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特許7376991発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の鋳型を製造するためのフィラーとしての使用
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  • 特許-発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の鋳型を製造するためのフィラーとしての使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の鋳型を製造するためのフィラーとしての使用
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/02 20060101AFI20231101BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20231101BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20231101BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B22C1/02 Z
B22C1/00 B
B22C1/00 J
B22C1/10 C
B22C1/10 E
B22C9/08 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018553147
(86)(22)【出願日】2017-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017058584
(87)【国際公開番号】W WO2017174826
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-04-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】102016205960.2
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591194322
【氏名又は名称】ヒュッテネス-アルベルトゥス ヒェーミッシェ ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Wiesenstrasse 23,D-40549 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】レーマン サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】リーマン クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ツィマー ニルス
(72)【発明者】
【氏名】リーバー ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバート ユルゲン
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522148(JP,A)
【文献】特公昭48-7573(JP,B1)
【文献】特表2014-534942(JP,A)
【文献】特開昭54-21414(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105414468(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00 - 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の成形品を製造するためのフィラーとしての使用であって、前記微小球が、その表面上で閉じており、前記微小球が、実質的に滑らかな表面を有し、前記微小球が、200~500kg/m3の嵩密度を有し、前記微小球が、200~300μmの粒子径d50を有
前記微小球は、DIN 18132:12-04に従った300秒後のEnslin(エンスリン)吸水量が2.0ml/g未満であり、吸水量の測定にはEnslin(エンスリン)装置が使用される、
前記使用。
【請求項2】
前記微小球が、200~250μmの粒子径d50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記微小球が、見かけ密度に対する真密度の比が1.8を超え、見かけ密度及び真密度が、ヘリウムピクノメーターを用いて測定される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記微小球が、1.3N/mm2を超える粒子強度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記微小球を、フライアッシュの球体、気泡ガラス、珪砂、焼成珪藻土、シャモット、菫青石、ムライト、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加成分と組み合わせて使用する、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記微小球を、有機バインダー若しくは無機バインダー又は有機バインダー及び無機バインダーの混合物と組み合わせて使用し、
前記バインダーが、水ガラス、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分を含む2成分系、及びデンプンからなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記鋳物業用の成形品が、断熱性又は発熱性の押湯、押湯被覆材、押湯スリーブ、押湯蓋、充填漏斗、供給要素、及び加熱パッドからなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
非鉄鋳造用の断熱性又は発熱性の押湯を製造するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
鋳物業用の成形品を製造するための組成物であって、
フィラーとして発泡パーライトの独立気孔微小球と、バインダーとを含み、
