(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミン
(51)【国際特許分類】
C07H 5/06 20060101AFI20231101BHJP
A61K 31/7008 20060101ALI20231101BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20231101BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20231101BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231101BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20231101BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231101BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20231101BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20231101BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C07H5/06
A61K31/7008
A61K31/12
A61K31/7034
A61K9/14
A61P29/00
A61P19/04
A61P19/02
A61P1/00
A61P13/02
A61K8/60
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019056906
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】102018000003912
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519105005
【氏名又は名称】イノヴェット イタリア エッセ.エッレ.エッレ.
【氏名又は名称原語表記】INNOVET ITALIA S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Egadi, 7, I-20144 MILANO, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ヴァッレ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ヴァッレ マリア フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】マルコロンゴ ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】パラッシア ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】クッツォクレア サルヴァトーレ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506908(JP,A)
【文献】特表2009-503061(JP,A)
【文献】特開2003-081838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 5/
A61K 31/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項2】
少なくとも96体積%の粒子が0.6ミクロン~10ミクロンの粒径を有する、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールによって測定された粒径分布を有する、請求項1に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA)。
【請求項3】
3.1ミクロン~3.5ミクロンのモードを有し、少なくとも97体積%の粒子が10ミクロンよりも小
さい粒径分布曲線を有する、請求項2に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項4】
PGAに対して3%~20%、又は4%~15%、又は4.5%~6%の重量百分率の脂肪酸
が添加
されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項5】
クルクミン(CUR)及び/又はポリダチン(POL)との共微粒子化形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項6】
N-パルミトイル-D-グルコサミン及びクルクミンが3:1~1:3又は2:1~1:1の重量比である、請求項5に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項7】
N-パルミトイル-D-グルコサミン及びポリダチンが20:1~5:1又は12:1~8:1の重量比である、請求項5に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項8】
共微粒子化PGA/CUR混合物が、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールによって測定したときに、3.1ミクロン~3.8ミクロンのモードの粒径分布曲線を有し、少なくとも98体積%の粒子が10ミクロンよりも小
さい、請求項5又は6に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項9】
