部ハウジング内に収容されていてもよい。このように、複数のバルブは、複数のバルブと、外部ハウジング内の複数のアクチュエータとの間を接続する複数のリンク機構を介して駆動されてもよい。
【0045】
さらに、上述の例示的な実施形態は、ドアの操作によって駆動されるドアスイッチを使用するが、新たな燃料の投入を検出するための他の手段が使用されてもよいことは、理解されるであろう。例えば、ストーブは、燃料が投入されたことを示すためのユーザー操作ボタンを備えていてもよい。