前記微小球が、その表面上で閉じており、前記微小球が、実質的に滑らかな表面を有し、前記微小球が、200~500kg/m3の嵩密度を有し、
前記微小球が、200~300μmの粒子径d50を有し、
前記微小球は、DIN 18132:12-04に従った300秒後のEnslin(エンスリン)吸水量が2.0ml/g未満であり、吸水量の測定にはEnslin(エンスリン)装置が使用され、
前記バインダーが、水ガラス、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分を含む2成分系、及びデンプンからなる群から選択される、前記組成物。
【請求項10】
フライアッシュの球体、気泡ガラス、珪砂、焼成珪藻土、シャモット、菫青石、ムライト、及びそれらの混合物からなる群から選択される成分を更に含む、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の発泡パーライトの独立気孔微小球の使用により製造される、又は請求項又は10に記載の組成物を使用して製造される、鋳物業用の成形品
【請求項12】
以下の工程を含む、鋳物業用の成形品の製造方法:
(a)請求項1~のいずれか1項に記載の発泡パーライトの独立気孔微小球の使用のための前記微小球を製造又は提供する工程、
(b)工程(a)で製造又は提供された発泡パーライトの独立気孔微小球を、バインダー及び任意で更なる成分と混合して組成物を与える工程、及び
(c)工程(b)からの組成物を成型及び硬化して成形品を与える工程、
又は、
(i)請求項又は10に記載の組成物を製造又は提供する工程、及び
(ii)工程(i)からの組成物を成型及び硬化して成形品を与える工程。
【請求項13】
前記微小球が、多段式の温度区域を持つ細流管中でパーライト砂を膨張させる方法によって得られる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡パーライト(expanded perlite、膨張パーライト)の独立気孔微小球の、鋳物業用の成形品を製造するためのフィラーとしての使用、鋳物業用の成形品を製造するための組成物、鋳物業用の成形品、及び鋳物業用の成形品の製造方法に関する。
【0002】
鋳物業における成型金属部品の製造では、液体金属を鋳型に導入し、そこで凝固させる。凝固プロセスは、金属体積の減少を伴う。したがって、一般的に、鋳物の凝固による体積の不足を補うために、及び鋳物内に形成される隙間を防止するために、鋳型の中又は上に押湯を使用する。押湯は、鋳物、又は危険な状態の鋳物の領域に接続され、一般に成型空間の上側及び/又は側面に配置される。
【0003】
鋳物業用の押湯を製造するための既存の組成物に関して、2つの主流がある。
【0004】
A.断熱性の混合物、すなわち、断熱性の押湯被覆材又は断熱性のパッド若しくはポケットを製造するための、成型可能で硬化可能な組成物(混合物)。(硬化した)断熱性の材料は先ず、鋳型から鋳造する間に、温度の平衡が起きるまで液体金属からの熱をある程度吸収する。この時点から、断熱性の材料は、液体鋳造金属の更なる熱損失から一定時間保護する。したがって、断熱性の混合物から形成される断熱性のポケット又は押湯は、凝固の開始を遅延させ、鋳造の緻密な供給を促進する。断熱性の混合物は、一般的に、少なくとも1種の粒子(粒)状のフィラー及びバインダーを含む。
【0005】
B.発熱性の押湯加熱混合物、すなわち、鋳型から鋳造する間のアルミノテルミット(aluminothermal)反応又は同様の反応の結果としてそれら自身を加温する、成型可能で硬化可能な発熱性の組成物(混合物)。発熱性の押湯加熱混合物(発熱性の成型材料とも呼ばれる)から、鋳型に挿入される押湯を製造することが可能であり、溶融物と接触して熱を生成することができる。この熱の放出は、加熱混合物中のアルミノテルミット反応又は同様の転換反応に基づいて起きる。例外的な場合、その解放される熱は、押湯中の液体金属を加熱するために作用するが、どのような場合でも熱損失の(部分的な)埋め合わせのために作用する。発熱性の加熱混合物を含む押湯を使用する場合、断熱性の混合物(上記Aを参照)に基づく押湯と比較して、金属はより長い間液状を維持する。したがって、鋳造の緻密な供給を改善することができ、必要ならば、より少ない押湯を使用することができ、それにより循環動作の低下及び鋳造収率の増加が得られる。しかしながら、発熱性の押湯加熱混合物は、断熱性の混合物よりもはるかに高価である。発熱性の押湯加熱混合物は、一般的に、少なくとも1種の粒子(粒)状のフィラー、バインダー、比較的高い割合の酸化可能な金属、酸化可能な金属の酸化剤(例えば酸化鉄及び/又は酸化マグネシウム、硝酸カリウム又は硝酸ナトリウム)、及び点火薬を含む。酸化可能な金属は、好ましくは卑金属である。酸化可能な金属は、より好ましくはアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、及びケイ素からなる群から選択される。
【0006】
押湯を製造するための押湯混合物中に、及びこれらの混合物から製造される押湯それ自体中に、粒子(粒)状のフィラーとして、高温での安定性及び低重量とともに有効な断熱性を示すことが意図されている軽量フィラーを使用することが一般的な慣習である。
【0007】
DE 10 2005 025 771は、中空のセラミック球体、0.3g/cm3未満の嵩密度を有する中空のガラス球体、硬化バインダー、及び任意で繊維材料を含む断熱性の押湯を開示している。DE 10 2005 025 771の押湯は、必要に応じて、フィラーと呼んでもよい更なる材料を含む。
【0008】
工業上の慣習では、球体(特にフライアッシュの球体)を、しばしば押湯に使用する。これらの球体は、特にAl23含有量及び、アルカリ金属及びアルカリ土類金属並びに鉄等の付随元素の割合に由来して、種々の品質レベルに分類することができる。特に銅、鉄、及び鉄鋼の鋳造用途にとって、慣習で求められる球体の品質は、とりわけ高い。しかしながら、そのような品質は、体積に関して制限され、及び/又は非常に高価であるため、入手可能な再現性のある代替物の継続的な必要性が存在している。
【0009】