共微粒子化PGA/POL混合物が、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールによって測定したときに、3.1ミクロン~3.8ミクロンのモードの粒径分布曲線を有し、少なくとも98体積%の粒子が10ミクロンよりも小
さい、請求項5又は7に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミンを含むヒト用の又は動物用の医薬組成物。
【請求項11】
経口投与、口腔投与、非経口投与、直腸投与又は経皮投与用の剤形に配合されている、請求項10に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミンを含む、食事療法用組成物、ダイエタリーサプリメント若しくは特別医療目的用食品(FSMP)、又は動物用の飼料若しくは栄養補給剤。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミンを含む化粧品組成物。
【請求項14】
上皮及び滑膜の機能不全に起因するヒト及び動物の慢性全身性炎症性疾患の治療における使用のための、
請求項1~9のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン
;
請求項10
若しくは11に記載の
医薬組成物
;又は
請求項12に記載の食事療法用組成物、ダイエタリーサプリメント若しくは特別医療目的用食品(FSMP)、又は動物用の飼料若しくは栄養補給剤。
【請求項15】
前記疾患が、
滑膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
腸粘膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
尿路上皮粘膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
ケラチン性上皮の機能不全に起因する炎症性疾患、
から選択される:
請求項14に記載の使用のための
、
請求項1~9のいずれか一項に記載のN-パルミトイル-D-グルコサミン
;
請求項10
若しくは11に記載の
医薬組成物
;又は
請求項12に記載の食事療法用組成物、ダイエタリーサプリメント若しくは特別医療目的用食品(FSMP)、又は動物用の飼料若しくは栄養補給剤。
【請求項16】
N-パルミトイル-D-グルコサミンを脂肪酸の存在下で結晶化させる方法であって、
a)N-パルミトイル-D-グルコサミ
ンを準備する工程と、
b)N-パルミトイル-D-グルコサミンを脂肪酸又はその塩と共に極性溶媒に懸濁する工程であって、該脂肪酸又はその塩がN-パルミトイル-D-グルコサミンに対して2重量%~20重量%又は4重量%~10%重量の量で存在する工程と、
c)工程b)の懸濁液を50℃~90℃の温度又は溶媒の還流温度で、15分又は30分又は1時間よりも長い時間にわたって加熱する工程と、
d)結晶化混合物をゆっくりと10℃未満の温度にする工程と、
e)N-パルミトイル-D-グルコサミンと脂肪酸との均質混合物の形態の結晶化物を回収する工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記極性溶媒がメタノール、エタノール、アセトン及び酢酸エチルから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記脂肪酸がパルミチン酸である、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンベースの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物の最外表面から内臓器官の最小表面までの自由表面を被覆する(lining)組織は、上皮及び膜に分けられる。膜は、外部と連絡する又は連絡しない体腔を覆う。典型例は腸粘膜、並びに関節包の内表面、及び関節腔に含まれる腱及び靱帯を被覆する滑膜である。
【0003】
これらは主に、配置に応じて、滑り及び潤滑機能(例えば、可動関節(mobile joints)の滑膜における)又は吸収機能(例えば、腸粘膜における)と関連する保護組織である。
【0004】
この防御機能が損なわれると(例えば、機械的傷害又は微生物不全(dismicrobism)状態の後)、機能不全状態が生じ、これには近年、最先端の生物医学研究において特別の注意が払われている。
【0005】
ごく最近になって、これらの機能不全が局所的だけでなく、全身レベルでも影響を有し、慢性炎症反応(CSI)を引き起こすことが証明されている。CSIは、滑膜の変化(特に変形性関節症中)及び種々の上皮の機能不全の両方によって生じることが示されている。
【0006】
被覆組織の細胞は、種々のストレス(病毒)を受けると炎症誘発性因子を放出し、これが隣接免疫細胞との双方向のクロストークにより反応を異なる器官、更には遠隔器官にまで拡大する。滑膜及び上皮組織の機能不全によって引き起こされる炎症状態の全身的増幅に主に関与する因子の中でも、特定のサイトカイン、及びフリーラジカル又は活性酸素種(ROS)が特に重要視される。
【0007】
免疫炎症性(immunoinflammatory)細胞によって放出されたプロテアーゼ及びin situで生成したROSの両方が、細胞外基質のグリコサミノグリカン(GAG)を分解し、構造的及び機能的障壁の弱体化、並びに損傷の増大を生じる。
【0008】
これらの最近の知識により、慢性全身性炎症(CSI)の発生を引き起こす上皮組織及び膜の機能不全に起因する疾患について、診断並びに予防及び療法のいずれの観点からも全く新しい考え方が特定される。
【0009】
