IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サッポロビール株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ビールテイスト飲料 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12C 12/02 20060101AFI20231101BHJP
   C12C 7/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12C12/02
C12C7/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018193524
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020058315
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西尾 真秀
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-261425(JP,A)
【文献】特開2006-006342(JP,A)
【文献】特開2017-216891(JP,A)
【文献】特開2017-209071(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196265(WO,A1)
【文献】特開2016-049070(JP,A)
【文献】特開2016-049071(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102465071(CN,A)
【文献】国際公開第2013/099737(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038437(WO,A1)
【文献】特開2017-195801(JP,A)
【文献】特開2018-068228(JP,A)
【文献】特開2012-147780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料中の麦芽比率が50質量%以上であり、
ビールテイスト飲料中の糖質含有量x(g/100ml)及びアルコール度数y(v/v%)が下記式(1)、(2)及び(3)の条件を満たし、かつ
張湯比が4.5以上6以下である、ビールテイスト飲料(但し、原料として麦原料を用い、発酵工程においてグルコアミラーゼ及びβ-アミラーゼを添加することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法により得られたものを除く。)
y≧7x-3 (1)
y≦-1.5x+8 (2)
y≧-1.5x+3 (3)
【請求項2】
前記糖質含有量x(g/100ml)が0.3以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
前記アルコール度数y(v/v%)が2.5以上である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
前記アルコール度数y(v/v%)が5.5以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
下記式(4)の条件を更に満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
y≦50x-20 (4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料の需要が高まっている。例えば特許文献1には、糖質含有量が低減された発酵麦芽飲料及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5313327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料においては、甘味が目立ちべたついて感じられたり、雑味が後に残ったり、キレが十分でなかったりし、総合的に味に優れたビールテイスト飲料は得られていない。
【0005】
本発明は、甘味の目立ち及びべたつきが抑制され、後に残る雑味が少なく、かつキレに優れるビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料中の糖質含有量x(g/100ml)及びアルコール度数y(v/v%)が下記式(1)、(2)及び(3)の条件を満たす。
y≧7x-3 (1)
y≦-1.5x+8 (2)
y≧-1.5x+3 (3)
【0007】
上記ビールテイスト飲料において、糖質含有量x(g/100ml)は0.3以上であってよい。
【0008】
上記ビールテイスト飲料において、原料中の麦芽比率は50質量%以上であることが好ましい。麦芽比率が上記範囲であると、より好ましい香味を有するビールテイスト飲料を得ることができる。
【0009】
上記ビールテイスト飲料において、アルコール度数y(v/v%)は2.5以上であることが好ましい。
【0010】
上記ビールテイスト飲料において、アルコール度数y(v/v%)は5.5以下であることが好ましい。アルコール度数が上記範囲であることによって、後に残る雑味をより低減することができる。
【0011】
上記ビールテイスト飲料は、下記式(4)の条件を更に満たすことが好ましい。
y≦50x-20 (4)
【0012】
上記ビールテイスト飲料において、張湯比は3.5~12であることが好ましく、張湯比が5~7であることがより好ましい。張湯比が上記範囲内にあることで、甘味の目立ち及びべたつきをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、甘味の目立ち及びべたつきが抑制され、後に残る雑味が少なく、かつキレに優れるビールテイスト飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例のビールテイスト飲料の糖質含有量及びアルコール度数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコールを含有するビールテイストアルコール飲料である。本明細書においてアルコールとは、エタノールを意味する。
【0017】
本明細書における糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分を除いたものをいう。また、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分の量を控除することにより算定される。タンパク質、脂質、灰分、水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。アルコール分の量は、水分量とともに測定することができる。具体的には、タンパク質の量は改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法で測定し、食物繊維の量はプロスキー法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法で測定し、水分及びアルコール分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法で測定する。