軽量フィラーの既知の例は、Liaverからの発泡ガラス並びにPoraverからの気泡ガラス、OmegaからのタイプK20の中空ガラス球体、及び開放気孔の、発泡パーライトをも含む。パーライトは、酸性火山岩、すなわち流紋岩の群に分類される。パーライトは、およそ900~1000kg/m3の嵩密度を有する豆サイズまでのガラス状のグレイン-シェル(grain-shell)のビーズからなる。それらは水を含み、必要に応じて空気、酸素リッチな空気又は酸素を導入した炎の同伴流内の工業的工程で蒸発し、パーライトの膨張を導く。熱処理は、通例およそ350℃から1150℃までの温度の範囲で行う。このプロセスの過程で、パーライトは元の体積の20倍まで膨張する。膨張プロセスで、開放気孔のスフェルライト構造物が生成され、膨張した開放気孔のパーライトは、粒子径に応じて50~500kg/m3の嵩密度を有する。ガラス状のベース材料及び膨張構造のために、開放気孔の、発泡パーライトは、およそ0.05~0.09W/mKの非常に低い熱伝導率を示す。低嵩密度及び低熱伝導率のために、開放気孔の、発泡パーライトは、建築材料産業における断熱材料として利用されているが、1100℃までの温度で使用する断熱レンガの耐火物産業においても利用されている。押湯中の開放気孔の、発泡パーライトの使用も、例えばDE2121353A(Baur)、WO2006097278A1(AS Lungen)、及びUS20030032701A1(Gough)のように知られている。材料が「発泡パーライト」を含むと記載されている場合、その空隙率の明示的な記載がなくても、数年前まではこれが発泡パーライトの唯一の形態であったため、当の材料は常に、膨張した開放気孔のパーライトであると推察されるはずである。
【0010】
EP 2 697 181 A1(出願の公開日:2014年2月19日)には、恐らくこれが初めてだが、パーライトの独立気孔の膨張方法が記載されている。文書の段落[0005]及び[0006]には、当時の従来技術で知られていたパーライトの炉が、どのようにして開放気孔の砂粒を生じるかが記載されている。EP 2 899 174 A2(提出日:2015年1月2日)には、パーライトの膨張は何年間も知られていたが、従来の膨張方法は開放気孔の、割れたパーライトを生じたと記載されている(段落[0019])。
【0011】
DE 11 2011 103 297 T5は、溶融鋳造プロセスにおける押湯として使用され、その壁と鋳物砂の間の熱損失を減らすことができる、複合層を含む入れ子について記載している。記載されているフィラーは、中空の微小球又は、例えば発泡パーライト等の他の材料である。発行された文章は、独立気孔のパーライトの最初の製造方法を開示するかなり前に作成されたものであるため、DE 11 2011 103 297 T5で使用されているような「発泡パーライト」という用語は、開放気泡、又は開放気孔の、割れたパーライトを意味しているものと推察される。
【0012】
EP 0 140 900 B1は、発泡パーライト粒子の均一な混合物からなる断熱性のプレートの使用を開示している。発泡パーライト粒子の空隙率は詳細に説明されていないが、それでも、使用されたパーライトは開放気泡又は開放気孔の、割れたパーライトだと推察されるはずである。上記の所見を比較のこと。これらの粒子の鋳物業用の成形品を製造するための使用は記載されていない。
【0013】
AT 371 092 Bは、パーライトの閉じた微小球の製造方法を記載している。しかしながら、製造される閉じた微小球は、発泡パーライトの独立気孔微小球ではなく、所定の壁厚みを有する、パーライトの外側シェルを持ち、他は中空(球状粒子)である中空微小球である。
【0014】
AT 372 367 Bは、発明の名称が「耐火性、発熱性、断熱性の成形品」であり、発泡パーライトの使用を記載している。発行された文章は、独立気孔のパーライトの最初の製造方法を開示するかなり前に作成されたものであるため、「発泡パーライト」という用語は、開放気泡又は開放気孔の、割れたパーライトを意味すると推察されるはずである。
【0015】
US 4,183,980及びUS 4,255,489は、ポリジメチルシロキサンで被覆されたパーライトを記載している。プラスチックの密度を減少させるために、この被覆パーライトがプラスチック用のフィラーとして使用されている。開示された被覆パーライトは、「多孔性ではない」ことを意味する。
【0016】
EP 0 353 860は、球状パーライトで多孔性ではない発泡パーライトを記載する。その文書では、製造される粒子は様々な用途のためのフィラーとして使用できることを述べている。しかしながら、これらのパーライトの、鋳物業用の鋳物の製造のための使用は記載されていない。
【0017】
DE 2121353Aは、パーライトからなる中空ビーズの使用を記載しており、中空ビーズの表面に耐火性の被覆が設けられている。耐火性の被覆の結果、中空ビーズの温度安定性が改善され、開放気孔パーライトの外側の孔が閉じ、それにより、バインダーがパーライトの孔の中に取り込まれないため、バインダーの量を減らすことができる。
【0018】
WO2006097278A1は、連続した開放気孔構造を有する多孔性の耐熱性物質を含む、鋳物業用の成形品を製造するための成形品組成物を記載している。連続した開放気孔構造を有する多孔性の耐熱性物質として、軽石、膨張頁岩、蛭石、沸騰砂(boiler sand)又は気泡溶岩が、パーライトと同じように並列で記載されている。
【0019】
US20030032701A1は、0.4g/cm3未満の嵩密度を持つ耐熱性の軽量フィラーを含む耐熱断熱性の材料を記載しており、軽量フィラーは、場合により焼成珪藻土、珪藻土、膨張蛭石、又はパーライトを含む。鋳物業における断熱材料の使用は記載されていない。
【0020】
ここ数年の鋳物業における継続的な発展の結果、使用する押湯材料に課される要求が極めて増大してきている。鋳物工場における高圧成形装置のますます頻繁な使用のために、例えば、最近、押湯は数年前よりも極めて高い圧力に耐えることが要求されている。更に、特に下方の押湯部を上方の押湯部へ挿入する押湯における使用のために、高い弾性率とあわせて高い強度が必要とされる。この種の押湯は、Chemex GmbH(ドイツ)から「Telespeiser」という名称で商業的に入手可能であり、例えばEP 1184104 B1に詳細に記載されている
【0021】
今まで製造された開放気孔の、発泡パーライトは、押湯材料に求められる高められた要求を満たすことができず、したがって、更なる改良がなければ、押湯における使用に適さないことが明らかとなった。
【0022】