滑膜の機能不全によって引き起こされる最も一般的な慢性全身性炎症は、ヒト及び愛玩動物の両方に非常によく見られる疾患である変形性関節症(OA)である。OAを示す放射線学的兆候は、高齢ヒト集団(65歳超)の70%に存在し、獣医学分野においては、ネコ集団の30%弱に存在する。さらに、60歳超の男性の10%及び女性の13%が症候性OAに罹患し、獣医学分野においては、1歳超のイヌの20%もが症候性OAに罹患する。OAは当初、変性疾患に分類され、したがって関節軟骨のみに限られていたが(prerogative)、現在では軟骨だけでなく滑膜から腱、筋肉、靱帯及び軟骨下骨までの関節組織の全てを侵す炎症性障害として認識されている。
【0010】
また、皮膚科分野では、上皮の機能不全によって引き起こされる最も頻度の高い慢性全身性炎症として、アトピー性皮膚炎及び乾癬が挙げられる。
【0011】
アトピー性皮膚炎は、ヒト及び愛玩動物の両方で頻度の高い疾患であり、有病率は小児で約20%、イヌで8%~15%であり(品種によって異なる)、ネコにもよく認められる。上皮起源の慢性全身性炎症(CSI)が、アトピー性皮膚炎と他の器官の炎症性及び/又は神経炎症性障害との間の共存症に確認される。
【0012】
乾癬は、人口の2%~4%が罹患している慢性炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎と同様、多くの最近の証拠から、IL-17等のインターロイキンの全身レベルの上昇を伴う、皮膚細胞及び免疫炎症性細胞による炎症性サイトカインの産生に基づくCSI状態の起源が乾癬においても認識されている。関節、心臓血管、腎臓、肝臓及び代謝レベルでの乾癬の皮膚外への影響は、このサイトカインによるものである。
【0013】
炎症性腸疾患(IBD)は、ヒトにおいて疫学的に増加している障害であり、イヌ及びネコにもよく認められる。IBDは、慢性全身性炎症疾患とみなされ、IBDと整形外科的疾患との間の共存症が慢性全身性炎症性の状況の重要な確証となる。
【0014】
同様の観察結果が他の被覆上皮、特に膀胱尿路上皮の障害についても得られている。間質性膀胱炎及び再発性膀胱炎を患う患者は、随伴する外陰部痛、線維筋痛、胃食道逆流を訴えることが多い。ヒト集団及びネコ集団の両方に見られる痛みを伴う障害である間質性膀胱炎及び再発性膀胱炎は実際に、全身性(血清)炎症マーカーレベルの上昇及び免疫細胞の活性化を伴う高度の組織炎症と関連する膀胱尿路上皮構造の変化を特徴とする。
【0015】
末梢カンナビノイド受容体CB2の調節異常と関連がある疾患において活性を有する分子群に含まれるN-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA)が特許文献1に記載されている。治療される可能性がある疾患として、関節リウマチ等の慢性又は急性の関節炎が記載されている。しかしながら、この分子についての実験データは報告されておらず、変形性関節症、乾癬、アトピー性皮膚炎、腸上皮疾患又は膀胱疾患等の慢性全身性炎症性疾患に対する効果も示されていない。
【0016】
さらに、特許文献1は、微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンを記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【0018】
本発明は、微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンに関する。
【0019】
本発明は、共微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンとクルクミンとの組成物にも関する。
【0020】
本発明は、好ましくは変形性関節症、乾癬、アトピー性皮膚炎、及び腸上皮疾患又は膀胱疾患から選択される慢性全身性炎症性疾患の治療における使用のための微粒子化形態の、又はクルクミンと共微粒子化した、又はポリダチンと共微粒子化したN-パルミトイル-D-グルコサミンに更に関する。
【0021】
さらに、本発明は、微粒子化形態の又はクルクミン若しくはポリダチンと共微粒子化したN-パルミトイル-D-グルコサミンを含むヒト若しくは動物用の医薬配合物、規定食若しくはサプリメント、又は動物用の飼料若しくは栄養補給剤にも関する。
【0022】
本発明は、微粒子化形態の又はクルクミン若しくはポリダチンと共微粒子化したN-パルミトイル-D-グルコサミンの製造のために特別に設計された微粒子化又は共微粒子化プロセスにも関する。
【0023】
添付の特許請求の範囲で概説される、これらの目的及び更なる目的は、以下の記載において説明される。特許請求の範囲の文言は、記載の十分性を評価する目的で本明細書に含まれるとみなすべきである。
【0024】
本発明の更なる特徴及び利点が、非限定的な例として与えられる以下の好ましい実施形態の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンの粒径分布曲線V%/サイズを示す図である。
【
図2】クルクミンと共微粒子化したN-パルミトイル-D-グルコサミンの粒径分布曲線V%/サイズを示す図である。
【
図3】微粒子化クルクミンの粒径分布曲線V%/サイズを示す図である。
【
図4】サブミクロン微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンの粒径分布曲線I%/サイズを示す図である。
【
図5】サブミクロン微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンの粒径分布曲線V%/サイズを示す図である。
【
図6】非微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンの粒径分布曲線V%/サイズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の態様では、本発明は、微粒子化形態のN-パルミトイル-D-グルコサミン化合物(以下、PGAとも称される)に関する。
【0027】