【0018】
ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)「3清酒 3-4アルコール分」に記載されている振動式密度計法に基づいて測定することができる。
【0019】
本実施形態に係るビールテイスト飲料において、糖質含有量x(g/100ml)及びアルコール度数y(v/v%)の関係は、下記式(1)、(2)及び(3)に示す条件を満たす。
y≧7x+a (1)
y≦-1.5x+a (2)
y≧-1.5x+a (3)
式中、aは-3、aは8、aは3である。
【0020】
上記条件を満たすことにより、飲んだ際の甘味の目立ち及びべたつきが小さく、後に残る雑味が少なく、かつキレに優れるビールテイスト飲料を得ることができる。
【0021】
上記式(1)において、aは-2.5、-2又は-1.5であってもよい。上記式(2)において、aは7.5、7又は6.5であってもよい。上記式(3)において、aは3.5、4、4.5又は5であってもよい。
【0022】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量x(g/100ml)は、0.3以上であることが好ましく、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上又は0.8以上であってもよい。糖質含有量x(g/100ml)は、1.2以下であることが好ましく、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下であってもよい。
【0023】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数y(v/v%)は、2.5以上であることが好ましく、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、5.5以上、又は6以上であってもよい。ビールテイスト飲料のアルコール度数y(v/v%)、例えば、7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、5以下、4.5以下、4以下であってもよい。
【0024】
上記糖質含有量x(g/100ml)及びアルコール度数y(v/v%)は、更に下記式(4)の条件を満たすことが好ましい。式(4)中、aは-20である。式(4)の条件を満たすことによって、ビールテイスト飲料のキレがより優れ、また、味の抑揚及び厚みが増し、濃厚になる傾向がある。
y≦50x+a (4)
【0025】
式(4)中、aは-20.5、-21、-21.5、又は-22であってもよい。
【0026】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量及びアルコール度数の範囲は、例えば図1に示すような、糖質含有量及びアルコール度数の関係を示すグラフにおいて、後述する実施例に示す各サンプルのうち、いずれか2つのサンプルを示す2点を結ぶ直線によって表される一次方程式を境界とするものであってもよい。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であることが好ましい。本明細書において発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度であってもよく、0.235MPa(2.4kg/cm)程度であってもよい。
【0028】
ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成三十年法律第五十九号)上のビール、発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールであることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、張湯比が3.5以上、4以上又は4.5以上であってよい。張湯比とは、原料の使用量に対する仕込水の使用量の比である。張湯比は5以上であることが好ましい。張湯比は、12以下であってよく、10以下、9以下、又は8以下であってもよい。張湯比は7以下であることがより好ましい。張湯比が上記範囲であると、後に残る雑味及びキレがより改善される傾向にある。
【0030】
本明細書において原料とは、ビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。原料は、例えば、麦原料を含んでいてよい。麦原料は、麦又は麦加工物を意味する。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、オート麦、ハト麦等が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。麦原料は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0031】
原料は、麦芽を含むことが好ましい。原料中の麦芽比率は、50質量%以上であることが好ましく、66%以上又は67%以上であってもよく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。原料中の麦原料は100質量%であってもよい。原料中の麦原料の比率が上記範囲であると、よりビールテイスト飲料の香味を向上させることができる。
【0032】
原料は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分は、例えば、トウモロコシ、米類、コウリャン等の穀類、馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類、豆類等の植物原料であってよく、スターチ、グリッツ等の澱粉原料であってもよく、果実(果実を乾燥させたもの、若しくは煮つめたもの、又は濃縮させた果汁を含む)、又は香味料(コリアンダー等一定の香味料)であってもよい。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、仕込工程及び発酵工程を経て製造することができる。仕込工程では、原料、水、酵素、及び必要に応じて各種添加剤を混合して原料を糖化し、糖化液を濾過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を得る。発酵工程では、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させる。発酵工程では酵素を添加してもよい。
【0034】
仕込工程及び/又は発酵工程で添加する酵素としては、例えば、多糖分解酵素(例:α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、セルラーゼ(β-グルカナーゼを含む)、ヘミセルラーゼ)を用いることができる。酵素は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。酵素の添加量は、例えば、原料の総量に対して0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上又は0.3質量%以上であってよく、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下又は0.1質量%以下であってよい。