したがって、本発明の目的は、好ましくは製造される成型部品の強度及び弾性率の改善と、成形品の部品に対するより良い断熱効果とともに、現在主に使用されている軽量フィラーの少なくとも部分的な代替として使用できる、成形品の製造のための軽量フィラーを特定することである。
【0023】
提起された目的は、本発明に従う、発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の成形品を製造するためのフィラーとしての使用によって、達成される。
【0024】
発泡パーライトの独立気孔微小球は、非常に軽い。パーライトの膨張は、ここ数年で知られてきた。しかしながら、今までの膨張方法は、開放気孔の、割れたパーライトを生じる。今回使用するものは、独立した空間を持つ球体からなる革新的な発泡パーライトの独立気孔微小球であり、空間は管路又は開口部を通して互いに接続されていない。これらの革新的なパーライトの製造方法は、複数の温度区域を持つ縦管型の炉の多段の中で行われる。この方法では先ず、分粒プロファイルを使用してパーライト砂を種々の粒子径に分類する。各個々の粒子径は、細流管中で、温度の上昇を特徴とする複数の温度区域にさらされ、パーライト粒子の膨張を引き起こす。
【0025】
驚くべきことに、我々独自の調査において、フィラーとしての発泡パーライトの独立気孔微小球を含む鋳物業用の成形品は、特に良好な特性を示すことが分かった。特に、成形品は、改善した安定性及び断熱効果を特徴とする。
【0026】
ボール状で外側シェルのみを有する球状粒子とは対照的に、発泡パーライトの独立気孔微小球は、その微小球の内部に、個々の孔の壁から形成される構造を有する。結果として、フィラーとしての発泡パーライトの独立気孔微小球を含む成形品は、優れた安定性を有している。
【0027】
驚くべきことに、発泡パーライトの独立気孔微小球は、開放気孔の、割れたパーライトと比較してより優れた安定性を有し、成形品を製造するためにより少ないバインダーで済むことが明らかとなった。したがって、バインダーの所定の量に対して、得られる成形品のより高い強度を達成することが可能であるか、又は、所定の又は僅かに増加した強度のためにより少ないバインダーの量で済む。
【0028】
パーライトは、火山活動がある地域で生じる岩であり、火山活動のために絶えず生成される。最も重要なパーライトの資源は、地中海地域、北及び中央アメリカ、ポリネシア、ニュージーランド、並びに中国で発見できる。したがって、パーライトの入手可能性は高い。
【0029】
本発明における使用では、多段式の温度区域を持ち、好ましくは細流管の温度区域が電気的に加熱される細流管中でパーライト砂を膨張させる方法により得られる微小球であることが好ましい。
【0030】
開放気孔の、発泡パーライトの製造のために一般に利用される工業的工程では、パーライト砂は、任意で空気、酸素リッチな空気又は酸素を導入した炎を通した同伴流内、又は逆流原理に従った熱ガスの流れの中で膨張する。この方法では、膨張プロセスの正確な温度制御が不可能であることが分かった。したがって、膨張プロセスの間に、パーライト砂が炎を通した同伴流内で加熱されない、及び/又は炎により加熱されない、及び/又は熱ガスの流れ内で加熱されないことが好ましい。
【0031】
本発明では、パーライト砂を、多段式の温度区域の中で処理する前に種々の粒子径に分類することが好ましく、所定の粒子径を持つパーライト砂のみを使用することが好ましい。種々の粒子径への分類は、分粒プロファイルを使用して達成することが好ましい。
【0032】
膨張プロセスで使用するパーライト砂の目標とされた制御により、発泡パーライトの粒子径を制御することも可能である。
【0033】
本発明における使用では、発泡パーライトの独立気孔微小球が、好ましくは180~300μm、好ましくは190~270μm、より好ましくは200~250μmの粒子径d50を有する。
【0034】
本発明では、発泡パーライトの独立気孔微小球が、
(a)20~170μm、好ましくは80~160μm、より好ましくは100~140μmの粒子径d10を有し、
及び/又は、
(b)280~600μm、好ましくは290~450μm、より好ましくは300~400μmの粒子径d90を有する、
本発明における使用が好ましい。
【0035】
粒子径は、DIN 66165に従って、ふるい分析により測定される。
【0036】
驚くべきことに、我々独自の調査において、上記特定の粒子径を有する発泡パーライトの使用により、鋳物業用の成形品の製造に特に有利であることが明らかとなった。
【0037】
微小球がその表面上で閉じているものの使用が、本発明の目的のために特に有利である。
【0038】
したがって、発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の成形品の製造のためのフィラーとしての使用において、前記微小球がその表面上で閉じていることが、本発明の目的のために有利である。
【0039】
本発明のある実施形態では、好ましい微小球は、その表面上で閉じており、その表面はアモルファス状態かつ非晶質状態で存在している。
【0040】
驚くべきことに、開放気孔の、割れたパーライトとは対照的に、閉じた表面を有する発泡パーライトの独立気孔微小球は、成形品を製造するのに必要なバインダーがより少ないという利点を有する。結果として、より少ないバインダーを使用することができ、又は所定のバインダーの量に対して、達成される接着性がより良好である。更に、閉じた表面によって、微小球は、より高い強度を得る。更に驚くべきことに、これらの微小球は、特に優れた断熱効果を示すことが明らかとなった。
【0041】
従来の開放気孔の、発泡パーライトと比較して、本発明における使用のためのパーライトは、独立気孔の球体表面及び極めてより安定した内部の粒子構造によって区別される。独立気孔のパーライトは、互いに分離した孔を持つ閉じられた気泡構造を有し、実質的に滑らかな表面を有する。
【0042】
本発明では、見かけ密度に対する密度の比が1.8を超え、好ましくは2.5を超え、より好ましくは3.0を超え、特に好ましくは4.0を超え、最も好ましくは5.0を超える微小球の使用が好ましく、見かけ密度及び密度は、ヘリウムピクノメーターを用いて測定される。
【0043】
密度は、微小球の材料部分の密度を意味し、存在する空間の体積を考慮しない。密度は、その粒子が孔を含まなくなるまで材料を粉砕し、すり砕くことによって測定する。続いて、粉砕されてすり砕かれた物質の密度を、ヘリウムピクノメーターを用いて測定する。ヘリウムは、不活性ガスで非常に小さな分子直径を有し、ゆえにサンプル内の全ての到達可能な空間を満たすため、使用されている。