「微粒子化形態の化合物」という一般用語は、10ミクロン未満であるが0.6ミクロン超のモードを有する分布曲線によって表される、体積百分率として規定され、レーザー光散乱法によって測定される粒径分布を有する化合物を指す。
【0028】
一実施形態では、PGAは、少なくとも96体積%の粒子が0.6ミクロン~10ミクロンの粒径を有する、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールで測定される上に規定した粒径分布を有する。
【0029】
好ましい実施形態では、PGAは、3.1ミクロン~3.5ミクロンのモードを有し、少なくとも97体積%の粒子が10ミクロンよりも小さく、好ましくは少なくとも50体積%の粒子が3.5ミクロンよりも小さい、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールで測定される上に規定した粒径分布を有する。この粒径分布の一例を
図1のグラフ及び付表に示す。
【0030】
微粒子化は、N-パルミトイル-D-グルコサミン粒子を破砕するために力学的エネルギーの代わりに運動エネルギーを利用することが可能な、圧縮空気ジェット「スパイラル技術(spiral technology)」で作動する流体ジェットシステム(例えば、Jetmill(商標)モデル)において行うことができる。これらのデバイスは従来のものであるため、更に説明しない。
【0031】
しかしながら、そのようにPGAの微粒子化を行っても上に規定した微粒子化生成物に適合する粒径分布を得ることができないことが見出された。実際には、
図6の粒径分布曲線に示されるように、10ミクロンを明らかに上回る、特に31ミクロン~40ミクロンのモードを有する不規則なガウス曲線を特徴とする生成物が得られる。
【0032】
しかしながら、驚くべきことに、PGAを脂肪酸の存在下で予め結晶化させ、次いで結晶化生成物を、例えば圧縮空気ジェットスパイラル技術で作動する流体ジェットシステムを用いた従来の微粒子化プロセスに供することによって、上記の粒径分布を有する微粒子化形態のPGAを得ることができることが見出された。
【0033】
脂肪酸は、パルミチン酸であるのが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態では、脂肪酸は、PGAに対して3%~20%、又は4%~15%、又は4.5%~6%の重量百分率(基準(authentic)パルミチン酸を含有する標準液に対する逆相HPLC法によって最終生成物について決定される)で存在する。
【0035】
脂肪酸の存在下でのPGAの結晶化は、PGAと脂肪酸とを均質に(intimately)混合する工程を含み、脂肪酸はPGAに対して2%~20%、好ましくは4%~10%の重量百分率である。
【0036】
好ましい実施形態では、結晶化方法は、
a)PGA、好ましくはTLC分析によって決定される純度が98%を超えるPGAを準備する工程と、
b)PGAを脂肪酸又はその塩と共に極性溶媒に懸濁する工程であって、該脂肪酸又はその塩がPGAに対して2重量%~20重量%又は4重量%~10%重量の量で存在する、工程と、
c)工程b)の懸濁液を50℃~90℃の温度又は溶媒の還流温度で、15分又は30分又は1時間よりも長い時間にわたって加熱する工程と、
d)結晶化混合物をゆっくりと10℃未満の温度にする工程と、
e)PGAと脂肪酸との均質混合物の形態の結晶化物(crystallisate)を回収する工程と、
を含む。
【0037】
上述のように、脂肪酸はパルミチン酸であるのが好ましい。
【0038】
極性溶媒はメタノール、エタノール、アセトン又は酢酸エチルから選択されるのが好ましい。
【0039】
工程d)は20分、より好ましくは30分にわたって行うのが好ましい。
【0040】
脂肪酸の存在下でのPGAの合成及び結晶化は、以下の実施例(experimental part)において詳細に説明する。
【0041】
上に説明及び規定した微粒子化PGAを、上皮及び滑膜の機能不全に起因するヒト及び動物の慢性全身性炎症性疾患の治療に使用することができることも見出された。
【0042】
特に、これらの疾患は、
滑膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
腸粘膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
尿路上皮粘膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
ケラチン性上皮の機能不全に起因する炎症性疾患、
から選択されるのが好ましい。
【0043】
したがって、本発明は上皮及び/又は滑膜の機能不全に起因するヒト及び動物の炎症性疾患、好ましくは慢性全身性炎症性疾患の治療における使用のための微粒子化形態のPGA、好ましくは3重量%~20重量%の脂肪酸を含む微粒子化形態のPGAに更に関する。
【0044】
驚くべきことに、PGAとクルクミン又はポリダチンとの組合せが炎症性疾患の治療において明らかな相乗効果を有することも見出された。
【0045】
クルクミンは、色が黄色であることから主に植物性染料として使用される、ウコン(Curcuma longa)から抽出された分子である。クルクミンは、以下の化学構造を有する:
【化1】
【0046】
クルクミンは、例えば60%~75%のクルクミン自体、15%~25%のデスメトキシクルクミン及び2%~5%のビスデスメトキシクルクミンを含有する、総クルクミノイドの力価が約95%の市販品である。
【0047】
ポリダチン又はピセイドは、レスベラトロールから誘導され、ブドウ果汁中に存在するスチルベノイドのグルコシドである。これは植物のイタドリ(Polygonum cuspidatum)からも単離することができる。その構造式は、以下の通りである:
【化2】
【0048】