【0035】
仕込工程で添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0036】
発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液に対して濾過、加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、甘味料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)の添加、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができる。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量及びアルコール度数が所定の範囲となるように調整することを含む方法により製造することができる。
【0038】
ビールテイスト飲料の糖質含有量は、例えば、製造工程における多糖分解酵素等の酵素の添加量、原料の種類及び使用量を調整することによって、所望の程度に調整することができる。また、糖質含有量は、張湯比を調整することによって調整することもできる。張湯比を上げるほど糖質含有量は下がる傾向にある。ビールテイスト飲料の糖質含有量は、発酵工程後に糖質を添加することで調節してもよい。
【0039】
ビールテイスト飲料のアルコール度数を調整する方法としては、例えば、任意のアルコール度数となるように発酵の程度を調整する、水又はアルコールを添加してアルコール度数を調整する等の方法を用いることができる。
【0040】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明による効果を阻害しない限り、飲料に通常配合される甘味料、酸化防止剤、香料、塩類、酸味料、苦味料等の添加剤を含有してもよい。
【0041】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、BU(苦味価)が例えば6以上30以下であってもよい。苦味価は、例えば改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。
【0042】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸エチル濃度が例えば5~50ppmであってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸イソアミル濃度が例えば0.5~5ppmであってもよい。ビールテイスト飲料中の酢酸エチル濃度および酢酸イソアミル濃度は、BCOJビール分析法の「8.22 低沸点香気成分」の方法により測定することができる。
【0043】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【実施例
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0045】
表1に示すA、B又はCのベース液に、糖質含有量及びアルコール度数が表2及び表3に示す値となるように、スピリッツ、炭酸水、及び糖類を必要に応じて加え、サンプル1~16のビールテイスト飲料を調製した。用いたベース液の原料張湯比及び原料中の麦芽比率を表1に示す。各サンプルにおける糖質含有量及びアルコール度数の関係を図1に示す。図1中の丸数字は各サンプル番号を示す。
【0046】
ベース液としては、糖質含有量及びアルコール度数が予め判明しているものを用いた。ベース液の糖質含有量は、以下の方法で測定した。まず、測定対象である飲料の水分、アルコール分、タンパク質、灰分の量をそれぞれ測定した。水分とアルコール分は常圧加熱乾燥法により測定した。タンパク質量は、改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法により測定した。灰分量は、直接灰化法により測定した。ベース液A及びBについては、プロスキー法により食物繊維量を測定したところ、それぞれ0.05g/100mlであった。ベース液Cについては、食物繊維量を0.05g/100mlとみなした。サンプル中の脂質量を0g/100mlとみなし、サンプルの重量から、水分、アルコール分、タンパク質量、灰分量及び食物繊維量を引いた値をサンプルの糖質量(g/100ml)として算定した。なお、水又は糖類等の添加により濃度調整を行ったサンプルの糖質量については、上記方法で測定した濃度調整前のサンプルの糖質量の値から添加量に応じて算出した。ベース液のアルコール度数は、国税庁所定分析法(訓令)「3清酒 3-4アルコール分」に記載されている振動式密度計法振動式密度計で測定した。各サンプルの糖質含有量及びアルコール度数は、各材料の混合比に基づいて算出した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
得られたビールテイスト飲料について、BU、酢酸エチル濃度及び酢酸イソアミル濃度を測定した。BUは改訂BCOJビール分析法の「8.15 苦味価」に記載されている方法により測定した。全てのサンプルについて、BUは6以上30以下の範囲であった。
【0051】
(官能評価)
得られたビールテイスト飲料について、選抜された識別能力のある2名により官能評価を行った。ビールテイスト飲料を試飲した際の、甘味の目立ち及びべとつき、後に残る雑味、並びにキレを評価項目とした。それぞれ1~5の5段階で評価し、各パネルによる評点の平均値を得た。
【0052】
甘味の目立ち及びべたつきの評価では、甘味が目立つか、及び当該甘味がべたつくかを評価し、甘味がより目立たずべたつかないほど、評点が高い。後に残る雑味の評価では、試飲後に残る雑味が少ないほど評点が高い。キレの評価では、試飲後に味全体として口に残るかを評価し、より残らないほど評点が高い。いずれの評価項目も評点が高いほどより好ましいことを示す。甘味及びべたつきは、サンプル1を基準(評点2)として評価した。後に残る雑味は、サンプル12を基準(評点2)として評価した。キレは、サンプル13を基準(評点2)として評価した。
【0053】
結果を表1及び2に示す。いずれかの評価項目において平均評点が2.5以下となったサンプルを不可(比較例)とした。表1及び2に示されるように、ビールテイスト飲料の糖質含有量及びアルコール度数が下記式(1)、(2)及び(3)の条件を満たす実施例1~11のサンプルでは、甘味の目立ち及びべたつきの少なさ、後に残る雑味の少なさ、及びキレの全てにおいて、総合的に優れていた。
y≧7x-3 (1)
y≦-1.5x+8 (2)
y≧-1.5x+3 (3)
xはビールテイスト飲料中の糖質含有量(g/100ml)、yはアルコール度数(v/v%)を示す。
【0054】
実施例の中でも、式(4)(y≦50x-20)の条件を更に満たすサンプル(実施例1~3、7~11)は、当該条件を満たさないサンプル5、6、8(実施例4~6)と比べ、よりキレに優れ、味の抑揚が大きく、濃厚で、厚みがある傾向にあった。また、原料張湯比が1:3であるサンプル14(実施例9)よりも、原料張湯比が1:6であるサンプル3(実施例2)の方が、甘味の目立ち及びべたつきの点でより優れていた。
図1