【0044】
見かけ密度は、孔の空間を含む体積に基づいた多孔性固体の密度である。微小球の見かけ密度は、微小球を粉砕又はすり砕くことなく、ヘリウムピクノメーターを用いて測定する。
【0045】
見かけ密度に対する密度の高い比は、多孔質物体の独立気孔の性質の指標である。
【0046】
本発明では、空隙率が70%を超え、好ましくは75%を超え、より好ましくは80%を超える独立気孔微小球の使用が同様に好ましい。
【0047】
この場合には、空隙率は、一般式
空隙率=(1-見かけ密度/密度)×100%
に従って計算され、物質の合計体積に対する空間の体積の割合を意味する。
【0048】
本発明では、好ましくは表面上で閉じており、300秒後のEnslin吸水量が、2.0ml/g未満、好ましくは1.5ml/g未満、より好ましくは1.3ml/g未満、特に好ましくは1.2ml/g未満である独立気孔微小球の使用が好ましい。手順及び評価は、DIN 18132:12-04の通りである。
【0049】
吸水量の測定は、当業者によく知られている。その方法では、Enslin装置として知られる装置を使用し、その中でチューブを介してガラス吸引フィルターが目盛り付きのピペットに接続されている。ガラスフリットと同じ高さとなるようにピペットを正確に水平に取り付ける。したがって、1.5ml/gの吸水量は、1gの微小球につき水1.5mlの吸水量に相当する。
【0050】
本発明では、微小球が1.3N/mm2を超え、好ましくは1.6N/mm2を超え、より好ましくは1.9N/mm2を超え、特に好ましくは3N/mm2を超える粒子強度を持つ、微小球の使用が特に好ましい。
【0051】
粒子強度は、DIN EN 13055-1 Annex A, 方法1(0.5mmの振幅で2×30秒撹拌する)に基づいた方法で測定した。
【0052】
高い粒子強度を有する微小球の使用を通して、成形品の強度の低下なしに、鋳物業(好ましくは成形品に関する、以下を参照)用の成形品中の微小球の量の増加を、更なる利点とともに可能にする。結果として、成形品は、金属溶湯の溶湯静圧に耐えることができる。
【0053】
本発明における独立気孔微小球の使用のある好ましい実施形態では、微小球は、0.07W/mK以下、好ましくは0.06W/mK以下、更に好ましくは0.05W/mK以下の熱伝導率を有する。
【0054】
本発明における使用のための発泡パーライトの独立気孔微小球は、開放気孔微小球よりもはるかに低い熱伝導率を有することが明らかとなった。特に、押湯に独立気孔微小球を使用する場合、より低い熱伝導率のために、押湯の断熱効果の著しい増加を与えることができる。
【0055】
独立気孔微小球の使用のある発明的に好ましい実施形態では、微小球は、好ましくは500kg/m3未満、好ましくは350kg/m3未満の嵩密度、特には300kg/m3未満の嵩密度を有する。
【0056】
独立気孔微小球の使用のある発明的に好ましい実施形態では、微小球は、好ましくは100~500kg/m3の嵩密度、好ましくは200~350kg/m3、より好ましくは300~350kg/m3の嵩密度を有する。
【0057】
嵩密度は、DIN EN ISO 60 2000-1に従って測定する。
【0058】
500kg/m3未満の低い嵩密度だと、本発明における使用のための微小球を使用して製造される成型部品及び組成物は、特に低い密度を有する。
【0059】
本発明における好ましい使用では、微小球は、800℃を超え、好ましくは900~1150℃、より好ましくは1050~1100℃の焼結温度を有する。
【0060】
本発明における使用では、微小球は、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満、より好ましくは0.05%未満の含水量を有する。
【0061】
含水量が高すぎると、鋳物業で製造される成形品の使用中に、蒸気が突然解放され、場合により鋳物の欠陥及び/又は成形品の損傷の事例を生じる可能性があり、又は高い含水量の場合、爆発を引き起こすかもしれない。
【0062】
開放気孔の、割れたパーライトとは対照的に、発泡パーライトの独立気孔微小球は、非常に低い吸水性を有する。吸水性に関して開放気孔パーライトを改善するために、今までは例えば瀝青を使用して覆っていた。他の態様は、パラフィンで開放気孔パーライトを満たすこと、又はシリコーンでそれらを強化することである。しかしながら、そのような方法で処理されたパーライトは、その処理にも関わらず製品の圧縮強度が低く、更にある製品では、耐熱性が十分には高くないため、鋳物業用の成形品を製造するためのフィラーとしての使用にほとんど適していない。今回、本発明では、独立気孔微小球が添加剤なしに製造され、したがって完全にパーライトから構成することが好ましい。更に、特別に処理したパーライトは比較的高価であり、処理したパーライトを使用すると経済的な不利益が生じる。
【0063】
本発明のある好ましい実施形態によれば、発泡パーライトの独立気孔微小球は、SiO2、Al23及びK2Oを含み、好ましくはSiO2、Al23、K2O、Na2O、CaO及びFeOを含む。
【0064】
この場合には、微小球は、微小球の合計質量に対して60~85質量%のSiO2、9~15質量%のAl23、及び3~7質量%のK2Oを含むことが好ましく、微小球の合計質量に対して60~85質量%のSiO2、9~15質量%のAl23、3~7質量%のK2O、1~6質量%のNa2O、0.1~2質量%のCaO、及び0.1~2質量%のFeOを含むことが好ましい。
【0065】
本発明のある好ましい実施形態によれば、微小球を、発泡ガラスと組み合わせて使用する。
【0066】
その場合には、使用する微小球を、2種の異なる粒子径を有する発泡ガラスと組み合わせて使用することが特に有利で、したがって特に好ましいことが明らかとなった。このケースにおいて、第1の発泡ガラスは、0.1~0.3mmの範囲の粒子径を有し、第2の発泡ガラスは、0.25~0.5mmの範囲の粒子径を有することが特に好ましい。
【0067】
本発明における使用では、使用する微小球と発泡ガラス又は全ての発泡ガラスの質量比は、1:1~1:2であることが同様に好ましく、好ましくは1:1.5~1:1.9である。
【0068】