ポリダチンは、酵素的酸化に対する耐性がより高く、グルコース輸送体を用いた能動輸送機構によって細胞内に入り込み、より水溶性であることから腸内でより容易に吸収されるため、レスベラトロールよりも安定し、生物学的に利用可能である。
【0049】
したがって、本発明は、上皮及び/又は滑膜の機能不全に起因するヒト及び動物の炎症性疾患、好ましくは慢性全身性炎症性疾患の治療における使用のためのクルクミンと組み合わせたPGAに更に関する。
【0050】
したがって、本発明は、上皮及び/又は滑膜の機能不全に起因するヒト及び動物の炎症性疾患、好ましくは慢性全身性炎症性疾患の治療における使用のためのポリダチンと組み合わせたPGAにも関する。
【0051】
或る特定の実施形態では、PGA及びクルクミン及び/又はポリダチンを、例えば粉体混合装置又は同様の機器を用いて均質に混合し、乾燥混合物を形成する。
【0052】
PGA及びクルクミン(以下、CURと称される)は3:1~1:3、好ましくは2:1~1:1のPGA/CUR重量比で用いられる。
【0053】
PGA及びポリダチン(以下、POLと称される)は20:1~5:1、好ましくは12:1~8:1のPGA/POL重量比で用いられる。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明は、クルクミンとの共微粒子化形態のPGA、好ましくは3重量%~20重量%の脂肪酸を含むPGAに関する。
【0055】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、ポリダチンとの共微粒子化形態のPGA、好ましくは3重量%~20重量%の脂肪酸を含むPGAに関する。
【0056】
一実施形態では、共微粒子化混合物PGA/CUR及び共微粒子化混合物PGA/POLは、少なくとも96体積%の粒子が0.6ミクロン~10ミクロンの粒径を有する、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールで測定される上に規定した粒径分布を有する。
【0057】
好ましい実施形態では、共微粒子化混合物PGA/CUR及び共微粒子化混合物PGA/POLは、3.1ミクロン~3.8ミクロンのモードを有し、少なくとも98体積%の粒子が10ミクロンよりも小さく、好ましくは少なくとも50体積%の粒子が3.5ミクロンよりも小さい、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールで測定される上に規定した粒径分布を有する。この混合物PGA/CURについての粒径分布の一例を
図2のグラフ及び付表に示す。
【0058】
サブミクロン形態のPGAも調製した。「サブミクロン形態のPGA」という用語は、モードが300ナノメートル未満の分布曲線によって表される、レーザー光散乱法によって測定され、粒子の体積百分率/寸法として規定される粒径分布を有するPGAを指す。
【0059】
本実施形態では、PGAは、少なくとも98体積%の粒子が0.06ミクロン~1ミクロンの粒径を有する、ミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールで測定される上に規定した粒径分布を有する。
【0060】
【0061】
更なる対照として、サブミクロン形態のPGAの粒径分布を、ナノメートル範囲の粒径の研究に特別に使用される別の計器であるMalvern Nanosizerも用いて測定した。
図4に、ミー計算アルゴリズムを用いた、散乱光の強度のパーセンテージ/寸法として表される相対分布グラフを示す。グラフから、得られるモードが170nm~220nmであり、
図5のグラフによって決定されるのと同じ粒径分布が実質的に確認されることが分かる。
【0062】
サブミクロンPGAは、以下の実施例に記載のようにミクロスフェアミル(microsphere mill)を用いた湿式粉砕法によるサブミクロン化プロセスによって得た。この場合にも、サブミクロン形態のPGAを2重量%~20重量%、好ましくは4重量%~10重量%の脂肪酸を用いて、前述のように脂肪酸、好ましくはパルミチン酸を添加した後に得た。
【0063】
サブミクロンPGAは驚くべきことに、実際に予測可能であったように、前述のような微粒子化PGAと比較して改善された活性を示さなかった。それどころか、サブミクロンPGAは、同じ投与用量の微粒子化PGAと比較して顕著に悪化した(pejorative)活性を示した。
【実施例】
【0064】
高純度N-パルミトイル-D-グルコサミン(HPPGA)の調製
794.3gのグルコサミン塩酸塩(3.68モル)を、6700mlの水に撹拌下で可溶化する。
【0065】
溶液を-5℃に冷却し、2104gの炭酸ナトリウム十水和物(7.36モル)を添加する。
【0066】
3000mlのテトラヒドロフランに可溶化した1114gの塩化パルミトイル(4.05モル;1228mlに等しい)を、グルコサミン溶液に非常に激しい撹拌下で1時間かけてゆっくりと添加する。混合物を-5℃で2時間、次いで室温で更に2時間にわたって激しい撹拌下に置く。17500mlの水を添加し、混合物を一晩、穏やかな撹拌下に置く。
【0067】
形成された沈殿物を濾過によって回収し、3000mlの水で3回洗浄する。母液及び洗浄水を捨てる。
【0068】
固体を連続撹拌下で2時間還流させながら5000mlのメタノールから結晶化させた後、熱濾過によって分離し、2000mlの熱メタノールで2回洗浄し、最後に高真空下で乾燥させる。
【0069】
およそ1200gの乾燥生成物が回収される。
【0070】
このようにして得られたN-パルミトイル-D-グルコサミン生成物は、以下の特性を有する:
物理的状態:白色の粉末
分子式:C22H43NO6
分子量:417.6
元素分析:C=63.28% H=10.38% N=3.35% O=22.99%
融点:202℃(dec.)
TLC、溶離液クロロホルム/メタノール/水/NH3(28%) 80:25:2:1 Rf=0.30
TLC純度:98%超
【0071】
パルミチン酸ナトリウムを添加したN-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA)の調製
950gの高純度N-パルミトイル-D-グルコサミン(HPPGA)に、50gのパルミチン酸ナトリウム塩(混合物の総重量に対して5重量%)を添加する。混合物を4リットルのメタノールに効率的な撹拌下で懸濁し、2時間還流させる。次いで、撹拌を行いながら、混合物を1時間のうちに5℃まで徐々に冷却する。次いで、固体を濾過によって分離し、高真空下で乾燥させる。
【0072】
パルミチン酸含量を以下のような基準パルミチン酸標準品に対するHPLC分析によって制御する:
カラムZORBAX SB-C18 4.6 150mm 5ミクロン又は同等物、
移動相:A(0.01Mアンモニア緩衝液-メタノール 2対1);B(アセトニトリル)。0分時点:A 30% B 70%;25分時点:A 10% B 90%;平衡時間:5分間、
流量:1.0ml/分、
カラム温度調節(thermostatation):40℃、
分析時間:25分、
注入量:50μl、
検出器:蒸発光散乱検出器:温度40℃、ガス流量1.5ml/分、ゲイン4。
【0073】
微粒子化プロセス
PGAを上記のような均質PGA/脂肪酸混合物として微粒子化した。
【0074】
また、微粒子化クルクミンを後続の生物学的実験のための比較化合物として調製した。クルクミノイドの力価が少なくとも90%の市販のクルクミンを使用した。このようにして得られた微粒子化クルクミンの粒径分布を
図3に示す。
【0075】
微粒子化及び共微粒子化は、いずれの場合にも圧縮空気ジェット「スパイラル技術」で作動する流体ジェットシステム(特に、Jetmill(商標)モデル)において行った。
【0076】
微粒子化条件:
微粒子化チャンバ内径300mm、
流体ジェット圧8バール、
生成物供給量20kg/時間~25kg/時間。
【0077】
サブミクロン化プロセス
PGA(脂肪酸を添加した)のサブミクロン化プロセスを、WA BACHOFEN(スイス、ムッテンツ)のDYNO-MILL MULTILABミクロスフェアミル、1259.7gの0.3mm径ジルコニアビーズを用いた「湿式粉砕」法によって行った。
【0078】
50gの生成物を1000mlの蒸留水に懸濁し、40℃で4時間粉砕する。得られる懸濁液を取り出し、凍結乾燥によって乾燥させる。
【0079】
粒径分布の決定
粒径分布の決定を、1分間の超音波処理後に湿潤サンプルに対して行った。
【0080】
LALLS(低角レーザー光散乱)法及びミー計算アルゴリズムを用いるMalvern Mastersizer 3000ツールを使用した。サブミクロン形態のPGAの粒径分布の決定については、Malvern Nanosizerツールも比較として使用した。
【0081】
【0082】
生物学的実験
上皮機能不全依存性炎症に対する種々の物理的形態のN-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA)の薬理効果
上皮機能不全が足レベルで決定されるラットの足におけるカラギーナン浮腫の実験モデルを用いた。
【0083】
足におけるカラギーナン浮腫の実験モデルを、動物(ラット)の右足へのカラギーナン溶液(1%カラギーナンを含有する50μlの滅菌生理食塩水を含有する)の足底下(sub-plantar)注射によって誘導した。
【0084】
特定の時間間隔で、足底体積(plantar volume)をプレチスモメーター(plethysmometer)(Ugo Basile、イタリア、ミラン)によって測定した。足底体積の増加を、特定の時間間隔で得られた値と、カラギーナン投与の直前に測定されたベースライン時(時点0)の体積との差として評価した。
【0085】
以下の物理的形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンを試験した:
非微粒子化N-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA)、
微粒子化N-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA-m)、
クルクミンと共微粒子化したN-パルミトイル-D-グルコサミン(PGACUR-m)、
サブミクロン形態のN-パルミトイル-D-グルコサミン(PGA-sm)。
【0086】
以下の物理的形態のクルクミンも試験した:
微粒子化クルクミン(CUR-m)。
【0087】
いずれの場合にも、PGAをPGA/脂肪酸混合物として試験した。
【0088】
ラット(1群当たり10匹の動物)を表1に示す実験群に分けた。
【0089】
カラギーナンのみによって生じた浮腫のパーセンテージとして表される(100に対する値で示す)、このようにして得られた結果は、以下の通りである:
【0090】
【0091】
データから、非微粒子化PGAが完全に不活性であり、サブミクロン化PGA及び微粒子化クルクミンの両方がほぼ完全に不活性であることが示される。
【0092】
微粒子化PGAがカラギーナン浮腫の24.5%の低減を示す一方で、クルクミンと共微粒子化したPGAでは、単独試験に用いた用量に等しい2つの有効成分の用量(PGA-m 20mg/kg;CUR 10mg/kg)で、浮腫の51.5%の低減が強調される。
【0093】
したがって、2つの有効成分の組合せによる明らかな相乗効果が実証された。
【0094】
実際に、
30mg/kg用量のPGA(非微粒子化)による処置は、薬理効果を生じず、
20mg/kg用量のPGA-mによる処置は、明らかな薬理効果を生じ、