本発明の発泡パーライトの独立気孔微小球の、鋳物業用の成形品を製造するためのフィラーとしての使用では、微小球がその表面上で閉じており、粒子強度が1.9N/mm2を超え、微小球を異なる2種の粒子径を有する2種の異なる発泡ガラスと組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には、第1の発泡ガラスは、0.1~0.3mmの範囲の粒子径を有し、第2の発泡ガラスは、0.25~0.5mmの範囲の粒子径を有し、微小球と発泡ガラスの混合物を、コールドボックス法を用いて成形品を製造するために使用することが特に好ましい。
【0069】
本発明のある好ましい実施形態では、微小球を、焼成した籾殻灰と組み合わせて使用する。
【0070】
本発明における使用では、微小球を、発泡ガラス及び焼成した籾殻灰と組み合わせて使用することが同様に好ましい。この場合には、焼成した籾殻灰の割合は、微小球、発泡ガラス、及び焼成した籾殻灰の合計質量に対して0.5~5質量%の範囲、好ましくは1~3質量%の範囲が特に好ましい。どちらかの場合には、好ましくは、微小球と発泡ガラス又は全ての発泡ガラスの質量比は、1:1~1:2、好ましくは1:1.5~1:1.9であり、発泡ガラスは、好ましくは0.1~0.3mmの範囲の粒子径を有する。微小球、発泡ガラス、及び焼成した籾殻灰の混合物は、バインダーとして水ガラスを用いて成形品を製造するのに特に適している。
【0071】
DE 10 2011 079 692に記載されるように、焼成した籾殻灰の使用は好ましい。焼成した籾殻灰は、好ましくはDE 10 2011 079 692からの方法により製造される。
【0072】
本発明における使用では、微小球を、有機若しくは無機バインダー又は有機若しくは無機バインダーの混合物と組み合わせて使用することが好ましく、バインダーは、好ましくは水ガラス、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分(好ましくはフェノール樹脂)を含む2成分系、及びデンプンからなる群から選択される。
【0073】
上述した2成分系との関連で、遊離水酸基は、水酸基がエーテル化していないことを意味する。ポリオール成分として使用できる好ましいフェノール樹脂は、例えばEP 1 057 554 B1に記載されるように、オルト位が縮合したフェノール性レゾール(ベンジルエーテル樹脂とも呼ばれる)である。「オルト位が縮合したフェノール性レゾール」又はベンジルエーテル樹脂という用語は、当業者の慣習上の理解によれば、テキスト「Phenolic Resins: A Century of progress」(編集: L. Pilato, 発行: Springer, 発行年: 2010)の477頁、図18.22による構造を有する化合物、及び、「ベンジルエーテル樹脂(オルト-フェノールレゾール)」と呼ばれており、及び/又はセクション2.2で示されるベンジルエーテルポリオールの式に含まれる、「Urethane Cold Box Process」 (2月 1998年)のVDG [German Automakers Association] R 305 データシートによる化合物をも包含する。
【0074】
反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分(好ましくはフェノール樹脂)を含む2成分系のうち、コールドボックスバインダーが好ましい。コールドボックスバインダーは、霧又は蒸気状(「ガス発生(gassing)」)で供給される4級アミン触媒を使用して硬化するバインダーである。
【0075】
2成分系の個々の成分は、任意で、溶媒中の溶液中に存在してもよい。ポリオール成分及びポリイソシアネート成分に対する溶媒を選択する際、それらはこの反応にかなりの影響を与えるかもしれないが、溶媒は、触媒の存在下でポリイソシアネートとポリオール間の反応に重大な関与をしないものであることが保証されるべきである。コールドボックスバインダー成分に対する好適な溶媒として、特に、a)脂肪酸メチルエステル、好ましくは菜種オイルのメチルエステル、及び/又はb)アルキルシリケート(好ましくはテトラエチルシリケート(TEOS))、アルキルシリケートオリゴマー、又はアルキルシリケートと/若しくはアルキルシリケートオリゴマーの対応する混合物を使用することができる。アルキルシリケート、アルキルシリケートオリゴマー、及び特にテトラエチルシリケート(TEOS)の、コールドボックスバインダーに対する溶媒としての使用は、例えば、EP 1 057 554 B1に記載されている。脂肪酸メチルエステル及び特に菜種オイルメチルエステルの使用は、EP 0 771 599 B2に記載されている。
【0076】
本発明における使用では、微小球を、有機バインダー、好ましくはコールドボックスバインダーと組み合わせて使用することが好ましく、コールドボックスバインダーは、有機アミンを用いたガス発生により硬化する。
【0077】
更に、鋳物業用の成形品は、断熱性又は発熱性の押湯、押湯被覆材、押湯スリーブ、押湯蓋、充填漏斗、供給要素、及び加熱パッドからなる群から選択されることが好ましい。
【0078】
本発明における使用では、非鉄鋳造用の断熱性又は発熱性の押湯、好ましくはアルミニウム鋳造用の断熱性の押湯を製造するための使用であることが特に好ましい。
【0079】
これに関連して、本発明における使用では、コールドボックス法を用いて、好ましくはポリウレタンコールドボックス法によって成形品を製造するための使用であることが特に好ましい。本発明との関連において、コールドボックス法とは、押湯の製造に主に冷たい(つまり、加熱していない又は熱くないこと)鋳型を使用する押湯の製造方法のことである。ポリウレタンコールドボックス法は、従来、当該技術分野において知られている。例えば「Urethane Cold Box Process」(2月 1998)のVDG [German Automakers Association] R 305 データシートを参照のこと。
【0080】
ポリウレタンコールドボックス法(「ウレタンコールドボックス法」とも呼ばれる)によって押湯を製造するために、組成物(押湯組成物)を、先ず、本発明における使用のための発泡パーライトの独立気孔微小球と、任意で更なる成分(例えば、上述した更なるフィラー)を、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分(好ましくはフェノール樹脂)を含む2成分バインダー系の2種の成分とともに混合することで製造する。それから、成形品混合物が成型される。その後、4級アミン触媒の短時間のガス発生を用いて、成型された成形品混合物が硬化する。その後、押湯は鋳型から除去され、使用することができる。