20mg/kg用量のPGA-smによる処置は、顕著な薬理効果を生じず、
10mg/kg用量の微粒子化CUR単独による処置は、顕著な薬理効果を生じず、
30mg/kg(20mg/kgのPGA-m及び10mg/kgのCUR-mに相当する)用量のPGACUR-mによる処置は、PGA-m単独で得られるよりも明らかに優れた顕著な薬理効果を生じる。
【0095】
カラギーナン浮腫におけるポリダチンと共微粒子化したN-パルミトイル-D-グルコサミンの薬理学的相乗効果
この場合にも、上皮機能不全が足レベルで決定されるラットの足におけるカラギーナン浮腫の実験モデルを用いた。
【0096】
浮腫を50μlの1%カラギーナン水溶液の足底下注射によって誘導した。30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間の時間間隔で、注射を受けた足の体積を、プレチスモメーター(Ugo Basile、イタリア、ミラン)を用いて評価した。ポリダチンを含む又は含まない、以下の物理的形態のN-パルミトイル-D-グルコサミンを、各群10匹の動物(体重130g~160gのウィスター系)の群において括弧内に示す投与量で試験した:
群A)カラギーナン
群B)カラギーナン+微粒子化パルミトイルグルコサミン(10mg/kg)
群C)カラギーナン+微粒子化ポリダチン(1mg/kg)
群D)カラギーナン+パルミトイルグルコサミン(10mg/kg)+ポリダチン(1mg/kg)(混合)
群E)カラギーナン+パルミトイルグルコサミン及び共微粒子化ポリダチン(10:1)(11mg/kg)
【0097】
【0098】
2つの物質を共微粒子化形態で投与した場合に、2つの物質を別個に投与した場合又は単に混合した場合と比較して、明らかな相乗効果が示される。
【0099】
したがって、微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンと共微粒子化した形態のPGA(但し、サブミクロン形態のPGAではない)を、上皮及び滑膜の機能不全に起因するヒト及び動物の慢性全身性炎症性疾患、特に好ましくは以下から選択される疾患の治療に用いることができることが明らかである:
滑膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
腸粘膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
尿路上皮粘膜の機能不全に起因する炎症性疾患、
ケラチン性上皮の機能不全に起因する炎症性疾患。
【0100】
微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAは、医薬組成物又は動物用組成物に加えることができ、経口投与、口腔投与、非経口投与、直腸投与又は経皮投与用の剤形に配合することができる。
【0101】
経口投与については、医薬組成物は例えば、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)、又は阻害剤(inhibiting agents)(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような薬学的に許容可能な賦形剤を用いて従来の方法で調製される錠剤、又は硬カプセル若しくは軟カプセルのいずれかの形態とすることができる。錠剤は、当該技術分野で既知の方法によってコーティングすることができる。経口投与用の液体調製物は例えば溶液、シロップ若しくは懸濁液の形態としてもよく、又は使用前に水若しくは他の好適なビヒクルで再構成される凍結乾燥品として与えてもよい。かかる液体調製物は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は食用硬化油脂)、乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム)、非水性ビヒクル(例えば扁桃油、油性エステル(oily esters)、エチルアルコール又は分留植物油)、及び保存料(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエート若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、又はソルビン酸)等の薬学的に許容可能な添加物を用いて従来の方法によって調製することができる。調製物が香料、着色料及び甘味料を含有することが好都合な場合もある。
【0102】
経口投与用の調製物は、有効成分の制御放出を可能にする適切な方法で配合することができる。
【0103】
口腔投与については、組成物は、頬粘膜への吸収に好適な従来の方法で配合された錠剤又はトローチ剤の形態とすることができる。典型的な口腔用配合物は、舌下投与用の錠剤である。
【0104】
微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAは、注射による非経口投与のために配合することができる。注射用の配合物は、保存料を添加した、例えばバイアル内の一回量の形態で与えてもよい。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルション等の形態とすることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化剤(formulary agents)を含有していてもよい。代替的には、有効成分を使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌水で再構成される粉末としてもよい。
【0105】