【0081】
発泡パーライトの独立気孔微小球の本発明における使用では、特に好ましくは、微小球はその表面上で閉じており、非鉄鋳造、好ましくはアルミニウム鋳造のための鋳物業用のコールドボックス法を用いた成形品の製造のための使用であり、微小球は、1.9N/mm2を超える粒子強度を有し、2種の異なる粒子径を持つ発泡ガラスと組み合わせて、第1の発泡ガラスは、0.1~0.3mmの範囲の粒子径を有し、第2の発泡ガラスは、0.25~0.5mmの範囲の粒子径を有し、第1の発泡ガラスと第2の発泡ガラスの質量比が、好ましくは1.5:1~1:1.5の範囲、好ましくは1.05:1~1:1.05の範囲、より好ましくは1:1であり、及び/又は発泡ガラス又は全ての発泡ガラスの間の質量比が、1:1~1:2、好ましくは1:1.5~1:1.9である。
【0082】
本発明の更なる態様は、鋳物業用の成形品を製造するための、好ましくは鋳物業用の押湯を製造するための、より好ましくはアルミニウム鋳造のための押湯を製造するための組成物に関し、フィラーとして(上記で定義したような)発泡パーライトの独立気孔微小球、及びバインダーを含み、バインダーは、水ガラス、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分(好ましくはフェノール樹脂)を含む2成分系、及びデンプンから選択される。バインダーは、好ましくは有機バインダー、より好ましくはコールドボックスバインダーである。
【0083】
バインダーは、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分(好ましくはフェノール樹脂)を含む2成分系を含むか、又は水ガラスを含むことが好ましい。
【0084】
本発明の目的で、本発明における使用のための発泡パーライトの独立気孔微小球について記載された特徴は、好ましくは本発明の好ましい組成物においても実現される。
【0085】
本発明では、組成物において、微小球は、多段式の温度区域を持ち、好ましくは細流管の温度区域が電気的に加熱される細流管中でパーライト砂を膨張させる方法によって得られることが好ましい。
【0086】
本発明における組成物では、発泡パーライトの独立気孔微小球の粒子径d50が、好ましくは180~300μm、好ましくは190~270μm、より好ましくは200~250μmである。
【0087】
本発明における組成物では、発泡パーライトの独立気孔微小球が、
(a)20~170μm、好ましくは80~160μm、より好ましくは100~140μmの粒子径d10を有し、
及び/又は、
(b)280~600μm、好ましくは290~450μm、より好ましくは300~400μmの粒子径d90を有する
ことが好ましい。
【0088】
本発明における組成物では、組成物の合計質量に対し、好ましくは少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも60質量%の微小球を含む。
【0089】
本発明の組成物は、更に
a)酸化剤、好ましくは硝酸カリウム又は硝酸ナトリウム、並びに金属酸化物及び酸化される金属
及び/又は
b)上記で定義した微小球ではない球状粒子
を含むことも同様に好ましい。
【0090】
本発明のある好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、フライアッシュの球体、気泡ガラス、珪砂、焼成珪藻土、シャモット、菫青石、ムライト、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは発泡ガラス、菫青石、焼成した籾殻灰、及びそれらの混合物から選択される成分を含む。
【0091】
本発明の組成物は、更に2種の異なる粒子径を有する発泡ガラスを含むことが特に好ましい。その場合には、第1の発泡ガラスは、0.1~0.3mmの範囲の粒子径を有し、第2の発泡ガラスは、0.25~0.5mmの範囲の粒子径を有することが特に好ましい。
【0092】
これに関連して、本発明の組成物は、第1の発泡ガラスと第2の発泡ガラスの間の質量比が、好ましくは1.5:1~1:1.5、好ましくは1.05:1~1:1.05の範囲、より好ましくは1:1であり、
及び/又は、
微小球と発泡ガラス又は全ての発泡ガラスの間の質量比が、1:1~1:2、好ましくは1:1.5~1:1.9である。
【0093】
本発明において、組成物は、発泡パーライトの独立気孔微小球を含むか、発泡パーライトの独立気孔微小球からなり、微小球はその表面上で閉じており、粒子強度が1.9N/mm2を超え、微小球は、2種の異なる粒子径を有する発泡ガラスと組み合わせて存在することが特に好ましい。ここで、第1の発泡ガラスは、0.1~0.3mmの範囲の粒子径を有し、第2の発泡ガラスは、0.25~0.5mmの範囲の粒子径を有し、微小球と発泡ガラスの混合物を、コールドボックス法を用いて成形品を製造するために使用することが特に好ましい。
【0094】
本発明のある好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、フライアッシュの球体、気泡ガラス、珪砂、焼成珪藻土、シャモット、菫青石及びムライトからなる群から選択される成分を更に含む。
【0095】
本発明の更なる態様は、先に上記で定義されたような発泡パーライトの独立気孔微小球を使用して、又は本発明の組成物を使用して製造される、鋳物業用の成形品に関する。
【0096】
本発明に関連した更なる態様は、以下の工程を有する、鋳物業用の成形品の製造方法に関する:
(a)上記で定義した発泡パーライトの独立気孔微小球を製造又は提供する工程、
(b)工程(a)で製造又は提供された発泡パーライトの独立気孔微小球を、バインダー及び任意で更なる成分と混合して組成物を与える工程、及び
(c)工程(b)からの組成物を成型及び硬化して成形品を与える工程、
又は、
(i)本発明の組成物を製造又は提供する工程、及び
(ii)工程(i)からの組成物を成型及び硬化して成形品を与える工程。
【0097】
ここで述べる任意の更なる成分は、