本発明によると、微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAは、例えばココアバター又は他のグリセリド等の一般的な坐剤の主要成分を含有する坐剤又は停留浣腸等の直腸用組成物に応じて配合することもできる。
【0106】
上記の組成物に加えて、微粒子化形態、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAは、デポ剤としても配合することができる。かかる長時間作用型配合物は、注入(例えば皮下、経皮的又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与することができる。このため、例えば、微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAは、適切なポリマー材料若しくは疎水性材料(例えば、好適な油中のエマルションの形態)若しくはイオン交換樹脂を用いて、又は最小限に可溶性の(minimally soluble)誘導体として配合することができる。
【0107】
本発明によると、ヒト(体重約70kg)への投与について提案される、微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAの用量は、用量単位当たり1mg~7g又は10mg~700mgの有効成分の範囲である。用量単位は、例えば1日1回~4回投与することができる。用量は、投与に選択される経路に応じて異なる。患者の年齢及び体重、更には治療すべき病態の重症度に応じて投与量を常に変化させる必要があり得ることを考慮すべきである。正確な用量及び投与経路は、最終的に担当の医師又は獣医師の判断により決定される。
【0108】
本発明は、微粒子化形態の、又はクルクミン及び/又はポリダチンと組み合わせた、特にクルクミン若しくはポリダチンとの共微粒子化形態のPGAを含む、食事療法用組成物(dietetic compositions)、フードサプリメント、特別医療目的用食品(FSMP)及び化粧品組成物(例えば、クリームの形態)に更に関する。
【0109】
「特別医療目的用食品」という用語は、欧州委員会の加盟国に対する指令第1999/21/CE号及び以下の項目に従って承認された製品を指す。この用語は、特定の病的状態を治癒する又はその治療を促すために、「疾患、障害又は特定の病的状態を患う人々の特定の栄養のニーズに応えるように設計された」製品を指し、このFSMP製品は薬物に組み込まれる。
【0110】
本発明による配合物は、Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook, Mack Pub. Co., N.Y., USA, 17th edition, 1985に記載されるような従来の方法に従って調製することができる。
【0111】
本発明をここで、以下の配合例を用いて更に説明する。
【0112】
配合例
実施例1 - 経口用シロップ
1本の100ml容ボトルが以下のものを含有する:
PGACUR-m 4000mg、
カルボキシメチルセルロース 3000mg、
Noveon AA1 150mg、
甘味料 10mg、
蒸留水 100mlまで適量。
【0113】
実施例2 - 動物用の顆粒
100gの顆粒が以下のものを含有する:
PGACUR-m 6000mg、
ソルビトール粉末 400mg、
パルミチン酸サッカロース 20mg、
動物にとって魅力的な成分 30mg。
【0114】
実施例3 - ヒト又は動物用の経口用錠剤
1つの錠剤が以下のものを含有する:
PGA-m 600mg、
微結晶性セルロース 200mg、
クロスカルメロースナトリウム 70mg、
ポリビニルピロリドン 10mg、
ステアリン酸マグネシウム 4mg。
【0115】
実施例4 - ヒト又は動物用の経口用錠剤
1つの錠剤が以下のものを含有する:
PGACUR-m 600mg、
微結晶性セルロース 200mg、
クロスカルメロースナトリウム 70mg、
ポリビニルピロリドン 10mg、
ステアリン酸マグネシウム 4mg。
【0116】
実施例5 - ヒト又は動物用の経口用錠剤
1つの錠剤が以下のものを含有する:
PGACUR-m 300mg、
微結晶性セルロース 180mg、
クロスカルメロースナトリウム 60mg、
ポリビニルピロリドン 10mg、
ステアリン酸マグネシウム 4mg。
【0117】
実施例6 - ヒト又は動物用の経口用硬ゼラチンカプセル
1つのカプセルが以下のものを含有する:
PGACUR-m 400mg。
【0118】
実施例7 - 軟ゼラチンカプセル
1つのカプセルが以下のものを含有する:
PGACUR-m 300mg、
植物油 200mg、
ダイズレシチン 50mg。
【0119】
実施例8 - 軟ゼラチンカプセル
1つのカプセルが以下のものを含有する:
PGACUR-m 400mg、
植物油 200mg、
ダイズレシチン 50mg。
【0120】
実施例9 - 直腸用坐剤
PGACUR-m 200mg、
坐剤用の脂肪塊(Fat mass) 1200mg。
【0121】
実施例10 - 皮膚への局所外用クリーム
100gのクリームが以下のものを含有する:
PGACUR-m 2000mg、
脱塩水 71g、
ワセリン油 10g、
PEG-5植物性ステロール 4g、
ピログルタミン酸ナトリウム 2g、
ステアリン酸 2.5g、
セトステアリルアルコール 2.5g、
ポリソルベート80 2%、
モノステアリン酸グリセリル 1.5g、
シリコーン油 1%、
カルボマー 0.5%、
2-フェノキシエタノール 1%。
【0122】
実施例11 - ヒト又は動物用の経口用錠剤
1つの錠剤が以下のものを含有する:
PGAPOL-m 400mg、
微結晶性セルロース 250mg、
クロスカルメロースナトリウム 80mg、
ポリビニルピロリドン 15mg、
ステアリン酸マグネシウム 5mg。