・更にフィラー、好ましくはフライアッシュの球体、気泡ガラス、珪砂、焼成珪藻土、シャモット、菫青石、ムライト、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは発泡ガラス、菫青石、焼成した籾殻灰、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
・酸化剤、好ましくは硝酸カリウム又は硝酸ナトリウム、並びに任意で金属酸化物及び酸化剤により酸化される金属(好ましくはアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、及びケイ素からなる群から選択される)
を含む。
【0098】
ここで、本発明の方法は、有機若しくは無機バインダー又は有機及び無機バインダーの混合物を、工程(b)で使用することが特に好ましく、バインダーは、水ガラス、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、反応物質としてポリイソシアネート成分及び遊離水酸基(OH基)を含むポリオール成分(好ましくはフェノール樹脂)を含む2成分系、及びデンプンからなる群から選択されることが好ましい。
【0099】
本発明の方法は、有機バインダー、好ましくはコールドボックスバインダーを、工程(b)又は工程(i)で使用し、工程(c)又は工程(ii)の硬化を、有機アミンを用いたガス発生によるコールドボックス法に従って行うことが特に好ましい。
【0100】
本発明に関連して、好ましいものとして上記で特定される2種以上の態様は、同時に実現されることが好ましい。より具体的には、そのような態様の組み合わせ、及び添付の特許請求の範囲から生じる対応する特徴の組み合わせが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1図1は、実施例2(発明3として特定される;太い破線)並びに比較例2(標準方式1として特定される;実線)及び比較例3(標準方式2として特定される;灰色の破線)の温度/時間プロットを示す図である。アルミニウムの溶融温度は、製造される閉じられた押湯中でより長く維持し、すなわち、溶融アルミニウムは、より遅く冷却することを示す。
【0102】
本発明は、下記の実施例を用いることによってより詳細に明らかにされる。
【実施例
【0103】
実施例
測定方法
1.粒子径の測定
DIN 66165-2(4. 1987)に従ったふるい分けによって、方法F(動揺した単一のふるい又は静止したガス状の流体にセットされたふるいを備える機械的ふるい分け)を使用して、独立気孔微小球の粒子径を測定する。RETSCH AS 200コントロール型の振動式ふるい機を使用する。振幅をレベル1.8に設定する。10秒のふるい間隔(interval sieving)はない。ふるい分け時間は5分である。
【0104】
2.嵩密度の測定
嵩密度は、DIN EN ISO 60 2000-1にしたがって測定した。
【0105】
3.化学組成及びモルフォロジーの測定
サンプルのモルフォロジーは、JeolのJSM 6510からのSEMにより実行した。化学組成は、Oxford INCAのEDXを使用してEDX分析により実行した。
【0106】
モルフォロジーを測定するために、更に、Visicam 3.0カメラを備えるVisiScope ZTL 350光学顕微鏡を利用した。
【0107】
4.粒子強度
粒子強度は、DIN EN 13055-1 Annex A, 方法1(0.5mmの振幅で2×30秒振とうする)に基づいた方法で測定した。
【0108】
実施例1及び比較例1
下記の表で特定される成分を使用して、コールドボックス法(触媒はN,N-ジメチルプロピルアミン)により試験片を製造し、低圧マノメーターN(モータードライブを備える)を備えるPFG強度試験装置を使用して、VDG standard P 73, 方法A(BOSCH Profi 67 mixerを使用、周囲温度及び周囲湿度で、突き固めることにより製造、1時間後及び24時間後に試験値を記録、各ケースで3回測定)に基づく方法で曲げ強度を測定した。
【0109】
実施例1では、粒子径d50が0.25mm(d10=0.14mm、d90=0.40mm)及び嵩密度が300g/lで、粒子強度が2.0N/mm2である発泡パーライトの独立気孔微小球を使用する。
【0110】
【0111】
実施例1からの混合物は、押湯の使用に好適である。比較例1からの混合物は、不十分な強度のため押湯の使用に好適ではない。
【0112】
実施例2並びに比較例2及び比較例3
下記の表に示される成分を使用して、下部で閉じられた押湯蓋を、コールドボックス法(触媒はN,N-ジメチルプロピルアミン)によって各々の組成から製造し、押湯蓋を同じ形状を有する異なる組成から製造した。
【0113】
押湯蓋を、主として脆い珪砂の砂床に成型し、いずれの場合も主として被覆されたPt/Rh.Pt熱電対とともに提供する。続いて、押湯蓋を溶融アルミニウム(Al226)で満たし、溶融アルミニウムの浴温は800℃であった。溶融アルミニウムを押湯蓋に注いだ後、温度プロファイルを記録する。
【0114】
実施例2では、粒子径d50が0.25mm(d10=0.14mm、d90=0.40mm)及び嵩密度が300g/lで、粒子強度が2.0N/mm2である発泡パーライトの独立気孔微小球を使用する。
【0115】
【0116】
図1は、実施例2(発明3として特定される)並びに比較例2(標準方式1として特定される)及び比較例3(標準方式2として特定される)の温度/時間プロットを示す。各鋳造は同じ温度で行った。実施例2からの本発明の組成物が、比較例2及び3からの組成物よりも断熱効果に優れることが分かる。
【0117】
実施例3:パーライトのEnslin吸水量の測定
開放気孔の、発泡パーライト(Cenolite P55120)及び閉じた表面を有する発泡パーライトの独立気孔微小球の吸水量を、Enslinの方法により測定した。測定は、それぞれのバルク製品0.5gを、Enslin装置を使用して行った。結果を下記の表にまとめる。
【0118】
【0119】
測定結果は、発泡パーライトの独立気孔微小球の吸水量が、開放気孔の、発泡パーライトの吸水量のおよそたった半分であることを明確に示している。期待していたように、発泡パーライトの独立気孔微小球の場合よりも実質的に多くの水が、開放気孔の、発泡パーライトの開放気孔に浸透することができる。
図1